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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20230405BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20230405BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20230405BHJP
   H01R 13/655 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H02G3/04 081
H02G1/14
H01B7/00 301
H01B7/00 306
H01R13/655
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019146203
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021027767
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】萩 真博
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-294246(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054348(WO,A1)
【文献】特開2018-121044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 1/14
H01B 7/00
H01R 13/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する電線と、
前記絶縁被覆の外周を包囲する電磁シールド部材と、
前記芯線の端部と電気的に接続された接続端子と、
前記接続端子を保持する合成樹脂製のコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの内部から前記コネクタハウジングの外部に突出して延びる筒状のシールドパイプと、
前記シールドパイプのうち前記コネクタハウジングの外部に配置された部分の外周面に前記電磁シールド部材の端部を電気的に接続した状態で固定する固定部材と、を有し、
前記電線の端部は、前記電磁シールド部材から露出された状態で前記シールドパイプの内部に挿入されており、
前記電線の端部は、前記シールドパイプを通じて前記コネクタハウジングの内部に挿入されて前記接続端子と接続されており、
前記シールドパイプのうち前記コネクタハウジングの外部に配置された部分の内部空間に設けられた第1シール部材と、
前記シールドパイプの端部に装着され、前記第1シール部材の抜け止めを行う第1リテーナと、を更に有し、
前記第1シール部材は、前記シールドパイプの内周面に密着するとともに、前記電線の外周面に密着し、
前記シールドパイプのうち前記第1シール部材よりも前記コネクタハウジングの内部側の内周面には、前記シールドパイプの径方向内側に突出する突出部が形成されているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記突出部は、前記シールドパイプの内周面の周方向全周にわたって連続して形成されている請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第1シール部材は、前記シールドパイプの長さ方向において前記固定部材と重なる位置に設けられている請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記シールドパイプは金属製であり、
前記第1リテーナは合成樹脂製であり、
前記第1リテーナは、前記シールドパイプの内側に嵌合された本体部と、前記本体部の外周面に形成された被覆部とを有し、
前記被覆部は、前記シールドパイプの端縁を径方向外側から被覆するように形成されており、
前記電磁シールド部材の端部は、前記被覆部の外周を包囲するように形成されている請求項から請求項のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記シールドパイプと前記電磁シールド部材と前記固定部材とは、互いに同種の金属材料によって構成されている請求項1から請求項のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する電線と、
前記絶縁被覆の外周を包囲する電磁シールド部材と、
前記芯線の端部と電気的に接続された接続端子と、
前記接続端子を保持する合成樹脂製のコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの内部から前記コネクタハウジングの外部に突出して延びる筒状のシールドパイプと、
前記シールドパイプのうち前記コネクタハウジングの外部に配置された部分の外周面に前記電磁シールド部材の端部を電気的に接続した状態で固定する固定部材と、を有し、
前記電線の端部は、前記電磁シールド部材から露出された状態で前記シールドパイプの内部に挿入されており、
前記電線の端部は、前記シールドパイプを通じて前記コネクタハウジングの内部に挿入されて前記接続端子と接続されており、
前記コネクタハウジングの内部空間に設けられた第2シール部材と、
前記コネクタハウジングの端部に装着され、前記第2シール部材の抜け止めを行う第2リテーナと、を更に有し、
前記第2シール部材は、前記コネクタハウジングの内周面に密着するとともに、前記シールドパイプの外周面に密着するワイヤハーネス。
【請求項7】
前記コネクタハウジングの内部空間において、前記シールドパイプと電気的に接続される導電性の筒状部材を更に有する請求項1から請求項のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載されるワイヤハーネスとしては、芯線と、芯線の外周を覆う絶縁被覆と、絶縁被覆の外周を覆うシールド部材とを有する導電路を備えたものが知られている。また、シールド部材をアース接続する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のワイヤハーネスでは、シールド部材の端部の外側にシールドリングが嵌合され、シールド部材の端末がシールドリングの外周側に折り返されている。そして、シールド部材の折り返し部分に対してカシメリングが加締められて取り付けられている。詳述すると、シールドリングは小径部と大径部とを有しており、シールドリングの小径部に対してカシメリングが加締められて取り付けられている。これにより、シールド部材とシールドリングとが電気的に接続されている。シールドリングの大径部がコネクタの接触端子などに電気的に接続されることでシールド部材が接地される。なお、折り返されていないシールド部材の端部とシールドリングとの間には、カシメリングの加締めの際に用いられる中子を引き抜いた後に生じる中子引き抜き後空間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-221017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記ワイヤハーネスでは、シールド部材が折り返され、その折り返された部分がカシメリングによりシールドリングに接続されているため、シールド部材を折り返すためのスペースが必要となる。したがって、導電路の端部の体格が大きくなるという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、大型化を抑制できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する電線と、前記絶縁被覆の外周を包囲する電磁シールド部材と、前記芯線の端部と電気的に接続された接続端子と、前記接続端子を保持する合成樹脂製のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの内部から前記コネクタハウジングの外部に突出して延びる筒状のシールドパイプと、前記シールドパイプのうち前記コネクタハウジングの外部に配置された部分の外周面に前記電磁シールド部材の端部を電気的に接続した状態で固定する固定部材と、を有し、前記電線の端部は、前記電磁シールド部材から露出された状態で前記シールドパイプの内部に挿入されており、前記電線の端部は、前記シールドパイプを通じて前記コネクタハウジングの内部に挿入されて前記接続端子と接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のワイヤハーネスによれば、大型化を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図である。
図2図2は、一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のワイヤハーネスは、芯線と、前記芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する電線と、前記絶縁被覆の外周を包囲する電磁シールド部材と、前記芯線の端部と電気的に接続された接続端子と、前記接続端子を保持する合成樹脂製のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの内部から前記コネクタハウジングの外部に突出して延びる筒状のシールドパイプと、前記シールドパイプのうち前記コネクタハウジングの外部に配置された部分の外周面に前記電磁シールド部材の端部を電気的に接続した状態で固定する固定部材と、を有し、前記電線の端部は、前記電磁シールド部材から露出された状態で前記シールドパイプの内部に挿入されており、前記電線の端部は、前記シールドパイプを通じて前記コネクタハウジングの内部に挿入されて前記接続端子と接続されている。
【0011】
この構成によれば、コネクタハウジングの内部からコネクタハウジングの外部に突出して延びるシールドパイプのうちコネクタハウジングの外部に配置された部分の外周面に対して電磁シールド部材の端部が接続される。このとき、電線は、電磁シールド部材から露出された状態でシールドパイプの内部に挿入され、そのシールドパイプを通じてコネクタハウジングの内部に挿入される。すなわち、電磁シールド部材の端部は、コネクタハウジングに対する電線の挿入方向とは反対方向に突出するシールドパイプの外周面に接続される。このため、シールドパイプの外周面に電磁シールド部材を接続する際に、電磁シールド部材を折り返さずにシールドパイプの外周面に接続することができる。これにより、電線の端部の体格が大型化することを好適に抑制できる。
【0012】
[2]前記シールドパイプのうち前記コネクタハウジングの外部に配置された部分の内部空間に設けられた第1シール部材と、前記シールドパイプの端部に装着され、前記第1シール部材の抜け止めを行う第1リテーナと、を更に有し、前記第1シール部材は、前記シールドパイプの内周面に密着するとともに、前記電線の外周面に密着することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、シールドパイプの内周面に密着するとともに、電線の外周面に密着する第1シール部材が設けられる。この第1シール部材により、シールドパイプの内部空間を通じて水等の液体がコネクタハウジングの内部に浸入することを好適に抑制できる。また、第1リテーナによって第1シール部材がシールドパイプから脱離することを抑制できる。このため、第1シール部材による防水性能を好適に維持することができる。
【0014】
[3]前記シールドパイプのうち前記第1シール部材よりも前記コネクタハウジングの内部側の内周面には、前記シールドパイプの径方向内側に突出する突出部が形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、シールドパイプの径方向内側に突出する突出部により、第1シール部材がコネクタハウジングの内部側に移動することを規制することができる。これにより、第1シール部材による防水性能を好適に維持することができる。
【0016】
[4]前記突出部は、前記シールドパイプの内周面の周方向全周にわたって連続して形成されていることが好ましい。この構成によれば、シールドパイプの周方向全周にわたってシールドパイプの径方向内側に突出する突出部が形成される。この突出部により、第1シール部材がコネクタハウジングの内部側に移動することを好適に規制することができる。
【0017】
[5]前記第1シール部材は、前記シールドパイプの長さ方向において前記固定部材と重なる位置に設けられていることが好ましい。この構成によれば、固定部材による締め付け力によって、第1シール部材を径方向内側に締め付けることができる。これにより、第1シール部材の移動を好適に規制できる。
【0018】
[6]前記シールドパイプは金属製であり、前記第1リテーナは合成樹脂製であり、前記第1リテーナは、前記シールドパイプの内側に嵌合された本体部と、前記本体部の外周面に形成された被覆部とを有し、前記被覆部は、前記シールドパイプの端縁を径方向外側から被覆するように形成されており、前記電磁シールド部材の端部は、前記被覆部の外周を包囲するように形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第1リテーナの本体部によって、金属製のシールドパイプの開口端のエッジから電線を保護することができる。また、第1リテーナの被覆部によって、金属製のシールドパイプの端縁のエッジから電磁シールド部材を保護することができる。
【0020】
[7]前記シールドパイプと前記電磁シールド部材と前記固定部材とは、互いに同種の金属材料によって構成されていることが好ましい。この構成によれば、シールドパイプと電磁シールド部材と固定部材との接続部分に水が付着した場合であっても、異種金属接触腐食、つまり電食が発生することを好適に抑制することができる。
【0021】
[8]前記コネクタハウジングの内部空間に設けられた第2シール部材と、前記コネクタハウジングの端部に装着され、前記第2シール部材の抜け止めを行う第2リテーナと、を更に有し、前記第2シール部材は、前記コネクタハウジングの内周面に密着するとともに、前記シールドパイプの外周面に密着することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、コネクタハウジングの内周面に密着するとともに、シールドパイプの外周面に密着する第2シール部材が設けられる。この第2シール部材により、コネクタハウジングの内周面とシールドパイプの外周面との間の隙間を通じて水等の液体がコネクタハウジングの内部に浸入することを好適に抑制できる。また、第2リテーナによって第2シール部材がコネクタハウジングから脱離することを抑制できる。このため、第2シール部材による防水性能を好適に維持することができる。
【0023】
[9]前記コネクタハウジングの内部空間において、前記シールドパイプと電気的に接続される導電性の筒状部材を更に有することが好ましい。この構成によれば、電磁シールド部材がシールドパイプを通じて導電性の筒状部材と電気的に接続される。このため、例えば筒状部材をアース接続することにより、シールドパイプを通じて電磁シールド部材をアース接続することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」、「直交」や「垂直」は、厳密に平行、直交や垂直の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行、直交や垂直の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
図1に示すワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの床下等を通るように配索される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0026】
ここで、図1における左右方向が車両前後方向であり、図1における紙面直交方向が車両幅方向であり、図1における上下方向が車両上下方向である。以下の説明では、便宜上、車両前後方向に延びる方向をX軸方向と称し、車両幅方向に延びる方向をY軸方向と称し、車両上下方向に延びる方向をZ軸方向と称する。
【0027】
ワイヤハーネス10は、1本又は複数本(本実施形態では、2本)の電線20と、電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタC1と、電線20の外周を包囲する電磁シールド部材25と、複数本の電線20を一括して包囲する外装部材30とを有している。電線20の一端部はコネクタC1を介してインバータ11と接続され、電線20の他端部はコネクタC1を介して高圧バッテリ12と接続されている。電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。
【0028】
外装部材30は、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材30の内部空間には、1本又は複数本の電線20が収容されている。外装部材30は、例えば、複数の電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。外装部材30は、内部に収容した電線20を飛翔物や水滴から保護する。外装部材30としては、例えば、金属製又は樹脂製のパイプや、樹脂製のプロテクタ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。
【0029】
以下の説明では、単に「周方向」と記載した場合には、電線20の中心軸線の周方向を意味するものとする。
(電線20の構成)
図2に示すように、電線20は、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有している。電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線である。芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体や内部が中空構造をなす筒状導体などを用いることができる。また、芯線21としては、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。柱状導体としては、例えば、単芯線やバスバなどを挙げることができる。本実施形態の芯線21は、撚り線である。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。芯線21は、例えば、押出成形によって形成されている。
【0030】
芯線21の長さ方向(ここでは、X軸方向)と直交する平面によって芯線21を切断した断面形状は、任意の形状にすることができる。すなわち、芯線21の横断面形状は、任意の形状にすることができる。芯線21の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成されている。本実施形態の芯線21の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0031】
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を周方向全周にわたって被覆している。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0032】
(電磁シールド部材25の構成)
電磁シールド部材25は、筒状をなし、絶縁被覆22の外周を全周にわたって包囲している。電磁シールド部材25は、例えば、絶縁被覆22の外周面に接触した状態で、絶縁被覆22の外周を全周にわたって包囲している。電磁シールド部材25は、例えば、各電線20に個別に設けられている。
【0033】
電磁シールド部材25は、例えば、複数の金属素線が筒状に編み込まれた編組部材や金属箔を用いることができる。電磁シールド部材25は、例えば、芯線21よりも可撓性に優れている。電磁シールド部材25の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。本実施形態の電磁シールド部材25は、アルミニウムからなる編組部材である。
【0034】
本実施形態のワイヤハーネス10では、電磁シールド部材25の外周を密着状態で被覆するシース(被覆部材)が設けられていない。但し、図2では図示を省略しているが、電磁シールド部材25の外周は外装部材30(図1参照)によって包囲されている。
【0035】
(コネクタC1の構成)
コネクタC1は、コネクタハウジング40と、導電性の接続端子41と、樹脂キャップ42と、導電性の筒状部材43と、シールドパイプ50と、シール部材61,62と、リテーナ70,80とを有している。なお、以下の説明では、コネクタC1に対して電線20を挿入させる方向を前方と定義して説明する。
【0036】
(コネクタハウジング40の構成)
コネクタハウジング40は、例えば、1つ又は複数の挿通孔40Xを有している。コネクタハウジング40は、例えば、電線20の本数(本実施形態では、2本)と同数の挿通孔40Xを有している。挿通孔40Xは、例えば、円筒状や角筒状に形成されている。コネクタハウジング40は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどを用いることができる。
【0037】
(接続端子41の構成)
接続端子41は、各挿通孔40Xの内部に設けられている。接続端子41は、例えば、各挿通孔40Xの内部に設けられた筒状の樹脂キャップ42内に挿通されている。接続端子41は、電線20の末端部と電気的に接続されている。接続端子41の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。接続端子41は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、銀メッキ、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施してもよい。
【0038】
電線20の端部は、電磁シールド部材25から露出されている。電線20の端部は、電磁シールド部材25から露出された状態で、コネクタC1の内部に挿通されている。コネクタC1内に挿通された電線20の末端部では、芯線21の末端部が絶縁被覆22から露出されている。例えば、電線20の末端部では、電線20の端末から一定の長さの分の絶縁被覆22が剥がされることにより、芯線21の末端部が絶縁被覆22から露出されている。電線20の末端部は、芯線21の末端部が絶縁被覆22から露出された状態で、樹脂キャップ42の内部に挿通されている。例えば、電線20のうち芯線21のみが樹脂キャップ42の後方の開口部から樹脂キャップ42内部に挿通されている。接続端子41は、例えば、絶縁被覆22から露出された芯線21の末端部に対して接続されている。接続端子41は、例えば、圧着や超音波溶接などによって芯線21に接続されている。これにより、接続端子41と芯線21とが電気的に接続されている。
【0039】
なお、接続端子41には、例えば、図示しない相手端子が電気的に接続される。相手端子は、例えば、樹脂キャップ42の前方の開口部から樹脂キャップ42内部に挿入されて接続端子41と電気的に接続される。相手端子としては、例えば、バスバ、電気機器の端子部や他の電線の端子を挙げることができる。
【0040】
(樹脂キャップ42の構成)
樹脂キャップ42は、例えば、接続端子41の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。樹脂キャップ42の内周の断面形状は、例えば、接続端子41の外周形状に対応する形状に形成されている。樹脂キャップ42は、例えば、接続端子41よりもX軸方向の長さが長く形成されている。樹脂キャップ42は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどを用いることができる。なお、樹脂キャップ42は、例えば、複数部品によって構成されていてもよい。
【0041】
(筒状部材43の構成)
筒状部材43は、筒状に形成されている。筒状部材43は、例えば、円筒状や角筒状に形成されている。筒状部材43の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。なお、図示は省略するが、筒状部材43は、アース接続(アース接地)されている。例えば、筒状部材43は、コネクタC1が接続される電気機器の金属製筐体や相手コネクタの接触端子等を通じてアース接続されている。
【0042】
筒状部材43は、例えば、挿通孔40Xの内部に設けられている。筒状部材43は、例えば、樹脂キャップ42の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。筒状部材43は、例えば、樹脂キャップ42よりもX軸方向の長さが長く形成されている。但し、樹脂キャップ42の前端部は、例えば、筒状部材43の前端部よりも前方に突出するように形成されている。このため、本実施形態の樹脂キャップ42の前端部は、筒状部材43から露出されている。
【0043】
筒状部材43は、例えば、樹脂キャップ42の後端部よりも後方に延びるように形成されている。筒状部材43の後端部は、例えば、電線20の端部の一部の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。筒状部材43の後端部は、例えば、電線20の端部のうち芯線21が絶縁被覆22によって被覆された部分の外周を包囲するように設けられている。
【0044】
(シールドパイプ50の構成)
シールドパイプ50は、筒状に形成されている。シールドパイプ50の外周形状は、例えば、筒状部材の内周形状に対応する形状に形成されている。シールドパイプ50は、例えば、円筒状や角筒状に形成されている。シールドパイプ50の材料としては、例えば、導電材料を用いることができる。シールドパイプ50の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。シールドパイプ50の材料としては、導電性を有する樹脂材料を用いることもできる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂を用いることができる。本実施形態のシールドパイプ50は、アルミニウムからなる金属パイプである。
【0045】
シールドパイプ50は、例えば、一部がコネクタハウジング40の内部に設けられ、一部がコネクタハウジング40の外部に設けられている。シールドパイプ50の前端部は、例えば、コネクタハウジング40の挿通孔40Xの内部に設けられている。シールドパイプ50の後端部は、例えば、コネクタハウジング40の後方側の外部に設けられている。すなわち、シールドパイプ50は、コネクタハウジング40の内部からコネクタハウジング40の後方側の外部に突出して延びるように形成されている。換言すると、シールドパイプ50は、コネクタハウジング40の後方側の外部から挿通孔40Xの内部に挿入されるように形成されている。
【0046】
シールドパイプ50の前端部は、例えば、挿通孔40Xの内部において、筒状部材43に嵌合されている。シールドパイプ50の前端部は、例えば、筒状部材43の内側に嵌合されている。本実施形態のシールドパイプ50の外径は、筒状部材43の内径よりも僅かに小さく設定されている。シールドパイプ50は、例えば、圧着や超音波溶接などによって筒状部材43に接続されている。これにより、シールドパイプ50と筒状部材43とが電気的に接続されている。シールドパイプ50の前端部は、例えば、挿通孔40X内に挿通された電線20の一部の外周を周方向全周にわたって包囲するように設けられている。
【0047】
シールドパイプ50の後端部は、例えば、コネクタハウジング40の後端部よりも後方に突出するように形成されている。シールドパイプ50の後端部の外径は、例えば、挿通孔40Xの内径よりも小さく形成されている。シールドパイプ50の後端部は、例えば、コネクタハウジング40の外部に配置された電線20の一部の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。シールドパイプ50の後端部は、電磁シールド部材25から露出された電線20の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。
【0048】
シールドパイプ50の後端部の内周面には、例えば、シールドパイプ50の径方向内側に突出する突出部51が形成されている。突出部51は、例えば、シールドパイプ50の内周面の周方向全周にわたって連続して形成されている。突出部51は、例えば、閉環状に形成されている。突出部51の突出先端は、例えば、シールドパイプ50の周方向の少なくとも一部において絶縁被覆22の外周面に接触している。突出部51は、例えば、シールドパイプ50の長さ方向(ここでは、X軸方向)の一部のみに形成されている。
【0049】
ここで、突出部51は、例えば、図示しない治具と加工対象であるシールドパイプ50とを相対回転させて治具をシールドパイプ50の外側から当接させてシールドパイプ50を縮径させるように塑性変形させることでシールドパイプ50の内周面に形成される。このようなシールドパイプ50を塑性変形させる加工方法としては、スピニング加工やスウェージング加工などが挙げられる。このように突出部51を形成することにより、シールドパイプ50の外周面の突出部51と対応する位置に溝部52が形成されることになる。すなわち、X軸方向において突出部51の形成された部分のシールドパイプ50の外径は、突出部51の形成されていない部分のシールドパイプ50の外径よりも小さくなる。突出部51は、例えば、シールドパイプ50の内部に電線20及びシール部材62が挿通される前に形成される。
【0050】
突出部51は、例えば、シール部材62がX軸方向において前方に移動することを規制する規制部材として機能する。また、突出部51は、例えば、シール部材62のX軸方向における位置を定める位置決め部材として機能する。
【0051】
(シール部材61の構成)
コネクタハウジング40の後端部には、環状のシール部材61が装着されている。シール部材61としては、例えば、ゴム栓を用いることができる。シール部材61は、例えば、挿通孔40Xの後端部に設けられている。シール部材61は、挿通孔40Xの内側に嵌合されるとともに、シールドパイプ50の外側に嵌合されている。シール部材61の外周形状は、例えば、挿通孔40Xの内周形状に対応する形状に形成されている。シール部材61の内周形状は、例えば、シールドパイプ50の外周形状に対応する形状に形成されている。例えば、シール部材61の外周面は挿通孔40Xの内周面に対して周方向全周にわたって液密に密着するとともに、シール部材61の内周面はシールドパイプ50の外周面に対して周方向全周にわたって液密に密着している。シール部材61は、例えば、挿通孔40Xの内周面とシールドパイプ50の外周面との間において、挿通孔40X及びシールドパイプ50に対して周方向全周にわたって密着状態で保持されている。これにより、挿通孔40Xの後方の開口部から挿通孔40X及びコネクタハウジング40の内部に水などの液体が浸入することを抑制できる。
【0052】
(リテーナ70の構成)
コネクタハウジング40の後端部には、シール部材61の抜け止めを行うリテーナ70が装着されている。リテーナ70は、例えば、シール部材61がX軸方向において後方に移動することを規制する規制部材として機能する。リテーナ70は、例えば、挿通孔40Xの後方の開口部を塞ぐように形成されている。本実施形態のリテーナ70は、コネクタハウジング40(挿通孔40X)の外側に設けられている。
【0053】
リテーナ70は、例えば、シールドパイプ50の後端部の外側に嵌合された筒部71と、筒部71の外周面から径方向外側に突出して形成された壁部72と、壁部72の径方向外側の端部から前方に向かって延びる被覆部73とを有している。リテーナ70は、例えば、筒部71と壁部72と被覆部73とが一体に形成された単一部品である。リテーナ70は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどを用いることができる。
【0054】
筒部71は、筒状に形成されている。筒部71は、例えば、円筒状や角筒状に形成されている。筒部71は、例えば、シールドパイプ50の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。筒部71の内周面は、例えば、シールドパイプ50の外周面に接触している。
【0055】
壁部72は、例えば、筒部71の外周面から径方向外側に向かって垂直に延びるように形成されている。壁部72は、例えば、コネクタハウジング40の後端面に接触している。壁部72は、例えば、シール部材61の後面に接触している。壁部72は、筒部71の周方向の一部のみに形成されていてもよいし、筒部71の周方向全周にわたって形成されていてもよい。
【0056】
被覆部73は、例えば、コネクタハウジング40の外周面を被覆するように形成されている。被覆部73は、例えば、筒部71の外周面と平行に延びるように形成されている。図示は省略するが、被覆部73は、例えば、コネクタハウジング40の外周面と係止する係止部を有している。リテーナ70は、例えば、被覆部73に設けられた係止部をコネクタハウジング40の外周面に係止することにより、コネクタハウジング40の後端部に取り付けられる。
【0057】
(シール部材62の構成)
シールドパイプ50の後端部には、環状のシール部材62が装着されている。シール部材62としては、例えば、ゴム栓を用いることができる。シール部材62は、例えば、突出部51よりも後方のシールドパイプ50に装着されている。シール部材62は、シールドパイプ50の内側に嵌合されるとともに、電線20の外側に嵌合されている。シール部材62の外周形状は、例えば、シールドパイプ50の内周形状に対応する形状に形成されている。シール部材62の内周形状は、例えば、絶縁被覆22の外周形状に対応する形状に形成されている。例えば、シール部材62の外周面はシールドパイプ50の内周面に対して周方向全周にわたって液密に密着するとともに、シール部材62の内周面は電線20の絶縁被覆22の外周面に対して周方向全周にわたって液密に密着している。シール部材62は、例えば、シールドパイプ50の内周面と絶縁被覆22の外周面との間において、シールドパイプ50及び絶縁被覆22に対して周方向全周にわたって密着状態で保持されている。これにより、シールドパイプ50の後端からシールドパイプ50の内部に水などの液体が浸入することを抑制できる。
【0058】
(リテーナ80の構成)
シールドパイプ50の後端部には、シール部材62の抜け止めを行うリテーナ80が装着されている。リテーナ80は、例えば、シール部材62がX軸方向において後方に移動することを規制する規制部材として機能する。リテーナ80は、例えば、シールドパイプ50内に挿通されてシールドパイプ50に取り付けられる。リテーナ80は、例えば、金属製のシールドパイプ50の内側に配置されることで、シールドパイプ50の後方の開口端のエッジから電線20を保護する機能を有している。リテーナ80は、例えば、シールドパイプ50の端縁を覆うように形成されている。リテーナ80は、例えば、シールドパイプ50の後端のエッジから電磁シールド部材25を保護する機能を有している。リテーナ80は、例えば、電線20の端部がシールドパイプ50内に挿通され、且つシールドパイプ50の後端部にシール部材62が装着された後に、シールドパイプ50の後端部に装着される。
【0059】
リテーナ80は、例えば、筒状に形成された本体部81と、本体部81の外周面に形成された被覆部82とを有している。リテーナ80は、例えば、本体部81と被覆部82とが一体に形成された単一部品である。リテーナ80は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルなどを用いることができる。
【0060】
本体部81は、例えば、シールドパイプ50の後端部の内側に嵌合される。本体部81は、例えば、X軸方向に貫通する貫通孔81Xを有している。貫通孔81Xには、電線20が挿通される。換言すると、貫通孔81Xは、電線20が挿通可能な大きさに形成されている。本体部81は、例えば、シールドパイプ50の内周面と絶縁被覆22の外周面との間の隙間を埋めるように形成されている。本体部81の外周面は、例えば、シールドパイプ50の内周面に接触している。貫通孔81Xの内周面は、例えば、絶縁被覆22の外周面に接触している。
【0061】
本体部81の外周面には、その外周面から径方向外側に張り出した被覆部82が形成されている。被覆部82は、本体部81の後端部の外周面に形成されている。被覆部82は、本体部81の周方向の一部のみに形成されていてもよいし、本体部81の周方向全周にわたって形成されていてもよい。
【0062】
被覆部82は、本体部81の外周面から径方向外側に突出するように形成された壁部83と、壁部83の径方向外側の端部からX軸方向に沿って前方に向かって延びるように形成された鍔部84とを有している。壁部83は、例えば、本体部81の外周面から径方向外側に向かって垂直に延びるように形成されている。壁部83の高さは、例えば、シールドパイプ50の厚さよりも僅かに高くなるように設定されている。鍔部84は、例えば、本体部81の外周面と平行に延びるように形成されている。リテーナ80がシールドパイプ50の後端部に装着されると、本体部81の外周面と壁部83と鍔部84とによって囲まれた空間にシールドパイプ50の後端部が収容される。すなわち、リテーナ80がシールドパイプ50の後端部に装着されると、シールドパイプ50の後端縁が被覆部82によって被覆される。このとき、鍔部84は、シールドパイプ50の外周面を径方向外側から覆うように設けられている。
【0063】
電磁シールド部材25の端部は、例えば、電線20の絶縁被覆22から離れるように引き出されている。電磁シールド部材25の端部は、例えば、他の部分よりも開口幅(開口径)が広がるように形成されている。電磁シールド部材25の端部は、例えば、リテーナ80の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。例えば、電磁シールド部材25の端部は、シールドパイプ50の後端縁を被覆する被覆部82の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。すなわち、電磁シールド部材25の端部は、被覆部82の外周を包囲可能な開口幅(開口径)まで広がるように形成されている。電磁シールド部材25の末端部は、シールドパイプ50の後端部の外周面に固定されている。すなわち、電磁シールド部材25の末端部は、コネクタハウジング40の外部に配置されたシールドパイプ50の外周面に固定されている。電磁シールド部材25の末端部は、例えば、シールドパイプ50の後端部の外周面に直接接触された状態で固定されている。電磁シールド部材25の末端部は、シールドパイプ50の外周を周方向全周にわたって包囲するように形成されている。すなわち、電磁シールド部材25の末端部は、シールドパイプ50の外周を包囲可能な開口幅まで広がるように形成されている。ここで、シールドパイプ50の外形は、電線20の外形よりも大きく形成されている。また、被覆部82の外形は、シールドパイプ50の外形よりも大きく形成されている。このため、本実施形態の電磁シールド部材25の端部は、被覆部82を包囲する部分で最も開口幅が広がるように形成され、その部分から末端部に向かうに連れて開口幅が狭くなるように形成されている。電磁シールド部材25の端部は、コネクタハウジング40に対する電線20の挿入方向とは反対方向(ここでは、後方)に向かって折り返されることなく、シールドパイプ50の外周を包囲するように形成されている。
【0064】
(カシメリング90の構成)
ワイヤハーネス10は、シールドパイプ50の外周面に電磁シールド部材25の末端部を接続するカシメリング90を有している。カシメリング90は、例えば、シールドパイプ50の外周面との間に電磁シールド部材25の末端部を挟む態様でシールドパイプ50の外側に嵌合されている。カシメリング90は、例えば、シールドパイプ50の外周面にならった円筒状に形成されている。そして、カシメリング90が加締められることで、電磁シールド部材25の末端部がシールドパイプ50の外周面に直接接触した状態で固着されている。これにより、電磁シールド部材25とシールドパイプ50との電気的導通が安定的に確保される。この結果、電磁シールド部材25は、シールドパイプ50及び筒状部材43を通じてアース接続される。
【0065】
カシメリング90の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。本実施形態のカシメリング90は、アルミニウム系の金属材料から構成されている。カシメリング90は、例えば以下のように形成することができる。まず、シールドパイプ50の外径よりも内径が大きく形成された円筒状のアルミニウム製パイプを、シールドパイプ50の後端部に外挿された電磁シールド部材25の外側に配置する。すなわち、アルミニウム製パイプを、シールドパイプ50及び電磁シールド部材25と径方向に重なるように、電磁シールド部材25の外側に配置する。続いて、金型等を用いて、アルミニウム製パイプを周方向の略全周にわたって径方向内側に押圧する。これにより、アルミニウム製パイプが縮径されるように塑性変形されてカシメリング90が形成される。
【0066】
本実施形態では、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とが、互いに同種の金属材料によって構成されている。具体的には、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とが全てアルミニウム系の金属材料によって構成されている。すなわち、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とが全てアルミニウム又はアルミニウム合金によって構成されている。このため、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90との接続部分に水が付着した場合であっても、異種金属接触腐食(つまり、電食)が発生することを好適に抑制できる。
【0067】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)ワイヤハーネス10は、芯線21と芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有する電線20と、絶縁被覆22の外周を包囲する電磁シールド部材25と、芯線21の端部と電気的に接続された接続端子41とを有する。ワイヤハーネス10は、接続端子41を保持する合成樹脂製のコネクタハウジング40と、コネクタハウジング40の内部からコネクタハウジング40の外部に突出して延びる筒状のシールドパイプ50とを有する。ワイヤハーネス10は、コネクタハウジング40の外部に配置された部分のシールドパイプ50の外周面に電磁シールド部材25の端部を電気的に接続した状態で固定するカシメリング90を有する。電線20は、電磁シールド部材25から露出された状態でシールドパイプ50の内部に挿入されている。電線20の端部は、シールドパイプ50を通じてコネクタハウジング40の内部に挿入されて接続端子41と接続されている。
【0068】
この構成によれば、コネクタハウジング40の内部からコネクタハウジング40の外部に突出して延びるシールドパイプ50のうちコネクタハウジング40の外部に配置された部分の外周面に対して電磁シールド部材25の端部が接続される。このとき、電線20は、電磁シールド部材25から露出された状態でシールドパイプ50の内部に挿入され、そのシールドパイプ50を通じてコネクタハウジング40の内部に挿入される。すなわち、電磁シールド部材25の端部は、コネクタハウジング40に対する電線20の挿入方向とは反対方向に突出するシールドパイプ50の外周面に接続される。このため、シールドパイプ50の外周面に電磁シールド部材25を接続する際に、電磁シールド部材25を折り返さずにシールドパイプ50の外周面に接続することができる。これにより、電磁シールド部材25を折り返すためのスペースが不要となるため、電線20の端部の体格が大型化することを抑制できる。
【0069】
(2)電磁シールド部材25の端末処理をコネクタハウジング40の外部で行うようにした。この構成によれば、電磁シールド部材25の構造として、各電線20を個別に被覆する構造や複数の電線20を一括して被覆する構造を自由に選択することができる。この結果、電磁シールド部材25の設計自由度を向上させることができ、ひいてはワイヤハーネス10の設計自由度を向上させることができる。
【0070】
(3)従来のワイヤハーネスでは、中子に外挿されたシールドリングに対してシールド部材を加締めた後に、中子が引き抜かれるため、その中子を引き抜いた後に電線が曲げられると、シールドリングの位置ずれが発生しやすい。すなわち、コネクタハウジング内においてシールドリングの位置ずれが発生しやすい。すると、例えばシールドリングの大径部とコネクタの接触端子との電気的接触が確保しにくくなるという問題が生じる。
【0071】
これに対し、本実施形態のワイヤハーネス10では、電磁シールド部材25の端末処理をコネクタハウジング40の外部で完結するようにした。この構成によれば、電磁シールド部材25の端末処理、つまりシールドパイプ50を通じたアース接続を行った後に、電線20の曲げ加工を行うことができるため、その電線20の曲げ加工の影響を受けにくい。すなわち、電磁シールド部材25の末端部をシールドパイプ50に接続した後に、電線20に対して曲げ加工を行ったとしても、電磁シールド部材25とシールドパイプ50との電気的接触を好適に確保することができる。
【0072】
(4)電磁シールド部材25の外周を密着状態で被覆するシースを省略したシースレス構造を採用した。この構成によれば、シースを省略したことにより、ワイヤハーネス10の細径化及び軽量化に寄与することができる。また、シースを省略したため、電磁シールド部材25をシールドパイプ50に接続する際に、電磁シールド部材25を外部に露出させるためにシースを剥ぐ工程が必要ない。このため、電磁シールド部材25をシールドパイプ50に電気的に接続する際の作業性を向上させることができる。
【0073】
(5)シールドパイプ50の内周面に密着するとともに、電線20の外周面に密着するシール部材62を設けた。これにより、シールドパイプ50の内部空間を通じて水等の液体がコネクタハウジング40の内部に浸入することを好適に抑制できる。
【0074】
(6)シールドパイプ50の内側にシール部材62を設けるようにした。このため、シールドパイプ50の外側に防水構造を設ける場合に比べて、ワイヤハーネス10の体格が大型化することを抑制できる。
【0075】
(7)シールドパイプ50の後端部に、シール部材62の抜け止めを行うリテーナ80を装着した。このリテーナ80により、シール部材62がシールドパイプ50から脱離することを抑制できる。さらに、シールドパイプ50のうちシール部材62よりもコネクタハウジング40の内部側の内周面に、シールドパイプ50の径方向内側に突出する突出部51を設けた。この突出部51により、シール部材62がコネクタハウジング40の内部側に移動することを抑制できる。これらにより、シール部材62による防水性能を好適に維持することができる。
【0076】
(8)シールドパイプ50は金属製であり、リテーナ80は合成樹脂製である。リテーナ80は、シールドパイプ50の内側に嵌合された本体部81と、本体部81の外周面に形成された被覆部82とを有する。被覆部82は、シールドパイプ50の端縁を径方向外側から被覆するように形成されている。電磁シールド部材25の端部は、被覆部82の外周を包囲するように形成されている。
【0077】
この構成によれば、リテーナ80の本体部81によって、金属製のシールドパイプ50の開口端のエッジから電線20を保護することができる。また、リテーナ80の被覆部82によって、金属製のシールドパイプ50の端縁のエッジから電磁シールド部材25を保護することができる。
【0078】
(9)シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とが、互いに同種の金属材料によって構成される。この構成によれば、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90との接続部分に水が付着した場合であっても、電食が発生することを好適に抑制できる。これにより、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90との接続部分の構造を、その接続部分を覆うゴム製の被覆カバー等を設けない非防水構造とすることができる。この結果、ワイヤハーネス10の大型化を抑制でき、部品点数の増加を抑制できる。
【0079】
(10)シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とがアルミニウム系の金属材料で構成されるため、ワイヤハーネス10全体の軽量化を図ることができる。
【0080】
(11)電磁シールド部材25を筒状の編組部材とした。ここで、編組部材は、細い金属素線が編み込まれて構成されているため、その表面積が大きく電食が生じやすい。さらに、各金属素線が細い金属線であるため、電食により金属素線が断線しやすく、シールド性能が著しく低下するおそれがある。これに対し、本実施形態のワイヤハーネス10では、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とを同種の金属材料によって構成することにより、電磁シールド部材25における電食の発生を抑制した。これにより、電食による電磁シールド部材の金属素線の断線を好適に抑制でき、シールド性能の低下を好適に抑制できる。
【0081】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0082】
・上記実施形態のコネクタハウジング40の内部構造は特に限定されない。例えば、樹脂キャップ42を省略してもよい。また、筒状部材43を省略してもよい。この場合には、例えばコネクタC1が接続される電気機器の金属製筐体や相手コネクタの接触端子等を通じてシールドパイプ50がアース接続される。
【0083】
・上記実施形態のシールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とを全て銅系の金属材料によって構成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とを、互いに同種の金属材料によって構成するようにした。これに限らず、シールドパイプ50と電磁シールド部材25とカシメリング90とを、互いに異なる金属材料によって構成するようにしてもよい。
【0084】
・上記実施形態のリテーナ70の構造は特に限定されない。例えば、リテーナ70を、コネクタハウジング40の内側に嵌合する構造に変更してもよい。
・上記実施形態のリテーナ70を省略してもよい。
【0085】
・上記実施形態のリテーナ80の構造は特に限定されない。例えば、鍔部84を省略してもよい。また、被覆部82を省略してもよい。この場合には、例えば、リテーナ80が本体部81のみによって構成される。例えば、本体部81を省略してもよい。この場合には、例えば、リテーナ80が壁部83及び鍔部84のみによって構成される。
【0086】
・上記実施形態のリテーナ80を省略してもよい。
・上記実施形態では、突出部51を、シールドパイプ50の内周面の周方向全周にわたって形成するようにした。これに限らず、例えば、突出部51を、シールドパイプ50の内周面の周方向の一部のみに形成するようにしてもよい。この場合の突出部51は、例えば、エンボス加工などによって形成することができる。
【0087】
・上記実施形態の突出部51を省略してもよい。
・上記実施形態では、シール部材62を、シールドパイプ50の長さ方向においてカシメリング90と重なる位置に設けるようにした。これに限らず、シール部材62を、シールドパイプ50の長さ方向においてカシメリング90と重ならない位置に設けるようにしてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、シールドパイプ50の外周面に電磁シールド部材25の端部を電気的に接続した状態で固定する固定部材としてカシメリング90を用いたが、これに限定されない。例えば、カシメリング90の代わりに、金属バンド、樹脂製の結束バンドや粘着テープ等を固定部材として用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
C1 コネクタ
10 ワイヤハーネス
11 インバータ
12 高圧バッテリ
20 電線
21 芯線
22 絶縁被覆
25 電磁シールド部材
30 外装部材
40 コネクタハウジング
40X 挿通孔
41 接続端子
42 樹脂キャップ
43 筒状部材
50 シールドパイプ
51 突出部
52 溝部
61 シール部材(第2シール部材)
62 シール部材(第1シール部材)
70 リテーナ(第2リテーナ)
71 筒部
72 壁部
73 被覆部
80 リテーナ(第1リテーナ)
81 本体部
81X 貫通孔
82 被覆部
83 壁部
84 鍔部
90 カシメリング(固定部材)
図1
図2