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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/15 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
H01R13/15 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019207367
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021028903
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2019148062
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】井田 恭平
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03568139(US,A)
【文献】特開2002-151176(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01998405(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01729372(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0161980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/15
H01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されて、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、
前記第1周壁部と前記第2周壁部を相互に接近する方向に付勢する付勢手段と、
前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方が、断面円弧状の内面を有し、該内面に設けられて該内面の周方向に延出しつつ径方向内方に突出する円弧状突部と、を含み、
前記第1周壁部と前記第2周壁部は、前記付勢手段の付勢力に抗した離隔変位が可能であり、
前記第1周壁部と前記第2周壁部の両方が、断面円弧状の内面を有し、
前記第1周壁部と前記第2周壁部の一方の前記内面に、前記円弧状突部が設けられており、
前記第1周壁部と前記第2周壁部の他方の前記内面に、該内面の軸方向に延出しつつ径方向内方に突出する線状接触部が、周方向に離隔した複数箇所に設けられている雌端子。
【請求項2】
前記第1周壁部と前記第2周壁部の他方の曲率が、前記雄端子の前記柱状接続部の外周面の曲率よりも小さくされている請求項に記載の雌端子。
【請求項3】
前記円弧状突部が、前記内面の周長の2/3以上の周方向長さで前記周方向に延出している請求項1または請求項に記載の雌端子。
【請求項4】
前記筒状接続部の雄端子挿入口側に面する前記円弧状突部の側面が、断面円弧状である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の雌端子。
【請求項5】
前記第1周壁部と前記第2周壁部の相互に対向する一対の第1周端部には、相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部がそれぞれ連接されており、
前記付勢手段が前記一対の重ね板部を相互に重ね合せる方向に付勢することにより、前記第1周壁部と前記第2周壁部を相互に接近する方向に付勢されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の雌端子。
【請求項6】
前記筒状接続部が一端側に設けられ、他端側に電線接続部が設けられた雌端子金具を含んでおり、前記雌端子金具に前記付勢手段が保持されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部を有する雌端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ピン端子等と呼ばれる略円柱状の柱状接続部を有する雄端子と、スリーブ端子等と呼ばれる略円筒状の筒状接続部を有する雌端子との雌雄型端子による電気的な接続構造が用いられている。そして、雌端子の筒状接続部の内部には、雌雄端子間の接触状態を保持する構造が採用されている。例えば、特開2016-24901号公報(特許文献1)に記載の雌端子では、筒状接続部の内部に、先端開口部から後方に折り返された弾性接触片が設けられている。この弾性接触片の弾性復帰力により、弾性接触片の端部が雄端子の柱状接続部に押圧されて、雄端子と雌端子が接触状態に保持されて電気的接続が図られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-24901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来構造の雌端子においては、弾性接触片の端部が雄端子の柱状接続部に押圧されることにより、雄端子と雌端子が接触状態に保持されるようになっている。そのため、弾性接触片の雄端子側への圧接力の設定自由度が小さく、雌雄端子間を必要な大きさの接圧で当接させることが難しい場合があった。さらに、弾性接触片の端部側が雄端子側に圧接されることから、雄端子と雌端子の接触面積を大きく安定して確保することが難しいという問題を内在していた。
【0005】
そこで、柱状接続部を有する雄端子と筒状接続部を有する雌端子の間の圧接力の設定自由度が大きく、雌雄端子間の接触面積を大きく安定して確保することができる、新規な構造の雌端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の雌端子は、相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されて、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、前記第1周壁部と前記第2周壁部を相互に接近する方向に付勢する付勢手段と、前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方が、断面円弧状の内面を有し、該内面に設けられて該内面の周方向に延出しつつ径方向内方に突出する円弧状突部と、を含み、前記第1周壁部と前記第2周壁部は、前記付勢手段の付勢力に抗した離隔変位が可能であり、前記第1周壁部と前記第2周壁部の両方が、断面円弧状の内面を有し、前記第1周壁部と前記第2周壁部の一方の前記内面に、前記円弧状突部が設けられており、前記第1周壁部と前記第2周壁部の他方の前記内面に、該内面の軸方向に延出しつつ径方向内方に突出する線状接触部が、周方向に離隔した複数箇所に設けられている雌端子である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、雄端子の柱状接続部に対する雌端子の筒状接続部の圧接力の設定自由度が大きく、接触面積を大きく安定して確保することができる雌端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1にかかる雌端子を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す雌端子の平面図である。
図3図3は、図1に示す雌端子の底面図である。
図4図4は、図2におけるIV-IV断面図である。
図5図5は、図4に示す雌端子金具の断面図であって、一対の重ね板部が付勢手段によって付勢される前の状態を示す図である。
図6図6は、図2におけるVI-VI断面拡大図である。
図7図7は、実施形態2にかかる雌端子を示す斜視図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII断面図である。
図9図9は、図8に示す雌端子金具の断面図であって、一対の重ね板部が付勢手段によって付勢される前の状態を示す図である。
図10図10は、図7におけるX-X断面拡大図である。
図11図11は、実施形態3にかかる雌端子を示す斜視図である。
図12図12は、図11におけるXII-XII断面図である。
図13図13は、図12に示す雌端子金具の断面図であって、一対の重ね板部が付勢手段によって付勢される前の状態を示す図である。
図14図14は、実施形態4にかかる雌端子を示す斜視図である。
図15図15は、図14に示す雌端子の平面図である。
図16図16は、図15におけるXVI-XVI断面図である。
図17図17は、図15におけるXVII-XVII断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の雌端子は、
(1)相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されて、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部と、前記第1周壁部と前記第2周壁部を相互に接近する方向に付勢する付勢手段と、前記第1周壁部と前記第2周壁部の少なくとも一方が、断面円弧状の内面を有し、該内面に設けられて該内面の周方向に延出しつつ径方向内方に突出する円弧状突部と、を含み、前記第1周壁部と前記第2周壁部は、前記付勢手段の付勢力に抗した離隔変位が可能であり、前記第1周壁部と前記第2周壁部の両方が、断面円弧状の内面を有し、前記第1周壁部と前記第2周壁部の一方の前記内面に、前記円弧状突部が設けられており、前記第1周壁部と前記第2周壁部の他方の前記内面に、該内面の軸方向に延出しつつ径方向内方に突出する線状接触部が、周方向に離隔した複数箇所に設けられている雌端子である。
【0010】
本開示の雌端子によれば、雄端子の柱状接続部と導通接続される筒状接続部が、相互に対向配置される第1周壁部と第2周壁部を含んで構成されている。そして、第1周壁部と第2周壁部が、付勢手段により相互に接近する方向に付勢されており、付勢力に抗した相互の離隔変位が可能とされている。したがって、雌端子の筒状接続部に雄端子の柱状接続部が圧入される際には、付勢手段の付勢力に抗して第1周壁部と第2周壁部が相互に離隔変位されて、柱状接続部の筒状接続部への圧入が許容される。雄端子の柱状接続部の圧入後には、雌端子の筒状接続部の第1周壁部と第2周壁部が付勢手段の付勢力により相互に接近方向に付勢された状態に維持される。そのため、雌雄端子間の圧接状態を安定して保持することができる。特に、雄端子の柱状接続部に対する雌端子の筒状接続部の圧接力は、第1周壁部と第2周壁部を接近方向に付勢する付勢手段を調整することで任意に設定可能であることから、雌雄端子間の圧接力を大きな自由度をもって設定することができる。
【0011】
加えて、第1周壁部と第2周壁部の少なくとも一方が、断面円弧状の内面を有し、該内面には、該内面の周方向に延出しつつ径方向内方に突出する円弧状突部が設けられている。それゆえ、雌端子の筒状接続部に圧入された雄端子の柱状接続部の外周面の広い範囲に高い接圧で円弧状突部を圧接させることができ、雌雄端子間の接触面積を広く安定して確保することができる。特に雄端子が円柱状の接続部を有する場合は一層広く安定した接触面積を確保できる。さらに、第1周壁部と第2周壁部の少なくとも一方の内面に、該内面の周方向に延出しつつ径方向内方に突出する円弧状突部が設けられていることから、雌端子の筒状接続部へ雄端子の柱状接続部を挿入する動作中に、円弧状突部により挿入力のピークが発生する。これにより、作業者は、雄端子が円弧状突部を越えて奥方に挿入された際に、挿入力のピークを脱して挿入完了位置まで達したことを感じることができ、雄端子と雌端子が正規嵌合されたことを検知することが可能となる。また、本態様では、第1周壁部と第2周壁部の内面の一方に円弧状突部が設けられているとともに、第1周壁部と第2周壁部の他方の内面に突設された軸方向に延出する線状接触部が周方向で離隔した複数箇所で雄端子の柱状接続部に線接触して圧接されている。これにより、電線から雄端子に揺動が伝達された場合でも、雄端子の揺動変位を、複数の線状接触部への雄端子の当接により阻止することができる。それゆえ、第1周壁部と第2周壁部の一方の円弧状突部により、雄端子の柱状接続部の外周面の広い範囲に高い接圧で圧接しつつ、第1周壁部と第2周壁部の他方の複数の線状接触部により雄端子の揺動変位を阻止することができ、雄端子への接触面積の増大と雄端子の安定した保持を両立して達成できる。なお、第1周壁部と第2周壁部の一方の内面には、円弧状突部から軸方向に離隔した領域に複数の線状接触部が設けられていてもよく、第1周壁部と第2周壁部の他方の内面には、複数の線状接触部から軸方向に離隔した領域に円弧状突部が設けられていてもよい。
【0014】
2)前記第1周壁部と前記第2周壁部の他方の曲率が、前記雄端子の前記柱状接続部の外周面の曲率よりも小さくされていることが好ましい。第1周壁部と第2周壁部の他方の曲率が、雄端子の柱状接続部の外周面の曲率よりも小さくされていることにより、複数の線状接触部を確実に雄端子の柱状接続部に当接させることができ、線状接触部による一層安定した雄端子の揺動変位阻止効果が得られるからである。
【0015】
)前記円弧状突部が、前記内面の周長の2/3以上の周方向長さで前記周方向に延出していることが好ましい。雄端子の柱状接続部の外周面に対して、雌端子の筒状接続部を充分に広い接触面積で安定して接触させることができるからである。
【0016】
)前記筒状接続部の雄端子挿入口側に面する前記円弧状突部の側面が、断面円弧状であることが好ましい。雄端子の円柱状接触部の雌端子の筒状接続部への挿入抵抗の急激な上昇を抑えられ、挿入容易性の向上を図ることができる。なお、好ましくは、円弧状突部の両方の側面が断面円弧状であることが好ましい。雌端子の筒状接続部の方向性をなくすことができるからである。
【0017】
)前記第1周壁部と前記第2周壁部の相互に対向する一対の第1周端部には、相互に離隔して外方に突出する一対の重ね板部がそれぞれ連接されており、前記付勢手段が前記一対の重ね板部を相互に重ね合せる方向に付勢することにより、前記第1周壁部と前記第2周壁部を相互に接近する方向に付勢されていることが好ましい。第1周壁部と第2周壁部のそれぞれの周端部に重ね板部をそれぞれ突設させて、相互に重ね合せる方向に付勢すればよいことから、付勢手段を装着する部位を安定して確保することができる。その結果、付勢手段の選択自由度を向上させることができる。
【0018】
)前記筒状接続部が一端側に設けられ、他端側に電線接続部が設けられた雌端子金具を含んでおり、前記雌端子金具に前記付勢手段が保持されていることが好ましい。雌端子金具に筒状接続部と電線接続部が一体的に設けられていることから、雌端子の部品点数の削減を図ることができる。さらに、付勢手段も雌端子金具に保持されていることから、雌端子の取扱性の向上を図りつつ雌雄端子間の圧接力を安定して提供することができる。
【0019】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の雌端子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、図1から図6を参照しつつ説明する。図1から図6に、本開示の実施形態1に従う雌端子10が示されている。雌端子10は、相互に対向配置される第1周壁部12と第2周壁部14を含む雌端子金具16を有している。第1周壁部12と第2周壁部14の内面18により、雌端子金具16には、略円柱状のピン形状を有する雄端子20の円柱状接続部22と導通接続される筒状接続部24が形成されている。なお、以下では、Z方向を上方、Y方向を幅方向、X方向を長さ方向として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0021】
<第1周壁部12と第2周壁部14>
図1および図4に示されているように、雌端子金具16は、帯状の金属平板26を所定の形状にプレス加工してなる。金属平板26を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属を適宜に選択することができる。本実施形態では、帯状の金属平板26は、長さ方向の一端部28が他端部30(図4中、左側)上に向かって2つ折り状に折り重ねられている。一端部28が他端部30上に折り重ねられた状態で重ね合わせ面の長さ方向の中間部分が相互に離隔する方向に向かって湾曲されることにより、略円筒状の筒状接続部24が形成されている。筒状接続部24は、幅方向両側に開口し、雄端子20の最大外径寸法:tよりも小さな最大内径寸法:rを有している。すなわち、筒状接続部24は、雄端子20が圧入されるように構成されている。
【0022】
図1図6に示されているように、第1周壁部12と第2周壁部14の外面の幅方向中央部にはいずれも、平面視あるいは底面視で矩形断面形状の凹所32が設けられている。凹所32によって、第1周壁部12と第2周壁部14の内面18にはいずれも、長さ方向断面(図4参照)および幅方向断面(図6参照)において、円弧状断面で径方向内方に向かって突出する円弧状突部34が形成されている。すなわち、第1周壁部12と第2周壁部14の両方が、断面円弧状の内面18を有しており、内面18には、内面18の周方向に延出しつつ径方向内方に向かって突出する円弧状突部34が設けられている。例えば、図5に示すように、円弧状突部34は、内面18の全周長:Lの2/3以上の周方向長さ:L1で周方向に延出している。なお、本実施形態では、L1/Lはおよそ4/5である。加えて、図6に示すように、筒状接続部24の雄端子挿入口側に面する円弧状突部34の両側面36,36が、断面円弧状である。それゆえ、筒状接続部24への雄端子挿入口を左右いずれの側に設定しても、挿入抵抗の変化を同様にすることができ、雌端子10の方向性を低減することができる。なお、図6では、雄端子挿入口側は左側であるが、雄端子20は右側からの挿入も可能である。
【0023】
相互に対向配置される第1周壁部12と第2周壁部14により、筒状接続部24が形成されている。これにより、例えば図5に示すように、第1周壁部12と第2周壁部14の相互に対向する一対の第1周端部38,38には、相互に離隔して外方(図5中、左方)に突出する一対の重ね板部40a,40bがそれぞれ連接されている。また、一対の第1周端部38,38に対して第1周壁部12と第2周壁部14の径方向で対向する周方向の他の箇所には一対の第2周端部42,42が形成されている。一対の第2周端部42,42には、一対の第2周端部42,42に連接して外方(図5中、右方)に向かって突出する一対の延出板部44,44が設けられている。一対の延出板部44,44が相互に重ね合されることにより電線接続部46が構成されている。
【0024】
<ケース48>
一対の重ね板部40a,40bに対してケース48が組み付けられている(例えば、図1参照)。ケース48は、プレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等を用いて形成されている。ケース48は、雌端子金具16の一対の重ね板部40a,40bの一方の重ね板部40aの上方に収容空所50が配設されるように、雌端子金具16に対して組み付けられている。より詳細には、組み付け状態において、ケース48は、収容空所50を介して一対の重ね板部40a,40bの一方の重ね板部40aに対向する略矩形平板形状の対向壁52を有している。また、ケース48は、対向壁52の長さ方向の両側縁部から下方に向かって延び出す略矩形平板状の一対の壁部54,54を有しており、対向壁52と一対の壁部54,54によって収容空所50が構成されている。さらに、ケース48には、一対の壁部54,54の延出端部の幅方向両側において、下方に向かってU字状に突出し重ね板部40bの下面に係合する係合枠体56が設けられている。また、係合枠体56の幅方向両側には、幅方向内方に向かってL字状に突出し重ね板部40bの幅方向両側に形成された係合凹部58に係合する係合突起60が設けられている。さらに、一対の壁部54,54の延出端部の両側縁部には、対向する壁部54に向かって突出する矩形平板状のコイルばね保持壁62が設けられている(例えば図1参照)。
【0025】
ケース48は、収容空所50に対して付勢手段を構成するばね部材である金属製のコイルばね64が収容配置された状態で、一対の重ね板部40a,40bの一方の重ね板部40a上に保持されている(例えば、図1参照)。すなわち、コイルばね64をケース48の収容空所50内に配置した状態で、ケース48が、雌端子金具16の一対の重ね板部40a,40bの一方の重ね板部40aの上方に載置されるように配置される。次に、ケース48の係合突起60を、重ね板部40bの側縁部に設けられた係合凹部58に係合するように、幅方向内方に折り曲げる。これにより、ケース48の一対の壁部54,54の延出端部が、一対の重ね板部40a,40bの一方の重ね板部40a上に載置された状態で、一対の重ね板部40a,40bの他方の重ね板部40bに固定される。すなわち、ケース48に収容されたコイルばね64が間接的に雌端子金具16に保持される。この状態で、一対の重ね板部40a,40bの一方の重ね板部40aとケース48の対向壁52との間でコイルばね64が圧縮状態に保持されている。この圧縮状態に保持されているコイルばね64によって、一対の重ね板部40a,40bが相互に接近する方向(図4中、矢印の方向)に向かって付勢されている。すなわち、付勢手段であるコイルばね64が一対の重ね板部40a,40bを相互に重ね合せる方向に付勢することにより、第1周壁部12と第2周壁部14は相互に接近する方向に付勢されコイルばね64の付勢力に抗した離隔変位が可能となっている。
【0026】
<電線接続部46>
一方、一対の延出板部44,44は、抵抗溶接等の公知の任意の手段を用いて相互に固着されて一体化されている。なお、一対の延出板部44,44は相互に重ね合せた状態で電線接続部46を構成しており、電線接続部46に対して電線66の芯線68を溶接する際に同時に相互に溶接することにより、作業性の効率化を図ることができる。この結果、雌端子金具16は、電線接続部46において、電線66の芯線68が導通接続される。
【0027】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、第1周壁部12と第2周壁部14の内面18により、雌端子金具16には、略円柱状のピン形状を有する雄端子20の円柱状接続部22と導通接続される筒状接続部24が構成されている。しかも、付勢手段であるコイルばね64により第1周壁部12と第2周壁部14は相互に接近する方向に付勢され、コイルばね64の付勢力に抗した離隔変位が可能となっている。すなわち、雌端子10の筒状接続部24に雄端子20の円柱状接続部22が圧入される際に、コイルばね64の付勢力に抗して第1周壁部12と第2周壁部14が相互に離隔変位されて、雄端子20の雌端子10への圧入が許容されている。さらに、圧入後には、雌端子10の筒状接続部24を構成する第1周壁部12と第2周壁部14がコイルばね64の付勢力により相互に接近方向に付勢された状態に維持される。それゆえ、雌端子10と雄端子20間の圧接状態を安定して維持できる。なお、雌端子10と雄端子20間の圧接力は、第1周壁部12と第2周壁部14を接近方向に付勢するコイルばね64を調整することで任意に設定可能であることから、雌端子10と雄端子20間の圧接力を大きな自由度をもって設定することができる。
【0028】
また、第1周壁部12と第2周壁部14の両方が、断面円弧状の内面18を有しており、内面18には、内面18の周方向に延出しつつ径方向内方に向かって突出する円弧状突部34が設けられている。それゆえ、雌端子10の筒状接続部24を構成する第1周壁部12と第2周壁部14間に圧入された雄端子20の円柱状接続部22の外周面を、広い範囲かつ高い接圧で円弧状突部34に圧接させることができる。これにより、雌端子10と雄端子20間の接触面積を広くかつ安定して確保することができる。しかも、本実施形態では、円弧状突部34は、内面18の全周長:Lのおよそ4/5の周方向長さ:L1で周方向に延出している。それゆえ、雄端子20の円柱状接続部22の外周面に対して、第1周壁部12と第2周壁部14の内面18を充分に広い接触面積で安定して接触させることができる。
【0029】
さらに、雌端子10の筒状接続部24を構成する第1周壁部12と第2周壁部14の雄端子挿入口側に面する円弧状突部34の側面36が、断面円弧状とされている。これにより、雄端子20の円柱状接続部22が挿入される筒状接続部24の最大内径寸法:rが挿入方向に向かって徐々に縮径されていることから、従来の如き円柱状接続部を小径の筒状接続部へ圧入する際の挿入抵抗の急激な上昇を抑えられ、挿入容易性の向上を図ることができる。なお、本実施形態では、筒状接続部24の雄端子挿入口側に面する円弧状突部34の両側面36,36が断面円弧状とされていることから、雌端子10の筒状接続部24の幅方向の挿入方向性をなくすことができる。また、円弧状突部34,34が設けられていることから、図6に示すように、雄端子20の円柱状接続部22が雌端子10の筒状接続部24に挿入する動作中においては、作業者は、はじめに円弧状突部34,34間へ雄端子20の円柱状接続部22を挿し入れることで挿入力のピークを実感する。その後、円弧状突部34,34を越えて奥方(図6中、右側)に円柱状接続部22をさらに押し込むことで、挿入力のピークを脱して挿入完了位置まで達したことを感じることができ、雄端子20と雌端子10が正規嵌合されたことを検知することができるという、さらなる効果も発現される。
【0030】
加えて、第1周壁部12と第2周壁部14の相互に対向する一対の第1周端部38,38から外方に一対の平板状の重ね板部40a,40bがそれぞれ突設させて、相互に重ね合せる方向に付勢されている。この際、一対の平板状の重ね板部40a,40bが重ね合された上に付勢手段であるコイルばね64が装着されていることから、コイルばね64を装着する部位を安定して確保することができ、コイルばね64の選択自由度を向上させることができる。
【0031】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0032】
(1)上記実施形態1では、付勢手段としてケース48に収容されたコイルばね64を例にとって説明を行ったが、これに限定されない。図7~10に示す本開示の実施形態2の雌端子70のように、付勢手段がクリップ72によって構成されていてもよい。具体的には、クリップ72は、プレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えばばね鋼やステンレス鋼,黄銅,リン青銅,ベリリウム銅等の帯板を用いて形成されている。クリップ72は、矩形平板状の連結板部74と、連結板部74の両側縁部から相互に接近する方向に突出する矩形平板状の一対の挟持板部76,76を有している。一対の挟持板部76,76の突出端部が、相互に離隔する方向にわずかに屈曲されている。一対の挟持板部76,76が突出端部において最も接近した突出端部間の隙間が、挿込口78とされている。挿込口78の略中央部において、一対の挟持板部76,76には、板厚方向に矩形断面形状のロック穴80が貫設されている。
【0033】
また、一対の重ね板部40a,40bの中央部分には、重ね板部40aの上面および重ね板部40bの下面のそれぞれにおいて、略三角断面形状を有するロック爪82が外方に向かって突設されている。さらに、重ね板部40aの突出方向の先端部(図8中、左側)には、幅方向両側端部が重ね合せ方向と反対側である上方に向かって屈曲されて、略矩形平板状の一対の保護壁部84,84が設けられている。また、重ね板部40bの突出方向の先端部(図8中、左側)には、幅方向両側端部が重ね合せ方向と反対側である下方に向かって屈曲されて、同様の略矩形平板状の一対の保護壁部84,84が設けられている。加えて、一対の延出板部44,44の延出端部は、電線接続部86に連接されている。電線接続部86において、電線66の芯線68が公知の圧着技術を用いて導通接続されている。
【0034】
クリップ72が、雌端子金具16の一対の重ね板部40a,40bの突出方向の先端部(図8中、左側)に対して、挿込口78から圧入される。この際、一対の挟持板部76,76が相互に離隔する方向に弾性変形することで、一対の重ね板部40a,40bに設けられたロック爪82を乗り越える。その後、一対の挟持板部76,76が弾性復帰することにより、一対の挟持板部76,76に設けられたロック穴80にロック爪82がロック嵌合されて、クリップ72が雌端子金具16に離脱不能に保持されている。上記実施形態1に比して、ロック爪82をロック穴80にロック嵌合するという簡単な構造により、雌端子金具16の一対の重ね板部40a,40bに対して、クリップ72を保持させることができる。これにより、付勢手段であるクリップ72の構造を簡素化して雌端子10の小型化を図ることができる。この結果、一対の重ね板部40a,40bの突出方向の先端部が、クリップ72の一対の挟持板部76,76間で挟持されている。また、一対の重ね板部40a,40bが、一対の挟持板部76,76の弾性復元力により、一対の挟持板部76,76間で相互に重ね合された状態に付勢されている。さらに、一対の保護壁部84,84により、クリップ72の一対の挟持板部76,76の幅方向両側が保護されている。しかも、一対の保護壁部84,84は、クリップ72を一対の重ね板部40a,40bに装着する際にガイドとしての機能も果たすことができる。
【0035】
(2)上記実施形態1,2では、雌端子金具16の長さ方向の先端部側(例えば図4図8中、左端部側)に付勢手段であるコイルばね64やクリップ72が取り付けられており、長さ方向の基端部側(例えば図4図8中、右端部側)に電線接続部46,86が設けられていたが、これに限定されない。図11~13に示す本開示の実施形態3の雌端子88のように、雌端子金具90が、長さ方向の一端側である先端部側に第1周壁部92と第2周壁部94の内面18からなる筒状接続部96が設けられ、長さ方向の中央部に付勢手段であるコイルばね64やクリップ72が取り付けられており、長さ方向の他端側である基端部側に電線接続部46が設けられていてもよい。実施形態3においても、上記実施形態1,2と同様に、雌端子金具90に筒状接続部96と電線接続部46が一体的に設けられており、雌端子88の部品点数の削減を図ることができる。また、付勢手段であるコイルばね64も雌端子金具90に保持されていることから、雌端子88の取扱性の向上を図りつつ雌端子88と雄端子20間の圧接力を安定して提供することができる。加えて、実施形態3のように、第1周壁部92と第2周壁部94の一方のみが、円弧状の内面18を有し、第1周壁部92のみに円弧状突部34が突設されていてもよい。さらに、実施形態3では、雌端子金具90が、一対の第1周端部38,38に連接して外方(図1中、右方)に突出する一対の重ね板部40a,40bが設けられており、一対の重ね板部40a,40b上にケース48に収容されたコイルばね64が配設保持されている。一対の重ね板部40a,40bの突出端部からそれぞれさらに外方(図12中、右方)に延び出す一対の延出板部100,100をさらに含んでおり、一対の延出板部100,100が相互に重ね合されており、例えば電線66の芯線68を電線接続部46に溶接する際に、一対の延出板部100,100も相互に固着されて一体化されている。しかも、雌端子金具90が、筒状接続部24の周方向の他の一か所において、軸方向全長に亘って延びる一対の第2周端部98,98が設けられており、一対の第2周端部98,98はいずれも自由端とされている。これにより、筒状接続部24に雄端子20が圧入される際に、一対の第2周端部98,98が離隔する方向に変位することにより筒状接続部24が拡径方向に弾性変形して雄端子20の筒状接続部24への圧入が許容されることから、雄端子20の筒状接続部24への挿入力の低減を有利に図ることができるようになっている。
【0036】
(3)上記実施形態1,2では、第1周壁部12と第2周壁部14の両方の内面18に円弧状突部34が設けられていたが、これに限定されない。図14~17に示す本開示の実施形態4の雌端子102のように、第1周壁部104と第2周壁部14の両方が、断面円弧状の内面106,18を有しており、第2周壁部14の内面18に円弧状突部34が設けられており、第1周壁部104の内面106に、内面106の軸方向(図16中、紙面に垂直な方向)に延出しつつ径方向内方に突出する線状接触部108が、周方向に離隔した複数箇所(実施形態4では、2箇所)に設けられていてもよい。ここで、第1周壁部104の内面106の曲率が雄端子20の円柱状接続部22の外周面の曲率よりも小さくされている。これにより、2箇所の線状接触部108を確実に雄端子20の円柱状接続部22に当接させることができる。このように、線状接触部108が周方向で離隔した2箇所で雄端子20の円柱状接続部22に線接触して圧接されていることから、図示しない電線から雄端子20に揺動が伝達された場合でも、揺動による雄端子20の変位を、2箇所の線状接触部108へ雄端子20が当接することにより阻止することができる。それゆえ、第2周壁部14の円弧状突部34によって雄端子20の円柱状接続部22の外周面の広い範囲に高い接圧で圧接しつつ、第1周壁部104の2箇所の線状接触部108により揺動による雄端子20の変位を阻止することができる。その結果、雄端子20への接触面積の増大と雄端子20の安定した保持を両立して達成できる。
【0037】
なお、実施形態4では、第2周壁部14の内面18に円弧状突部34が設けられていたが、円弧状突部34に加えて円弧状突部34から軸方向に離隔した領域に複数の線状接触部108が設けられていてもよい。また、実施形態4では、第1周壁部104の内面106に2つの線状接触部108が設けられていたが、3つ以上の線状接触部108が設けられていてもよいし、線状接触部108に加えて線状接触部108から軸方向に離隔した領域に円弧状突部34が設けられていてもよい。加えて、第1周壁部104の内面106の曲率は線状接触部108の円柱状接続部22への当接が確保されれば必ずしも雄端子20の円柱状接続部22の外周面の曲率よりも小さくされる必要はない。第1周壁部104を多角形断面形状の内面を有するようにすることで、周方向に離隔した複数の線状接触部108を設けるようにしてもよい。
【0038】
(4)上記実施形態1,2,3,4では、第1周壁部12,92,104の周方向位置は、第2周壁部14,94の半径方向に対向する位置であったが、これに限定されない。雌端子の配設領域等の条件により任意に設定することができる。例えば、第1周壁部と第2周壁部が周方向で90°離隔する位置に設けられて、重ね板部40a,40bと延出板部44が互いに直交方向に突出するように構成されていてもよい。
【0039】
(5)上記実施形態1,2,3,4では、筒状接続部24,96の軸方向に直交する方向に電線接続部46,86に固着された電線66が延び出していたが、筒状接続部24,96の軸方向に電線66が延び出すように電線接続部46,86に固着されていてもよい。
【0040】
(6)上記実施形態1,2,3,4では、雄端子20の接続部が円柱状接続部22である例を示したが、これに限定されない。挿入される雄端子の柱状接続部の断面形状が楕円形や多角形や矩形の場合であっても、雌雄端子間の接触面積の安定確保や、圧接力の高い設定自由度の効果を享受できる。
【0041】
(7)上記実施形態1,2,3,4では、筒状接続部24,96の雄端子挿入口側に面する円弧状突部34は断面円弧状であることにより、円弧状突部34の両側面36,36も断面円弧状となっていたが、これに限定されない。すなわち、雄端子挿入側となる円弧状突部34の一方の側面36のみが断面円弧状であってもよい。また、両側面36,36のみが断面円弧状であって突出上面の部分が例えば平面等で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 雌端子(実施形態1)
12 第1周壁部
14 第2周壁部
16 雌端子金具
18 内面
20 雄端子
22 円柱状接続部
24 筒状接続部
26 金属平板
28 一端部
30 他端部
32 凹所
34 円弧状突部
36 側面
38 第1周端部
40a,b 重ね板部
42 第2周端部
44 延出板部
46 電線接続部
48 ケース
50 収容空所
52 対向壁
54 壁部
56 係合枠体
58 係合凹部
60 係合突起
62 コイルばね保持壁
64 コイルばね(付勢手段)
66 電線
68 芯線
70 雌端子(実施形態2)
72 クリップ(付勢手段)
74 連結板部
76 挟持板部
78 挿込口
80 ロック穴
82 ロック爪
84 保護壁部
86 電線接続部
88 雌端子(実施形態3)
90 雌端子金具
92 第1周壁部
94 第2周壁部
96 筒状接続部
98 第2周端部
100 延出板部
102 雌端子(実施形態4)
104 第1周壁部
106 内面
108 線状接触部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17