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特許7256555ベーンの静圧摺動軸受を伴う、回転式摺動ベーン機械
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  • 特許-ベーンの静圧摺動軸受を伴う、回転式摺動ベーン機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ベーンの静圧摺動軸受を伴う、回転式摺動ベーン機械
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/344 20060101AFI20230405BHJP
   F04C 18/344 20060101ALI20230405BHJP
   F01C 1/344 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
F04C2/344 331B
F04C18/344 351H
F04C2/344 341Z
F04C18/344 361Z
F01C1/344 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020558852
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 NO2018050315
(87)【国際公開番号】W WO2019139484
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】20180046
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520255104
【氏名又は名称】トゥーサークル インダストリーズ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ロイバー,クリスチャン オーゼ
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/105129(WO,A1)
【文献】米国特許第04672813(US,A)
【文献】国際公開第98/042967(WO,A1)
【文献】特開昭59-203891(JP,A)
【文献】特表2021-510408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/344
F04C 18/344
F01C 1/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体処理のための、回転式摺動ベーン機械(1)であって、
プロセス流体のための入口(5)及び出口(7)を有する空洞(4)を形成する内壁(3)を伴う、ハウジング(2)と、
前記空洞(4)内の、ロータ軸(42)を伴うロータ(9)であって、前記ロータ(9)の外面(14)と前記ハウジング(2)の前記内壁(3)との間の距離が、回転方向で変化する、ロータ(9)と、
前記ロータ(9)において外向きに方向付けられたスロット(13)内に配置されたベーン(12)であって、回転中に前記ベーンと前記ロータとの間で相対的に摺動し、前記ロータ(9)の前記外面(14)と前記ハウジングの前記内壁(3)との間に延びた、ベーン(12)と
を備え、
前記回転式摺動ベーン機械(1)は、
各前記ベーン(12)のための少なくとも1対の静圧摺動軸受(20、20’)であって、各対は、前記ベーン(12)の各側に1つの静圧摺動軸受(20、20’)を備え、各前記静圧摺動軸受は、
可変容積の軸受流体チャンバ(21、21’、81)と、
軸受流体供給部(36、36’)と前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)との間のフロー制限部(25、25’、85)を伴う、軸受流体供給ライン(24、24’、84)と、
軸受パッド面(28、28’、88)が前記ベーン(12)に面し、かつ反対面が前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)に面し、前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)に向けて、及び前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)から離れるよう可動な、軸受パッド(27、27’、87)であって、前記軸受パッド(27、27’、87)の前記軸受流体チャンバに向かう動きは、前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)の容積の減少に対応し、前記軸受パッドの前記軸受流体チャンバから離れる動きは、前記軸受流体チャンバの容積の増加に対応する、軸受パッド(27、27’、87)と、
前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)と軸受パッド面(28、28’、88)との間にあり、軸受流体を、前記軸受パッド面(28、28’、88)と前記ベーン(12)との間の軸受流体膜に軸受流体を供給するための、軸受流体チャネル(32、32’、82)と
を備え、
回転中に、
前記プロセス流体の圧力変化は、前記ベーン(12)において接線力を変化させ、前記ベーン(12)を前記軸受パッド(27、27’、87)に向けて、及び前記軸受パッド(27、27’、87)から離すよう傾け、
前記ベーン(12)が前記軸受パッド(27、27’、87)に向けて傾けられたとき、前記ベーンは前記軸受パッドを前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)に向けて押しやり、それが前記軸受流体チャンバの容積を減少させ、前記軸受流体供給ライン(24、24’、84)の前記フロー制限部(25、25’、85)は、軸受流体が前記軸受流体供給部(36、36’)に戻るのを制限し、前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)内で軸受流体に圧力を加えて、高圧の軸受流体を作り、高圧の軸受流体は、前記軸受流体チャンバから、前記軸受流体チャネル(32、32’、82)を通って、前記軸受パッド面(28、28’、88)及び軸受流体膜に流れ、
前記ベーン(12)が前記軸受パッド(27、27’、87)から離れるよう傾けられたとき、供給圧の軸受流体が前記軸受流体供給ライン(24、24’、84)から前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)に流れ、それが前記軸受流体チャンバ(21、21’、81)の容積を増加させ、次に前記軸受パッドを前記ベーンに向けて押しやり、同時に、供給圧の軸受流体は、前記軸受流体チャンバから、前記軸受流体チャネル(32、32’、82)を通って、前記軸受パッド面(28、28’、88)及び前記軸受流体膜に流れる
ことを特徴とする、回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項2】
前記軸受流体チャンバ(82)の壁は、可撓性の膜(80)によって形成される、請求項1に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項3】
前記軸受流体チャンバ(81)に面した前記軸受パッド(87)の側は、前記膜(80)に当接する、請求項2に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項4】
前記軸受流体チャンバ(81)に面した前記軸受パッド(87)の側は、前記膜(80)に接続される、請求項2に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項5】
前記軸受流体チャンバは、底部(23、23’)を伴うシリンダ(21、21’)、及び前記シリンダ(23、23’)に受け入れられる底部(31、31’)を伴うプランジャ(29、29’)によって形成され、
前記軸受流体供給ライン(24、24’)は、前記シリンダ(21、21’)の前記底部(31、31’)近くまたは前記底部(31,31’)における開口部(26、26’)に接続され、
前記軸受パッド(27、27’)は、前記プランジャ(29、29)に接続され、
前記軸受流体チャネル(32、32’)は、前記プランジャ(29、29’)の開口部(33、33’)と、前記軸受パッド面(28、28’)との間に延び、
回転中に、
前記ベーン(12)が前記軸受パッド(27)に向けて傾けられたとき、前記ベーンは前記軸受パッド及び前記プランジャ(29)を前記シリンダの底部(23)に向けて押しやり、前記軸受流体供給ライン(24)の前記フロー制限部(25)は、軸受流体が前記軸受流体供給部(36)に戻るのを制限し、前記プランジャ(29)は前記シリンダ(21)内の軸受流体の圧力を増加させて、高圧(p)の軸受流体を作り、高圧の軸受流体は、前記シリンダから、前記軸受流体チャネル(32)を通って、前記軸受パッド面(28)及び前記軸受流体膜に流れ、
前記ベーンが前記軸受パッド(27’)から離れるよう傾けられたとき、供給圧の軸受流体は、前記軸受流体供給ライン(24’)から前記シリンダ(21’)に流れ、それが前記プランジャ(29’)及び前記軸受パッド(27’)を前記ベーン(12)に向けて押しやり、同時に、供給圧の軸受流体は、前記シリンダから、前記軸受流体チャネル(32’)を通って、前記軸受パッド面(28)及び前記軸受流体膜に流れる、請求項1に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項6】
前記プランジャの前記底部(31、31’)の面積(A)は、前記軸受パッド(27、27’)の有効面積(A)よりも小さい、請求項5に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項7】
前記軸受流体供給ライン(24、24’、84)の前記フロー制限部の少なくとも一部は、別個のフローリストリクタ(25、25’、85)によって提供される、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項8】
前記軸受流体チャネル(32、32’、82)は、フロー制限部を有する、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項9】
前記軸受流体チャネル(32、32’、82)の前記フロー制限部の少なくとも一部は、別個のフローリストリクタ(34、34’)によって提供される、請求項8に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項10】
各ベーンについて、1対の外側の静圧摺動軸受(20、20’)、及び1対の内側の静圧摺動軸受(50、50’)を備える、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項11】
前記ベーン(12)の各側において、外側及び内側の前記静圧摺動軸受の前記軸受パッド(27、57;27’、57’)は、相互接続(55、55’)される、請求項10に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項12】
各前記ベーン(12)の静圧摺動軸受(20、20’、50、50’)は、交換可能なカセット(70)に含まれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体処理のための回転式摺動ベーン機械に関し、プロセス流体のための入口及び出口を伴う空洞を形成する内壁を有するハウジング;空洞内のロータ軸を伴うロータであって、このロータの外面とハウジングの内壁との間の距離が回転方向で変化する、ロータ;及びロータにおいて外側に方向付けられたスロット内に配置され、ロータの外面とハウジングの内壁との間で相対的に摺動するベーン;を備える。
【背景技術】
【0002】
ベーン、ロータの外面、及びハウジングの内壁の間で、閉じられた空間が画定される。ロータの外面と壁との間の距離が、回転方向で変化するので、閉じられた空間の容積もまた、回転方向で変化する。動作中、これらの空間はプロセス流体で満たされる。入口及び出口の位置及び形状は、入口から出口へプロセス流体のフローをもたらすよう適合される。
【0003】
ロータの外面とハウジングの内壁との間の可変距離は、空洞及びロータの両方が円筒形であること、ならびにロータが空洞内に偏心的に取り付けられること、によって実現できる。代替として、空洞は、例えば楕円形など他の形状を有し得る。空洞の両端部は、ハウジングに装着された端部キャップによって閉じられる。ロータ及びベーンは、空洞全体に軸方向に延びる。回転式摺動ベーン機械の実際の使用の要件によって、ベーンの外縁部、ベーンの側部及びロータの側部の両方には、封止部が設けられてよい。
【0004】
ロータは、外部の駆動機によって駆動され得る。次に、ロータはベーンを駆動し、ベーンはプロセス流体を動かす。この場合、プロセス流体が液体であるとき、回転式ベーン機械はポンプとして働き、プロセス流体が気体、または液体と気体との混合の2相であるとき、回転式ベーン機械は圧縮機として働く。他の使用において、プロセス流体はベーンを駆動し、それによって外部の仕事ができるロータを駆動し得る。この場合、プロセス流体が液体であるとき、回転式ベーン機械はハイドロモータとして働き、プロセス流体が気体または2相であるとき、回転式ベーン機械は膨張機として働く。
【0005】
米国特許第3130673号明細書は、ベーンがそれらのスロットの中で自由に摺動し、それによって回転中に遠心力によってロータの内壁にもたれかかる、回転式ベーンポンプを記載している。加えて、ポンプ内の圧力はベーンの内側に作用して、内壁にベーンを押しやる。
【0006】
英国特許出願公開第190621345号明細書は、円筒形空洞と、この空洞の中心に位置された心棒の周りに独立して回転可能な2つのベーンとを有するケーシングを伴う、回転式ベーンポンプを記載している。これらのベーンは、空洞の内径と等しい延長を有する。円筒形の壁を伴う駆動ロータは、ケーシングの中で偏心的に位置され、心棒は壁の内側にある。これらのベーンは、正反対の位置にある2つの開口部において、ロータの壁を通過する。回転中、ロータは、心棒の周りにベーンを回転駆動する。心棒及びロータを駆動するためのシャフトは、空洞の中に反対の両側から延びる。このように、回転中に心棒はロータに干渉せず、シャフトはベーンに干渉しない。
【0007】
国際公開第09943926号は、空洞を有するハウジングと、ハウジングに受け入れられ、ロータ軸及び周縁面を有するロータと、上記の空洞と連通した入口及び出口通路と、ロータにおけるスロットに摺動可能に径方向に受け入れられ、各々がハウジングの内側からロータ軸に径方向に延びた、1つまたは複数のベーンと、空洞の一部であり、ハウジングの内側、ロータの周縁面、及び少なくとも1つのベーンの側面によって画定された、少なくとも1つの作業チャンバと、を備えた回転式ピストン機械を記載している。各ベーンは、軸回りで制御アームの一方の端部に関節式に接続され、他方の端部は、ハウジングの空洞を通って中央に延びた軸に一致した中心軸を有する、固定アクスルシャフトに枢動可能に軸支されている。この軸は、ロータ軸と平行かつ離隔されて延び、ロータは、パワー出力またはパワー入力のためのユニットを、適切に構築する。
【0008】
全ての回転式摺動ベーン機械について、圧力は入口から出口までで変化する。その結果、ベーンの両側で様々な異なる圧力が存在し、それは、ベーンに作用する接線力の変化を生じさせる。通常は、回転中に接線力の方向の変化も生じる。
【0009】
各ベーンに作用する接線力は、ベーンに曲げモーメントを発生させる。接線力及び曲げモーメントは、スロット内でベーンに作用する力によって吸収される。原則的に、これらの力は、接線力の反対側に作用する、スロットの外側端部における力と、接線力と同じ方向に作用する、スロットの内側端部における力と、から成る。接線力及び曲げモーメントは、スロット内でベーンも傾け、それが摺動領域を、スロット内の力の周りの領域に減少させる。接線力は回転中に方向を変えるので、ベーンはスロット内で前後に傾けられる。慣性力によって生じる動的力も生じ、ベーンに作用する。
【0010】
スロット内の力は、ベーンと、スロットにおけるロータとの間の相対的な摺動中に摩擦を増加させ、それが摺動を減少させ、かつベーンの摩耗を増加させ得る。摩擦を軽減させる1つの方法は、摺動軸受を使用することである。摺動軸受は、乾燥した固体で潤滑するか、液体潤滑剤で潤滑するか、またはプロセス流体で潤滑するか、のいずれかとすることができる。
【0011】
スロット内のベーンを潤滑する1つの方法は、動圧軸受、すなわちベーンの動きによって、パッドとベーンとの間で潤滑剤の膜が構築される、軸受パッドを有する軸受を使用することである。しかし、ベーンの運動方向の連続的な変化は、潤滑剤の十分な厚さの膜を構築するのを妨げるので、動圧軸受は好適ではない。潤滑の別の方法は、従来の静圧軸受、すなわち加圧された潤滑剤の連続的な供給によって、パッドとベーンとの間で潤滑剤の膜が構築される、軸受パッドを有する軸受を使用することである。しかし、これを有効にするために、高性能の回転式摺動ベーン機械において、潤滑剤を高圧にする必要があり、高圧の潤滑剤の供給は、高圧ポンプと、機械の回転部分への高圧の潤滑剤の移動とを必要とする。それは、特に回転する封止部が必要であるために、コストが高くかつ複雑である。加えて、ベーンの両側において潤滑剤が常に高圧であることは、ベーンが傾く間に潤滑剤の多くの漏洩を生じさせ、ベーンの両側の差圧によって接線力に追加の力を生じさせるため、やはり望ましくない。
【0012】
さらに、多くの設備において、プロセス流体を汚染しないために、液体のプロセス流体以外の潤滑剤は望ましくない場合がある。例として、回転式摺動ベーン機械を、電力発電における蒸気膨張機として、または産業プロセスの熱ポンプにおける圧縮機として使用することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第3130673号明細書
【文献】英国特許出願公開第190621345号明細書
【文献】国際公開第09943926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高圧の潤滑剤を供給する必要、及び高圧の潤滑剤を機械の回転部分に移動させる必要のない、潤滑されたベーンを伴う回転式摺動ベーン機械を提供することである。本発明の別の目的は、プロセス流体が汚染されない、潤滑されたベーンを伴う回転式摺動ベーン機械を提供することである。本発明の別の目的は、設計が、組み立て及び保守に対して効率的かつ好ましい、潤滑されたベーンを伴う回転式摺動ベーン機械を提供することである。さらに別の目的は、本発明が、従来技術の代替を少なくとも提供することである。
【0015】
本発明の別の特徴、利点、及び目的、ならびに、いかにしてそれらを実現させるかは、説明、図面、及び特許請求の範囲から明白になろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって本発明は、流体処理のための回転式摺動ベーン機械に関し、この回転式摺動ベーン機械は、
-プロセス流体のための入口及び出口を有する空洞を形成する内壁を伴う、ハウジングと、
-空洞内のロータ軸を伴うロータであって、このロータの外面とハウジングの内壁との間の距離が回転方向で変化する、ロータと、
-外側に方向付けられた、ロータにおけるスロット内に配置されたベーンであって、回転中にこのベーンとロータとの間に相対的な摺動が生じ、ロータの外側とハウジングの内壁との間に延びた、ベーンと
を備える。
【0017】
本発明によると、回転式摺動ベーン機械は、各ベーンに少なくとも1対の静圧摺動軸受を備え、各対は、ベーンの各側に1つの静圧摺動軸受を備え、各静圧摺動軸受は、
-可変容積の軸受流体チャンバと、
-軸受流体供給部と軸受流体チャンバとの間にフロー制限部を伴う、軸受流体供給ラインと、
軸受パッド面がベーンに面し、かつ反対面が軸受流体チャンバに面し、軸受流体チャンバに向けて、及び軸受流体チャンバから離れるよう可動な、軸受パッドであって、この軸受パッドの軸受流体チャンバに向かう動きは、軸受流体チャンバの容積の減少に対応し、軸受パッドの軸受流体チャンバから離れる動きは、軸受流体チャンバの容積の増加に対応する、軸受パッドと、
-軸受流体チャンバと軸受パッド面との間にあり、軸受流体を、軸受パッド面とベーンとの間に軸受流体膜に供給するための、軸受流体チャネルと
を備える。
【0018】
回転中、プロセス流体の圧力変化は、ベーンにかかる力を変化させ、ベーンを軸受パッドに向けて、及び軸受パッドから離れるよう傾ける。ベーンが軸受パッドに向けて傾けられたとき、ベーンは軸受パッドを軸受流体チャンバに向けて押しやって、軸受流体チャンバの容積を減少させ、軸受流体供給ラインのフロー制限部は、軸受流体が軸受流体供給部に戻るのを制限し、軸受流体を軸受流体チャンバ内の軸受流体の圧力を増加させ、高圧の軸受流体を作る。高圧の軸受流体は、軸受流体チャンバから、軸受流体チャネルを通って、軸受パッド面及び軸受流体膜に流れる。
【0019】
さらに、ベーンが軸受パッドから離れるよう傾けられたとき、供給圧の軸受流体は軸受流体供給ラインから軸受流体チャンバに流れ、それが軸受流体チャンバの容積を増加させ、次に軸受パッドをベーンに向けて押しやる。同時に、供給圧の軸受流体は、軸受流体チャンバから、軸受流体チャネルを通って、軸受パッド面及び軸受流体膜に流れる。
【0020】
1つの実施形態において、軸受流体チャンバの可変容積は、軸受流体チャンバの壁を可撓性膜で形成することによって実現される。軸受流体チャンバに面した軸受パッドの側は、膜に当接し得るか、または膜に接続され得る。代替として、この膜は、リング状で可撓性の外側部と硬い中央部とを有するなど、他の形状であっても良く、この膜は軸受パッドに接続され得る。
【0021】
別の実施形態において、軸受流体チャンバは、底部を伴うシリンダ、及びこのシリンダに受け入れられる底部を伴うプランジャによって形成される。軸受流体供給ラインは、シリンダの底部近くまたは底部の開口部に接続され、軸受パッドはプランジャに接続され、軸受流体チャネルは、プランジャの開口部と軸受パッド面との間に延びる。この実施形態において、ベーンが軸受パッドに向けて傾けられたとき、ベーンは軸受パッド及びプランジャをシリンダ底部に向けて押しやり、軸受流体供給ラインのフロー制限部は、軸受流体が軸受流体供給部に戻るのを制限し、プランジャはシリンダ内の軸受流体の圧力を増加させて、高圧の軸受流体を作る。高圧の軸受流体は、シリンダから、軸受流体チャネルを通って、軸受パッド面及び軸受流体膜に流れる。さらに、ベーンが軸受パッドから離れるよう傾けられたとき、供給圧の軸受流体は軸受流体供給ラインからシリンダに流れ、それがプランジャ及び軸受パッドをベーンに向けて押しやる。同時に、供給圧の軸受流体は、シリンダから、軸受流体チャネルを通って、軸受パッド面及び軸受流体膜に流れる。
【0022】
軸受流体供給ラインのフロー制限部は、軸受流体供給ラインの径、延長、及び形状を、実際の静圧摺動軸受に適合させることで、軸受流体供給ライン自体によって設けられ得る。代替または追加として、軸受流体供給ラインのフロー制限部は、別個のフローリストリクタによって設けられ得る。このフローリストリクタは、例えばラインの締め付け、またはリード弁などのチェック弁などの、フローレデューサによって形成され得る。
【0023】
軸受流体チャネルも、フロー制限部を有し得る。これは、軸受流体チャネルの径、延長、及び形状を、実際の静圧摺動軸受に適合させることで、軸受流体チャネル自体によって設けられ得る。代替または追加として、軸受流体チャネルのフロー制限部は、別個のフローリストリクタによって設けられ得る。このフローリストリクタは、例えばラインの締め付け、またはリード弁などのチェック弁などの、フローレデューサによって形成され得る。
【0024】
軸受パッド面は平坦であってよく、軸受流体チャネルは、この平坦面の開口部において出口を有し得る。代替として、軸受パッド面は凹部を有してもよく、軸受流体チャネルは、この凹部の開口部において出口を有し得る。
【0025】
静圧摺動軸受の設計は別として、本発明による回転式摺動ベーン機械は、任意の設計としてよい。ベーンは、径方向であるか、または斜め外側を向き得る。さらに、ベーンは、遠心力によって、液圧によって、または機械的に、ハウジングの内壁に向けて押しやられ得る。いくつかの回転式摺動ベーン機械において、ベーンも、回転中に枢動されることになる。この種の機械において、本発明による回転式摺動ベーン機械の静圧摺動軸受は、ベーンの枢動軸受も備えた軸受装置の一部を形成し得る。
【0026】
ベーンの数は、実際の設計に依拠するが、通常は2~10個である。
【0027】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、特定の設計の回転式摺動ベーン機械について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による回転式摺動ベーン機械の断面図である。
図2】回転式摺動ベーン機械のベーンにぶつかる力を示す断面図である。
図3a】本発明による回転式摺動ベーン機械の、静圧摺動軸受の断面図である。
図3b】本発明による回転式摺動ベーン機械の、静圧摺動軸受の断面図である。
図4a図1の静圧摺動軸受の、より詳細な断面図である。
図4b図4aの静圧摺動軸受の変形の、断面図である。
図5】本発明による回転式摺動ベーン機械の、静圧摺動軸受の断面図である。
図6】本発明による静圧摺動軸受を伴うカセットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明による回転式摺動ベーン機械の、軸方向から見た断面図である。ハウジング2は、空洞軸43を伴う円筒形の空洞4を形成する内壁3を有する。入口チャネル6は、プロセス流体の入口5から空洞4に延び、出口チャネル8は、空洞4からプロセス流体の出口7に延びる。固定心棒10は、空洞4の中心に位置される。心棒10周りのリング部44、及びリング部44から径方向外側に延びたロッド部45を備えた、6個の中心アームは、心棒10の周りを独立して回転可能である。最前の中心アーム44、45は実線で示され、他の中心アームのリング部は、最前のリング部の背後に隠されている。他の中心アームのロッド部のほとんどは、破線で示される。
【0030】
円筒形のロータ9は、図示されていない軸支されたシャフトに接続され、方向11でロータ軸42の周りを、空洞4内で偏心して回転する。ベーン12は、静圧摺動軸受20によって、ロータ9の径方向スロット13内に摺動可能に配置される。各ベーン12の内部は、中心アームのロッド部45のベーンリング49に、枢軸46を介して枢動可能に接続される。これは、ベーン12が、心棒10及び空洞軸43から一定の距離で保たれること、ならびに、各ベーン12が、軸43の周りで独立して回転可能であることも意味する。静圧軸受20は、ベーン12をスロット13内の所定の位置に保持し、ベーン12が外側を向くことを保証する。遠心力も、ベーン12を外側に押しやるのに寄与する。ベーン12は、ハウジング2の内壁3に延び、封止ヘッド部47は、ベーン12と壁3との間を封止する。ロータ9の回転中、ベーン12は、枢軸46の周りを枢動し、静圧軸受20内で摺動して、ロータ9の偏心性によって、ロータ9と空洞4との間の様々な相対位置に適合される。
【0031】
ロータ9が、空洞4内に偏心的に取り付けられているため、ロータ9の外面14とハウジング2の内壁3との間の距離は、回転方向11で変化する。空間15は、ベーン12と、壁3と、ロータの外面14との間に形成される。面14と壁3との間の距離が、回転方向で変化するため、空間15の容積も、回転方向11で変化する。回転式摺動ベーン機械の使用中、空間15はプロセス流体で満たされる。空間15の可変容積は、プロセス流体のネットフローが入口5から出口7までであることを保証する。入口5において、空間15は入口圧を有し、その一方で出口7において、空間15は出口圧を有する。したがって、空間15の圧力はロータ9の周りで変化する。
【0032】
図2は、図1の回転式摺動ベーン機械において頂部ベーンに力がぶつかっている、簡略化した断面であり、これは、ロータから外側を向くベーンを伴う、従来技術の回転式摺動ベーン機械にも当てはまる。ベーン12はスロット13内に位置され、軸方向に示される。図2の目的は、ベーン12にぶつかる力を例示することなので、図1に示された摺動軸受は、図2では省略されている。ベーン12とスロット13の壁との間の空隙は、例示目的のために誇張されている。ベーン12における一方の側の空間15’は、圧力pを有し、ベーン12における他方の側の空間15’’は、pよりも大きい圧力pを有する。したがって、ベーン12の両側で差圧が存在する。差圧の力は、差圧と、差圧にさらされるベーンの面積との積に等しい大きさを有し、接線合力Rによって表わすことができる。接線力Rは、図のように、ベーン12を傾ける。接線力Rは曲げモーメントも発生させ、ベーン12を僅かに曲げる。R及び曲げモーメントは、スロット13上部における反力F1、及びスロット13の内側端部における、より小さい反力F2によって、スロット13内で吸収される。F1はRの反対方向、その一方でF2はRと同じ方向である。
【0033】
釣り合いにより、
F1=F2+R である。
【0034】
空間15’、15’’における圧力は回転中に変化するので、ベーン12の両側の差圧も回転中に変化する。さらに、ロータの外側14とハウジングの内壁3との間の距離が回転中に変化するので、差圧にさらされるベーン12の面積も変化する。したがって、接線力Rは回転中に変化する。通常、回転中に差圧は方向を変えるので、接線力Rも方向を変える。接線力Rが変化し、かつ方向を変えるとき、スロット13内の力F1及びF2も変化し、かつ方向も変え、ベーン12は反対方向に傾く。したがってベーン12は、回転中に前後に傾く。差圧による力に加えて、振動、求心加速度、コリオリ力、及び他の慣性力によって生じる動的力も存在し、スロット13内の力に寄与してベーン12を傾ける。スロット内の力は、ベーン12とロータ9との間の相対的な摺動中に、ベーン12とロータ9との間の摩擦を増加させ、この増加した摩擦は摺動を減少させ、ベーンの摩耗を増加させ得る。
【0035】
図3a、及び図3bは、本発明による回転式摺動ベーン機械の、1対の静圧摺動軸受の断面図である。図3a及び図3bの静圧摺動軸受は、図1の静圧摺動軸受とは僅かに異なる。図2を参照して説明したように、ベーン12は、回転中にスロット13内で前後に傾く。ベーン12とスロット13の壁との間の空隙、ベーン12の傾き、及び軸受パッドの移動は、例示目的で誇張されている。
【0036】
図3aは、外面14を伴うロータ9のスロット13内で、中心に位置されたベーン12を軸方向に示す。1つの静圧軸受20、20’が、ベーン12の各側に位置される。静圧軸受20は、スロット13に対して横方向に配置されたシリンダ21を備える。シリンダ21は、ロータ9自体、またはロータ9内に位置された本体に配置することができる。シリンダ21は、開かれた頂部22及び底部23を有する。軸受流体供給ライン24は、軸受流体フィードライン36と、シリンダ底部23における開口部26との間に延びる。凹部28を有する軸受パッド27は、ベーン12に面する。プランジャ29は、底部31と、軸受パッド27に一体化された頂部30とを有する。代替として、プランジャ29及び軸受パッド27を別のアイテムとし、例えばねじ切り加工によって機械的に接続させ得る。プランジャ29はシリンダ21内に受け入れられ、Oリング35が、プランジャ29とシリンダ21との間を封止する。プランジャ29は、プランジャ底部の開口部33と、軸受パッドの凹部28との間に延びた、軸受流体チャネル32を有する。軸受流体チャネル32は、締め付けによって形成されたリストリクタ34を有する。実際の設計に依拠して、リストリクタ34は、他の形状もしくは設計を有し得るか、または省くことができる。
【0037】
リード弁25は、シリンダ底部23の開口部26を覆い、軸受流体がシリンダ21から軸受流体供給ライン24に流れるのを防止する。リード弁25はチェック弁の一種であり、軸受流体の供給リストリクタとして使用することができる。代替として、チェック弁は、軸受流体供給ライン24に含まれ得る。軸受流体供給ライン24は、チャネル、穴、または管によって形成され得る。
【0038】
軸受流体フィードライン36は、ロータ9の軸方向に延びる。軸受流体フィードライン36は、軸受流体を静圧軸受に送るチャネル、穴、または管の、枝分かれしたネットワークの一部である。軸受流体は、固定供給部から送られ、固定部分及び回転部分を介して回転中のロータに送られ、それらの間を封止する。
【0039】
回転式摺動ベーン機械の動作中、供給圧の軸受流体は、軸受流体フィードライン36から、軸受流体供給ライン24を通って、プランジャ底部31によって画定されたシリンダ21の一部の中に供給され、さらに軸受流体チャネル32を通って凹部28の中に供給される。凹部28から、軸受流体は、軸受パッド27の表面とベーン12との間に分配され、そこで流体は軸受流体膜を形成する。軸受パッド27の縁部において、軸受流体は軸受流体膜からスロット13の中に漏洩し、最終的に空洞における空間15’に入り、そこでプロセス流体と混ざる。
【0040】
静圧軸受20’は静圧軸受20と同一であり、同じように機能する。対応する要素は、ダッシュが付いた同じ参照番号で示される。
【0041】
図3bは、ベーン12が軸受20に向けて、すなわち軸受パッド27に向けて傾けられたときの、図3aの静圧軸受20、20’を示す。これは、軸受パッド27とベーン12との間の軸受流体膜における圧力を、増加させる。軸受流体膜における増加した圧力は、軸受パッド27をシリンダ21に押し込み、かつプランジャ29をシリンダ21の中に押し込み、シリンダ21内の軸受流体の圧力を増加させて、高圧の軸受流体pにする。この高圧はリード弁25を閉じるので、軸受流体は、軸受流体供給ライン24を通ってシリンダ21へ、またはシリンダ21から流れない。シリンダ21内の高圧は、軸受流体を、軸受流体チャネル32を通して凹部28に流れ抜けさせ、そこで軸受流体は、軸受流体膜を補充する。これは、流体をシリンダ21から取り除き、シリンダ21内の圧力を減少させて、その結果軸受流体膜は、軸受パッド27をシリンダ21に向けて押し込み、かつプランジャ29をさらにシリンダ21の中に押し込む。これは、ベーン12が別の方向に傾けられるまで続く。
【0042】
同時に、ベーン12は静圧軸受20’から離れるように、すなわち軸受パッド27’から離れるよう傾けられる。したがって軸受パッド27’とベーン12との間の軸受流体膜における圧力は、減少される。シリンダ21’内の圧力は、軸受流体の供給圧pである。軸受パッド27’とベーン12との間の軸受流体膜における圧力は減少されるので、供給圧pは、プランジャ29’及び軸受パッド27’を外側へベーン12に向けて押し込むのに十分である。同時に、軸受流体は、シリンダ21’から、軸受流体チャネル32’を通って凹部28’の中に流れ、そこで軸圧流体膜を補充する。これは、シリンダ21’内の圧力を減少させ、その結果供給圧pのより多くの軸受流体が、軸受流体供給ライン24’からシリンダ21’に入る。これは、プランジャ29’及び軸受パッド27’を、ベーン12に向けてさらに押しやり、より多くの軸受流体を軸受流体膜に供給する。これは、ベーン12が別の方向に傾けられるまで続く。
【0043】
締め付けまたは他のフローレデューサを、リード弁の代わりにリストリクタ25として使用し得る。その場合、プランジャ29によってシリンダ21内で増強された高圧pは、シリンダ21から軸受流体供給ライン24に入る軸受流体のフローが少量戻るため、徐々に開放されることになる。しかし、ベーン12は高い頻度で前後に傾けられるので、フロー方向は、任意の大量の軸受流体が軸受流体供給ライン24に戻る前に、変化することになる。
【0044】
ベーン12が、静圧軸受20、20’のうちの1つの軸受パッド27、27’をシリンダ21、21’に向けて押しやるとき、他方の静圧軸受20、20’の軸受パッドはベーン12に向けて動き、その逆にも動く。このように、静圧軸受20、20’の対は、それらの軸受パッド27、27’の位置を、ベーン12の位置に適合させ、同時にベーン12の摺動を可能にする軸受流体膜を維持する。特に有利なのは、軸受パッド27、27’がそれらの位置を、静圧軸受、ベーン、及びスロットを形成するアイテムの、製造偏差及び熱変形に適合させることである。
【0045】
一般的に、表面と流体との間に作用する力は、流体の圧力と表面積との積に等しい。しかし静圧軸受パッドについて、軸受流体膜圧は面積にわたって変化し、軸受パッドの縁部において最も低い。力の計算を簡略化するため、一定の軸受流体膜の圧力、及び軸受パッドの有効面積を想定する。
【0046】
次に静圧軸受20、20’に作用する力を、図3bを参照して説明する。
【0047】
軸受20について、軸受流体膜とベーン12との間、及び軸受流体膜と軸受パッド27との間に作用する力は、p×A である。
ここで、
は、ベーン12と軸受パッド27との間の軸受流体膜圧であり、Aは、軸受パッド27の有効面積で、図3bにおける斜線部分である。
【0048】
軸受20’について、軸受流体膜とベーン12との間、及び軸受流体膜と軸受パッド27’との間に作用する力は、
’×A である。
ここで、
b’は、ベーン12と軸受パッド27’との間の軸受流体膜圧であり、Aは、軸受パッド27’の有効面積で図3bにおける斜線部分であり、軸受パッド27と同じサイズである。
【0049】
ベーン12が、図3bのように軸受パッド27に向けて傾けられているとき、図2における反力Fの反対と等しい接線力Fは、ベーン12から軸受20の軸受流体膜に作用する。軸受20’の軸受流体膜からベーン12に作用する力は、この力に加わる。したがって、軸受20の軸受流体膜に作用する、ベーン12からの合計の力は、
+(pb’×A) である。
【0050】
この力は、軸受20の軸受流体膜に作用する軸受パッド27からの力と等しい。すなわち、
+(pb’×A)=p×A である。
【0051】
軸受20’の軸受流体膜圧p’は、静圧軸受20の荷重に加わり、軸受20の軸受流体膜圧pの要求を増加させることが示される。しかし、軸受流体膜圧は、回転中に変化する。ベーン12が軸受20に向けて傾けられたとき、かつ軸受流体膜圧pは増加したとき、ベーン12は同時に軸受20’から離れるよう傾けられ、軸受流体膜圧pb’は減少する。軸受20’の軸受流体膜圧pb’の減少は、軸受20に必要な圧力pを減少させる。これは大きな利点である。なぜならそれは、軸受にかかる荷重を減少させ、所与のサイズの回転式摺動ベーン機械のための、軸受が必要とされるサイズを減少させるからである。さらに、ベーンが離れるよう傾けられた軸受における、軸受流体膜圧のこの減少は、この軸受からの軸受流体の漏洩も軽減させる。これはまた、本発明による静圧軸受が、動作中の回転式摺動ベーン機械における非対称の荷重サイクル、または可変荷重への適合を可能にすることを意味する。
【0052】
動作中、接線力Fの方向は高い頻度で変化し、軸受パッド及びプランジャは、同じく高い頻度で前後に動く。軸受パッド及びプランジャは、それらのスピード及び運動方向を変える毎に、加速される。この加速は、静圧軸受の力の計算を複雑にする。しかし、運動中にいくつかの箇所において、加速がゼロになる。そのとき、軸受流体膜から軸受パッドに作用する力は、シリンダ内で軸受流体からプランジャに作用する力と等しい。
【0053】
ベーン12が軸受パッド27に向けて傾けられたとき、
×A=p×A が当てはまる。
ここで、p及びAは上記で定義されており、pは、プランジャ29からの圧力増加による、シリンダ21内の高圧であり、Aはプランジャ底部31、31’の面積である。
【0054】
同時に、ベーン12は軸受パッド27’から離れるよう傾けられ、
’×A=p×A が当てはまる。
ここで、p’、A、及びAは上記で定義されており、pは、軸受流体供給ライン24’からの、シリンダ21’内の供給圧である。
【0055】
さらに、ベーン12が軸受20に向けて傾けられたとき、シリンダ21から軸受20の軸受流体膜に流れる軸受流体について、
<p が当てはまる必要がある。
【0056】
さらに、ベーン12が軸受20’から離れるよう傾けられたとき、シリンダ21’から軸受20’の軸受流体膜に流れる軸受流体について、
’<p が当てはまる必要がある。
【0057】
軸受の良好な機能を保証するために、好ましくは、
<A であることが判っている。
は通常、軸受パッドの面積の60~80%である。
【0058】
通常、回転スピードは500~3600rpmである。プロセス流体圧は、通常1~16バールである。軸受流体の供給圧pは、プロセス流体圧より高くなければならず、通常は10~40バールである。通常、軸受流体の高圧pは、10~100バールである。
【0059】
本発明による静圧軸受は、それ自体が必要な高圧の軸受流体を提供する。したがって、軸受流体を、穏やかな供給圧で回転封止部を介してロータに供給することができ、それは、高圧の軸受流体を供給するよりも、技術的に大幅に簡単である。
【0060】
図4aは、図1の頂部ベーン12及びその静圧摺動軸受の、より詳細な断面図である。スロット13の上部近くに位置された、1対の外側の静圧軸受20、20’と、スロット13の内側端部近くに位置された、1対の内側の静圧軸受50、50’の存在が示される。図2を参照すると、外側の静圧軸受20、20’は反力Fをもたらし、内側の静圧軸受50、50’は反力Fをもたらす。
【0061】
図4aの静圧摺動軸受は、図3a及び図3bの静圧摺動軸受と同様に機能するが、いくつかの違いがある。図4aにおける静圧軸受20の軸受パッド27は、軸受金属の面37、及びプランジャ29と一体化された軸受パッド基礎部39を備える。シリンダ21は伸長部41を有し、軸受流体供給ライン24は、この伸長部に接続される。シリンダ21にリード弁は存在せず、その代わりに軸受流体供給ライン24にリストリクタ25が存在する。
【0062】
交換可能な挿入部48は、プランジャ29内の軸受パッド27の中心におけるねじ接続部38で、軸受パッド基礎部39の中にねじで留められる。挿入部48は、軸受流体チャネル32を有し、それはシリンダ21を軸受パッド凹部28に接続する。挿入部48は、挿入及び取り外しを可能にするために、六角レンチなどの好適なレンチと嵌合する、内部ねじ駆動部40も有する。挿入部48は、異なる動作条件への適合のために、軸受流体チャネル32を伴い、異なるフロー制限部を伴う異なる方法で作ることができる。外側の静圧軸受20、20’が、異なる挿入部48、48’を有すること、及び内側の静圧軸受50、50’も異なる挿入部58、58’を有することが、示される。これは、異なる静圧軸受の異なる力に対する適合である。
【0063】
図4bは、図4aの静圧摺動軸受の変形を示す断面図である。図4bにおいて、外側の静圧軸受20の軸受パッド基礎部39は、ベーン12の一方の側において、接続バー55によって、内側の静圧軸受50の軸受パッド基礎部59に接続される。外側の静圧軸受20’の軸受パッド基礎部39’は、ベーン12の他方の側において、接続バー55’によって、内側の静圧軸受50’の軸受パッド基礎部59’に接続される。図4bは、軸受パッド基礎部39、59及び一片の接続バー55、ならびに、軸受パッド基礎部39’、59’及び一片の接続バー55’を示す。代替として、軸受パッド基礎部は、ボルト締めなどによって、接続バーに機械的に接続され得る。
【0064】
図5は、本発明による回転式摺動ベーン機械の、静圧摺動軸受の異なる実施形態における断面図である。上述の静圧摺動軸受のように、ベーン12の各側に1つの静圧摺動軸受を備えた、1対の静圧摺動軸受が存在する。しかし図5において、静圧摺動軸受が1つのみ示される。
【0065】
図5の静圧摺動軸受は、ロータ9に形成された軸受流体チャンバ81を備える。軸受流体チャンバ81は可変容積を有する。それは、軸受流体チャンバ81の壁のうちの1つが可撓性膜80で形成されることによって実現される。膜80は、スチールで作られた円形コルゲーションを伴う円形である。膜80のリム90は、例えば溶接によって、ロータ9の面91に装着される。
【0066】
フローリストリクタ85を伴う軸受流体供給ライン84は、軸受流体チャンバ81の伸長部83に接続される。凹部88を伴う可動軸受パッド87は、ベーンに面し、軸受パッド87の反対側は、軸受流体チャンバ81に面する。軸受流体チャンバ81に面した軸受パッドの側は、突起部89を有し、それは膜80の中心部86に当接する。示された実施形態において、突起部89は、中心部86にも接続される。この接続は、溶接またはボルト締めによって成され得る。
【0067】
軸受流体のフローに対する制限部を伴う、軸受流体チャネル82は、軸受流体チャンバ81から、膜80の中心部86を通り、軸受パッド87を通って、軸受パッド凹部88に延び、軸受流体を、軸受パッド87とベーン12との間の軸受流体膜に供給する。
【0068】
ベーン12が軸受パッド87に向けて傾けられたとき、軸受パッド87とベーン12との間の軸受流体膜の圧力は増加され、軸受パッド87は、軸受流体チャンバ81に向けて押しやられる。膜80は内側に曲がり、軸受流体チャンバ81を圧縮する。軸受流体供給ライン84のフローリストリクタ85は、軸受流体が軸受流体供給ライン84に戻るのを制限し、軸受流体チャンバ81内の軸受流体の圧力を増加させ、高圧の軸受流体を作る。次に高圧の軸受流体は、軸受流体チャンバ81から、軸受流体チャネル82を通って、軸受パッド凹部88、及び軸受パッド87とベーン12との間の軸受流体膜に流れる。
【0069】
ベーン12が軸受パッド87から離れるよう傾けられたとき、軸受パッド87とベーン12との間の軸受流体膜の圧力は、減少する。次に軸受流体チャンバ81の圧力は、膜80を外側に曲げることによって、軸受流体チャンバ81を拡張させ、軸受パッド87をベーン12に向けて押しやる。これは、軸受流体チャンバ81の圧力を減少させ、供給圧の軸受流体は、軸受流体供給ライン84から、軸受流体チャンバ81に流れる。これは、軸受流体チャンバ81の圧力を増加させ、次に、軸受パッド87をさらにベーン12に向けて押しやる。同時に、供給圧の軸受流体は、軸受流体チャンバ81から、軸受流体チャネル82を通って、軸受パッド凹部88、及び軸受パッド87とベーン12との間の軸受流体膜に流れる。
【0070】
軸受流体は、オイルベースであってよい。しかし、プロセス流体を汚染しないよう、軸受流体は、プロセス流体に害を及ぼさない流体であり得る。1つの代替として、軸受流体は、プロセス流体、またはプロセス流体から導出される。回転式摺動ベーン機械が蒸気膨張機である場合の、1つの例がある。この場合、軸受流体は水であってよい。例えば蒸気膨張機の場合など、プロセス流体が気体または2相であるとき、プロセス流体は、軸受流体として使用される前に液化され得る。軸受流体は、回転式摺動ベーン機械の上流または下流で、プロセス流体から導出され得る。このように、ポンプを必要とせずに供給圧が提供され得る。代替として、プロセス流体は、ポンプによって供給圧まで圧力を増加され得る。
【0071】
水などの、オイルを含まない潤滑剤が使用されるとき、オイルベースの潤滑剤が使用されるときよりも、高い軸受流体膜圧が必要となり得る。本発明は、高圧供給を必要としない高圧の軸受流体膜を提供する。したがって本発明はオイルを含まない潤滑剤を使用するときに好ましい。
【0072】
回転式摺動ベーン機械の軸方向の範囲は、実際の設計に依拠する。1つの実施形態において、各ベーンに、2対以上の静圧摺動軸受が、回転式摺動ベーン機械の軸方向に配置される。したがって、ベーンの各側において、2つ、3つ、またはそれよりも多い外側の静圧軸受、及び同じ構成の内側の静圧軸受が、存在し得る。このように、ベーンの軸方向の範囲をカバーする軸受の配置を提供することができる。
【0073】
1つの実施形態において、1つ以上の軸受流体チャンバが、軸受パッドに接続されるか、または軸受パッドと一体になる。例として、同じ軸受パッドが、ベーンの軸方向全体に延びてもよく、この軸受パッドは、対応するシリンダを伴う2つのプランジャに接続され得る。これらのシリンダは、同じ径方向範囲だが異なる軸方向箇所に位置される。
【0074】
図6は、本発明による静圧軸受が、カセット70に含まれる実施形態を示す。カセット70は、ベーンのための静圧軸受を包含する本体と、カセット70の頂部を形成し、カセット70をロータ9の所定の位置に保持する働きをするヘッド部72と、を含む。矢印71は、カセット70の長手方向を画定し、これはロータ軸42と平行である。ヘッド部72をロータ9に固定するためのボルト73が、ヘッド部72の縁部に沿って示される。ベーン12のためのスロット13は、カセット70の長手方向に延びる。軸受流体フィードライン(図3a及び図3bの参照番号36)のための接続部76が、カセットの端部に示される。
【0075】
カセット70は、ロータ9の組み立て中に、ロータ9の中に挿入され、それによって静圧軸受の維持を容易にする。カセット70は交換可能であり、それによって、静圧軸受及びベーンの望ましい取り付け方法を可能にする。ベーンは、カセットがロータに取り付けられた後に、スロットに挿入され得る。代替として、各カセットはそのベーンを含む。すなわちベーンはカセットの一部を形成する。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6