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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】回転式電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/06 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
H01H19/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019144044
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021026888
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】趙 雲
(72)【発明者】
【氏名】野村 修
(72)【発明者】
【氏名】川嶌 義之
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026328(JP,A)
【文献】実公昭36-024212(JP,Y1)
【文献】実開平06-026128(JP,U)
【文献】特開2017-147174(JP,A)
【文献】実開昭56-015540(JP,U)
【文献】特開2008-123904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに装着された回転つまみを回転することで、前記ケースに装着された検出手段の出力信号を変化させる回転式電子部品において、
前記ケースは、一方の面側を回転つまみ設置部、他方の面側を検出手段設置部とすると共に、両面間を貫通する回転軸孔を設け、
前記回転つまみは、前記ケースの回転つまみ設置部側に回転自在に設置され、
前記検出手段は、前記ケースの検出手段設置部側に設置され、
前記回転つまみと前記検出手段は、前記ケースの回転軸孔を貫通する回転軸によって連結され、
前記回転つまみの前記検出手段側を向く面の反対の面側にカバーを設置し、
前記回転つまみの前記ケースと対向する側の面の前記回転軸の周囲には、前記回転軸と所定間隔をあけてこれを囲むように円筒状の第1の凸部を設け、さらに当該第1の凸部の外側に所定間隔をあけて円筒状の第2の凸部を設け、これによって前記回転軸と第1の凸部の間に第1の凹部を形成し、且つ前記第1の凸部と第2の凸部の間に第2の凹部を形成し、
一方、前記ケースの前記回転つまみと対向する側の面の前記回転軸孔の周囲には、円筒状の第1凸部を設け、さらに当該第1凸部の外側に所定間隔をあけて円筒状の第2凸部を設け、これによって前記第1凸部と第2凸部の間に第1凹部を形成し
前記回転つまみの第2の凸部の高さを、前記第1の凸部の高さよりも低く形成し、
前記回転つまみに設けた第1の凹部と第2の凹部に、前記ケースに設けた第1凸部と第2凸部をそれぞれ相互に凹凸係合させて回転軸孔への液体の浸入を防滴することを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式電子部品であって、
前記ケースの前記回転つまみと対向する側の面の前記第2凸部の外側に所定間隔をあけて円筒状の第3凸部を設け、これによって前記第2凸部と第3凸部の間に第2凹部を形成し、
前記ケースの第3凸部の高さを、前記第1凸部と第2凸部の高さよりも低く形成し、
前記ケースに設けた第2凹部に、前記回転つまみに設けた第2の凸部を相互に凹凸係合させ、
且つ前記凹凸係合させた部分に粘性部材を充填したことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転式電子部品であって、
前記カバーは、防滴部材を介して前記ケースに接合されていることを特徴とする回転式電子部品。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の回転式電子部品であって、
前記検出手段は、前記回転軸の先端に取り付けられた回転体と、当該回転体の前記ケースとは反対側を向く面に取り付けられた摺動子と、前記摺動子に対向する位置に設置され前記摺動子の摺接によって出力信号を変化させる摺接パターンを形成した回路基板とを具備して構成されていることを特徴とする回転式電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効果的な防滴を行うことができる回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式電子部品の防滴構造として、例えば特許文献1に示す液体侵入防止機構があった。この液体侵入防止機構は、基台(20)上の電気的機能部(摺動子(130)やフレキシブル回路基板(50)のパターン面など)の周囲を囲む位置に防滴部材(70)を設置し、当該防滴部材(70)に設けたリング状の凹部(73)内に、回転体(110)に設けたリング状の凸部(121)を挿入する構造となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-123904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の液体侵入防止機構は、防滴部材(70)の凹部(73)と回転体(110)の凸部(121)とをリング状に凹凸係合しているが、このリング状の係合部分の内側に、電気的機能部が配置されているため、浸入してくる液体の量が多いと、この凹凸係合だけではその内側、即ち電気的機能部への液体の浸入を確実に防止することができなかった。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、電気的機能部などの検出手段への液体の浸入を効果的に防止することができる回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケースに装着された回転つまみを回転することで、前記ケースに装着された検出手段の出力信号を変化させる回転式電子部品において、前記ケースは、一方の面側を回転つまみ設置部、他方の面側を検出手段設置部とすると共に、両面間を貫通する回転軸孔を設け、前記回転つまみは、前記ケースの回転つまみ設置部側に回転自在に設置され、前記検出手段は、前記ケースの検出手段設置部側に設置され、前記回転つまみと前記検出手段は、前記ケースの回転軸孔を貫通する回転軸によって連結され、前記回転つまみの前記検出手段側を向く面の反対の面側にカバーを設置し、前記回転つまみの前記ケースと対向する側の面の前記回転軸の周囲には、前記回転軸と所定間隔をあけてこれを囲むように円筒状の第1の凸部を設け、さらに当該第1の凸部の外側に所定間隔をあけて円筒状の第2の凸部を設け、これによって前記回転軸と第1の凸部の間に第1の凹部を形成し、且つ前記第1の凸部と第2の凸部の間に第2の凹部を形成し、一方、前記ケースの前記回転つまみと対向する側の面の前記回転軸孔の周囲には、円筒状の第1凸部を設け、さらに当該第1凸部の外側に所定間隔をあけて円筒状の第2凸部を設け、これによって前記第1凸部と第2凸部の間に第1凹部を形成し、前記回転つまみの第2の凸部の高さを、前記第1の凸部の高さよりも低く形成し、前記回転つまみに設けた第1の凹部と第2の凹部に、前記ケースに設けた第1凸部と第2凸部をそれぞれ相互に凹凸係合させて回転軸孔への液体の浸入を防滴することを特徴としている。
本発明によれば、回転つまみと検出手段を、ケースの異なる面側に設置した上で、ケースと回転つまみの対向面にそれぞれ設けた凹凸部を相互に凹凸係合させる構成としたので、例え回転つまみ側から凹凸係合させた防滴構造を乗り越えて一部の液体がケースの回転軸孔近傍に浸入してきたとしても、回転軸を挿入したケースの回転軸孔を介してその反対面側に設置された検出部までは浸入しにくい。これによって、検出手段への液体の浸入を確実に防止することができる。
また本発明は、上記特徴に加え、前記ケースの前記回転つまみと対向する側の面の前記第2凸部の外側に所定間隔をあけて円筒状の第3凸部を設け、これによって前記第2凸部と第3凸部の間に第2凹部を形成し前記ケースの第3凸部の高さを、前記第1凸部と第2凸部の高さよりも低く形成し、前記ケースに設けた第2凹部に、前記回転つまみに設けた第2の凸部を相互に凹凸係合させ、且つ前記凹凸係合させた部分に粘性部材を充填したことを特徴としている。
【0007】
また本発明は、上記特徴に加え、前記カバーは、防滴部材を介して前記ケースに接合されていることを特徴としている。
本発明によれば、回転つまみを収納したケースとカバーの内部に浸入した液体が、これらケースとカバーの外部(下方)に向けて漏れていくことを防滴部材によって防止することができる。
【0008】
また本発明は、上記特徴に加え、前記検出手段は、前記回転軸の先端に取り付けられた回転体と、当該回転体の前記ケースとは反対側を向く面に取り付けられた摺動子と、前記摺動子に対向する位置に設置され前記摺動子の摺接によって出力信号を変化させる摺接パターンを形成した回路基板とを具備して構成されていることを特徴としている。
摺接パターンとしては、スイッチパターン、抵抗体パターンなど、種々の摺接パターンが考えられる。回路基板は硬質回路基板でもよいし、フレキシブル回路基板でもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検出手段への液体の浸入を効果的に防滴することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】回転式電子部品1の斜視図である。
図2】回転式電子部品1を別の角度から見た斜視図である。
図3】回転式電子部品1の分解斜視図である。
図4】回転式電子部品1を別の角度から見た分解斜視図である。
図5】回転式電子部品1の断面図(図1のA-A断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態に係る回転式電子部品1の斜視図、図2は回転式電子部品1を別の角度から見た斜視図、図3は回転式電子部品1の分解斜視図、図4は回転式電子部品1を別の角度から見た分解斜視図、図5は回転式電子部品1の断面図(図1のA-A断面図)である。これらの図に示すように、回転式電子部品1は、ケース10の仕切壁11の一方の面側に回転つまみ60と防滴部材80と、カバー90とを設置し、ケース10の仕切壁11の他方の面側に回転体100と、摺動子120と、回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)130と、押え板140とを設置して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは回転つまみ40がケース10とカバー90から露出している面側をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0012】
ケース10は合成樹脂の一体成形品であり、仕切壁11の一方の面側を回転つまみ設置部13とし、他方の面側を検出手段設置部15としている。仕切壁11の回転つまみ設置部13側の外周の左右の側辺と下辺の部分は、仕切壁11から離れる方向に向かって突出する側壁15,17,19となっていて、これら側壁15,17,19に囲まれる内側の凹状部分を回転つまみ収納部21としている。回転つまみ収納部21は、前記回転つまみ60を収納する凹部となっていて、その上部とカバー90側の部分はそれぞれ開口となっている。側壁15,17,19のカバー90側の先端面は、略U字形状の平らな当接面27となっている。当接面27の周囲には、これを囲むように、ガイド突起29が設けられている。当接面27中の下部2か所には、小突起状の位置決め部31が設けられている。また当接面27の外側を囲む位置(4か所)には、小突起状の取付部33が設けられている。
【0013】
仕切壁11のほぼ中央には、回転つまみ設置部13側の面と検出手段設置部15側の面間を貫通する円形の回転軸孔35が形成されている。仕切壁11の回転つまみ設置部13側の面の回転軸孔35の周囲には、円筒状の第1凸部37が設けられ、その外側に所定間隔をあけて円筒状の第2凸部39が設けられ、さらにその外側に所定間隔をあけて円筒状の第3凸部41が設けられている。各凸部37,39,41の間の部分は、それぞれ第1凹部43、第2凹部45となっており、これら全体を凹凸部という。最も外側の第3凸部41の高さは他の凸部37,39の高さよりも低く形成されている。第1凸部37の中央の穴は、前記回転軸孔35の一部となっている。
【0014】
仕切壁11の検出手段設置部15側の面の回転軸孔35の周囲は、円形の凹部からなる回転体収納部47となっている。回転体収納部47の外側を囲む部分には、複数本(4本)の小突起からなる係止部49が形成されている。
【0015】
回転つまみ60は、合成樹脂の一体成形品であり、略円柱状に形成され、その外周面は操作面61となっている。回転つまみ60の一方の側面(ケース10側を向く面)の中央には、円筒形状の回転軸63が設けられている。回転軸63の外径寸法は、前記ケース10の回転軸孔35の内径寸法とほぼ同一に形成されている。回転軸63の先端からは複数本(3本)の回転体取付部65が突出している。回転つまみ60の回転軸63の周囲の面からは、回転軸63と所定の間隔をあけてこれを囲むように円筒状の第1の凸部67が設けられ、その外側に所定間隔をあけて円筒状の第2の凸部69が設けられている。回転軸63と各凸部67,69と操作面61を設けた部分のそれぞれの間の部分は、それぞれ第1,第2,第3の凹部71,72,73となっており、これら全体を凹凸部という。第1,第2,第3の凹部71,72,73は、それぞれ前記ケース10の第1,第2,第3凸部37,39,41を挿入できる寸法に形成されている。回転つまみ60の反対側の面には、円形の凹部からなるカバー挿入部75が形成されている。
【0016】
防滴部材80は、ゴム弾性を有する樹脂材によって構成され、略U字状の平板で、前記ケース10の当接面27に挿入・当接される寸法形状に形成されている。防滴部材80の下部の複数個所(2か所)には、小孔からなる位置決め部81が形成されている。また防滴部材80の両端部分は、外装ケース側当接部83となっている。
【0017】
カバー90は、合成樹脂の一体成形品であり、略平板形状であって、ケース10を向く面側には、筒状に突出するつまみ挿入部91が形成されている。つまみ挿入部91の外径寸法は、前記回転つまみ60のカバー挿入部75の内形寸法よりも少し小さく形成されている。また前記ケース10の各取付部33と各位置決め部31に対向する位置には、これらを挿入する孔からなる被取付部93と挿入部95が形成されている。
【0018】
回転体100は、合成樹脂の一体成形品であり、略円板状に形成され、その中央に円形の小孔からなる孔部101を設け、その周囲を囲むように複数(3つ)の貫通孔からなる回転軸取付部103を設け、さらに回転体100のケース10とは反対側を向く面に複数(3つ)の小突起状の摺動子取付部105を設けて構成されている。回転軸取付部103は、前記回転つまみ60の回転体取付部65を篏合する寸法形状に形成されている。回転体100のケース10とは反対側を向く面の回転軸取付部103の周囲の部分は凹部107となっている。
【0019】
摺動子120は、弾性金属板を略リング状に形成して構成されている。摺動子120の複数個所(3か所)には、小孔からなる回転体取付部121が形成され、またその外周には複数本(3本)の摺動冊子123が形成されている。各回転体取付部121は、前記回転体100に設けた各摺動子取付部105に対向する位置に設けられている。
【0020】
フレキシブル回路基板130は、可撓性を有する合成樹脂フィルム上に、所望の摺接パターン131を形成して構成されている。摺接パターン131としては、スイッチパターン、抵抗体パターンなど、種々の摺接パターンが考えられる。フレキシブル回路基板130の外周近傍の所定の複数個所(4か所)には、小孔からなるケース取付部133が形成されている。各ケース取付部133は、前記ケース10の各係止部49に対向する位置に設けられている。フレキシブル回路基板130からは、帯状の引出部135が引き出されている。この引出部135には、前記摺接パターン131に接続された配線用パターン137が形成され、当該配線用パターン137は引出部135の先端に引き出されている。
【0021】
押え板140は、硬質の金属板または合成樹脂板製であり、前記フレキシブル回路基板130の引出部135を除く部分を覆う寸法形状に形成されている。押え板140の外周近傍の複数個所(4か所、フレキシブル回路基板130の各ケース取付部133に対向する位置)には、小孔からなるケース取付部141が形成されている。
【0022】
次に、回転式電子部品1を組み立てるには、まず、ケース10の第1凹部43内と回転つまみ60の第1,第2の凹部71,72内の内の少なくとも何れ1か所に、グリスなどの粘性部材を充填する。次に、ケース10の回転つまみ収納部21内に、回転つまみ60を収納する。このとき、回転つまみ60の回転軸63を、ケース10の回転軸孔35に回動自在に挿入し軸支する。同時に、回転つまみ60の第1,第2の凸部67,69を、ケース10の第1,第2凹部43,45に挿入する。即ち、ケース10と回転つまみ60の対向面にそれぞれ設けた凹凸部を相互に凹凸係合させる。
【0023】
次に、ケース10の回転体収納部47内に、回転体100を挿入する。このとき、回転軸孔35から突出している回転軸63の各回転体取付部65を、回転体100の各回転軸取付部103に挿入し、その先端を回転体100の凹部107内において熱カシメする。これによって、回転つまみ60と回転体100は一体に回転自在となる。次に、回転体100のケース10とは反対側を向く面に摺動子120を載置し、その際、回転体100の各摺動子取付部105を摺動子120の各回転体取付部121に挿入し、各摺動子取付部105の先端を熱カシメすることで、両者を一体化する。なお、回転体100の各摺動子取付部105を摺動子120の各回転体取付部121に圧入することで、上記熱カシメを省略しても良い。
【0024】
次に、摺動子120の上側からフレキシブル回路基板130と押え板140を被せるように設置し、その際ケース10の各係止部49をフレキシブル回路基板130の各ケース取付部133と押え板140の各ケース取付部141に挿入し、押え板140の背面側に突出する各係止部49の先端を熱カシメする。
【0025】
次に、ケース10の当接面27に防滴部材80を設置する。このとき、ケース10の各位置決め部31を、防滴部材80の各位置決め部81に挿入する。
【0026】
次に、ケース10の防滴部材80を設置した側の面に、カバー90を被せるように設置する。このとき、カバー90のつまみ挿入部91を回転つまみ60のカバー挿入部75に挿入し、またケース10の各取付部33と各位置決め部31をカバー90の各被取付部93と各挿入部95に挿入する。そして、カバー90の背面側から突出する各被取付部93の先端を熱カシメする。これによって、回転式電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0027】
組み立てられた回転式電子部品1は、上述のように、ケース10と回転つまみ60の対向面にそれぞれ設けた凹凸部が相互に凹凸係合しており、またこの凹凸係合させた部分にはグリスなどの粘性部材が充填されている。またケース10と防滴部材80とカバー90によって回転つまみ収納部21は、開放された上部と回転軸孔35を除いて、密閉された凹部となっている。また回転体100などを収納したケース10の回転体収納部47内は、フレキシブル回路基板130と押え板140によって封止されている。また回転体100と、摺動子120と、摺接パターン131を形成したフレキシブル回路基板130によって、検出手段が構成されている。また図1図2に示すように、防滴部材80両端の外装ケース側当接部83は、ケース10とカバー90の上面から少し突出している。
【0028】
回転式電子部品1は、例えば図5に示すように、外装ケース150に設けた開口151から回転つまみ60の一部(露出部分)を露出するように設置される。このとき外装ケース150の下面の開口151の周囲を囲む部分と回転式電子部品1のケース10及びカバー90の対向面との間に弾性材からなる防滴用部材160を設置しておくことが好ましい。またこのとき、防滴部材80両端の外装ケース側当接部83は、防滴用部材160に弾接して圧縮され、これによってケース10とカバー90の上面の接合線部分を介して外部に滲出しようとする液体の滲出を防止している。
【0029】
以上のように設置された回転式電子部品1において、回転つまみ60を回動すると、回転つまみ60と一体に回転体100及び摺動子120が回動し、摺動子120の摺動冊子123がフレキシブル回路基板130の摺接パターン131上を摺動することで、その出力信号が変化する。回転つまみ60を回転する際、前記ケース10と回転つまみ60の対向面に設けた凹凸係合部分にグリスなどの粘性部材が充填されているので、回転つまみ60の回転に所望のトルクを生じさせることができる。なおグリスなどの粘性部材は、回転軸孔35と回転軸63の間にも充填してその潤滑と防滴とトルク出しに利用しても良い。
【0030】
ここで、外装ケース150の開口151から液体(以下「水」という)が浸入したとすると、この水は、回転つまみ60のケース10とカバー90の上部に露出している部分の周囲から、ケース10とカバー90内に浸入する。なお、外装ケース150の開口151の周囲には、防滴用部材160が挟持されているので、開口151から浸入する水がケース10とカバー90の外側面側に漏れていくことはない。
【0031】
ケース10とカバー90内に浸入した水の一部は、回転つまみ60のケース10を向く面側に浸入して回転軸孔35に到達しようとするが、回転軸孔35の周囲には、ケース10と回転つまみ60の対向面に設けた凹凸係合部分が設けられているので、回転軸孔35に水が浸入することを効果的に阻止できる。またこの凹凸係合部分にはグリスなどの粘性部材が充填されているので、さらにこの防滴効果は大きくなる。さらに、例えこの凹凸係合部分を乗り越えて水が浸入できたとしても、防滴を必要とする検出手段(回転体100や摺動子120など)は、回転軸63を挿入した回転軸孔35を介して仕切壁11の反対面側に設置されているので、水は検出手段までは浸入しにくい。即ち、水が回転軸孔35を通って、検出手段に到達することはなく、検出手段の確実な防滴を図ることができる。
【0032】
一方、外装ケース150の開口151から浸入した水の他の一部は、ケース10の回転つまみ収納部21内を下方に向かい、ケース10とカバー90の接合面を介してそれらの下側に漏れ出ようとするが、両者の接合面には、防滴部材80が挟持されているので、この接合面を介してその下側に水が漏れていくことはない。
【0033】
以上説明したように、回転式電子部品1によれば、回転つまみ60と検出手段(回転体100や摺動子120など)を、ケース10の異なる面側に設置した上で、ケース10と回転つまみ60の対向面にそれぞれ設けた凹凸部を相互に凹凸係合させる防滴構造を設けたので、例え回転つまみ60側から凹凸係合させた防滴構造を一部の液体が乗り越えてきたとしても、回転軸63を挿入した回転軸孔35を介してケース10の反対面側に設置された検出手段までには水は浸入しにくい。これによって、検出手段への水の浸入を確実に防ぐことができる。
【0034】
また、上記回転式電子部品1によれば、カバー90を、防滴部材80を介してケース10に接合したので、回転つまみ60を収納したケース10とカバー90の内部に浸入した水が、これらケース10とカバー90の外部(下方)に向けて漏れていくことを、この防滴部材80によって防止することができる。
【0035】
なお、上記回転式電子部品1においては、第2の凸部69の長さ(高さ)を第1の凸部67の長さ(高さ)とほぼ同一にしているが、第2の凸部69の長さ(高さ)を第1の凸部67の長さ(高さ)よりも短く形成しても良い。このように構成すれば、回転つまみ60を成形する際の金型からの離型を向上させることができる。
【0036】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、回路基板としてフレキシブル回路基板を用いた例を説明したが、その代わりに硬質回路基板を用いても良い。その場合、押え板は設置しなくても良い。また上記実施形態では凹凸係合部分にトルク出し及び防滴のためにグリスなどの粘性部材を充填したが、粘性部材の代わりに、Oリングなどのゴム状弾性体を設置(挟持)しても良い。また場合によっては、粘性部材は必ずしも充填しなくても良い。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 回転式電子部品
10 ケース
13 回転つまみ設置部
15 検出手段設置部
27 当接面
35 回転軸孔
37 第1凸部(凹凸部)
39 第2凸部(凹凸部)
41 第3凸部(凹凸部)
43 第1凹部(凹凸部)
45 第2凹部(凹凸部)
60 回転つまみ
63 回転軸
67 第1の凸部(凹凸部)
69 第2の凸部(凹凸部)
71 第1の凹部(凹凸部)
72 第2の凹部(凹凸部)
73 第3の凹部(凹凸部)
80 防滴部材
90 カバー
100 回転体(検出手段)
120 摺動子(検出手段)
130 フレキシブル回路基板(回路基板、検出手段)
131 摺接パターン(検出手段)
140 押え板
図1
図2
図3
図4
図5