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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】野球用グラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/14 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
A63B71/14 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020072063
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021168740
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】396002127
【氏名又は名称】丸和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】燃脇 塁
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3044317(JP,U)
【文献】特開2010-168699(JP,A)
【文献】特開平07-213675(JP,A)
【文献】特開2007-228996(JP,A)
【文献】特開平11-057107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/14
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指挿入部、人差し指挿入部、中指挿入部、薬指挿入部および小指挿入部の正面側の下方に捕球面部が形成され、前記人差し指挿入部、中指挿入部、薬指挿入部および小指挿入部の背面側の下方に覗き空間が設けられ、前記親指挿入部の下端延長部と小指挿入部の下端部との間に手口バンドが設けられており、前記手口バンドは、外層体、中層体および内層体の三層構造としており、前記外層体および内層体は100%以上の伸縮率を有する素材からなり、前記中層体は10%以下の伸縮率を有する素材からなり、手口バンドの使用者の手甲部が接触する部分の輪郭に沿うような枠状に形成し、前記外層体と内層体の間に空間部が形成されていることを特徴とする野球用グラブ。
【請求項2】
前記中層体は、前記外層体と内層体の間に形成される空間部を分断する仕切枠を設けたものとしていることを特徴とする請求項1に記載の野球用グラブ。
【請求項3】
前記外層体および内層体の伸縮率が200~500%であり、前記中層体の伸縮率が2~5%であることを特徴とする請求項1または2に記載の野球用グラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内野手、外野手や投手が使用するのに適した野球用グラブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球の試合においては、内野手、外野手や投手は打球を捕球する機会が多く、その打球もゴロやフライ、ライナーなどと速度、高さ、角度などが異なるので、このような打球を捕球するにはそれなりの技術が必要である。
【0003】
しかし、このような打球を捕球するには捕球技術だけではなく、使用するグラブの性能や使用感などにもかかわってくるので、野球用グラブには数々の工夫が凝らされたものが存在する。
【0004】
このような野球用グラブとしては、例えば、手口挿入部に設ける手口バンドを、グラブ本体とは別部材とすると共に、ベルト部とパッド部とから構成したものが存在する。このベルト部は、一部に伸縮性素材を用いており、両端部に止着具を設け、グラブ本体に設けた止着具に着脱自在に取り付けるようにしている(特許文献1)。
【0005】
前記野球用グラブは、ベルト部の一部に伸縮性素材を用いたので、手の大きさの異なる使用者に対応することができ、ベルト部の両端に設けた止着具の間の長さがグラブによって異なっても、その異なる長さに対応できるとしている。さらに、手をこの手口バンドを取り付けたグラブに挿入したときに、使用者の手甲部をこの伸縮性素材にしたがわせることができるとしている。
【0006】
さらに、このような野球用グラブとしては、グラブ本体へ一端を固定し他端を着脱自在とした手口バンドの裏面にクッション材を設けたものが存在する。この手口バンドとクッション材の間には、一端がグラブ本体に固定され他端がこの手口バンドの表面に着脱自在に係着される伸縮可能な調節ベルトを設けている(特許文献2)。
【0007】
前記野球用グラブは、調節ベルトを着脱すれば手口バンドを固定したまま簡単にグラブを着脱できるとしている。そして、この調節ベルトの引張りで、使用中のフィット性を自在に調整することができると共に、その調整は使用者の手の大小に係わることなくできる。しかも、手口バンドは固定されているので、使用中にグラブが外れる不安もない等の効果を有するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-211310号公報
【文献】実用新案登録第3044317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、野球用グラブにおいて、ゴロやフライ、ライナーなどの各種の打球を捕球する場合、捕球面部は常に窪んだ状態に維持されていることが好ましい。しかし、グラブに挿入した使用者の手甲部が、手口バンドに接触した状態では、この手口バンドにより強く支持されているため、捕球面部も使用者の手の平で前におされて、窪んだ状態から少し盛り上がったり浮いてしまったりすることがある。特に、少年野球においては、グラブの取り扱いに不慣れなものも多く、グラブを上手く嵌めたり握ったりすることができないため、捕球面部が前におされて、窪んだ状態から浮いてしまうことがある。すると、捕球時に打球がこの浮いた部分に当たってはね返されて、捕球面部から飛び出し落球してしまったりすることがある。
【0010】
また、前記打球がゴロやフライ、ライナーに限らず強烈な当たりの場合は、捕球面部への衝撃が強いので、はね返ってしまい捕球面部から飛び出し落球してしまったりすることがある。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載されたグラブでは、手をグラブに挿入したときに、手甲部を手口バンドの伸縮性素材にしたがわせることができるとしているが、打球を捕球する場合、前記したような捕球面部の浮きを防止するという効果や、捕球時の衝撃をやわらげるという効果は有していない。
【0012】
さらに、特許文献2に記載されたグラブでも、調節ベルトの引張りで、使用中のフィット性を自在に調整することができるとしているが、特許文献1に記載されたグラブと同様に、打球を捕球する場合、前記したような捕球面部の浮きを防止するという効果や、捕球時の衝撃をやわらげるという効果は有していない。
【0013】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、手口バンドの手甲部へのフィット性をよくすると共に、捕球時における打球の衝撃をやわらげ、しかも打球の捕球時における捕球面部の浮きを防止することができ、操作性に優れた野球用グラブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため、本発明の野球用グラブは、親指挿入部3、人差し指挿入部4、中指挿入部5、薬指挿入部6および小指挿入部7の正面側の下方に捕球面部8が形成され、前記人差し指挿入部4、中指挿入部5、薬指挿入部6および小指挿入部7の背面側の下方に覗き空間Sが設けられ、前記親指挿入部3の下端延長部3aと小指挿入部7の下端部との間に手口バンド11が設けられている。前記手口バンド11は、外層体12、中層体13および内層体14の三層構造としている。前記外層体12および内層体14は100%以上の伸縮率を有する素材からなる。前記中層体13は10%以下の伸縮率を有する素材からなり、手口バンド11の使用者の手甲部が接触する部分の輪郭に沿うような枠状に形成し、前記外層体12と内層体14の間に空間部21が形成されている。
【0015】
本発明の野球用グラブにおいて、前記中層体13は、前記外層体12と内層体14の間に形成される空間部21を分断する仕切枠13aを設けたものとしている。
【0016】
本発明の野球用グラブにおいて、前記外層体12および内層体14の伸縮率が200~500%であり、前記中層体13の伸縮率が2~5%であるものとしている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の野球用グラブは、手口バンドの手甲部へのフィット性がよくなり、捕球時における打球の衝撃をやわらげることができ、打球がはね返されて捕球面部から飛び出し落球してしまったりすることも少なくなる。
【0018】
さらに、本発明の野球用グラブは、打球の捕球時における捕球面部の浮きを防止することができるので、操作性に優れたものとなり、打球が捕球面部から飛び出し落球してしまったりすることが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の野球用グラブの一実施形態を示す背面図である。
図2】本発明の野球用グラブの一実施形態を示す正面図である。
図3】本発明の野球用グラブから取り外した手口バンドの平面図である。
図4図3中のAーAによる断面図である。
図5図3に示す手口バンド(へり皮は省略)の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の野球用グラブを実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の野球用グラブは、図1、2に示したように、天然皮革や合成皮革などからなる背面部材1と捕球面部材2によって、親指挿入部3、人差し指挿入部4、中指挿入部5、薬指挿入部6および小指挿入部7が形成され、これらの挿入部の正面側の下方に捕球面部8が形成され、この捕球面部8の背面側を平裏部9としている。
【0022】
そして、本発明の野球用グラブは、親指挿入部3と人差し指挿入部4の間に網部10が設けられ、人差し指挿入部4、中指挿入部5、薬指挿入部6および小指挿入部7の背面側の下方に覗き空間Sが設けられ、親指挿入部3の下端延長部3aと小指挿入部7の下端部との間に手口バンド11が設けられている。
【0023】
前記手口バンド11は、図3~5に示したように、高伸縮性の外層体12、低伸縮性の中層体13および高伸縮性の内層体14の三層構造としており、ヘリ皮15で縁取りされており、両端には天然皮革や合成皮革などからなる当て地16a、16bが取り付けられている。
【0024】
そして、前記手口バンド11は、両端の当て地16a、16bにそれぞれ挿入孔17a、17bを設け、前記親指挿入部3の下端延長部3aと小指挿入部7の下端部に設けた止着孔18a、18bとの間に通した紐19a、19bなどによって、これら親指挿入部3の下端延長部3aと小指挿入部7の下端部に取り付けている。図示した手口バンド11は、前記平裏部9の下端にも併せて取り付けるための挿入孔17cを設けているが、この挿入孔17cは必要に応じて設ければよい。
【0025】
さらに、この実施形態では、前記小指挿入部7の下端部に直接、手口バンド11を取り付けているが、前記親指挿入部3と同様に、小指挿入部7にも下端延長部(図示せず)を設けて、この下端延長部に手口バンド11を取り付けてもよい。
【0026】
また、この実施形態では、前記手口バンド11は、紐19a、19bを結んだり解いたりするなどして、これら親指挿入部3の下端延長部3aと小指挿入部7の下端部に着脱自在に取り付けているが、鋲などによって着脱不能に取り付けることもできる。
【0027】
前記外層体12および内層体14は、いずれもクロロプレンゴム、ポリウレタンエラストマーなどの高伸縮性で柔軟性に優れた素材からなり、厚さを1.0~4.0mm程度としており、横長帯状に形成したものとしている。さらに、外層体12および内層体14は、それぞれ中層体13側に高伸縮性の素材よりなる裏生地12a、14aを添着させることにより、これら外層体12および内層体14を補強したものとしてもよい。なお、外層体12の表面には、必要に応じて、ワッペン(エンブレム)20などを縫着したり、ロゴマークなどを刺繍したりすることができる。なお、前記高伸縮性とは100%以上の伸縮率を有するものをいい、本発明においては200~500%の伸縮率を有するものが好ましい。
【0028】
前記中層体13は、外層体12および内層体14に比べて伸縮性に乏しく、天然皮革や合成皮革などの低伸縮性素材からなり、厚さを1.0~1.5mm程度としており、手口バンド11の使用者の手甲部が接触する部分の輪郭に沿うような略横長四角枠状に形成し、外層体12と内層体14の間に空間部21が形成されるようにしている。さらに、中層体13には、前記空間部21を分断する仕切枠13aを設けたものとすることができる。この仕切枠13aは、使用者の手甲部の第3中手骨に沿った位置に一本設けたり、図示したように使用者の手甲部の第2~4中手骨に沿った位置に三本設けたものとすることができる。なお、前記低伸縮性とは10%以下の伸縮率を有するものをいい、本発明においては2~5%の伸縮率を有するものが好ましい。
【0029】
以上のように構成された本発明の野球用グラブでは、打球を捕球面部8の真ん中や土手部寄りの捕球面部8で捕球した場合には、捕球した瞬間に衝撃が手口バンド11に伝わり、この手口バンド11の外層体12および内層体14が伸びることで使用者の手の動きに追従し、さらに空間部21が変形するなどして、衝撃による応力を緩和することにより、これら外層体12、内層体14および空間部21で打球の衝撃がやわらげられる。
【0030】
したがって、打球が強烈な当たりの場合であっても、前記捕球面部8の衝撃によって、使用者の手の動きに合わせて捕球面部8も使用者の手にフィットして浮きにくくなり、打球がはね返されて捕球面部8から飛び出し落球してしまったりすることが少なくなるとともに、使用者の手の平を痛めにくくしている。
【0031】
さらに、本発明の野球用グラブにおいて、前記空間部21にこの空間部21を分断する仕切枠13aを設けたものでは、捕球した瞬間に前記外層体12および内層体14が伸縮し、前記使用者の手甲部の第3中手骨に沿った位置、または使用者の手甲部の第2~4中手骨に沿った位置以外の空間部21が膨縮するが、これらの位置には空間部21は存在せず膨縮しないので、これらの位置の手口バンド11の変形度が抑制され、これらの位置の変形による押圧力が使用者の手甲部の第3中手骨に沿った位置、または使用者の手甲部の第2~4中手骨に沿った位置に掛からないようにして、使用者の手甲部のこれらの中手骨を保護することができる。
【0032】
なお、本発明の野球用グラブにおいて、打球を網部9や網部9寄りの捕球面部8で捕球した場合には、これらの部分で打球の衝撃がやわらげられ、その衝撃が捕球面部8にはそれほど伝わることなく、従来の野球用グラブと同様に、使用者が手の平に強い衝撃を受けることはない。
【0033】
また、本発明の野球用グラブでは、グラブに挿入した使用者の手甲部が手口バンド11に接触した状態では、この手口バンド11の外層体12および内層体14が少し伸びた状態となり、空間部21が少し縮んだ状態となり、その手甲部を捕球面部8側に押し出すことがないので、この捕球面部8も前に押されることなく、この捕球面部8が窪んだ状態から浮いてしまうことがない。特に、使用者が少年の場合や初心者の場合に、先に述べたようにグラブを上手く嵌めたり握ったりすることができなくても、捕球面部8が前におされて、窪んだ状態から浮いてしまうことを大きく防ぐことができる。
【0034】
したがって、本発明の野球用グラブは、捕球面部8が窪んだ状態から浮いてしまうことがないので、フィット性及び操作性に優れたものとなり、捕球時に打球が捕球面部8にはね返され、落球することも少なくなる。
【符号の説明】
【0035】
3 親指挿入部
4 人差し指挿入部
5 中指挿入部
6 薬指挿入部
7 小指挿入部
8 捕球面部
11 手口バンド
12 外層体
13 中層体
13a 仕切枠
14 内層体
21 空間部
S 覗き窓
図1
図2
図3
図4
図5