(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ベーンの摺動軸受及び枢動軸受を伴う、回転式摺動ベーン機械
(51)【国際特許分類】
F04C 2/344 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
F04C2/344 311
F04C2/344 331A
(21)【出願番号】P 2020558853
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 NO2018050316
(87)【国際公開番号】W WO2019139485
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2021-11-09
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520255104
【氏名又は名称】トゥーサークル インダストリーズ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ,アルネ
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/105129(WO,A1)
【文献】国際公開第02/031318(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/024517(WO,A1)
【文献】特開2013-142351(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105952642(CN,A)
【文献】米国特許第03130673(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/344
F04C 18/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体処理のための、回転式摺動ベーン機械(1)であって、
プロセス流体のための入口(5)及び出口(7)を有する空洞(4)を形成する円筒形の内壁(3)を伴う、ハウジング(2)と、
前記空洞(4)の偏心したロータ軸(42)の周りの回転方向(11)で回転可能なロータ(9)であって、前記ロータ(9)の外面(14)と前記ハウジング(2)の前記内壁(3)との間の距離が、前記回転方向(11)で変化する、ロータ(9)と、
前記空洞(4)の中心軸(43)周りに回転可能で、前記ロータ(9)において外側に方向付けられたスロット(13)を通して前記ハウジング(2)の前記内壁(3)に延びたベーン(12)であって、回転中に前記ベーン(12)と前記ロータ(9)との間で相対的な運動が生じる、ベーン(12)と
を備え、
前記回転式摺動ベーン機械(1)は、
前記ロータ(9)がロータ本体(101)及びベーン軸受装置(102)を備え、各前記ベーン軸受装置(102)は、
前記ベーン(12)のためのスロット(13)を伴う摺動軸受本体(105)であって、前記スロット(13)の各側において前記摺動軸受本体(105)は、前記スロット(13)に面した平坦面(115)を有し、前記ベーン(12)のための摺動軸受を形成して、前記スロット(13)の各側において前記摺動軸受本体(105)は、前記スロット(13)から離れて面した円筒形の凸状面(116)をさらに有し、前記スロット(13)の反対側における円筒形の前記凸状面(116)は、前記ロータ軸(42)に平行な共通の軸(118)を有する、摺動軸受本体(105)と、
前記ロータ本体(101)に装着されるか、または前記ロータ本体(101)と一体化され、前記摺動軸受の前記凸状面(116)に面した円筒形の凹状面(117)を有し、前記ベーン(12)のための枢動軸受を形成し、前記摺動軸受の前記凸状面(116)の前記軸(118)は、枢動軸受の軸(118)を形成する、前記スロット(13)の各側における枢動軸受パッド(106)と、
第1の軸受流体供給部(36)と前記摺動軸受の前記凹状面(117)との間の、前記スロット(13)の各側における第1の軸受流体供給ライン(112)と、
軸受流体を前記摺動軸受の前記平坦面(115)と前記ベーン(12)との間の軸受流体膜に供給するための、第2の軸受流体供給部(39、125)と前記摺動軸受の前記平坦面(115)との間の、前記スロット(13)の各側における第2の軸受流体供給ライン(113)とを備え、
前記枢動軸受の封止部(110)は、前記枢動軸受の前記凹状面(117)において前記第1の軸受流体供給ライン(112)の端部を囲み、前記枢動軸受の前記封止部(110)、前記枢動軸受の前記凹状面(117)、及び前記摺動軸受の前記凸状面(116)は、前記枢動軸受の前記凹状面(117)と前記摺動軸受の前記凸状面(116)との間の液圧力の移動のために、圧力チャンバを画定する
ことを特徴とする、回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項2】
前記第2の軸受流体供給部は、前記摺動軸受本体(105)における第2の軸受流体フィードライン(39)である、請求項1に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項3】
前記第1の軸受流体供給ライン(112)は、軸受流体を、前記枢動軸受の前記凹状面(117)と、前記摺動軸受の前記凸状面(116)との間の軸受流体膜に供給する、請求項1または2に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項4】
前記第2の軸受流体供給部は、前記枢動軸受の前記凹状面(117)と、前記摺動軸受の前記凸状面(116)との間の前記軸受流体膜である、請求項3に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項5】
前記第2の軸受流体供給部は、前記枢動軸受の前記封止部(110)と、前記枢動軸受の前記凹状面(117)と、前記摺動軸受の前記凸状面(116)との間の前記圧力チャンバである、請求項
1~4のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項6】
前記第1の軸受流体供給ライン(112)は、前記枢動軸受の前記凹状面(117)の凹部(119)の中に通じており、前記枢動軸受の前記封止部(110)は前記凹部(119)を囲む、請求項
5に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項7】
前記スロットの各側において、前記ロータ本体(101)は、前記摺動軸受の前記凸状面(116)に面した円筒形のロータ本体の凹状面(120)を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項8】
前記ロータ本体の凹状面(120)及び前記枢動軸受の前記凹状面(117)は近接している、請求項
7に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項9】
前記ロータ本体の凹状面(120)及び前記枢動軸受の前記凹状面(117)は、ロータ本体の封止部(111)によって離されている、請求項
7または
8に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項10】
前記スロットの各側において、
前記摺動軸受本体(105)は、底部(23)及び前記スロット(13)に向かう開口部(22)を伴うシリンダ(21)を形成する、窪みを有し、
前記第2の軸受流体供給ライン(113)は、前記摺動軸受の前記凸状面(116)と前記シリンダ(21)との間に延び、
底部(31)を伴うプランジャ(29)は、前記シリンダ(21)に受け入れられ、
前記摺動軸受の平坦面を形成する面(115)を伴う摺動軸受パッド(27)は、前記プランジャ(29)に接続されるか、または一体化され、
軸受流体チャネル(32)は、前記プランジャ(29)の開口部(33)と、前記摺動軸受の前記平坦面(115)との間に延び、
前記第1の軸受流体供給ライン(112)は、フロー制限部(25)を有し、
回転中に、
プロセス流体の圧力変化は、前記ベーン(12)にかかる接線力を変化させ、前記ベーンを前記摺動軸受パッド(27、27’)に向けて、及び前記摺動軸受パッド(27、27’)から離れるよう傾け、
前記ベーン(12)が前記摺動軸受パッド(27)に向けて傾けられたとき、前記ベーン(12)は、前記摺動軸受パッド(27)及び前記プランジャ(29)を前記シリンダの前記底部(23)に向けて押しやり、それが前記シリンダ(21)内の軸受流体圧を増加させ、前記第1の軸受流体供給ライン(112)の前記フロー制限部(25)は、軸受流体が前記
第1の軸受流体供給部(36)に戻るのを制限し、それによって前記シリンダ(21)内の軸受流体圧を維持し、軸受流体は、前記シリンダ(21)から前記軸受流体チャネル(32)を通って、摺動軸受パッド面(28、115)及び摺動軸受流体膜に流れ、
前記ベーン(12)が前記摺動軸受パッド(27’)から離れるよう傾けられたとき、供給圧の軸受流体は、前記第1の軸受流体供給ライン(112’)から、前記枢動軸受の凹状面(117’、119’)に流れ、さらに、前記第2の軸受流体供給ライン(113’)を通って前記シリンダ(21’)に流れ、それが前記プランジャ(29’)及び前記
摺動軸受パッド(27’)を前記ベーン(12)に向けて押しやり、同時に軸受流体は、前記シリンダ(21’)から前記軸受流体チャネル(32’)を通って、前記摺動軸受パッド面(28’、115’)及び前記摺動軸受流体膜に流れる、請求項1~
9のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項11】
前記プランジャの前記底部(31)の面積は、前記摺動軸受パッド(27)の有効面積よりも小さい、請求項
10に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項12】
前記摺動軸受の前記平坦面(115)の有効面積と、前記枢動軸受の
封止部(110)によって画定された面積との間の差は、最大25%である、請求項
10または11のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項13】
前記プランジャ(29’)の前記底部(31)の面積と、前記枢動軸受の
封止部(110)によって画定された面積との間の差は、最大25%である、請求項
10~12のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【請求項14】
前記スロット(13)の反対側の前記摺動軸受パッド(27、27’)は、前記ベーンによって不均等に荷重がかけられ、大きく荷重がかけられる前記スロット(13)の側における、前記第1の軸受流体供給ラインの前記
フロー制限部(25、25’)は、チェック弁を備え、その一方で、小さい荷重をかけられる側における前記第1の軸受流体供給ラインの前記
フロー制限部(25、25’)は、チェック弁を備えない、請求項
10~13のうちいずれか一項に記載の回転式摺動ベーン機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体処理のための回転式摺動ベーン機械に関し、プロセス流体のための入口及び出口を伴う空洞を形成する円筒形の内壁を有するハウジング;空洞内の、偏心したロータ軸の周りの回転方向に回転可能なロータであって、このロータの外面とハウジングの内壁との間の距離が回転方向で変化する、ロータ;空洞の中心軸周りに回転可能で、ロータにおいて外側に方向付けられたスロットを通ってハウジングの内壁に延びた、ベーン;を備える。回転中に、このベーンとロータとは相対的に動く。
【背景技術】
【0002】
ベーン、ロータの外面、及びハウジングの内壁の間で、閉じられた空間が画定される。ロータの外面と壁との間の距離は、回転方向で変化するので、閉じられた空間の容積もまた、回転方向で変化する。動作中、これらの空間はプロセス流体で満たされる。入口及び出口の位置及び形状は、入口から出口へのプロセス流体のフローをもたらすよう適合される。
【0003】
空洞の両端は端部キャップによって閉じられ、ロータ及びベーンは、空洞全体で軸方向に延びる。回転式摺動ベーン機械の実際の使用の要件によって、ベーンの外縁部、ベーンの側部及びロータの側部の両方には、封止部が設けられ得る。
【0004】
ロータは、外部の駆動機によって駆動され得る。次に、ロータはベーンを駆動し、ベーンはプロセス流体を動かす。この場合、プロセス流体が液体であるとき、回転式ベーン機械はポンプとして働き、プロセス流体が気体、または液体と気体との混合の2相であるとき、回転式ベーン機械は圧縮機として働く。他の使用において、プロセス流体はベーンを駆動し、それによって外部の仕事ができるロータを駆動し得る。この場合、プロセス流体が液体であるとき、回転式ベーン機械はハイドロモータとして働き、プロセス流体が気体または2相であるとき、回転式ベーン機械は膨張機として働く。
【0005】
米国特許第3130673号明細書は、ベーンがそれらのスロットの中で自由に摺動し、それによって回転中に遠心力によってロータの内壁にもたれかかる、回転式ベーンポンプを記載している。加えて、ポンプ内の圧力はベーンの内側に作用して、内壁にベーンを押しやる。
【0006】
英国特許出願公開第190621345号明細書は、円筒形空洞と、この空洞の中心に位置された心棒の周りに、独立して回転可能な2つのベーンとを有するケーシングを伴う、回転式ベーンポンプを記載している。これらのベーンは、空洞の内径と等しい延長を有する。円筒形の壁を伴う駆動ロータは、ケーシングの中で偏心的に位置され、心棒は壁の内側にある。これらのベーンは、正反対の位置にある2つの開口部において、ロータの壁を通過する。回転中、ロータは、心棒の周りにベーンを回転駆動する。心棒及びロータを駆動するためのシャフトは、空洞の中に反対の両側から延びる。このように、回転中に心棒はロータに干渉せず、シャフトはベーンに干渉しない。
【0007】
国際公開第09943926号は、空洞を有するハウジングと、ハウジングに受け入れられ、ロータ軸及び周縁面を有するロータと、上記の空洞と連通した入口及び出口通路と、ロータにおけるスロットに摺動可能に径方向に受け入れられ、各々がハウジングの内側からロータ軸に径方向に延びた、1つまたは複数のベーンと、空洞の一部であり、ハウジングの内側、ロータの周縁面、及び少なくとも1つのベーンの側面によって画定された、少なくとも1つの作業チャンバと、を備えた回転式ピストン機械を記載している。各ベーンは、軸回りで制御アームの一方の端部に関節式に接続され、他方の端部は、ハウジングの空洞を通って中央に延びた軸に一致した中心軸を有する、固定アクスルシャフトに枢動可能に軸支されている。この軸は、ロータ軸と平行かつ離隔されて延び、ロータは、パワー出力またはパワー入力のためのユニットを、適切に構築する。
【0008】
米国特許第3130673号明細書は、自由に摺動するベーンを伴う回転式摺動ベーン機械を記載しており、一方で英国特許出願公開第190621345号明細書及び国際公開第09943926号は、誘導されたベーンを伴う回転式摺動ベーン機械を記載している。高性能の回転式摺動ベーン機械のために、自由に摺動するベーンには誘導されたベーンが好ましい。なぜなら、誘導されたベーンは、ベーンを過度に摩耗させることなくベーン同士の間の封止をもたらすのを容易にするからである。英国特許出願公開第190621345号明細書の回転式摺動ベーン機械は、低圧機械であり、高い性能のためには好適ではない。国際公開第09943926号の回転式摺動ベーン機械は高い性能のためには好適である。この機械において、ベーンは枢動及び摺動の両方で誘導される。しかし、より小型で、より複雑性の少ない設計が好ましい。
【0009】
全ての回転式摺動ベーン機械について、圧力は入口から出口まで変化する。その結果、ベーンの両側で様々な異なる圧力が存在し、それは、ベーンに作用する接線力の変化を生じさせる。通常は、回転中に接線力の方向の変化も生じる。
【0010】
各ベーンに作用する接線力は、ベーンに曲げモーメントを発生させる。接線力及び曲げモーメントは、スロット内でベーンに作用する力によって吸収される。接線力及び曲げモーメントはまた、スリット内でベーンを傾ける。接線力は回転中に方向を変えるので、ベーンはスロット内で前後に傾けられる。慣性力によって生じる動的力も生じ、ベーンに作用する。
【0011】
スロット内の力は、スロット内のベーンが摺動する間に摩擦を増加させ、それが摺動を減少させ、かつベーンの摩耗を増加させ得る。摩擦を軽減させる1つの方法は、摺動軸受を使用することである。摺動軸受は、乾燥した固体で潤滑するか、液体潤滑剤で潤滑するか、またはプロセス流体で潤滑するか、のいずれかとすることができる。
【0012】
スロット内のベーンを潤滑する1つの方法は、動圧軸受、すなわちベーンの動きによって、パッドとベーンとの間で潤滑剤の膜が構築される、軸受パッドを有する軸受を使用することである。しかし、ベーンの運動方向の連続的な変化は、潤滑剤の十分な厚さの膜を構築するのを妨げるので、動圧軸受は常に好適とはならない。
【0013】
多くの設備において、プロセス流体を汚染しないよう、液体のプロセス流体以外の潤滑剤は望ましくない場合がある。例として、回転式摺動ベーン機械を、電力発電における蒸気膨張機として、または産業プロセスの熱ポンプにおける圧縮機として使用することが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第3130673号明細書
【文献】英国特許出願公開第190621345号明細書
【文献】国際公開第09943926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、小型設計の誘導されたベーンを伴う、高性能の回転式摺動ベーン機械を提供することである。本発明の別の目的は、設計が、組み立て及び保守に対して効率的かつ好ましい、潤滑されたベーンを伴う回転式摺動ベーン機械を提供することである。さらに別の目的は、本発明が、従来技術の代替を少なくとも提供することである。
【0016】
本発明の別の特徴、利点、及び目的、ならびに、いかにしてそれらを実現させるかは、説明、図面、及び特許請求の範囲から明白になろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって本発明は、流体処理のための回転式摺動ベーン機械に関し、この回転式摺動ベーン機械は、
-プロセス流体のための入口及び出口を有する空洞を形成する円筒形の内壁を伴う、ハウジングと、
-空洞の偏心したロータ軸の周りの回転方向で回転可能なロータであって、このロータの外面とハウジングの内壁との間の距離が回転方向で変化する、ロータと、
-空洞の中心軸周りに回転可能で、ロータにおいて外側に方向付けられたスロットを通してハウジングの内壁まで延びたベーンであって、回転中にこのベーンとロータとの間で相対的な運動が生じる、ベーンと
を備える。
【0018】
本発明によると、ロータは、ロータ本体、及びベーン軸受装置を備え、各ベーン軸受装置は、
-ベーンのためのスロットを伴う摺動軸受本体であって、スロットの各側において、スロットに面した平坦面を有し、ベーンのための摺動軸受を形成して、スロットの各側において、スロットから離れて面した円筒形の凸状面をさらに有し、スロットの反対側における円筒形の凸状面は、ロータ軸に平行な共通軸を有する、摺動軸受本体と、
-ロータ本体に装着されるか、またはロータ本体と一体化された枢動軸受パッドであって、摺動軸受の凸状面に面した円筒形の凹状面を有し、ベーンのための枢動軸受を形成し、枢動軸受の軸を形成する摺動軸受の凸状面の軸を伴う、スロットの各側における枢動軸受パッドと、
-第1の軸受流体供給部と摺動軸受の凹状面との間の、スロットの各側における第1の軸受流体供給ラインと、
-軸受流体を摺動軸受の平坦面とベーンとの間の軸受流体膜に供給するための、第2の軸受流体供給部と摺動軸受の平坦面との間の、スロットの各側における第2の軸受流体供給ラインと
を備える。
【0019】
回転式摺動ベーン機械の1つの実施形態では、スロットの各側において、摺動軸受本体はシリンダを形成する窪みを有する。プランジャはこのシリンダ内に受け入れられ、軸受流体は枢動軸受に供給され、シリンダを通って、プランジャに接続されるかまたはプランジャと一体化された摺動軸受パッドに供給される。プランジャは、動作中にシリンダ内で動き、これは、ベーン軸受装置に軸受流体圧の増加をもたらし、ベーンに適合させる。
【0020】
ベーンの数は、実際の設計に依拠するが、通常は2~10個である。
【0021】
ベーン軸受装置は、ロータの一部である。ベーン軸受装置を、ロータの残り部分と区別するために、ロータの残り部分はロータ本体と表わす。
【0022】
次に本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による回転式摺動ベーン機械の断面図である。
【
図2】本発明による回転式摺動ベーン機械の、ベーン軸受装置を示す断面図である。
【
図3】
図2のベーン軸受装置の代替を示す断面図である。
【
図4】本発明による回転式摺動ベーン機械の、ベーンにぶつかる力を示す断面図である。
【
図5】
図1のベーン軸受装置の、より詳細な断面図である。
【
図6】本発明による回転式摺動ベーン機械の、ベーン軸受装置の切り取り斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による回転式摺動ベーン機械1の、軸方向から見た断面図である。ハウジング2は、空洞軸43を伴う円筒形の空洞4を形成する内壁3を有する。入口チャネル6は、プロセス流体の入口5から空洞4に延び、出口チャネル8は、空洞4からプロセス流体の出口7に延びる。固定心棒10は、空洞4の中心に位置される。6つのベーン12が、フランジ104及び図示されていないボルトを介して、対応する心棒リング103に堅固に接続される。心棒リング103は、心棒10の周りに独立して回転可能である。この配置によって、ベーン12は、空洞軸43の周りを独立して回転可能である。最前の心棒リング103のみが視認できる。
【0025】
円筒形のロータ9は、図示されていない軸支されたシャフトに接続され、方向11でロータ軸42の周りを、空洞4内で偏心的に回転する。ロータ9は、ロータ本体101及びベーン軸受装置102を備える。ベーン12は、心棒10から径方向に、ベーン軸受装置102の径方向スロット13を通って、ハウジングの内壁3に延びる。ベーン封止部107は、壁3に対して封止する。
【0026】
ロータ9の偏心のため、ロータ9の外面14とハウジング2の内壁3との間の距離は、回転方向11で変化する。空間15は、ベーン12と、壁3と、ロータの外面14との間に形成される。面14と壁3との間の距離が、回転方向で変化するため、空間15の容積も、回転方向11で変化する。回転式摺動ベーン機械の使用中、空間15はプロセス流体で満たされる。空間15の可変容積は、プロセス流体のネットフローが入口5から出口7までであることを保証する。入口5において、空間15は入口圧を有し、その一方で、出口7において、空間15は出口圧を有する。したがって、空間15の圧力はロータ9の周りで変化する。
【0027】
ロータ9が空洞内4に偏心的に取り付けられているため、回転中にベーン12とロータ9との間で、相対的な角運動及び径方向運動が生じる。すなわち、
図1の異なるベーン12の間の比較から判るように、回転中に、ベーン12とベーン軸受装置102との間では、出入りする摺動及び前後の枢動の両方が生じる。
【0028】
図2は、
図1の頂部のベーン軸受装置102と同じ位置にある、ロータ本体101及びベーン軸受装置102の、より簡単な実施形態を示す断面図である。
【0029】
図2のベーン軸受装置102は、左部105及び右部105’を有する摺動軸受本体を備える。摺動軸受本体105、105’は円筒形であり、スロット13が、ロータ軸42に平行である長手方向に延びる。ベーン12は、スロットの全延長でスロット13を通過して延びる。両端部(
図2には示されず)において、摺動軸受本体105、105’は、スロット13を越えて延びる。ベーン軸受装置は、スロット13の両側に位置された、2つの同一の半体を備える。左側及び右側の対応する要素は、同じ数字で、右側の数字にはダッシュをつけて表わす。説明を簡略化するため、左側に焦点を当て、右側は必要に応じて説明する。
【0030】
摺動軸受本体105は、スロット13に面した平坦面115を有し、ベーン12のための摺動軸受を形成する。摺動軸受本体105は、スロット13から離れて面した円筒形の凸状面116をさらに有する。摺動軸受本体の2つの円筒形の凸状面116、116’は、ロータ軸42に平行な共通軸118を有する。
【0031】
図2のベーン軸受装置102は、クランプ109によってロータ本体101に装着された枢動軸受パッド106を、さらに備える。代替として、枢動軸受パッド106は、ロータ本体101と一体化され得る。枢動軸受パッド106は、摺動軸受の凸状面116に面した、円筒形の凹状面117を有する。2つの枢動軸受の凹状面117、117’は、摺動軸受の凸状面116、116’を囲み、それらは共に、枢動軸受軸としての軸118を伴う、ベーン12のための枢動軸受を形成する。
【0032】
第1の軸受流体供給ライン112は、第1の軸受流体フィードライン36からロータ本体101の開口部121に延び、さらに枢動軸受パッド106の開口部122を通って、枢動軸受の凹状面117の開口部に延び、軸受流体を、枢動軸受の凹状面117と摺動軸受の凸状面116との間に供給する。封止部114は、ロータ本体101と枢動軸受パッド106との間に、軸受流体の漏洩がないことを保証する。
【0033】
第2の軸受流体供給ライン113は、第2の軸受流体フィードライン39から摺動軸受の平坦面115に延び、軸受流体を、摺動軸受の平坦面115とベーン12との間の軸受流体膜に供給する。
【0034】
図3は、
図2のベーン軸受装置の代替を示す。ここで、第2の軸受流体フィードライン39は省かれており、第2軸受流体供給ライン113が、枢動軸受の凹状面117と摺動軸受の凸状面116との間の入口125から延び、軸受流体を、摺動軸受の平坦面115とベーン12との間の軸受流体膜に供給する。
【0035】
第1の軸受流体フィードライン36、及び第2の軸受流体フィードライン39(含まれる場合)は、ロータ9の軸方向に延びる。これは、軸受流体を静圧軸受に送るチャネル、穴、または管の、枝分かれしたネットワークの一部である。軸受流体は、固定供給部から送られ、固定部分及び回転部分を介して回転中のロータに送られ、それらの間を封止する。
【0036】
図2及び
図3は、ベーンのフランジ104と心棒リング103との間の、ボルト108による接続も示す。
【0037】
ベーン軸受装置102のさらなる説明の前に、
図4を参照する。
図4は、
図2及び
図3のベーンにぶつかる力、及びいかにしてこれらの力が吸収されるかを示す、簡略化した断面図である。
図1を参照すると、ベーン12の左側における空間15’は圧力p
1を有し、ベーン12における右側の空間15’’は、p
1よりも大きい圧力p
2を有している。したがって、ベーン12の両側で差圧が存在する。差圧の力は、差圧と、差圧にさらされるベーンの面積との積に等しい大きさを有する、接線合力Rによって表わすことができる。接線力R及びRによって発生した曲げモーメントは、摺動軸受本体105からの反力F
1と、心棒10からのより小さい反力F
2とによって、スロット13内で吸収される。F
1はRの反対に向けられ、一方でF
2はRと同じ方向に向けられる。F
1は、力F
3として枢動軸受パッド106によって吸収され、ロータ本体101に移動される。
【0038】
釣り合いにより、
F1=F2+R
及び
F1=F3 である。
【0039】
空間15’、15’’における圧力は回転中に変化するので、ベーン12の両側の差圧も回転中に変化する。さらに、ロータの外側14とハウジングの内壁3との間の距離が回転中に変化するので、差圧にさらされるベーン12の面積も変化する。したがって、接線力Rは回転中に変化する。通常、回転中に差圧は方向を変えるので、接線力Rも方向を変える。接線力Rが変化し、かつ方向を変えるとき、力F1、F2、及びF3も変化し、かつ方向を変える。差圧による力に加えて、振動、求心加速度、コリオリ力、及び他の慣性力によって生じる動的力も存在し、ベーン12と摺動軸受と枢動軸受との間の力に寄与する。
【0040】
図2及び
図3をさらに参照すると、回転式摺動ベーン機械の動作中、供給圧の軸受流体は、第1の軸受流体フィードライン36から、第1の軸受流体供給ライン112を通って、枢動軸受の凹状面117に流れる。そこで軸受流体は、枢動軸受の凹状面117と摺動軸受の凸状面116との間に分配される。
図2のベーン軸受装置において、供給圧の軸受流体は、第2の軸受流体フィードライン39から、第2の軸受流体供給ライン113を通って、摺動軸受の平坦面115にも流れる。そこで軸受流体は、摺動軸受平坦面115とベーン12との間に分配され、摺動軸受流体膜を形成する。第2の軸受流体フィードラインが存在しない、
図3の代替のベーン軸受装置において、いくらかの軸受流体は、枢動軸受の凹状面117と摺動軸受の凸状面116の間の領域から、入口125に入り、第2の軸受流体供給ライン113を通って、摺動軸受の平坦面115に流れる。そこで軸受流体は、摺動軸受の平坦面115とベーン12との間に分配され、摺動軸受流体膜を形成する。
【0041】
摺動軸受において、軸受パッド115の縁部では、軸受流体は軸受流体膜からスロット13の中に漏洩し、最終的に空洞における空間15’に入り、そこでプロセス流体と混ざる。この理由のため、摺動軸受の圧力、したがって摺動軸受の軸受力は、その縁部に向けて減少される。
【0042】
枢動軸受において、
図2及び
図3は、枢動軸受の封止部110が、第1の軸受流体供給ライン112の端部を、枢動軸受の凹状面117において囲む実施形態を示す。枢動軸受の封止部110は、軸受流体が、枢動軸受からスロット13の中にほとんど漏洩しない効果を有する。枢動軸受の封止部110、枢動軸受の凹状面117、及び摺動軸受の凸状面116は、圧力チャンバを画定し、圧力チャンバの中では、圧力が、枢動軸受の封止部110によって画定された領域全体で維持される。この圧力チャンバは、枢動軸受の凹状面117と摺動軸受の凸状面116との間に、液圧力の移動をもたらす。
【0043】
枢動軸受の封止部110は省かれてもよい。その場合、枢動軸受の凹状面117と摺動軸受の凸状面116との間の軸受流体は、通常の静圧軸受におけるような膜を形成することになり、その縁部において軸受流体は漏洩し、圧力は縁部に向けて減少する。
【0044】
スロット13の各側において、ロータ本体101は、摺動軸受の凸状面116に面した、円筒形のロータ本体の凹状面120を有する。ロータ本体の凹状面120及び枢動軸受の凹状面117は、隣接しており、ロータ本体の封止部111によって離されている。
【0045】
回転式摺動ベーン機械の動作中に、スロット13内のベーンが前後に枢動する間、ベーン、摺動軸受、及び枢動軸受に関する力は、枢動軸受の封止部110とロータ本体の封止部111とによって画定された領域に作用し得ることが判っている。ロータ本体の封止部111は、枢動軸受の封止部110から、少なくともいくらか漏洩する軸受流体がこの領域にとどまり、この領域を潤滑することを保証する。さらに、例えば予測できない圧力または振動などによる極限の条件下に、力はロータ本体の封止部111を越えて作用し、次に摺動軸受の凸状面116は、ロータ本体の凹状面120に荷重をかける。このように、ロータ本体の凹状面120は、静圧枢動軸受のためのバックアップを形成する。
【0046】
一般的に、表面と流体との間に作用する力は、流体の圧力と表面積との積に等しい。しかし、静圧軸受パッドについて、軸受流体膜圧は面積にわたって変化し、軸受パッドの縁部において最も低い。力の計算を簡略化するため、一定の軸受流体膜の圧力、及び軸受パッドの有効面積を想定する。有効面積は通常、軸受パッドの面積の60~80%である。
【0047】
図4及び上記の力の説明を参照すると、摺動軸受本体105すなわち摺動軸受の平坦面115からの力F
1は、枢動軸受パッド106からの力F
3と等しい。ベーン軸受装置102の円滑な動作を保証するために、摺動軸受の平坦面115の有効面積と、枢動軸受の封止部110によって画定された面積との間の差は、最大25%とするのが望ましいことが判っている。
【0048】
図5は、本発明による別のベーン軸受装置を示す、より詳細な断面図であり、
図1の頂部ベーン12のためのベーン軸受装置102に相当する。
図5のベーン軸受装置102は、
図2及び
図3のベーン軸受装置102と多くの類似点を有し、同様のアイテムは、
図5の理解のために必要に応じてのみ説明する。
【0049】
スロット13の両側の要素は同一である。左側及び右側の対応する要素は、同じ数字で、右側の数字にはダッシュをつけて表わす。スロット13の両側の要素は、必要なときのみ説明する。
【0050】
摺動軸受本体105は窪みを有し、底部23及びスロット13に向かう開口部22を伴うシリンダ21を形成する。第2の軸受流体供給ライン113は、摺動軸受本体105の穴によって形成され、摺動軸受の凸状面116の入口125からシリンダ21に延びる。底部31を有するプランジャ29は、シリンダ21内に受け入れられ、Oリング35が、プランジャ29とシリンダ21との間を封止する。凹部28を有する摺動軸受パッド27、及び摺動軸受の平坦面を形成する面115は、プランジャ29と一体化され、シリンダ21の拡張部44に受け入れられる。代替として、摺動軸受パッド27及びプランジャ29を別のアイテムとしてもよく、例えばねじ切り加工によって機械的に接続させることができる。凹部28は、軸受流体を、摺動軸受パッドの平坦面115とベーン12との間の摺動軸受流体膜に分配するのを容易にする。このように凹部28は好ましいが、省かれてもよい。軸受流体チャネル32は、プランジャ底部31の開口部33と、摺動軸受パッドの凹部28との間に延びる。代替として、凹部28が省かれた場合、軸受流体チャネル32は、摺動軸受パッドの平坦面115において開口部を有する。
【0051】
交換可能な挿入部48’は、プランジャ29’のねじ接続部38’の中にねじで留められる。挿入部48’は軸受流体チャネル32’を提供し、軸受流体チャネル32’の締め付けによって形成されたフロー制限部34’を有する。挿入部48’は、挿入及び取り外しを可能にするために、六角レンチなどの好適なレンチと嵌合する、内部ねじ駆動部40’も有する。挿入部48’は、異なる動作条件への適合のために、異なるフロー制限部を用いて作ることができる。
【0052】
枢動軸受パッド106は、その凹状面117に凹部119を有し、凹部119は枢動軸受の封止部110によって囲まれる。凹部119は、枢動軸受の凹状面117と摺動軸受の凸状面116との間における、軸受流体の分配を容易にする。このように凹部119は好ましいが、省かれてよい。
【0053】
さらに
図5を参照すると、回転中のプロセス流体の圧力変化は、
図4を参照して説明したように、ベーン12にかかる接線力を変化させる。これらの接線力は、ベーン12を僅かに前後に、摺動軸受パッド27、27’に向けて、及び離れるようにスロット13内で傾ける。ベーン12が、左側の摺動軸受パッド27に向けて傾けられたとき、左側の摺動軸受流体膜の圧力を増加させ、それは次に、左の摺動軸受パッド27及び左のプランジャ29を、左のシリンダ底部23に向けて押しやる。これは、左のシリンダ21内の軸受流体圧を増加させ、この圧力は、枢動軸受の封止部110と、枢動軸受の凹状面117と、摺動軸受の凸状面116とによって画定された、左の圧力チャンバへの伝搬を増加させる。左の第1の軸受流体供給ライン112は、締め付けによって形成されたフロー制限部25を有し、これは、軸受流体が左の第1の軸受流体フィードライン36に戻るのを制限する。これは、枢動軸受の封止部110、枢動軸受の凹状面117及び摺動軸受の凸状面116、ならびに左のシリンダ21によって画定された、左の圧力チャンバの、軸受流体圧を維持する。それによって、増加された圧力を伴う軸受流体は、左のシリンダ21から、左の軸受流体チャネル32を通って、左の摺動軸受パッドの平坦面115の凹部28及び左の摺動軸受流体膜に流れる。これは、流体を左のシリンダ21から取り除き、その結果摺動軸受流体膜は、左の摺動軸受パッド27を左のシリンダ21に向けてさらに押し込み、かつ左のプランジャ29を左のシリンダ21の中にさらに押し込む。これは、ベーン12が別の方向に傾けられるまで続く。
【0054】
同時に、ベーン12は右側の軸受パッド27’から離れるよう傾けられ、右側の軸受流体膜の圧力を減少させる。この圧力減少は、右の軸受流体チャネル32’を通って右のシリンダ21’に伝搬し、さらに、枢動軸受の封止部110’、枢動軸受の凹状面117’、及び摺動軸受の凸状面116’によって画定された、右の圧力チャンバに伝搬する。減少した圧力は、供給圧の軸受流体を、右の第1の軸受流体供給ライン112’から右の枢動軸受の凹状面117’の凹部119’に流し、さらに、右の第2の軸受流体供給ライン113’を通って右のシリンダ21’に流す。右のシリンダ21’の軸受流体は、右のプランジャ及び右の軸受パッド27’を、ベーン12に向けて外側に押しやる。同時に、右の摺動軸受流体膜の圧力減少のため、軸受流体は、右のシリンダ21’から、右の軸受流体チャネル32’を通って、右の摺動軸受パッドの平坦面115’の凹部28’及び右の摺動軸受流体膜に流れる。これは、右のシリンダ21’内の圧力を減少させ、その結果供給圧のより多くの軸受流体が、右の第2の軸受流体供給ライン113’及び右の第1の軸受流体供給ライン112’から、右のシリンダ21’に入る。これは、ベーン12が別の方向に傾けられるまで続く。
【0055】
したがって、ベーン12が左の軸受パッド27を左に押しやると、右の軸受パッド27’もベーン12に向けて左に動き、その逆も成り立つ。このように、軸受パッド27、27’の位置は、ベーン12の位置に適合され、同時にベーン12の摺動を可能にする軸受流体膜は維持される。特に有利なのは、軸受パッド27、27’が、それらの位置を、静圧軸受、ベーン、及びスロットを形成するアイテムの、製造偏差及び熱変形に適合させることである。
【0056】
凹部28及び119は、軸受流体のリザーバを形成し、それはベーン軸受装置102の様々な部分の動きを円滑にする。
【0057】
軸受流体チャネル32の制限部34、及び第1の軸受流体供給ライン112の制限部25は、軸受流体のフローを遅延させ、軸受流体圧の伝搬を減少させる。示された締め付けはフローレデューサの例であるが、任意のタイプのフローレデューサを使用することができる。これらの制限部は、別個のフローリストリクタであるが、流体ライン自体によって形成することもでき、それは流体ラインの径、形状、及び延長と相関する。制限部25は、代替としてチェック弁としてもよい。
【0058】
いくつかの動作条件において、スロット13の両側の摺動軸受パッド27、27’は、ベーン12によって不均等に荷重をかけられる。このような動作条件の間、大きい荷重をかけられるスロット13の側における、第1の軸受流体供給ライン112、112’の制限部25、25’は、チェック弁を備え、その一方で小さい荷重をかけられるスロット13の側における制限部25、25’は、チェック弁は備えないことが好ましいことが判っている。
【0059】
プランジャ29及び摺動軸受パッド27を介した好ましい力の移動を保証するために、好ましくは、プランジャ底部31の面積は、摺動軸受パッド27の有効面積よりも小さいことが望ましいことが判っている。さらに、プランジャ29及び枢動軸受パッド106を介した好ましい力の移動を保証するために、好ましくは、プランジャ底部31の面積と、枢動軸受の封止部110によって画定された面積との間の差は、最大25%であることが望ましいことが判っている。
【0060】
通常、回転スピードは500~3600rpmである。プロセス流体圧は、通常1~16バールである。軸受流体供給圧は、プロセス流体圧より高くなければならず、通常は10~40バールである。
【0061】
図6は、本発明による回転式摺動ベーン機械の、ベーン軸受装置の実施形態の切り取り斜視図である。ハウジング及びほとんどのロータ本体は除かれている。ベーン12は、凸状面116を伴う摺動軸受本体105のスロット13に配置される。摺動軸受本体105の両端は、スロット13及びベーン12を越えて延び、枢動軸受の端部123によって支持される。枢動軸受の端部123は、ロータ本体の一部である、空洞の端部キャップ124によって支持される。
図6において、左の端部キャップは除かれているので、左の枢動軸受の端部123は視認できる。右の端部キャップ124は所定の位置にあり、右の枢動軸受の端部を隠している。
【0062】
枢動軸受パッドは除かれている。第2の軸受流体供給ラインへの入口125の列は、摺動軸受の凸状面116に配置される。
【0063】
ロータ本体のベーン12からの荷重の少なくとも80%は、ベーン軸受装置102を介して移動され、残りは、枢動軸受の端部123を介して移動され得ることが判っている。ベーン軸受装置を介して移動された、この大きい荷重の部分は、非常に有利である。なぜなら、枢動軸受の端部123の必要なサイズを減少させるからである。さらに、摺動軸受本体105の延長に沿った支持は、摺動軸受本体105のたわみを減少させる。
【0064】
図6はさらに、ベーン封止部107、心棒10、ベーンのフランジ104、及びそれらの、ボルト108による心棒リング103への接続を示す。隣接する心棒リング103’、103’’、103’’’は、図示されないベーンのためのものである。105’は、隣接するベーン軸受装置の摺動軸受本体を表わし、107’は、そのベーンのためのベーン封止部を表わす。