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特許7256527抗真菌薬に対する活性増強作用を有する新規ポリテルペノイド化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】抗真菌薬に対する活性増強作用を有する新規ポリテルペノイド化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 17/04 20060101AFI20230405BHJP
   C07D 307/12 20060101ALI20230405BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230405BHJP
   C12R 1/66 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
C12P17/04
C07D307/12 CSP
C12N1/14 A
A61K31/341
A61P31/10
A61P43/00 121
C12R1:66
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019092118
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020186206
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-29
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-02936
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】供田 洋
(72)【発明者】
【氏名】大手 聡
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-126202(JP,A)
【文献】Biren K. Joshi et al.,New Verticillin and Glisoprenin Analogues from Gliocladium catenulatum, a Mycoparasite of Aspergillus flavus Sclerotia.,J. Nat. Prod.,1999年05月,Vol.62, No.5,p.730-733,doi: 10.1021/np980530x
【文献】Hiroshi Tomoda et al.,Glisoprenins, new inhibitors of acyl-CoA: cholesterol acyltransferase produced by Gliocladium sp. FO-1513.,J. Abtibiot.,1992年08月,Vol.45, No.8,p.1202-1206,doi: 10.7164/antibiotics.45.1202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/00
C12N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia):
【化1】
[式中、
R1’は、水素であり
R 6 及びR7は、一緒になって共有結合を形成し、
R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシルであるか、或いは
R10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成し、
R14aは、水素であり、
R15aは、ヒドロキシルであり、
R19’、R23’、及びR27’は、いずれも素であり
R 31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つ
R35aは、ヒドロキシルでる。
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の製造方法であって、
式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有する真菌アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株(受託番号NITE P-02936)である微生物を培地中で培養して、式(Ia)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程;
化合物蓄積工程で得られた式(Ia)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程;
を含む、前記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有する真菌アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株(受託番号NITE P-02936)である微生物。
【請求項4】
式(I):
【化2】
[式中、
R1’は、水素であり
R 6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し、
R10 は、水素であり、且つR11、ヒドロキシルであるか、或いは
R10及びR11は、一緒になって共有結合を形成し、
R14は、水素であり、
R15は、ヒドロキシルであり、
R 19’、R23’、及びR27’は、いずれも素であり、
R31、R34及びR35は、いずれもヒドロキシルであるか、或いは、
R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシルでる。
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬の活性増強剤。
【請求項5】
式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物が、請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である、請求項4に記載の抗真菌薬の活性増強剤。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬。
【請求項7】
1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための、請求項6に記載の医薬。
【請求項8】
請求項4又は5に記載の抗真菌薬の活性増強剤を有効成分として含む、1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための医薬。
【請求項9】
ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬をさらに含む、請求項68のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項4又は5に記載の抗真菌薬の活性増強剤と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む、1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための医薬組成物。
【請求項13】
ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬をさらに含む、請求項1012のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌薬に対する活性増強作用を有する新規ポリテルペノイド化合物及びその製造方法に関する。特に、本発明の一態様は、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬の活性増強作用を有する新規ポリテルペノイド化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1950年代以降、抗生物質の研究開発は、急速な進歩を遂げた。それに伴い、抗生物質は広範に普及し、各種感染性疾患に対する様々な治療薬が開発された。その一方、近年では、カンジダ、アスペルギルス及びクリプトコッカス等の真菌による深在性真菌症の増加及び重篤化等の現象が見出されている。これらの現象には、白血病、悪性リンパ腫若しくはHIV感染等に起因する免疫不全、抗がん剤の投与による免疫機能の低下、又は抗生物質の大量使用による菌交代現象等の問題が関与していると考えられている。
【0003】
深在性真菌症の治療には、現在のところ、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤等の抗真菌薬が使用されている。例えば、ポリエンマクロライド系薬剤の1種であるアムホテリシンBは、強い抗真菌活性を有することから、重篤な疾患の治療に有効である。しかしながら、この薬剤は、腎毒性等の副作用を生じる場合があることから、安全面での問題が指摘されている(非特許文献1)。フルオロピリミジン系薬剤の1種であるフルシトシンについても、低い安全性及び耐性菌の存在等が、問題となっている。
【0004】
アゾール系薬剤は、一般に、安全域が広く、且つ副作用が比較的少ないと考えられている。しかしながら、この薬剤は、抗真菌スペクトルが狭く、且つ静菌的な作用機序を示すことから、重篤な疾患に対する有効性が低い。また、当該薬剤に対する耐性菌の増加も指摘されている(非特許文献2)。
【0005】
近年、ミカファンギン及びカスポファンギン等のキャンディン系薬剤が開発され、深在性真菌症の治療に用いられている(非特許文献3)。しかしながら、当該薬剤は、抗真菌スペクトルが狭いため、治療対象の疾患がカンジダ症又はアスペルギルス症に限られている。また、当該薬剤に対する耐性菌の報告例も、徐々に増加している。
【0006】
特許文献1は、ポリエンマクロライド系薬剤及びアゾール系薬剤から選ばれた少なくとも1種の抗真菌剤の活性を増強する活性を有する、新規FKI-4981B物質及びその製薬学的に許容される塩を記載する。当該文献は、FKI-4981B物質が、これらの抗真菌剤の活性を増強するための医薬組成物の有効成分として使用し得ることを記載する。
【0007】
特許文献2及び3は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強する作用を有し、且つ公知の医薬化合物とは異なる骨格構造を有する新規化合物である、式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物、並びに該化合物等を有効成分として含む、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬の活性増強剤を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5843188号公報
【文献】特開2018-111670号公報
【文献】特開2018-118912号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Gallisら, Rev. Infect. Dis., 第12巻, 309-329頁, 1990年
【文献】Rexら, Antimicrob. Agents Chemothe., 第39巻、1-8頁, 1995年
【文献】Denning, Lancet, 第362巻, 9330号, 1142-1151頁, 2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
白血病等の血液疾患、又はHIV感染のような免疫力の低下を伴う疾患の場合、易感染状態が惹起される。このため、このような疾患の患者においては、日和見感染症として真菌感染症の発生頻度が増加し得る。また、これらの免疫力の低下を伴う疾患は、通常は重篤化する傾向があることから、治療期間が長期間となることが多い。その結果、真菌感染症の化学療法も、長期間となることが多い。
【0011】
現在、深在性真菌症等の真菌感染症の治療において高頻度に使用されている抗真菌薬には、いくつかの問題が存在する。例えば、ポリエンマクロライド系薬剤の1種であるアムホテリシンBは、重篤な腎毒性等の副作用を生じる場合がある。また、アゾール系薬剤は、薬剤耐性菌が極めて発生しやすいことが知られている。それ故、これらの問題を回避しつつ真菌感染症の治療効果を得るために、前記抗真菌薬の投与量の削減及び投与期間の短縮をする手段が必要とされている。
【0012】
抗真菌薬の抗真菌活性を増強する作用を有する化合物は、該抗真菌薬の投与量を削減し、且つ/又は投与期間を短縮し得る。このため、そのような作用を有する化合物を抗真菌薬と併用することにより、該抗真菌薬の投与量を削減し、且つ/又は投与期間を短縮して、腎毒性等の副作用の発生を抑制し、且つ/又は薬剤耐性菌の発生を抑制し得る。前記作用を有する化合物として、FKI-4981B物質及びその製薬学的に許容される塩等の様々な化合物が知られている(特許文献1~3)。しかしながら、より有効性の高い医薬化合物を開発するために、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強する作用を有し、且つ公知の医薬化合物とは異なる骨格構造を有する新規化合物が求められていた。
【0013】
それ故、本発明は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強する作用を有し、且つ公知の医薬化合物とは異なる骨格構造を有する新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、土壌から分離した新規菌が、ポリエンマクロライド系薬剤の1種であるアムホテリシンBの抗真菌活性を効果的に増強する作用を有する化合物をその培養液中に産生することを見出した。本発明者らは、前記培養液中の化合物が、公知の医薬化合物とは異なる骨格構造を有する新規化合物であることを見出した。また、本発明者らは、当該菌を用いる培養的手段によって前記化合物を製造できることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 式(Ia):
【化1】
[式中、
R1’は、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルであり、
R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し、
R10aは、水素であり、
R11aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは
R10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成し、
R14aは、水素であり、
R15aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであり、
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルであり、
R31a、R34a及びR35aは、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか(但し、R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成する場合、R31a、R34a及びR35aがいずれもヒドロキシルであることはない)、或いは
R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つ
R35aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは
R31aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであり、且つ
R34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成する。]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(2) R10aが、水素であり、且つR11aが、ヒドロキシルであるか、或いは
R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成する、前記実施形態(1)に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(3) R14aが、水素であり、且つR15aが、ヒドロキシルである、前記実施形態(1)又は(2)に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(4) R19’、R23’、及びR27’が、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニルである、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(5) R31a及びR34aが、一緒になって-O-を形成し、且つR35aが、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシである、前記実施形態(1)~(4)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(6) R1’が、水素であり、
R6及びR7が、一緒になって共有結合を形成し、
R10aが、水素であり、且つR11aが、ヒドロキシルであるか、或いは
R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成し、
R14aが、水素であり、
R15aが、ヒドロキシルであり、
R19’、R23’、及びR27’が、いずれも水素であり、
R31a及びR34aが、一緒になって-O-を形成し、且つR35aが、ヒドロキシルである、前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
(7) 前記実施形態(1)~(6)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の製造方法であって、
式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有する真菌アスペルギルス・ポリポリコラ BFM-0088株(受託番号NITE BP-02936)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(Ia)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程;
化合物蓄積工程で得られた式(Ia)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程;
を含む、前記方法。
(8) 前記実施形態(1)~(6)のいずれかに記載の式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有する真菌アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株(受託番号NITE BP-02936)又はその変異株である微生物。
(9) 式(I):
【化2】
[式中、
R1’は、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルであり、
R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは、
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し、
R10及びR11は、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは
R10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成し、
R14は、水素であり、
R15は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは、
R14及びR15は、一緒になって共有結合を形成し、
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルであり、
R31、R34及びR35は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは、
R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つ
R35は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いは
R31は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであり、且つ
R34及びR35は、一緒になって共有結合を形成する。]
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬の活性増強剤。
(10) 式(I)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物が、前記実施形態(1)~(6)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である、前記実施形態(9)に記載の抗真菌薬の活性増強剤。
(11) 前記実施形態(1)~(6)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬。
(12) 1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(11)に記載の医薬。
(13) 前記実施形態(9)又は(10)に記載の抗真菌薬の活性増強剤を有効成分として含む、1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための医薬。
(14) ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬をさらに含む、前記実施形態(11)~(13)のいずれかに記載の医薬。
(15) 前記実施形態(1)~(6)のいずれかに記載の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
(16) 1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための、前記実施形態(15)に記載の医薬組成物。
(17) 前記実施形態(9)又は(10)に記載の抗真菌薬の活性増強剤と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む、1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための医薬組成物。
(18) ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬をさらに含む、前記実施形態(15)~(17)のいずれかに記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の各態様により、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強する作用を有し、且つ公知の医薬化合物とは異なる骨格構造を有する新規化合物を提供することが可能となる。
【0017】
前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
<1. 化合物>
本明細書において、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「C1~C6アルキル」は、少なくとも1個且つ多くても6個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。好適なアルキルは、限定するものではないが、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシル等の直鎖又は分枝鎖のC1~C6アルキルを挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「アルケニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なアルケニルは、限定するものではないが、例えばビニル、1-プロペニル、アリル、1-メチルエテニル(イソプロペニル)、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ペンテニル及び1-ヘキセニル等の直鎖又は分枝鎖のC2~C6アルケニルを挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「アルキニル」は、前記アルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なアルキニルは、限定するものではないが、例えばエチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、1-ペンチニル及び1-ヘキシニル等の直鎖又は分枝鎖のC2~C6アルキニルを挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「シクロアルキル」は、特定の数の炭素原子を含む、脂環式アルキルを意味する。例えば、「C3~C6シクロアルキル」は、少なくとも3個且つ多くても6個の炭素原子を含む、環式の炭化水素基を意味する。好適なシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のC3~C6シクロアルキルを挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「シクロアルケニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が二重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルケニルは、限定するものではないが、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニル等のC4~C6シクロアルケニルを挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「シクロアルキニル」は、前記シクロアルキルの1個以上のC-C単結合が三重結合に置換された基を意味する。好適なシクロアルキニルは、限定するものではないが、例えばシクロブチニル、シクロペンチニル及びシクロヘキシニル等のC4~C6シクロアルキニルを挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」は、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素(N)、硫黄(S)及び酸素(O)から選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロシクロアルキルは、限定するものではないが、例えばピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル等の3~6員のヘテロシクロアルキルを挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「シクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えばシクロヘキシルメチル及びシクロヘキセニルメチル等のC7~C11シクロアルキルアルキルを挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキルアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロシクロアルキルアルキルは、限定するものではないが、例えば3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキルを挙げることができる。
【0028】
本明細書において、「アルコキシ」及び「アルコキシル」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルに置換された基を意味する。好適なアルコキシ及びアルコキシルは、限定するものではないが、例えばメトキシ又はメトキシル、エトキシ又はエトキシル、プロポキシ又はプロポキシル、ブトキシ又はブトキシル、ペントキシ又はペントキシル、及びヘキソキシ又はヘキソキシル等のC1~C6アルコキシ又はC1~C6アルコキシルを挙げることができる。
【0029】
本明細書において、「シクロアルコキシ」及び「シクロアルコキシル」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記シクロアルキル、シクロアルケニル又はシクロアルキニルに置換された基を意味する。好適なシクロアルコキシ及びシクロアルコキシルは、限定するものではないが、例えばシクロプロポキシ又はシクロプロポキシル、シクロブトキシ又はシクロブトキシル及びシクロペントキシ又はシクロペントキシル等のC3~C6シクロアルコキシ又はC3~C6シクロアルコキシルを挙げることができる。
【0030】
本明細書において、「ヘテロシクロアルコキシ」及び「ヘテロシクロアルコキシル」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロシクロアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロシクロアルコキシ及びヘテロシクロアルコキシルは、限定するものではないが、例えば3~6員のヘテロシクロアルコキシ又は3~6員のヘテロシクロアルコキシルを挙げることができる。
【0031】
本明細書において、「アリール」は、芳香環基を意味する。好適なアリールは、限定するものではないが、例えばフェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル及びアントラセニル等のC6~C18アリールを挙げることができる。
【0032】
本明細書において、「アリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、ビフェニルメチル、テルフェニルメチル及びスチリル等のC7~C20アリールアルキルを挙げることができる。
【0033】
本明細書において、「ヘテロアリール」は、前記アリールの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立してN、S及びOから選択される1個以上のヘテロ原子に置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN-オキシド又はSのオキシド若しくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロアリールは、限定するものではないが、例えばフラニル、チエニル(チオフェンイル)、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル及びインドリル等の5~15員のヘテロアリールを挙げることができる。
【0034】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」は、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの水素原子の1個が前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルは、限定するものではないが、例えばピリジルメチル等の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルを挙げることができる。
【0035】
本明細書において、「アリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールに置換された基を意味する。好適なアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフチルオキシ及びアントリルオキシ(アントラセニルオキシ)等のC6~C18アリールオキシを挙げることができる。
【0036】
本明細書において、「アリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記アリールアルキルに置換された基を意味する。好適なアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えばベンジルオキシ、1-フェネチルオキシ、2-フェネチルオキシ及びスチリルオキシ等のC7~C20アリールアルキルオキシを挙げることができる。
【0037】
本明細書において、「ヘテロアリールオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールオキシは、限定するものではないが、例えばフラニルオキシ、チエニルオキシ(チオフェンイルオキシ)、ピロリルオキシ、イミダゾリルオキシ、ピラゾリルオキシ、トリアゾリルオキシ、テトラゾリルオキシ、チアゾリルオキシ、オキサゾリルオキシ、イソオキサゾリルオキシ、オキサジアゾリルオキシ、チアジアゾリルオキシ、イソチアゾリルオキシ、ピリジルオキシ、ピリダジニルオキシ、ピラジニルオキシ、ピリミジニルオキシ、キノリニルオキシ、イソキノリニルオキシ及びインドリルオキシ等の5~15員のヘテロアリールオキシを挙げることができる。
【0038】
本明細書において、「ヘテロアリールアルキルオキシ」は、ヒドロキシルの水素原子が、前記ヘテロアリールアルキルに置換された基を意味する。好適なヘテロアリールアルキルオキシは、限定するものではないが、例えば5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシを挙げることができる。
【0039】
本明細書において、「アシル」は、前記で説明した基から選択される一価基とカルボニルとが連結した基を意味する。好適なアシルは、限定するものではないが、例えばホルミル、アセチル及びプロピオニル等のC1~C6脂肪族アシル、並びにベンゾイル等のC7~C20芳香族アシルを包含するC1~C20アシルを挙げることができる。
【0040】
前記で説明した基は、それぞれ独立して、非置換であるか、或いは1個若しくは複数個の前記で説明した一価基によってさらに置換することもできる。
【0041】
本明細書において、「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)又はヨウ素(I)を意味する。
【0042】
本発明の一態様は、式(Ia):
【化3】
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に関する。
【0043】
本発明の別の一態様は、式(I):
【化4】
で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む抗真菌薬の活性増強剤に関する。
【0044】
本発明者らは、土壌から分離した新規真菌が、ポリエンマクロライド系薬剤の1種であるアムホテリシンBの抗真菌活性を効果的に増強する作用を有する化合物をその培養液中に産生することを見出した。本発明者らは、前記培養液中から、アムホテリシンBの抗真菌活性を増強する活性を有する公知化合物グリソプレニンF、並びに新規化合物グリソプレニンG及びH(以下、単に「グリソプレニン類」とも記載する)を見出した。グリソプレニンF、G及びHは、単独投与では実質的に抗真菌活性を示さないにもかかわらず、アムホテリシンBと併用投与することにより、アムホテリシンBの抗真菌活性を顕著に増強し得る。本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物は、新規の天然有機化合物グリソプレニンG及びH、並びにその類縁化合物を包含する。また、本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物は、公知又は新規の天然有機化合物グリソプレニン類、及びその類縁化合物を包含する。すなわち、式(I)で表される化合物は、式(Ia)で表される化合物を包含する。それ故、本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0045】
式(Ia)で表される化合物は、先行技術に開示されていない新規化合物である。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、例えば特許文献1~3に記載の化合物を上回る高い抗真菌薬の活性増強効果を有する。また、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、ポリテルペノイド骨格を有する。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物のこのような骨格構造は、例えば特許文献1~3に記載の抗真菌薬の活性増強剤に含まれる有効成分の化合物の骨格構造と相違する。それ故、本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物は、従来の薬剤で十分な抗真菌薬の活性増強効果が得られない患者に対して有意な治療効果を発現し得る可能性がある。
【0046】
式(I)及び(Ia)において、R1’は、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルである。R1’は、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであることが好ましく;水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、又は置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニルであることがより好ましく;水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであることがさらに好ましく;水素であることが特に好ましい。R1’が前記で例示した基である場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0047】
式(I)及び(Ia)において、R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いはR6及びR7は、一緒になって共有結合を形成する。R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いはR6及びR7は、一緒になって共有結合を形成することが好ましく;互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いはR6及びR7は、一緒になって共有結合を形成することがより好ましく;いずれもヒドロキシルであるか、或いはR6及びR7は、一緒になって共有結合を形成することがさらに好ましく;一緒になって共有結合を形成することが特に好ましい。R6及びR7が前記で例示した基である場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0048】
式(I)において、R10及びR11は、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いはR10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成する。R10及びR11は、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いはR10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成することが好ましく;互いに独立して、水素、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いはR10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成することがより好ましく;R10は、水素であり、且つR11は、ヒドロキシルであるか、或いはR10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成することがさらに好ましい。R10及びR11が前記で例示した基である場合、式(I)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0049】
式(Ia)において、R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いはR10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成する。R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いはR10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成することが好ましく;R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いはR10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成することがより好ましく;R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシルであるか、或いはR10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成することがさらに好ましい。R10a及びR11aが前記で例示した基である場合、式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0050】
式(I)において、R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであるか、或いはR14及びR15は、一緒になって共有結合を形成する。R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いはR14及びR15は、一緒になって共有結合を形成することが好ましく;R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いはR14及びR15は、一緒になって共有結合を形成することがより好ましく;R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシルであるか、或いはR14及びR15は、一緒になって共有結合を形成することがさらに好ましい。R14及びR15が前記で例示した基である場合、式(I)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0051】
式(Ia)において、R14aは、水素であり、且つR15aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシである。R14aは、水素であり、且つR15aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであることが好ましく;R14aは、水素であり、且つR15aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであることがより好ましく;R14aは、水素であり、且つR15aは、ヒドロキシルであることがさらに好ましい。R14a及びR15aが前記で例示した基である場合、式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0052】
式(I)及び(Ia)において、R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のアシルである。R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであることが好ましく;互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニルであることがより好ましく;互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであることがさらに好ましく;いずれも水素であることが特に好ましい。R19’、R23’、及びR27’が前記で例示した基である場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0053】
式(I)で表される化合物の一実施形態において、R31、R34及びR35は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシである。本実施形態の場合、R31、R34及びR35は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであることが好ましく;互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであることがより好ましく;いずれもヒドロキシルであることがさらに好ましい。
【0054】
或いは、式(I)で表される化合物の別の一実施形態において、R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシである。本実施形態の場合、R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであることが好ましく;R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであることがより好ましく;R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシルであることがさらに好ましい。
【0055】
或いは、式(I)で表される化合物の別の一実施形態において、R31は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成する。本実施形態の場合、R31は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成することが好ましく;R31は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成することがより好ましく;R31は、ヒドロキシルであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成することがさらに好ましい。
【0056】
R31、R34及びR35が前記で例示した基である場合、式(I)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0057】
式(Ia)で表される化合物の一実施形態において、R31a、R34a及びR35aは、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシである。但し、R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成する場合、R31a、R34a及びR35aがいずれもヒドロキシルであることはない。本実施形態の場合、R31a、R34a及びR35aは、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであることが好ましく;互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであることがより好ましく;いずれもヒドロキシルであることがさらに好ましい。但し、R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成する場合、R31a、R34a及びR35aがいずれもヒドロキシルであることはない。
【0058】
或いは、式(Ia)で表される化合物の別の一実施形態において、R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシである。本実施形態の場合、R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであることが好ましく;R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであることがより好ましく;R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシルであることがさらに好ましい。
【0059】
或いは、式(Ia)で表される化合物の別の一実施形態において、R31aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のアシルオキシであり、且つR34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成する。本実施形態の場合、R31aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであり、且つR34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成することが好ましく;R31aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであり、且つR34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成することがより好ましく;R31aは、ヒドロキシルであり、且つR34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成することがさらに好ましい。
【0060】
特に好ましくは、R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシルである。R31a、R34a及びR35aが前記で例示した基である場合、式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0061】
式(I)及び(Ia)において、前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のシクロアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のアリールアルキル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換若しくは非置換のアルコキシ、置換若しくは非置換のシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のアシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基であることが好ましく、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基であることがより好ましく、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、及び置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシからなる群より選択される少なくとも1個の一価基であることがさらに好ましく、ヒドロキシルであることが特に好ましい。前記一価基又は二価基は、非置換であることが好ましい。前記一価基又は二価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0062】
式(I)で表される化合物は、前記で例示されるR1’、R6、R7、R10、R11、R14、R15、R19’、R23’、R27’、R31、R34及びR35の任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0063】
式(Ia)で表される化合物は、前記で例示されるR1’、R6、R7、R10a、R11a、R14a、R15a、R19’、R23’、及びR27’、R31a、R34a及びR35aの任意の組み合わせによって定義される化合物を包含することができる。
【0064】
好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1’は、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであり;
R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10及びR11は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成し;
R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R14及びR15は、一緒になって共有結合を形成し;
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであり;
R31、R34及びR35は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R31は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成し;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基又は二価基は、非置換であることが好ましい。前記一価基又は二価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0065】
より好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1’は、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、又は置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニルであり;
R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10及びR11は、互いに独立して、水素、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成し;
R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R14及びR15は、一緒になって共有結合を形成し;
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニルであり;
R31、R34及びR35は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R31は、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成し;
前記基が置換されている場合、該置換基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基又は二価基は、非置換であることが好ましい。前記一価基又は二価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0066】
さらに好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1’は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであり;
R6及びR7は、いずれもヒドロキシルであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10は、水素であり、且つR11は、ヒドロキシルであるか、或いは
R10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成し;
R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシルであるか、或いは
R14及びR15は、一緒になって共有結合を形成し;
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであり;
R31、R34及びR35は、いずれもヒドロキシルであるか、或いは
R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシルであるか、或いは
R31は、ヒドロキシルであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成する。
【0067】
特に好ましくは、式(I)で表される化合物は、
R1’は、水素であり;
R6及びR7は、いずれもヒドロキシルであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10は、水素であり、且つR11は、ヒドロキシルであるか、或いは
R10及びR11は、一緒になって共有結合又は-O-を形成し;
R14は、水素であり、且つR15は、ヒドロキシルであるか、或いは
R14及びR15は、一緒になって共有結合を形成し;
R19’、R23’、及びR27’は、いずれも水素であり;
R31、R34及びR35は、いずれもヒドロキシルであるか、或いは
R31及びR34は、一緒になって-O-を形成し、且つR35は、ヒドロキシルであるか、或いは
R31は、ヒドロキシルであり、且つR34及びR35は、一緒になって共有結合を形成する。
【0068】
好ましくは、式(Ia)で表される化合物は、
R1’は、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであり;
R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成し;
R14aは、水素であり;
R15aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであり;
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルであり;
R31a、R34a及びR35aは、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか(但し、R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成する場合、R31a、R34a及びR35aがいずれもヒドロキシルであることはない)、或いは
R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであるか、或いは
R31aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルケニルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、又は置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシであり、且つR34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成し;
前記基が置換されている場合、該置換基は、それぞれ独立して、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基又は二価基は、非置換であることが好ましい。前記一価基又は二価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0069】
より好ましくは、式(Ia)で表される化合物は、
R1’は、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、又は置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニルであり;
R6及びR7は、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成し;
R14aは、水素であり;
R15aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであり;
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルケニル、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキニルであり;
R31a、R34a及びR35aは、互いに独立して、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか(但し、R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成する場合、R31a、R34a及びR35aがいずれもヒドロキシルであることはない)、或いは
R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであるか、或いは
R31aは、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、又は置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシであり、且つR34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成し;
前記基が置換されている場合、該置換基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、置換若しくは非置換のC1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC2~C6アルケニル、置換若しくは非置換のC2~C6アルキニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルキル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルケニル、置換若しくは非置換のC4~C6シクロアルキニル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換のC7~C11シクロアルキルアルキル、置換若しくは非置換の3~6員のヘテロシクロアルキル-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC6~C18アリール、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキル、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキル、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシ、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシ、置換若しくは非置換の3~6員ヘテロシクロアルコキシ、置換若しくは非置換のC6~C18アリールオキシ、置換若しくは非置換のC7~C20アリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換の5~15員のヘテロアリール-C1~C6アルキルオキシ、置換若しくは非置換のC1~C6アルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC3~C6シクロアルコキシカルボニル、置換若しくは非置換のC1~C20アシル、置換若しくは非置換のC1~C20アシルオキシ、置換若しくは非置換のアミノ、及びオキソ(C=O)からなる群より選択される少なくとも1個の一価基又は二価基である。前記一価基又は二価基は、非置換であることが好ましい。前記一価基又は二価基が置換されている場合、該置換基は、前記一価基又は二価基からさらに選択されることが好ましく、非置換の前記一価基又は二価基からさらに選択されることがより好ましい。
【0070】
さらに好ましくは、式(Ia)で表される化合物は、
R1’は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであり;
R6及びR7は、いずれもヒドロキシルであるか、或いは
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシルであるか、或いは
R10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成し;
R14aは、水素であり;
R15aは、ヒドロキシルであり;
R19’、R23’、及びR27’は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルであり;
R31a、R34a及びR35aは、いずれもヒドロキシルであるか(但し、R10a及びR11aが、一緒になって共有結合を形成する場合、R31a、R34a及びR35aがいずれもヒドロキシルであることはない)、或いは
R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシルであるか、或いは
R31aは、ヒドロキシルであり、且つR34a及びR35aは、一緒になって共有結合を形成する。
【0071】
特に好ましくは、式(Ia)で表される化合物は、
R1’は、水素であり;
R6及びR7は、一緒になって共有結合を形成し;
R10aは、水素であり、且つR11aは、ヒドロキシルであるか、或いは
R10a及びR11aは、一緒になって共有結合を形成し;
R14aは、水素であり;
R15aは、ヒドロキシルであり;
R19’、R23’、及びR27’は、いずれも水素であり;
R31a及びR34aは、一緒になって-O-を形成し、且つR35aは、ヒドロキシルである。
【0072】
とりわけ特に好ましい式(I)で表される化合物は、以下:
(2E,6E)-30-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-2-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-3,7,11,15,19,23,27-ヘプタメチルトリアコンタ-2,6-ジエン-1,11,15,19,23,27-ヘキサオール(化合物1;グリソプレニンG);
(2E,6E,10E)-30-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-2-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-3,7,11,15,19,23,27-ヘプタメチルトリアコンタ-2,6,10-トリエン-1,15,19,23,27-ペンタオール(化合物2;グリソプレニンH);及び
(2E,6E,10E)-3,7,11,15,19,23,27,31,35-ノナメチルヘキサトリアコンタ-2,6,10-トリエン-1,15,19,23,27,31,34,35-オクタオール(化合物3:グリソプレニンF);
である。
【0073】
とりわけ特に好ましい式(Ia)で表される化合物は、以下:
(2E,6E)-30-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-2-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-3,7,11,15,19,23,27-ヘプタメチルトリアコンタ-2,6-ジエン-1,11,15,19,23,27-ヘキサオール(化合物1;グリソプレニンG);及び
(2E,6E,10E)-30-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-2-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-3,7,11,15,19,23,27-ヘプタメチルトリアコンタ-2,6,10-トリエン-1,15,19,23,27-ペンタオール(化合物2;グリソプレニンH);
である。
【0074】
本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物が前記化合物である場合、該化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を特に効果的に増強することができる。
【0075】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の塩としては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオンとの塩、又は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸若しくはリン酸のような無機酸、又はギ酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸のような有機酸アニオンとの塩が好ましい。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物が前記の塩の形態である場合であっても、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0076】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、或いは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール若しくは2-プロパノール(イソプロピルアルコール)のような1~6の炭素原子数を有するアルコール)、高級アルコール(例えば、1-ヘプタノール若しくは1-オクタノールのような7以上の炭素原子数を有するアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン又は酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合であっても、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0077】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、前記化合物自体だけでなく、その保護形態も包含する。本明細書において、「保護形態」は、1個又は複数個の官能基(例えばアミノ基、ヒドロキシル基又はカルボン酸基)に保護基が導入された形態を意味する。本明細書において、前記各式で表される化合物の保護形態を、前記各式で表される化合物の保護誘導体と記載する場合がある。また、本明細書において、「保護基」は、望ましくない反応の進行を防止するために、特定の官能基に導入される基であって、特定の反応条件において定量的に除去され、且つそれ以外の反応条件においては実質的に安定、即ち反応不活性である基を意味する。前記化合物の保護形態を形成し得る保護基としては、限定するものではないが、例えば、アミノ基の保護基の場合、t-ブトキシカルボニル(Boc)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(BrZ)、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が、ヒドロキシル基の保護基の場合、シリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)若しくはtert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS))、又はアルコキシ(例えば、メトキシメトキシ(MOM)若しくはメトキシ(Me))が、カルボン酸基の保護基の場合、アルキルエステル(例えばメチル、エチル若しくはイソプロピルエステル)、アリールアルキルエステル(例えばベンジルエステル)、又はアミド(例えばオキサゾリジノン類とのアミド)が、それぞれ好ましい。前記保護基による保護化及び脱保護化は、公知の反応条件に基づき、当業者が適宜実施することができる。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物が前記の保護基による保護形態である場合であっても、抗真菌薬の活性増強効果を実質的に低下させることなく、該化合物を使用することができる場合がある。
【0078】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物が1個又は複数個の互変異性体を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々の互変異性体の形態も包含する。
【0079】
また、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物が1個又は複数個の立体中心(キラル中心)を有する場合、前記化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のようなそれらの混合物も包含する。
【0080】
前記特徴を有することにより、本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を効果的に増強することができる。
【0081】
<2. 培養的手段による新規化合物の製造方法>
本発明者らは、新規真菌が、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物に包含されるグリソプレニンG(化合物1)及びグリソプレニンH(化合物2)をその培養液中に産生することを見出した。それ故、本発明の別の一態様は、新規真菌を用いる式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を製造する方法に関する。
【0082】
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程及び化合物精製工程を含む。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0083】
[2-1. 化合物蓄積工程]
本態様において、本発明の方法は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有する真菌アスペルギルス・ポリポリコラ(Aspergillus polyporicola) BFM-0088株(受託番号NITE BP-02936)又はその変異株である微生物を培地中で培養して、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を該培地中に蓄積させる、化合物蓄積工程を含む。
【0084】
アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株は、日本国東京都東京湾の土壌より分離された真菌である。本菌株は、BFM-0088として、2019年4月3日付にて、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(受託番号NITE BP-02936)。
【0085】
本工程において、培養に使用される微生物は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有するアスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株又はその変異株であることが好ましく、アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株であることがより好ましい。本発明の各態様において、アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株の変異株は、アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株の自然変異株又は人工変異株を意味する。アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株の人工変異株は、当該技術分野で通常使用される任意の人工変異株の作出手段によって得ることができる。アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株自体だけでなく、アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株の変異株であっても、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有する微生物であれば、本工程において式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を培地中に蓄積することができる。それ故、前記微生物を使用することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を培地中に大量に蓄積させることができる。
【0086】
微生物の培養に使用される培地は、該微生物の性質に基づき適宜選択することができる。培地は、通常は、1個以上の炭素源及び1個以上の窒素源、並びに場合により1個以上の無機塩及び1個以上のビタミンを含有する。炭素源としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、デキストリン及びデンプン等の糖類、並びに大豆油等の植物性油脂類を挙げることができる。窒素源としては、ポリペプトン、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、大豆粉、綿実粉、コーン・スティーブ・リカー、カゼイン、アミノ酸、尿素、アンモニウム塩及び硝酸塩を挙げることができる。無機塩としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、銅イオン、コバルトイオン又は亜鉛イオン等のカチオンと、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸又はリン酸のような無機酸アニオンとの塩を挙げることができる。本工程において使用される培地は、例えば、ポテト・デキストロース・寒天(PDA)培地(ポテト・デキストロース・アガー 3.9%(Becton Dickinson(BD)))、種培地(1.0% グルコース(富士フィルム和光純薬株式会社)、0.5% ポリペプトン(BD)、0.05% MgSO4・7H2O(関東化学株式会社)、0.2% 酵母エキス(BD)、0.1% K2HPO4(関東化学株式会社)及び0.1% 寒天(清水食品株式会社))、又は生産培地(2.4% PDB (BD)、0.5% MgSO4・7H2O(関東化学株式会社)、0.5% K2HPO4(関東化学株式会社)、0.5% Mg3(PO4 )2・8H2O(関東化学株式会社)、及び5 g/mL玄米(明神株式会社))が好ましい。前記培地中で、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有するアスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株又はその変異株である微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を該培地中に蓄積させることができる。
【0087】
微生物の培養は、固体培養又は液体培養のいずれであってもよい。大スケールで前記微生物を培養する場合には、液体培養であることが好ましい。この場合、培養容器の振盪若しくはプロペラ等による培地の攪拌、又はポンプ等による空気の吹き込みによって培地中に通気することが好ましい。培地中に導入される空気は、滅菌フィルター等の滅菌手段を用いて滅菌することが好ましい。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0088】
大スケールで前記微生物を培養する場合、予め少量の培地中で前記微生物を培養(以下、「種培養」とも記載する)し、その後、種培養で得られた培養物を大容量の培地に植菌して培養(以下、「生産培養」とも記載する)することが好ましい。この場合、種培養及び生産培養に使用される培地の成分は、同一であってもよく、異なっていてもよい。種培養及び生産培養を含む複数段階の培養によって本工程を実施することにより、微生物の生育の遅延を実質的に抑制することができる。
【0089】
本工程において、微生物を培養する条件は、該微生物の性質に基づき適宜設定することができる。培養温度は、通常は25~27℃の範囲であり、典型的には約27℃である。培地のpHは、通常はpH 3~9であり、典型的にはpH 5.6±0.2である。培養期間は、液体培地を振盪培養する場合、種培養及び生産培養の合計として、通常は1日間~3週間であり、典型的には3~17日間である。前記条件で微生物を培養することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を効率的に培地中に蓄積させることができる。
【0090】
[2-2. 化合物精製工程]
本態様において、本発明の方法は、化合物蓄積工程で得られた式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を前記微生物の培養物から精製する、化合物精製工程を含む。
【0091】
本工程において、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、当該技術分野で通常使用される有機化合物の分離法を使用することができる。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を微生物の培養物から精製する手段としては、例えば、抽出、濾過、遠心分離、吸着、再結晶、蒸留、及び各種クロマトグラフィー等を挙げることができる。好ましくは、本工程は、化合物蓄積工程で得られた微生物の培養物から濾過又は遠心分離等によって菌体を分離する工程、分離した菌体をエタノール又は酢酸エチル等の有機溶媒で抽出する工程、及び有機溶媒で抽出した菌体抽出物を溶媒抽出又は分取クロマトグラフィー等の手段でさらに分離して、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を得る工程を含む。前記分取クロマトグラフィーとしては、吸着、順相若しくは逆相分配、又はゲル濾過等の各種クロマトグラフィーを適用することができる。最終工程において、分取クロマトグラフィーで得られた画分を、例えば再結晶又は蒸留等の手段でさらに精製してもよい。前記各工程は、所望により同一又は異なる条件下で複数回繰り返してもよい。前記手段を用いることにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を微生物の培養物から精製し単離することができる。
【0092】
本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法において、式(I)で表される化合物は、前記で例示した基R1’、R6、R7、R10、R11、R14、R15、R19’、R23’、及びR27’、R31、R34及びR35を有することが好ましく、特に式(Ia)で表される化合物は、前記で例示した基R1’、R6、R7、R10a、R11a、R14a、R15a、R19’、R23’、及びR27’、R31a、R34a及びR35aを有することが好ましい。この場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株が産生するグリソプレニンG(化合物1)及びグリソプレニンH(化合物2)を包含する。本態様の方法を用いることにより、グリソプレニンG(化合物1)及びグリソプレニンH(化合物2)を包含する式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0093】
以上の特徴を有する本態様の培養的手段による本発明の化合物の製造方法により、医薬の有効成分となり得る式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を、高純度且つ低コストで大量に提供することができる。
【0094】
本発明の別の一態様は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を産生する能力を有する真菌アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088株(受託番号NITE BP-02936)又はその変異株である微生物に関する。本態様において、式(I)で表される化合物は、前記で例示した基R1’、R6、R7、R10、R11、R14、R15、R19’、R23’、及びR27’、R31、R34及びR35を有することが好ましく、特に式(Ia)で表される化合物は、前記で例示した基R1’、R6、R7、R10a、R11a、R14a、R15a、R19’、R23’、及びR27’、R31a、R34a及びR35aを有することが好ましい。本態様の微生物を用いることにより、グリソプレニンG(化合物1)及びグリソプレニンH(化合物2)を包含する式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を効率的に製造することができる。
【0095】
<3. 医薬用途>
本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物は、抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を有する。それ故、本発明の別の一態様は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む、少なくとも1種の抗真菌薬の活性増強剤に関する。また、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を対象に投与した場合、抗真菌薬の活性増強効果を介して、該対象の有する特定の症状、疾患若しくは障害を予防又は治療し得る。それ故、本発明の別の一態様は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬又は医薬組成物に関する。
【0096】
本発明の各態様において、少なくとも1種の抗真菌薬は、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される。少なくとも1種の抗真菌薬は、ポリエンマクロライド系薬剤であることが好ましい。ポリエンマクロライド系薬剤は、アムホテリシンB、ピマリシン、ナイスタチン又はナタマイシンであることが好ましく、アムホテリシンBであることがより好ましい。アゾール系薬剤は、ミコナゾールのようなイミダゾール系化合物、又はフルコナゾール、イトラコナゾール、ホスフォフルコナゾール若しくはボリコナゾールのようなトリアゾール系化合物であることが好ましい。キャンディン系薬剤は、ミカファンギン又はカスポファンギンであることが好ましい。フルオロピリミジン系薬剤は、フルシトシンであることが好ましい。ポリエンマクロライド系薬剤であるアムホテリシンBは、高い抗真菌活性を有し、重篤な真菌感染症の治療に有用である一方、腎毒性等の副作用を示す可能性がある。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、ポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤等の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を有する。それ故、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物をポリエンマクロライド系薬剤、アゾール系薬剤、キャンディン系薬剤及びフルオロピリミジン系薬剤からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌薬と一緒に投与することにより、副作用の可能性がある抗真菌薬の投与量を低減する、及び/又は投与期間を短縮することができる。これにより、少なくとも1種の抗真菌薬による副作用の発生を実質的に低減することができる。
【0097】
本発明の各態様において、「一緒に投与する」は、複数の薬剤を同時に、又は別々に(例えば一定の間隔で連続的に)投与することを意味する。本明細書において、このような投与形態を、「併用投与」と記載する場合がある。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物及び少なくとも1種の抗真菌薬を併用投与することにより、副作用の可能性がある抗真菌薬の投与量を低減する、及び/又は投与期間を短縮することができる。これにより、少なくとも1種の抗真菌薬による副作用の発生を実質的に低減することができる。
【0098】
本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物は、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を有する。他方、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、それ自体、抗真菌活性を有してもよく、有していなくてもよい。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、通常は、それ自体、実質的に抗真菌活性を有していない。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、それ自体、実質的に抗真菌活性を有していない場合であっても、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を有することから、少なくとも1種の抗真菌薬との併用投与により、副作用の可能性がある抗真菌薬の投与量を低減する、及び/又は投与期間を短縮することができる。これにより、少なくとも1種の抗真菌薬による副作用の発生を実質的に低減することができる。
【0099】
本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物、及び少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性は、限定するものではないが、例えば、以下の手段で決定することができる。米国臨床検査標準協会(CLSI)M27-A3法及びM38-A2法に従う微量液体希釈法により、任意の検定用真菌(例えば、酵母性真菌、糸状菌及び接合菌)に対して、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物、又は少なくとも1種の抗真菌薬を投与する。所定の条件下で培養後、濁度(例えばOD550)又はコロニー直径等を指標として真菌の生育を測定し、培養開始時の値との比較から阻害率(%)を算出する。算出された阻害率が所定の値(例えば90%)以上となる化合物の最小濃度を、該化合物の最小生育阻止濃度 (MIC値)とする。このようにして決定される阻害率及びMIC値に基づき、本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物、及び少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を評価することができる。
【0100】
本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性は、限定するものではないが、例えば、以下の手段で決定することができる。前記手段に基づき、少なくとも1種の抗真菌薬を単独投与する場合のMIC値を決定する。次いで、同様の試験条件において、式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物、及び少なくとも1種の抗真菌薬を一緒に(例えば同時に)投与して、式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物、及び少なくとも1種の抗真菌薬を併用投与する場合のMIC値を決定する。下記の式(M-1)に基づき、式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性の増強率を算出する。例えば、増強率が2倍の場合、式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物の併用投与時の少なくとも1種の抗真菌薬のMIC値は、該抗真菌薬の単独投与時のMIC値の1/2となる。このようにして決定される増強率に基づき、本発明の一態様の抗真菌薬の活性増強剤の有効成分である式(I)で表される化合物、特に本発明の一態様の式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を評価することができる。
【数1】
【0101】
本態様において、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物と併用投与される少なくとも1種の抗真菌薬は、前記手順により決定されるMIC値が、酵母性真菌(例えばカンジダ・アルビカンス)に対して、通常は1 μg/mLである。この場合において、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、通常は0.25 μg/mL以上、例えば0.5 μg/mL以上、特に1 μg/mL以上の濃度で少なくとも1種の抗真菌薬と併用投与することにより、通常は2倍以上、例えば8~64倍の範囲、特に16~32倍の範囲の増強率で、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強することができる。それ故、前記範囲の増強率を有する場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、少なくとも1種の抗真菌薬との併用投与により、副作用の可能性がある抗真菌薬の投与量を低減する、及び/又は投与期間を短縮することができる。これにより、少なくとも1種の抗真菌薬による副作用の発生を実質的に低減することができる。
【0102】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物が前記の製薬上許容される塩又は製薬上許容される溶媒和物の形態である場合、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を実質的に低下させることなく、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
【0103】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。前記化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、ヒドロキシル基が存在する場合、該ヒドロキシル基と任意のカルボン酸とのエステル、及び該ヒドロキシル基と任意のアミンとのアミド等を、例えば、アミノ基が存在する場合、該アミノ基と任意のカルボン酸とのアミド等を、挙げることができる。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物である式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を実質的に低下させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。
【0104】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本態様の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含む医薬組成物の形態で提供されることもできる。本態様の医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、油性液(例えば、植物油)、懸濁剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等を含んでもよい。
【0105】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される媒体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、D-マンノース若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)若しくはエステル(例えば安息香酸ベンジル)のような溶解補助剤、ポリソルベート80(商標)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当なバイアル(例えばアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
【0106】
経口投与に使用するための製剤としては、例えば、錠剤、丸薬、散剤、カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、エリキシル剤、液剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁液等を挙げることができる。錠剤は、所望により、糖衣又は溶解性被膜を施した糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、口腔内崩壊錠(OD錠)又はフィルムコーティング錠の剤形として製剤してもよく、或いは二重錠又は多層錠の剤形として製剤してもよい。
【0107】
錠剤又はカプセル剤等に混和することができる成分としては、限定するものではないが、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム又はアラビアゴムのような結合剤;結晶性セルロース、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン又はケイ酸のような賦形剤;乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉、乳糖又はポリビニルピロリドンのような崩壊剤;白糖、ステアリンカカオバター又は水素添加油のような崩壊抑制剤;コーンスターチ、ゼラチン又はアルギン酸のような膨化剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;第四級アンモニウム塩又はラウリル硫酸ナトリウムのような吸収促進剤;グリセリン又はデンプンのような保湿剤;澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト又はコロイド状ケイ酸のような吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、ホウ酸末又はポリエチレングリコールのような潤滑剤;ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤;及びペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤等を挙げることができる。製剤がカプセル剤の場合、さらに油脂のような液状担体を含有してもよい。
【0108】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、デポー製剤として製剤化することもできる。この場合、デポー製剤の剤形の本態様の医薬を、例えば皮下若しくは筋肉に埋め込み、又は筋肉注射により投与することができる。本態様の医薬をデポー製剤に適用することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を、長期間に亘って持続的に発現することができる。
【0109】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物は、少なくとも1種の抗真菌薬と一緒に提供されてもよく、別々に提供されてもよい。いずれの場合も、本態様の実施形態に包含される。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物に加えて、少なくとも1種の抗真菌薬をさらに含む実施形態の場合、すなわち、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物、及び少なくとも1種の抗真菌薬が一緒に提供される実施形態の場合、本態様の医薬は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、少なくとも1種の抗真菌薬とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であることができる。本実施形態の場合、本態様の医薬は、例えば、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、少なくとも1種の抗真菌薬とを含む、単一製剤の形態で提供することができる。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物が少なくとも1種の抗真菌薬と別々に提供される実施形態の場合、本態様の医薬は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を少なくとも含む、少なくとも1種の抗真菌薬と併用される医薬組成物の形態であることができる。本実施形態の場合、本態様の医薬は、例えば、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、少なくとも1種の抗真菌薬とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供することができる。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。或いは、本態様の医薬は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物のみを含む(すなわち、少なくとも1種の抗真菌薬を含まない)製剤の形態で提供することもできる。いずれの実施形態であっても、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物、及び少なくとも1種の抗真菌薬を併用投与することができる。
【0110】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、少なくとも1種の抗真菌薬以外の医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。この場合、本態様の医薬は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを含む併用医薬の形態となる。前記併用医薬は、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の前記他の薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物の形態であってもよく、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を含む、1種以上の前記他の薬剤と併用される医薬組成物の形態であってもよい。本態様の医薬が前記のような併用医薬の形態である場合、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物と、1種以上の他の薬剤とを含む、単一製剤の形態で提供されてもよく、1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
【0111】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、1種以上の真菌感染症を、同様に予防又は治療することができる。前記1種以上の真菌感染症の原因となる真菌としては、限定するものではないが、例えば、酵母性真菌、例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・パラプシロシス(C. parapsilosis)、カンジダ・グラブラタ(C. glabrata)及びクリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans);糸状菌、例えばアスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(A. flavas)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)及びアスペルギルス・テレウス(A. terreus);接合菌、例えばリゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾムコル・プシラス(Rhizomucor pusillus)、リゾパス・ミクロスポアス(R. microspores)、及びアブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)を挙げることができる。前記1種以上の真菌感染症としては、限定するものではないが、例えば、深在性真菌症、浅在真菌症及び皮膚真菌症を挙げることができる。前記1種以上の真菌感染症は、深在性真菌症、浅在真菌症及び皮膚真菌症からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害であることが好ましい。前記1種以上の真菌感染症の予防又は治療を必要とする対象に本態様の医薬を投与することにより、前記疾患、症状若しくは障害を予防又は治療することができる。
【0112】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬は、前記1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)、或いは爬虫類(例えば、カエル、ヘビ若しくはトカゲ等の変温動物)等の被験体又は患者であることが好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象が有する1種以上の真菌感染症である種々の疾患、症状及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0113】
本明細書において、「予防」は、症状、疾患及び/又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、発生(発症又は発現)した症状、疾患及び/又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
【0114】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、前記で説明した1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害(例えば、深在性真菌症、浅在真菌症又は皮膚真菌症)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本態様の医薬は、前記で説明した1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための医薬であることが好ましく、深在性真菌症、浅在真菌症及び皮膚真菌症からなる群より選択される1種以上の真菌感染症の予防又は治療に使用するための医薬であることがより好ましい。本態様の医薬を前記1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0115】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、前記で説明した1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害(例えば、深在性真菌症、浅在真菌症又は皮膚真菌症)を有する対象において、該症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、前記で説明した1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、有効量の式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を、少なくとも1種の抗真菌薬と一緒に投与することを含む、前記症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療方法である。前記1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害は、深在性真菌症、浅在真菌症及び皮膚真菌症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害であることが好ましい。前記1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療を必要とする対象に、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物又は本態様の医薬を、少なくとも1種の抗真菌薬と一緒に投与することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0116】
本発明の別の一態様は、前記で説明した1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用するための、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明の別の一態様は、前記で説明した1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に用いるための医薬の製造のための、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。前記1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害は、深在性真菌症、浅在真菌症及び皮膚真菌症からなる群より選択される1種以上の症状、疾患及び/又は障害であることが好ましい。式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物又は本態様の医薬を、前記1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害の予防又は治療に使用することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を介して、該症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【0117】
式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含む医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用量及び用法(例えば、投与量、投与回数及び/又は投与経路)は、対象の年齢、体重、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な投与量、投与回数及び投与経路等を考慮して、最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、有効成分である式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物は、治療上有効な量及び回数で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬をヒト患者に投与する場合、有効成分である式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の投与量は、通常は、1回投与あたり、0.001~100 mg/kg体重の範囲であり、典型的には、1回投与あたり、0.01~10 mg/kg体重の範囲であり、特に、1回投与あたり、0.1~10 mg/kg体重の範囲である。また、本態様の医薬の投与回数は、例えば、1日に1回又は複数回、或いは数日に1回とすることができる。また、本態様の医薬の投与経路は、特に限定されず、経口的に投与されてもよく、非経口的(例えば、直腸内、径粘膜、腸内、筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内又は眼内)に単回若しくは複数回投与されてもよい。本態様の医薬を、前記の用量及び用法で使用することにより、式(I)で表される化合物、特に式(Ia)で表される化合物の、少なくとも1種の抗真菌薬の抗真菌活性を増強する活性を介して、前記1種以上の真菌感染症である症状、疾患及び/又は障害を予防又は治療することができる。
【実施例
【0118】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0119】
<I. 培養的手段による新規化合物の製造>
[BFM-0088株の分離]
BFM-0088株は、日本国東京都東京湾の土壌より分離された真菌である。BFM-0088株の形態的特徴、培養性状及び生理的性状に基づき、公知菌種との比較を行った。その結果、本菌株は、アスペルギルス・ポリポリコラ(Aspergillus polyporicola)であることが明らかとなった。本菌株を、BFM-0088株と命名した。本菌株は、アスペルギルス・ポリポリコラBFM-0088として、2019年4月3日付にて、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、ブタペスト条約に基づき国際寄託されている(受託番号NITE BP-02936)。BFM-0088株の菌学的性質は、以下の通りである。
【0120】
1. 形態的特徴
BFM-0088株は、PDA培地等の栄養寒天培地等の培地で良好に生育した。PDA培地上で、27℃、好気的条件下で2週間生育させたコロニーを顕微鏡で観察したところ、栄養菌糸から直立した分生子(柄)の先端部が膨らみ、球形~楕円形の頂のうの周囲からメトレ及びフィアライドが形成される2輪生のアスペルジラムの形成が観察された。分生子はフィアロ型分生子で、1細胞で球形~亜球形、無色で表面は平滑であった。
【0121】
2. 培養性状
PDA培地上で、27℃、好気的条件下で2週間生育させたBFM-0088株のコロニーの表面は、ビロード状の形状であった。コロニーの色調は、表面において、黄土色~淡黄色であり、裏面において、黄土色であった。
【0122】
3. DB-FU10.0及び国際塩基配列データベースに対するBLAST相同検索
28S rDNA-D1D2塩基配列は、子嚢菌門の一種であるアスペルギルス・ポリポリコラ NRRL32683T(アクセッション番号EF669595)の塩基配列と100%の相同率を示した。また、ITS-5.8 rDNA塩基配列は、子嚢菌門の一種であるアスペルギルス・ポリポリコラの複数の塩基配列に対し相同率100%を示した。以上のことから、BFM-0088株を、アスペルギルス・ポリポリコラと同定した。
【0123】
4. 生理的性状
BFM-0088株の最適生育条件は、好気性条件、pH 5.6±0.2、温度27℃であった。また、本菌株の生育可能条件は、好気性条件、静置培養、pH3~9の範囲、温度25~27℃の範囲、培養期間1~2週間の範囲であった。
【0124】
[製造例I-1:BF-0088株の培養]
500 μLの保存用グリセロール(10% グリセロール)に、BFM-0088株を1白金耳釣菌し、-80℃で保存した。この菌株を、保存用培地(PDA培地)上で27℃、好気的条件下で培養した。PDA培地で培養したBFM-0088株を、海洋深層水(ディープオーシャン社)を用いて調製した100 mLの種培地(1.0% グルコース(富士フィルム和光純薬株式会社)、0.5% ポリペプトン(Becton Dickinson(BD))、0.05% MgSO4・7H2O(関東化学株式会社)、0.2% 酵母エキス(BD)、0.1% K2HPO4(関東化学株式会社)及び0.1% 寒天(清水食品株式会社))を含む500 mL容三角フラスコに1白金耳植菌し、ロータリーシェーカー(回転数: 180 rpm)を用いて、27℃、3日間の条件下で振盪培養した(種培養)。その後、得られた10 mLの種培養液を、海洋深層水(ディープオーシャン社)を用いて調製した10 mLの生産培地(2.4% PDB (BD)、0.5% MgSO4・7H2O(関東化学株式会社)、0.5% K2HPO4(関東化学株式会社)、0.5% Mg3(PO4 )2・8H2O(関東化学株式会社))及び50 gの玄米(明神株式会社)を含む1000 mL容培養容器に植菌し、27℃、静置培養の条件下で14日間培養した(生産培養)。
【0125】
[製造例I-2: BF-0088株の培養液からの新規化合物の精製]
製造例I-1における14日間の生産培養で得られた生産培養物(培養容器20個分)に、2 Lの70%エタノール水溶液を加え静置条件下、一晩抽出した。吸引濾過で菌体残渣を除去し、エタノール抽出液を得た。抽出液からエタノールを留去し、水層を得た。この水層に、2 Lの酢酸エチルを加えて相分離した。その後、酢酸エチル層を減圧下濃縮し、粗抽出物(1.6 g)を得た。粗抽出物を、少量のメタノールに溶解し、オクタデシルシリルカラム(3×15 cm、メルク社)に添加して、0%、40%、60%、80%及び100%(v/v)アセトニトリル水溶液(各溶媒について200 mLずつ)で順次溶出した。80%アセトニトリル水溶液溶出画分(第4画分)(70 mg)を、逆相C-18高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(20×250 mm; Senshu Pack PEGASIL ODS SP100、センシュー科学)により、以下の条件(溶媒:80%アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液;流速:6.0 ml/分;検出:UV 210 nm)でさらに精製した。保持時間14.0分に溶出されるピークを含む画分を回収した。得られた画分を減圧下で濃縮乾固して、化合物1(グリソプレニンG)を無色油状物質として得た(3.2 mg)。また、保持時間12.0分に溶出されるピークを含む画分を回収した。得られた画分を減圧下で濃縮乾固して、化合物3(グリソプレニンF)を無色油状物質として得た(6.6 mg)。同様に、100%アセトニトリル水溶出画分(第5画分)(100 mg)を、逆相C-18高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(20×250 mm; Senshu Pack PEGASIL ODS SP100、センシュー科学)により、以下の条件(溶媒:85%アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液;流速:6.0 ml/分;検出:UV 210 nm)でさらに精製した。保持時間12.0分に溶出されるピークを含む画分を回収した。得られた画分を減圧下で濃縮乾固して、化合物2(グリソプレニンH)を無色油状物質として得た(3.8 mg)。
【0126】
[化合物1(グリソプレニンG)]
(1)性状:無色油状
(2)分子量:754
ESI-MS(m/z) [M+Na]+ 777を観測
(3)分子式:C45H86O8
HRESI-MS (m/z) [M+Na]+ 計算値777.6220, 実測値777.6226
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定:
λmax (MeOH,logε): 205 nm (4.04)に吸収
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定:
νmax 3448 cm-1等に特徴的な吸収極大
(6)比旋光度:[α]D 25 +17.86°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール、クロロホルム及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、Bruker社製600 MHz核磁気共鳴スペクトロメーターで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:
δH : 1.11 (3H), 1.15 (3H), 1.16 (3H), 1.17 (3Hx3), 1.19 (3H), 1.21 (3H), 1.37 (2H), 1.39 (2H), 1.40 (2Hx5), 1.45 (2Hx9), 1.50 (2H), 1.58 (3H), 1.65 (3H), 1.67 (1H), 1.76 (1H), 1.79 (1H), 1.84 (1H), 1.97 (2H), 2.05 (2H), 2.13(2H), 3.70 (1H), 4.10 (2H), 5.08 (1H), 5.37 (1H) ppm
δC : 15.8, 16.1, 18.2 (x4), 18.9, 21.9, 24.1, 25.6, 25.8, 26.5, 26.9 (x5), 27.5, 37.1, 39.4, 39.8, 41.1, 42.1, 42.2, 42.3 (x8), 59.2, 71.2, 72.7 (x5), 83.2, 84.7, 124.0, 124.3, 134.9, 138.5 ppm。
【0127】
前記物理化学的性状及びスペクトルデータを詳細に検討した結果、化合物1を、下記の式で表される構造を有する(2E,6E)-30-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-2-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-3,7,11,15,19,23,27-ヘプタメチルトリアコンタ-2,6-ジエン-1,11,15,19,23,27-ヘキサオールであると構造決定した。
【化5】
【0128】
[化合物2(グリソプレニンH)]
(1)性状:無色油状
(2)分子量:736
ESI-MS(m/z) [M+Na]+ 759を観測
(3)分子式:C45H84O7
HRESI-MS (m/z) [M+Na]+ 計算値759.6114, 実測値759.6102
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定:
λmax (MeOH,logε): 205 nm (4.06)に吸収
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定:
νmax 3449 cm-1等に特徴的な吸収極大
(6)比旋光度:[α]D 25 +3.84°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール、クロロホルム及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、Bruker社製800 MHz核磁気共鳴スペクトロメーターで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:
δH :1.12 (3H), 1,17 (3Hx4), 1.20 (3H), 1.22 (3H), 1.38 (2Hx3), 1.40 (2H), 1.41 (2H), 1.42 (2H), 1.45 (2Hx7), 1.51 (2H), 1.59 (3H), 1.60 (3H),1.67 (1H), 1.68 (3H), 1.76 (1H), 1.79 (1H), 1.84 (1H), 1.96 (2H), 1.99 (2H), 2.04 (2H), 2.08 (2H), 2.12 (2H), 3.78 (1H), 4.15 (2H), 5.10 (1Hx2), 5.41 (1H) ppm
δC : 15.9, 16.0, 16.3, 18.2 (x3), 19.0, 22.2, 24.2, 25.6, 26.3, 6.5 (x2),26.9, 27.0 (x2), 27.1, 27.5, 37.1, 39.6, 39.7, 40.1, 41.6, 42.2, 42.4 (x6), 42.5, 59.4, 71.2, 72.8 (x4), 83.2, 84.7, 123.5, 123.9, 124.4, 134.8, 135.2, 139.6 ppm。
【0129】
前記物理化学的性状及びスペクトルデータを詳細に検討した結果、化合物2を、下記の式で表される構造を有する(2E,6E,10E)-30-(5-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-2-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-3,7,11,15,19,23,27-ヘプタメチルトリアコンタ-2,6,10-トリエン-1,15,19,23,27-ペンタオールであると構造決定した。
【化6】
【0130】
[化合物3(グリソプレニンF)]
(1)性状:無色油状
(2)分子量:754
ESI-MS(m/z) [M+Na]+ 777を観測
(3)分子式:C45H86O8
HRESI-MS (m/z) [M+Na]+ 計算値777.6220, 実測値777.6194
(4)紫外部吸収スペクトル:メタノール溶液中で測定:
λmax (MeOH,logε): 205 nm (1.53)に吸収
(5)赤外部吸収スペクトル:臭化カリウム錠剤法で測定:
νmax 3449 cm-1等に特徴的な吸収極大
(6)比旋光度:[α]D 22 +1.36°(c=0.1、メタノール)
(7)溶剤に対する溶解性:メタノール、クロロホルム及びDMSO等に可溶
(8)プロトン及びカーボン核磁気共鳴スペクトル:重クロロホルム中で、Bruker社製800 MHz核磁気共鳴スペクトロメーターで測定した水素の化学シフト(ppm)及び炭素の化学シフト(ppm)は下記に示す通り:
δH : 1.15(3Hx3), 1.16(3Hx3), 1.21(3H), 1.30-1.50 (2Hx16H), 1.58(3H), 1.59(3H), 1.66(3H), 1.95-2.01(2Hx5), 2.00-2.12(2Hx2), 3.33(1H), 4.12(1H), 5.10(1Hx2), 5.38(1H) ppm
δC : 15.9, 16.0, 16.3, 18.1(x4), 22.2, 23.5, 26.2, 26.3, 26.5, 26.8(x2), 27.2(x3), 39.5, 39.6, 40.0,41.7, 42.1(3), 42.2(x5), 42.3, 42.6, 59.2, 72.6, 72.8(x5), 78.9, 123.5,123.9,124.4, 134.8, 135.1, 139.3 ppm。
【0131】
前記物理化学的性状及びスペクトルデータを文献値と比較した結果、化合物3を、下記の式で表される構造を有する公知化合物の(2E,6E,10E)-3,7,11,15,19,23,27,31,35-ノナメチルヘキサトリアコンタ-2,6,10-トリエン-1,15,19,23,27,31,34,35-オクタオールであると同定した。
【化7】
【0132】
<II. 新規化合物の薬理試験>
[試薬]
RPMI 1640粉末培地は、GIBCO社より購入した。3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)は、DOJINDO社より購入した。塩化ナトリウムは、関東化学株式会社より購入した。DMSOは、ナカライテスク社より購入した。アラマーブルーは、バイオラッド社より購入した。
【0133】
[機器、器具及び材料]
ボルテックスミキサーには、YAZAWA社のオートマチックミキサーを使用した。吸光度の測定には、Bio Tek社のPower Wave x340を使用した。プレートミキサーには、アズワン社のNS-4Pを使用した。96穴プレート(アズワン社)の培養機には、N-BiotekのNB-203を使用した。150 mmボトルトップフィルター(孔径0.22 mm)、15 mL遠心管及び50 mL遠心管は、Corning社より購入した。
【0134】
[検定菌]
検定菌には、研究室保有のカンジダ・アルビカンス(Candida albicans) ATCC 90029及びリゾパス・オリゼ(Rhizopus oryzae) NBRC 4705を使用した。
【0135】
[試薬の調製]
アムホテリシンBは、0.8 mg/mLのDMSO溶液に調製した。試験化合物(化合物1及び2)は、それぞれ6.4 mg/mLのDMSO溶液に調製した。いずれの溶液も、調製後は-20℃に保存した。生理食塩水(0.85% 塩化ナトリウム水溶液)及び竹串を、高圧蒸気滅菌(121℃、15分間)し、その後、これらを室温保存した。
【0136】
[RPMI 1640培地の調製]
蒸留水900 mLに、RPMI 1640粉末培地及びMOPSを、それぞれ10.4及び34.5 g添加し、添加成分が溶解するまで撹拌した。その後、この溶液を、2 M NaOHでpH 7.0に調整した。この溶液を、蒸留水を加えて1 Lまで定容した。定容した溶液を、150 mm ボトルトップフィルター (Corning社)を用いて濾過滅菌した。得られた滅菌溶液を、RPMI 1640培地とし、4℃で保存した。
【0137】
[試験II-1:抗真菌活性物質の活性評価試験]
[菌液の調製]
カンジダ・アルビカンスの接種菌液の調製方法を、以下に示した。滅菌済み15 mL遠心管(Corning社)に、0.85% 滅菌生理食塩水を5 mL測り取った。滅菌した竹串を用いて、カンジダ・アルビカンスのコロニー(直径1 mm程度)を5個採取し、測り取った滅菌生理食塩水に懸濁させた。これを、オートマチックミキサー(YAZAWA社)を用いて15秒間ボルテックスした。この懸濁液を、滅菌済み96穴プレート(アズワン社)に100 μL分注した後、OD550を測定した。0.85%滅菌生理食塩水を用いて、0.5 マクファーランド(OD550=0.0548)となるように、この懸濁液を希釈した。得られた懸濁液を、RPMI 1640培地で100倍希釈した。この100倍希釈液を、さらにRPMI 1640培地で20倍希釈した。得られた希釈液を、接種菌液とした。
【0138】
リゾパス・オリゼの接種菌液の調製方法を、以下に示した。滅菌済み15 mL遠心管に、0.85%滅菌生理食塩水を2 mL測り取った。リゾパス・オリゼの胞子を白金耳で掻き取り、測り取った滅菌生理食塩水に懸濁させた。これを、5分間静置した。この懸濁液を、滅菌済み96穴プレートに100 μL分注した後、OD550を測定した。0.85% 滅菌生理食塩水を用いて、OD550=0.0765となるように、この懸濁液を希釈した。得られた懸濁液を、RPMI 1640培地で50倍希釈した。得られた希釈液を、接種菌液とした。
【0139】
[微量液体希釈法による抗真菌スペクトルの評価]
抗真菌スペクトルは、米国臨床検査標準協会(CLSI)M27-A3法及びM38-A2法に従い、微量液体希釈法により測定した(Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Yeasts; Approved Standard - Third Edition, Wayne, PA, 28,M27-A3 (2008),Filamentous Fungi; Approved Standard-Second Edition Wayne, PA, 28,M38-A2 (2008))。滅菌済み96穴プレートの各ウェルに、試験化合物の終濃度が32、16、8.0…0.016 μg/mLとなるように、DMSOで調製した試験化合物の希釈液を、1.0 μLずつ添加した。対照としては、DMSOのみを、1.0 μL添加した。各試験区及び対照区を、8ウェルずつ調製した。次に、カンジダ・アルビカンスを、RPMI 1640培地19 μL及び接種菌液180 μLの割合で各ウェルに添加した。添加後、各ウェルのOD550を測定した(これを初発濁度とした)。NB-203(N-Biotek社)培養機を用いて、96穴プレートのウェルに接種したカンジダ・アルビカンスを、35℃の温度下、72時間、培養を行った。次いで、NS-4P(アズワン社)を用いて、96穴プレートを、30分間振盪撹拌した。攪拌後、各ウェルのOD550を測定した(これを終末濁度とした)。下記の式(M-2)に基づき、各化合物の阻害率を算出した。算出された阻害率が90% 以上となる化合物の最小濃度を、該化合物の最小生育阻止濃度(MIC値)とした。
【数2】
【0140】
前記と同様の手順で、96穴プレートの所定のウェルに化合物及び対照のDMSOを分注した。リゾパス・オリゼを、RPMI 1640培地99 μL及び接種菌液100 μLの割合で所定のウェルに添加した。その後、アラマーブルー 5 μLを添加した。DMSO 1 μLを加えたウェルにRPMI 1640培地 194 μL及びアラマーブルー 5 μLを添加したウェルを、空ウェルとした。添加後、NB-203培養機を用いて、96穴プレートのウェルに接種したリゾパス・オリゼを、35℃の温度下、24時間、培養を行った。次いで、NS-4P(アズワン社)を用いて、96穴プレートを、30分間振盪撹拌した。攪拌後、各ウェルのOD570を測定した。下記の式(M-3)に基づき、各化合物の阻害率を算出した。算出された阻害率が80%以上となる化合物の最小濃度を、該化合物の最小生育阻止濃度(MIC値)とした。
【数3】
【0141】
本試験の結果、化合物1、2及び3は、いずれも32 μg/mL以下の濃度でカンジダ・アルビカンス及びリゾパス・オリゼに対して生育阻害活性を示さなかった。
【0142】
[試験II-2:抗真菌剤アムホテリシンBに対する増強活性の評価試験]
[菌液の調製]
試験II-1と同様の手順で、カンジダ・アルビカンス及びリゾパス・オリゼの接種菌液をそれぞれ調製した。
【0143】
[微量液体希釈法による試験化合物のアムホテリシンB活性増強効果の評価]
カンジダ・アルビカンスに対する試験化合物(化合物1及び2)のアムホテリシンB活性増強効果の評価方法を、以下に示した。滅菌済み96穴プレートの各ウェルに、試験化合物の終濃度が、32、16、8、4、2、1、0.5、0.25、0.125及び0.0625μg/mL、アムホテリシンBの終濃度が、1.0、0.5、0.25、0.125、0.0625又は0.0313 μg/mLとなるように、DMSOで調製した試験化合物及びアムホテリシンBの希釈液を、それぞれ1.0 μLずつ添加した。対照としては、DMSOのみを、2.0 μL添加した。各試験区を1ウェル及び対照区を8ウェル調製した。次に、カンジダ・アルビカンスを、RPMI 1640培地18 μL及び接種菌液180 μLの割合で各ウェルに添加した。添加後、各ウェルのOD550を測定した(これを初発濁度とした)。NB-203(N-Biotek社)培養機を用いて、96穴プレートのウェルに接種したカンジダ・アルビカンスを、35℃の温度下で24時間培養を行った。次いで、NS-4P(アズワン社)を用いて、96穴プレートを、30分間振盪撹拌した。攪拌後、各ウェルのOD550を測定した(これを終末濁度とした)。前記式(M-2)に基づき、各化合物及びアムホテリシンBの併用投与による阻害率を算出した。算出された阻害率が90%以上となる場合のアムホテリシンBの最小濃度を、各化合物及びアムホテリシンBの併用投与におけるアムホテリシンBのMIC値とした。また、下記の式(M-4)に基づき、各試験化合物のアムホテリシンB活性増強率を算出した。各試験化合物のアムホテリシンB活性増強率の算出は、3回反復で試験を実施した。

【数4】
【0144】
リゾパス・オリゼに対する試験化合物(化合物1及び2)のアムホテリシンB活性増強効果の評価方法を、以下に示した。前記と同様の手順で、96穴プレートの所定のウェルに、試験化合物及びアムホテリシンBの希釈液、並びに対照のDMSOを分注した。リゾパス・オリゼを、RPMI 1640培地93 μL及び接種菌液100 μLの割合で所定のウェルに添加した。その後、アラマーブルー 5μLを添加した。DMSO 2 μLを加えたウェルにRPMI 1640培地 193 μL及びアラマーブルー 5 μLを添加したウェルを、空ウェルとした。添加後、NB-203培養機を用いて、96穴プレートのウェルに接種したリゾパス・オリゼを、35℃の温度下、24時間、培養を行った。次いで、NS-4P(アズワン社)を用いて、96穴プレートを、30分間振盪撹拌した。攪拌後、各ウェルのOD570を測定した。前記式(M-3)に基づき、各試験化合物及びアムホテリシンBの併用投与による阻害率を算出した。算出された阻害率が80%以上となる場合のアムホテリシンBの最小濃度を、各試験化合物及びアムホテリシンBの併用投与におけるアムホテリシンBのMIC値とした。また、前記式(M-4)に基づき、各試験化合物のアムホテリシンB活性増強率を算出した。各試験化合物のアムホテリシンB活性増強率の算出は、3回反復で試験を実施した。
【0145】
カンジダ・アルビカンスに対する、試験化合物及びアムホテリシンBの併用投与時のアムホテリシンBのMIC値を表1に示す。また、リゾパス・オリゼに対する、試験化合物及びアムホテリシンBの併用投与時のアムホテリシンBのMIC値を表2に示す。表中、「試験化合物濃度」の列は、試験化合物及びアムホテリシンBの併用投与時の該試験化合物の濃度を、「MIC」の列は、試験化合物及びアムホテリシンBの併用投与時のアムホテリシンBのMIC値を、「増強率」の列は、各濃度の試験化合物によるアムホテリシンB活性増強率を、それぞれ示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
表1に示すように、0.25 μg/mL、特に0.5 μg/mL以上の化合物1、2又は3をアムホテリシンBと併用投与することにより、カンジダ・アルビカンスに対するアムホテリシンBの抗真菌活性が2~64倍、特に8~64倍に増強された。また、表2に示すように、0.25 μg/mL、特に0.5 μg/mL以上の化合物1、2又は3をアムホテリシンBと併用投与することにより、リゾパス・オリゼに対するアムホテリシンBの抗真菌活性が2~16倍、特に4~16倍に増強された。
【0149】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。