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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】杭施工方法および杭計測装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20230405BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
E02D13/06
G01C15/00 102C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022197814
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2022-12-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522051797
【氏名又は名称】株式会社DAチャレンジャーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 実
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直史
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第114170320(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第115233678(CN,A)
【文献】特開2021-071288(JP,A)
【文献】国際公開第2014/200043(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/06
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS衛星(S)からの信号を受信する固定局(14)を設置する固定局設置工程と、
杭(P)を施工する敷地(G)の現場座標系での座標が既知の第1の地点にGNSS衛星(S)からの信号を受信する移動局(15)を設置し、その移動局(15)が受信するGNSS衛星(S)からの信号と、前記固定局(14)が受信するGNSS衛星(S)からの信号とに基づいて、前記第1の地点の前記固定局(14)に対する公共座標系での相対位置を測位する第1の相対測位工程と、
前記敷地(G)の現場座標系での座標が既知の第2の地点に前記移動局(15)を設置し、その移動局(15)が受信するGNSS衛星(S)からの信号と、前記固定局(14)が受信するGNSS衛星(S)からの信号とに基づいて、前記第2の地点の前記固定局(14)に対する公共座標系での相対位置を測位する第2の相対測位工程と、
前記第1の相対測位工程で得た前記第1の地点の前記固定局(14)に対する公共座標系での相対位置と、前記第2の相対測位工程で得た前記第2の地点の前記固定局(14)に対する公共座標系での相対位置と、前記第1の地点および前記第2の地点の現場座標系での既知の各座標とに基づいて、前記固定局(14)に対する公共座標系での相対位置と現場座標系での座標との対応関係を設定する対応関係設定工程と、
本体フレーム(5)と、前記本体フレーム(5)にそれぞれ取り付けられた第1のGNSSアンテナ(2)と第2のGNSSアンテナ(3)とレーザープロファイラー(4)とを有し、前記第1のGNSSアンテナ(2)と前記第2のGNSSアンテナ(3)が、GNSS衛星(S)からの信号を水平方向に所定の間隔をおいた2箇所で受信するように前記本体フレーム(5)に取り付けられている杭計測装置(1)を、前記敷地(G)の設計上の杭(P)の中心位置となる地点(O)の近傍に設置する杭計測装置設置工程と、
前記敷地(G)に杭(P)を沈設する杭沈設工程と、
前記第1のGNSSアンテナ(2)および前記第2のGNSSアンテナ(3)がそれぞれ受信するGNSS衛星(S)からの信号と、前記固定局(14)が受信するGNSS衛星(S)からの信号とに基づいて、第1のGNSSアンテナ(2)および前記第2のGNSSアンテナ(3)の前記固定局(14)に対する公共座標系での各相対位置を測位するGNSSアンテナ測位工程と、
前記レーザープロファイラー(4)からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設中の前記杭(P)の外周からの反射光に基づいて、沈設中の前記杭(P)の中心の前記レーザープロファイラー(4)からの距離および方向を測定する杭心測定工程と、
前記GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナ(2)および前記第2のGNSSアンテナ(3)の前記固定局(14)に対する公共座標系での各相対位置と、前記対応関係設定工程で設定した前記対応関係と、前記杭心測定工程で測定される沈設中の前記杭(P)の中心の前記レーザープロファイラー(4)からの距離および方向とに基づいて、沈設中の前記杭(P)の中心位置の現場座標系での座標を取得する杭心座標取得工程と、
前記杭心座標取得工程で取得される前記杭(P)の中心位置の現場座標系での座標に基づいて、沈設中の前記杭(P)の位置を逐次修正する杭心ずれ修正工程と、を有する杭施工方法。
【請求項2】
前記杭心ずれ修正工程で沈設中の杭(P)の位置を逐次修正するときに、前記杭心座標取得工程は、前記GNSSアンテナ測位工程で測位される前記第1のGNSSアンテナ(2)および前記第2のGNSSアンテナ(3)の前記固定局(14)に対する公共座標系での各相対位置と、前記杭心測定工程で測定される沈設中の前記杭(P)の中心の前記レーザープロファイラー(4)からの距離および方向とのうち、前者の情報は更新せずに固定し、後者の情報のみを逐次更新することで、沈設中の前記杭(P)の中心位置の現場座標系での座標を逐次更新する請求項1に記載の杭施工方法。
【請求項3】
前記杭心座標取得工程で取得される沈設中の前記杭(P)の中心位置の現場座標系での座標と、設計上の杭(P)の中心位置の現場座標系での座標との差をリアルタイムで表示するディスプレイ装置(13)を、杭施工重機のオペレータ室に設置し、前記杭施工重機のオペレータが、前記杭心ずれ修正工程において沈設中の前記杭(P)の位置修正を行なうときに前記ディスプレイ装置(13)を視認可能とした請求項1または2に記載の杭施工方法。
【請求項4】
前記杭沈設工程の前に、前記敷地(G)の設計上の杭(P)の中心位置となる地点(O)の上方に前記杭(P)を待機させる杭待機工程と、
前記レーザープロファイラー(4)からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設前の前記杭(P)の外周からの反射光に基づいて沈設前の前記杭(P)の中心の前記レーザープロファイラー(4)からの距離および方向を測定する沈設前杭心測定工程と、
前記GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナ(2)および前記第2のGNSSアンテナ(3)の前記固定局(14)に対する公共座標系での各相対位置と、前記対応関係設定工程で設定した前記対応関係と、前記沈設前杭心測定工程で測定される沈設前の前記杭(P)の中心の前記レーザープロファイラー(4)からの距離および方向とに基づいて、沈設前の前記杭(P)の中心位置の現場座標系での座標を取得する沈設前杭心座標取得工程と、
前記沈設前杭心座標取得工程で取得される沈設前の前記杭(P)の中心位置の現場座標系での座標と、あらかじめ設定された設計上の前記杭(P)の中心位置の現場座標系での座標とを比較し、両者の差がしきい値よりも大きいときは、沈設前の前記杭(P)の待機位置が誤っている旨の異常を報知する杭心間違い検知工程と、を更に有する請求項1または2に記載の杭施工方法。
【請求項5】
前記杭沈設工程の前に、前記敷地(G)の設計上の杭(P)の中心位置となる地点(O)の上方に前記杭(P)を待機させる杭待機工程と、
前記レーザープロファイラー(4)からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設前の前記杭(P)の外周からの反射光に基づいて沈設前の前記杭(P)の杭径を測定する杭径測定工程と、
前記杭径測定工程で測定した沈設前の前記杭(P)の杭径とあらかじめ設定された設計上の杭径とを比較し、両者の差がしきい値よりも大きいときは、沈設前の前記杭(P)の杭径が誤っている旨の異常を報知する杭径間違い検知工程と、を更に有する請求項1または2に記載の杭施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、沈設中の杭の中心位置を安定した精度をもって安全に管理することが可能な杭施工方法、およびその杭施工方法に使用する杭計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、敷地に杭を施工するに際しては、まず、準備工程として、杭を施工する敷地を測量し、その敷地の設計上の杭の中心位置となる地点に、目印としての杭心棒を打つ。また、その杭心棒から現場座標系のX方向とY方向とに所定距離だけ離れた地点に2本の逃げ棒を立てる(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
その後、杭の施工を行なう。このとき、杭を施工する位置にある杭心棒を地面から抜き取る必要があるが、杭心棒を地面から抜き取ると、設計上の杭の中心位置となる地点(杭心棒のあった地点)を直接確認することができなくなる。そのため、杭の施工を行なうに際しては、上記の2本の逃げ棒を用いて、杭の中心位置を管理する。
【0004】
例えば、地面に掘削孔を形成した後、その掘削孔に杭を沈設するときは、2本の逃げ棒から沈設中の杭の外周に向けて2本の検尺棒を水平に延ばし、その2本の検尺棒の先端をそれぞれ沈設中の杭の外周に当て、2本の逃げ棒から杭の外周までの距離が所定距離に一致するように(つまり沈設中の杭の中心位置が、設計上の杭の中心位置に近づくように)沈設中の杭の位置を逐次修正するという方法で、杭の中心位置を管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-174124号公報
【文献】特開2011-69074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のように、沈設中の杭の中心位置を管理するのに、2本の逃げ棒から沈設中の杭の外周に向けて2本の検尺棒を延ばす方法をとったのでは、以下の問題がある。
【0007】
すなわち、2本の逃げ棒から沈設中の杭の外周に向けて延ばした2本の検尺棒の先端を杭の外周に当てるときに、杭の外周に垂直に当てるのが難しく、検尺棒を担当する作業員によって、検尺棒の水平が保たれていなかったり、検尺棒が杭の外周に対して斜めに当たっていたりすることがある。そのため、沈設中の杭の中心位置を、安定した精度をもって管理するのが難しいという問題がある。
【0008】
また、沈設中の杭の外周に2本の検尺棒の先端を当てる作業は、2名の作業員が、杭施工重機の真下に入って行なう必要があるため、安全性の点でも問題がある。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、沈設中の杭の中心位置を安定した精度をもって安全に管理することが可能な杭施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明では、上記課題を解決するため、以下の構成の杭施工方法を提供する。
[構成1]
GNSS衛星からの信号を受信する固定局を設置する固定局設置工程と、
杭を施工する敷地の現場座標系での座標が既知の第1の地点にGNSS衛星からの信号を受信する移動局を設置し、その移動局が受信するGNSS衛星からの信号と、前記固定局が受信するGNSS衛星からの信号とに基づいて、前記第1の地点の前記固定局に対する公共座標系での相対位置を測位する第1の相対測位工程と、
前記敷地の現場座標系での座標が既知の第2の地点に前記移動局を設置し、その移動局が受信するGNSS衛星からの信号と、前記固定局が受信するGNSS衛星からの信号とに基づいて、前記第2の地点の前記固定局に対する公共座標系での相対位置を測位する第2の相対測位工程と、
前記第1の相対測位工程で得た前記第1の地点の前記固定局に対する公共座標系での相対位置と、前記第2の相対測位工程で得た前記第2の地点の前記固定局に対する公共座標系での相対位置と、前記第1の地点および前記第2の地点の現場座標系での既知の各座標とに基づいて、前記固定局に対する公共座標系での相対位置と現場座標系での座標との対応関係を設定する対応関係設定工程と、
本体フレームと、前記本体フレームにそれぞれ取り付けられた第1のGNSSアンテナと第2のGNSSアンテナとレーザープロファイラーとを有し、前記第1のGNSSアンテナと前記第2のGNSSアンテナが、GNSS衛星からの信号を水平方向に所定の間隔をおいた2箇所で受信するように前記本体フレームに取り付けられている杭計測装置を、前記敷地の設計上の杭の中心位置となる地点の近傍に設置する杭計測装置設置工程と、
前記敷地に杭を沈設する杭沈設工程と、
前記第1のGNSSアンテナおよび前記第2のGNSSアンテナがそれぞれ受信するGNSS衛星からの信号と、前記固定局が受信するGNSS衛星からの信号とに基づいて、第1のGNSSアンテナおよび前記第2のGNSSアンテナの前記固定局に対する公共座標系での各相対位置を測位するGNSSアンテナ測位工程と、
前記レーザープロファイラーからレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設中の前記杭の外周からの反射光に基づいて、沈設中の前記杭の中心の前記レーザープロファイラーからの距離および方向を測定する杭心測定工程と、
前記GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナおよび前記第2のGNSSアンテナの前記固定局に対する公共座標系での各相対位置と、前記対応関係設定工程で設定した前記対応関係と、前記杭心測定工程で測定される沈設中の前記杭の中心の前記レーザープロファイラーからの距離および方向とに基づいて、沈設中の前記杭の中心位置の現場座標系での座標を取得する杭心座標取得工程と、
前記杭心座標取得工程で取得される前記杭の中心位置の現場座標系での座標に基づいて、沈設中の前記杭の位置を逐次修正する杭心ずれ修正工程と、を有する杭施工方法。
【0011】
この構成を採用すると、第1のGNSSアンテナと第2のGNSSアンテナとレーザープロファイラーとを有する杭計測装置を使用するので、沈設中の杭の中心位置を、安定した精度をもって、安全に管理することが可能となる。すなわち、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点の近傍に杭計測装置を設置したとき、その杭計測装置の第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置は、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナがそれぞれ受信するGNSS衛星からの信号と、固定局が受信するGNSS衛星からの信号とに基づいて測位することができる(GNSSアンテナ測位工程)。ここで、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置は、対応関係設定工程で設定される対応関係に基づいて、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの現場座標系での各座標に変換することができる。また、第1のGNSSアンテナと第2のGNSSアンテナとレーザープロファイラーの相対的な位置関係があらかじめ判明しているので、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの現場座標系での各座標が分かれば、レーザープロファイラーの現場座標系での座標と向きとが特定される。そのため、レーザープロファイラーで測定される沈設中の杭の中心のレーザープロファイラーからの距離および方向に基づいて、沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標を取得することができる(杭心座標取得工程)。このように、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点の近傍に杭計測装置を設置するだけで、沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標を取得することができるので、安定した精度をもって、安全に沈設中の杭の中心位置を管理することが可能である。
【0012】
[構成2]
前記杭心ずれ修正工程で沈設中の杭の位置を逐次修正するときに、前記杭心座標取得工程は、前記GNSSアンテナ測位工程で測位される前記第1のGNSSアンテナおよび前記第2のGNSSアンテナの前記固定局に対する公共座標系での各相対位置と、前記杭心測定工程で測定される沈設中の前記杭の中心の前記レーザープロファイラーからの距離および方向とのうち、前者の情報は更新せずに固定し、後者の情報のみを逐次更新することで、沈設中の前記杭の中心位置の現場座標系での座標を逐次更新する構成1に記載の杭施工方法。
【0013】
この構成を採用すると、杭心ずれ修正工程で沈設中の杭の位置を逐次修正するときに、精度よく杭の位置を修正することが可能となる。すなわち、杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標を逐次更新する方法として、GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置の情報と、杭心測定工程で測定される沈設中の杭の中心のレーザープロファイラーからの距離および方向の情報とを、両者とも逐次更新するという方法が考えられるが、そのような方法をとった場合、一般に、GNSS衛星からの信号に基づいて測位される公共座標系での相対位置は、時間の経過に応じて数cm程度の誤差範囲で揺れ動くことから、GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置も誤差範囲で揺れ動き、その結果、杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標も誤差範囲で揺れ動いて不安定となるおそれがある。そこで、杭心ずれ修正工程で沈設中の杭の位置を逐次修正するときは、GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置と、杭心測定工程で測定される沈設中の杭の中心のレーザープロファイラーからの距離および方向とのうち、前者の情報は更新せずに固定し、後者の情報のみを逐次更新するようにすると、GNSS衛星からの信号に基づいて測位される公共座標系での相対位置の誤差の影響を排除することが可能となり、その結果、杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標が安定し、精度よく杭の位置を修正することが可能となる。
【0014】
[構成3]
前記杭心座標取得工程で取得される沈設中の前記杭の中心位置の現場座標系での座標と、設計上の杭の中心位置の現場座標系での座標との差をリアルタイムで表示するディスプレイ装置を、杭施工重機のオペレータ室に設置し、前記杭施工重機のオペレータが、前記杭心ずれ修正工程において沈設中の前記杭の位置修正を行なうときに前記ディスプレイ装置を視認可能とした構成1または2に記載の杭施工方法。
【0015】
この構成を採用すると、杭施工重機のオペレータが、沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標と、設計上の杭の中心位置の現場座標系での座標との差をリアルタイムで把握することができるので、沈設中の杭の位置を逐次修正する作業をきわめて効率よく行なうことが可能となる。
【0016】
[構成4]
前記杭沈設工程の前に、前記敷地の設計上の杭の中心位置となる地点の上方に前記杭を待機させる杭待機工程と、
前記レーザープロファイラーからレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設前の前記杭の外周からの反射光に基づいて沈設前の前記杭の中心の前記レーザープロファイラーからの距離および方向を測定する沈設前杭心測定工程と、
前記GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナおよび前記第2のGNSSアンテナの前記固定局に対する公共座標系での各相対位置と、前記対応関係設定工程で設定した前記対応関係と、前記沈設前杭心測定工程で測定される沈設前の前記杭の中心の前記レーザープロファイラーからの距離および方向とに基づいて、沈設前の前記杭の中心位置の現場座標系での座標を取得する沈設前杭心座標取得工程と、
前記沈設前杭心座標取得工程で取得される沈設前の前記杭の中心位置の現場座標系での座標と、あらかじめ設定された設計上の前記杭の中心位置の現場座標系での座標とを比較し、両者の差がしきい値よりも大きいときは、沈設前の前記杭の待機位置が誤っている旨の異常を報知する杭心間違い検知工程と、を更に有する構成1から3のいずれかに記載の杭施工方法。
【0017】
この構成を採用すると、杭を、その杭を施工すべき地点ではなく、他の杭を施工すべき地点に施工してしまう間違い(杭心間違い)を確実に防止することが可能となる。
【0018】
[構成5]
前記杭沈設工程の前に、前記敷地の設計上の杭の中心位置となる地点の上方に前記杭を待機させる杭待機工程と、
前記レーザープロファイラーからレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設前の前記杭の外周からの反射光に基づいて沈設前の前記杭の杭径を測定する杭径測定工程と、
前記杭径測定工程で測定した沈設前の前記杭の杭径とあらかじめ設定された設計上の杭径とを比較し、両者の差がしきい値よりも大きいときは、沈設前の前記杭の杭径が誤っている旨の異常を報知する杭径間違い検知工程と、を更に有する構成1から4のいずれかに記載の杭施工方法。
【0019】
この構成を採用すると、本来の杭径とは異なる杭径の杭を施工してしまう間違い(杭径間違い)を確実に防止することが可能となる。
【0020】
また、この発明では、上記の杭施工方法に使用する杭計測装置として、以下の構成のものを併せて提供する。
[構成6]
本体フレームと、前記本体フレームにそれぞれ取り付けられた第1のGNSSアンテナと第2のGNSSアンテナとレーザープロファイラーとを有し、
前記レーザープロファイラーは、レーザープロファイラーから水平に離れて配置された杭の中心のレーザープロファイラーからの距離および方向を測定することができるように、レーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光するように構成され、
前記第1のGNSSアンテナと前記第2のGNSSアンテナは、GNSS衛星からの信号を水平方向に所定の間隔をおいた2箇所で受信するように前記本体フレームに取り付けられている杭計測装置。
【0021】
[構成7]
前記第1のGNSSアンテナおよび前記第2のGNSSアンテナは、GNSS衛星からの信号を水平方向に600mm以上の間隔をおいた2箇所で受信するように前記本体フレームに取り付けられている構成6に記載の杭計測装置。
【0022】
この構成を採用すると、第1のGNSSアンテナと第2のGNSSアンテナが、水平方向に大きく離れているので、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置を測位したときに、その測位データに基づいて、レーザープロファイラーの現場座標系での向きを精度よく特定することができ、その結果、杭の中心位置の現場座標系での座標を精度よく取得することが可能となる。
【0023】
[構成8]
前記第1のGNSSアンテナ、前記第2のGNSSアンテナ、前記レーザープロファイラーの各信号を携帯情報端末に無線送信する無線モジュールを有する構成6または7に記載の杭計測装置。
【0024】
この構成を採用すると、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点の近傍に杭計測装置を設置したときに、杭施工重機等の邪魔にならずに、第1のGNSSアンテナ、第2のGNSSアンテナ、レーザープロファイラーの各信号を送信することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の杭施工方法は、第1のGNSSアンテナと第2のGNSSアンテナとレーザープロファイラーとを有する杭計測装置を使用するので、沈設中の杭の中心位置を、安定した精度をもって、安全に管理することが可能である。すなわち、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点の近傍に杭計測装置を設置したとき、その杭計測装置の第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置は、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナがそれぞれ受信するGNSS衛星からの信号と、固定局が受信するGNSS衛星からの信号とに基づいて測位することができる(GNSSアンテナ測位工程)。ここで、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置は、対応関係設定工程で設定される対応関係に基づいて、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの現場座標系での各座標に変換することができる。また、第1のGNSSアンテナと第2のGNSSアンテナとレーザープロファイラーの相対的な位置関係があらかじめ判明しているので、第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの現場座標系での各座標が分かれば、レーザープロファイラーの現場座標系での座標と向きとが特定される。そのため、レーザープロファイラーで測定される沈設中の杭の中心のレーザープロファイラーからの距離および方向に基づいて、沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標を取得することができる(杭心座標取得工程)。このように、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点の近傍に杭計測装置を設置するだけで、沈設中の杭の中心位置の現場座標系での座標を取得することができるので、安定した精度をもって、安全に沈設中の杭の中心位置を管理することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施形態の杭施工方法で使用する杭計測装置の斜視図
図2図1の杭計測装置の断面図
図3】この発明の実施形態の杭施工方法で使用する固定局、移動局、杭計測装置、無線ルーター、携帯情報端末を模式的に示す図
図4】この発明の実施形態の杭施工方法で杭を施工する敷地の平面図
図5】この発明の実施形態の杭施工方法において、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点の上方に掘削ロッドを配置し、その掘削ロッドの芯出しを行なう状態を示す斜視図
図6図5の平面図
図7図5に示す状態の後、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点の近傍に図1の杭計測装置を設置した状態を示す図
図8図7に示す状態の後、杭計測装置を用いて掘削ロッドの掘削ずれを修正しながら、掘削孔を形成する状態を示す図
図9図8に示す状態の後、敷地における設計上の杭の中心位置となる地点(掘削孔の中心)の上方に杭を配置し、その杭の芯出しを行なう状態を示す斜視図
図10図9に示す状態の後、杭計測装置を用いて杭の中心位置を測定する状態を示す図
図11図10の杭の近傍を拡大して示す図
図12図9に示す状態の後、杭計測装置を用いて杭の中心の位置ずれを修正しながら、杭を沈設する状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1図2に、この発明の実施形態の杭施工方法で使用する杭計測装置1を示す。杭計測装置1は、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とレーザープロファイラー4と本体フレーム5と制御部6と電源部7と筐体8とを有する。
【0028】
図2に示すように、本体フレーム5は、水平に延びる水平フレーム5aと、水平フレーム5aの両端から下方に延びる一対の垂直フレーム5bとを有する。垂直フレーム5bの下端は、筐体8の底部に固定されている。第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3は、GNSS衛星S(図3参照)からの信号を水平方向に600mm以上(好ましくは800mm以上)の間隔をおいた2箇所で受信するように水平フレーム5aの長手方向の一端部と他端部に取り付けられている。GNSS衛星Sとしては、GPS衛星(米国)、GLONASS衛星(ロシア)、Galileo衛星(欧州)、BDS衛星(中国)、みちびき(日本)などが挙げられる。
【0029】
第1のGNSSアンテナ2と水平フレーム5aの間には、第1のGNSSアンテナ2よりも大きい輪郭形状(例えば、10cm以上の直径をもつ円形状)をもつ金属プレート9が水平に組み込まれている。金属プレート9は、地面から反射するGNSS衛星S(図3参照)の電波を遮蔽する。同様に、第2のGNSSアンテナ3と水平フレーム5aの間にも金属プレート9が組み込まれている。
【0030】
筐体8は、本体フレーム5と制御部6と電源部7とを収容している。筐体8の上面には、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とをそれぞれ露出させるアンテナ用開口10が形成されている。第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3は、図示しない電気配線を介して制御部6に接続されている。電源部7は、制御部6に電力を供給するバッテリーである。
【0031】
レーザープロファイラー4は、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3の中間に位置するように水平フレーム5aの長手方向の中央部に取り付けられている。レーザープロファイラー4は、筐体8の上面に形成された中央開口11から上方に突出して設けられている。
【0032】
図10図11に示すように、レーザープロファイラー4は、レーザープロファイラー4から水平に離れて配置された対象物(図では杭P)の表面の各点のレーザープロファイラー4からの距離を測定することができるように、レーザー光を水平に走査しながら照射するとともに、その反射光を受光するように構成されている。レーザープロファイラー4は、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とを結ぶ方向(図では左右方向)と直交する方向(図では上下方向)を中心とする扇形の範囲(図では左右一対の破線で挟まれる範囲)で受光する反射光に基づいて後述の各工程を行なう。
【0033】
レーザープロファイラー4としては、例えば、レーザー光を水平に投光する投光部と、そのレーザー光の対象物からの反射光を受光する受光部とをもつ投受光ユニットを、上下方向の軸線まわりに回転駆動し、投受光ユニットの回転角の情報と、投光部から投光するレーザー光と受光部で受光する反射光との位相差(また時間差)に基づいて得られる投受光ユニットからレーザー光の反射点までの距離の情報とを出力する構成のものを採用することができる。レーザープロファイラー4は、図示しない電気配線を介して制御部6(図1参照)に接続されている。
【0034】
図1に示す制御部6には、第1のGNSSアンテナ2、第2のGNSSアンテナ3、レーザープロファイラー4からの各信号が入力される。制御部6は無線モジュールを内蔵しており、第1のGNSSアンテナ2、第2のGNSSアンテナ3、レーザープロファイラー4の各信号を、図3に示すように、無線ルーター12(例えばWi-Fiルーター)を介して携帯情報端末13に無線送信することが可能となっている。この実施形態では、無線ルーター12を介して携帯情報端末13に無線送信する構成としたが、無線ルーター12を介さずにBluetooth等で直接、携帯情報端末13に無線送信する構成を採用してもよい。
【0035】
図3に示すように、この実施形態の杭施工方法では、固定局14、移動局15、杭計測装置1、無線ルーター12、携帯情報端末13を使用する。固定局14は、GNSS衛星Sからの信号を受信するアンテナと、無線ルーター12を介して無線通信するための無線モジュールとを内蔵している。固定局14は、作業員が持ち運び、敷地Gの任意の場所に三脚等で据え付けることができるように構成されている。
【0036】
移動局15も、GNSS衛星Sからの信号を受信するアンテナと、無線ルーター12を介して無線通信するための無線モジュールとを内蔵している。移動局15は、アンテナから下方にまっすぐ延びるポール部分を有し、敷地Gの任意の地点にポール部分を立てることで、その地点の真上にアンテナを配置することが可能となっている。この実施形態では、固定局14および移動局15として、無線ルーター12を介して無線通信を行なうものを例に挙げたが、無線ルーター12を介さずにBluetooth等で直接、無線通信を行なうものを使用してもよい。
【0037】
携帯情報端末13は、例えば、タブレット端末である。携帯情報端末13は、固定局14から受信する信号と、移動局15から受信する信号と、杭計測装置1から受信する信号とに基づいて、後述の各工程の情報処理を実行する。また、携帯情報端末13は、液晶等のディスプレイ画面を有し、後述の各工程の情報処理の結果を表示するディスプレイ装置としても機能する。
【0038】
以下、この発明の実施形態の杭施工方法を説明する。
【0039】
<杭情報入力工程>
図3に示す携帯情報端末13に、図4に示す敷地Gに施工予定の各杭P1~P15の杭番号、施工予定の各杭P1~P15の中心位置の現場座標系でのXY座標、施工予定の各杭P1~P15の杭径、掘削ロッドR(図8参照)の直径等の情報を入力する。現場座標系は、敷地Gにおける杭の施工位置、杭径、杭長等を記載した杭伏図で使用されるXY座標系である。現場座標系は、GNSS衛星S(図3参照)からの信号による測位で使用される公共座標系(緯度および経度に基づく座標系)とは、座標の原点や座標軸の方向が異なる。
【0040】
<固定局設置工程>
図4に示すように、杭P1~P15を施工する敷地Gに固定局14を設置する。敷地Gはあらかじめ測量が行われ、その敷地Gの設計上の各杭P1~P15の中心位置となる地点に、目印としての杭心棒が打たれている。固定局14は、杭P1~P15を施工する期間中、杭P1~P15の施工の邪魔とならない地点に設置する。固定局14を設置する地点は、現場座標系でのXY座標が既知の地点である必要はなく、現場座標系でのXY座標が未知の任意の地点でよい。
【0041】
<第1の相対測位工程>
次に、敷地Gにおける現場座標系でのXY座標が既知の第1の地点に移動局15を設置する。例えば、杭P2の杭心棒のある地点(現場座標系でのXY座標が、10000,-10000の地点)に移動局15を設置する。そして、図3に示すように、移動局15が受信するGNSS衛星Sからの信号と、固定局14が受信するGNSS衛星Sからの信号とに基づいて、第1の地点(図4の杭P2の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対位置を測位する。すなわち、4機以上のGNSS衛星Sからの電波信号を、図4に示すように、第1の地点(杭P2の杭心棒のある地点)にある移動局15と、固定局14とで同時に受信し、その電波信号の位相差に基づいて、第1の地点(杭P2の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対的な位置関係(基線ベクトル)を測位する。
【0042】
<第2の相対測位工程>
次に、敷地Gにおける現場座標系でのXY座標が既知の第2の地点に移動局15を移動して設置する。例えば、杭P14の杭心棒のある地点(現場座標系でのXY座標が、-10000,10000の地点)に移動局15を移動して設置する。そして、図3に示すように、移動局15が受信するGNSS衛星Sからの信号と、固定局14が受信するGNSS衛星Sからの信号とに基づいて、第2の地点(図4の杭P14の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対位置を測位する。すなわち、4機以上のGNSS衛星Sからの電波信号を、図4に示すように、第2の地点(杭P14の杭心棒のある地点)にある移動局15と、固定局14とで同時に受信し、その電波信号の位相差に基づいて、第2の地点(杭P14の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対的な位置関係を測位する。
【0043】
<対応関係設定工程>
次に、第1の相対測位工程で得た第1の地点(杭P2の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対位置と、第2の相対測位工程で得た第2の地点(杭P14の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対位置と、第1の地点(杭P2の杭心棒のある地点)の現場座標系での既知のXY座標(10000,-10000)と、第2の地点(杭P14の杭心棒のある地点)の現場座標系での既知のXY座標(-10000,10000)とに基づいて、固定局14に対する公共座標系での相対位置と現場座標系でのXY座標との対応関係を設定する。すなわち、第1の地点(杭P2の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対的な位置関係と、第2の地点(杭P14の杭心棒のある地点)の固定局14に対する公共座標系での相対的な位置関係とを取得すれば、第1の地点(杭P2の杭心棒のある地点)の現場座標系でのXY座標(10000,-10000)と第2の地点(杭P14の杭心棒のある地点)の現場座標系でのXY座標(-10000,10000)とが既に判明しているので、固定局14に対する公共座標系での相対位置と、現場座標系でのXY座標との対応関係が一義的に定まり、その結果、敷地Gの任意の地点について、その地点の固定局14に対する公共座標系での相対位置を、現場座標系でのXY座標に変換することが可能となる。この変換を行なうための対応関係を設定する。
【0044】
<掘削ロッド芯出し工程>
杭P1~P15のいずれか(以下、単に「杭P」という)を沈設する掘削孔を敷地Gに形成するための掘削ロッドR(図5参照)の芯出しを行なう。具体的には、図5図6に示すように、設計上の杭Pの中心位置となる地点Oから、現場座標系のX方向とY方向とに所定距離だけ離れた地点に2本の逃げ棒16を立てた状態で、設計上の杭Pの中心位置となる地点Oから杭心棒を抜き取り、その地点Oの上方に掘削ロッドRを誘導する。次に、2本の逃げ棒16から掘削ロッドRの外周に向けて2本の検尺棒17を水平に延ばし、その2本の検尺棒17の先端をそれぞれ掘削ロッドRの外周に当て、2本の逃げ棒16から掘削ロッドRの外周までの距離が所定距離に一致するように(つまり掘削ロッドRの中心位置が、設計上の杭Pの中心位置に一致するように)掘削ロッドRを位置決めする。
【0045】
<杭計測装置設置工程>
その後、図7に示すように、杭Pの中心位置となる地点Oの近傍に杭計測装置1を設置する。具体的には、杭Pの中心位置となる地点Oからレーザープロファイラー4までの距離が、5m以内(好ましくは3m以内)となる程度の近傍位置に杭計測装置1を設置する。杭計測装置1を設置する向きは、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とを結ぶ方向が、杭Pの中心位置となる地点Oとレーザープロファイラー4とを結ぶ方向と直角となるような向きとする。
【0046】
<GNSSアンテナ測位工程>
次に、図3に示すように、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3がそれぞれ受信するGNSS衛星Sからの信号と、固定局14が受信するGNSS衛星Sからの信号とに基づいて、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置を測位する。すなわち、4機以上のGNSS衛星Sからの電波信号を、杭Pの中心位置となる地点Oの近傍に設置した杭計測装置1の第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3と、固定局14とで同時に受信し、その電波信号の位相差に基づいて、第1のGNSSアンテナ2の固定局14に対する公共座標系での相対的な位置関係と、第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での相対的な位置関係とを測位する。
【0047】
<掘削前ロッド中心測定工程>
図7に示すように、レーザープロファイラー4からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、掘削前の掘削ロッドRの外周からの反射光に基づいて、掘削前の掘削ロッドRの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向を測定する。掘削ロッドRの中心の位置は、例えば、掘削ロッドRの外周の各点からの反射光に基づいて、レーザープロファイラー4から掘削ロッドRの外周の各点までの距離を取得し、その各点のうちレーザープロファイラー4からの距離が最も近い点の位置から掘削ロッドRの直径(上記の杭情報入力工程で図3の携帯情報端末13に入力された値)の半分に相当する分だけレーザープロファイラー4から遠い側にオフセットすることで求めることができる。また、例えば、掘削ロッドRの外周の各点からの反射光に基づいて、レーザープロファイラー4から掘削ロッドRの外周の各点までの距離を取得し、その各点にフィットする円を最小二乗法等で算出し、その円の中心位置を掘削ロッドRの中心位置としてもよい。
【0048】
<掘削前ロッド中心座標取得工程>
GNSSアンテナ測位工程で取得される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置と、上述の対応関係設定工程で設定した対応関係と、掘削前ロッド中心測定工程で測定される掘削前の掘削ロッドRの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向とに基づいて、掘削前の掘削ロッドRの中心位置の現場座標系でのXY座標を取得する。すなわち、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置は、上述の対応関係設定工程で設定される対応関係に基づいて、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の現場座標系での各XY座標に変換することができる。また、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とレーザープロファイラー4の相対的な位置関係があらかじめ判明しているので、図7に示すように、杭計測装置1を敷地Gに設置したときの第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の現場座標系での各XY座標が分かれば、レーザープロファイラー4の現場座標系でのXY座標と、レーザープロファイラー4の現場座標系での向きとが特定される。そのため、レーザープロファイラー4で測定される掘削前の掘削ロッドRの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向に基づいて、掘削前の掘削ロッドRの中心位置の現場座標系でのXY座標を取得することができる。
【0049】
<掘削工程>
その後、図8に示すように、掘削ロッドRで地面に掘削孔18を形成する。ここで、掘削ロッドRで地面に掘削孔18を形成する間、杭計測装置1と携帯情報端末13とを用いて、以下のロッド中心測定工程とロッド中心座標取得工程と掘削ずれ修正工程とを行なう。
【0050】
<ロッド中心測定工程>
上記の掘削前ロッド中心測定工程と同様に、レーザープロファイラー4からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、掘削中の掘削ロッドRの外周からの反射光に基づいて、掘削中の掘削ロッドRの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向を測定する。
【0051】
<ロッド中心座標取得工程>
上記の掘削前ロッド中心座標取得工程と同様に、
GNSSアンテナ測位工程で取得される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置と、上述の対応関係設定工程で設定した対応関係と、ロッド中心測定工程で測定される掘削中の掘削ロッドRの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向とに基づいて、掘削中の掘削ロッドRの中心位置の現場座標系でのXY座標を取得する。
【0052】
<掘削ずれ修正工程>
上記のロッド中心座標取得工程で取得される掘削中の掘削ロッドRの中心位置の現場座標系でのXY座標に基づいて、掘削中の掘削ロッドRの位置を逐次修正する。すなわち、ロッド中心座標取得工程で取得される掘削中の掘削ロッドRの中心位置の現場座標系でのXY座標と、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標との差を、図3の携帯情報端末13のディスプレイ画面にリアルタイムで表示する。携帯情報端末13は、掘削ロッドRで掘削作業をする杭施工重機のオペレータ室に設置し、杭施工重機のオペレータが、ディスプレイ装置を視認しながら掘削中の掘削ロッドRの位置を逐次修正する。このとき、GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置と、ロッド中心測定工程で測定される掘削中の掘削ロッドRの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向とのうち、前者の情報は更新せずに固定し、後者の情報のみを逐次更新することで、掘削中の掘削ロッドRの中心位置の現場座標系でのXY座標を逐次更新する。更新は一定時間ごと(例えば0.5秒ごと)に行なう。
【0053】
この掘削ずれ修正工程において、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標は、上記の杭情報入力工程で携帯情報端末13に入力されたXY座標をそのまま使用することも可能であるが、一般に、GNSS衛星Sからの信号に基づいて測位される公共座標系での相対位置は、数cm程度の誤差を有することから、この誤差の影響をできるだけ排除するため、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標は、上記の掘削前ロッド中心座標取得工程で取得したXY座標に更新する(つまり、上記の掘削前ロッド中心座標取得工程で取得した掘削前の掘削ロッドRの中心位置の現場座標系でのXY座標を、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標として使用する)ことが好ましい。
【0054】
<杭待機工程>
地面に掘削孔18を形成した後、図9に示すように、敷地Gの設計上の杭Pの中心位置となる地点Oの上方(掘削孔18の上方)に杭施工重機で杭Pを保持し、待機させる。そして、2本の逃げ棒16から杭Pの外周に向けて2本の検尺棒17を水平に延ばし、その2本の検尺棒17の先端をそれぞれ杭Pの外周に当て、2本の逃げ棒16から杭Pの外周までの距離が所定距離に一致するように(つまり杭Pの中心位置が、設計上の杭Pの中心位置に一致するように)、杭施工重機で杭Pを位置決めする。この位置決めした杭Pに対し、杭計測装置1と携帯情報端末13とを用いて、以下の沈設前杭心測定工程と沈設前杭心座標取得工程と杭心間違い検知工程と杭径測定工程と杭径間違い検知工程とを行なう。
【0055】
<沈設前杭心測定工程>
図10図11に示すように、レーザープロファイラー4からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設前の杭Pの外周からの反射光に基づいて、沈設前の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向を測定する。ここで、杭Pの中心の位置は、杭Pの外周の各点からの反射光に基づいて、レーザープロファイラー4から杭Pの外周の各点までの距離を取得し、その各点のうちレーザープロファイラー4からの距離が最も近い点の位置から杭Pの直径(上記の杭情報入力工程で図3の携帯情報端末13に入力された値)の半分に相当する分だけレーザープロファイラー4から遠い側にオフセットすることで求めることができる。また、例えば、杭Pの外周の各点からの反射光に基づいて、レーザープロファイラー4から杭Pの外周の各点までの距離を取得し、その各点にフィットする円を最小二乗法等で算出し、その円の中心位置を杭Pの中心位置としてもよい。
【0056】
<沈設前杭心座標取得工程>
GNSSアンテナ測位工程で取得される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置と、上述の対応関係設定工程で設定した対応関係と、沈設前杭心測定工程で測定される沈設前の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向とに基づいて、沈設前の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を取得する。
【0057】
<杭心間違い検知工程>
沈設前杭心座標取得工程で取得される沈設前の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標と、あらかじめ設定された設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標(杭情報入力工程で図3の携帯情報端末13に入力された値)とを比較する。そして、両者の差があらかじめ設定されたしきい値よりも大きいときは、図3の携帯情報端末13のディスプレイ画面に杭心間違いのエラー表示を出し、沈設前の杭Pの待機位置が誤っている旨の異常を杭施工重機のオペレータに報知する。
【0058】
<杭径測定工程>
また、上記の沈設前杭心測定工程において、レーザープロファイラー4からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光するとき、沈設前の杭Pの外周からの反射光に基づいて、沈設前の杭Pの杭径の測定を行なう。杭径の測定は、例えば、図10図11に示すように、杭Pの外周の各点からの反射光に基づいて、レーザープロファイラー4から杭Pの外周の各点までの距離および方向を取得し、その各点にフィットする円を最小二乗法等で算出し、その円の直径を杭Pの杭径とすることで行なうことができる。
【0059】
<杭径間違い検知工程>
杭径測定工程で測定した沈設前の杭Pの杭径とあらかじめ設定された設計上の杭径(杭情報入力工程で図3の携帯情報端末13に入力された値)とを比較し、両者の差があらかじめ設定されたしきい値よりも大きいときは、図3の携帯情報端末13のディスプレイ画面に杭径間違いのエラー表示を出し、沈設前の杭Pの杭径が誤っている旨の異常を杭施工重機のオペレータに報知する。
【0060】
<杭沈設工程>
上記の杭心間違い検知工程と杭径間違い検知工程で杭心間違いや杭径間違いが無いことを確認した後、図12に示すように、杭Pを掘削孔18に沈設する。ここで、杭Pの沈設を行なう間、杭計測装置1と携帯情報端末13とを用いて、以下の杭心測定工程と杭心座標取得工程と杭心ずれ修正工程とを行なう。
【0061】
<杭心測定工程>
レーザープロファイラー4からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設中の杭Pの外周からの反射光に基づいて、沈設中の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向を測定する。杭Pの中心の位置は、上記の沈設前杭心測定工程と同様にして求めることができる。
【0062】
<杭心座標取得工程>
GNSSアンテナ測位工程で取得される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置と、上述の対応関係設定工程で設定した対応関係と、杭心測定工程で測定される沈設中の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向とに基づいて、沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を取得する。
【0063】
<杭心ずれ修正工程>
杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標に基づいて、杭Pが掘削孔18の孔底に到達するまでの間、沈設中の杭Pの位置を逐次修正する。すなわち、杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標と、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標との差を、図3の携帯情報端末13のディスプレイ画面にリアルタイムで表示する。携帯情報端末13は、杭Pの沈設をする杭施工重機のオペレータ室に設置し、杭施工重機のオペレータが、ディスプレイ装置を視認しながら、沈設中の杭Pの位置を逐次修正する。このとき、GNSSアンテナ測位工程で測位される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置と、杭心測定工程で測定される沈設中の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向とのうち、前者の情報は更新せずに固定し、後者の情報のみを逐次更新することで、沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を逐次更新する。更新は一定時間ごと(例えば0.5秒ごと)に行なう。
【0064】
この杭心ずれ修正工程において、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標は、上記の杭情報入力工程で携帯情報端末13に入力されたXY座標をそのまま使用することも可能であるが、上記の沈設前杭心座標取得工程で取得したXY座標に更新する(つまり、上記の沈設前杭心座標取得工程で取得した沈設前の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標として使用する)ことが好ましい。
【0065】
この実施形態の杭施工方法は、図1に示すように、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とレーザープロファイラー4とを有する杭計測装置1を使用するので、図12に示すように、沈設中の杭Pの中心位置を、安定した精度をもって、安全に管理することが可能である。すなわち、敷地Gにおける設計上の杭Pの中心位置となる地点Oの近傍に杭計測装置1を設置したとき、図3に示すように、その杭計測装置1の第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置は、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3がそれぞれ受信するGNSS衛星Sからの信号と、固定局14が受信するGNSS衛星Sからの信号とに基づいて測位することができる(GNSSアンテナ測位工程)。ここで、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置は、対応関係設定工程で設定される対応関係に基づいて、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の現場座標系での各XY座標に変換することができる。また、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とレーザープロファイラー4の相対的な位置関係があらかじめ判明しているので、第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の現場座標系での各XY座標が分かれば、レーザープロファイラー4の現場座標系でのXY座標と向きとが特定される。そのため、図12に示すように、レーザープロファイラー4で測定される沈設中の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向に基づいて、沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を取得することができる(杭心座標取得工程)。このように、敷地Gにおける設計上の杭Pの中心位置となる地点Oの近傍に杭計測装置1を設置するだけで、沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を取得することができるので、安定した精度をもって、安全に沈設中の杭Pの中心位置を管理することが可能である。
【0066】
また、この実施形態の杭施工方法は、杭心ずれ修正工程で沈設中の杭Pの位置を逐次修正するときに、精度よく杭Pの位置を修正することが可能である。すなわち、杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を逐次更新する方法として、GNSSアンテナ測位工程で取得される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置の情報と、杭心測定工程で測定される沈設中の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向の情報とを、両者とも逐次更新するという方法が考えられるが、そのような方法をとった場合、一般に、図3に示すGNSS衛星Sからの信号に基づいて測位される公共座標系での相対位置は、時間の経過に応じて数cm程度の誤差範囲で揺れ動くことから、GNSSアンテナ測位工程で取得される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置も誤差範囲で揺れ動き、その結果、杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標も誤差範囲で揺れ動いて不安定となるおそれがある。そこで、この実施形態のように、杭心ずれ修正工程で沈設中の杭Pの位置を逐次修正するときに、GNSSアンテナ測位工程で取得される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での各相対位置と、杭心測定工程で測定される沈設中の杭Pの中心のレーザープロファイラー4からの距離および方向とのうち、前者の情報は更新せずに固定し、後者の情報のみを逐次更新するようにすると、GNSS衛星Sからの信号に基づいて測位される第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する公共座標系での相対位置の誤差の影響を排除することが可能となり、その結果、杭心座標取得工程で取得される沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標が安定し、精度よく杭Pの位置を修正することが可能となる。
【0067】
また、この実施形態の杭施工方法は、杭施工重機のオペレータが、杭施工重機のオペレータ室に設置した携帯情報端末13のディスプレイ画面を視認することで、沈設中の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標と、設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標との差をリアルタイムで把握することができるので、沈設中の杭Pの位置を逐次修正する作業をきわめて効率よく行なうことが可能である。
【0068】
また、この実施形態の杭施工方法は、上記の杭心間違い検知工程において、沈設前の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標と、あらかじめ設定された設計上の杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標とを比較し、両者の差がしきい値よりも大きいときは、沈設前の杭Pの待機位置が誤っている旨の異常を報知するので、杭Pを、その杭Pを施工すべき地点Oではなく、他の杭P’を施工すべき地点O’に施工してしまう間違い(杭心間違い)を確実に防止することが可能である。
【0069】
また、この実施形態の杭施工方法は、上記の杭径間違い検知工程で、杭径測定工程で測定した沈設前の杭Pの杭径と、あらかじめ設定された設計上の杭径とを比較し、両者の差がしきい値よりも大きいときは、沈設前の杭Pの杭径が誤っている旨の異常を報知するので、本来の杭径とは異なる杭径の杭P’を施工してしまう間違い(杭径間違い)を確実に防止することが可能である。
【0070】
また、この実施形態の杭計測装置1は、第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3が、水平方向に大きく離れているので、GNSSアンテナ測位工程で第1のGNSSアンテナおよび第2のGNSSアンテナの固定局に対する公共座標系での各相対位置を測位したときに、その測位データに基づいて、レーザープロファイラー4の現場座標系での向きを精度よく特定することができる。その結果、杭Pの中心位置の現場座標系でのXY座標を精度よく取得することが可能となっている。
【0071】
また、この実施形態の杭計測装置1は、第1のGNSSアンテナ2、第2のGNSSアンテナ3、レーザープロファイラー4の各信号を携帯情報端末13に無線送信する無線モジュールが制御部6に設けられているので、敷地Gにおける設計上の杭Pの中心位置となる地点Oの近傍に杭計測装置1を設置したときに、杭施工重機等の邪魔にならずに、第1のGNSSアンテナ2、第2のGNSSアンテナ3、レーザープロファイラー4の各信号を送信することが可能である。
【0072】
上記実施形態では、まず掘削ロッドRで掘削孔18を形成し、その後、掘削孔18に杭Pを沈設するタイプの杭の施工方法を例に挙げて説明したが、この発明は、掘削孔18を形成せずに、杭Pを直接、地中に沈設するタイプの杭の施工方法(例えば、杭Pを回転させながら杭Pの下端に設けた羽根で地盤を掘り進めることで、杭Pを沈設する施工方法)にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 杭計測装置
2 第1のGNSSアンテナ
3 第2のGNSSアンテナ
4 レーザープロファイラー
5 本体フレーム
6 制御部(無線モジュール)
13 携帯情報端末
14 固定局
15 移動局
G 敷地
S GNSS衛星
P 杭
O 杭の中心位置となる地点
【要約】
【課題】沈設中の杭の中心位置を安定した精度をもって安全に管理することが可能な杭施工方法を提供する。
【解決手段】第1のGNSSアンテナ2と第2のGNSSアンテナ3とレーザープロファイラー4とを有する杭計測装置1を設置し、GNSS衛星Sからの信号に基づいて第1のGNSSアンテナ2および第2のGNSSアンテナ3の固定局14に対する相対位置を測位し、レーザープロファイラー4からレーザー光を水平に走査しながら照射するとともにその反射光を受光し、沈設中の杭Pの外周からの反射光に基づいて杭Pの中心の現場座標系でのXY座標を取得し、修正する。
【選択図】図12
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12