(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20230405BHJP
H01R 13/6589 20110101ALI20230405BHJP
H01R 13/6599 20110101ALI20230405BHJP
H01R 13/6593 20110101ALI20230405BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01R13/6589
H01R13/6599
H01R13/6593
(21)【出願番号】P 2020000220
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川口 大致
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-103044(JP,A)
【文献】特開2004-327100(JP,A)
【文献】特開平10-125404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01R 13/6593
H01R 13/6589
H01R 13/6599
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、前記電線の端部に設けられるコネクタ部とを含み、前記コネクタ部を含む前記電線からの電磁波の放射を抑制するための電磁シールド構造を有するワイヤハーネスであって、
前記コネクタ部は、一部又は全部を導電性樹脂にて構成若しくは一部に導電性部分を有して構成されたコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の周囲を覆う導電性金属のシールド部材と、前記コネクタ本体部と前記シールド部材との間に介在する導電性弾性部材とを備えるとともに、
前記電線は、チューブ部材にて周囲を覆われてなり、前記チューブ部材は、前記電線の周囲を囲む態様の導電性部分を有する熱収縮シールドチューブを含み、
前記チューブ部材が前記コネクタ本体部の装着部に装着された状態において、前記チューブ部材の前記導電性部分、前記コネクタ本体部、前記導電性弾性部材、及び前記シールド部材が電気的に接続されて構成されている、ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記チューブ部材は、前記コネクタ本体部の装着部の外面側に装着されるものであり、
前記装着部は、前記外面に前記チューブ部材の少なくとも抜け方向に係止可能な第1係止部を有している、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記第1係止部は、前記装着部に環状に設けられている、請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記導電性弾性部材は、前記コネクタ本体部の外面に環状をなして設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記コネクタ本体部と前記シールド部材とは、相対的な着脱を可能とすべく互いに係止及び係止解除が可能な第2係止部を有している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載される電気機器間を電気的に接続するためのワイヤハーネスにおいて、通電の際に比較的大きな電磁波の放射が生じ得る電線には、電磁シールド構造が採られたシールド電線が用いられる。
【0003】
電磁シールド構造の一例としては、電線の周囲を覆うように設けられ、細い金属素線がメッシュ状に編み込まれて構成される編組シールドが周知である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電磁波の放射が懸念される区間に用いるワイヤハーネスでは、電線のみならずコネクタ部においても電磁シールド構造とする必要がある。この場合、コネクタ部の周囲を導電性金属のシールド部材にて覆い、このシールド部材と編組シールド部とを直接又は間接的に互いに電気的に接続して、いずれかの箇所でアース接続することが行われている。
【0006】
しかしながら、編組シールド部は、細い金属素線が編み込まれた構成をなしているため、シールド部材との電気的な接続を図る際、金属素線の編み込みが必要以上にばらけたり、編組シールド部の絶縁被覆の皮剥ぎ作業時に金属素線が切れたりする等、編組シールド部の電気的な接続を図る作業は煩雑である。
【0007】
本開示の目的は、電磁シールド構造を容易に採ることのできるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線の端部に設けられるコネクタ部とを含み、前記コネクタ部を含む前記電線からの電磁波の放射を抑制するための電磁シールド構造を有するワイヤハーネスであって、前記コネクタ部は、一部又は全部を導電性樹脂にて構成若しくは一部に導電性部分を有して構成されたコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の周囲を覆う導電性金属のシールド部材と、前記コネクタ本体部と前記シールド部材との間に介在する導電性弾性部材とを備えるとともに、前記電線は、チューブ部材にて周囲を覆われてなり、前記チューブ部材は、前記電線の周囲を囲む態様の導電性部分を有する熱収縮シールドチューブを含み、前記チューブ部材が前記コネクタ本体部の装着部に装着された状態において、前記チューブ部材の前記導電性部分、前記コネクタ本体部、前記導電性弾性部材、及び前記シールド部材が電気的に接続されて構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電磁シールド構造を容易に採ることのできるワイヤハーネスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態におけるワイヤハーネスを有する車両の模式図である。
【
図2】
図2は、ワイヤハーネスのコネクタ部及びその周辺部の横断面図である。
【
図3】
図3は、ワイヤハーネスのコネクタ部及びその周辺部の縦断面図であり、
図2のI-I断面図である。
【
図4】
図4は、ワイヤハーネスのコネクタ部及びその周辺部を構成する所定部品の平面図である。
【
図5】
図5は、変更例におけるワイヤハーネスのコネクタ部及び周辺部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスは、
[1]電線と、前記電線の端部に設けられるコネクタ部とを含み、前記コネクタ部を含む前記電線からの電磁波の放射を抑制するための電磁シールド構造を有するワイヤハーネスであって、前記コネクタ部は、一部又は全部を導電性樹脂にて構成若しくは一部に導電性部分を有して構成されたコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部の周囲を覆う導電性金属のシールド部材と、前記コネクタ本体部と前記シールド部材との間に介在する導電性弾性部材とを備えるとともに、前記電線は、チューブ部材にて周囲を覆われてなり、前記チューブ部材は、前記電線の周囲を囲む態様の導電性部分を有する熱収縮シールドチューブを含み、前記チューブ部材が前記コネクタ本体部の装着部に装着された状態において、前記チューブ部材の前記導電性部分、前記コネクタ本体部、前記導電性弾性部材、及び前記シールド部材が電気的に接続されて構成されている。
【0012】
上記態様によれば、電線の周囲を覆うチューブ部材は、電線の周囲を囲む態様の導電性部分を有する熱収縮シールドチューブを含み、チューブ部材がコネクタ本体部の装着部に装着されると、チューブ部材の導電性部分、コネクタ本体部、導電性弾性部材、及びシールド部材が電気的な接続状態となる。つまり、編組シールドよりも電気的接続が容易な熱収縮シールドチューブを用いることで、コネクタ部を含むワイヤハーネスの電磁シールド構造を容易に採ることが可能である。
【0013】
[2]前記チューブ部材は、前記コネクタ本体部の装着部の外面側に装着されるものであり、前記装着部は、前記外面に前記チューブ部材の少なくとも抜け方向に係止可能な第1係止部を有していることが好ましい。
【0014】
上記態様によれば、コネクタ本体部の装着部の外面に設けられる第1係止部がチューブ部材の少なくとも抜け方向に係止するため、装着部からチューブ部材の抜けが生じ難くなる。
【0015】
[3]前記第1係止部は、前記装着部に環状に設けられていることが好ましい。
上記態様によれば、コネクタ本体部の装着部の外面に第1係止部が環状に設けられるため、チューブ部材の抜け方向の係止がより確実となり、チューブ部材の抜けがより生じ難くなる。また、チューブ部材と装着部との間が迷路構造となるため、シール性が向上する等の効果が期待できる。
【0016】
[4]前記導電性弾性部材は、前記コネクタ本体部の外面に環状をなして設けられていることが好ましい。
上記態様によれば、コネクタ本体部とシールド部材との間に介在する導電性弾性部材がコネクタ本体部の外面に環状に設けられるため、コネクタ本体部とシールド部材との間のシール性が向上する等の効果が期待できる。
【0017】
[5]前記コネクタ本体部と前記シールド部材とは、相対的な着脱を可能とすべく互いに係止及び係止解除が可能な第2係止部を有していることが好ましい。
上記態様によれば、コネクタ本体部とシールド部材とは、互いに係止及び係止解除が可能な第2係止部により相対的な着脱が可能である。つまり、コネクタ本体部やシールド部材の個別の部品交換を行うことが可能となる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
図1に示す本実施形態の車両10は、例えばハイブリッド車や電気自動車等であり、車載の電気機器としてモータ11と電力供給源12とを備えている。モータ11は、車両10の走行用の例えば3相モータである。電力供給源12は、高圧バッテリやインバータ回路を含み、走行用のモータ11に対して3相の電力供給を行う。モータ11と電力供給源12とは、ワイヤハーネス20により互いに電気的に接続されている。なお、
図1におけるモータ11及び電力供給源12の配置位置やワイヤハーネス20の配策態様等は一例である。
【0020】
ワイヤハーネス20は、
図2、
図3及び
図4に示すように、3相の電力供給に対応すべく例えば3本の電線21a,21b,21cと、電線21a~21cの端部に設けられるコネクタ部22と、電線21a~21cの周囲を覆うシールドチューブ23とを備える。
【0021】
電線21a~21cは、それぞれ導電性の金属素線が複数本束ねられてなる芯線21xと、芯線21xの周囲を覆う絶縁被覆21yとを有している。電線21a~21cは、コネクタ部22に導入される前においては俵積み状をなすのに対し、コネクタ部22内においては徐々に横並びするように分岐されている。電線21a~21cの先端部は、それぞれ絶縁被覆21yが皮剥きされて芯線21x部分が露出されている。露出した芯線21x部分は、コネクタ部22内に配置される接続端子24a,24b,24cの基端部の固定部24xにかしめ固定されて電気的に接続されている。コネクタ部22は、電線21a~21cの一端又は両端、すなわちモータ11側及び電力供給源12側の一方又は両方に設けられている(
図1では両方の態様を図示)。
【0022】
なおここで、電線21a~21cの延びる方向を長手方向(X方向)、電線21a~21cが横並びする方向を幅方向(Y方向)、長手方向及び幅方向と直交する方向を高さ方向(Z方向)とする。以下では、これら各方向を用いて説明する。
【0023】
コネクタ部22は、コネクタ本体部30として電線ホルダ31と端子ハウジング32とを有し、全体として略直方体状をなしている。コネクタ本体部30には、電線ホルダ31と端子ハウジング32とをともに覆う略矩形筒状をなすシールドブラケット33が装着されている。電線ホルダ31は導電性樹脂にて、端子ハウジング32は絶縁性樹脂にて、シールドブラケット33は導電性金属にて構成されている。
【0024】
電線ホルダ31は、高さ方向で上下二分割構造となっており、上ホルダ31xと下ホルダ31yとが連結ピン31aと連結穴31bとの嵌め合い等にて互いに組み合わされてなる。電線ホルダ31の基端面には、長手方向に略円筒状に突出する導入筒部31cが設けられている。導入筒部31cは、上ホルダ31xと下ホルダ31yとに跨がって形成されている。導入筒部31cの外周面には、例えば3つの環状溝31dが長手方向に並んで設けられている。環状溝31dは、導入筒部31cの外周面に装着されるシールドチューブ23を食い込ませる目的等で設けられている。
【0025】
導入筒部31cの内側には、俵積み状をなす3本の電線21a~21cが導入される導入口34xが設けられている。電線ホルダ31の下ホルダ31yには、電線21a~21cが俵積み状から徐々に横並び状に分岐させるべく経路規制して収容する電線収容溝34yが導入口34xから連続して設けられている(
図4参照)。
【0026】
なお、電線21a~21cが電線ホルダ31の導入口34xから電線収容溝34yに沿って分岐される際、横並びの真ん中に配置される電線21bが俵積みの下側から直線状に配置されるのに対し、電線21bの両側に配置される電線21a,21cが俵積みの上側2本として配置されている。そして、俵積みの上側2本の電線21a,21cが真ん中の電線21bと同一平面上で横並びとなるようにその上側から下側に向けて傾斜している。そのため、俵積みの上側2本の電線21a,21cが下方に傾斜する部分が下側の真ん中の電線21bを両側から挟持する態様となり、下側の真ん中の電線21bの移動が規制されている。電線21a~21cは、電線ホルダ31の内部において導入口34xから電線収容溝34yに沿って収容することで、撚り戻し長さの短い配策とされている。
【0027】
電線ホルダ31の先端側には、電線収容溝34yの分岐先の3つの開口34a,34b,34cが設けられ、それぞれの開口34a~34cからは電線21a~21cの先端部が突出する。この場合、電線21a~21cは、開口34a~34cから絶縁被覆21yの先端部分も含めて突出し、突出した絶縁被覆21y部分にシールリング35が装着されている。
【0028】
電線ホルダ31の上ホルダ31xには、先端側の幅方向中央部に係止片31eが設けられている。係止片31eは、上下方向に弾性変位可能である。係止片31eは、電線ホルダ31を覆うように装着されるシールドブラケット33の係止孔33aと係止し(
図3参照)、電線ホルダ31に対するシールドブラケット33の装着状態を維持する。なお、電線ホルダ31(上ホルダ31x)の係止片31eとシールドブラケット33の係止孔33aとの係止状態が解除されれば、電線ホルダ31からシールドブラケット33の取り外しが可能である。
【0029】
電線ホルダ31の基端側には、導電性ゴムリング36が装着されている。導電性ゴムリング36は、長手方向周りに環状をなすようにして電線ホルダ31の基端外側面に装着されている。この場合、導電性ゴムリング36は、電線ホルダ31として組み合わされる上ホルダ31xと下ホルダ31yとに跨がって装着され、上ホルダ31xと下ホルダ31yとの分離を防止する機能を有する。また、導電性ゴムリング36は、電線ホルダ31とシールドブラケット33との間に介在し、自身の弾性力により電線ホルダ31とシールドブラケット33との両者に密着する。つまり、導電性ゴムリング36は、電線ホルダ31とシールドブラケット33との間を液密にシールする機能のみならず、導電性樹脂よりなる電線ホルダ31と導電性金属よりなるシールドブラケット33とを電気的に接続する機能も有している。
【0030】
シールドブラケット33は、電線ホルダ31に対する長手方向の挿入にて、電線ホルダ31の外側に装着されている。シールドブラケット33は、電線ホルダ31に対する装着状態において、先端側が略矩形筒状に突出している。シールドブラケット33の突出部分の内側には、略直方体状をなす端子ハウジング32が挿入されている。端子ハウジング32は、電線ホルダ31の先端部に当接する態様にて配置されている。端子ハウジング32の幅方向両側面には、係止突起32aが設けられている(
図2参照)。係止突起32aは、シールドブラケット33の係止孔33bと係止し、シールドブラケット33に対する端子ハウジング32の装着状態を維持する。
【0031】
端子ハウジング32には、接続端子24a~24cとともに電線21a~21cの先端部がそれぞれ挿入される3つ(
図3では1つのみ図示)の挿入孔32bが設けられている。ここで、電線21a~21cは電線ホルダ31に対して位置決めされて保持されているため、接続端子24a~24cはそれぞれ長手方向に略沿う姿勢で維持されている。そのため、端子ハウジング32のシールドブラケット33への装着の際、端子ハウジング32は長手方向に沿ってシールドブラケット33の先端部内に挿入されるが、接続端子24a~24cは3本一括にてそれぞれの挿入孔32bに挿入可能となっている。挿入孔32bの内周面には、電線21a~21cの絶縁被覆21yの先端部に装着されたシールリング35が弾性的に密着する。シールリング35は、挿入孔32bの内周面と電線21a~21cとの間を液密にシールする。
【0032】
また、挿入孔32bの内周面には、接続端子24a~24cの下方側に係止片32cが設けられている。係止片32cは、上下方向に弾性変位可能である。係止片32cは、接続端子24a~24cの長手方向略中央部の係止孔24yと係止し、接続端子24a~24cに対する端子ハウジング32の装着状態を維持する。なお、端子ハウジング32(挿入孔32b)の係止片32cと接続端子24a~24cの係止孔24yとの係止状態が解除されれば、端子ハウジング32とシールドブラケット33とが一体的に接続端子24a~24cを有する電線ホルダ31から取り外しが可能である。また、端子ハウジング32の上記した係止突起32aとシールドブラケット33の係止孔33bとの係止状態が解除されれば、シールドブラケット33から端子ハウジング32の取り外しが可能である。
【0033】
端子ハウジング32の基端部におけるシールドブラケット33にて覆われる部位には、Oリング37が装着されている。Oリング37は、長手方向周りに環状をなすようにして端子ハウジング32の基端外側面に装着されている。Oリング37は、端子ハウジング32とシールドブラケット33との間に介在し、自身の弾性力により端子ハウジング32とシールドブラケット33との両者に密着する。
【0034】
また、端子ハウジング32の先端部におけるシールドブラケット33から露出する部位には、防水用ゴムリング38が装着されている。防水用ゴムリング38は、長手方向周りに環状をなすようにして端子ハウジング32の先端外側面に装着されている。防水用ゴムリング38は、相手側の電気機器であるモータ11や電力供給源12との間での防水構造を図るものである。モータ11や電力供給源12と電気的に接続するための接続端子24a~24cの先端部には、円形孔24zが形成されている。なお、一例として円形孔24zとしたが、横長の長円等、他の孔形状であってもよい。
【0035】
このようなコネクタ部22に対し、電線ホルダ31の導入筒部31cに導入される電線21a~21cは、コネクタ部22の手前区間の長手方向全体がシールドチューブ23にて覆われている。シールドチューブ23は、熱収縮シールドチューブよりなり、具体的には外周側に熱収縮樹脂層23aが、内周側に導電布等よりなる導電層23bが設けられて互いが一体的に構成されている。
【0036】
シールドチューブ23は、熱処理する前においては
図2の2点鎖線で示すように、俵積み状をなす電線21a~21cの外径及び電線ホルダ31の導入筒部31cの外径よりも十分大きい外径(図示略の内径も十分大きい)にて作製されている。そのため、熱処理前のシールドチューブ23は、内側での電線21a~21cの移動が比較的自由であり、また電線ホルダ31の導入筒部31cの挿入も容易である。そして、シールドチューブ23に対して熱風処理が行われると、シールドチューブ23は熱収縮、具体的には外周側の熱収縮樹脂層23aの熱収縮とともに、これに追従して内周側の導電層23bも縮径となる。
【0037】
熱収縮が生じたシールドチューブ23は、俵積み状の電線21a~21cの外側面に倣って密着するように縮径化し、シールドチューブ23の内側の空気も外部に十分に排除される。なお、電線21a~21c周りのシールドチューブ23が熱収縮しても、電線21a~21cの柔軟性は良好に維持される。また、シールドチューブ23は、電線ホルダ31の導入筒部31cの外周面にも密着し、導入筒部31cの外周面に設けた環状溝31dに食い込む。これにより、電線ホルダ31の導入筒部31cからシールドチューブ23の抜けが生じ難く、導入筒部31cとシールドチューブ23との間が迷路構造ともなる。
【0038】
また、電線ホルダ31の導入筒部31cの外周面とシールドチューブ23の内周面、この場合シールドチューブ23の導電層23bとが密着することになる。また、電線ホルダ31自身は導電性樹脂であり、さらに電線ホルダ31は導電性ゴムリング36を介して導電性金属のシールドブラケット33と電気的に接続されていることから、シールドブラケット33とシールドチューブ23の導電層23bとについても互いに電気的に接続されている。そして、例えばシールドブラケット33が車両10の接地部位(図示略)に対してアース接続されることで、シールドブラケット33及びシールドチューブ23の導電層23bにて周囲が囲まれる態様となる電線21a~21cの長手方向全体に亘って電磁シールド構造となる。
【0039】
このようなワイヤハーネス20においては、電力供給源12からモータ11に対して周波数の高い3相交流電力を供給する際に電線21a~21cから電磁波が生じ得る。しかしながら、コネクタ部22を含めた電線21a~21cの長手方向全体に亘って電磁シールド構造が採られているため、ワイヤハーネス20から外部への電磁波の放射は十分に抑制されるものとなっている。
【0040】
本実施形態の作用効果について説明する。
(1)電線21a~21cの周囲を覆うシールドチューブ23には、電線21a~21cの周囲を囲む態様の導電層23bを有する熱収縮シールドチューブが用いられる。そして、シールドチューブ23がコネクタ本体部30(電線ホルダ31)の装着部である導入筒部31cに装着されると、シールドチューブ23の導電層23b、コネクタ本体部30(電線ホルダ31)、導電性ゴムリング36、及びシールドブラケット33が電気的な接続状態となる。つまり、編組シールドよりも電気的接続が容易な熱収縮シールドチューブを用いることで、コネクタ部22を含むワイヤハーネス20の電磁シールド構造を容易に採ることができる。
【0041】
(2)コネクタ本体部30(電線ホルダ31)の装着部である導入筒部31cの外周面に環状溝31dが設けられ、環状溝31dがシールドチューブ23の抜け方向に係止する。そのため、導入筒部31cからシールドチューブ23の抜けを生じ難くすることができる。
【0042】
(3)環状溝31d自身が環状をなしていることから、シールドチューブ23の抜け方向の係止がより確実となり、シールドチューブ23の抜けをより生じ難くすることができる。また、シールドチューブ23とその装着部である導入筒部31cとの間が迷路構造となるため、シール性が向上する等の効果が期待できる。
【0043】
(4)コネクタ本体部30(電線ホルダ31)とシールドブラケット33との間に介在する導電性ゴムリング36が環状に設けられるため、コネクタ本体部30(電線ホルダ31)とシールドブラケット33との間のシール性が向上する等の効果が期待できる。
【0044】
(5)コネクタ本体部30(電線ホルダ31)とシールドブラケット33とは、互いに係止及び係止解除が可能な係止片31e及び係止孔33aを設け、相対的な着脱が可能に構成されている。つまり、コネクタ本体部30やシールドブラケット33の個別の部品交換を行うことができる。
【0045】
(6)電線21a~21cを収容したシールドチューブ23の熱風処理による熱収縮によってシールドチューブ23の内側の間隙が小さくされ、ワイヤハーネス20の断面径の最小化を図ることができる。
【0046】
(7)シールドチューブ23の熱収縮によってシールドチューブ23の内側の無用な空気が十分に排除されることで、シールドチューブ23の内側において断熱性の高い空気層が少なくなり、電線21a~21cの放熱性を向上させることができる。
【0047】
(8)周知の編組シールド構造を用いた場合、コネクタ部22等において編組部分を含めてかしめ固定を行うような場合に編組を構成する金属素線が切れる懸念があるが、シールドチューブ23を用いる本実施形態ではその懸念がない。
【0048】
(9)周知の編組シールド構造を用いた場合、コネクタ部22等において編組を構成する金属素線の網目が広がって電磁ノイズが漏れる懸念があるが、シールドチューブ23を用いる本実施形態ではその懸念がない。
【0049】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・コネクタ本体部30を、導電性樹脂製の電線ホルダ31、絶縁性樹脂製の端子ハウジング32、電線ホルダ31は更には上ホルダ31xと下ホルダ31yとの2部品とし、全部で3部品を組み合わせたが、数も含めた部品構成や材料は適宜変更してもよい。
【0050】
例えば、電線ホルダ31の全部を導電性樹脂で作製せず、シールドチューブ23と導電性ゴムリング36との間を繋ぐ一部分を少なくとも導電性樹脂、若しくは導電性部分にて構成してもよい。
図5に示す態様は、例えば絶縁性樹脂よりなる電線ホルダ31の外側面に導電性部分として導電性メッキ部39を設け、シールドチューブ23と導電性ゴムリング36との間を電気的に接続するものである。
【0051】
・電線ホルダ31の導入筒部31cに環状溝31dを設けてシールドチューブ23の抜けを抑制したが、環状の凸条であってもよい。また、環状でなくても、点在する凹凸であってもよい。また、特に設けなくてもよい。
【0052】
・電線ホルダ31とシールドブラケット33との間に介在する導電性弾性部材として導電性ゴムリング36を用いたが、電線ホルダ31とシールドブラケット33との間の電気的接続を図る機能に絞れば、特に環状でなくてもよい。
【0053】
・コネクタ本体部30(電線ホルダ31)とシールドブラケット33とは、互いに係止及び係止解除が可能な係止片31e及び係止孔33aを設けたが、係止部としての構成は適宜変更してもよい。また、省略してもよい。
【0054】
・上記の他、コネクタ部22の構成を適宜変更してもよい。
・電線21a~21cが3本のワイヤハーネス20に適用したが、電線が2本以下、若しくは4本以上用いられるワイヤハーネスに適用してもよい。
【0055】
・車両10に搭載の電気機器としてモータ11と電力供給源12であり、その相互間を接続するワイヤハーネス20に適用したが、電気機器はこれら限らない。また、
図1におけるモータ11及び電力供給源12の配置位置やワイヤハーネス20の配策態様は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0056】
20 ワイヤハーネス
21a 電線
21b 電線
21c 電線
22 コネクタ部
23 シールドチューブ(チューブ部材、熱収縮シールドチューブ)
23b 導電層(導電性部分)
30 コネクタ本体部
31 電線ホルダ
31c 導入筒部(装着部)
31d 環状溝(第1係止部)
31e 係止片(第2係止部)
33 シールドブラケット(シールド部材)
33a 係止孔(第2係止部)
36 導電性ゴムリング(導電性弾性部材)
39 導電性メッキ部(導電性部分)