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▶ エコール ポリテクニーク フェデラル デ ローザンヌ (イーピーエフエル)の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】健康管理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20230405BHJP
   A61B 5/0295 20060101ALI20230405BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61B5/026 120
A61B5/0295
H01L27/146 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020501809
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018069358
(87)【国際公開番号】W WO2019016191
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/068502
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512008613
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラル デ ローザンヌ (イーピーエフエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ボウクハイマ,アッシム
(72)【発明者】
【氏名】カイズゾン,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】エンズ,クリスチャン
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-018569(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043339(WO,A1)
【文献】特開2013-211615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0127988(US,A1)
【文献】特開2013-104839(JP,A)
【文献】特開2001-036128(JP,A)
【文献】特開2014-060631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0183813(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0090844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
H01L 27/14 -27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC成分およびAC成分を含む信号を出力するように構成されたフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置であって、前記装置は、
-パルスオンまたはパルスオフにされるように適合された、パルス光源と、
-光生成電子を生成する光-電荷変換のための少なくとも1つのピクセルと
を含み、
-各ピクセルは前記パルス光源と同期されていることを特徴とする、装置であり
各ピクセルは
-ウェルを含み、2つの電子接続ノードを有する、埋込みフォトダイオード(PPD)と、
-センスノード(SN)であって、前記センスノードは接合キャパシタンスであり、前記接合キャパシタンスの役割は前記埋込みフォトダイオード(PPD)ウェル内の光生成電子を、前記キャパシタンスの変換利得によって、電圧に変換することである、センスノード(SN)と、
-転送ゲート(TGtransfer)トランジスタであって、そのソースが前記埋込みフォトダイオード(PPD)の1つの電子接続ノードに電子的に接続され、かつ前記埋込みフォトダイオード(PPD)と前記センスノード(SN)との間の転送ゲート(TG)として機能するように構成されて、前記光がパルスオフにされるときには前記光生成電子がシンクするのを可能にし、前記光がパルスオンにされるときには光生成電子積を可能にし、積分された光生成電子の少なくとも一部が読出しのために前記センスノードに転送されるのを可能にし、前記TGtransferトランジスタのグリッドは、DC電源(V_TGtransfer)に電子的に接続され、その値は動的に適合できる、転送ゲート(TGtransfer)トランジスタと
を含む、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項2】
各ピクセルは、
-シンク(TGsink)トランジスタであって、そのソースが前記埋込みフォトダイオード(PPD)に電子的に接続され、かつ前記埋込みフォトダイオード(PPD)と一定のDC電源またはキャパシタンスのいずれかとの間の転送ゲート(TG)として機能するように構成されて、前記光がパルスオフにされるときには前記光生成電子が前記一定のDC電源または前記キャパシタンスの方にシンクし、前記光がパルスオンにされるときには前記光生成電子積分を可能にする、シンク(TGsink)トランジスタ
をさらに含む、請求項1に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項3】
前記ピクセルの各々は、前記埋込みフォトダイオード(PPD)と並列に配置されて、それぞれの転送ゲート(TGtransfer)トランジスタによって前記センスノード(SN)に接続された、少なくとも1つのさらなる埋込みフォトダイオード(PPD)を含み、前記転送ゲート(TGtransfer)トランジスタの各々は同期して動作するように構成されている、請求項に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項4】
前記さらなる埋込みフォトダイオード(PPD)の各々は、それぞれのシンク(TGsink)トランジスタによって、前記一定のDC電源または前記キャパシタンスに接続され、前記シンク(TGsink)トランジスタの各々のゲートは、同期して動作するように構成されている、請求項に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項5】
複数のピクセルを含み、前記ピクセルは配列として配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項6】
前記ピクセルの出力を空間的に平均化するように構成されたプロセッサ(DSP)をさらに含む、請求項5に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項7】
ブロック(CDS)であって、
・前記パルス光源がオフにされていて、かつ前記センスノード(SN)ウェルが所定
の期間、積分するのを許可されている場合に、前記フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_reset+V_amb)を保存するキャパシタンス(CSM)と、
・前記パルス光源がオンにされていて、かつ前記センスノード(SN)ウェルが所定の期間、積分するのを許可されている場合に、前記フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_amb+V_reset+V_LED)を保存するキャパシタンス(CSH2)と
を含み、
前記ブロック(CDS)は、キャパシタンス(CSM)によって保存された値(V_LED+V_reset+V_amb)とキャパシタンス(CSH2)によって保存された値(V_reset+V_amb)との間の値の差の関数がADCに送信されて、前記パルス光源(LED)だけに関連する信号に関連する電圧(V_LED)を評価するように構築される、
ブロック(CDS)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項8】
前記感知装置は、CMOS技術で構築され、かつ各ピクセルは、システムオンチップ(SOC)に埋め込まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置を操作する方法であって、
-転送フェーズにおいて、前記転送ゲート(TGtransfer)トランジスタ電圧を、前記埋込みフォトダイオード(PPD)のウェル電位(V_well)と前記シンクトランジスタ(TGsink)に印加された電圧(V_TGsink)との間に含まれる値(V_TGtransfer)に設定して、オフセットを超えている光生成電子だけが読出しのために前記センスノード(SN)に転送されるのを可能にすること
を行うステップを含む、方法。
【請求項10】
前記転送ゲート(TGtransfer)トランジスタ電圧は動的に適合される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
A.前記DC電源の値(V_TGtransfer)を所定の値に設定することと、
B.前記DC電源に対応するピクセル応答が所定の閾値を超えているかどうかをチェックすることと、
C.前記ピクセル応答が前記閾値を超えている場合、前記ピクセル応答が前記閾値をもう超えなくなるまで、ステップAおよびBを繰り返すことと
を行うステップを含む、
較正ステップを含む、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
-前記パルス光源をパルスオフにすることと、
-前記埋込みフォトダイオード内の電荷を所定の期間中、積分することと、
-周囲光に対応する電圧(V_amb)を生成するために、前記転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって前記電荷を前記センスノード(SN)に転送して、前記電荷を第1のコンデンサ(CSH1)に保存することと、次いで
-前記パルス光源を少なくとも前記所定の期間、パルスオンにすることと、
-前記埋込みフォトダイオード内の電荷を前記所定の期間、積分することと、
-前記パルス光源と混合された周囲光に対応する電圧(V_amb+V_LED)を生成するために、前記転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって前記電荷を前記センスノード(SN)に転送して、前記電荷を第2のコンデンサ(CSH2)に保存することと、次いで
-前記周囲光と混合されたパルス光源のパルスオンに対応する電圧(V_amb+V_LED)から前記周囲光に対応する電圧(V_amb)を差し引いて、前記パルス光源だけに由来する検出光の関数に対応する電圧(V_LED)をもたらすことと
を行うステップを含む、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
-前記パルス光源をパルスオンにすることと、
-前記埋込みフォトダイオード内の電荷を所定の期間中、積分することと、
-前記パルス光源と混合された周囲光に対応する電圧(V_amb+V_LED)を生成するために、前記転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって前記電荷を前記センスノード(SN)に転送して前記電荷を第1のコンデンサ(CSH1)に保存することと、次いで
-前記パルス光源をパルスオフにすることと、
-前記埋込みフォトダイオード内の電荷を前記所定の期間中、積分することと、
-周囲光に対応する電圧(V_amb)を生成するために、前記転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって前記電荷を前記センスノード(SN)に転送して前記電荷を第2のコンデンサ(CSH2)に保存することと、次いで
-前記周囲光と混合されたパルス光源のパルスオンに対応する電圧(V_amb+V_LED)から前記周囲光に対応する電圧(V_amb)を差し引いて、前記パルス光源だけに由来する検出光の関数に対応する電圧(V_LED)をもたらすことと
を行うステップを含む、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
-前記パルス光源をパルスオフにすることと、
-前記埋込みフォトダイオード内の電荷を所定の期間中、積分することと、
-リセット電圧(V_reset)と混合された周囲光に対応する電圧(V_reset+V_amb)を生成するために、前記転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって前記電荷を前記センスノード(SN)に転送して、前記電荷を第1のコンデンサ(CSH1)に保存することと、次いで
-前記パルス光源をパルスオンにすることと、
-前記埋込みフォトダイオード内の電荷を前記所定の期間中、積分することと、
-前記リセット電圧と混合された周囲光および前記パルス光源(LED)に関連する信号に対応する電圧(V_amb+V_reset+V_LED)を生成するために、前記転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって前記電荷を前記センスノード(SN)に転送して、前記電荷を第2のコンデンサ(CSH2)に保存することと、次いで
-前記電圧(V_reset+V_amb)を前記電圧(V_amb+V_reset+V_LED)から差し引いて、前記パルス光源(LED)だけに由来する検出光に関連する信号の関数を取得することと
を行うステップを含む、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
、前記第1のコンデンサ(CSH1)および第2のコンデンサ(CSH2)を、一方のコンデンサの極性が他方に関して逆になるように、並列に接続することによって実行され、両方のコンデンサ(CSH1、CSH2)に共通の接続ポイントは、各コンデンサ(CSH1、CSH2)にわたる電圧間の差の半分に対応する電圧値を示す、請求項1214のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置は複数のピクセルを含み、前記方法は、各ピクセルの出力を空間的に平均化するステップをさらに含む、請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ピクセルの平均化は、電子バッファにつながる複数のコンデンサの接続を通じる受動スイッチコンデンサ方式で実行される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオメディカル用途、特に、健康管理のためのCMOSセンサーの領域に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、人口の高齢化ならびに肥満度および心臓関連病状、すなわち、循環器疾患における増加の複合作用の両方を所与として、健康管理はますます重要になっている。ヘルスケア産業は、患者を管理する新しい方法により依存するようになっている。
【0003】
これは、フィットネスおよび健康に対する関心の高まりと共に、より手ごろで、特に、装着時に、正確な健康管理装置が求められている。
【0004】
かかる文脈では、フォトプレチスモグラフィ(PPG)が知られており、心拍数(HR)、血中酸素飽和度(S)、呼吸数(RR)、および動脈圧(AP)などの、バイタル生物学的指標の非侵襲的な監視を可能にする主要技術のように思われる。
【0005】
標準的なPPGシステムは、光センサーと同期されたパルスLED、および処理チェーンを含む。LEDはヒトの皮膚において光を拡散する。反射された拡散光によって保持される信号の処理は、いくつかのバイタルパラメータの抽出を可能にする。
【0006】
標準的なPPGは、単に、組織上で、特定の波長で光を照らして、反射光または組織を通して透過された光のいずれかを読み出すことにより、いくつかの心臓パラメータを測定する。光の大部分は、組織によって吸収されるが、そのごく一部は検出器に到達する。一旦、検出器で光が光生成電流に変換されると、最終的には、取得チェーン、すなわち、電子回路によってフィルタリングされて処理される。これを達成するために、標準的なPPGは、少なくとも2つの発光ダイオード(LED)、および1つの広帯域「フォトダイオード」(PD)を含む。
【0007】
典型的には、2つのLEDは、時分割多重化で、すなわち、位相を異にして、2つの異なる波長、例えば、可視および中赤外で、光を照らして、血液中で循環している分子ならびに特に酸化ヘモグロビン(HbO)、および脱酸素化ヘモグロビン(Hb)の異なる吸収特性を活用する。ヘモグロビン分子全体に対するHbO分子(
【数1】
)を「カウントする」と、酸素飽和度(S)、血液中を流れる酸素量を報告する該パラメータ、が得られる。組織は多数の吸収物質がある非常に複雑な環境であるので、放出された光の出力は、十分な光子が検出器に作用するのを可能にするために十分に大きいべきである(それらの大多数は、組織によって吸収される)。PPGベースシステムの最大のボトルネックは従って、LED電力消費である。
【0008】
このため、米国第2016/183813号で開示されているものなどの、従来のPNまたはPINダイオードに基づく現在の医療PPGシステムはポータブルまたはウェアラブルソリューションと互換性がない。
【0009】
そして、最近導入された研究活動はフォトダイオードに依存するシステム-オン-ボード(SOB)ソリューションを提示しているが、かかるSOBは比較的複雑な回路を提示する。その上、市販のスマートウォッチおよび他の接続された衣服は、信頼性、精度およびバッテリー寿命の観点から顧客の要求を満足するには不十分である。
【0010】
本発明はこれらの欠点に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0011】
より正確には、本発明は、DC成分およびAC成分を含む信号を出力するように構成されたフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置に関し、該装置は、
-パルスオンまたはパルスオフにされるように適合された、パルス光源、
-光生成電子を生成する光-電荷変換のための少なくとも1つのピクセル、
を含み、
-各ピクセルは該パルス光源と同期されている。
【0012】
各ピクセルは、
-ウェルを含み、2つの電子接続ノードを有する、埋込みフォトダイオード(PPD)、
-センスノード(SN)、n-p接合キャパシタンスであり、その役割は、埋込みフォトダイオード(PPD)ウェル内の光生成電子を、該キャパシタンスの変換利得によって、電圧に変換することである、および
-転送ゲート(TGtransfer)トランジスタ、そのソースが該埋込みフォトダイオード(PPD)の1つの電子接続ノードに電子的に接続され、該埋込みフォトダイオード(PPD)と該センスノード(SN)との間の転送ゲート(TG)として機能するように構成されて、光がパルスオフにされると光生成電子がシンク(sink)し、光がパルスオンにされると光生成電子を積分して、積分された光生成電子の少なくとも一部が読出しのために該センスノードに転送されるのを可能にし、TGtransferトランジスタのグリッドは好ましくは、DC電源(V_TGtransfer)に電子的に接続され、その値は動的に適合できる、
を含むことを主な特徴とする。
【0013】
従来のPNまたはPINフォトダイオードとは非常に異なる装置である、埋込みフォトダイオードの使用の結果として、ずっと短い照明パルスを、マイクロ秒のオーダーで使用することが可能である。これは、従来技術のPN/PINダイオードベースのPPG装置よりも大幅に電力消費を削減して、それらを、人が保持できる小型で軽量の装置と互換性があるようにする。その上、また、以下でさらに説明するように、PPDに特有で、従来のPN/PINダイオードに存在していない、特定の特性を使用することにより、信号対雑音比が、PPD自体の読出し時点で信号のDC部分を除去することにより、電力を大量消費する下流での信号処理を全く必要とすることなく、PPDからの出力のレベルで大幅に改善できる。これらの態様の組合せは、既存のPPGシステムと比較して電力消費を大幅に削減して、それらを永久的な保持および装着に適するようにする。
【0014】
一実施形態では、各ピクセルは、
-シンク(TGsink)トランジスタ、そのソースが該埋込みフォトダイオード(PPD)の他方の電子接続ノードと電子的に接続され、該埋込みフォトダイオード(PPD)と一定のDC電源またはキャパシタンスのいずれかとの間の転送ゲート(TG)として機能するように構成されて、光がパルスオフにされると光生成電子が該一定のDC電源または該キャパシタンスの方にシンクし、光がパルスオンにされると光生成電子積分を可能にする、
をさらに含む。
【0015】
一実施形態では、該ピクセルの各々は、該埋込みフォトダイオード(PPD)と並列に配置されて、それぞれの転送ゲート(TGtransfer)トランジスタによって該センスノード(SN)に接続された、少なくとも1つのさらなる埋込みフォトダイオード(PPD)を含み、該転送ゲート(TGtransfer)トランジスタの各々は、例えば、それらのゲートを電気的に一緒に接続することにより、同期して動作するように構成されている。好都合に、該さらなる埋込みフォトダイオード(PPD)の各々は、必要に応じて、それぞれのシンク(TGsink)トランジスタによって、該一定のDC電源または該キャパシタンスに接続され、該シンク(TGsink)トランジスタの各々のゲートは、同期して動作するように構成されている。かかる所謂マクロピクセル構造は、単純な回路を保持しながら、利用可能な光生成電荷の量を増加させることにより、感度を向上させる。
【0016】
好ましくは、該ピクセルは、単一のPPDまたは複数をマクロピクセルに組み込んでいるかどうかを問わず、配列に配置されて、装置の感度を向上させる。
【0017】
一実施形態では、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置は、マクロピクセルの出力を空間的に平均化するように構成されたプロセッサ(DSP)をさらに含む。
【0018】
一実施形態では、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置は、
-以下を含む、第1のブロック(CDS1)、
・パルス光源がオフにされていてセンスノード(SN)ウェルが空である場合に、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_reset)を保存するキャパシタンス(CSH1)、および
・パルス光源がオフにされていて、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置がちょうど周囲光にさらされている場合に、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_amb+V_reset)を保存し、パルス光源がオンの場合にフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_LED+V_amb+V_reset)を保存するキャパシタンス(CSH2)
をさらに含む。PPG装置は、
-以下を含む、第2のブロック(CDS2)、
・キャパシタンス(CSH1)の該値(V_reset)とキャパシタンス(CSH2)の該値(V_amb+V_reset)との間の差の値(V_amb)を保存するキャパシタンス(CSM、および
・パルス光源がオンの場合にフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_LED+V_amb)を保存するキャパシタンス(CSM
・該第2のブロック(CDS2)は、キャパシタンス(CSM)の該値(V_LED+V_amb)とキャパシタンス(CSM)の該値(V_amb)との間の値の差がADCに送信されてパルス光源(LED)だけに関連した電圧(V_LED)を評価するように構築される、
も含み得る。
【0019】
1つのさらなる実施形態では、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置は、
・第1のパルスの間にパルス光源がオンにされていて、センスノード(SN)ウェルが所定の期間、積分するのを許可されている場合、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の第1の値(V_LED1+V_amb+V_reset)を保存するキャパシタンス(CSM)、および
・第2のパルスの間にパルス光源がオンにされていて、センスノード(SN)ウェルが該所定の期間(すなわち、前述したのと同じ継続期間の所定の期間)、積分するのを許可されている場合、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の第2の値(V_LED2+V_amb+V_reset)を保存するキャパシタンス(CSH2)、
を含む、1つの単一CDSブロックを含み、
該ブロック(CDS)は、キャパシタンス(CSMよって保存された該第1の値(V_LED1+V_amb+V_reset)とキャパシタンス(CSH2)によって保存された該第2の値(V_LED2+V_amb+V_reset)との間の値の差の関数がADCに送信され、パルス光源(LED)だけに関連した信号の派生物に比例した、(V_LED2-V_LED1)に関連した電圧を評価するように構築される。これはPPC信号に関連したさらに有用な情報を提供する。
【0020】
なおさらなる実施形態では、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置は、
・パルス光源がオフにされていてセンスノード(SN)ウェルが所定の期間、積分するのを許可されている場合に、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_reset+V_amb)を保存するキャパシタンス(CSH1)、および
・パルス光源がオンにされていて、センスノード(SN)ウェルが該所定の期間(すなわち、前述したのと同じ継続期間の所定の期間)、積分するのを許可されている場合に、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の出力信号の値(V_amb+V_reset+V_LED)を保存するキャパシタンス(CSM
を含む、単一CDSブロックを含み得、
該ブロック(CDS)は、キャパシタンス(CSMによって保存された該値(V_LED+V_reset+V_amb)とキャパシタンス(CSH2)によって保存された該値(V_reset+V_amb)との間の値の差の関数がADCに送信されて、パルス光源(LED)だけに関連した信号に関連した電圧(V_LED)を評価するように構築される。
【0021】
1つ以上のCDSブロックを含むこれらの変形の全ては、スイッチとして機能しているトランジスタ以外にアクティブな構成要素をほとんど用いることなく、PPD信号の望ましくないDC成分を除去して、信号対雑音比を向上させる働きをする。これは、極めて低電力消費で優れた信号対雑音比をもたらす。
【0022】
一実施形態では、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置は、CMOS技術で構築され、それは、システムオンチップ(SOC)に埋め込まれる。
【0023】
その別の目的によれば、本発明は、本発明に従ったフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置を操作する方法に関し、
-転送フェーズにおいて、転送ゲート(TGtransfer)トランジスタ電圧を、埋込みフォトダイオード(PPD)のウェル電位(V_well)とシンクトランジスタ(TGsink)に印加された電圧(V_TGsink)との間に含まれる値(V_TGtransfer)に設定して、該オフセットを超えている光生成電子だけが読出しのためにセンスノード(SN)に転送されるのを可能にすること
を行うステップを含む。
【0024】
これは、PPD自体のレベルにおいてPPDの出力の不必要なDC成分の、全部ではないが、大部分を除外することが可能な結果となり、それは、電力を大量消費する処理回路を必要とすることなく、下流の信号対雑音比を大幅に向上させる。かかる操作は、電荷ウェルを有していない、従来のPNまたはPINダイオードでは不可能であり、本質的に、不必要で、利用可能な情報を含んでいない、信号のDC成分の拒絶を可能にする。
【0025】
一実施形態では、転送ゲート(TGtransfer)トランジスタ電圧は動的に適合される。
【0026】
一実施形態では、本方法は、
A.DC電源の値(V_TGtransfer)を所定の値に設定すること、
B.対応するピクセル応答が所定の閾値を超えているかどうかをチェックすること、および
C.ピクセル応答が該閾値を超えている場合、対応するピクセル応答が閾値をもう超えなくなるまで、ステップAおよびBを繰り返すこと
を行うステップを含む較正ステップを含む。
【0027】
これは、複雑な回路または電力を大量消費する処理なしで、信号対雑音比を最大限にするためにV_TGtransferの値の最適化を可能にする。
【0028】
一実施形態では、本方法は、以下を行うステップを含む、
-パルス光源をパルスオフにすること、および
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を所定の期間中(すなわち、事前に決定された継続期間の長さの間)、積分すること、
-周囲光に対応する電圧(V_amb)を生成するために、該転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して該電荷を第1のコンデンサ(CSH1)に保存すること、次いで(すなわち、後の時点で、典型的には、数十マイクロ秒後に)
-パルス光源を該所定の期間中(すなわち、前述したのと同じ継続期間の所定の期間)、パルスオンにすること、
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を該所定の期間(すなわち、前述したものと同じ継続期間の所定の期間)、積分すること、
-パルス光源と混合された周囲光に対応する電圧(V_amb+V_LED)を生成するために、該転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して該電荷を第2のコンデンサ(CSH2)に保存すること、次いで
-周囲光と混合されたパルス光源のパルスオンに対応する電圧(V_amb+V_LED)から周囲光に対応する電圧(V_amb)を差し引いて、パルス光源だけに由来する検出光の関数に対応する電圧(V_LED)をもたらすこと。この関数は、典型的には、(V_amb+V_LED)と(V_amb)の差の半分である。
【0029】
代替として、本方法は、以下を行うステップを含み得る、
-パルス光源をパルスオンにすること、
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を所定の期間中、積分すること、
-パルス光源と混合された周囲光に対応する電圧(V_amb+V_LED)を生成するために、転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して該電荷を第1のコンデンサ(CSH1)に保存すること、次いで(すなわち、後の時点で、典型的には、数十マイクロ秒後に)
-パルス光源をパルスオフにすること、および
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を該所定の期間(すなわち、前述したものと同じ継続期間の所定の期間)、積分すること、
-周囲光に対応する電圧(V_amb)を生成するために、該転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して該電荷を第2のコンデンサ(CSH2)に保存すること、次いで
-周囲光と混合されたパルス光源のパルスオンに対応する電圧(V_amb+V_LED)から周囲光に対応する電圧(V_amb)を差し引いて、パルス光源だけに由来する検出光の関数に対応する電圧(V_LED)をもたらすこと。この関数は、典型的には、(V_amb+V_LED)と(V_amb)の差の半分である。
【0030】
代替として、本方法は、以下を行うステップを含み得る、
-パルス光源をパルスオンにすること、
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を所定の期間中、積分すること、
-パルス光源と混合された周囲光に対応する電圧(V_amb+V_LED1)を生成するために、該転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して、該電荷を第1のコンデンサ(CSH1)に保存すること、次いで(すなわち、後の時点で、典型的には、数十マイクロ秒後に)
-パルス光源を再度、パルスオンにすること、
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を該所定の期間中(すなわち、前述したものと同じ継続期間の所定の期間)、積分すること、
-パルス光源の第2のサンプルと混合された周囲光に対応する電圧(V_amb+V_LED2)を生成するために、該転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して、該電荷を第2のコンデンサ(CSH2)に保存すること、次いで
-電圧(V_amb+V_LED1)を電圧(V_amb+V_LED2)から差し引いて、パルス光源(LED)だけから受信した光に関連した信号の派生物の関数である(V_LED1)と(V_LED2)との間の差の関数を取得することであり、典型的には、LED照明に起因した信号の部分に関連した2つの電圧間の差の半分である。これは、有用で、利用可能な情報を提供する。
【0031】
代替として、本方法は、以下を行うステップを含み得る、
-パルス光源をパルスオフにすること、
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を所定の期間中、積分すること、
-リセット電圧(V_reset)と混合された周囲光に対応する電圧(V_reset+V_amb)を生成するために、該転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して、該電荷を第1のコンデンサ(CSH1)に保存すること、次いで(すなわち、後の時点で、典型的には、数十マイクロ秒後に)
-パルス光源をパルスオンにすること、ならびに
-該埋込みフォトダイオード内の電荷を該所定の期間中(すなわち、前述したものと同じ継続期間の所定の期間)、積分すること、
-リセット電圧と混合された周囲光および該パルス光源(LED)に関連した該信号に対応する電圧(V_amb+V_reset+V_LED)を生成するために、該転送ゲートトランジスタ(TGtransfer)によって該電荷を該センスノード(SN)に転送して、該電荷を第2のコンデンサ(CSH2)に保存すること、次いで
-電圧(V_reset+V_amb)を電圧(V_amb+V_reset+V_LED)から差し引いて、パルス光源(LED)だけに関連した信号の関数を取得すること。
【0032】
これらの変形は、DC成分を最小限まで除去することによって信号対雑音比を著しく向上させ、その派生物に関連した変形は、所望の信号に関連したさらに利用可能な情報を提供する。
【0033】
好都合に、該減算は、該第1のコンデンサ(CSH1)および第2のコンデンサ(CHS2)を、一方のコンデンサの極性が他方に関して逆になるように、並列に接続することによって実行され、両方のコンデンサ(CSH1;CSH2)に共通の接続ポイントは、以前に各コンデンサ(CSH1;CSH2)にわたる電圧間の差の半分に対応する電圧値を示す。これは、極めて単純で受動的で、電力消費を最小限に維持する。
【0034】
好ましくは、フォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置は、マクロピクセルであり得る、複数のピクセルを含み、該方法は、各ピクセル、例えば、アナログ領域内のマクロピクセル、の出力を受動スイッチコンデンサネットワークによって空間的に平均化するステップをさらに含む。
【0035】
好都合に、本発明は非侵襲的である。
【0036】
本発明のさらなる特徴および利点は、発明を実施するための形態で、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】従来のPPG光生成電流のグラフを例示する。
図2A】本発明の一実施形態に従ったピクセルに対応する電子回路を例示する。
図2B図3Aに従ったピクセルの部分を断面図で例示する。
図3図3に例示するピクセル内部の電子の異なる電位および対応する転送を、左から右に操作の連続したフェーズで例示する。
図4A】本発明のさらなる実施形態に従ったピクセル構造の電子回路を例示する。
図4B図4Aに従ったピクセルの部分を断面図で例示する。
図5A】マクロピクセル構造の電子回路を例示する。
図5B図5Aのマクロピクセル構造のブロック図を例示する。
図6】ピクセルまたはマクロピクセル内部の電子の異なる電位および対応する転送を、上から下に操作の連続したフェーズで例示する。
図7A】配列のピクセルの出力からオフセットを差し引くために設計された電子回路の一実施形態を例示する。
図7B】配列のピクセルの出力からオフセットを差し引くために設計された電子回路の第2の変形を例示する。
図8A図7Aの電子回路を操作するための1つのタイミング図を例示する。
図8B図7Bの電子回路を操作するための1つのタイミング図を例示する。
図8C】PPG信号の派生物を取得するために図7Bの電子回路を操作するための1つのタイミング図を例示する。
図8D図9Cの電子回路を操作するための1つのタイミング図を例示する。
図9A】多重サンプリング前にピクセルの出力を平均化するために設計された電子回路の一実施形態を例示する。
図9B】多重サンプリング後にピクセルの出力を平均化するために設計された電子回路の一実施形態を例示する。
図9C】多重サンプリング前にピクセルの出力を平均化するために設計されて、図8B図8Cおよび図8Dのタイミング図で操作するために最適化された、電子回路の一実施形態を例示する。
図10】本発明の一実施形態に従ったSOCを例示する。
図11】m列およびn行の配列(m,n)に分散されたピクセルの配列に対応する電子回路を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
前述の説明および図面において、スイッチが言及または例示されるときには、それは典型的には、FET、MOSFETまたは同様のものなどのトランジスタとして実装される。
【0039】
PPD光生成電流
図1は、古典的なPPG光生成電流(原寸に比例していない)を例示しており、それは、組織から出てきていて、PD量子効果のおかげで電子に変換された光子に対応する。「PPG光生成電流」は、本記述では、「電流」または「PPG光生成信号」、「PPG信号」もしくは「信号」とも呼ばれる。
【0040】
この光生成電流は、組織(DC組織)、静脈血液層(DC ven.)および非拍動性動脈血液層吸収(DC art.)の複合作用に起因して、大部分は大きな直流(DC)成分を含む。この光生成電流(図1、上部)の少量だけが、対象の信号を含むわずかな交流(AC)である。
【0041】
典型的には、LED波長に応じて、総DC成分(図1を参照して、DC組織+DC ven.+DC art.)は、AC成分の20~500倍であり得る。
【0042】
値におけるかかる相違は、
-微量のAC成分を増幅し、並行してDC成分を減らすことを目的とした、堅牢な設計およびフィルタリング戦略のいずれか、または
-アナログ/デジタル変換器(ADC)、大きなビット分解能、大きな電力消費およびさらなるシリコン面積の要求、または弱い信号対雑音比(ANR)および低性能の代償を払って、デジタル領域での処理
を生じさせる。
【0043】
実際にPPG用途に対して、ACは、健康管理を可能にするために必要とされる光生成電流の成分である。例えば、AC成分は動脈内の血液の脈動から出ていて、2つの連続したACピーク間の距離を測定することにより心拍数を測定するために使用される。それは、酸素飽和度を判断するためにも使用され、該酸素飽和度は、完全な光生成信号の絶対最大値と絶対最小値との間の対数比に比例する。
【0044】
PPG信号の課題の1つは、そのダイナミックレンジ(DR)に関連し、それは、該信号がとることができる最大値と最小値の比率である。
【0045】
各々が対応する電子回路を備えた、異なるソリューションが存在するが、そのいずれも十分に満足のいくものではない。
【0046】
例えば、
-対数トランスインピーダンス光受容器に基づく、第1のソリューションは、光強度に伴って直線的に変化する帯域幅を有し、それは望ましくない特性である。例えば、同じ画像センサーが、ユーザーの皮膚色素沈着に応じて異なる結果を示し得る、
-第1のソリューションの改善されたソリューションは、興味深い結果となるが、極めて高い(約4.5mW)総電力消費量および極めて複雑なアナログ回路の代償を払ってである、
-前向き経路(forward-path)およびフィードバック経路に基づく、別のソリューションは、サブmW電力消費量に達し、その場合、光電流のDC成分およびAC成分を測定する代わりに、フィードバック経路はDC光電流を、基準電流と呼ばれる、所望の値に設定し、それは、可視およびIRチャネルの両方に対して同じである。かかるソリューションは、DCの除去を極めて簡単な方法で可能にするが、複雑な電子回路および制御ループの代償を払ってであり、そこではいずれのレイアウト不一致または単純な電荷注入誤差も大きなオフセット誤差となり得る、
-別のソリューションは、PPG信号のDC成分をデジタルに変換することは、ADC分解能の飽和になることを実証する。これは、ADCの完全なダイナミックレンジを利用するために、ADC変換の前にDCを除去し、それをその後、デジタル領域で、AC成分に戻すことを提案する。しかし、かかるソリューションは、弱いSNRおよび低性能につながり得る、
-誤差増幅器に基づく別のソリューションも、光受容器を制御するフィードバックループを使用するが、かかる技術の効率性はDC電流が小さくなるにつれて弱くなる、
-別のソリューションはダイナミックレンジエンハンサーに基づくが、さらなる複雑さ(追加のブロック)、低速度およびより大きな電力などの問題に同様に直面する。
【0047】
これに対処するために、本発明は、PPG信号を読み出すための新しい光子検知技術、特に、標準的なCMOS技術で作製できるシステムオンチップ(SOC)を用いて、低雑音および低電力信号処理チェーン、LEDからのより低い光レベルでのより高い感度および信頼性のある測定を有する、技術を提案する。
【0048】
従来の単一PDの代わりに少なくとも1つの埋込みフォトダイオード(PPD)を含むPPGセンサーに基づく、提案されたソリューションは、本明細書で後に説明するようにPPG信号のDC成分の大部分を除去することが可能である。従来のPNまたはPINフォトダイオードではなくPPDを使用すると、PNまたはPINフォトダイオードによっては示されないPPDの固有の特性を利用することにより、複雑で電力を大量消費する回路、信号処理または同様のものを用いることなく、信号のDC成分の除去を可能にする。
【0049】
PPDベースの画像センサー
第1の実施形態は単一の転送ゲートピクセル配列に関する。
【0050】
PPDは、ピクセルの第1の実施形態を例示する図2Bに示すような、p+-n-p接合(浅い高度にドープされたp+の下に埋め込まれたn-p接合)を含む。PPDが形成される基板は、p型ドープされた半導体材料であり、接地されて、p+ドープされたゾーンを本質的に浮遊したままにする。これは、光生成電荷がその中に蓄積する電荷ウェルを形成して、電荷が蓄積するにつれてp+層における電圧が上昇する。本質的に、基板の厚さに形成されたp+n-Pドープされた構造は原則的に陰極-陰極に配置された2つのダイオードを形成し、n層は、図2B上の2つの向かい合ったダイオード記号によって図式的に例示されているとおり(注意:この記号は図式的であり、余分の構成要素を示しておらず、層およびそれらの接合の機能を単に示すだけである)、両方の間で共有されている。この向かい合ったダイオード記号は非従来型であり、PPDを表すため、およびそれを、衝突光に応答して流れる電荷を生成する、従来技術の従来のPNおよびPINフォトダイオードと区別するために、様々な図の回路図で使用されている。言い換えれば、PPDの事例では、電荷が該PPDから流れ出ることができない場合、それは、PPD「電荷ウェル」内に蓄積するにつれて積分される。
【0051】
この第1の実施形態によれば、PPDは、後に説明するように、該PPDとセンスノードとの間の転送ゲート(TG)として機能する、転送ゲートトランジスタ、またはTGtransferトランジスタと呼ばれる、トランジスタのソースに電子的に接続されている。図2Bから分かるように、TGtransferトランジスタは、同じ基板上でPPDのP+ゾーンに横方向に隣接して配置された電界効果トランジスタ(FET)であり、それは電荷ウェルを選択的に「空にする」ことができる働きをする。
【0052】
TGtransferトランジスタのグリッドは、V_TGtransferと呼ばれるDC電源に電子的に接続され、その値は動的に適合できる。
【0053】
TGtransferトランジスタは、PPDの一縁部で電位障壁を制御するために使用され、他の縁部は接地(図2A)に電子的に接続されている。
【0054】
TGtransferトランジスタのおかげでTG電位を調整すると、DCオフセット(図1)の調整が可能になり、DCオフセットは、信号(DC組織+DC ven.+DC art.+AC)から取り除かれる所定のDC電圧であり、較正によって設定できる。その結果、PPG信号から、該DCオフセットに等しい所定の部分を、できるだけ早く、かつ信号処理なしで、取り除くことが可能である。本質的に、これは、PPD「電荷ウェル」が空にされている場合に、単に転送ゲート電位を設定することにより、信号対雑音比(AC成分が信号でありDC成分の大部分が雑音である)を大幅に向上させる完全に受動的な方法である。出願者の知る限り、PPDの特性のかかる利用は、これまで知られておらず、PPGの文脈で特定の利点を有する。
【0055】
図1を参照すると、結果として、感知のために送信されたPPG信号は、オフセット閾値より上の信号の上部だけであり、DCオフセットはピクセルレベルで信号から「取り除かれて」、感知のためにPPDから送信されない。結果として、センスノードの下流でDC成分を取り除くための信号処理は必要ない。
【0056】
PPDを取り囲んでいるこの電位障壁が、PPDのウェル電位Vwellよりも低い場合、光生成電子はそのウェル内に保たれる。典型的には、PPDを取り囲んでいる電位障壁は、少なくとも本明細書で以下で説明する積分フェーズで、TGtransferトランジスタによってわずかに負値で保たれる。
【0057】
TGtransferトランジスタの反対側、この場合、ドレインは、センスノード(SN)に電子的に接続され、図2Aおよび図2Bを参照のこと。センスノード(SN)は、定義によりキャパシタンスCSNを形成するn-p接合(図2Bを参照)であり、その役割はPPDウェル内の光生成(積分された)電子を、該キャパシタンスCSNの変換利得によって、電圧に変換することである。
【0058】
図2Aに例示するように、ピクセルはソースフォロアSFも含み、それは、一方でDC電源VDDに、他方でスイッチS2を通して読取りラインCol-lに、電子的に接続されたトランジスタであり、スイッチS2は、例えば、FETなどのトランジスタであり得る。S2をスイッチオンすると、図3Aに例示されたピクセルの読取りを可能にし、それは任意選択である。
【0059】
図2AのスイッチS1は、閉じている場合、V_reset電圧値をセンスノードに課すことを可能にし、V_resetは一定のDC電源である。この趣旨で、スイッチS1はFETなどのトランジスタであり得る。
【0060】
図2Aのピクセルの操作が図3に例示されており、図3は、かかるピクセル内の電子の異なる電位および対応する転送を、操作の4つのフェーズで例示する。
【0061】
積分フェーズでは、
-PPDが周囲光(存在する場合)およびLED光で照らされる、
-V_TGtransferが低電圧に設定されてTGtransferトランジスタを閉じて電位の障壁を作る、
-S1が開く。
【0062】
PPDを取り囲んでいる電位障壁は、PPDのウェル電位Vwellよりも低く保たれる。それに応じて、PPDは光生成電子を生成し、それらはPPDウェル内に保持されて蓄積される。
【0063】
好ましくは、LEDは同期して(同相で)発光する。このように、LEDは、本当に必要な場合にだけ電力を消費する。積分フェーズは典型的には、数百nsから数マイクロ秒まで、すなわち、約200nsから3μsまで、好ましくは、300nsから2μsまで、持続する。かかる少ない積分時間は、電子読出しチェーンとPPDとの間の完全な分離の結果、可能である。従来のPNまたはPINフォトダイオードに基づく標準的なPPGセンサーでは、かかるわずかな積分時間は、はるかに高速な読出し回路および従ってはるかに多くの電力消費を必要とするであろう。最新技術の市販製品における典型的なパルス時間は400μsであることに留意されたい。
【0064】
積分フェーズに続いて、リセットフェーズでは、
-好ましくは、LEDがオフにされる、それは電力を節約するが、本質的ではない
-V_TGtransferが低電圧に保たれる、
-S1スイッチが閉じられる。
【0065】
このように、センスノードSNの電圧が上昇してV_reset値に設定されて、SNウェル内の全ての電子(存在する場合)をV_reset DC電源に流すが、光生成電子は、リセットフェーズ中、PPDウェル内に依然として保持されている。
【0066】
-次いで、リセットスイッチS1が、アドホックに決定された、所定の期間、開かれる。
【0067】
これは、SNノードが、前述のように、キャパシタンスとして機能するのを可能にし、従って、転送フェーズで転送される光生成電子を保存することが可能である。
【0068】
リセットフェーズに続いて、転送フェーズでは、
-好ましくは、LEDがオフにされるが、これは本質的ではない、
-V_TGtransferが上昇する、
-S1スイッチは開いたままに保持される。
【0069】
転送フェーズでは、TG電位が、PPDのウェル電位V_wellとV_resetとの間に含まれる値まで増加する。
【0070】
このように、PPDウェルを満たしている光生成電子(e-)が転送ゲートTGを通ってSNに拡散する。
【0071】
この電荷拡散はSNの電位をリセットレベルV_resetからV_transfer値まで降下させ、該V_transfer値は転送された電荷の数、つまり、PPDに到達した光子の数、に比例する。
【0072】
好ましくは、転送フェーズは1μsを超えて持続しない。
【0073】
転送フェーズに続いて、読出しフェーズでは、
-V_TGtransferが積分フェーズのその低電圧に設定される、
-S1スイッチは開いたままに保持される。
【0074】
センスノードにおける電圧値は、PPDからシンクされた電子の数、つまり、PPDに到達した電子の数、に比例する。
【0075】
第2の実施形態は、二重転送ゲートピクセル配列に関する。
【0076】
第1の実施形態に加えて、前述の実施形態におけるようにTGtransferトランジスタおよび接地に電子的に接続されたPPDを有する代わりに、各ピクセルレベルにおいて、PPDが、TGtransferトランジスタと、TGsinkトランジスタと呼ばれる別のトランジスタ、すなわち、それぞれTGtransferトランジスタおよびTGsinkトランジスタに対応する2つの転送ゲートTGtおよびTGs、の間に電子的に接続されるピクセル配列がここで提案される。これは図4Aに例示されており、それは、TGtransferトランジスタとは無関係にPPDの「ウェル」を空にするのを許可する、ドレイン電圧VDDにPPDが追加として接続されている点において、図2Aとは異なる。PPDのp+ゾーンに対するTGtransferとTGsinkの正確な幾何的関係は、それらが両方ともPPDのウェルを空にすることができて、相互に悪影響を及ぼさない限り、重要ではない。各トランジスタがp+ゾーンの反対側に位置していることは良いソリューションである。
【0077】
この趣旨で、TGsinkトランジスタはTGtransferトランジスタと同様に機能する、すなわち、TGtransferトランジスタのグリッドに印加された電圧V_TGtransferの値に関して、TGsinkトランジスタのグリッドに印加された電圧V_TGsinkの値に応じて、PPDを取り囲んでいる電位障壁を変更することが可能であり、感知のためにTGtransferトランジスタを通して、またはVDDにシンクするためにTGsinkトランジスタを通して、PPDウェルから電子を転送することを意味する。両方のトランジスタTGtransferおよびTGsinkは、両方ともPPDから電荷をシンクすることができるように構成されているが、独立している。
【0078】
図4Bは、第2の実施形態に従ったピクセルを断面図で例示しており、それは、TGsinkトランジスタが、PPDのp+ドープされたゾーンに隣接してTGtransferトランジスタに類似した方法で、前述のようにこの後者に対してPPDの反対側上に形成される方法を明瞭に例示している。
【0079】
この実施形態では、PPD電子は、シンクフェーズでTGsinkトランジスタを通してシンクノードに対するPPDの一方の側へ、または転送フェーズでTGtransferトランジスタを通してPPDの他方側のセンスノードSNへ、のいずれかに転送できる。
【0080】
図6は、かかるピクセル(またはマクロピクセル)内部の電子の異なる電位および対応する転送を、図6の上から下に、操作の連続したフェーズの少なくとも1つのループで例示する。
【0081】
シンクフェーズでは、
-LEDは好ましくは、オフにされる、
-V_TGsinkは、TGsinkトランジスタのグリッドに印加された高電圧に設定される、
-TGsinkトランジスタのドレインは一定のDC電源、例えば、V_reset(図4Aに例示された)に接続される。
【0082】
V_TGtransferは、V_TGsinkより低いV_wellより低い。それに応じて、PPDウェル内部にあった光生成電子はTGtransferトランジスタを通り抜けることができず、TGsinkトランジスタだけを通り抜けることができる。
【0083】
PPDウェルの電子はTGsinkトランジスタを通って、例えば、定電圧DC電源に行く。かかる場合、TGsinkトランジスタのドレインは定電圧に接続されていて、コンデンサには接続されていないので、適切な電圧V_TGsinkがTGsinkトランジスタのゲートに印加されると、PPDウェルの全ての電子が失われる。
【0084】
その結果、これらの電子のいずれも取得チェーン(TGtransferトランジスタを通ってセンスノードの下流に配置されている)に到達しない。それに応じて、周囲光が感知を変えることはなく、PPDウェルは空にされる。
【0085】
積分フェーズでは、第1の実施形態の積分フェーズと同様に、
-LEDがオンにされる、
-V_TGsinkが低電圧に設定されてTGsinkトランジスタを閉じて電位の障壁を作る。好ましくは、V_TGsinkは、光生成電子がTGsinkトランジスタを通ってあふれないように、V_TGtransfer以下である、
-V_TGtransferは低電圧に保たれる。
【0086】
PPDを取り囲んでいる電位障壁は、PPDのウェル電位Vwellよりも低く保たれている。それに応じて、PPDは光生成電子を生成し、それらはPPDウェル内部に保持される。
【0087】
しかし、積分された信号の大部分はDC成分を含む。所定の閾値(オフセット)を超えている信号のごく一部を転送することは、センスノードが該オフセットを該DC成分から差し引いた後に読出しが実行されるのを可能にする。
【0088】
リセットフェーズでは、
-好ましくはLEDがオフにされる、
-V_SNがV_resetに設定される。
【0089】
このように、センスノードSNの電圧が上昇してV_reset値に設定されて、SNウェル内の全ての電子(存在する場合)をV_reset DC電源に流すが、光生成電子は、リセットフェーズ中、PPDウェル内に依然として保持されている。
【0090】
-次いで、リセットスイッチS1が、必要に応じて、所定の期間、開かれる。
【0091】
これは、SNノードがキャパシタンスとして機能するのを可能にし、従って、転送フェーズで転送される光生成電子を保存することが可能である。
【0092】
転送フェーズでは、
-LEDが好ましくはオフにされて電力を節約する、
-TGsink電位(TGs)が維持される、
-TGtransfer(TGt)電位がPPDのウェル電位V_wellとV_TGsinkとの間に含まれる値まで上昇する。
【0093】
このように、PPDウェルを満たしている光生成電子(e-)がTGtransferトランジスタの転送ゲートTGtを通してSNに拡散して、センスノードSNをV_transfer電圧値に設定する。
【0094】
V_wellとV_TGtransferの差は、ピクセルレベルにおいて信号から除去されるDC成分に対応するオフセット(またはV_offset)である。V_offsetの最小値はゼロであり得るが、典型的にはもっと大きい値であることに留意すべきである。
【0095】
読出しフェーズでは、
-LEDが好ましくはオフにされて、再度、電力を節約する。
【0096】
センスノードSN側上の光生成電子(e-)が読み出され、PPD内部の光生成電子はその電位ウェル内に保たれる。
【0097】
センスノード電圧の読出し後、後者は再度リセットでき、シンクフェーズから開始する新しいループが実装できる。
【0098】
PPD装置のn層は一種のウェルである、すなわち、一旦、ウェルが完全に満たされると、TGsinkトランジスタ側の電位の障壁のために、追加の光生成電子は、TGtransferトランジスタを通してSN空乏(depletion)にあふれ出る。
【0099】
V_TGtransfer動的値のおかげで、オフセットからSN空乏にあふれ出ている光生成電子だけが読み取られ、V_TGtransferが適切に設定される場合、これは、以下でさらに詳細に説明するように、信号(図1を参照)のAC成分だけが転送されて、DC成分をPPDのウェル内に残す結果となる。このように、信号対雑音比は、単にV_TGtransferを適切に設定することにより、信号処理回路を下流に置くことも電力を消費することもなく、大幅に改善される。
【0100】
選択された電位レベルの障壁は、以下で明らかにされるように、周囲光および較正フェーズにおけるPPG信号のAC/DC比によって決まる。
【0101】
典型的には、この較正フェーズは、V_TGtransferを所定の値に設定し、次いで対応するピクセルが飽和しているかどうかをチェックすることを含む。ピクセル応答が飽和している場合、ピクセル応答がもう飽和しなくなるまで、V_TGtransferの該所定の値を所定のピッチ(すなわち、量)だけ増加させることを含むループが実行される。
【0102】
例えば、較正フェーズは、同じ装置が、異なる皮膚色素沈着を有する異なるユーザーに関して使用可能にする。
【0103】
較正フェーズの後、TGtransferトランジスタを通ってあふれ出ないDCの所定の量に対応する、所定のオフセットレベルを、対応する所定の値をV_TGtransferに設定することにより、設定することが可能である。
【0104】
例えば、較正フェーズでは、信号のDC成分+AC成分を含む総計を測定することが可能である。AC成分はかかる信号の数パーセントしか表していないことが知られている。それに応じて、所定のオフセットレベルが信号の90%と等しくなるように、V_TGtransferを設定することが可能である。オフセットを90%のDCだけ減らすと、AC/DC比が1桁分向上して、入力におけるダイナミックレンジ制約が緩くなる。実際、PPG測定において、PPG信号は典型的には、20対、例えば、500の非常に高いDC/AC比を有しており、それは、古典的な画像検知ソリューションでは対処可能ではないことに留意すべきである。
【0105】
この実施形態は、PPD信号のDC成分をさらに減らす、すなわち、それは従って、DC除去装置またはDRエンハンサーとして動作する。これは、電力および回路の複雑さに追加のコストをかけることなく、できる。かかるシステムは、追加の回路なしで、読出しチェーンの初期段階でこれを行う。
【0106】
好都合に、V_TGtransferはアナログ装置の部分である。それに応じて、電位障壁のレベル、すなわち、PPD内に残っている電子のレベル対センスノードに転送されている上回っている電子の数(あふれ)を正確に調整することが可能である。電位障壁レベルのかかる適合はリアルタイムで行うことができる。
【0107】
V_TGtransferの値を調整すると、検知されないDCの所定の部分の値を調整し、その結果としてセンサーが飽和するのを回避するのを可能にして、より良い信号対雑音比となる。
【0108】
V_TGsinkの値がV_TGtransferの値と等しい場合、
-電子はPPDウェル内に積分できる、または
-電子はSNから読み取ることができる。
【0109】
V_TGsinkの値がV_TGtransferの値よりも大きい場合、
-PPDが読み取られていない場合、電子はTGsinkトランジスタを通ってPPDからシンクする。
【0110】
V_TGsinkの値がV_TGtransferの値よりも小さい場合、
-電子は、TGtransferトランジスタを通して読み取られている間、TGsinkトランジスタを通ってPPDからシンクできない。
【0111】
V_TGsinkは、例えば、スイッチまたはDSPのおかげで、TGsinkトランジスタのグリッドに、選択的に印加されるか、または印加されない定数値である。
【0112】
それに応じて、V_TGtransferの、およびV_TGtransferだけの値は、PPDの縁部において電位障壁の値を制御するために使用できる。V_TGtransferのかかる値が設定され、較正フェーズのおかげで継続的に適合でき、そのためPPG信号の定数成分(オフセット電子)を表している光生成電子の大部分は、センスノードに転送されず、代わりに、PPDウェル内に残っている。最終的に、これらの電子は次のフェーズでシンクアウトできる。
【0113】
この段階で、PPDは画像センサー(電荷結合素子、CCD)で知られているが、それらは本発明におけるのと同じ方法では利用されないことが強調されるべきである。画像センサーでは、衝突光の全量が光強度に関する重要な情報を含んでいるので、目的は、この光の全体を捕捉して利用することである。画像センサーの各PPDによって記録された強度は次いで、その画像を生成するために使用される。結果として、画像センサーでは、PPDの電荷ウェル内に保存された電荷全体は、信号処理のために回路の残りに転送される。PPGセンサーの特定の場合、受信された光の大部分は単にDC雑音であり、信号を隠している。前述のとおり、この一部は周囲光に由来し、一部は組織、動脈および静脈からの変化しない反射に由来し、所望の信号はこの雑音の上の変化するAC成分だけである。従来のPNまたはPINフォトダイオードを使用している場合、フォトダイオード自体のレベルでこれを除去する方法はなく、従来のダイオードで生成された電流全体が処理される必要がある。前述のようにPPDダイオードの特性を利用することにより、PPDのレベルにおいて、このDC雑音の、全部ではないが、大部分を拒絶して、所望のAC成分に対応する受信した光のごく一部だけを転送することが可能である。
【0114】
図4Aおよび図4BのいくつかのPPD配列は、図5Aおよび図5Bに例示するように、一緒に結合されて所謂「マクロピクセル」を形成することができる。特に、図5Aは、図4Aおよび図4Bにおけるように並列に配列され、それぞれシンクトランジスタTGsinkによってPPDに結合された、そのシンク側で共通のドレインVDDを共有している、一対のPPDを例示している。転送トランジスタTGtransferの出力は、共通のセンスノードSNに接続され、マイクロピクセルのPPDでそれらの電荷をセンスノードSNに同時に転送する(ピクセルが典型的には同じセンスノードを共有しない、古典的なCIS/CCD/SPADとは異なる。一部のCISでは、2、3のピクセルは、ピクセルのフィルファクタを最適化するために同じセンスノードを共有し得るが、それらはそれらの電荷を共有センスノードに同時に転送するのではなく、ローリングモードで連続して転送する)。ソースフォロアSFはその入力をシンクノードSNから取得して、さらなる回路に出力する(以下を参照)。転送トランジスタTGtransferを制御するための制御線の全ては、シンクトランジスタTGsinkを制御するための制御線と同様に、一緒に結合される。図5Bは、ソースフォロアSFの入力(VDD、V_TGsink、V_TGtransfer、ResetおよびV_reset)および下流の出力の関数として、これを概略的に例示する。本発明の意味の範囲内で、「マクロピクセル」は、複数のPPDおよび共通のセンスノードを有する「ピクセル」と見なされることに留意すべきである。
【0115】
2つのPPDは図5では並列に配置されているが、原理的に任意の数を組み込むことができ、完成したPPG装置の画像検知領域は、並列に配置されて、各々がそれ自身のセンスノードSNおよび対応する出力を有する、これらのマイクロピクセル構造の1つ以上を含み得る。
【0116】
マクロピクセル構造は、古典的な画像検知で検知される信号の特性とは完全に異なるPPG信号の特定の特性に対して最適化される。根本的に、PPG出力は、1次元信号であり、従来の撮像では必須である、個々のPPD間の空間的な関係に関するいかなる情報も必要としない。さらに、かかるマクロピクセルの使用は、それらはより大きな領域をカバーするので、従来の撮像では画像分解能を大幅に低減するが、他方ここでは、「分解能」の概念がないので、極めて短い照明およびサンプリング時間でのサンプリングに対して利用可能な電荷の量を増加させるために複数のPPDを並列で使用できる。
【0117】
PPD装置のリセット電圧V_wellおよび転送中に使用される転送ゲート電圧は全て、以下を行うために特別に選択される、
-同じマクロピクセルのPPDがクロストークなしで(PPDは転送中、相互に独立している)そのマクロピクセルの共通のセンスノードSNに電荷を注入できるようにすること
-信号の所定の量が、前述のとおりVTG_transferレベルのおかげでセンスノードに転送されるのを防ぐこと。該信号は潅流指数(AC/DC比)に基づく。
【0118】
マクロピクセル当たりのPPD数の選択は、特にPPG信号特性に対する信号対雑音比を最適化するために定義され、PPG信号特性は、電子的読出し雑音、光子ショット雑音、PPD暗電流雑音、量子化雑音、飽和レベル、AC/DC比または潅流指数、ピクセルマクロピクセルの数、配列当たりのマクロピクセルの数を伴う関数である。かかる関数はPPG信号処理に特有であり、前述のとおり、画像センサー設計では考慮事項ではない。
【0119】
ピクセルの配列
ピクセルの第1もしくは第2の実施形態、または前述したマクロピクセル構造が使用されるかどうかにかかわらず、複数のピクセル、特に、各ピクセルが1つのPPD1つのマクロピクセルを含む、ピクセルの配列を含む光検出器を使用することは好都合である。
【0120】
これは、著しい改善となる。実際に、PPDベースの撮像装置は極めて優れた感度および雑音性能を達成することが示されている。
【0121】
この実施形態で提案されるPPG装置は、入力光の分散に関するその機能が、PPDベースのピクセルの配列およびそれらの出力の平均化に基づき、これは、読出し雑音、光子ショット雑音およびスプリアス信号を著しく低減させる。
【0122】
前述のとおり、PPG装置の電力消費の大部分は、LED発光に費やされる。提案される装置で可能にされるより良い感度は、LEDのデューティサイクルおよび照明を著しく減らすのを可能にして、平均バイアス電流および電力消費を大幅に削減する。
【0123】
これに加えて、この新しいPPG装置は、単一のチップ、SOCに完全に組み込むこともでき、それは最先端ソリューションに関してプレークスルーを意味し、ほとんどSOB(別個の電子機器)を示す。
【0124】
単一のPDまたはPINダイオードをピクセルの配列によって置換すると、少なくとも入力光のピクセル上での分散となり、読出しチェーンに関するダイナミックレンジ制約を減らす。加えて、配列ピクセル出力の平均化は読取り雑音分散を可能にし、それは平均化された出力数に比例する。
【0125】
各ピクセルにおいてリーダー回路があるという事実によって電子的読出し雑音が生成される。全てのピクセルの値を平均化すると、配列のピクセルの総数の因子である数だけ読取り雑音が低減する。これは、読取り雑音を根絶するのを可能にする。
【0126】
配列ピクセルの出力の平均化は電荷領域で実行される。図11は、各ピクセルの出力がコンデンサCにどのように接続されているかを示す。これらのピクセルは図4Aおよび図4Bのものであると例示されているが、それらは同様に図2Aおよび図2Bのもの、または図5Aにマクロピクセルとして示されているものであり得る。1つの可能な方式が図9Cに示されている。
【0127】
この略図(図9C)に関するタイミング図が図8Dに示されており、図8D中、「高い」信号はスイッチ(例えば、FETであり得る)が閉じられていることを示す。各ピクセルからの第1のサンプルが、スイッチS2およびS3を開き、スイッチS1を閉じることによってコンデンサC内に保存される。次いで、スイッチS1が開かれ、スイッチS2が閉じられて、第2のサンプルが対応するコンデンサCに同じ方法で保存される。2つの保存されたサンプルの平均化がスイッチS3を閉じることによって実行される。コンデンサCは実質的に同じ容量を有するので、このように同じサンプル(すなわち、それぞれS1の下流のものおよびS2の下流のもの)に関連した出力コンデンサの全てがそれらの電荷を共有して、配列ピクセル出力サンプルの平均に等しい電圧となる(それはそれらが出現する各実施形態に同様に適用される)。加えて、複数のピクセル出力コンデンサの並列接続から生じる大きなキャパシタンスは、次の段階のための電圧バッファとして機能するはるかに大きいキャパシタンス、例えば、図9Cに示されるような、コンデンサCの下流に置かれた、増幅器となる。このプロセスは、ほぼゼロの電力消費で、平均化、多重サンプリングおよびバッファリングを可能にする。並列コンデンサCによって可能にされたバッファリング効果のおかげで、スイッチコンデンサ増幅器は、次の段階として直接実装されて、C1/C2の比率で信号を増幅して、2つのサンプルの区別を確実にできる。実際には、スイッチS4がSAZスイッチで最初に開かれて、第1のサンプリングされて平均化された値をコンデンサC1に保存する。次いで、C1内に保存された電荷をC2に転送して、増幅器を、出力がC1内に保存されたサンプルと入力における電流電圧との間の増幅された差を指すモードにするためにSAZが閉じられる。次いで、S5が閉じられて、増幅器の出力においてコンデンサC上にサンプリングされた2つの平均値間の増幅された差を有する。この方式は、電力コストがはるかに高い、ピクセルデータ処理のための能動回路を実装する最先端の画像センサーとは全く異なる。
【0128】
図9A図9Bおよび図9Cにおける異なる変形で提示された配列構造では、配列全体に対する読出しを一度、実行する。従来の画像センサー(CIS/CCD/SPAD)では、バースト/ローリングモードでフォトサイトごとの読出しが必要とされる。我々の事例における配列は、全体として読み出されて、配列平均を同時に提供する。加えて、マクロピクセルのTGtransferゲートは、前述のとおり、定義されたDC部分のキャンセルを可能にする。最先端のPPGセンサーでは、これは複雑な回路を必要とする。
【0129】
配列構造は、100,000を超えるPPDの完全な配列に対して、所与の潅流指数に関するパルス捕捉、周囲光キャンセル、雑音低減、DCキャンセルを10us未満で可能にして、従来の配列によって達成されたものを少なくとも2桁下回る電力消費を可能にする。これは、ピクセル配列と従来の画像センサーとの間の実質的な差を実証する。
【0130】
多重サンプリング
ここでの目的は、信号対雑音比SNRをさらに改善することである。
【0131】
第1のステップで、LEDはオフである。周囲光が、第1のコンデンサのおかげで、所定の期間、サンプリングされる。読み取られて記録される信号は周囲光にだけ対応する。
【0132】
第2のステップで、LEDは、理想的には、周囲光がサンプリングされる所定の期間と同じ、所定の期間、オンである。周囲光から、およびLEDからの光が、第2のコンデンサのおかげでサンプリングされる。読み取られて記録される信号はLED光と周囲光に対応する。
【0133】
この操作は、一定のリセットレベルを除去するとともにフリッカー雑音も減らす、固有の減算であり、それは、「相関二重サンプリング」(CDS)と呼ばれて、対応するCDSブロックまたは段階を使用する。
【0134】
次いで、第1のコンデンサからの値を第2のコンデンサの値から差し引くことによりLED光だけに対応する信号を得るために、第1のステップの信号を第2のステップの信号から差し引くことが可能である。
【0135】
2つのCDSは20μs以内(10μsのLED光のパルス)に操作でき、周囲光はその期間内に大きくは変化しないと想定される。これは、その期間内に変化しないアーチファクト、例えば、モーションアーチファクトを除去する。
【0136】
読出し動作は、リセットレベル感知から始まってCDSで終わる、いくつかのステップで実行されることが前述されている。
【0137】
この機構は、周囲光減算および出力平均化、すなわち、フィルタリングを、本質的にゼロ電力を意味する、ほぼ完全に受動的な方法で実行するPPG用途に対して強化できる。
【0138】
図9Aおよび図9Bは、基本的な列レベル読出しチェーンを示しており、それぞれCDS1およびCDS2の、2つのCDS段階を埋め込んでいて、各々1つが「反転極性」原理に基づく。各事例で、ピクセルは図4Aおよび図4Bのものとして示されているが、それらは同様に、図2Aおよび図2Bのピクセル、または図5Aのマクロピクセルであり得る。
【0139】
図7A図9A図9Bおよび図8Aを参照すると、読出し操作は2つのフェーズ、
-第1、周囲光と関連付けられた電圧V_ambの抽出、および
-第2、周囲光+LED光に関連した電圧の抽出
を伴う。
【0140】
LEDがオフである第1のフェーズ(図8Aを参照して「周囲光」)で、リセットフェーズを切り替えることにより、センスノードがまず、リセットされる。V_reset電圧が次いで感知され、その後、スイッチSH1を閉じ、スイッチSH2およびSH3を開くことにより、キャパシタンスCSH1(図9Aおよび図9B上のブロックCDS1)に保存される。結果として、周囲光と関連付けられた積分された電荷が、スイッチSH1およびSH3を閉じ、スイッチSH2を開くことにより、キャパシタンスCSH2(図9Aおよび図9B上のブロックCDS1)に保存される。この保存された電圧は、周囲光の電圧V_amb+V_resetに対応する。キャパシタンスCSH1およびCSH2は、実質的に同じ容量であり、それは、それらが出現する各実施形態に同様に適用される。本出願のタイミング図上で高電圧として示されている場合、対応するスイッチは閉じていて電流が流れることに留意すべきである。
【0141】
その後、スイッチSH1およびSH2が開かれ、スイッチSH3が閉じられて、その結果、コンデンサCHS1およびCSH2の両方が、極性が反転されて、並列に接続されている。言い換えれば、電荷がPPDから流れ込むコンデンサCSH2の極が接地に接続され、2つのSH2スイッチの低い方によって以前に接地されていた、その他方の極は、コンデンサCSH1の入力極に接続されている。反転電位原理のため、第1のCDS1段階の終わりに、対応する電圧レベルは0.5(V_CSH1-V_CSH2)となり、それは、0.5(V_amb+V_reset-V_reset)=0.5V_ambに等しい。これは、先行するリセットからアーチファクトを除去する。かかる結果は、スイッチSH4およびSH6を開くことによって、CSH4キャパシタンス(図9A上のブロックCDS2)内に保存され、他方、スイッチSH5を閉じると、電荷がコンデンサCSH4に流れ込む。再度、コンデンサCSH3およびCSH4は実質的に同じ容量を有しており、それは、それらが出現する各実施形態に同様に適用されることに留意すべきである。
【0142】
第2のフェーズ(図8Aを参照して「LED光」)で、LEDはオンであり、それは、積分された光電子が、LEDおよび、常に存在する周囲光の両方に起因することを意味する。
【0143】
この場合、第1のCDS1段階の終わりに、第1のフェーズと同様、対応する電圧レベルは0.5(V_LED+V_amb+V_reset-V_reset)=0.5(V_LED+V_amb)とほぼ等しい結果となる。
【0144】
第1のフェーズに関して、V_LED+V_ambは、第2のフェーズのちょうど終わりに、キャパシタンスCSH3図9Aおよび図9B上のブロックCDS2)に保存される。
【0145】
対象のPPG情報はVLEDだけに含まれているので、信号は、信号対雑音比を改善するために周囲光を「取り除く」ことができる。
【0146】
ブロックCDS2の構造により、CSH4をCSM区別し、次いで、周囲光に関連した電圧0.5(V_amb)を周囲光+LED照明に起因する信号に関連した電圧0.5(V_amb+V_LED)から差し引き、従って、CDS1の文脈で前述したとおり、変更すべきところは変更して、ブロックCDS2の様々なスイッチを操作することにより、LEDだけに関連した電圧0.25(V_LED)を取得することが可能である。この最終的な信号は次いでADCに渡されて、デジタル信号に変換される。
【0147】
結果として、信号対雑音比は、LEDをオフにして測定された受信された周囲光に対応するPPD出力からDC電圧成分を差し引くことによって大幅に改善でき、LEDをオンにして測定された総信号から容易に差し引くことができる。
【0148】
1つの単一CDSで周囲光のキャンセルを可能にする提示されたフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の1つの他の実施形態および操作が、図8Bおよび図7Bを使用して説明される。図8Bで示されるような方式での周囲光のキャンセルは、必要なCDS段階の数を減らす利点を有する。
【0149】
1つのCDSを用いたこの周囲光のキャンセルは、図8Bおよび図7Bに基づき以下のように説明され、各ピクセルに関して(またはマクロピクセル、使用される場合)、
-ピクセルのSNをそのリセットゲートによってリセットすること。
-転送ゲートトランジスタTGtransferのグリッドを低電圧で設定してPPDからSNへの電荷転送を防ぐこと
-LEDをオフにして、これから先、周囲光に対応する電荷をPPD内に積分すること。
-より高い電圧のパルスを転送ゲートトランジスタTGtransferのグリッドに印加することによりSNへの第1の転送を実行し、スイッチSH2およびSH3を開き、スイッチSH1を閉じることにより結果として生じるV_amb+V_resetに対応する出力電圧をコンデンサC_SH1内に保存すること。
-LEDパルスを実行し、周囲光およびLED光レベルに対応する電荷をPPD内に積分すること。
-さらに高い電圧のパルスを転送ゲートトランジスタTGtransferに印加することによりSNへの第2の転送を実行し、スイッチSH1およびSH3を開き、スイッチSH2を閉じることにより、結果として生じるV_LED+V_amb+V_resetに対応する出力電圧をコンデンサCSH2内に保存すること。
-スイッチSH1およびSH2を開き、スイッチSH3を閉じることにより第1の保存された電圧を第2から差し引いて、周囲光、アーチファクト、オフセット、低周波数および周囲雑音のない、LED光の受信によって生成された信号となる0.5(V_LED)に対応する電圧を取得する。
【0150】
PPG信号自体の代わりにPPG信号の派生物の感知を可能にする提示されたフォトプレチスモグラフィ(PPG)感知装置の1つの他の実施形態および方法が、図8Cおよび図7Bを使用して説明される。PPG信号派生物の感知は、読出しチェーンに由来する雑音、オフセット、アーチファクトおよびスプリアス信号だけでなく、LED、動きアーチファクトおよびセンサー環境にも由来するものもキャンセルする利点を有する。実際、入力信号を破損するこれら全ての要素は、数マイクロ秒を超える期間を有する。これ故、派生物を感知することは、これらの要素全てのキャンセルを可能にする。従来のPPGセンサーでは、連続したPPGサンプルをかかる短期間に取得することは明らかではなく、そうでなければ、より高速な回路に対するより大きな電力消費が必要とされる。
【0151】
PPG派生物感知は、図8Cおよび図7Bに基づき以下のように説明され、1つ以上のピクセル(またはマクロピクセル)に関して、
-ピクセルのSNをそのリセットゲートによってリセットすること、
-転送ゲートトランジスタTGtransferのグリッドを低電圧で設定してPPDからSNへの電荷転送を防ぐこと
-第1のLEDパルスを実行し、周囲光およびLED光に対応する電荷をPPD内に積分すること。
-さらに高い電圧のパルスをTGに印加することによりSNへの第1の転送を実行し、結果として生じるV_LED1+V_amb+V_resetに対応する出力電圧をCSH1内に前述と同じ方法で保存すること。
-第2のLEDパルスを実行し、周囲光および第2のLED光レベルに対応する電荷をPPD内に積分すること。この第2のLED光パルスは典型的には、第1のものの数十マイクロ秒後に生じるが、これは、必要に応じて、適合できる。
-さらに高い電圧のパルスを転送ゲートトランジスタTGtransferのグリッドに印加することによりSNへの第2の転送を実行し、結果として生じるV_LED2+V_amb+V_resetに対応する出力電圧をCSH2内に前述と同じ方法で保存すること。
-前述のようにスイッチSH3を閉じることにより第1の保存された電圧を第2から差し引いて、0.5(V_LED1-V_LED2)に対応する電圧を取得し、それは、V_LED2はV_LED1後のある時に取得されたので、周囲光、アーチファクト、オフセット、低周波数および周囲雑音のない、LEDに由来した信号の派生物となる。
【0152】
この技術は、PPG信号派生物を1つの単一読出し方式および1つのアナログからデジタルへの変換で計算するという利点も有する。
【0153】
多重サンプリング+ピクセルの配列
ここで、および上で説明される多重サンプリングは、m列およびn行の配列(m,n)に分散されたピクセルの配列を例示する図11に示されるように、同じ列内の全てのピクセルに対して同時に実行できる。
【0154】
同じ列で、ピクセルは、図5Aに示されるように、1つの電圧バッファに接続された同じセンスノードSNを共有する。
【0155】
図7A図7Bの反転極性原理は、全ての列の間で各列を平均化することで補完できる。
【0156】
全ての列を平均化すると、読取り雑音分散を列数に等しい因子だけ低減し、これは低雑音、低電力消費につながる。
【0157】
第1の実施形態、図9Aでは、図7Aに例示された2つのCDS段階は、平均化の後に行われる。図9Aに関して、センスノードはまず、PPDのピン電圧よりも高い電圧にリセットされる。リセットレベル電圧V_reset+周囲光電圧V_ambが次いで読み出されて、各電圧バッファの出力でサンプリングされる。リセット電圧+周囲光電圧V_ambは次いで平均化される。
【0158】
平均化は、図9Aおよび図9Bに示されるように、スイッチおよびサンプリングキャパシタンスで作られた完全な受動回路を伴い、コンデンサを従来方式で並列に単に接続することを伴う。それに応じて、電子回路の単なる設計がまず、二重CDSチェーンを実行でき、次いでその結果を平均化するか、または逆に、まず各列の出力を平均化し、その後、2つのCDS段階を実行する。
【0159】
図11に示されるように、配列の全てのピクセルが同時に操作されて読み出される。図11では、平均化は同一のコンデンサにおける列レベル電圧をサンプリングし、それらを一緒に接続することによって実行される。
【0160】
このリセット操作の後、TGtransferトランジスタがオフにされ、LEDが所定の期間、パルスオンにされて、積分された電荷をPPD内に累積してセンスノードにあふれ出るようにさせる。あふれ出る電荷はセンスノードSN電圧の値を直線的に変化させる。
【0161】
xは列番号である図11に関して、各電圧フォロワSFxの出力は、再度、配列出力で平均化される。連続した2つのCDS段階ではLED信号電圧V_LEDを抽出して、周囲電圧V_ambおよびリセット電圧V_resetの両方を取り除く。
【0162】
さらなる実施形態、図9Bでは、図7Aに例示された2つのCDS段階は、平均化の前に行われる。前述の実施形態とは逆に、図9Bでは、リセット電圧V_reset+周囲光電圧V_ambがまず、各列に対して別々に抽出される。次いで、LEDから光生成された電子がセンスキャパシタンスにあふれ出て、列当たり1つのキャパシタンスの、専用キャパシタンスに保存される。
【0163】
2つのCDS段階は、各列、周囲およびリセット電圧補正ごとに、独立して実行し、最後にだけ、LED信号電圧がm列の間で平均化される。
【0164】
図9Cに例示されるさらなる実施形態では、図7Bにおけるように2つのCDS段階は、1つの単一CDSに減らされる。図8Bに例示されるように、次の2つの独立したサンプルは配列出力で平均化される、すなわち、リセット電圧V_reset+周囲光電圧V_ambから成る1つ、およびリセット電圧V_reset+周囲光電圧V_amb+V_LEDに対する第2のサンプル。図8Dを参照すると、連続した電子回路は、LED信号電圧V_LEDを抽出して、周囲電圧V_ambおよびリセット電圧V_resetの両方を信号から簡単な方法で取り除く。
【0165】
平均化のプロセスおよびシステムレベル表現が図10に示されている。
【0166】
入力雑音(
【数2】
で)に関する限り、ショット雑音は制限因子である。実際に、ショット雑音だけから成る、28.5dBのSNRに関して、そのショット雑音は、入力関連雑音に関して
【数3】
以上を構成する。これは、図9A図9Cのソリューションは、より大きな雑音の代償で、より少ない領域および電力の両方を得られ、後者はいずれにしてもショット雑音と比較すると無視できるほどなので、良いトレードオフであり得ることを意味する。
【0167】
この操作は、一定のリセットレベルを除去するとともにフリッカー雑音およびスプリアス信号も減らす、固有の減算である。
【0168】
本発明のおかげで、信号のDC成分をピクセルレベルで除去することが可能である。
【0169】
PPDはその容量値が分かっているコンデンサとして機能する。PPD内の電荷の量はその結果、該容量値にV_TGtransferを掛けることによって計算できる。
【0170】
本発明に従ったPPDベースの画像センサーはCMOS撮像装置にでき、それは好都合に、PPG用途で使用される。後で説明されるように、CMOS画像センサーは、LED電力消費の問題、別の方法では信号処理およびフィルタリングを困難にするPPG信号のダイナミックレンジ制約を解決することになり得る。
【0171】
本発明に従った装置は好都合に、システムオンチップ(SOC)として構築されて、低雑音および低電力信号処理チェーンを備えた異なる光子検知技術を統合しており、これは、より低い活性光(LED)レベルで、および同時に標準的なCMOSプロセスで作製された、より高い感度、信頼性のあるバイタルパラメータ測定を可能にする。
【0172】
前述から分かるように、従来のPPG感知装置に関して、本発明のPPGセンサーは、ピクセル配列内の光電子光積分と読出しチェーンの次の段階、例えば、増幅およびアナログからデジタルへの変換、の完全な分離という利点を有する。この特別な特徴は、コンデンサは、外部の駆動トリガーなしで、アナログ値を保持できるという事実のおかげで可能になる。これは、典型的には10us未満の光積分時の間のみ、配列への電力供給のスイッチをオンにし、読出し操作の残りの間はその供給のスイッチをオフにできるようにする。このように、PPGセンサーの全体的な電力消費がさらにもっと削減される。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11