(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】車載用電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230405BHJP
H02K 11/02 20160101ALI20230405BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230405BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20230405BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20230405BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20230405BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02K11/02
H02K11/33
H01F37/00 N
H01F17/06
H01F27/06 103
F04B39/00 106Z
(21)【出願番号】P 2020025184
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】門間 健司
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】早川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】安保 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】佐川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 皓基
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180220(JP,A)
【文献】特開2017-188681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0079228(US,A1)
【文献】特開2001-093757(JP,A)
【文献】特開2019-187228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02K 11/02
H02K 11/33
H01F 37/00
H01F 17/06
H01F 27/06
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータ装置と、を備え、
前記インバータ装置は、
インバータ回路と、
前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに前記インバータ回路に入力される直流電流に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、を備え、
前記ノイズ低減部は、
回路基板と、
前記回路基板に実装されるコモンモードチョークコイルと、
前記回路基板に実装されるとともに前記コモンモードチョークコイルと共にローパスフィルタ回路を構成する平滑コンデンサと、を備え、
前記コモンモードチョークコイルは、
環状のコアと、
前記コアに巻回された一対の巻線と、
前記一対の巻線の両方を覆う環状の導電体と、を備え、
前記導電体は、金属板である第1導電体と金属板である第2導電体からなり、
前記第1導電体は、前記回路基板と前記コアとの間に挟まれるよう配置され、
前記第2導電体は、前記回路基板とともに前記コアを挟むよう配置され、
前記回路基板には、一対の貫通孔が形成され、
前記第1導電体は、前記一対の貫通孔にそれぞれ挿通される一対の第1挿通部を有し、
前記第2導電体は、前記一対の貫通孔にそれぞれ挿通される一対の第2挿通部を有し、
前記一対の第1挿通部と前記一対の第2挿通部は、それぞれ電気的に接続されている
ことを特徴とする車載用電動圧縮機。
【請求項2】
前記一対の第1挿通部と前記一対の第2挿通部は、前記一対の貫通孔を通して前記回路基板から突出した状態で、はんだ付けされている
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用電動圧縮機。
【請求項3】
前記第1導電体と前記一対の巻線との間及び前記第2導電体と前記一対の巻線との間に絶縁体を介在させてなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載用電動圧縮機。
【請求項4】
前記絶縁体は、前記第1導電体における前記一対の巻線に対向する面に配置した第1絶縁体と、前記第2導電体における前記一対の巻線に対向する面に配置した第2絶縁体とからなり、
前記第1絶縁体と前記第2絶縁体とは環状をなしている
ことを特徴とする請求項3に記載の車載用電動圧縮機。
【請求項5】
前記第1導電体及び前記第2導電体は、前記回路基板と、はんだ付けされている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車載用電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用電動圧縮機における電動モータを駆動するインバータ装置に用いられるコモンモードチョークコイルの構成として、特許文献1にはチョークコイルを環状の導電体で覆う構造を採用することにより、漏れ磁束に伴い発生する電流を板状の導電体において熱に変換する。この電動圧縮機では、コモンモードチョークコイルでもってノーマルモードノイズも低減できることからノーマルモードチョークコイルが不要となり、体格の大型化を抑えれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導電性の材料が磁気シールドとして機能するためには、巻線の周辺を切れ目なく覆う(ループさせる)必要があり、組付性の面で課題がある。具体的には、組付性について、基板に実装済みのコモンモードチョークコイルに対しては、巻線には回路基板と電気的に接続するための接続端部(リード)があり、接続端部(リード)が干渉するため予め筒状に一体成型された部品を組み付けることはできない。また、基板に実装済みのコモンモードチョークコイルに対して巻き付けるように導電体を加工すれば接続端部(リード)との干渉を避けられるが、この場合、導電体とコモンモードチョークコイルとのクリアランスを設計値どおりに確保するのは難しい。
【0005】
本発明の目的は、組付性向上を図ることができる車載用電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車載用電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータ装置と、を備え、前記インバータ装置は、インバータ回路と、前記インバータ回路の入力側に設けられるとともに前記インバータ回路に入力される直流電流に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、を備え、前記ノイズ低減部は、回路基板と、前記回路基板に実装されるコモンモードチョークコイルと、前記回路基板に実装されるとともに前記コモンモードチョークコイルと共にローパスフィルタ回路を構成する平滑コンデンサと、を備え、前記コモンモードチョークコイルは、環状のコアと、前記コアに巻回された一対の巻線と、前記一対の巻線の両方を覆う環状の導電体と、を備え、前記導電体は、金属板である第1導電体と金属板である第2導電体からなり、前記第1導電体は、前記回路基板と前記コアとの間に挟まれるよう配置され、前記第2導電体は、前記回路基板とともに前記コアを挟むよう配置され、前記回路基板には、一対の貫通孔が形成され、前記第1導電体は、前記一対の貫通孔にそれぞれ挿通される一対の第1挿通部を有し、前記第2導電体は、前記一対の貫通孔にそれぞれ挿通される一対の第2挿通部を有し、前記一対の第1挿通部と前記一対の第2挿通部は、それぞれ電気的に接続されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、環状の導電体は、周方向において、金属板である第1導電体と金属板である第2導電体とに2分割されているので、一対の巻線を含めてコアを挟み込むようにして組付性が向上する。具体的には、第1導電体、コア、第2導電体の順に、一対の貫通孔に挿通させるよう回路基板に組み付けることで、導電体とコモンモードチョークコイルとのクリアランスを設計値どおりに確保しつつ環状の導電体がコアを覆う構造を容易に組み立てることができる。
【0008】
また、車載用電動圧縮機において、前記一対の第1挿通部と前記一対の第2挿通部は、前記一対の貫通孔を通して前記回路基板から突出した状態で、はんだ付けされているとよい。
【0009】
これによれば、コモンモードチョークコイルと回路基板とをはんだ付けするのと同じ工程にて、第1導電体の両端と第2導電体の両端をはんだ付けすることができる。その結果、電気的な接続を安定化しつつ組付性向上を図ることができる。
【0010】
また、車載用電動圧縮機において、前記第1導電体と前記一対の巻線との間及び前記第2導電体と前記一対の巻線との間に絶縁体を介在させてなるとよい。
また、車載用電動圧縮機において、前記絶縁体は、前記第1導電体における前記一対の巻線に対向する面に配置した第1絶縁体と、前記第2導電体における前記一対の巻線に対向する面に対向する面に配置した第2絶縁体とからなり、前記第1絶縁体と前記第2絶縁体とは環状をなしているとよい。
【0011】
また、車載用電動圧縮機において、前記第1導電体及び前記第2導電体は、前記回路基板と、はんだ付けされているとよい。この場合、耐震性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組付性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】(a)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの平面図、(b)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの右側面図、(c)は(a)のA-A線での断面図。
【
図4】(a)はコモンモードチョークコイルの平面図、(b)はコモンモードチョークコイルの右側面図、(c)は(a)のA-A線での断面図。
【
図6】(a)はケースとコアと巻線の平面図、(b)はケースとコアと巻線の右側面図、(c)は(a)のA-A線での断面図。
【
図7】(a)は金属板の平面図、(b)は金属板の右側面図、(c)は(a)のA-A線での断面図。
【
図8】(a)は回路基板及び金属板の平面図、(b)は(a)のA-A線での回路基板及び金属板の分解図。
【
図9】(a)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの一部平面図、(b)は(a)のA-A線での断面図、(c)は(a)のB矢視図。
【
図10】(a)は作用を説明するためのコモンモードチョークコイルの平面図、(b)は(a)のA-A線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の車載用電動圧縮機は、流体としての冷媒を圧縮する圧縮部を備えており、車載用空調装置に用いられる。即ち、本実施形態における車載用電動圧縮機の圧縮対象の流体は冷媒である。
【0015】
図1に示すように、車載用空調装置10は、車載用電動圧縮機11と、車載用電動圧縮機11に対して流体としての冷媒を供給する外部冷媒回路12とを備えている。外部冷媒回路12は、例えば熱交換器及び膨張弁等を有している。車載用空調装置10は、車載用電動圧縮機11によって冷媒が圧縮され、且つ、外部冷媒回路12によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0016】
車載用空調装置10は、当該車載用空調装置10の全体を制御する空調ECU13を備えている。空調ECU13は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、車載用電動圧縮機11に対してON/OFF指令等といった各種指令を送信する。
【0017】
車載用電動圧縮機11は、外部冷媒回路12から冷媒が吸入される吸入口14aが形成されたハウジング14を備えている。
ハウジング14は、伝熱性を有する材料(例えばアルミニウム等の金属)で形成されている。ハウジング14は、車両のボディに接地されている。
【0018】
ハウジング14は、互いに組み付けられた吸入ハウジング15と吐出ハウジング16とを有している。吸入ハウジング15は、一方向に開口した有底筒状であり、板状の底壁部15aと、底壁部15aの周縁部から吐出ハウジング16に向けて起立した側壁部15bとを有している。底壁部15aは例えば略板状であり、側壁部15bは例えば略筒状である。吐出ハウジング16は、吸入ハウジング15の開口を塞いだ状態で吸入ハウジング15に組み付けられている。これにより、ハウジング14内には内部空間が形成されている。
【0019】
吸入口14aは、吸入ハウジング15の側壁部15bに形成されている。詳細には、吸入口14aは、吸入ハウジング15の側壁部15bのうち吐出ハウジング16よりも底壁部15a側に配置されている。
【0020】
ハウジング14には、冷媒が吐出される吐出口14bが形成されている。吐出口14bは、吐出ハウジング16、詳細には吐出ハウジング16における底壁部15aと対向する部位に形成されている。
【0021】
車載用電動圧縮機11は、ハウジング14内に収容された回転軸17、圧縮部18及び電動モータ19を備えている。
回転軸17は、ハウジング14に対して回転可能な状態で支持されている。回転軸17は、その軸線方向が板状の底壁部15aの厚さ方向(換言すれば筒状の側壁部15bの軸線方向)と一致する状態で配置されている。回転軸17と圧縮部18とは連結されている。
【0022】
圧縮部18は、ハウジング14内における吸入口14a(換言すれば底壁部15a)よりも吐出口14b側に配置されている。圧縮部18は、回転軸17が回転することによって、吸入口14aからハウジング14内に吸入された冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を吐出口14bから吐出させるものである。なお、圧縮部18の具体的な構成は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等任意である。
【0023】
電動モータ19は、ハウジング14内における圧縮部18と底壁部15aとの間に配置されている。電動モータ19は、ハウジング14内にある回転軸17を回転させることにより、圧縮部18を駆動させるものである。電動モータ19は、例えば回転軸17に対して固定された円筒形状のロータ20と、ハウジング14に固定されたステータ21とを有する。ステータ21は、円筒形状のステータコア22と、ステータコア22に形成されたティースに捲回されたコイル23とを有している。ロータ20及びステータ21は、回転軸17の径方向に対向している。コイル23が通電されることによりロータ20及び回転軸17が回転し、圧縮部18による冷媒の圧縮が行われる。
【0024】
図1に示すように、車載用電動圧縮機11は、電動モータ19を駆動させるものであって直流電力が入力される駆動装置24と、駆動装置24を収容する収容室S0を区画するカバー部材25とを備えている。
【0025】
カバー部材25は、伝熱性を有する非磁性体の導電性材料(例えばアルミニウム等の金属)で構成されている。
カバー部材25は、ハウジング14、詳細には吸入ハウジング15の底壁部15aに向けて開口した有底筒状である。カバー部材25は、開口端が底壁部15aに突き合せられた状態で、ボルト26によってハウジング14の底壁部15aに取り付けられている。カバー部材25の開口は、底壁部15aによって塞がれている。収容室S0は、カバー部材25と底壁部15aとによって形成されている。
【0026】
収容室S0は、ハウジング14外に配置されており、底壁部15aに対して電動モータ19とは反対側に配置されている。圧縮部18、電動モータ19及び駆動装置24は、回転軸17の軸線方向に配列されている。
【0027】
カバー部材25にはコネクタ27が設けられており、駆動装置24はコネクタ27と電気的に接続されている。コネクタ27を介して、車両に搭載された車載用蓄電装置28から駆動装置24に直流電力が入力されるとともに、空調ECU13と駆動装置24とが電気的に接続されている。車載用蓄電装置28は、車両に搭載された直流電源であり、例えば二次電池やキャパシタ等である。
【0028】
図1に示すように、収容室S0には回路基板29が配置されている。回路基板29は板状である。回路基板29は、底壁部15aに対して回転軸17の軸線方向に所定の間隔を隔てて対向配置されている。駆動装置24は、インバータ装置30と、コネクタ27とインバータ装置30とを電気的に接続するのに用いられる2本の接続ラインEL1,EL2と、を備えている。駆動装置24は回路基板29を用いて構成されている。
【0029】
インバータ装置30は、電動モータ19を駆動するためのものである。インバータ装置30は、インバータ回路31(
図2参照)と、ノイズ低減部32(
図2参照)を備えている。インバータ回路31は、直流電力を交流電力に変換するためのものである。ノイズ低減部32は、インバータ回路31の入力側に設けられるとともにインバータ回路31に入力される直流電流に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるためのものである。
【0030】
次に、電動モータ19及び駆動装置24の電気的構成について説明する。
図2に示すように、電動モータ19のコイル23は、例えばu相コイル23u、v相コイル23v及びw相コイル23wを有する三相構造となっている。各コイル23u~23wは例えばY結線されている。
【0031】
インバータ回路31は、u相コイル23uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2と、v相コイル23vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2と、w相コイル23wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2と、を備えている。各スイッチング素子Qu1~Qw2は例えばIGBT等のパワースイッチング素子である。なお、スイッチング素子Qu1~Qw2は、還流ダイオード(ボディダイオード)Du1~Dw2を有している。
【0032】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は接続線を介して互いに直列に接続されており、その接続線はu相コイル23uに接続されている。そして、各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されており、上記直列接続体には、車載用蓄電装置28からの直流電力が入力されている。
【0033】
なお、他のスイッチング素子Qv1,Qv2,Qw1,Qw2については、対応するコイルが異なる点を除いて、u相スイッチング素子Qu1,Qu2と同様の接続態様である。
【0034】
駆動装置24は、各スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング動作を制御する制御部33を備えている。制御部33は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、例えば各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0035】
制御部33は、コネクタ27を介して空調ECU13と電気的に接続されており、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2を周期的にON/OFFさせる。詳細には、制御部33は、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2をパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、制御部33は、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、制御部33は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Qu1~Qw2のON/OFF制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換する。
【0036】
ノイズ低減部32は、回路基板29(
図1参照)と、回路基板29に実装されるコモンモードチョークコイル34と、回路基板29に実装されるXコンデンサ35を備えている。平滑コンデンサとしてのXコンデンサ35は、コモンモードチョークコイル34と共にローパスフィルタ回路36を構成する。ローパスフィルタ回路36は、接続ラインEL1,EL2上に設けられている。ローパスフィルタ回路36は、回路的にはコネクタ27とインバータ回路31との間に設けられている。
【0037】
コモンモードチョークコイル34は、両接続ラインEL1,EL2上に設けられている。
Xコンデンサ35は、コモンモードチョークコイル34に対して後段(インバータ回路31側)に設けられており、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。コモンモードチョークコイル34とXコンデンサ35とによってLC共振回路が構成されている。即ち、本実施形態のローパスフィルタ回路36は、コモンモードチョークコイル34を含むLC共振回路である。
【0038】
両Yコンデンサ37,38は、互いに直列に接続されている。詳細には、駆動装置24は、第1Yコンデンサ37の一端と第2Yコンデンサ38の一端とを接続するバイパスラインEL3を備えている。当該バイパスラインEL3は車両のボディに接地されている。
【0039】
また、両Yコンデンサ37,38の直列接続体が、コモンモードチョークコイル34とXコンデンサ35との間に設けられており、コモンモードチョークコイル34に電気的に接続されている。第1Yコンデンサ37の上記一端とは反対側の他端は、第1接続ラインEL1、詳細には第1接続ラインEL1のうちコモンモードチョークコイル34の第1の巻線とインバータ回路31とを接続する部分に接続されている。第2Yコンデンサ38における上記一端とは反対側の他端は、第2接続ラインEL2、詳細には第2接続ラインEL2のうちコモンモードチョークコイル34の第2の巻線とインバータ回路31とを接続する部分に接続されている。
【0040】
車両には、車載用機器として例えばPCU(パワーコントロールユニット)39が、駆動装置24とは別に搭載されている。PCU39は、車載用蓄電装置28から供給される直流電力を用いて、車両に搭載されている走行用モータ等を駆動させる。即ち、本実施形態では、PCU39と駆動装置24とは、車載用蓄電装置28に対して並列に接続されており、車載用蓄電装置28は、PCU39と駆動装置24とで共用されている。
【0041】
PCU39は、例えば、昇圧スイッチング素子を有し且つ当該昇圧スイッチング素子を周期的にON/OFFさせることにより車載用蓄電装置28の直流電力を昇圧させる昇圧コンバータ40と、車載用蓄電装置28に並列に接続された電源用コンデンサ41とを備えている。また、図示は省略するが、PCU39は、昇圧コンバータ40によって昇圧された直流電力を、走行用モータが駆動可能な駆動電力に変換する走行用インバータを備えている。
【0042】
かかる構成においては、昇圧スイッチング素子のスイッチングに起因して発生するノイズが、ノーマルモードノイズとして、駆動装置24に流入する。換言すれば、ノーマルモードノイズには、昇圧スイッチング素子のスイッチング周波数に対応したノイズ成分が含まれている。
【0043】
次に、コモンモードチョークコイル34の構成について
図3(a),(b),(c)、
図4(a),(b),(c)、
図5、
図6(a),(b),(c)、
図7(a),(b),(c)、
図8(a),(b)、
図9(a),(b),(c)、
図10(a),(b)を用いて説明する。
【0044】
コモンモードチョークコイル34は、車両側のPCU39で発生する高周波ノイズが圧縮機側のインバータ回路31に伝わるのを抑制するためのものであり、特に、漏れインダクタンスをノーマルインダクタンスとして利用することでノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)を除去するためのローパスフィルタ回路(LCフィルタ)36におけるL成分として用いられる。即ち、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)に対応可能であり、コモンモード用チョークコイルとノーマルモード(ディファレンシャルモード)用チョークコイルとを、それぞれ、用いるのではなく1つのチョークコイルで両モードノイズに対応可能である。
【0045】
なお、図面において、3軸直交座標を規定しており、
図1の回転軸17の軸線方向をZ方向とし、Z方向に直交する方向をX,Y方向としている。
図4(a),(b),(c)に示すように、コモンモードチョークコイル34は、ケース50と、コア60と、第1の巻線70と、第2の巻線71と、環状の導電体としての金属板80と、を備える。コア60を収容したケース50に巻線70,巻線71が巻回され、巻線70,71に対し金属板80が巻かれた状態で使用される。第1の巻線70と第2の巻線71は、コモンモードチョークコイル34における一対の巻線であり、コア60に巻回される。
【0046】
図6(a),(b),(c)に示すように、コア60は、ケース50の内部に収容される。コア60は、
図6(c)に示すように断面四角形状をなし、
図6(a)に示すX-Y平面において全体として略長方形状の環状をなしている。
【0047】
図6(a),(b),(c)に示すように、ケース50は、環状をなし、樹脂製であり、電気絶縁性を有する。ケース50は、本体部51と、壁52とを備える。本体部51は、開口部51a(
図5参照)を除いて、コア60の全てを覆っている。本体部51には、
図6(a),(b),(c)に示すように、巻線70,71が巻かれる。
図5の開口部51aは、巻線70と巻線71との間に設けられ、開口部51aは巻線70と巻線71との間におけるコア60の一部を外方に露出させる。
【0048】
壁52はコア60の内周面側において、巻線70と巻線71との間にZ方向に延びるように設けられる。壁52により巻線70と巻線71とが隔てられる。
図6(a),(b),(c)に示すように、第1の巻線70は、ケース50の外面に巻回されている。第2の巻線71は、ケース50の外面に巻回されている。詳しくは、コア60は、第1直線部61と第2直線部62を備え、第1直線部61と第2直線部62とは、互いに平行となるよう直線に延びている。第1直線部61に第1の巻線70の少なくとも一部が巻回される。第2直線部62に第2の巻線71の少なくとも一部が巻回される。両巻線70,71の巻き方向は、互いに反対方向となっている。また、第1の巻線70と第2の巻線71は離れつつ対向している。
【0049】
図3(a),(b),(c)、
図4(a),(b),(c)、
図5に示すように、環状の導電体としての金属板80は、帯状かつ無端状をなしている。金属板80として、例えば銅板を用いることができる。環状の金属板80は、第1の巻線70及び第2の巻線71を跨ぎつつコア60及びケース50を覆っている。つまり、金属板80は第1の巻線70及び第2の巻線71の両方を覆っている。金属板80は、第1の巻線70と第2の巻線71の間において対向する部位同士が離れている。
【0050】
図3(a),(b),(c)に示すように、コア60の一部に巻回される第1の巻線70は、両端部70eが回路基板29の貫通孔(スルーホール)90を通して回路基板29から突出した状態で回路基板29に、はんだ付けされている。コア60の他部に巻回される第2の巻線71は、第1の巻線70から離れつつ対向しており、両端部71eが回路基板29の貫通孔(スルーホール)91を通して回路基板29から突出した状態で回路基板29に、はんだ付けされている。詳しくは、貫通孔(スルーホール)90,91は丸形をなしている。
【0051】
巻線70,71の端部70e,71eは、それぞれ、はんだ付けにより回路基板29に形成された導体パターンと電気的に接続される。
図7(a),(b),(c)に示すように、環状の導電体としての金属板80は、周方向において第1導電体としての第1金属板81と、第2導電体としての第2金属板82とに2分割されている。第1金属板81及び第2金属板82は、それぞれ、銅合金よりなる例えば厚さ0.5mm程度の板材が用いられる。
【0052】
第1金属板81は、X-Y平面においてX方向に直線的に延びる本体部81aと、本体部81aの両端部からZ方向に延びるように屈曲形成された立設部81b,81cを有する。第1金属板81は、プレス加工により成形されている。
【0053】
第2金属板82は、X-Y平面においてX方向に直線的に延びる本体部82aと、本体部82aの両端部からZ方向に延びるように屈曲形成された立設部82b,82cを有する。第2金属板82は、プレス加工により成形されている。
【0054】
第2金属板82の立設部82b,82cの先端側において、立設部82bと立設部82cとの間に第1金属板81の立設部81b,81cが配置される。立設部82bと立設部81bとは接触するとともに立設部82cと立設部81cとは接触する。これにより、第1金属板81と第2金属板82とは環状をなしている。
【0055】
図3(a),(b),(c)に示すように、第1金属板81は、回路基板29とコア60との間に挟まれるよう配置されている。第2金属板82は、回路基板29とともにコア60を挟むよう配置されている。回路基板29には、一対の貫通孔92,93(
図8(a),(b)参照)が形成されている。第1金属板81の端部81eと第2金属板82の端部82eとが回路基板29の一対の貫通孔92,93(
図8(a),(b)参照)を通して回路基板29から突出した状態で、はんだ付けされている。貫通孔92,93は、それぞれ、長方形状をなしており、第1金属板81の端部81eと第2金属板82の端部82eとが当接する状態における端部81eと端部82eとの当接体よりも若干大きい寸法である。端部81eを含む立設部81b,81cは、一対の貫通孔92,93にそれぞれ挿通される一対の第1挿通部である。また、端部82eを含む立設部82b,82cは、一対の貫通孔92,93にそれぞれ挿通される一対の第2挿通部である。
【0056】
ここで、
図9(a),(b),(c)に示すように、第1金属板81の端部81e及び第2金属板82の端部82eは、それぞれ、断面長方形をなし、同一寸法であり、回路基板29の貫通孔92,93に挿入された状態において第1金属板81の端部81eと第2金属板82の端部82eとが当接している。この状態で、端部81e,82eの全周にわたり、はんだSが配置され、端部81e,82eの短辺同士が、はんだ付けされ、はんだSを介して接合され、端部81e,82e同士が電気的に接続される。詳しくは、
図9(a),(c)に示すように、はんだSでの部位S1a,S1b,S2a,S2bで接合される。
【0057】
さらに、端部81e,82eの長辺部分と回路基板29とが、はんだ付けされ、第1金属板81の端部81e及び第2金属板82の端部82eは、はんだSを介して回路基板29に固定される。詳しくは、
図9(a),(b)に示すように、はんだSでの部位S1c,S1d,S2c,S2dで接合される。このようにして、第1金属板81及び第2金属板82は、回路基板29と、はんだ付けされている。
【0058】
このようにして、一対の第1挿通部である端部81eを含む立設部81b,81cと、一対の第2挿通部である端部82eを含む立設部82b,82cは、それぞれ電気的に接続されている。また、一対の第1挿通部である端部81eを含む立設部81b,81cと、一対の第2挿通部である端部82eを含む立設部82b,82cは、一対の貫通孔92,93を通して回路基板29から突出した状態で、はんだ付けされている。
【0059】
図4(a),(b),(c)、
図8(a),(b)に示すように、金属板81と一対の巻線70,71との間及び金属板82と一対の巻線70,71との間に絶縁体110が介在されている。即ち、第1金属板81と第1の巻線70との間及び第1金属板81と第2の巻線71との間及び第2金属板82と第1の巻線70との間及び第2金属板82と第2の巻線71との間に絶縁体110が介在されている。
【0060】
絶縁体110は、第1絶縁体111と第2絶縁体112とからなる。第1絶縁体111は、樹脂の膜よりなり、第1金属板81の本体部81aにおける、第2金属板82の本体部82aと対向する面、即ち、第1の巻線70に対向する面及び第2の巻線71に対向する面に配置されている。第1絶縁体111は第1金属板81に接着されている。
【0061】
図7(a),(b),(c)及び
図8(a),(b)に示すように、第2絶縁体112は、樹脂の膜よりなり、第2金属板82における第1の巻線70に対向する面及び第2の巻線71に対向する面に配置されている。詳しくは、第2金属板82の本体部82aにおける、巻線70,71に対向する面である第1金属板81の本体部81aと対向する面、第2金属板82の立設部82bにおける巻線70と対向する部位、第2金属板82の立設部82cにおける巻線71と対向する部位に配置されている。第2絶縁体112は第2金属板82に接着されている。
【0062】
図7(c)に示すように、第1絶縁体111と第2絶縁体112とは環状をなしている。
図3(c)に示すように、回路基板29と第1金属板81の本体部81aとの間には絶縁体120が配置されている。絶縁体120は樹脂の膜よりなり、
図7(c)に示すように、第1金属板81の本体部81aにおける、回路基板29と対向する面に接着されている。
【0063】
図4(a)に示すように、四角形状(ロの字状)をなすコア60における一方の短辺部及び他方の短辺部は、金属板80に覆われない露出部となっている。
図3(b),(c)に示すように、金属板80における吸入ハウジング15の底壁部15aとの対向面には放熱グリス130が配置されている。これにより、金属板80は、吸入ハウジング15ひいてはハウジング14に熱的に結合している。
【0064】
製造の際には次のようにする。
図6(a),(b),(c)に示すように、ケース50内にコア60を収納するとともに第1の巻線70及び第2の巻線71を巻回した状態から、
図4(a),(b),(c)に示すように金属板80を、第1金属板81と第2金属板82との間に第1の巻線70及び第2の巻線71を挟み込むように配置し、第1金属板81の端部81eと第2金属板82の端部82eを回路基板29の貫通孔92,93に貫通するように挿入するとともに第1の巻線70及び第2の巻線71の端部81e,82eを回路基板29の貫通孔90,91に貫通するように挿入する。
【0065】
この時、回路基板29から第1金属板81の端部81e、第2金属板82の端部82e、第1の巻線70の端部70e及び第2の巻線71の端部71eが回路基板29から突出している。そして、はんだ付けにより回路基板29から突出している第1金属板81の端部81e、第2金属板82の端部82e、第1の巻線70の端部70e及び第2の巻線71の端部71eを回路基板29に、はんだ付けする。巻線70,71の、はんだ付けと金属板81,82の、はんだ付けは同時に行われる(同一行程で行われる)。
【0066】
次に、作用について説明する。
まず、
図10(a),(b)を用いてノーマルモード(ディファレンシャルモード)について説明する。
【0067】
図10(a)に示すように、第1の巻線70及び第2の巻線71の通電により電流i1,i2が流れる。これに伴いコア60に磁束φ1,φ2が発生するが磁束φ1,φ2は互いに逆向きのため漏れ磁束φ3,φ4が発生する。ここで、
図10(b)に示すように、発生する漏れ磁束φ3,φ4に抗う方向に磁束を発生させるべく金属板80の内部において誘導電流i10が周方向に流れる。
【0068】
このようにして、金属板80において、第1の巻線70及び第2の巻線71の通電に伴い発生する漏れ磁束に抗う方向に磁束を発生させるべく誘導電流(渦電流)i10が内部において周方向に流れる。誘導電流が周方向に流れるとは、コア60を周回するように流れることである。
【0069】
コモンモードにおいては、第1の巻線70及び第2の巻線71の通電により同じ方向に電流が流れる。これに伴いコア60に同じ向きの磁束が発生する。このようにして、コモンモード電流通電時は、コア60内部に磁束が発生し漏れ磁束はほとんど発生しないため、コモンインピーダンスは保持できる。
【0070】
次に、ローパスフィルタ回路36の周波数特性について説明する。
コモンモードチョークコイル34に導電体よりなる金属板80が存在しない場合には、ローパスフィルタ回路36(詳細にはコモンモードチョークコイル34とXコンデンサ35とを含むLC共振回路)のQ値が高くなる。このため、ローパスフィルタ回路36の共振周波数に近い周波数のノーマルモードノイズは低減されにくくなる。
【0071】
一方、本実施形態では、コモンモードチョークコイル34にて発生する磁力線(漏れ磁束φ3,φ4)によって渦電流が発生する位置に導電体よりなる金属板80が設けられている。導電体よりなる金属板80は、漏れ磁束φ3,φ4が貫く位置に設けられており、漏れ磁束φ3,φ4が貫くことによって当該漏れ磁束φ3,φ4を打ち消す方向の磁束が生じるような誘導電流(渦電流)を発生させるように構成されている。これにより、導電体よりなる金属板80がローパスフィルタ回路36のQ値を下げるものとして機能する。従って、ローパスフィルタ回路36のQ値が低くなる。よって、ローパスフィルタ回路36の共振周波数付近の周波数を有するノーマルモードノイズも、ローパスフィルタ回路36によって低減される。
【0072】
以上のごとく、コモンモードチョークコイルにおいて帯状かつ無端状をなす金属板80による金属シールド構造を採用することにより、コモンモードチョークコイルとしてローパスフィルタ回路に利用し、コモンモードノイズを低減する。また、ノーマルモード電流(ディファレンシャルモード電流)に対して発生する漏れ磁束を積極的に活用し、ノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)の低減を兼ね備えた適切なフィルタ特性を得ることができる。つまり、帯状かつ無端状をなす金属板80を用いることで、ノーマルモード電流(ディファレンシャルモード電流)通電時に発生した漏れ磁束に抗う磁束が発生し、電磁誘導によって金属板80に電流が流れ熱として消費される。金属板80は磁気抵抗として働くためダンピング効果を得ることができ、ローパスフィルタ回路によって発生した共振ピークを抑制できる。また、コモンモード電流通電時は、コア内部に磁束が発生し漏れ磁束はほとんど発生しないため、コモンインピーダンスは保持できる。
【0073】
帯状かつ無端状をなす金属板80において、漏れ磁束に抗う方向に磁束を発生させようとして内部に電流が流れ、電力を消費して発熱する。コモンモードチョークコイル34で発生した熱は、金属板80が底壁部15aに熱的に接合されているので、底壁部15aに逃がされる。よって、金属板80において発生する熱が放熱グリス130を通して逃がされ、放熱面への放熱性に優れたものとなる。
【0074】
従来、電動圧縮機のインバータ回路に流入および流出するリプル電流を制御すべく、特許文献1に開示の車載用電動圧縮機のように、巻線の周辺を導電性の材料で覆うことで、磁力線の変化に応じてそれを打ち消すような渦電流が導電性材料に発生することを利用することができる。ところが、組付性をよくするためには1枚の帯板材の先端部同士をタブとして環状部から外側に突出させて接合させることになるが、そうすると体格の大型化を招く。
【0075】
本実施形態においては、金属板80を2部品に分割した構成とすることで、金属板80が2部品のため、巻線70,71を挟み込むような形で金属板80の組付けが容易となる。また、2部品の金属板80を回路基板29を介してはんだ接合することで、巻線70,71と金属板80も含めた総体格を抑制することができる。
【0076】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)車載用電動圧縮機11の構成として、電動モータ19を駆動するインバータ装置30を備え、インバータ装置30は、インバータ回路31とノイズ低減部32とを備え、ノイズ低減部32は、回路基板29と、回路基板29に実装されるコモンモードチョークコイル34と、回路基板29に実装されるとともにコモンモードチョークコイル34と共にローパスフィルタ回路36を構成する平滑コンデンサとしてのXコンデンサ35と、を備える。コモンモードチョークコイル34は、環状のコア60と、コア60に巻回された一対の巻線70,71と、一対の巻線70,71の両方を覆う環状の導電体としての金属板80と、を備える。金属板80は、金属板である第1導電体としての第1金属板81と金属板である第2導電体としての第2金属板82からなり、第1導電体としての第1金属板81は、回路基板29とコア60との間に挟まれるよう配置され、第2導電体としての第2金属板82は、回路基板29とともにコア60を挟むよう配置されている。回路基板29には、一対の貫通孔92,93が形成され、第1導電体としての第1金属板81は、一対の貫通孔92,93にそれぞれ挿通される一対の第1挿通部としての端部81eを含む立設部81b,81cを有する。第2導電体としての第2金属板82は、一対の貫通孔92,93にそれぞれ挿通される一対の第2挿通部としての端部82eを含む立設部82b,82cを有する。一対の第1挿通部としての端部81eを含む立設部81b,81cと、一対の第2挿通部としての端部82eを含む立設部82b,82cは、それぞれ電気的に接続されている。
【0077】
よって、環状の金属板80は、周方向において第1金属板81と第2金属板82とに2分割されているので、一対の巻線70,71を含めてコア60を挟み込むようにして組付性が向上する。具体的には、第1導電体としての第1金属板81、コア60、第2導電体としての第2金属板82の順に、一対の貫通孔92,93に挿通させるよう回路基板29に組み付けることで、導電体とコモンモードチョークコイルとのクリアランスを設計値どおりに確保しつつ環状の導電体がコアを覆う構造を容易に組み立てることができる。その結果、組付性向上を図ることができる。
【0078】
(2)一対の第1挿通部としての端部81eを含む立設部81b,81cと、一対の第2挿通部としての端部82eを含む立設部82b,82cは、一対の貫通孔92,93を通して回路基板29から突出した状態で、はんだ付けされている。よって、コモンモードチョークコイル34と回路基板29とをはんだ付けするのと同じ工程にて、第1導電体の両端と第2導電体の両端をはんだ付けすることができる。その結果、電気的な接続を安定化しつつ組付性向上を図ることができる。
【0079】
(3)第1金属板81と一対の巻線70,71との間及び第2金属板82と一対の巻線70,71との間に絶縁体110を介在させているので、金属板80と巻線70,71との間の絶縁を容易にとることができる。
【0080】
(4)絶縁体110は、第1金属板81における一対の巻線70,71に対向する面に配置した第1絶縁体111と、第2金属板82における一対の巻線70,71に対向する面に配置した第2絶縁体112とからなり、第1絶縁体111と第2絶縁体112とは環状をなしている。これにより、金属板80と巻線70,71との間の絶縁を確実にとることができる。
【0081】
(5)第1金属板81及び第2金属板82は、回路基板29と、はんだ付けされている。よって、第1金属板81及び第2金属板82が回路基板29に固定されているので、耐震性に優れる。
【0082】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○金属板80は、銅板の他にも、アルミ板、真鍮板、ステンレス鋼材の板等で構成されていてもよい。また、銅などの非磁性金属に限らず磁性金属でもよい。ここで、金属板80は鉄のような磁性金属を用いた場合には誘導電流が流れることに伴いさらに磁束が生じるので悪影響を及ぼす可能性があるので、非磁性金属が好ましい。
【0083】
〇導電体が分割構造をなしていることにより、放熱性向上を図るべく第1導電体の厚みを第2導電体よりも厚くしてもよい。
〇はんだSを介するだけでなく、立設部81b,81cと立設部82b,82cが直接接触することで、第1金属板81と第2金属板82が電気的に接続されていてもよい。また、はんだSを介することなく、立設部81b,81cと立設部82b,82cが直接接触することのみで、第1金属板81と第2金属板82が電気的に接続されていてもよい。
【0084】
あるいは、放熱性向上を図るべく第1導電体を第2導電体よりもより熱伝導率が高い材料を選択してもよい。例えば、第1導電体は銅合金であるとともに第2導電体も銅合金であるが、第1導電体の銅合金材料を第2導電体の銅合金材料よりも熱伝導率が高い組成とする。
【0085】
あるいは、放熱性向上を図るべく第1導電体の厚みを第2導電体よりも厚くするとともに、第1導電体を第2導電体よりもより熱伝導率が高い材料を選択してもよい。
このように、板厚が一様な部品の場合、放熱部材と接していない面(
図3(c)での上側面)では渦電流による発熱を逃がしづらいので、工夫をする。つまり、2部品構成のため、求められる放熱性等のスペックに応じて、例えば放熱部材と接する第2金属板82に対して放熱部材と接しない第1金属板81の板厚や材料自体を変えることができ、放熱に対するロバスト性向上が図られる。
【0086】
〇金属板81,82と巻線70,71との間の絶縁は、樹脂による絶縁体111,112に代わり、絶縁塗装でもよい。例えば、金属板81,82における巻線70,71と対向する箇所における、表面に樹脂塗装膜を形成してもよい。
【0087】
〇金属板81,82と巻線70,71との間の絶縁は、樹脂による絶縁体111,112に代わり、巻線70,71における少なくとも金属板81,82と対向する部位に十分絶縁が取れる絶縁皮膜で被覆するようにしてもよい。
【0088】
○ 第1金属板81と巻線70,71との間に十分な距離の空隙を確保できる場合には第1絶縁体111を不要にすることも可能である。同様に、第2金属板82と巻線70,71との間に十分な距離の空隙を確保できる場合には第2絶縁体112を不要にすることも可能である。また、回路基板29と第1金属板81の本体部81aとの間に十分な距離の空隙を確保できる場合には絶縁体120を不要にすることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
11…車載用電動圧縮機、18…圧縮部、19…電動モータ、29…回路基板、30…インバータ装置、31…インバータ回路、32…ノイズ低減部、34…コモンモードチョークコイル、35…Xコンデンサ、60…コア、70,71…一対の巻線、80…金属板、81…第1金属板、81a…立設部、81b…立設部、81e…端部、82…第2金属板、82a…立設部、82b…立設部、82e…端部、92,93…貫通孔、110…絶縁体、111…第1絶縁体、112…第2絶縁体。