(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/54 20170101AFI20230405BHJP
B60Q 3/64 20170101ALI20230405BHJP
B60Q 3/217 20170101ALI20230405BHJP
B60Q 3/225 20170101ALI20230405BHJP
B60Q 3/14 20170101ALI20230405BHJP
B60Q 3/20 20170101ALI20230405BHJP
B60Q 3/233 20170101ALI20230405BHJP
【FI】
B60Q3/54
B60Q3/64
B60Q3/217
B60Q3/225
B60Q3/14
B60Q3/20
B60Q3/233
(21)【出願番号】P 2021131068
(22)【出願日】2021-08-11
(62)【分割の表示】P 2017192976の分割
【原出願日】2017-10-02
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三平 学
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕司
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129098(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063797(WO,A1)
【文献】特開2009-214600(JP,A)
【文献】特表2011-528636(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027514(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/54
B60Q 3/64
B60Q 3/217
B60Q 3/225
B60Q 3/14
B60Q 3/20
B60Q 3/233
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の内壁を構成する内装材本体と、
線状に形成され、光源からの光を長手方向に伝播させ、且つ、側面から光を放射する導光部材と、
前記導光部材から放射される光を透過させるレンズとを有し、
前記レンズは、前記導光部材に沿って延在し、前記導光部材を受容する溝部を備え、
前記内装材本体は前記導光部材及び前記レンズを収容するべく、側方に凹んだ内装材凹部を備え、
前記内装材凹部は、上壁、側壁、及び下壁によって画定され、
前記上壁は水平をなし、
前記下壁は前記内装材凹部の開口方向に向かって下方に傾斜し
、
前記レンズは前記溝部の上縁を画定するレンズ上壁と、前記溝部の下縁を画定するレンズ下壁と、前記レンズ上壁に設けられた第1係合部と、前記レンズ下壁に設けられた第2係合部とを備え、
前記内装材凹部の前記上壁には、前記第1係合部に係合する第1被係合部が設けられ、
前記内装材凹部の前記下壁には、前記第2係合部に係合する第2被係合部が設けられ、
前記第2被係合部は、前記下壁を貫通し、前記第2被係合部を受容する孔であり、
前記第2係合部は、前記レンズ下壁の前記導光部材から離れた側の面から突出し、前記第2被係合部を通過していることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
前記レンズは前記溝部を画定するU字状のレンズ本体を有し、
前記レンズ本体は前記内装材凹部に、前記内装材凹部の開口方向に向かって開口するように収容されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用内装材。
【請求項3】
前記第1係合部は、前記レンズ上壁の前記導光部材から離れた側の面から突出し、
前記第1被係合部は、前記上壁に形成された前記第1係合部を受容する孔であり、
前記第1係合部の前記レンズ上壁の壁面からの突出量が前記第2係合部の前記レンズ下壁の壁面からの突出量よりも小さいことを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の車両用内装材。
【請求項4】
前記第1係合部は、前記溝部の開口方向に向かって前記導光部材の側に近づくように傾斜する傾斜面と、前記傾斜面の前記溝部の開口から離れた側の端部に形成され、前記レンズ上壁の前記導光部材から離れた側の面に対して垂直な係止面とを有することを特徴とする
請求項3に記載の車両用内装材。
【請求項5】
前記第1係合部及び前記第2係合部はそれぞれ前記レンズの延在方向に沿って複数設けられ、
前記レンズの延在方向において、前記第2係合部はそれぞれ隣接する2つの前記第1係合部の間に設けられていることを特徴とす
る請求項1~請求項4のいずれか1つの項に記載の車両用内装材。
【請求項6】
前記第2係合部は前記レンズの延在方向において、隣接する2つの前記第1係合部の中央に設けられていることを特徴とする
請求項5に記載の車両用内装材。
【請求項7】
前記内装材本体は、車両用ドアのドアパネルに設けられた板状のメインボードと、前記メインボードの内側に配置され、前記メインボードと協働してドアポケットを構成するポケット部材と、を有し、
前記導光部材及び前記レンズは、前記メインボード及び前記ポケット部材の少なくとも一方に設けられ、
前記レンズの前記内装材凹部の開口方向の側の壁面は、前記内装材本体の前記内装材凹部の上側の壁面と面一をなすことを特徴とする
請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の車両用内装材。
【請求項8】
前記内装材本体は、車両用ドアのドアパネルに車内側面に設けられたドアトリムであり、
前記内装材本体の上下方向の中央部分には、後縁にかけて前後に延びて車内側に膨出するアームレス卜が形成され、
前記アームレス卜の上面には、ウインドウガラスの昇降装置及び車内の照明を操作するためのスイッチが設けられ、
前記内装材本体には、スピーカグリルと、上方に向けて開口し、且つ収容空間を画定するポケット凹部を形成するドアポケットと、が設けられ、
前記スピーカグリルは前記内装材本体の前下部に設けられ、
前記ドアポケットは前記スピーカグリルの後方、且つ、前記アームレス卜の下方において、前後に延在していることを特徴とする
請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアに設けられるドアライニングには、本体とスイッチパネルとの間に、光源からの光を伝播させる線状の導光部材と、導光部材に沿って設けられるレンズとが設けられたものがある(例えば、特許文献1)。レンズは、導光部材を保持する溝部と、本体とスイッチパネルとの間に挟持される挟持部と、本体に設けられた貫通穴に掛け止めされる掛止爪部とを備え、導光部材はレンズを介して本体に結合されている。光源からの光の一部は導光部材の側面から放射され、レンズの挟持部を通過して車室に達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、レンズは本体とスイッチパネルとの間に挟持されているため、組付時にはレンズを本体とスイッチパネルとに対して適正な位置に配置して、両者の間に挟持させる必要があり、組付が容易ではない。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑み、内装材本体と、光源からの光を導く導光部材と、導光部材に沿って設けられるレンズとを有する車両用内装材において、導光部材を内装材本体に容易に結合させることのできる構造を設けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、車両用内装材(1)は、車室の内壁を構成する内装材本体(10、11、12)と、線状に形成され、光源からの光を長手方向に伝播させ、且つ、側面から光を放射する導光部材(17)と、前記導光部材から放射される光を透過させるレンズ(18)とを有し、前記レンズは、前記導光部材に沿って延在し、前記導光部材を受容する溝部(26)と、前記溝部を画定する一方の壁に設けられた第1係合部(21)と、前記溝部を画定する他方の壁に設けられた第2係合部(22)とを備え、前記内装材本体は、前記第1係合部に係合する第1被係合部(34)と、前記第2係合部に係合する第2被係合部(35)とを備え、前記溝部を画定する一方の壁と他方の壁とが互いに近接するように弾性変形できることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第2壁及び第3壁を近接させるように荷重を加え、レンズを弾性変形させることによって、第1係合部及び第2係合部の相対位置を変化させることができるため、第1係合部及び第1被係合部と、第2係合部及び第2被係合部とを容易に結合させることができる。これらの結合によって内装材本体とレンズとが結合し、レンズ及び導光部材を内装材本体に容易に取り付けることができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記レンズは、前記導光部材に沿って配置される第1壁(23)と、前記第1壁の端部から前記導光部材側に延びる第2壁(24)及び第3壁(25)とを有し、前記溝部は前記第1壁、前記第2壁、及び前記第3壁によって画定されているとよい。
【0009】
この構成によれば、レンズを第2壁及び第3壁を近接させるように容易に弾性変形させることができ、且つ、レンズに溝部を形成することができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記内装材本体は前記導光部材及び前記レンズを収容する内装材凹部(29)を備え、前記第1係合部は前記第2壁の前記導光部材から離れた側の面から突出し、前記第1被係合部は前記内装材凹部を画定する壁に形成された前記第1係合部を受容する孔であり、前記第2係合部は前記第3壁の前記導光部材から離れた側の面から前記第1係合部の突出方向に相反する方向に突出し、前記第2被係合部は前記内装材凹部を画定する壁に形成された前記第2係合部を受容する孔であるとよい。
【0011】
この構成によれば、レンズが内装材凹部に受容されているため、乗員がレンズに触れにくくなり、レンズの破損を防止することができる。第1係合部と第2係合部とが相反する方向に突出し、第1係合部及び第2係合部においてレンズ及び内装材が結合しているため、レンズ及び内装材が離れ難くなる。
【0012】
また、上記の態様において、前記第1係合部の前記第2壁の壁面からの突出量(L1)が前記第2係合部の前記第3壁の壁面からの突出量(L2)に比べて小さいとよい。
【0013】
この構成によれば、第2係合部と第2被係合部とを係合させた後、第1係合部と第1被係合部とが係合するように組み付けると、組付に要するレンズ本体の変形量を少なくすることができるため、レンズを容易に内装材本体に結合させることができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記第2被係合部は前記内装材凹部を画定する壁を貫通し、前記第2係合部は前記第2被係合部を通過しているとよい。
【0015】
この構成によれば、第2係合部が第2被係合部を貫通した状態で結合されているため、レンズと内装材本体との結合がより強固になる。
【0016】
また、上記の態様において、前記第2係合部は前記第3壁の突端縁に設けられているとよい。
【0017】
この構成によれば、第2係合部によって溝部の開口部分を補強することができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記第1係合部及び前記第2係合部はそれぞれ前記レンズの延在方向に沿って複数設けられ、前記レンズの延在方向において、前記第2係合部は隣接する2つの前記第1係合部の間に設けられているとよい。
【0019】
この構成によれば、レンズを延在方向に沿って第1係合部及び第2係合部を順番に対応する第1被係合部又は第2被係合部に係合させることができるため、レンズを容易に内装材本体に結合させることができる。更に、第1係合部及び第2係合部が延在方向に異なる位置に設けられることで、レンズと内装材本体との結合が強固になる。
【0020】
また、上記の態様において、前記内装材本体は、車両用ドア(2)のドアパネル(3)に設けられた板状のメインボード(10)と、前記メインボードの内側に配置され、前記メインボードと協働してドアポケット(6)を構成するポケット部材(11、12)とを有し、前記導光部材及び前記レンズは、前記メインボード及び前記ポケット部材の少なくとも一方に設けられているとよい。
【0021】
この構成によれば、ドアポケットの内部を照明することができる。
【0022】
また、上記の態様において、前記ドアポケットは前記車両用ドアに前後に延びるように形成され、前記内装材凹部は、前記メインボード及び前記ポケット部材の少なくとも一方の車外側壁面に設けられ、前記ドアポケットの延在方向に沿って概ね直線状に延在しているとよい。
【0023】
この構成によれば、ドアポケットの延在方向に沿って照明することができる。また、導光部材が直線状に配置されているため、導光部材を曲げずに内装材本体に結合させることができ、取り付け易く、導光部材が損傷しにくくなる。
【0024】
また、上記の態様において、前記内装材凹部は上壁(30)、側壁(31)、及び下壁(32)によって画定され、前記下壁は前記ドアポケットの内部に向うにつれて下方に傾斜しているとよい。
【0025】
この構成によれば、レンズからの光によって下方が照らされ、ドアポケットの収納空間が視認し易くなる。
【0026】
また、上記の態様において、前記内装材凹部を画定する前記上壁は概ね水平をなすとよい。
【0027】
この構成によれば、レンズから上方に放射される光が上壁によって遮られるため、ドアポケットの収納空間が視認し易くなる。
【発明の効果】
【0028】
このように本発明によれば、内装材本体と、光源からの光を導く導光部材と、導光部材に沿って設けられるレンズとを有する車両用内装材において、導光部材を内装材本体に容易に結合させることのできる構造を設けることができる。
【0029】
また、上記の態様において、レンズは、導光部材に沿って配置される第1壁と、第1壁の端部から導光部材側に延びる第2壁及び第3壁とを有し、溝部は第1壁、第2壁、及び第3壁によって画定されている態様によれば、レンズを第2壁及び第3壁を近接させるように容易に弾性変形させることができ、且つ、レンズに溝部を形成することができる。
【0030】
レンズが内装材凹部に受容され、且つ、第1係合部と第2係合部とが相反する方向に突出している態様によれば、乗員がレンズに触れにくくなるため、レンズの破損を防止することができ、レンズと内装材との結合を強固にすることができる。
【0031】
第1係合部の第2壁の壁面からの突出量が第2係合部の第3壁の壁面からの突出量に比べて小さい態様によれば、組付時に第2係合部と第2被係合部とを係合させた後、第1係合部と第1被係合部とが係合するようにレンズ本体を変形させることによって組み付けることができる。このとき、レンズ本体の変形量を少なくなり、レンズを容易に内装材本体に結合させることができる。
【0032】
第2被係合部は内装材凹部を画定する壁を貫通し、第2係合部は第2被係合部を通過している態様によれば、レンズと内装材本体との結合がより強固になる。
【0033】
第2係合部は第3壁の突端縁に設けられている態様によれば、第2係合部によって溝部の開口部分を補強することができる。
【0034】
第1係合部及び第2係合部はそれぞれレンズの延在方向に沿って複数設けられ、レンズの延在方向において、第2係合部は隣接する2つの第1係合部の間に設けられている態様によれば、レンズを延在方向に沿って容易に、且つ、強固に内装材本体に結合させることができる。
【0035】
車両用内装材は車両用ドアのドアパネルに設けられた板状のメインボードと、メインボードの内側に配置され、メインボードと協働してドアポケットを構成するポケット部材とを有し、導光部材及びレンズは、メインボード及びポケット部材の少なくとも一方に設けられている態様によれば、ドアポケットの内部を照明することができる。
【0036】
ドアポケットは車両用ドアに前後に延びるように形成され、内装材凹部は、ドアポケットの延在方向に沿って概ね直線状に延在している態様によれば、ドアポケットの延在方向に沿って照明することができ、導光部材を曲げずに内装材本体に結合させることができるため、取り付け易く、導光部材が損傷しにくくなる。
【0037】
第1凹部壁は内装材凹部の上面を画定し、第2凹部壁は内装材凹部の下面を画定し、ポケットの内部に向うにつれて下方に傾斜している態様によれば、レンズからの光によって下方が照らされ易くなり、ドアポケットの収納空間を視認し易くなる。
【0038】
内装材凹部の上面は概ね水平をなす態様によれば、レンズからの光によって上方が照らされ難くなり、ドアポケットの内部を視認し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施形態に係る車両用内装材(ドアトリム)を示す側面図
【
図3】車内側から見たアウタボード及びインナボードの側面図
【
図9】変形前(破線)レンズと、レンズをボード凹部に組み付けるときのレンズの変形後(実線)を示す断面図
【
図10】(A)第2壁の外面に係止突起が設けられ、第3壁の外面に係止爪が設けられた場合、及び、(B)第2壁及び第3壁の外面にそれぞれ係止爪が設けられた場合の別実施形態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用内装材を自動車の右前席の車両用ドアのドアトリムに適用した実施形態を説明する。
【0041】
図1に示すように、ドアトリム1(車両用内装材)は、ドア2の骨格部材であるドアパネル3の車内側面を覆うように設けられ、車室の内壁を構成している。ドアパネル3は、鋼板から形成されたインナパネル及びアウタパネルを有している。アウタパネルは車体の外面をなし、インナパネルはアウタパネルの車室側に配置されて、アウタパネルに結合している。
【0042】
ドアトリム1は、樹脂製の複数の部材によって板状に形成され、ドアパネル3、より詳細にはインナパネルの車内側において、主面が左右を向くように配置されている。
【0043】
ドアトリム1の上下方向の略中央部分には、車内側に膨出するアームレスト4が形成されている。アームレスト4は、ドアトリム1の中央から後縁かけて前後に延びている。アームレスト4の上面には、ウィンドウガラスの昇降装置及び車内の照明を操作するためのスイッチが設けられている。
【0044】
ドアトリム1の前下部には、スピーカグリル5が設けられている。スピーカグリル5の後方、且つ、アームレスト4の下方には、ドアポケット6が前後に延びるように設けられている。ドアポケット6は上方に向けて開口し、収納空間7を画定するポケット凹部8を形成している。
【0045】
ドアトリム1は、基体となる板状のメインボード10を備えている。メインボード10の周縁部はインナパネル側に突出し、インナパネルに結合している。インナパネルとメインボード10の間には隙間が形成されている。
【0046】
図1及び
図2に示すように、メインボード10はドアポケット6に対応する位置において車幅方向に貫通する貫通孔9を有している。ドアトリム1は、メインボード10の車外側の側面に結合され、貫通孔9を車外側から覆うアウタボード11と、メインボード10とアウタボード11との間に配置され、メインボード10の車外側の側面に結合されるインナボード12とを備えている。メインボード10、アウタボード11及びインナボード12は、ドアトリム1の本体(内装材本体)を構成している。
【0047】
図1及び
図3に示すように、インナボード12は、メインボード10の車内側の側面において、メインボード10の貫通孔9の下縁に沿って前後に延びる板状に形成され、貫通孔9の下縁に沿って配置されている。アウタボード11は、メインボード10の貫通孔9及びインナボード12に概ね対応する板状に形成されている。
図2に示すように、アウタボード11は周縁部において車内側に突出し、中央部は車外側に凹んでいる。アウタボード11の周縁、及び、インナボード12の前縁、下縁、及び後縁には所定の螺子孔13が形成されて、インナボード12及びアウタボード11はメインボードに共締めされている。インナボード12及びアウタボード11がメインボード10に締結されることによって、ドアポケット6が構成されている。よって、インナボード12及びアウタボード11はメインボード10と協働してドアポケットを形成するポケット部材として機能している。インナボード12は収納空間7の車内側壁面を形成し、アウタボード11は収納空間7の車外側壁面を形成している。
【0048】
図1に示すように、インナボード12の前縁はメインボード10及びアウタボード11の間隙からアウタボード11の前方に延びている。インナボード12の前縁は、インナパネルとメインボード10との間に位置している。
【0049】
図3及び
図4に示すように、インナボード12には照明装置15が設けられている。
図5に示すように、照明装置15は、光源を含む発光部材16と、導光部材17と、導光部材17をインナボード12に結合させるレンズ18とを備えている。
【0050】
発光部材16は、LED素子が設けられた基板(図示せず)と、LED素子からの光を所定の位置に集めるレンズ(図示せず)と、基板及びレンズを収容するホルダ19とを備える。発光部材16は、
図1及び
図4に示すように、インナボード12の前端の車外側壁面に締結されている。発光部材16は車体に搭載された所定の電源(図示せず)に接続されている。LED素子は光源として機能し、アームレスト4に設けられたスイッチによって制御されている。ホルダ19には所定のボルト孔が設けられ、発光部材16はインナボード12に締結されている。
【0051】
導光部材17は透明性の高い樹脂によって形成されている。導光部材17は線状(ワイヤ状)に形成され、長手方向に直交する方向の断面、すなわち横断面において円形をなしている。
図4に示すように、導光部材17はインナボード12に沿って、発光部材16から後方に延び、インナボード12の後端に達している。導光部材17の一端側は発光部材16に結合されている。LED素子から放射される光は発光部材16のレンズによって集められ、発光部材16に結合した導光部材17の一端側に入射する。導光部材17は、入射した光を長手方向に沿って伝播させると共に、入射した光を外周側面から放射する。導光部材17としては、コア材に光を乱反射させる材料を混ぜる、又は、側面に光を乱反射させる凹凸を設ける等によって、その側面を発光させるように構成した側面発光の光ファイバケーブルを用いるとよい。
【0052】
レンズ18は、導光部材17から放射される光を透過させる透明性の高い樹脂によって形成されている。
図5及び
図6に示すように、レンズ18は、導光部材17の長手方向に沿って延びるレンズ本体20と、レンズ本体20の外面から突出する複数の係止爪21(第1係合部)と、複数の係止突起22(第2係合部)とを備える。
【0053】
レンズ本体20には、
図2及び
図6に示すように、導光部材17に沿って設けられる第1壁23と、第1壁23の両端から導光部材17に向けて突出する第2壁24及び第3壁25とを有する。第1壁23、第2壁24、及び第3壁25によって、レンズ本体20には、その延在方向に垂直な方向に凹む溝部26が形成されている。レンズ本体20は横断面視で車内側に開口する略U字状をなしている。導光部材17は溝部26に収容されている。導光部材17は第2壁24及び第3壁25の間に位置している。第1壁23、第2壁24、及び第3壁25はそれぞれ、導光部材17の延在方向に沿って延び、溝部26はレンズ本体20の延在方向に沿って形成されている。
【0054】
本実施形態では、導光部材17の直径は第2壁24と第3壁25との間隔に比べて若干大きく設定され、導光部材17は溝部26に圧入されている。導光部材17は第2壁24及び第3壁25によって挟持されて、レンズ本体20に結合している。導光部材17の側面から放射される光は、レンズ本体20を透過し、レンズ18の外面から放射される。
【0055】
係止爪21は、第2壁24の導光部材17から離れた側の面(以下、第2壁24の外面という)、すなわち上面から突出し、レンズ本体20の延在方向に沿って概ね等間隔に配置されている。係止爪21は、溝部26の開口方向に向かって導光部材17側に近づくように傾斜する傾斜面27と、傾斜面27の溝部26の開口から離れた側の端部に形成され、第2壁24の外面に対して概ね垂直な係止面28とを有し、爪状をなしている。本実施形態では、レンズ18は6つの係止爪21を備えている。
【0056】
係止突起22は、第3壁25の導光部材17から離れた側の面(以下、第3壁25の外面という)、すなわち下面から突出し、レンズ本体20の延在方向に概ね等間隔に配置されている。係止突起22は、レンズ本体20の横断面視において、係止爪21の突出方向に相反する方向に突出している。係止突起22はそれぞれ、レンズ本体20の延在方向に平行な主面を有する板状をなしている。係止突起22は、レンズ本体20の延在方向において、隣接した2つの係止爪21の概ね中央の位置に形成されている。そのため、係止爪21と係止突起22とはレンズ本体20の延在方向に沿って上下に互い違いに突出し、いわゆる千鳥状をなしている。本実施形態では、レンズ18は5つの係止突起22を備えている。
【0057】
図6に示すように、係止爪21の第2壁24の外面からの突出量(
図6のL1)は、係止突起22の第3壁25の外面からの突出量(
図6のL2)よりも小さくなるように設定されている。
【0058】
図8に示すように、本実施形態では、係止突起22が第3壁25の外面の突端縁、すなわち、溝部26側の端部に設けられている。それによって、溝部26の開口縁が補強されて、レンズ18の損傷を防止することができる。
【0059】
第2壁24及び第3壁25に互いに近接する方向への荷重によって、レンズ本体20は、第2壁24及び第3壁25が互いに近づくように弾性変形する。
図9にはレンズ18の変形前が破線で、変形後が実線で示されている。第2壁24に下方に向く荷重が加わり、第3壁25に上方に向く荷重が加わると、レンズ本体20は第2壁24及び第3壁25の距離が小さくなるように変形する。
【0060】
図2及び
図7に示すように、インナボード12には車外側に凹むボード凹部29(内装材凹部)が形成されている。
図4に示すように、ボード凹部29は発光部材16が取り付けられる位置から後方に概ね直線状に延びている。ボード凹部29には、レンズ18及び導光部材17が収容されている。
【0061】
導光部材17は発光部材16からボード凹部29に沿って、アウタボード11及びインナボード12の間を通過し、ポケット凹部8の内部に延びている。レンズ18は、ポケット凹部8の内部において、導光部材17に沿って前後に延在している。LED素子からの光は、導光部材17を介してポケット凹部8に達する。
図2に示すように、ポケット凹部8内部において、導光部材17の側面から放射された光はレンズ18を通って収納空間7に達し、収納空間7が照らされる。そのため、乗員は収納空間7の内部の収納物を容易に視認することができる。本実施形態では、レンズ18はポケット凹部8の内部の導光部材17にのみ沿うように設けられているが、レンズ18は更に導光部材17の発光部材16からポケット凹部8に至るまでの部分も含めて導光部材17に沿うように設けられてもよい。
【0062】
図1に示すように、ドアポケット6がドアトリム1に前後に延びるように形成されている。
図4に示すように、ボード凹部29もまた、ドアポケット6に合わせて、概ね前後に延びるように形成されている。導光部材17をドアポケット6の延在方向に沿って配置されている。そのため、収納空間7が前後に隈なく照明される。また、ボード凹部29は概ね直線状に延在しているため、導光部材17をボード凹部29に収容するときに、導光部材17を屈曲させる必要がなく、屈曲による導光部材17の損傷を防止することができる。
【0063】
図7及び
図8に示すように、ボード凹部29の上面は上壁30によって画定され、その車内側の側面は車内側壁31によって画定され、その下面は下壁32によって画定されている。上壁30及び下壁32は互いに対向している。レンズ18はボード凹部29において、第2壁24の外面が上方を向き、第3壁25の外面が下方を向き、第1壁23が車内側壁31から離れ、ボード凹部29の開口を塞ぐように配置されている。第1壁23、第2壁24、第3壁25、及び車内側壁31によって、導光部材17を収容する収容室33が形成されている。導光部材17は収容室33において、第1壁23、第2壁24、第3壁25、及び車内側壁31によって取り囲まれて、その上下及び車幅方向の移動が規制されている。
【0064】
レンズ本体20の上方への移動が上壁30によって規制され、レンズ本体20の下方への移動が下壁32によって規制されている。上壁30及び下壁32の対向する壁面はそれぞれ、レンズ本体20がボード凹部29に収容されたときに、第2壁24が上壁30に当接し、第3壁25が下壁32に当接するように設定されることが好ましい。第2壁24が上壁30に当接し、第3壁25が下壁32に当接することによって、レンズ18がボード凹部29から外れ難くなる。
【0065】
上壁30におけるそれぞれの係止爪21に対応する位置には上下に貫通する第1受容孔34(第1被係合部)が形成されている。下壁32におけるそれぞれの係止突起22に対応する位置には上下に貫通する第2受容孔35(第2被係合部)が形成されている。本実施形態では、インナボード12には、6つの第1受容孔34と、5つの第2受容孔35とが形成されている。
【0066】
図7に示すように、係止爪21は第1受容孔34に嵌合されている。係止爪21は第1受容孔34に挿入され、係止爪21の係止面28が第1受容孔34を画定する壁面に当接し、レンズ18の上部の車幅方向への移動が規制されている。
【0067】
図8に示すように、係止突起22は第2受容孔35に挿入されている。係止突起22と第2受容孔35との係合によって、レンズ18の下部の車幅方向への移動が規制されている。係止突起22は第2受容孔35を貫通しているため、レンズ18の下部の車幅方向への移動がより確実に規制されている。
【0068】
本実施形態では、
図7に示すように、第1受容孔34は上壁30及び車内側壁31の上部まで延びている。また、
図8に示すように、第2受容孔35は下壁32及び車内側壁31の下部まで延びている。そのため、係止爪21を第1受容孔34に嵌合させ易く、係止突起22を第2受容孔35に挿入し易い。
【0069】
図2、
図7及び
図8に示すように、上壁30及び下壁32によって、レンズ本体20の上下方向の移動が規制されている。これらの規制によって、レンズ18はインナボード12に結合し、導光部材17はレンズ18を介して、インナボード12に結合している。
【0070】
ボード凹部29の延在方向における第2受容孔35の幅は、係止突起22のレンズ本体20の延在方向における幅と概ね等しく、係止突起22の幅よりも若干大きくなるように設定されている。第2受容孔35を画定する前壁及び後壁によって、係止突起22の前後方向の移動が規制されるため、レンズ18のボード凹部29の延在方向に沿う方向の移動が規制される。これにより、レンズ18をより強固にインナボード12に結合させることができる。
【0071】
図2に示すように、上壁30は概ね水平をなし、概ね上下方向に向く主面を有している。そのため、レンズ18から上方に放射される光は上壁30によって遮られる。一方、下壁32はポケット凹部8の内部に向って下方に傾斜している。そのため、レンズ18から下方に放射される光は下壁32によって遮られることなく、収納空間7に達する。レンズ18から放射される光が直接、乗員の目に届かないため、乗員が収納空間7の内部を視認しやすい。
【0072】
次に、レンズ18及び導光部材17のインナボード12への組付について説明する。導光部材17を溝部26に圧入した後、係止突起22を第2受容孔35に挿入する。その後、
図9の矢印で示すように、レンズ本体20をボード凹部29へ押し込む。そのとき、上壁30によって傾斜面27が押圧されて、第2壁24には下方に向く荷重が加わる。第3壁25には下壁32から上方に向く荷重が加わり、これらの荷重によって、レンズ本体20が弾性変形する。レンズ本体20の弾性変形によって、係止爪21が第3壁25側に移動する。これによって、レンズ18は概ねレンズ本体20の下端を軸線として、レンズ本体20がボード凹部29の内部へ移動する方向に回動可能となる。このとき、第2壁24と第3壁25との距離が、変形前から係止爪21の突出量程度、小さくなるようにレンズ本体20を弾性変形させれば、レンズ本体20はボード凹部29へ挿入可能となる。よって、係止爪21の第2壁24の外面からの突出量が係止突起22に比べて小さいため、組付に要するレンズ本体20の変形量を少なくすることができ、組付が容易である。
【0073】
レンズ18を回動させると、係止爪21が第1受容孔34に嵌合し、組付が完了する。このように、レンズ本体20をボード凹部29に挿入することによって組付が完了するため、組付が容易である。係止突起22に傾斜面27が形成されているため、レンズ本体20が変形しやすく、レンズ本体20をボード凹部29に挿入しやすい。
【0074】
次に、ドアトリム1の効果について説明する。導光部材17を溝部26に圧入した後、係止突起22を第2受容孔35に挿入し、レンズ本体20を弾性変形させて、係止爪21を第1受容孔34に係止させると、導光部材17及びレンズ18のインナボード12への組付が完了する。よって、組付が容易である。また、第1受容孔34及び第2受容孔35に配置を変更することによって、導光部材17及びレンズ18はインナボード12の所望の位置に結合させることができる。よって、導光部材17及びレンズ18の配置の自由度が向上している。
【0075】
レンズ18はレンズ本体20の上面及び下面に形成された係止爪21及び係止突起22を介してインナボード12に結合している。係止爪21及び係止突起22は互いに相反する方向に突出している。レンズ本体20はその上部及び下部においてインナボード12に結合しているため、レンズ18及びインナボード12の結合が強固である。よって、レンズ18に乗員が触れた場合であっても、レンズ18のインナボード12からの脱落を防止することができる。
【0076】
レンズ18はボード凹部29に収容されて、インナボード12の車外側の壁面からポケット凹部8の内部に向かって突出しない。そのため、乗員の手がレンズ18に触れにくくなり、レンズ18のインナボード12からの脱落を防止することができる。
【0077】
図2に示すように、導光部材17は、レンズ本体20に上下、及び車外側から覆われ、レンズ18及びインナボード12の車外側の壁面に取り囲まれているため、ポケット凹部8の内部に露出しない。そのため、導光部材17がレンズ本体20によって保護されて、導光部材17がより破損し難くなる。更に、導光部材17が汚れにくくなり、安定した照明を実現することができる。
【0078】
第3壁25の外面において複数の係止突起22が互いに平行に突出している。そのため、係止突起22を第2受容孔35に容易に嵌めることができる。また、レンズ本体20に係止爪21及び係止突起22を設けることによってレンズ本体20が補強されて、レンズ18が破損し難くなる。
【0079】
また、導光部材17は溝部26に圧入されて保持されているため、導光部材17に係止部等が設ける必要がなく、導光部材17とレンズ18との結合構造が簡素である。
【0080】
また、係止爪21及び係止突起22は、レンズ18の延在方向に沿って、互い違いに突出している。したがって、係止爪21及び係止突起22がレンズ本体20の延在方向において同じ位置で上下に突出する態様に比べて、係止爪21及び係止突起22を対応する第1受容孔34又は第2受容孔35に端から順番に結合させることができるため、レンズ18の組付が容易である。また、レンズ18がその延在方向に沿って上下に順番にインナボード12に結合されているため、レンズ18とインナボード12との結合を強めることができる。
【0081】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。第1受容孔34及び第2受容孔35はそれぞれ、係止爪21及び係止突起22を受容する貫通孔として形成されていたが、係止爪21及び係止突起22に受容し、係合する凹部を形成する態様であればいかなる態様であってもよい。
【0082】
図10(A)に示すように、係止突起22をレンズ本体20の第2壁24の外面に設け、係止爪21をレンズ本体20の第3壁25の外面に設けてもよい。このとき、係止突起22は第1受容孔34に挿入され、係止爪21が第2受容孔35に係合する。
図10(B)に示すように、レンズ本体20の第2壁24及び第3壁25の外面にそれぞれ係止爪50を設け、それぞれが第1受容孔34及び第2受容孔35に係合するように構成してもよい。
【0083】
上記実施形態では、導光部材17は溝部26に圧入されていたが、レンズ本体20がボード凹部29に収容されたときに、ボード凹部29の上壁30及び下壁32からのレンズ本体20の第2壁24及び第3壁25に導光部材17に向かう方向の圧力が加わり、その圧力によって第2壁24及び第3壁25が導光部材17を挟持するように構成してもよい。また、第2壁24及び第3壁25の導光部材17側の面に突起を設けることによって、光ファイバの溝部26からの脱落を防止するように構成してもよい。
【0084】
上記実施形態では、導光部材17及びレンズ18はインナボード12に設けられていたが、アウタボード11に設けられていてもよい。また、メインボード10に貫通孔9を設けず、ドアポケット6を形成するためのポケット用ボードが取り付けられているときには、導光部材17及びレンズ18はメインボード10及びポケット用ボードのいずれに設けられていてもよい。
【0085】
上記実施形態では、照明装置15はドアポケット6の収納空間7を照らしていたが、車室を構成する部材のいかなる部材に設けられてもよく、例えば、アームレストに設けられるスイッチを照らす、又は、ドアの開閉時に乗員の足元を照らすように構成してもよい。また、上記実施形態では、本発明がドアトリム1に適用されていたが、センターコンソールやダッシュボードを構成する部材に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 :ドアトリム(車両用内装材)
2 :ドア
3 :ドアパネル
6 :ドアポケット
10 :メインボード
11 :アウタボード(ポケット部材)
12 :インナボード(ポケット部材)
17 :導光部材
18 :レンズ
19 :ホルダ
21 :係止爪(第1係合部)
22 :係止突起(第2係合部)
23 :第1壁
24 :第2壁
25 :第3壁
26 :溝部
29 :ボード凹部(内装材凹部)
30 :上壁
31 :車内側壁
32 :下壁
34 :第1受容孔(第1被係合部)
35 :第2受容孔(第2被係合部)