(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】クローラユニットとそれを使用した悪路用運搬台車
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20230405BHJP
B62D 55/215 20060101ALI20230405BHJP
B62D 55/26 20060101ALI20230405BHJP
B62B 5/02 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
B62D55/253 D
B62D55/215
B62D55/26 A
B62B5/02 C
(21)【出願番号】P 2019011977
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018029793
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000245830
【氏名又は名称】矢崎化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 健留
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-295270(JP,A)
【文献】特開昭55-156771(JP,A)
【文献】実公昭49-003703(JP,Y2)
【文献】特開2001-063643(JP,A)
【文献】特開2010-132082(JP,A)
【文献】特開2015-127188(JP,A)
【文献】特開2017-071336(JP,A)
【文献】特開2000-313371(JP,A)
【文献】特開2014-080067(JP,A)
【文献】特開2000-233754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
B62D 55/215
B62D 55/26
B62B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプーリーを循回する履帯が設けられたクローラユニットにおいて、
前記履帯は、所定位置に貫通孔を設けたベルトを挟んで、外周に複数のアウターアタッチメントと、内部に複数のインナーアタッチメントとを帯状に設けて構成され、
前記アウターアタッチメントは、板状の基部と同基部の両端に突出して設けられたサイド部で成り、前記基部の上面に前記ベルトの貫通孔に対応する位置の嵌合穴が設けられ、且つ両端のサイド部間の内部に係止穴が設けられ、前記インナーアタッチメントは、一対の下向きの係止片を有し、その係止片間は前記ベルトを上方から覆うのに十分な幅寸に設定され、前記係止片間の内部には下向きの突起を設け、前記インナーアタッチメントの前記突起が前記ベルトの貫通孔を貫通し、前記アウターアタッチメントの前記嵌合穴に嵌合され、且つ前記係止片が前記係止穴に係止されて、前記アウターアタッチメントと前記インナーアタッチメントが前記ベルトを挟むように合体されていることを特徴とするクローラユニット。
【請求項2】
前記複数のアウターアタッチメントの隣り合う前後面の一方には規制凹部、他方には規制突起が設けられ、前記規制凹部に前記規制突起が入り込んで、前記アウターアタッチメント同士のズレが規制されることを特徴とする請求項1に記載のクローラユニット。
【請求項3】
前記アウターアタッチメントのサイド部には、上方が先細る先端部が形成され、隣り合う当該アウターアタッチメント同士が当接し、当該アウターアタッチメントが前記ベルトに取付けられ、履帯が内方に曲がる際、隣り合う前記アウターアタッチメント同士は、前記サイド部の先細る先端部同士が内方に曲がることによりお互いに干渉しないで曲がり、履帯が外方に曲がる際、隣り合う前後の前記アウターアタッチメント同士が当接して履帯がフラット状態を保つことを特徴とする請求項1
又は2のいずれか一に記載のクローラユニット。
【請求項4】
請求項1~
3に記載のいずれかのクローラユニットを使用して構成されていることを特徴とする悪路用運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラユニットとそれを使用した悪路用運搬台車の技術分野に関し、さらに言えば、軽量で旋回自在なクローラユニットを使用して、運送業(運輸、リネン、レンタル機器など)の配送全般や、個人使用の運搬台車・キャリーバッグの運搬用など、サイズを変えて様々な分野において利用に供され、とりわけ路面環境の悪い悪路に対応できる悪路用運搬台車に属する。
【背景技術】
【0002】
従来から雪や砂、砂利等の悪路上でも荷物を積んで運搬し易い運搬台車の要望があり、本出願人も、特許文献1に係る走行手段可変運搬台車を開発した。この運搬台車は被運搬物を載置するための基台と、基台に設けられた取っ手と、基台の下面に脱着可能に設けられたキャスターユニット又は無限軌道ユニットとからなる走行手段可変運搬台車であり、同文献1の
図3(A)(B)に示す一般的な無限軌道ユニット3が採用されている。同文献1の符号を援用すると、無限軌道ユニット3は、無限軌道4と支持脚5と取付板6とで構成されている。図中の符号4cは無端レール、符号4dはローラ、符号4eは複数のローラ4dを支持するエレメント、符号4fはエレメント4eを等間隔に保持するベルト、符号5aは無限軌道4を挟む脚部、符号11は水平軸、符号12はナット、をそれぞれ示している(請求項1、段落番号[0023]、[0024]参照)。
この特許文献1の運搬台車は、路面状態に応じて走行手段をキャスター又は無限軌道に簡易に変更できる等、種々の効果があるが、足回りの耐久性をさらに向上させることができれば、より有益であることは明らかである。
【0003】
そこで、市販のクローラを検討したが、クローラとは動力ありきであって、車体重量も重く、クローラはかなり頑丈な構造に作られていた。そのため、従来のクローラのベルトは強度を保つ必要があって曲がりにくく、動力を用いずには、クローラをスムーズに旋回させることができない、といった弱点のあることが判った。
その上、悪路(主に降雪地等)では、一般的な台車のような車輪では搬送できず、さらに動力のあるクローラでは手軽さやスピード、車などへの積載と積み下しを考えた時に採用するには不向きである結論に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来タイプのクローラは、動力がある場合の地面との接地に関して、動力をうまく伝えてスリップ防止のために、ベルトの接地部には抵抗(ゴムや突起)を設ける必要がある。これは動力があれば旋回がスムーズにできるが、無動力では旋回時に抵抗が大きく、旋回をうまくできない。また、動力を積んだ重量のある台車が直接クローラのベルトを踏むため、ベルトの中に鉄線などを通して補強しており、スムーズに回すためには大きなプーリーが必要になり、クローラ自体の重量を重くさせていた。その上、プーリーが大きくなると、高さも必要となるため、搬送台車においては積載面が高くなる問題も起こる。
さらには、戦車のように、障害物(砂、石、段差)などに対して圧倒的に大きなプーリーと、衝撃を吸収し、地面に追従する機構があるものは良いが、その機構をそのまま小さくして段差を吸収する機構が無い場合、障害物を越える際にプーリーが障害物に引っかかってしまって採用できない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記の課題を鑑みてなされたもので、クローラユニットの履帯をアウターアタッチメント等の最少部品点数で構成し、履帯(ベルト)は、軽量で曲がり易い上、小さなプーリーでも走行に支障がなく、コンパクト設計のクローラユニットを提供することにある。
また、障害物の乗り越え時にプーリー間にアタッチメントが入り込むと、プーリーに障害物がもろに当たり、ひどい騒音と振動が発生するので、履帯がプーリーの外周を通る時には、アタッチメント同士が内側には曲がるが、プーリー間にアタッチメントが入り込み難いように、地面を通る時には外側にはフラット以上になりにくい構造とし、悪路においても履帯がフラットな状態を維持して、ひどい路面を難なく走行できる耐久性に優れたクローラユニットを使用した悪路用運搬台車を提供することにある。
さらに、アタッチメントがベルトから外れることなく、安定した構造で履帯を剛直にさせ、複数のプーリーをスムーズに循回する高品質なクローラユニットや、それに好適な悪路用運搬台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るクローラユニットは、複数のプーリー6を循回する履帯1が設けられたクローラユニット5において、
前記履帯1は、所定位置に貫通孔40を設けたベルト4を挟んで、外周に複数のアウターアタッチメント2と、内部に複数のインナーアタッチメント3とを帯状に設けて構成され、
前記アウターアタッチメント2は、板状の基部20と同基部20の両端に突出して設けられたサイド部24、24で成り、前記基部20の上面に前記ベルト4の貫通孔40に対応する位置の嵌合穴21が設けられ、且つ両端のサイド部24、24間の内部に係止穴22が設けられ、前記インナーアタッチメント3は、一対の下向きの係止片31、31を有し、その係止片31、31間は前記ベルト4を上方から覆うのに十分な幅寸に設定され、前記係止片31、31間の内部には下向きの突起30を設け、前記インナーアタッチメント3の前記突起30が前記ベルト4の貫通孔40を貫通し、前記アウターアタッチメント2の前記嵌合穴21に嵌合され、且つ前記係止片31が前記係止穴22に係止されて、前記アウターアタッチメント2と前記インナーアタッチメント3が前記ベルト4を挟むように合体されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のクローラユニット5において、前記複数のアウターアタッチメント2の隣り合う前後面20b、20b´の一方には規制凹部20d(20d´)、他方には規制突起20c(20c´)が設けられ、前記規制凹部20d(20d´)に前記規制突起20c(20c´)が入り込んで、前記アウターアタッチメント2、2同士のズレが規制されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2のいずれか一に記載のクローラユニット5において、前記アウターアタッチメント2のサイド部24には、上方が先細る先端部24aが形成され、隣り合う当該アウターアタッチメント2、2同士が当接し、当該アウターアタッチメント2が前記ベルト4に取付けられ、履帯1が内方に曲がる際、隣り合う前記アウターアタッチメント2、2同士は、前記サイド部24の先細る先端部24a、24a同士が内方に曲がることによりお互いに干渉しないで曲がり、履帯1が外方に曲がる際、隣り合う前後の前記アウターアタッチメント2、2同士が当接して履帯1がフラット状態を保つことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明に係る悪路用運搬台車9は、前記請求項1~3に記載のいずかのクローラユニット5を使用して構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクローラユニットによれば、以下の効果を奏する。
(1)プーリーが、ゴム状のベルトではなく硬質なアウターアタッチメント上を踏んで回転する構造なので、地面との旋回抵抗が低くなり、小さなプーリーの径でも履帯がスムーズに循回する。その上、全体としてコンパクト設計でありながら強度があり、動きがスムーズなクローラユニットが提供される。
(2)アウターアタッチメントの前後面の一方に規制突起、他方の面に規制凹部を設け、隣接する一方の規制凹部に他方の規制突起が入り込んで隣接するアウターアタッチメント同士のお互いの位置ズレを規制して履帯全体が剛直になり、ベルトからアウターアタッチメントとインナーアタッチメントが外れ難い高品質なクローラユニットが実現される。
(3)プーリーの外周上で履帯が内方に曲がるとき、アウターアタッチメントの隣り合うサイド部同士は当接しないで干渉を起こさずに確実に曲がる。一方、地面を走行時の履帯が外方に(上に凸状に)曲がろうとするときは、側面同士が当接して干渉を起こし、履帯はフラット状態を保つ。よって、プーリー間にアタッチメントが入りにくいので、路面に段差等があってもプーリーにぶつからず、スムーズに走行ができる。
(4)アウターアタッチメントは滑りが良く、かつ削れ難いように高い硬度の材質を選定し、接地形状をなるべく抵抗を減らす形状にしたことにより、従来のクローラに比べて手で回し動かすことが可能な旋回性能を有し、使い勝手がよい。
(5)ベルトの長さとアウターアタッチメント(インナーアタッチメント)の数を変えることで、様々な長さ、角度のクローラを作ることができる柔軟性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のクローラユニットを示した全体斜視図である。
【
図3】履帯のアウターアタッチメントとインナーアタッチメントを分解して示した分解斜視図である。
【
図4】A、Bは、アウターアタッチメントとインナーアタッチメントの合体状態を示した前方斜視図(A)と後方斜視図(B)である。
【
図5】アウターアタッチメントとインナーアタッチメントの合体状態を示した平面図(A)、正面図(B)、裏面図(C)、側面図(D)である。
【
図6】クローラユニットを平面方向からみた部分拡大図である。
【
図7】上図は、履帯におけるアウターアタッチメントの平坦面走行時の動作状況とコーナー回転時の動作状況を部分的に簡略して示した説明側面図、下図は、上図における部分拡大図である。
【
図9】履帯におけるアウターアタッチメントのコーナー回転時の動作状況を示した拡大斜視図である。
【
図11】履帯におけるプーリーの回転状態を示した拡大斜視図である。
【
図12】異なるアウターアタッチメントを示した前方斜視図(A)と後方斜視図(B)である。
【
図13】異なるアウターアタッチメントとインナーアタッチメントを分解して示した分解斜視図である。
【
図14】
図13のアウターアタッチメントとインナーアタッチメントのベルトへの合体状態を示した斜視図である。
【
図15】クローラユニットを悪路用運搬台車に適用した例を示した全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図示した本発明に係るクローラユニットの実施形態を説明する。
本実施形態のクローラユニット5は、
図1に示したように、複数のプーリー6を循回する帯状の履帯1が設けられて成り、例えば
図15に示したような悪路用運搬台車9(後述)等に好適に使用されるものである。
【0014】
この履帯1は、複数のアウターアタッチメント2とインナーアタッチメント3と1本のベルト4とで構成され、ベルト4の内外で、合体された一組のアウターアタッチメント2とインナーアタッチメント3が、外周に連続して帯状に複数設けられている。当該アウターアタッチメント2とインナーアタッチメント3は、いろんな地面に接地することが考えられるから、摩擦係数が比較的低く、かつ削ずれ難いように高い硬度を備え、機械的強度に優れたエンジアリングプラスチックを選定し、PA樹脂やガラス入りPA樹脂、PBT樹脂、ガラス入りPBT樹脂、POM樹脂、ガラス入りPOM樹脂のいずれかの成形品である。
なお、本実施形態では、インナーアタッチメント3を備えているが、インナーアタッチメント3を備えない実施態様も採用可能である(詳細説明は省略)。
前記ベルト4は、常に張力が掛かっているから、伸びが出難く寸法安定性に優れた曲がりやすい織物平ベルト等で構成され、帯状の長いベルトからクローラ全長に回し掛けられる長さに切断し、その両端を固定して無端ベルトに構成をしており、よって所望のクローラユニット5の大きさに合わせられる柔軟性を備え、実施例では25mmの所定間隔おきに、2つずつ並列して開けられた貫通孔40が、全体に亘って複数設けられている。但し、貫通孔40は、前記所定間隔おきに1つずつ開けて実施する形態でも採用可能である(図示は省略)。
【0015】
本実施形態のクローラユニット5は、複数のアウターアタッチメント2の隣り合う前後面20b、20b´の一方には規制凹部20d(20d´)、他方には規制突起20c(20c´)が設けられ、前記規制凹部20d(20d´)に前記規制突起20c(20c´)が入り込んで、前記アウターアタッチメント2、2同士の位置が規制され上下方向にはズレないようにして、嵌合と不嵌合を繰り返しながらスムーズにプーリー6を循回する構成である。
図3~
図6に示したアウターアタッチメント2の構成について述べる。
このアウターアタッチメント2は、基本的に板状の基部20と、同基部20の両端に突出したサイド部24、24とより成る。前記基部20の上面に、前記ベルト4の並列配置の2つの貫通孔40、40に対応する位置の2つの嵌合穴21、21が設けられている。
また、両端のサイド部24、24間の外寄りの内部に係止穴22、22がそれぞれ設けられている。後述するインナーアタッチメント3の係止片31、31を係止するためである。
【0016】
前記両端に突出するサイド部24、24の間隔は、クローラユニット5の本体に取付けられたプーリー6が納まり、回転するに十分な幅寸W(本実施例ではW=52mm)(
図8参照)に設定され、プーリー6の側面を前記サイド部24、24が囲んでいるので、アウターアタッチメント2(履帯1)が、プーリー6の側面を囲んで循回し、旋回する時に横方向へ力が掛かったとしても履帯1をプーリー6から外れ難くして、プーリー6が、前記アウターアタッチメント2のサイド部24近傍の基部20の上面23に接触して回転するようになっている(
図4、
図5B、11参照)。
【0017】
前記アウターアタッチメント2のサイド部24の上方(
図3参照)は、詳しく
図5Bに正面方向から示したように、内向きに下降傾斜すると共に、前後面(20b、20b´)方向にもそれぞれ下降傾斜する傾斜部24bを備えた先細る先端部24aに形成されている。そして、
図7、
図11に示したように、履帯1の平坦走行時に、当該アウターアタッチメント2の隣り合う前面20bと後面20b´に設けられた突条20a、20a同士が当接して(
図6)、当該アウターアタッチメント2がベルト4に取付けられている。実は、隣り合う前記突条20a、20a同士が、当接(接触)する位置に配置する事が重要であり、
図7、
図9等から分かるように、プーリー6の周りの隣り合うアウターアタッチメント2同士の接地側があき、今度は
図6、
図7のように隣り合うアウターアタッチメント2同士は接触するから、隣り合うアウターアタッチメント2の基部の側面が面で接触すると異物を挟んで噛み易い事から、接触面積をなるべく少なくするため、突条20aを設けて前後面(20b、20b´)同士が逃がし面として面で接触しないようにされている。尚、図示は省略したが、上述した突条20aは、突起を直線上に並べた形にしても問題がない。
また、当該アウターアタッチメント2の地面との接地面25は、その中央が下方に若干膨らんだ湾曲状に形成されていて(
図8参照)、手押しの悪路用運搬台車9に取付けた場合に、接地抵抗を減らして旋回性能が上がる工夫もなされている。
【0018】
さらに、アウターアタッチメント2は、後述するインナーアタッチメント3が走行時に外れ難くなって履帯として直線的に剛直な構成となっている。
図6、
図7が分かり易いが、アウターアタッチメント2の基部20の後面20bに、複数の規制突起20c(20c´)が突設されていると共に、前記基部20の前面20b´に複数の規制凹部20d(20d´)が設けられている。具体的には、基部20の後面20b(側面)の内側に2つの規制突起20c、20c、その外側にそれぞれ規制突起20c´、20c´の合計4つの規制突起20c(20c´)が突設されている。同基部20の前面20b´(側面)には、前記内側の2つの規制突起20c、20cを受容するに十分な奥行・幅寸で凹んだ内側の規制凹部20dと、前記外側の2つの規制突起20c´、20c´にそれぞれ対応する位置で受容する外側の2つの規制凹部20d´、20d´が、お互いに動かない様に、その規制凹部20d(20d´)とその突規制突起20c(20c´)が上下方向で当接する位置関係に位置決め規制されて設けられている。なお、基部20の前面20b´に規制突起20c(20c´)、後面20bに規制凹部20d(20d´)を設けて実施してもよい。
よって、隣接するアウターアタッチメント2、2の一方の規制凹部20d(20d´)に、他方の規制突起20c(20c´)が入り込んで、アウターアタッチメント2、2同士のお互いの上下のズレが規制され、走行時におけるインナーアタッチメント3の離脱が防止される。勿論、規制突起規制突起20c(20c´)と規制凹部20d(20d´)の左右方向にも当接するような大きさと位置関係にして、上下方向と一緒に左右方向のズレを規制しても差し支えがない(図示は省略)。
つまり、基部20の後面20b又は前面20b´の規制凹部20d(20d´)に規制突起20c(20c´)が入り込んで、その前後面20b、20b´の各上下面で接触し、隣接するアウターアタッチメント2、2同士の上下の動きを規制したので、
図6に示したように、水平方向に連なった直線状態全体として曲がらない履帯1になるが、
図9のようにプーリー6の外周に沿って曲がる時には、開く方向に動くので入り込まないで規制がなくなり曲がる履帯1になっている。
【0019】
次に、前記インナーアタッチメント3の構成について説明する。
図3に示したように、本実施形態のインナーアタッチメント3は、一対の下向きの係止片31、31を両端に有し、その係止片31、31間は前記ベルト4を上方から覆うのに十分な幅寸に突設され、前記係止片31、31間の内部には下向きの2つの突起30、30が設けられている。また、このインナーアタッチメント3の上部両端には、各々段差31a、31aが設けられていて、作業者がこれを掴み易くし、その係止片31a、31aをアウターアタッチメント2の係止穴22、22に係止(差込み)し易くされている。しかも、その低い段差面31aは、アウターアタッチメント2の上面23と面一にされ、アウターアタッチメント2へ嵌り込む形のインナーアタッチメント3にして横にズレ難くし、係止片31が係止穴22から抜け難くなっている。
【0020】
かくして、当該インナーアタッチメント3の突起30、30が、ベルト4の貫通孔40を貫通し、前記アウターアタッチメント2の各嵌合穴21、21に嵌合されると共に、両端の各係止片31、31がアウターアタッチメント2の各係止穴22、22に係止されて、アウターアタッチメント2とインナーアタッチメント3がベルト4を挟むように合体されている。この一組ずつ合体されたアウターアタッチメント2とインナーアタッチメント3(
図3~
図5)が、ベルト4を埋める形で帯状に複数取付けられる(
図6、
図11)。よって、複数のアウターアタッチメント2がベルト4の外周41に取付けられている(
図1、
図2、
図7等参照)。
なお、上述したクローラユニット5は、履帯1の内外の側面に側面カバー7、7が取付けられ、その側面カバー7、7の前後の上面に、平坦面を有する取付板8、8が備え付けられている(
図1、
図2参照)。
【0021】
図12はアウターアタッチメント2の異なる実施例を示している。規制突起20c(20c´)と規制凹部20d(20d´)が共に同一側面に設けられたタイプである。
すなわち、
図12Aに示したように、アウターアタッチメント2の基部20の前面20bには、後述する後面20b´の内側の2つの規制突起20c、20cを受容するに十分な奥行・幅寸で凹んだ内側の規制凹部20dと、その、内側の規制凹部20dの両側にそれぞれ外側の規制突起20c´、20c´が突設されている。そして、基部20の後面20b´には、
図12Bに示したように、内側に2つの規制突起20c、20cが突設され、その内側の2つの規制突起20c、20cの両側にそれぞれ外側の規制凹部20d´、20d´が設けられている。
このようなアウターアタッチメント2によっても、上記
図4のアウターアタッチメント2と同様に、隣接するアウターアタッチメント2、2の一方(前面20b)に形成の規制凹部20d及び規制突起20c´、20c´に、他方(後面20b´)の規制突起20c、20c及び規制凹部20d´、20d´がお互いに入り込んで、アウターアタッチメント2、2同士のお互いの上下のズレが規制され、走行時におけるインナーアタッチメント3の離脱が確実に防止される。
【0022】
また、
図13と
図14に示した簡便な構造のアウターアタッチメント2とインナーアタッチメント3とで実施することも可能である。
すなわち、本実施形態のインナーアタッチメント3は、全体形状が下向きコ字状に形成され、一対の下向きの係止片31、31を両端に有し、その係止片31、31間は上記ベルト4を上方から覆うのに十分な幅寸に突設され、前記係止片31、31間の内部には下向きの2つの突起30、30が設けられている。
一方、このアウターアタッチメント2も、上述したアウターアタッチメント2と基本構造は同じく、板状の基部20と、同基部20の両端に突出したサイド部24、24とより成り、前記基部20の上面に、前記ベルト4の並列配置の2つの貫通孔40、40に対応する位置の2つの嵌合穴21、21が設けられている。そして、前記インナーアタッチメント3の係止片31、31を係止する係止穴22、22が、両端のサイド部24、24間の外寄りの内部にそれぞれ設けられている。
また、同様に、前記両端に突出するサイド部24、24の間隔は、プーリー6が納まり、回転するに十分な幅寸に設定され、プーリー6の側面を前記サイド部24、24が囲んでいるため、アウターアタッチメント2(履帯1)が、プーリー6の側面を囲んで循回し、旋回する時に横方向へ力が掛かったとしても履帯1をプーリー6から外れ難くして、プーリー6が、サイド部24の近傍の基部20の上面23に接触して回転するようになっている。
前記サイド部24の上方は、内向きに下降傾斜すると共に、前後面(20b、20b´)方向にもそれぞれ下降傾斜する傾斜部24b、24bを備えた先細る先端部24aに形成されている。そして、履帯1の平坦走行時に、当該アウターアタッチメント2の隣り合う前面20bと後面20b´に設けられた突条20a、20a同士が線で当接する配置で当該アウターアタッチメント2がベルト4に取付けられる構成である。
【0023】
したがって、この簡便構造を使用したクローラユニット5の履帯1でも、内方に曲がる際、即ち、履帯1が前後においてプーリー6を循回するときは、隣り合う前記アウターアタッチメント2同士は、サイド部24、24の先細る傾斜部24b、24b同士が内方に曲がることにより、お互いに干渉しないで曲がる。一方、履帯1が外方に曲がろうとする際には、隣り合うアウターアタッチメント2の前後の突条20a、20a同士が当接して干渉を起こし、履帯1がフラット状態を保持する。よって、履帯1が外方へ(上に凸状に)曲がる虞れがなく、プーリー6間にアウターアタッチメント2等が入り込まず、プーリー6に障害物がもろに当たらないから障害物をスムーズに乗り越えられる。
【0024】
図15は、上述したクローラユニット5を使用して構成された悪路用運搬台車9を示している。同図中、符号90は、クローラユニット5(履帯1)の取付板8の上面に設置された基台たる載置台を示し、符号91は取っ手を示している。積雪した路面や土等の柔らかい路面や凸凹等の路面環境が悪い悪路にも適応できる。
尚、実施例ではプーリー6をたくさん設けているが、プーリー6間にアウターアタッチメント2が入り込まない間隔にすればよく、振動及び騒音が許せる範囲で実施例よりも少ないプーリー数とすることも可能である。
【0025】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0026】
1 履帯
2 アウターアタッチメント
20 基部
20a 突条(突起)
20b 後面
20b´ 前面
20c 規制突起(内側)
20c´ 規制突起(外側)
20d 規制凹部(内側)
20d´ 規制凹部(外側)
21 嵌合穴
22 係止穴
23 上面
24 サイド部
24a 先端部
24b 側面
25 接地面
3 インナーアタッチメント
30 突起
31 係止片
31a 段差
4 ベルト
40 貫通孔
41 外周
5 クローラユニット
6 プーリー
9 悪路用運搬台車