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特許7256534熱伝導エラストマー組成物、及び熱伝導成形体
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  • 特許-熱伝導エラストマー組成物、及び熱伝導成形体 図1
  • 特許-熱伝導エラストマー組成物、及び熱伝導成形体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】熱伝導エラストマー組成物、及び熱伝導成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20230405BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20230405BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230405BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230405BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230405BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20230405BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C08L53/02
C08K5/01
C08L25/08
C08K3/22
C08K3/04
C08L91/00
H01L23/36 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019121467
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008527
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 達也
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-176766(JP,A)
【文献】特開2008-163145(JP,A)
【文献】特開2013-104046(JP,A)
【文献】特開2015-193785(JP,A)
【文献】特開2018-080235(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139122(WO,A1)
【文献】特開2019-119752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマー100質量部と、
石油系炭化水素からなり、重量平均分子量が600以下であるパラフィン系プロセスオイル610~750質量部と、
HLB値が2.0以上である固体状の非イオン性界面活性剤25~40質量部と、
水酸化アルミニウム粉末260~640質量部と、
人造黒鉛粉末250~340質量部とを含有する熱伝導エラストマー組成物。
【請求項2】
前記水酸化アルミニウム粉末の平均粒径が、1μm~30μmであり、
前記人造黒鉛粉末の平均粒径が、8μm~30μmである請求項1に記載の熱伝導エラストマー組成物。
【請求項3】
オレフィン系樹脂が含有されていない請求項1又は請求項2に記載の熱伝導エラストマー組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の熱伝導エラストマー組成物を成形してなる熱伝導成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導エラストマー組成物、及び熱伝導成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器内の電子部品等から発せられる熱を外部へ放出するための部材として、例えば、特許文献1に示されるような、スチレン系エラストマーをベースポリマーとしつつ、熱伝導フィラーを含有する熱伝導成形体が利用されている。この種の熱伝導成形体は、例えば、基板上に実装された電子部品と、放熱板等の放熱体との間に介在される形で使用され、電子部品から発せられた熱を放熱体へ伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-80235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱伝導成形体では、リワーク性が問題となる場合があった。例えば、熱伝導成形体同士が重なった際に、互いに接着して引き剥がすことができなくなる場合があった。
【0005】
また、従来の熱伝導成形体では、熱伝導成形体中に含まれるオイル成分が、外部へ染み出す量(オイルブリード量)が多く、問題となる場合があった。
【0006】
本発明の目的は、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れた熱伝導エラストマー組成物、及び熱伝導成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、スチレン系エラストマーと、石油系炭化水素からなり、重量平均分子量が600以下であるプロセスオイルと、HLB値が2.0以上である非イオン性界面活性剤と、水酸化アルミニウム粉末と、人造黒鉛粉末とを含有する熱伝導エラストマー組成物が、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れること等を見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> スチレン系エラストマー100質量部と、石油系炭化水素からなり、重量平均分子量が600以下であるプロセスオイル610~750質量部と、HLB値が2.0以上である固体状の非イオン性界面活性剤25~40質量部と、水酸化アルミニウム粉末260~640質量部と、人造黒鉛粉末250~340質量部とを含有する熱伝導エラストマー組成物。
【0009】
<2> 前記水酸化アルミニウム粉末の平均粒径が、1μm~30μmであり、前記人造黒鉛粉末の平均粒径が、8μm~30μmである前記<1>に記載の熱伝導エラストマー組成物。
【0010】
<3> オレフィン系樹脂が含有されていない前記<1>又は<2>に記載の熱伝導エラストマー組成物。
【0011】
<4> 前記<1>~<3>の何れか1つに記載の熱伝導エラストマー組成物を成形してなる熱伝導成形体。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れた熱伝導エラストマー組成物、及び熱伝導成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】熱伝導成形体の一例を模式的に表した側面図
図2】熱伝導成形体を放熱対象物に装着した状態を模式的に表した断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔熱伝導エラストマー組成物〕
本実施形態の熱伝導エラストマー組成物は、スチレン系エラストマー100質量部と、石油系炭化水素からなり、重量平均分子量が600以下であるプロセスオイル610~750質量部と、HLB値が2.0以上である非イオン性界面活性剤25~40質量部と、水酸化アルミニウム粉末260~640質量部と、人造黒鉛粉末250~340質量部とを含有する。以下、熱伝導エラストマー組成物を構成する各材料について説明する。
【0015】
(スチレン系エラストマー)
スチレン系エラストマーは、熱伝導エラストマー組成物のベースポリマーであり、熱可塑性、適度な弾性等を備えたものが好ましく用いられる。スチレン系エラストマーとしては、例えば、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIBS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0016】
スチレン系エラストマーとしては、少なくとも2個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1種の共役ジエン化合物からなる重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られるものが好ましい。
【0017】
前記ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
前記スチレン系エラストマーにおけるビニル芳香族化合物の含有量は5~75質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。ビニル芳香族化合物の含有量がこの範囲内であると、熱伝導エラストマー組成物の弾性が確保され易い。
【0019】
前記共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、前記共役ジエン化合物がイソプレン及びブタジエンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、イソプレンとブタジエンの混合物がより好ましい。
【0020】
前記スチレン系エラストマーは、前記重合体ブロックBの共役ジエン化合物に由来する炭素-炭素二重結合の50%以上が水素添加されていることが好ましく、75%以上が水素添加されていることがより好ましく、95%以上が水素添加されていることが特に好ましい。
【0021】
前記スチレン系エラストマーは、重合体ブロックAと重合体ブロックBとをそれぞれ少なくとも1個含有していればよいが、耐熱性、力学物性等の観点より、重合体ブロックAを2個以上、重合体ブロックBを1個以上含有していることが好ましい。重合体ブロックAと重合体ブロックBの結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよいが、重合体ブロックAをAで、重合体ブロックBをBで表したとき、A-B-Aで示されるトリブロック構造や、(A-B)n、(A-B)n-A、(ここでnは2以上の整数を表す)で示されるマルチブロック共重合体などを挙げることができ、これらの中でも、A-B-Aで示されるトリブロック構造のものが、耐熱性、力学物性、取り扱い性等の点で特に好ましい。
【0022】
スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、80,000~400,000が好ましく、100,000~350,000がより好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定された標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。重量平均分子量の測定条件は、以下の通りである。
【0023】
<測定条件>
GPC:LC Solution(SIMADZU製)
検出器:示差屈折率計 RID-10A(SHIMADZU製)
カラム:TSKgelG4000Hxlを2本直列(TOSOH製)
ガードカラム:TSKguardcolumnHxl-L(TOSOH製)
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:1ml/min
濃度:2mg/ml
【0024】
スチレン系エラストマーとしては、特にSEEPSが好ましい。SEEPSの市販品としては、例えば、株式会社クラレ製のセプトン(登録商標)4033、4044、4055、4077、4099等を用いることができる。これらのうち、SEEPSとしては、他の材料との混合性又は相溶性、成形性等の観点より、セプトン(登録商標)4055(重量平均分子量:270,000)が特に好ましい。
【0025】
(プロセスオイル)
プロセスオイルは、スチレン系エラストマー(例えば、SEEPS)を軟化させる機能等を備えるものであり、重量平均分子量が600以下である石油系炭化水素からなる。石油系炭化水素としては、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、パラフィン系の炭化水素化合物が好ましい。つまり、プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。プロセスオイルの重量平均分子量が600以下であると、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れる(オイルブリード量が少なく抑えられる)。なお、プロセスオイルの重量平均分子量の下限値は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、400以上が好ましく、450以上がより好ましい。パラフィン系プロセスオイルの具体例としては、例えば、「ダイアナプロセスオイル PW-90(重量平均分子量:533)」(出光興産株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
熱伝導エラストマー組成物において、スチレン系エラストマー100質量部に対するプロセスオイルの配合量は、610質量以上、好ましくは620質量部以上、より好ましくは630質量部以上であり、750質量部以下、好ましくは730質量部以下、より好ましくは710質量部以下である。プロセスオイルの配合量が、このような範囲であると、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れる。
【0027】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が2.0以上であり、常温(23℃)下における状態が、固体状のものが使用される。このような非イオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、非イオン性反応性界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル等)、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明の目的を損なわない限り、これらの非イオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
なお、非イオン性界面活性剤のHLB値が2.0未満又は状態が液体であると、絶縁性が不十分又は耐オイルブリード性が劣る(オイルブリード量が多くなる)。
【0029】
具体的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、商品名「レオドールSP-O30V」(ソルビタン脂肪酸エステル、HLB値=4.7、固体(粉体))、商品名「ラテムルPD-450」(ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、HLB値=16.2、固体)、商品名「レオドールMS-50」(グリセリン脂肪酸エステル、HLB値=2.8、固体)(以上、花王株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
熱伝導エラストマー組成物において、スチレン系エラストマー100質量部に対する非イオン性界面活性剤の配合量は、25質量部以上であり、40質量部以下、好ましくは38質量部以下である。非イオン性界面活性剤の配合量が、このような範囲であると、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れる。
【0031】
(水酸化アルミニウム粉末)
水酸化アルミニウム粉末は、水酸化アルミニウムからなる粒子の集まりであり、熱伝導エラストマー組成物に対して、熱伝導性、難燃性等を付与するために用いられる。水酸化アルミニウム粉末の平均粒径は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは15μm以下である。なお、水酸化アルミニウム粉末の形状は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、一般に入手可能な粒状のものが利用される。
【0032】
水酸化アルミニウム粉末の平均粒径は、レーザー回折法による体積基準の平均粒径(D50)である。平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定器で測定することができる。なお、後述する人造黒鉛等の平均粒径も、レーザー回折法による体積基準の平均粒径(D50)である。
【0033】
熱伝導エラストマー組成物において、スチレン系エラストマー100質量部に対する水酸化アルミニウム粉末の配合量は、260質量部以上、好ましくは265質量部以上、より好ましくは270質量部以上であり、640質量部以下、好ましくは635質量部以下である。水酸化アルミニウム粉末の配合量が、このような範囲であると、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れる。
【0034】
(人造黒鉛粉末)
熱伝導エラストマー組成物では、熱伝導フィラーとして、板状の人造黒鉛粉末が利用されることが好ましい。人造黒鉛粉末は、人造黒鉛からなる粒子の集まりである。人造黒鉛は、コークス等を約3000℃の高温で処理することで得られる黒鉛であり、天然黒鉛に比べて不純物が少なく、高純度の黒鉛である。人造黒鉛の形状としては、板状、塊状が知られている。板状の人造黒鉛として、市販されているものとしては、例えば、昭和電工株式会社製の商品名「UF-G5」、「UF-G10」、「UF-G30」、伊藤黒鉛工業株式会社製の商品名「AGB-32」、「AG-130」等が挙げられる。これに対し、塊状の人造黒鉛として、市販されているものとしては、例えば、伊藤黒鉛工業株式会社製の商品名「AGB-60」、「AG.B」、「AGB-5」等が挙げられる。
【0035】
熱伝導エラストマー組成物で使用される好ましい人造黒鉛粉末は、板状であり、かつ平均粒径が、8μm~30μmのものである。このような人造黒鉛粉末の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製の商品名「UF-G30」(平均粒径10μm)が挙げられる。
【0036】
なお、熱伝導エラストマー組成物で使用される人造黒鉛粉末の平均粒径は、好ましくは8μm~20μmであり、より好ましくは8μm~15μmである。
【0037】
熱伝導エラストマー組成物で使用される人造黒鉛粉末の嵩比重(g/cm)は、0.25~0.35g/cmが好ましい。
【0038】
なお、人造黒鉛粉末は、自己潤滑性を備えており、摩擦係数が0.06である。このような観点より、熱伝導フィラーとしては、摩擦係数が0.20以下、特に0.10以下の物を使用することが好ましい。
【0039】
熱伝導エラストマー組成物において、スチレン系エラストマー100質量部に対する人造黒鉛粉末の配合量は、250質量部以上、好ましくは255質量部以上であり、340質量部以下、好ましくは335質量部以下、より好ましくは330質量部以下である。人造黒鉛粉末の配合量が、このような範囲であると、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れる。
【0040】
なお、本明細書において、鱗片状の天然黒鉛を化学処理することで得られる膨張黒鉛、及び膨張黒鉛を高温で加熱した膨張化黒鉛は、人造黒鉛には含まれないものとする。本明細書における人造黒鉛は、非膨張性のものである。
【0041】
熱伝導エラストマー組成物において、熱伝導フィラー(水酸化アルミニウム粉末、人造黒鉛粉末)の合計配合量(質量部)は、非イオン性界面活性剤の配合量(質量部)に対して、20倍~27倍であることが好ましい。
【0042】
(その他の添加材)
熱伝導エラストマー組成物は、更に、重金属不活性剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0043】
重金属不活性剤としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド等が利用される。熱伝導エラストマー組成物において、スチレン系エラストマー100質量部に対する重金属不活性剤の配合量は、3.8質量部以上6質量部以下が好ましい。
【0044】
酸化防止剤としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が利用される。熱伝導エラストマー組成物において、スチレン系エラストマー100質量部に対する酸化防止剤の配合量は、3.8質量部以上6質量部以下が好ましい。
【0045】
熱伝導エラストマー組成物は、本発明の目的を損なわない限り、更に、紫外線防止剤、着色剤(顔料、染料)、増粘付与剤、フィラー、オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂、界面活性剤等が配合されてもよい。なお、熱伝導エラストマー組成物は、オイル成分として、オレフィン系樹脂が含有されていないことが好ましい。オイル成分として、オレフィン系樹脂が含有されていないと、熱伝導エラストマー組成物の耐オイルブリード性を確保し易い。
【0046】
以上のような熱伝導エラストマー組成物及びそれから製造される熱伝導成形体は、リワーク性に優れている。つまり、熱伝導エラストマー組成物及び熱伝導成形体は、その表面のタック性(べたつき)が抑えられ、例えば、熱伝導成形体同士が重なっても、互いに引き剥がすことができる。このような熱伝導成形体は、寸法精度が向上し、生産性も向上する。また、熱伝導成形体は、リワーク性(低タック性)に優れ、熱伝導成形体を、対象物に貼り付ける際に、対象物と熱伝導成形体との間に、気泡が形成されることが抑制され、熱伝導性の低下が抑制される。また、熱伝導エラストマー組成物及び熱伝導成形体は、耐オイルブリード性、熱伝導性、絶縁性、低硬度性、成形性等に優れている。
【0047】
熱伝導エラストマー組成物の熱伝導率は、0.60W/m・K以上が好ましい。なお、熱伝導エラストマー組成物の熱伝導率の上限は、特に制限はないが、例えば、1.0W/m・K以下である。
【0048】
熱伝導エラストマー組成物の体積抵抗率は、1×1012Ω・cm以上が好ましい。
【0049】
熱伝導エラストマー組成物の硬度(アスカーC)は、7~13が好ましい。熱伝導エラストマー組成物の硬度(アスカーC)がこのような範囲であると、熱対策の対象物(例えば、基板)に対して不要な負荷を加えることが抑制される。また、熱伝導エラストマー組成物は、振動や衝撃等を吸収して、対象物を保護する機能も備えている。
【0050】
熱伝導エラストマー組成物の比重は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はないが、例えば、1.15~1.36g/cmが好ましい。
【0051】
〔熱伝導成形体〕
熱伝導成形体は、上記熱伝導エラストマー組成物を所定形状に成形したものからなる。熱伝導成形体の成形方法としては、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン系エラストマー)の一般的な成形方法であれば特に制限はなく、例えば、射出成形、プレス又はTダイを利用したシート成形等が挙げられる。
【0052】
熱伝導成形体は、例えば、電子機器内の電子部品等から発せられる熱を外部へ放出するための部材(熱伝導部材)として利用される。熱伝導成形体は、電子機器等の機器内の基板の熱対策や保護等の目的で利用される。
【0053】
熱伝導成形体が使用される電子機器としては、例えば、スマートフォン、携帯型ゲーム機、携帯型テレビ、タブレット端末等の携帯機器、携帯機器以外のその他の機器等が挙げられる。
【0054】
図1は、熱伝導成形体10の一例を模式的に表した側面図である。熱伝導成形体10は、熱伝導エラストマー組成物を材料とし、かつ所定の金型を用いて成形されたものである。熱伝導成形体10は、全体的には、概ね平坦な直方体状の本体部11と、裏面側に凹状に窪んだ複数の収容部12,13,14,15を備えている。各収容部12,13,14,15は、それぞれ放熱対象物の形状に合わせて形成されている。
【0055】
図2は、熱伝導成形体10を放熱対象物20に装着した状態を模式的に表した断面図である。熱伝導成形体10は、放熱対象物20である基板装置上に載せられる形で装着されている。基板装置は、基板21と、基板21上に実装された複数の電子部品22,23,24,25とを備えている。熱伝導成形体10の各収容部12,13,14,15は、それぞれ基板21上の電子部品(発熱部)22,23,24,25に密着する形で被せられる。なお、熱伝導成形体10の表側には、金属製の放熱板30が載せられている。放熱対象物20の各電子部品22等から発生した熱は、熱伝導成形体10へ移動し、更に放熱板30へ移動することで、放熱対象物20の各電子部品22等が冷却される。
【0056】
以上のように、熱伝導成形体は、放熱対象物の形状に倣った形を備えており、確実に放熱対象物に密着して熱対策や保護等を行うことができる。
【0057】
熱伝導成形体の形状は、目的に応じて適宜、設定されればよく、例えばシート状であってもよい。
【実施例
【0058】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
〔実施例1~4及び比較例1~8〕
(組成物の作製)
スチレン系エラストマー100質量部に対して、プロセスオイル1又はプロセスオイル2、非イオン性界面活性剤1又はオレフィン系樹脂、重金属不活性化剤、酸化防止剤、水酸化アルミニウム、及び人造黒鉛を、表1に示される割合(質量部)で配合し、それらの混合物をラボプラストミル(二軸押し出し機、製品名「4C150-1」、東洋精機製作所製)を用いて、100rpm、200℃の条件で7分間混練することで、実施例1~4及び比較例1~8の各組成物を得た。
【0060】
なお、各実施例及び各比較例で使用した材料は、以下の通りである。
「スチレン系エラストマー」:SEEPS、商品名「セプトン 4055」、株式会社クラレ製
「プロセスオイル1」:石油系炭化水素(パラフィン系プロセスオイル)、重量平均分子量(Mw)=533、商品名「ダイアナプロセスオイル PW-90」、出光興産株式会社製
「プロセスオイル2」:石油系炭化水素(パラフィン系プロセスオイル)、重量平均分子量(Mw)=735、商品名「ダイアナプロセスオイル PW-380」、出光興産株式会社製
「非イオン性界面活性剤1」:ソルビタン脂肪酸エステル、HLB値=4.7、固体(粉体)、商品名「レオドールSP-O30V」、花王株式会社製
「オレフィン系樹脂」:エチレンプロピレン共重合体、商品名「プライムポリプロ J2021GR」、株式会社プライムポリマー製
「重金属不活性剤」:N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、商品名「アデカスタブ CDA-6」、株式会社ADEKA製
「酸化防止剤」:ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](ヒンダードフェノール系酸化防止剤)、商品名「IRGANOX #1010」、BASFジャパン株式会社製
「水酸化アルミニウム」:平均粒径10μm、球状、商品名「BF083」、日本軽金属株式会社製
「人造黒鉛」:板状、平均粒径10μm、真比重2.2g/cm、嵩比重0.3g/cm、板状、商品名「UF-G30」、昭和電工株式会社製
【0061】
(成形体の作製)
50tonプレス機(製品名「油圧成型機 C型」、株式会社岩城工業製)にセットされた金型を180℃で1分間加熱した後、上述した各組成物を金型内に投入した。続いて、金型をプレス(加圧条件:約2ton)で挟んだ状態で1分間、180℃で加熱し、その後、金型を常温の冷却プレスで挟んだ状態で2分間冷却した。そして、冷却後の金型から、シート状の成形体(60mm×60mm×6mm)を取り出した。このようにして、実施例1~4及び比較例1~8の各組成物からなる成形体(厚み:6mm)を得た。
【0062】
また、上記金型に代えて、厚み1mmの成形体を作製するための金型に変更したこと以外は、上述した方法と同じ方法で、実施例1~4及び比較例1~8の各組成物からなる成形体(厚み:1mm)を得た。
【0063】
また、上記金型に代えて、厚み12mmの成形体を作製するための金型に変更したこと以外は、上述した方法と同じ方法で、実施例1~4及び比較例1~8の各組成物からなる成形体(厚み:12mm)を得た。
【0064】
〔評価〕
実施例1~4及び比較例1~8の各成形体について、以下に示される方法により、硬度、熱伝導率、体積抵抗率、比重、成形性、難燃性、リワーク性、耐オイルブリード性を評価した。
【0065】
(硬度)
各実施例等の成形体(厚み:12mm)から、60mm×30mm×12mmサイズに切り出したものを、硬度測定用の試験片(60mm×30mm×12mm)とした。また、ゴム硬度計用定圧荷重器(有限会社エラストロン製)とアスカーC硬度計を用意した。試験片に硬度計の押針を接触させ、荷重がすべてかかった時点から30秒後の硬度計の値を読み取り、それを硬度(アスカーC)とした。結果は、表1に示した。
【0066】
(熱伝導率)
各実施例等の成形体(厚み:12mm)から、30mm×30mm×12mmサイズに切り出した切片を1組用意した。そして、その1組の試験片の間でポリイミドセンサーを挟み込み、ホットディスク法によって、熱伝導率(W/m・K)を測定した。なお、測定には、ホットディスク熱特性測定装置(製品名「TPS500」、Hot Disk社製)を用いた。結果は、表1に示した。
【0067】
(体積抵抗率)
各実施例等の成形体(厚み:1mm)を試験片(60mm×60mm×1mm)とした。測定装置(製品名「Hiresta-UP(MCP-HT450)」、三菱化学株会社製)を用いて、各試験片の体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。なお、測定に使用したプローブはURSであり、印加電圧は1000Vであり、時間(タイマー)は10秒であった。結果は、表1に示した。
【0068】
(比重)
各実施例等の成形体について、比重測定天秤(製品名「AG204」、メトラー・トレド株式会社製)を用いて比重(g/cm)を測定した。なお、比重の計算式は、以下の通りである。結果は、表1に示した。
比重=大気中での成形体の質量/(大気中での成形体の質量-水中での成形体の質量)
【0069】
(成形性)
上述した各実施例等の成形体の成形時に、成形体が金型から容易に剥がれるか否かによって成形性を判定した。成形体が金型からスムーズに容易に剥がれる場合、「成形性が非常に良好」と判定し、スムーズではないものの成形体が金型から容易に剥がれる場合、「成形性が良好」と判定し、成形体が金型から用意に剥がれない場合、「成形性が不良」と判定した。結果は、表1に示した。なお、表1において、「成形性が非常に良好」は記号「〇」で示し、「成形性が良好」は記号「△」で示し、「成形性が不良」を記号「×」で示した。
【0070】
(難燃性)
各実施例等の成形体(厚み:1mm)について、UL94HBの水平燃焼試験と同様にして、難燃性を評価した。結果は、表1に示した。
【0071】
(リワーク性)
各実施例等の成形体(厚み:1mm)を、二つ折りの状態とし、成形体自体を重ね合わせた。成形体を、二つ折りの状態で、1分間放置(室温23℃条件下)した後、重なり合った部分を、試験者が手で引き剥がせるか否かを確認した。手で引き剥がせる場合を、「リワーク性あり」と判定し、手で引き剥がせない場合を、「リワーク性なし」と判定した。結果は、表1に示した。なお、表1において、「リワーク性あり」は記号「〇」で示し、「リワーク性なし」は記号「×」で示した。
【0072】
(耐オイルブリード性)
各実施例等の成形体(厚み:6mm)から、10mm×10mm×6mmサイズに切り出したものを、オイルブリード評価用の試験片とした。試験片を、薬包紙上に静置させ、80℃の恒温槽に3日間、入れた。その後、恒温槽から、薬包紙上に載せられた状態の試験片を取り出し、目視で、薬包紙に対するオイルの染み出しの量を確認した。オイルの染み出し量が少ない場合、「耐オイルブリード性に優れる」と判定し、オイルの染み出し量が多い場合、「耐オイルブリード性に劣る」と判定した。結果は、表1に示した。なお、表1において、「耐オイルブリード性に優れる」は、「〇」で示し、「耐オイルブリード性に劣る」は、「×」で示した。オイルブリード量の程度(多い、少ない)は、薬包紙の色が変色した範囲の幅(染み出し方向の幅)で判断した。具体的には、オイルブリードの染み出し方向(薬包紙の平面方向)における幅が、25mm以下の場合、「耐オイルブリード性に優れる」と判断し、25mmを超える場合、「耐オイルブリード性に劣る」と判定した。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1~4の成形体では、プロセスオイル1(重量平均分子量:533)が使用され、非イオン性界面活性剤1が使用された場合である。実施例1~4の成形体において、プロセスオイル1の使用量は、比較例1等と比べて少なく設定されている。このような実施例1~4の成形体は、表1に示されるように、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れる結果となった。実施例1~4の成形体では、プロセスオイル1の使用量が少ないものの、硬度が低く抑えられている。また、実施例1~4の成形体は、表1に示されるように、熱伝導性、絶縁性成形性、難燃性等にも優れていることが確かめられた。なお、実施例1~4の成形体では、オレフィン系樹脂(比較例1、8参照)を使用されていない。
【0075】
比較例1の成形体は、プロセスオイル1(重量平均分子量:533)の配合量、及び人造黒鉛粉末の配合量が多過ぎ、かつ水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。なお、比較例1の成形体は、実施例1等では使用されないオレフィン系樹脂を含んでいる。このような比較例1の成形体では、熱伝導率が低く、また、耐オイルブリード性も劣る結果となった。
【0076】
比較例2の成形体は、プロセスオイル1の配合量、及び人造黒鉛粉末の配合量が多過ぎ、かつ水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。また、比較例2は、非イオン性界面活性剤1を含まない。そのような比較例2の成形体は、硬度が低すぎる結果となった。更に、比較例2の成形体は、熱伝導率が低く、リワーク性がなく、耐オイルブリード性も劣る結果となった。
【0077】
比較例3の成形体は、プロセスオイル1の配合量、及び人造黒鉛粉末の配合量が多過ぎ、かつ水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。比較例3の成形体は、硬度が低すぎ、しかも熱伝導率が低く、耐オイルブリード性も劣る結果となった。
【0078】
比較例4の成形体は、プロセスオイル1の配合量、及び人造黒鉛粉末の配合量が多過ぎ、かつ水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。比較例4の成形体は、体積抵抗率が低く、絶縁性に問題があり、耐オイルブリード性も劣る結果となった。
【0079】
比較例5の成形体は、人造黒鉛粉末の配合量が多過ぎ、かつ水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。比較例5の成形体は、体積抵抗率が低く、絶縁性に問題がある。
【0080】
比較例6の成形体は、プロセスオイル1の配合量、及び水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。比較例6の成形体は、体積抵抗率が低く、絶縁性に問題がある。
【0081】
比較例7の成形体は、プロセスオイル1の配合量が少な過ぎ、人造黒鉛粉末の配合量が多過ぎ、水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。比較例7の成形体は、体積抵抗率が低く、絶縁性に問題がある。しかも、比較例7の成形体は、硬度が高すぎる結果となった。
【0082】
比較例8の成形体は、重量平均分子量の大きいプロセスオイル2(重量平均分子量:735)を使用し、実施例1等では使用されないオレフィン系樹脂を含んでいる。また、比較例8の成形体は、人造黒鉛粉末の配合量が多過ぎ、水酸化アルミニウム粉末の配合量が少な過ぎる場合である。比較例8の成形体は、リワーク性がなく、耐オイルブリード性も劣る結果となった。
【0083】
〔実施例5,6及び比較例9~15〕
(組成物の作製)
非イオン性界面活性剤1に代えて、以下に示される非イオン性界面活性剤を、それぞれ表2に示される割合(質量部)で配合したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5,6及び比較例9~15の各組成物を得た。
【0084】
なお、各実施例及び各比較例で使用した材料は、以下の通りである。
「非イオン性界面活性剤2」:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、HLB値=16.2、固体、商品名「ラテムルPD-450」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤3」:グリセリン脂肪酸エステル、HLB値=2.8、固体、商品名「レオドールMS-50」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤4」:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB値=13.6、液体、商品名「エマルゲン109P」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤5」:ソルビタン酸エステル、HLB値=1.8、液体、商品名「レオドールSP-O30V」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤6」:ソルビタン酸エステル、HLB値=8.6、液体、商品名「レオドールSP-L10」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤7」:ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、HLB値=9.6、液体、商品名「レオドールTW-S106V」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤8」:ポリオキシエチレンアルキルアミン、HLB値=6.3、液体、商品名「アミート102」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤9」:アルキルアルカノールアミド、HLB値=5.8、液体、商品名「アミノーンPK-02S」、花王株式会社製
「非イオン性界面活性剤10」:ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、HLB値=11.6、液体、商品名「エマノーン4110」、花王株式会社製
【0085】
(成形体の作製)
実施例5,6及び比較例9~15の各組成物を使用して、上記実施例1等と同様の方法により、実施例5,6及び比較例9~15の各組成物からなる成形体(厚み:6mm、1mm、12mm)を得た。
【0086】
〔評価〕
実施例5,6及び比較例9~15の各成形体について、以下に示される方法により、硬度、熱伝導率、体積抵抗率、比重、成形性、難燃性、リワーク性、耐オイルブリード性を評価した。結果は、表2に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
表2に示されるように、実施例5の成形体では、非イオン性界面活性剤2が使用され、かつ実施例6の成形体では、非イオン性界面活性剤3が使用された場合である。実施例5,6は、非イオン性界面活性剤2等以外の配合は、実施例4等と全く同じである。このような実施例5,6では、実施例4等と同様、リワーク性に優れ、かつ耐オイルブリード性に優れる結果となった。なお、実施例5,6の成形体は、表2に示されるように、熱伝導性、絶縁性、成形性、難燃性等にも優れていることが確かめられた。
【0089】
比較例9は、液体状の非イオン性界面活性剤4を使用した場合である。比較例9の成形体は、体積抵抗率が低く、絶縁性に問題があった。
【0090】
比較例10は、HLB値が1.8である液体状の非イオン性界面活性剤5を使用した場合である。比較例10の成形体は、リワーク性に問題があった。
【0091】
比較例11~15は、液体状の非イオン性界面活性剤を使用した場合である。比較例11~15の各成形体は、体積抵抗率が低く、絶縁性に問題があった。
【符号の説明】
【0092】
10…熱伝導成形体、11…本体部、12,13,14,15…収容部、20…放熱対象物(基板装置)、21…基板、22,23,24,25…電子部品(発熱部)、30…放熱板
図1
図2