(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】結合剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230405BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230405BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230405BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230405BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230405BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230405BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230405BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230405BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230405BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230405BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230405BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230405BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230405BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230405BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230405BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230405BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K31/7088
A61K48/00
A61P37/04
A61P35/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P17/06
A61P1/04
A61P5/14
A61P9/10 101
A61P9/10
(21)【出願番号】P 2020530735
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 GB2018052347
(87)【国際公開番号】W WO2019034895
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-17
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520056291
【氏名又は名称】ウルトラヒューマン フォー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ジェイムズ ジョナサン フィンレイ
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/049251(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0073395(US,A1)
【文献】PNAS, 2015, 112(50):15354-15359
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
A61K 39/00-39/44
A61K 47/00-47/69
A61K 31/33-33/44
A61K 48/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD47及びカニクイザルCD47、及び任意選択的にマウスCD47にも特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分であって
、抗体分子又は抗原結合部分
が、
(a)アミノ酸配列GYSFTNYY
IF(配列番号
43)(HCDR1)、
MGDINPVNGDTNYSPSFQG(配列番号
44)(HCDR2)、GGYTPD
Y(配列番号
45)(HCDR3)、
RSSQSLLHSNGYNY
LH(配列番号
46)(LCDR1)、KGSNRFS(配列番号47)(LCDR2)、及び
SQNLHVPR
T(配列番号
48)(LCDR3)[クローンD-H3];又は
(b)アミノ酸配列GYTFTNYY
IF(配列番号
49)(HCDR1)、
MGINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号
50)(HCDR2)、GGYTMD
R(配列番号
51)(HCDR3)、
RSSQSLLHSNGYTY
LH(配列番号
52)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及び
FQNTHTPRT(配列番号
54)(LCDR3)[クローンA-D5];又は
(c)アミノ酸配列GYSFTNYY
IF(配列番号
43)(HCDR1)、
IGDINPVNGDTNFSPSFQG(配列番号
55)(HCDR2)、GGYTMD
K(配列番号
56)(HCDR3)、
RSSQSLVHSNGYTY
LH(配列番号
57)(LCDR1)、KGSYRAS(配列番号58)(LCDR2)、及び
SQNTQTPR
T(配列番号
59)(LCDR3)[クローンG-B6];又は
(d)アミノ酸配列GYSFTNYY
IF(配列番号
43)(HCDR1)、
MGIINPVNGDTNYNPSFQG(配列番号
60)(HCDR2)、GGYTMG
K(配列番号
61)(HCDR3)、
RSSQSLVHSNGNTY
LD(配列番号
62)(LCDR1)、KGSYRFS(配列番号63)(LCDR2)、及び
SQATHTPR
T(配列番号
64)(LCDR3)[クローンF-E7];又は
(e)アミノ酸配列GYSFTNYY
IF(配列番号
43)(HCDR1)、
MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号
65)(HCDR2)、GGFTMD
Y(配列番号
66)(HCDR3)、
RSSQSLLHSNGYNY
LH(配列番号
46)(LCDR1)、KGSNRAS(配列番号67)(LCDR2)、及び
SQNTHTPR
T(配列番号
68)(LCDR3)[クローンVH-A1/VL-B1];又は
(
f)アミノ酸配列GYTFTNYY
IF(配列番号
49)(HCDR1)、
MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号
50)(HCDR2)、GGYTMD
R(配列番号
51)(HCDR3)、
RSSQSLLHSNGYNY
LH(配列番号
46)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及び
FQNTHTPR
T(配列番号
54)(LCDR3)[クローンA-D5.4];又は
(
g)アミノ酸配列GYSFTNYY
IF(配列番号
43)(HCDR1)、
MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号
65)(HCDR2)、GGYTMD
R(配列番号
51)(HCDR3)、
RSSQSLLHSAGYNY
LH(配列番号
82)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及び
FQNTHTPR
T(配列番号
54)(LCDR3)[クローンA-D5.16]
を含む、抗体分子又は抗原結合部分。
【請求項2】
以下を含む、請求項
1に記載の抗体分子又は抗原結合部分:
(a)アミノ酸配列GYTFTNYY
IF(配列番号
49)(HCDR1)、
MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号
50)(HCDR2)、GGYTMD
R(配列番号51)(HCDR3)、
RSSQSLLHSNGYTY
LH(配列番号
52)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及び
FQNTHTPR
T(配列番号
54)(LCDR3)[クローンA-D5];又は
(
b)アミノ酸配列GYSFTNYY
IF(配列番号
43)(HCDR1)、
MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号
65)(HCDR2)、GGYTMD
R(配列番号
51)(HCDR3)、
RSSQSLLHSAGYNY
LG(配列番号
82)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及び
FQNTHTPR
T(配列番号
54)(LCDR3)[クローンA-D5.16]。
【請求項3】
ヒト、ヒト化、又はキメラである、請求項1
又は2に記載の抗体分子又は抗原結合部分。
【請求項4】
CDRが挿入されている1つ以上のヒト可変ドメインフレームワーク足場を含む、請求項1~
3に記載の抗体分子又は抗原結合部分。
【請求項5】
対応するHCDR配列が挿入されているIGHV5-51ヒト生殖細胞系足場を含む、請求項1~
4に記載の抗体分子又は抗原結合部分。
【請求項6】
対応するLCDR配列が挿入されているIGKV2-28ヒト生殖細胞系足場を含む、請求項
1~
5のいずれか1項に記載の抗体分子又は抗原結合部分。
【請求項7】
免疫学的に不活性な定常領域を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の抗体分子又は抗原結合部分。
【請求項8】
Fab断片、F(ab)
2断片、Fv断片、4量体抗体、4価抗体、多重特異性抗体(例えば2価抗体)、単一ドメイン抗体(例えばV
HH又はV
NAR、又はいずれかの断片)、モノクローナル抗体、又は融合タンパク質である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の抗体分子又は抗原結合部分。
【請求項9】
治療薬に結合された請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗体分子又はその抗原結合部分を含む免疫結合体。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗体分子又はその抗原結合部分をコードする核酸分子。
【請求項11】
請求項
10に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項12】
請求項
10に記載の核酸分子又は請求項
11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
抗CD47抗体及び/又はその抗原結合部分を産生する方法であって、前記抗体及び/又はその抗原結合部分の発現及び/又は産生をもたらす条件下で、請求項
12に記載の宿主細胞を培養することと、前記抗体及び/又はその抗原結合部分を宿主細胞又は培養物から単離することとを、含む上記方法。
【請求項14】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗体分子又はその抗原結合部分、又は請求項
9に記載の免疫結合体、又は請求項
10に記載の核酸分子、又は請求項
11に記載のベクターを、含む医薬組成物。
【請求項15】
被験体における免疫応答を増強するための、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
被験体の癌を治療又は予防するための、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項
16に記載の医薬組成物であって、前記癌が、膵臓癌、黒色腫、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳又は中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌又は子宮内膜癌、口腔癌又は咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸又は虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、及び血液組織の癌からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項18】
第2の治療薬、例えば抗癌剤と組み合わせて、別々に、連続的に、又は同時に使用するための、請求項
16又は
17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
癌の治療のための薬剤の製造における、請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗体分子又はその抗原結合部分、又は請求項
9に記載の免疫結合体、又は請求項
10に記載の核酸分子、又は請求項
11に記載のベクター、又は請求項
14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
被験体の虚血再灌流傷害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を治療又は予防するための、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記自己免疫疾患又は炎症性疾患が、関節炎、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス、グレーブ病、橋本甲状腺炎、及び強直性脊椎炎からなる群から選択される、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の治療用薬剤の製造における、請求項1~
8のいずれか1項に記載の抗体分子又はその抗原結合部分の、又は請求項
9に記載の免疫結合体の、又は請求項
10に記載の核酸分子の、又は請求項
11に記載のベクターの、又は請求項
14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
被験体の心血管疾患(例えば冠動脈心疾患又はアテローム性動脈硬化症)又は線維性疾患を治療又は予防するための、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記線維性疾患が、心筋梗塞、狭心症、変形性関節炎、肺線維症、嚢胞性線維症、気管支炎、及び喘息からなる群から選択される、請求項
23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
心血管疾患(例えば冠動脈心疾患又はアテローム性動脈硬化症)又は線維性疾患の治療用薬剤の製造における、請求項1
~8のいずれか1項に記載の抗体分子又はその抗原結合部分の、又は請求項
9に記載の免疫結合体の、又は請求項
10に記載の核酸分子の、請求項
11に記載のベクターの、又は請求項
14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項26】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体分子、又はその抗原結合部分を産生する方法であって、以下の工程を含む方法:
(1)非ヒト起源の抗CD47 CDRをヒトvドメインフレームワークに移植して、ヒト化抗CD47抗体分子又はその抗原結合部分を産生する工程;
(2)CDRに1つ以上の変異を含むヒト化抗CD47抗体分子又はその抗原結合部分のクローンのファージライブラリを生成する工程;
(3)ヒトCD47、及びカニクイザルCD47、及び/又は任意選択的にまたマウスCD47への結合について、ファージライブラリをスクリーニングする工程;
(4)ヒトCD47、及びカニクイザルCD47、及び/又は任意選択的にまたマウスCD47に対する結合特異性を有するクローンを、スクリーニング工程(3)から選択する工程;及び
(5)工程(4)から選択されたクローンから、ヒトCD47、及びカニクイザルCD47、及び/又は任意選択的にまたマウスCD47に特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分を産生する工程。
【請求項27】
請求項
26に記載の方法であって、工程(4)で選択されたクローンに基づいて、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDRの特定の位置におけるさらなる探索的変異誘発に基づいて、追加のクローンを産生して、ヒト化を増強し、ヒトT細胞エピトープ含有量を最小化し、及び/又は工程(5)で産生された抗体分子又はその抗原結合部分の製造特性を改善する工程をさらに含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD47(分化クラスター47、インテグリン関連タンパク質[IAP]としても知られている)に特異的に結合する抗体分子、及びその医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD47(インテグリン関連タンパク質[IAP]としても知られている)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通タンパク質であり、膜インテグリン、トロンボスポンジン-1(TSP-1)、及びシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)を含むいくつかの既知のパートナーに結合する。CD47は、細胞のアポトーシス、増殖、接着、遊走などのさまざまな細胞プロセスに関連しており、重要なこととして、免疫応答及び血管新生応答に重要な役割を果たしている。CD47-SIRPαシグナル伝達は、マクロファージ及び他の骨髄細胞による食作用の活性化を阻害する重要な分子相互作用である。これは腫瘍細胞の生存を促進するため、骨髄細胞系に特異的な免疫チェックポイントとして機能する。
【0003】
前臨床証拠は、CD47-SIRPαシグナル伝達の阻止がマクロファージの食作用活性を高め、血液及び固形悪性腫瘍の多くの実験モデルで異種移植片の成長を阻害できることを示唆している。マクロファージ活性は、組織線維症やアテローム硬化性プラークの形成などの炎症関連組織リモデリングの生物学においても認められている要因でもあるため、CD47-SIRPαシグナル伝達軸は、非癌性疾患においてもかなりの治療可能性がある。従って、抗CD47mAbは、癌やその他の状況で免疫療法薬として作用し、現在確立されている治療法の有効性を増幅する可能性がある。
【0004】
現在承認されている抗体治療薬の大部分は、免疫化されたげっ歯類に由来している。これらの抗体の多くは、ヒトv遺伝子フレームワーク配列へのマウスCDRの「移植」を介して「ヒト化」として知られるプロセスを経ている(Nelson et al., 2010, Nat Rev Drug Discov 9: 767-774 を参照)。このプロセスはしばしば不正確であり、結果として生じる抗体の標的結合親和性の低下につながる。元の抗体の結合親和性を戻すために、通常、移植されたvドメインの可変ドメインフレームワークの重要な位置にマウス残基が導入される(「復帰突然変異」としても知られている)。
【0005】
CDR移植及び復帰突然変異を介してヒト化された抗体は、完全にマウスvドメインを有する抗体と比較して、臨床において低い免疫応答速度を誘発することが証明されているが、移植されたCDRループにまだ収容されている物理的不安定さの可能性と免疫原性のモチーフのために、この基本的な移植法を使用してヒト化された抗体は、まだ大きな臨床的出現リスクがある。免疫細胞上の受容体を標的とし、その薬理機能が抗原提示を介して免疫応答を刺激することであるCD47阻害剤などの抗体は、抗薬物抗体応答を引き起こすリスクが高くなっている。患者におけるこれらの抗薬物抗体応答は、臨床使用中の薬物半減期、効力、及び安全性を低下させる可能性がある。タンパク質の免疫原性の動物試験は、多くの場合ヒトの免疫応答を予測しないため、治療用の抗体工学は、精製タンパク質の予測されるヒトT細胞エピトープ含有量、非ヒト生殖細胞系アミノ酸含有量、及び凝集能の最小化に焦点を当てている。
【0006】
従って、理想的なヒト化拮抗性抗CD47抗体は、充分特性解析されたヒト生殖細胞系配列のフレームワークとCDRの両方で見られるものとできるだけ多くの同一の残基を、vドメインに持っている。Townsend et al. (2015; PNAS 112: 15354-15359) は、ラット、ウサギ、及びマウスの抗体に由来するCDRが、好適なヒトフレームワークに移植され、次に「増強されたバイナリ置換」と呼ばれるヒト生殖細胞系アプローチを受ける抗体を生成する方法を記載している。このアプローチは、非常に正確な抗体-抗原共結晶構造データの非存在下で、元の抗体パラトープの基本的な可塑性を証明したが、特定の抗体のCDRループ内のどの残基がヒトの生殖細胞系にどのような組み合わせで変換できるかを確実に予測することはまだ不可能である。
【0007】
従って、好ましくは分子の複数の機能特性を維持する必要があるため、CDR生殖細胞系は複雑で要因の多い問題であり、この例では以下が含まれる:ヒト及び試験動物種(例えばカニクイザル、カニを食べるサル(macaque)としても知られている、すなわちMacaca fascicularis)の両方からのCD47に対する標的結合特異性、親和性、vドメイン生物物理学的安定性、及び/又はIgG発現量。抗体工学の研究により、主要なCDRの単一残基位置の変異でさえ、これらすべての望ましい分子特性に劇的な影響を与えることが示されている。
【0008】
国際公開第2014/093678A2号は、「VxP037」と呼ばれる拮抗性マウス抗CD47 IgG分子、及びVxP037のヒト化形態の調製について記載している。VxP037のこれらのヒト化形態は、古典的なヒト化技術を使用して、すなわちKabat定義されるマウスCDRをヒト重鎖及び軽鎖フレームワーク配列に移植することにより、ヒトフレームワーク残基の一部が、対応する位置にあるVxP037マウス残基に潜在的に復帰突然変異されて産生された。上記の理由により、国際公開第2014/093678A2号に記載されているこのようなVxP037のヒト化形態は理想的ではない。
【0009】
本発明は、多数の最適化された抗CD47抗体及びその医学的使用を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの態様において、ヒトCD47に、及びまた任意選択的にカニクイザルCD47に、及び/又はマウスCD47に、又はその抗原結合部分に、特異的に結合する抗体分子が提供され、ここで抗体分子又はその抗原結合部分は、以下を有する重鎖可変領域を含む:
【0011】
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-T、又は任意のアミノ酸(例えばS、N、又はR)-F-T、又はT-Nの保存的置換、又はN-Y-Y-Iの保存的置換、又はI-Fの保存的置換酸、又は任意のアミノ酸(例えばV又はG)(配列番号1);
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR2:M、又はM-G-Iの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばN、V、又はD)-I-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-P-V、又は任意のアミノ酸(例えばG又はF)-D、又はD-Gの保存的置換、又はG-D-T-Nの保存的置換、又はN(例えばR)-Yの保存的置換、又はY-Nの保存的置換、又はN(例えばS)-P-S-F-Q-Gの保存的置換(配列番号2);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR3:G-G-Y、又は任意のアミノ酸(例えばH、I、Q、又はF)-T、又は任意のアミノ酸(例えばV又はI)-M、又は任意のアミノ酸(例えばT、R、P、A、又はL)-D、又は任意のアミノ酸(例えばG)-R、又は任意のアミノ酸(例えばQ、N、Y、S、W、K、A、E、F、H、I、L、M、T、又はV)(配列番号3)。
【0012】
本発明の態様において、抗体分子又は抗原結合部分のHCDR1は、配列GYTFTNYYVF(配列番号4)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のHCDR3は、配列GGYTMDY(配列番号5)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR3)を除外してもよい。
【0013】
抗体分子又は抗原結合部分は、以下を有する軽鎖可変領域をさらに含んでもよい:
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR1:R-S-S-Q、又はQ-S-Lの保存的置換、又はL-Lの保存的置換、又はL-H-S-Nの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばQ、S、T、A、又はG)、又はN(例えばQ、S、T、又はG)-Gの保存的置換、又はG(例えばA)-Yの保存的置換酸、又は任意のアミノ酸(例えばN又はS)-T、又はT(例えばN)-Y-L-Hの保存的置換酸、又は任意のアミノ酸(例えばD)(配列番号6);
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR2:K、又は任意のアミノ酸(例えばL又はM)-V、又は任意のアミノ酸(例えばG)-S-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-R-L、又は任意のアミノ酸(例えばF、A、又はS)-S(配列番号7);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR3:F、又は任意のアミノ酸(例えばL、M、S、T、又はV)-Q-Q、又は任意のアミノ酸(例えばN、A、T、又はS)-T、又は任意のアミノ酸(例えばL、M、又はI)-H、又はH-Tの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばV、I、A、又はF)-P、又は任意のアミノ酸(例えばL)-R、又は任意のアミノ酸(例えばW)-T(配列番号8)。
【0014】
本発明の態様において、抗体分子又は抗原結合部分のLCDR1は、配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号9)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR2は、配列KVSYRFS(配列番号10)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR2)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR3は、配列SQNTHVPRT(配列番号11)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR3)を除外してもよい。
【0015】
上記CDR配列は、表1に提示され以下で説明される「統一された」定義を使用して定義される。代わりに、本発明のCDR配列は、構造生物学に基づき、すべての免疫グロブリンvドメインの命名法を統一することを目的とする、より短い「AHo」定義(表1を参照)を使用して定義してもよい。
【0016】
より短い「AHo」CDR定義を使用して、1つの態様において本発明は、ヒトCD47に、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分を提供し、ここで、抗体分子又は抗原結合部分は、以下を有する重鎖可変領域を含む:
【0017】
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR1:G-S-G-Y-T、又は任意のアミノ酸(例えばS、N、又はR)-F-T、又はT-Nの保存的置換、又はN-Y-Yの保存的置換(配列番号12);
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR2:I-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-P-V、又は任意のアミノ酸(例えばG又はF)-D、又はD-Gの保存的置換、又はG-D-T-Nの保存的置換、又はN(例えばR)-Yの保存的置換、又はY-Nの保存的置換、又はN(例えばS)-P-S-F-Q-Gの保存的置換(配列番号13);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR3:G-G-Y、又は任意のアミノ酸(例えばH、I、Q、又はF)-T、又は任意のアミノ酸(例えばV又はI)-M、又は任意のアミノ酸(例えばT、R、P、A、又はL)-D、又は任意のアミノ酸(例えばG)(配列番号14)。
【0018】
AHo定義を使用して、抗体分子又は抗原結合部分のHCDR1は、配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のHCDR3は、配列GGYTMD(配列番号16)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR3)を除外してもよい。
【0019】
抗体分子又は抗原結合部分は、以下のようにAHo定義を使用して定義されるCDRを有する軽鎖可変領域をさらに含んでもよい:
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR1:S-S-Q、又はQ-S-Lの保存的置換、又はL-Lの保存的置換、又はL-H-S-Nの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばQ、S、T、A、又はG)、又はN(例えばQ、S、T、又はG)-Gの保存的置換、又はG(例えばA)-Yの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばN又はS)-T、又はT(例えばN)-Yの保存的置換(配列番号17)。
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR2:K、又は任意のアミノ酸(例えばL又はM)-V、又は任意のアミノ酸(例えばG)-S-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-R-L、又は任意のアミノ酸(例えばF、A、又はS)-S(配列番号7);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR3:Q、又は任意のアミノ酸(例えばN、A、T、又はS)-T、又は任意のアミノ酸(例えばL、M、又はI)-H、又はH-Tの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばV、I、A、又はF)-P、又は任意のアミノ酸(例えばL)-R、又は任意のアミノ酸(例えばW)(配列番号18)。
【0020】
AHoの定義を使用して、本発明の態様において抗体分子又は抗原結合部分のLCDR1は、配列SSQSLVHSNGNTY(配列番号19)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR2は、配列KVSYRFS(配列番号10)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR2)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR3は、配列NTHVPR(配列番号20)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR3)を除外してもよい。
【0021】
本発明によれば、治療薬に結合された本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分を含む免疫結合体も提供される。
別の態様において本発明は、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分をコードする核酸分子が提供される。
本発明の核酸分子を含むベクターがさらに提供される。
本明細書で定義される本発明の核酸分子又はベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0022】
さらなる態様において、抗CD47抗体及び/又はその抗原結合部分を産生する方法であって、抗体及び/又はその抗原結合部分の発現及び/又は産生をもたらす条件下で本発明の宿主細胞を培養し、抗体及び/又はその抗原結合部分を前記宿主細胞又は培養物から単離することを含む方法が提供される。
【0023】
本発明の別の態様において、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクターを含む医薬組成物が提供される。
【0024】
さらに、被験体における免疫応答を増強する方法であって、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクター、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物の有効量を、投与することを含む方法が提供される。
【0025】
さらなる態様において、被験体の癌を治療又は予防する方法であって、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクター、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物の有効量を、投与することを含む方法が提供される。
【0026】
本発明はまた、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分を、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体を、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子を、又は本明細書で定義される本発明のベクターを、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物を提供する。
【0027】
別の態様において本発明は、第2の治療薬、例えば抗癌剤との併用療法で、別々に、連続して、又は同時に使用するための、本明細書で定義される本発明の抗体分子、又はその抗原結合部分、又は免疫結合体、又は核酸分子、又はベクター、又は治療方法を提供する。
【0028】
さらなる態様において、癌の治療のための薬剤の製造における、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクター、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0029】
本発明はまた、被験体の虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を治療又は予防する方法であって、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0030】
全ての態様において、自己免疫疾患又は炎症性疾患は、関節炎、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス、グレーブス病、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎からなる群から選択され得る。
【0031】
全ての態様において、虚血-再灌流障害は、臓器移植、急性腎障害、心肺バイパス手術、肺高血圧症、鎌状赤血球症、心筋梗塞、脳卒中、外科的切除及び再建手術、付属器又は他の身体部分の再付着、皮膚移植又は外傷で発生する可能性がある。
【0032】
また、虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の治療の治療に使用される、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物も、提供される。
【0033】
さらに、虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の治療用薬剤の製造における、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の使用が提供される。
【0034】
本発明はまた、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の有効量を投与することを含む、被験体の心血管疾患又は線維性疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0035】
また、心血管疾患又は線維性疾患の治療で使用される、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物も提供される。
【0036】
さらに、虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、又は線維性疾患の治療のための薬剤の製造における、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の使用も提供される。
【0037】
本発明の任意の態様における心血管疾患は、例えば冠状動脈性心疾患又はアテローム性動脈硬化症であり得る。
【0038】
本発明の任意の態様における線維性疾患は、心筋梗塞、狭心症、変形性関節炎、肺線維症、嚢胞性線維症、気管支炎、及び喘息からなる群から選択され得る。
【0039】
本発明はまた、ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分を産生する方法を提供し、この方法は以下の工程を含む:
(1)非ヒト起源の抗CD47 CDRをヒトvドメインフレームワークに移植して、ヒト化抗CD47抗体分子又はその抗原結合部分を産生する工程;
(2)CDR内に1つ以上の変異を含むヒト化抗CD47抗体分子又はその抗原結合部分のクローンのファージライブラリを生成する工程;
(3)ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47への結合について、ファージライブラリをスクリーニングする工程;
(4)ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に対する結合特異性を有するクローンを、スクリーニング工程(3)から選択する工程;及び
(5)工程(4)から選択されたクローンから、ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分を産生する工程。
【0040】
この方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づいて、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDRの特定の位置におけるさらなる探索的変異誘発に基づいて、追加のクローンを産生して、ヒト化を増強し、及び/又はヒトT細胞エピトープ含有量を最小化し、及び/又は工程(5)で産生された抗体分子又はその抗原結合部分の製造特性を改善する、さらなる工程を含むことができる。
【0041】
この方法は、工程(4)で選択されたクローン又は工程(5)で産生された抗体分子の1つ以上のvドメインの免疫原性を評価し、例えばCDR及びフレームワーク領域中に任意選択的に1つ以上のさらなる突然変異を生成して、免疫原性を低減させるさらなる工程を含むことができる。免疫原性は、例えば本明細書に記載されるインシリコ(in silico)技術を使用して、T細胞エピトープの位置を特定することにより評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】ヒト及びマウスCD47-Fcタンパク質に対するライブラリ由来抗CD47 scFvの直接結合ELISA。3つの別々のファージ選択ブランチ(AはブランチAペリプレップ(periprep)ELISAを示し、BはブランチBペリプレップELISAを示し、CはブランチCペリプレップELISAを示す)からクローンを得て、ここで各ラウンドでファージ集団は、ビオチン化したヒト、マウス、及び/又はカニクイザルCD47-Fcタンパク質について選択された。各選択ラウンドの後、ライブラリ由来クローン(黒丸)をヒトとマウスの両方のCD47-Fcに対してスクリーニングした。各ラウンドの平均±SD値は灰色の棒で表される。各グラフで、X軸は選択ラウンド(「R」)を示し、「H」はヒトを、「M」はマウスを示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。
【
図2】生殖細胞系への突然変異に対するCDR残基の耐性の分析。854個のユニークなscFvクローンのELISA陽性集団のCDRにおけるマウスアミノ酸の保持頻度のプロットをそれぞれV
H(A)及びV
L(B)ドメインについて示す。HCDR3内以外では、ヒト/マウス残基の変異誘発について標的とされる残基のみがプロットされる。各プロットでは、CDR残基がX軸に示され、Y軸は各マウス残基の保持率を示している。X軸の括弧内に記載されているCDR残基は、移植に使用されたヒト生殖細胞系で見つかった残基(IGKV2-28及びIGHV5-51)と同一であった。括弧内ではないが値が0に設定されているHCDR2内の残基は、移植プロセス中にヒト生殖細胞系に変異した。両方のプロットで、75%における灰色の破線は、ヒト生殖細胞系によるマウス残基の置換の耐性のカットオフを表す。
【
図3】ヒト、マウス、及びカニクイザルCD47-Fcタンパク質に対するIgG結合の直接力価測定ELISA。ヒトIgG1ヌル(null)形態のキメラ抗CD47(mVH/mVL)、ライブラリ由来クローンを、ヒト、マウス、及びカニクイザルCD47-Fcタンパク質(A~H)に対して、直接結合ELISAで力価(μg/ml)を測定した。mVH/mVL、ライブラリ由来クローン、及びデザイナークローンMHは、CD47の3つのオルソログすべてに対して結合活性を示した。クローンVH-A1/VL-B1は、ヒト及びカニクイザルCD47に結合するが、マウスには結合しない。クローンTTPは、ほぼすべての結合機能を喪失した。各グラフのX軸はIgG濃度(μg/ml)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。
【
図4】ELISAベースのCD47-Fc-SIRPα競合アッセイ。プレート結合ヒトSIRPαに対するヒト(A)、カニクイザル(B)、及びマウス(C)CD47-Fcタンパク質のELISA結合シグナルを、力価測定された競合ライブラリ由来のリード(IgG1ヌル形態のA-D5、G-B6、D-H3、及びVH-A1/VL-B1、陰性対照としてアイソタイプIgG1、及び陽性対照としてIgG1ヌル形態のmVH/mVL)の存在下で調べた。すべてのライブラリ由来のIgG及びmVH/mVLは、ヒト、マウス、及びカニクイザルのCD47-Fcタンパク質の結合の濃度依存的低下を示し、共有エピトープの維持を示唆した。特に、クローンA-D5はmVH/mVLと比較して、マウスCD47の中和において顕著に高い力価を示し、VH-A1/VL-B1はマウスCD47の活性を中和する能力を示さなかった。デザイナークローンMHもTTPも中和シグナルを示さず、明確にするために、ここではプロットされていない。各グラフにおいて、X軸は抗体濃度(nM)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。図の凡例において「IC」はアイソタイプ対照を指す。
【
図5】優先順位付けされたリードクローンの結合特異性分析。IgG1(A)及びIgG1ヌル(B)形態のmVH/mVL、及びIgG1ヌル形態のライブラリ由来リードA-D5(C)、VH-A1/VL-B1(D)、F-E7(E)、D-H3(F)、及びG-B6(G)について、オフターゲットホモログ結合リスクを、CD47-Fcオーソログ及び各X軸(「B」はブランクを指す)でラベル付けされた14個のヒト免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質のパネルの直接ELISAにより調べた。ヒト、カニクイザル、及びマウスCD47-Fc(h/c/mCD47-Fc)への結合は、1μg/mlのIgG濃度で行った。他のすべてのタンパク質への結合は、10μg/mlのIgG濃度で行った。各プロットで、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。ほとんどすべてのIgGについて、hCD47-Fc、mCD37-Fc、及びcCD47-Fc単独への結合が観察された。他のヒトタンパク質では、バックグラウンドを超える結合は観察されなかった。特に、クローンVH-A1/VL-B1は、再度マウスCD47に対する反応性を示さなかった。
【
図6】ヒト及びカニクイザルCD47+ CHO-K1細胞への結合のフローサイトメトリー。市販の抗CD47抗体MS1991、ヒトIgG1(「I IgG1」)及びIgG4(「I IgG4」)アイソタイプ対照、IgG1ヌル(「IgG1N」)及びIgG4(S228P)形態の両方のリードライブラリ由来IgGを、カニクイザルトランスフェクトCHO-K1細胞(A)、ヒトトランスフェクトCHO-K1細胞(B)、及び野生型(wt、すなわちトランスフェクトされていない)CHO-K1細胞(C)に対する特異的結合について調べた。IgGは、24~100,000ng/mlの範囲の濃度で試験した。すべてのCD47特異的抗体についてヒト及びカニクイザル細胞株の両方に対する濃度依存的な結合が観察されたが、アイソタイプ対照では観察されなかった。ほとんどの抗体について、バックグラウンドを超える低レベルの結合シグナルが野生型CHO-K1細胞に対して観察され、mVH/mVL由来のIgGのシグナルについては著しく強く、特にVH-A1/VL-B1 IgGについてはシグナルが低かった。各グラフで、X軸は試験した各IgGとその濃度(ng/ml)を示し、Y軸は平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図7】ヒトHL60細胞への結合のフローサイトメトリー試験。市販の抗CD47抗体MS1991、ヒトIgG1及びIgG4アイソタイプ対照(それぞれ「I IgG1」及び「I IgG4」)、IgG1ヌル(「IgG1N)及びIgG4(S228P)の両方の形態のリードライブラリ由来IgGのHL60細胞への特異的結合について調べた。IgGは、24~100000ng/mlの範囲の濃度で試験された。アイソタイプ対照以外のすべてのクローンで濃度依存的な結合が観察された。各グラフで、X軸は試験した各IgGとその濃度(ng/ml)を示し、Y軸は平均蛍光強度(MFI)を示す。
【
図8】開発リスクELISA。このアッセイは、IgG1ヌル形態のA-D5、G-B6、D-H3、VH-A1/VL-B1、及びmVH/mVL抗体が、負に帯電した生体分子インスリン(A)、2本鎖DNA(dsDNA)(B)、及び1本鎖DNA(ssDNA)(C)への結合をほとんど又はまったく示さないことを示した。各グラフのX軸はIgG濃度(μg/ml)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。ボコシズマブ及びブリアキヌマブ類似体で観察されるこれらの分子への強力なオフターゲット結合は、治療用抗体の臨床的性能の低さの高リスク指標であることが示されている。
【
図9】ヒト、マウス、及びカニクイザルCD47-Fcタンパク質へのデザイナーIgGの結合の直接力価測定ELISA。ヒトIgG1ヌル形態のキメラ抗CD47(mVH/mVL)、デザイナーA-D5由来クローンを、ヒト(A)、カニクイザル(B)、及びマウス(C)CD47-Fcタンパク質に対する直接結合ELISAで力価測定した(μg/ml)。各グラフで、X軸はIgG濃度(μg/ml)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。ほとんどのクローンは、CD47の3つのオーソログすべてに対して結合活性を示したが、クローンA-D5.7はカニクイザルCD47への弱い結合のみを示し、クローンA-D5.10はマウスCD47へのほとんどすべての結合機能を消失していた。図の凡例では、「IgG1NI」はIgG1ヌルアイソタイプを指す。
【
図10】デザイナーIgGについてのELISAベースのCD47-Fc-SIRPα競合アッセイ。プレート結合ヒトSIRPαに対するヒト(A)、カニクイザル(B)、及びマウス(C)CD47-Fcタンパク質のELISA結合シグナルを、IgG1ヌル形態の力価測定競合デザイナーIgG及び陰性対照としてのアイソタイプIgG1(「IgG1NI」で表される)及び陽性対照としてのIgG1ヌル形態のmVH/mVLの存在下で調べた。各グラフで、X軸はIgG濃度(nM)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。特に、いくつかのA-D5由来のクローンは再度、mVH/mVLと比較して、マウスCD47の中和において特に顕著な効力の上昇を示した。それに対して弱いELISA結合シグナルを示したオーソログについて、デザイナークローンA-D5.7とA-D5.10のどちらも中和シグナルを示さず、従って明確にするために、ここではプロットされていない。
【
図11】ヒト、マウス、及びカニクイザルCD47-Fcタンパク質に対するA-D5.4由来デザイナーIgG結合の直接力価測定ELISA。ヒトIgG1ヌル形態のキメラ抗CD47(mVH/mVL)、デザイナーA-D5.4由来クローンを、ヒト(A)、カニクイザル(B)、及び(C)マウスCD47-Fcタンパク質に対して、直接結合ELISAで力価測定した(μg/ml)。各グラフで、X軸はIgG濃度(μg/ml)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。すべてのクローンは、CD47の3つのオルソログすべてに対して結合活性を示した。図の凡例では、「IgG1NI」はIgG1ヌルアイソタイプを指す。
【
図12】デザイナーIgGについてのELISAベースのCD47-Fc-SIRPα競合アッセイ。プレート結合ヒトSIRPαに対するヒト(A)、カニクイザル(B)、及びマウス(C)CD47-Fcタンパク質のELISA結合シグナルを、IgG1ヌル形態の力価測定された競合デザイナーIgG、及び陰性対照としてのアイソタイプIgG1(「IgG1NI」で表される)、及び陽性対照としてのIgG1ヌル形態のmVH/mVLの存在下で調べた。各グラフで、X軸はIgG濃度(nM)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。特に、いくつかのA-D5.4由来のクローンは再度、mVH/mVLと比較して、マウスCD47の中和における顕著な効力上昇を示した。
【
図13】デザイナークローンA-D5.4及びA-D5.16の結合特異性分析。IgG1ヌル形態のA-D5.4(A)及びA-D5.16(B)のオフターゲットホモログ結合リスクを、CD47-Fcオーソログ及び14個のヒト免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質のパネル(X軸上でラベル付けされる;「B」は空白を指す)に対する直接ELISAにより調べた。すべてのタンパク質への結合は、10μg/mlのIgG濃度で行った。各プロットでは、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。両方のIgGについて、hCD47-Fc、mCD37-Fc、及びcCD47-Fc単独への結合が観察された。他のヒトタンパク質では、バックグラウンドを超える結合は観察されなかった。
【
図14】デザイナークローンA-D5.4及びA-D5.16の開発リスクELISA。このアッセイは、IgG1ヌル形態のA-D5.4及びA-D5.16抗体が、負に帯電した生体分子インスリン(A)、2本鎖DNA(dsDNA)(B)、及び1本鎖DNA(ssDNA)(C)への低い結合(陰性対照であるウステキヌマブ以下)を示すことを示した。各グラフのX軸はIgG濃度(μg/ml)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。ボコシズマブ及びブリアキヌマブ類似体で観察されるこれらの分子への強力なオフターゲット結合は、治療用抗体の臨床的性能の低さの高リスク指標であることが示されている。
【
図15】CHO-K1細胞へのライブラリ由来及びデザイナーIgGの結合のフローサイトメトリー。市販の抗CD47抗体MS1991、ヒトIgG1及びIgG4アイソタイプ対照(それぞれ「I IgG1」及び「I IgG4」で表される)、及びIgG1ヌル及びIgG4形態の両方のリードIgG A-D5、A-D5.4、及びA-D5.16を野生型(すなわち、トランスフェクトされていない)CHO-K1細胞上の特異的結合について調べた。IgGは、24~25,000ng/mlの範囲の濃度で試験した。IgG1ヌル及びIgG4形態の両方の親mVH/mVL抗体について濃度依存的結合が観察されたが、アイソタイプ対照、MS1991、及びIgG A-D5、A-D5.4、及びA-D5.16(両方ともIgG形態)では、結合が弱いか又はまったく観察されなかった。各グラフで、X軸はIgGの濃度(ng/ml)を示し、Y軸はMFIを示す。
【
図16】ヒトHL60細胞への結合のフローサイトメトリー試験。市販の抗CD47抗体MS1991、ヒトIgG1及びIgG4アイソタイプ対照(それぞれ「I IgG1」及び「I IgG4」で表される)、IgG1ヌル及びIgG4(S228P)の両方の形態のリードIgGを、HL60細胞への特異的結合について調べた。IgGは、24~100000ng/mlの範囲の濃度で試験された。アイソタイプ対照以外のすべてのクローンで濃度依存的な結合が観察された。各グラフで、X軸はIgGの濃度(ng/ml)を示し、Y軸はMFIを示す。
【
図17】リード抗体vドメイン中のT細胞エピトープペプチド含量。mVH/mVL、A-D5、A-D5.4、A-D5.16、及びA-D5.16-DI抗体のvドメインを、生殖細胞系(GE)、高親和性外来(HAF)、低親和性外来(LAF)、及びTCED+ T細胞受容体エピトープの存在について調べた。mVH/mVLのVH及びVLドメインの両方が、複数の高リスクのヒトT細胞エピトープといくつかの生殖細胞系エピトープを含むことがわかった。すべてのリードクローンにおいて、高リスクのエピトープ含有量が大幅に低下し、生殖細胞系エピトープ含有量が大幅に改善された。
【
図18】ヒト、マウス、及びカニクイザルCD47-Fcタンパク質に対するA-D5.16及びA-D5.16-DIデザイナーIgG結合の直接力価測定ELISA。ヒトIgG1ヌル形態のキメラ抗CD47(mVH/mVL)、デザイナーA-D5.16及びA-D5.16-DIクローンを、ヒト(A)、カニクイザル(B)、及び(C)マウスCD47-Fcタンパク質に対して、直接結合ELISAで力価測定した(μg/ml)。すべてのクローンは、CD47の3つのオルソログすべてに対して結合活性を示した。各グラフで、X軸はIgG濃度(μg/ml)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。
【
図19】デザイナーIgGについてのELISAベースのCD47-Fc-SIRPα競合アッセイ。プレート結合したヒトSIRPαに対するヒト(A)、カニクイザル(B)、及びマウス(C)CD47-Fcタンパク質のELISA結合シグナルを、IgG1ヌル形態の力価測定された競合デザイナーIgG及び陰性対照としてのアイソタイプIgG1、及び陽性対照としてIgG1ヌル形態のmVH/mVLの存在下で調べた。各グラフで、X軸は抗体濃度(nM)を示し、Y軸は結合シグナル(OD450nm)を示す。
【
図20】フローサイトメトリーによる食作用の分析。(A)IgG4(S228P)形態のクローンA-D5、A-D5.4、A-D5.16、及びmVH/mVL、及びさらにIgG1ヌル形態のA-D5(「IgG1 A-D5N」で表される)について、ヒトCD14+マクロファージによるCSFE標識HL60細胞の食作用のフローサイトメトリー分析を、複数の濃度(X軸に表示)で実施した。X軸は抗体濃度(μg/ml)を示し、Y軸はCFSE
+ 及びCD14
+ である細胞%を示す。(B)次に、IgG4形態のA-D5及びmVH/mVLの複数のヒトマクロファージドナーで標準濃度10μg/mlで、分析を繰り返した。X軸はドナー番号を示し、Y軸はCFSE
+ 及びCD14
+ である細胞%を示し、「V」はビヒクルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(発明の詳細な説明)
本発明の第1の態様において、ヒトCD47に、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分が提供され、ここで抗体分子又は抗原-結合部分は、以下を有する重鎖可変領域を含む:
【0044】
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR1:G-Y-T、又は任意のアミノ酸(例えばS、N、又はR)-F-T、又はT-Nの保存的置換、又はN-Y-Y-Iの保存的置換、又はI-Fの保存的置換酸、又は任意のアミノ酸(例えばV又はG)(配列番号1);
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR2:M、又はM-G-Iの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばN、V、又はD)-I-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-P-V、又は任意のアミノ酸(例えばG又はF)-D、又はD-Gの保存的置換、又はG-D-T-Nの保存的置換、又はN(例えばR)-Yの保存的置換、又はY-Nの保存的置換、又はN(例えばS)-P-S-F-Q-Gの保存的置換(配列番号2);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR3:G-G-Y、又は任意のアミノ酸(例えばH、I、Q、又はF)-T、又は任意のアミノ酸(例えばV又はI)-M、又は任意のアミノ酸(例えばT、R、P、A、又はL)-D、又は任意のアミノ酸(例えばG)-R、又は任意のアミノ酸(例えばQ、N、Y、S、W、K、A、E、F、H、I、L、M、T、又はV)(配列番号3)。
【0045】
本発明の態様において、抗体分子又は抗原結合部分のHCDR1は、配列GYTFTNYYVF(配列番号4)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のHCDR3は、配列GGYTMDY(配列番号5)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR3)を除外してもよい。
【0046】
本発明において、抗体分子又はその抗原結合部分は、以下を有する軽鎖可変領域をさらに含んでもよい。:
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR1:R-S-S-Q、又はQ-S-Lの保存的置換、又はL-Lの保存的置換、又はL-H-S-Nの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばQ、S、T、A、又はG)、又はN(例えばQ、S、T、又はG)-Gの保存的置換、又はG(例えばA)-Yの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばN又はS)-T、又はT(例えばN)-Y-L-Hの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばD)の保存的置換(配列番号6);
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR2:K、又は任意のアミノ酸(例えばL又はM)-V、又は任意のアミノ酸(例えばG)-S-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-R-L、又は任意のアミノ酸(F、A、又はS)-S(配列番号7);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR3:F、又は任意のアミノ酸(例えばL、M、S、T、又はV)-Q-Q、又は任意のアミノ酸(例えばN、A、T、又はS)-T、又は任意のアミノ酸(例えばL、M、又はI)-H、又はH-Tの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばV、I、A、又はF)-P、又は任意のアミノ酸(例えばL)-R、又は任意のアミノ酸(例えばW)-T(配列番号8)。
【0047】
本発明の態様において、抗体分子又は抗原結合部分のLCDR1は、配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号9)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR2は、配列KVSYRFS(配列番号10)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR2)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR3は、配列SQNTHVPRT(配列番号11)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR3)を除外してもよい。
【0048】
上記のCDR配列は、表1に提示される「統一された」定義を使用して定義される。代わりに本発明におけるCDR配列は、構造生物学に基づき、すべての免疫グロブリンvドメインの命名法を統一することを目的とする、より短い「AHo」定義(表1を参照)を使用して定義され得る。
【0049】
より短い「AHo」定義を使用して、1つの態様において本発明は、ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に、特異的に結合する抗体分子又はその抗原結合部分を提供し、ここで、抗体分子又は抗原結合部分は、以下を有する重鎖可変領域を含む:
【0050】
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR1:G-S-G-Y-T、又は任意のアミノ酸(例えばS、N、又はR)-F-T、又はT-Nの保存的置換、又はN-Y-Yの保存的置換、(配列番号12);
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR2:I-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-P-V、又は任意のアミノ酸(例えばG又はF)-D、又はD-Gの保存的置換、又はG-D-T-Nの保存的置換、又はN(例えばR)-Yの保存的置換、又はY-Nの保存的置換、又はN(例えばS)-P-S-F-Q-Gの保存的置換(配列番号13);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するHCDR3:G-G-Y、又は任意のアミノ酸(例えばH、I、Q、又はF)-T、又は任意のアミノ酸(例えばV又はI)-M、又は任意のアミノ酸(例えばT、R、P、A、又はL)-D、又は任意のアミノ酸(例えばG)(配列番号14)。
【0051】
AHo定義を使用して、抗体分子又は抗原結合部分のHCDR1は、配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のHCDR3は、配列GGYTMD(配列番号16)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体HCDR3)を除外してもよい。
【0052】
抗体分子又は抗原結合部分は、以下を有する軽鎖可変領域をさらに含んでもよい:
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR1:S-S-Q、又はQ-S-Lの保存的置換、又はL-Lの保存的置換、又はL-H-S-Nの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばQ、S、T、A、又はG)、又はN(例えばQ、S、T、又はG)-Gの保存的置換、又はG(例えばA)-Yの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばN又はS)-T、又はT(例えばN)-Yの保存的置換(配列番号17)。
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR2:K、又は任意のアミノ酸(例えばL又はM)-V、又は任意のアミノ酸(例えばG)-S-N、又は任意のアミノ酸(例えばY)-R-L、又は任意のアミノ酸(例えばF、A、又はS)-S(配列番号7);及び
以下の順序の配列のアミノ酸を有するLCDR3:Q、又は任意のアミノ酸(例えばN、A、T、又はS)-T、又は任意のアミノ酸(例えばL、M、又はI)-H、又はH-Tの保存的置換、又は任意のアミノ酸(例えばV、I、A、又はF)-P、又は任意のアミノ酸(例えばL)-R、又は任意のアミノ酸(例えばW)(配列番号18)。
【0053】
AHoの定義を使用して、本発明の態様において抗体分子又は抗原結合部分のLCDR1は、配列SSQSLVHSNGNTY(配列番号19)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR1)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR2は、配列KVSYRFS(配列番号10)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR2)を除外してもよく、及び/又は抗体分子又は抗原結合部分のLCDR3は、配列NTHVPR(配列番号20)(国際公開第2014/093678A2号に開示されているVxP037マウス/ヒト化抗体LCDR3)を除外してもよい。
【0054】
本明細書で詳述するように本発明者らは、国際公開第2014/093678A2号に開示されたマウス抗CD47抗体VxP037に由来するCDR配列を使用して、多数の最適化された抗CD47抗体分子を生成することに初めて成功した。本発明の実施態様において、これらの抗体分子は、ヒトCD47及びカニクイザルCD47の両方に、一部のクローンではマウスCD47に結合特異性を有するように選択されている(動物試験種での研究を促進するため)。本明細書に記載の最適化された抗体分子のさらなる精製により、CD47のマウスオーソログへの結合の改善、マウスCD47-SIRPαシグナル伝達の中和効力の改善、可変ドメイン安定性の改善、高い発現収率、及び/又は免疫原性の低下が得られた。例えば、本明細書において我々は、マウス抗CD47抗体VxP037の前駆分子がLCDR1及びLCDR2中に2つの大きな免疫原性リスクを持ち、古典的なヒト化技術(国際公開第2014/093678A2号で使用される)で実施されるが、本明細書に記載の最適化された抗体分子において改善されることを証明する。
【0055】
本発明の抗体分子又は抗原結合部分は、配列番号4(HCDR1)、123(HCDR2)、5(HCDR3)、9(LCDR1)、10(LCDR2)、及び11(LCDR3)のCDR配列を含む抗体分子と比較して、インシリコ免疫原性が改善されている可能性がある。
【0056】
本発明の抗体分子又は抗原結合部分は、配列番号4(HCDR1)、123(HCDR2)、5(HCDR3)、9(LCDR1)、10(LCDR2)、11(LCDR3)のCDR配列を含む抗体分子と比較して、ハムスターCD47への結合を示さないか、又はハムスターCD47への結合の低下を示し得る。例えば本発明の抗体分子又は抗原結合部分は、配列番号4(HCDR1)、123(HCDR2)、5(HCDR3)、9(LCDR1)、10(LCDR2)、11(LCDR3)のCDR配列を含む抗体と比較して、フローサイトメトリーにより測定した場合、CHO細胞への結合を示さないか、CHO細胞への結合の低下を示し得る。
図15に示されるように、本発明の代表的な抗体分子はCHO細胞とほとんど又は全く交差反応性を示さないが、IgG1ヌル又はIgG4形態のクローンmVH/mVLの元のマウスvドメインは、CHO細胞への強力な濃度依存性結合を駆動する。
【0057】
本発明の好適な最適化された抗CD47抗体分子は、対応するマウスCDR又は他の(フレームワークなどの)アミノ酸位置に、必ずしも最大数のヒト生殖細胞系置換を有するとは限らない。以下の実験欄で詳しく説明されるように、我々は、抗CD47結合特性及び/又はその他の望ましい特徴に関して、「最大限にヒト化された」抗体分子が「最大限に最適化」されている訳ではないことを見いだした。
【0058】
本発明は、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分のアミノ酸配列に対する修飾を包含する。例えば本発明は、機能的に同等の可変領域及びそれらの特性に大きく影響しないCDRと、活性及び/又は親和性が増強又は低下した変異体とを含む、抗体分子及びその対応する抗原結合部分を含む。例えばアミノ酸配列を変異させて、CD47に対する所望の結合親和性を有する抗体を得ることができる。1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ及び/又はカルボキシル末端融合を含む挿入体、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入体が想定される。末端挿入体の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体分子、又はエピトープタグに融合された抗体分子が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、血液循環中の抗体の半減期を延長させる酵素又はポリペプチドの抗体のN末端又はC末端への融合体が含まれる。
【0059】
本発明の抗体分子又は抗原結合部分は、グリコシル化及び非グリコシル化ポリペプチド、並びに他の翻訳後修飾、例えば異なる糖を用いるグリコシル化、アセチル化、及びリン酸化を有するポリペプチドを含み得る。本発明の抗体分子又は抗原結合部分は変異させて、例えば1つ以上のアミノ酸残基を追加、除去、又は置換することにより、そのような翻訳後修飾を改変して、グリコシル化部位を形成又は除去することができる。
【0060】
本発明の抗体分子又は抗原結合部分は、例えばアミノ酸置換により修飾して、抗体中の潜在的なタンパク質分解部位を除去することができる。
【0061】
抗体分子又はその抗原結合部分において、HCDR1はアミノ酸配列:G-Y-T/S/N/R-F-T/N-N/S-Y-Y-I/V-F/V/G(配列番号21)を有し得る;HCDR2はアミノ酸配列:M/I-G-V/N/I/D-I-N/Y-P-V/G/F-N/D-G/S-D-T-N/R/K-F/Y-N/S-P-S-F-Q-G(配列番号22)を有し得る;HCDR3はアミノ酸配列:G-G-F/H/I/Q/Y-T/V/I-M/T/R/P/A/L-D/G-Y/Q/N/R/S/W/K/A/E/F/H/I/L/M/T/V(配列番号23)を有し得る。あるいは、AHo定義を使用して、抗体分子又はその抗原結合部分において、HCDR1はアミノ酸配列:G-S-G-Y-T/S/N/R-F-T/N-N/S-Y-Y(配列番号24)を有し得る;HCDR2はアミノ酸配列:I-N/Y-P-V/G/F-N/D-G/S-D-T-N/R/K-F/Y-N/S-P-S-F-Q-G(配列番号25)を有し得る;そして、HCDR3はアミノ酸配列:G-G-F/H/I/Q/Y-T/V/I-M/T/R/P/A/L-D/G(配列番号26)を有し得る。
【0062】
例えばHCDR1はアミノ酸配列:G-Y-T/S-F-T-N-Y-Y-I-F(配列番号27)を有し得る;HCDR2はアミノ酸配列:M/I-G-I/D-I-N-P-V-N/D-G-D-T-N/R-F/Y-N/S-P-S-F-Q-G(配列番号28)を有し得る;HCDR3はアミノ酸配列:G-G-F/Y-T-M/P-D-Y/R/K/I(配列番号29)を有し得る。あるいは、AHo定義を使用して、HCDR1はアミノ酸配列:G-S-G-Y-T/S-F-T-N-Y-Y(配列番号30)を有し得る;HCDR2はアミノ酸配列:I-N-P-V-N/D-G-D-T-N/R-F/Y-N/S-P-S-F-Q-G(配列番号31)を有し得る;そして、HCDR3はアミノ酸配列:G-G-F/Y-T-M/P-D(配列番号32)を有し得る。
【0063】
抗体分子又はその抗原結合部分において、LCDR1はアミノ酸配列:R-S-S-Q/H-S-F/L-L/V-H-S-N/Q/A-G/A-Y/N/S-N/T-Y-L-H/D(配列番号33)を有し得る;LCDR2はアミノ酸配列:L/K/M-V/G-S-N/Y-R-A/F/L/S-S(配列番号34)を有し得る;LCDR3はアミノ酸配列:F/L/M/S/T/V-Q-Q/N/A/T/S-T/L/M/I-Q/H-T/V/I/A/F-P/L-R/W-T(配列番号35)を有し得る。あるいは、AHo定義を使用して、抗体分子又はその抗原結合部分において、LCDR1はアミノ酸配列:S-S-Q/H-S-F/L-L/V-H-S-N/Q/A-G/A-Y/N/S-N/T-Y(配列番号36)を有し得る;LCDR2はアミノ酸配列:L/K/M-V/G-S-N/Y-R-A/F/L/S-S(配列番号34)を有し得る;そして、LCDR3はアミノ酸配列:Q/N/A/T/S-T/L/M/I-Q/H-T/V/I/A/F-P/L-R/W(配列番号37)を有し得る。
【0064】
例えばLCDR1はアミノ酸配列:R-S-S-Q-S-L-L/V-H-S-N/Q/A-G-Y/N-N/T-Y-L-H/D(配列番号38)を有し得る;LCDR2はアミノ酸配列:L/K-V/G-S-N/Y-R-A/F/L-S(配列番号39)を有し得る;そして、LCDR3はアミノ酸配列:F/S-Q-Q/N/A-T/L-Q/H-T/V-P-R-T(配列番号40)を有し得る。あるいは、AHo定義を使用して、LCDR1はアミノ酸配列:S-S-Q-S-L-L/V-H-S-N/Q/A-G-Y/N-N/T-Y(配列番号41)を有し得る;LCDR2はアミノ酸配列:L/K-V/G-S-N/Y-R-A/F/L-S(配列番号39)を有し得る;そして、LCDR3はアミノ酸配列:Q/N/A-T/L-Q/H-T/V-P-R(配列番号42)を有し得る。
【0065】
統一されたCDR定義を使用して定義される本発明の特定の実施態様において、抗体分子又は抗原結合部分は以下を含み得る:
【0066】
(a)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGDINPVNGDTNYSPSFQG(配列番号44)(HCDR2)、GGYTPDY(配列番号45)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KGSNRFS(配列番号47)(LCDR2)、及びSQNLHVPRT(配列番号48)(LCDR3)[クローンD-H3];又は
【0067】
(b)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYTYLH(配列番号52)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5];又は
【0068】
(c)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、IGDINPVNGDTNFSPSFQG(配列番号55)(HCDR2)、GGYTMDK(配列番号56)(HCDR3)、RSSQSLVHSNGYTYLH(配列番号57)(LCDR1)、KGSYRAS(配列番号58)(LCDR2)、及びSQNTQTPRT(配列番号59)(LCDR3)[クローンG-B6];又は
【0069】
(d)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVNGDTNYNPSFQG(配列番号60)(HCDR2)、GGYTMGK(配列番号61)(HCDR3)、RSSQSLVHSNGNTYLD(配列番号62)(LCDR1)、KGSYRFS(配列番号63)(LCDR2)、及びSQATHTPRT(配列番号64)(LCDR3)[クローンF-E7];又は
【0070】
(e)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGFTMDY(配列番号66)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KGSNRAS(配列番号67)(LCDR2)、及びSQNTHTPRT(配列番号68)(LCDR3)[クローンVH-A1/VL-B1];又は
【0071】
(f)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、IGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号69)(HCDR2)、GGYTMDI(配列番号70)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、LGSNRFS(配列番号71)(LCDR2)、及びSQNTQTPRT(配列番号59)(LCDR3)[クローンMH];又は
【0072】
(g)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDI(配列番号70)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、LGSNRAS(配列番号72)(LCDR2)、及びSQATQTPRT(配列番号73)(LCDR3)[クローンTTP];又は
【0073】
(h)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYTYLH(配列番号52)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.1];又は
【0074】
(i)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYNPSFQG(配列番号74)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYTYLH(配列番号52)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.2];又は
【0075】
(j)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYTYLH(配列番号52)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.3];又は
【0076】
(k)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.4];又は
【0077】
(l)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KGSNRLS(配列番号75)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.5];又は
【0078】
(m)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KGSNRLS(配列番号75)(LCDR2)、及びFQNTQTPRT(配列番号76)(LCDR3)[クローンA-D5.6];又は
【0079】
(n)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、LGSNRLS(配列番号77)(LCDR2)、及びFQNTQTPRT(配列番号76)(LCDR3)[クローンA-D5.7];又は
【0080】
(o)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSQGYTYLH(配列番号78)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.8];又は
【0081】
(p)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYTYLH(配列番号52)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQQTHTPRT(配列番号79)(LCDR3)[クローンA-D5.9];又は
【0082】
(q)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSQGYTYLH(配列番号78)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQQTHTPRT(配列番号79)(LCDR3)[クローンA-D5.10];又は
【0083】
(r)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.11];又は
【0084】
(s)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYNPSFQG(配列番号74)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.12];又は
【0085】
(t)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYNYLH(配列番号46)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.13];又は
【0086】
(u)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSSGYNYLH(配列番号80)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.14];又は
【0087】
(v)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSGGYNYLH(配列番号81)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.15];又は
【0088】
(w)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSAGYNYLH(配列番号82)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.16];又は
【0089】
(x)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSTGYNYLH(配列番号83)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.17];又は
【0090】
(y)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNAYNYLH(配列番号84)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.18];又は
【0091】
(z)アミノ酸配列GYSFTNYYIF(配列番号43)(HCDR1)、MGIINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号65)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSAGYNYLH(配列番号82)(LCDR1)、KVSNRFS(配列番号85)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5.16-DI];又は
【0092】
(z.1)アミノ酸配列GYTFTNYYIF(配列番号49)(HCDR1)、MGIINPVDGDTNYNPSFQG(配列番号50)(HCDR2)、GGYTMDR(配列番号51)(HCDR3)、RSSQSLLHSNGYTYLH(配列番号52)(LCDR1)、KVSNRFS(配列番号85)(LCDR2)、及びFQNTHTPRT(配列番号54)(LCDR3)[クローンA-D5-DI]。
【0093】
本発明の上記の特定の実施態様において、CDRは代わりに、AHoのCDR定義を使用して定義して、抗体分子又は抗原結合部分が以下を含むようにすることができる:
【0094】
(a)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVNGDTNYSPSFQG(配列番号87)(HCDR2)、GGYTPD(配列番号88)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KGSNRFS(配列番号47)(LCDR2)、及びNLHVPR(配列番号90)(LCDR3)[クローンD-H3];又は
【0095】
(b)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYTY(配列番号92)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5];又は
【0096】
(c)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVNGDTNFSPSFQG(配列番号94)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLVHSNGYTY(配列番号95)(LCDR1)、KGSYRAS(配列番号58)(LCDR2)、及びNTQTPR(配列番号96)(LCDR3)[クローンG-B6];又は
【0097】
(d)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVNGDTNYNPSFQG(配列番号97)(HCDR2)、GGYTMG(配列番号98)(HCDR3)、SSQSLVHSNGNTY(配列番号19)(LCDR1)、KGSYRFS(配列番号63)(LCDR2)、及びATHTPR(配列番号99)(LCDR3)[クローンF-E7];又は
【0098】
(e)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGFTMD(配列番号101)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KGSNRAS(配列番号67)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンVH-A1/VL-B1];又は
【0099】
(f)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、LGSNRFS(配列番号71)(LCDR2)、及びNTQTPR(配列番号96)(LCDR3)[クローンMH];又は
【0100】
(g)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、LGSNRAS(配列番号72)(LCDR2)、及びATQTPR(配列番号102)(LCDR3)[クローンTTP];又は
【0101】
(h)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYTY(配列番号92)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.1];又は
【0102】
(i)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYNPSFQG(配列番号103)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYTY(配列番号92)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.2];又は
【0103】
(j)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYTY(配列番号92)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.3];又は
【0104】
(k)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.4];又は
【0105】
(l)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KGSNRLS(配列番号75)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.5];又は
【0106】
(m)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KGSNRLS(配列番号75)(LCDR2)、及びNTQTPR(配列番号96)(LCDR3)[クローンA-D5.6];又は
【0107】
(n)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、LGSNRLS(配列番号77)(LCDR2)、及びNTQTPR(配列番号96)(LCDR3)[クローンA-D5.7];又は
【0108】
(o)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSQGYTY(配列番号104)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.8];又は
【0109】
(p)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYTY(配列番号92)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びQTHTPR(配列番号105)(LCDR3)[クローンA-D5.9];又は
【0110】
(q)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSQGYTY(配列番号104)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びQTHTPR(配列番号105)(LCDR3)[クローンA-D5.10];又は
【0111】
(r)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.11];又は
【0112】
(s)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYNPSFQG(配列番号103)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.12];又は
【0113】
(t)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.13];又は
【0114】
(u)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSSGYNY(配列番号106)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.14];又は
【0115】
(v)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSGGYNY(配列番号107)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.15];又は
【0116】
(w)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSAGYNY(配列番号108)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.16];又は
【0117】
(x)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSTGYNY(配列番号109)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.17];又は
【0118】
(y)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNAYNY(配列番号110)(LCDR1)、KVSNRLS(配列番号53)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.18];又は
【0119】
(z)アミノ酸配列GSGYSFTNYY(配列番号86)(HCDR1)、INPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSAGYNY(配列番号108)(LCDR1)、KVSNRFS(配列番号85)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)(LCDR3)[クローンA-D5.16-DI];又は
【0120】
(z.1)アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)(HCDR1)、INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)(HCDR2)、GGYTMD(配列番号16)(HCDR3)、SSQSLLHSNGYTY(配列番号92)(LCDR1)、KVSNRFS(配列番号85)(LCDR2)、及びNTHTPR(配列番号93)LCDR3)[クローンA-D5-DI].
【0121】
本発明の抗体分子又は抗原結合部分(AHo定義を使用して定義される)は、
アミノ酸配列GSGYTFTNYY(配列番号15)又はGSGYSFTNYY(配列番号86)を有するHCDR1;
アミノ酸配列INPVDGDTNYNPSFQG(配列番号91)又はINPVDGDTRYSPSFQG(配列番号100)を有するHCDR2;及び
アミノ酸配列GGYTMD(配列番号16)を有するHCDR3、を含むことができ、任意選択的にさらに、
アミノ酸配列SSQSLLHSNGYNY(配列番号89)又はSSQSLLHSNGYTY(配列番号92)又はSSQSLLHSAGYNY(配列番号108)を有するLCDR1;
アミノ酸配列KVSNRLS(配列番号53)又はKVSNRFS(配列番号85)を有するLCDR2;及び
アミノ酸配列NTHTPR(配列番号93)を有するLCDR3、を含むことができる。
【0122】
上記の抗体分子又は抗原結合部分は、代わりに、本明細書に開示される同等の統一CDR定義を使用して定義することができる。
【0123】
本発明の特定の実施態様において、抗体分子又は抗原結合部分は、上記で定義されるクローンA-D5、クローンA-D5.4、又はクローンA-D5.16、又はクローンA-D5.16-DI、又はクローンA-D5-DI、又はこれらの各クローンのCDR配列の適切な組み合わせの6つのCDR配列を含むことができる。
【0124】
例えば統一CDR定義を使用して定義される抗体分子又は抗原結合部分において、HCDR1はアミノ酸配列:G-Y-T/S-F-T-N-Y-Y-I-F(配列番号27)を有し得る;HCDR2はアミノ酸配列:M-G-I-I-N-P-V-D-G-D-T-N/R-Y-N/S-P-S-F-Q-G(配列番号111)を有し得る;HCDR3はアミノ酸配列:G-G-Y-T-M-D-R(配列番号51)を有し得る;LCDR1はアミノ酸配列:R-S-S-Q-S-L-L-H-S-N/A-G-Y-N/T-Y-L-H(配列番号112)を有し得る;LCDR2はアミノ酸配列:K-V-S-N-R-L/F-S(配列番号113)を有し得る;そして、LCDR3はアミノ酸配列:F-Q-N-T-H-T-P-R-T(配列番号54)を有し得る。
【0125】
あるいは、AHo定義を使用して定義される抗体分子又は抗原結合部分において、HCDR1はアミノ酸配列:G-S-G-Y-T/S-F-T-N-Y-Y(配列番号30)を有し得る;HCDR2はアミノ酸配列:I-N-P-V-D-G-D-T-N/R-Y-N/S-P-S-F-Q-G(配列番号114)を有し得る;HCDR3はアミノ酸配列:G-G-Y-T-M-D(配列番号16)を有し得る;LCDR1はアミノ酸配列:S-S-Q-S-L-L-H-S-N/A-G-Y-N/T-Y(配列番号115)を有し得る;LCDR2はアミノ酸配列:K-V-S-N-R-L/F-S(配列番号113)を有し得る;そして、LCDR3はアミノ酸配列:N-T-H-T-P-R(配列番号93)を有し得る。
【0126】
本明細書で定義される抗体分子又は抗原結合部分は、例えばグリコシル化部位(N結合又はO結合)、脱アミノ化部位、リン酸化部位、又は異性化/断片化部位などの翻訳後修飾(PTM)部位を除去する1つ以上の置換、欠失、及び/又は挿入を含み得る。
【0127】
350種類以上のPTMが知られている。PTMの主要な形式には、リン酸化、グリコシル化(N及びO結合)、SUMO化、パルミトイル化、アセチル化、硫酸化、ミリストイル化、プレニル化、及びメチル化(K及びR残基の)が含まれる。特定のPTMに関与する推定アミノ酸部位を特定する統計的方法は、当技術分野で公知である(Zhou et al., 2016, Nature Protocols 1: 1318-1321 を参照)。例えば置換、削除、及び/又は挿入によるそのような部位の除去、及び、次に任意選択的に(a)結合活性及び/又は(b)PTMの消失の試験(実験的及び/又は理論的)が企図される。
【0128】
例えばVxP037マウスLCDR1(本明細書で定義される、すなわちアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号9))は、残基10(N)及び/又は12(N)に推定脱アミノ化部位を有することが同定されている。例えば保存的置換(例えば、S、A、Q、又はDなど)による本発明のLCDR1の同等の位置におけるこれらの両方の部位のいずれかの除去が、想定される(例えばクローンA-D5.8のように、クローンA-D5、及び表3及び4の他のクローン、又は表5のクローンA-D5.11~A-D5.18)。
【0129】
同様に、VxP037マウスLCDR3(本明細書で定義される、すなわちアミノ酸配列SQNTHVPRT(配列番号11))は、残基3(N)に推定脱アミノ化部位を有することが同定されている。例えば保存的又は非保存的置換(例えばA、S、H、D、T、K、G、E、Q、又はR)による本発明のLCDR3の同等の位置におけるこの部位の除去が、想定される(例えば表3及び4のクローンF-E7及び他のクローンのように)。
【0130】
同様に、VxP037マウスHCDR3(本明細書で定義される、すなわちアミノ酸配列GGYTMDY(配列番号5))は、残基5(M)に推定酸化部位を有することが同定されている。例えば保存的又は非保存的置換(例えばP、A、T、S、L、F、W、V、I、Y、又はR)による本発明のHCDR3の同等の位置におけるこの部位の除去が、想定される(例えば表3及び4のクローンD-H3及び他のクローン)。
【0131】
抗体分子又はその抗原結合部分は、ヒト、ヒト化、又はキメラであり得る。
抗体分子又はその抗原結合部分は、CDRが挿入されている1つ以上のヒト可変ドメインフレームワーク足場を含んでもよい。
抗体分子又はその抗原結合部分は、対応するHCDR配列が挿入されているIGHV5-51ヒト生殖細胞系足場を含んでもよい。
抗体分子又はその抗原結合部分は、対応するLCDR配列が挿入されているIGKV2-28ヒト生殖細胞系足場を含んでもよい。
【0132】
抗体分子又はその抗原結合部分は、免疫学的に不活性な定常領域を含んでもよい。
抗体分子又はその抗原結合部分は、Fab断片、F(ab)2断片、Fv断片、4量体抗体、4価抗体、多重特異性抗体(例えば2価抗体)、単一ドメイン抗体(例えば、サメ抗体[VNAR抗体]又はその断片、又はラクダ抗体[VHH抗体]又はその断片)、モノクローナル抗体、又は融合タンパク質であり得る。抗体分子及びその構築方法と使用は、例えば Holliger & Hudson (2005, Nature Biotechnol. 23(9): 1126-1136) に記載されている。
【0133】
本発明の別の態様において、治療薬に結合された、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分を含む免疫結合体が提供される。
【0134】
適切な治療薬の例には、細胞毒、放射性同位体、化学療法剤、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、アポトーシス促進剤、細胞増殖抑制性及び細胞溶解性酵素(例えばRNAse)が含まれる。さらなる治療薬には、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、又はアポトーシス促進剤をコードする遺伝子などの治療用核酸が含まれる。これらの薬物記述は相互に排他的ではなく、従って治療薬は上記用語の1つ以上を使用して説明することができる。
【0135】
免疫結合体での使用に適した治療薬の例には、タキサン、メイタンシン、CC-1065、及びデュオカルマイシン、カリケアマイシン及び他のエンジイン、及びオーリスタチンが含まれる。他の例には、葉酸拮抗剤、ビンカアルカロイド、及びアントラサイクリンが含まれる。植物毒素、他の生物活性タンパク質、酵素(すなわちADEPT)、放射性同位元素、光増感剤も免疫結合体で使用できる。さらに、リポソームやポリマーなどの2次担体を細胞毒性剤として使用して、結合体を作成できる。適切な細胞毒素には、細胞の機能を阻害又は防止する薬剤、及び/又は細胞の破壊を引き起こす薬剤が含まれる。代表的な細胞毒素には、抗生物質、チューブリン重合の阻害剤、DNAに結合して破壊するアルキル化剤、及びタンパク質合成又は必須細胞タンパク質(タンパク質キナーゼ、ホスファターゼ、トポイソメラーゼ、酵素、及びサイクリン)の機能を破壊する薬剤が含まれる。
【0136】
代表的な細胞毒には、特に限定されるものではないが、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン、エピルビシン、カルビシン、ノガラマイシン、メノガリル、ピタルビシン、バルルビシン、シタラビン、ゲムシタビン、トリフルリジン、アンシタビン、エノシタビン、アザシチジン、ドキシフルリジン、ペントスタチン、ブロクスウリジン、カペシタビン、クラドリビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、グウゲロチン、ピューロマイシン、テガフール、チアゾフリン、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、メクロレタミン、プレドニゾン、プロカルバジン、メトトレキサート、フルオロウラシル、エトポシド、タキソール、タキソール類似体、シスプラチンやカルボプラチンなどのプラチン、マイトマイシン、チオテパ、タキサン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、タモキシフェン、イダルビシン、ドラスタチン/オーリスタチン、ヘミアステリン、エスペラマイシン、及びメイタンシノイドが含まれる。
【0137】
適切な免疫調節剤には、腫瘍に対するホルモン作用をブロックする抗ホルモン剤、サイトカイン産生を抑制し、自己抗原発現をダウンレギュレートし、又はMHC抗原のマスクする免疫抑制剤が含まれる。
【0138】
本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分をコードする核酸分子も提供される。
本明細書で定義される本発明の核酸分子を含むベクターがさらに提供される。
本明細書で定義される本発明の核酸分子又はベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0139】
さらなる態様において、抗体及び/又はその抗原結合部分の発現及び/又は産生をもたらす条件下で本発明の宿主細胞を培養し、宿主細胞又は培養物から抗体及び/又はその抗原結合部分を単離することを含む、抗CD47抗体及び/又はその抗原結合部分を産生する方法が提供される。
【0140】
本発明の別の態様において、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクターを含む医薬組成物が提供される。
【0141】
本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクター、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む、被験体の免疫応答を増強する方法がさらに提供される。
【0142】
さらなる態様において、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクター、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物の有効量を投与することを含む、被験体の癌を治療又は予防する方法が提供される。
【0143】
癌は、例えば膵臓癌、黒色腫、乳癌、肺癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳又は中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、食道癌、子宮頸癌、子宮癌又は子宮内膜癌、口腔癌又は咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸又は虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、及び血液組織の癌からなる群から選択され得る。
【0144】
本発明はまた、癌の治療に使用するための、本明細書で定義される本発明の抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクター、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物も提供する。
【0145】
別の態様において、本発明は、使用のための抗体分子、又はその抗原結合部分、又は免疫結合体、又は核酸分子、又はベクターを、又は第2の治療薬、例えば抗癌剤との組み合わせでの、個別の、連続的な、又は同時使用のための、本明細書で定義される本発明の治療方法を提供する。
【0146】
さらなる態様において、癌の治療のための薬剤の製造における、本明細書で定義される本発明の抗体分子もしくはその抗原結合部分、又は本明細書で定義される本発明の免疫結合体、又は本明細書で定義される本発明の核酸分子、又は本明細書で定義される本発明のベクター、又は本明細書で定義される本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0147】
本発明はまた、本明細書で定義される抗体分子もしくはその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の有効量を投与することを含む、被験体の虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を治療又は予防するための方法を提供する。
【0148】
全ての態様において、虚血-再灌流障害は、臓器移植、急性腎障害、心肺バイパス手術、肺高血圧症、鎌状赤血球症、心筋梗塞、脳卒中、外科的切除及び再建手術、付属器又は他の身体部分の再付着、皮膚移植、又は外傷で発生する可能性がある。
【0149】
自己免疫疾患又は炎症性疾患は、関節炎、多発性硬化症、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、ループス、グレーブス病、橋本甲状腺炎、及び強直性脊椎炎からなる群から選択され得る。
【0150】
また、虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の治療に使用するための、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物も提供される。
【0151】
さらに、虚血-再灌流障害、自己免疫疾患、又は炎症性疾患の治療用薬剤の製造における、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の使用が提供される。
【0152】
本発明はまた、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の有効量を投与することを含む、被験体の心血管疾患又は線維性疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0153】
また、心血管疾患又は線維性疾患の治療に使用するための、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物も提供される。
【0154】
さらに、心血管疾患又は線維性疾患の治療のための薬剤の製造における、本明細書で定義される抗体分子又はその抗原結合部分、又は本明細書で定義される免疫結合体、又は本明細書で定義される核酸分子、又は本明細書で定義されるベクター、又は本明細書で定義される医薬組成物の使用が提供される。
【0155】
本発明の任意の態様における心血管疾患は、例えば冠状動脈性心疾患又はアテローム性動脈硬化症であり得る。
【0156】
本発明の任意の態様における線維性疾患は、心筋梗塞、狭心症、変形性関節炎、肺線維症、喘息、嚢胞性線維症、及び気管支炎からなる群から選択され得る。
【0157】
本発明の医薬組成物は、医薬的に許容し得る賦形剤を含み得る。医薬的に許容し得る賦形剤は、2次反応を引き起こさず、例えば抗CD47抗体分子の投与の促進を、その寿命の延長を、及び/又は体内での有効性を、又は溶液中の溶解度の上昇を可能にする、医薬組成物に入る化合物又は化合物の組み合わせであり得る。これらの医薬的に許容し得るビヒクルは公知であり、抗CD47抗体分子の投与様式の関数として当業者により適合されるであろう。
【0158】
いくつかの態様において、抗CD47抗体分子は、投与前の復元のために凍結乾燥形態で提供されてもよい。例えば凍結乾燥された抗体分子は、滅菌水で復元され、個体への投与の前に生理食塩水と混合されてもよい。
【0159】
抗CD47抗体分子は通常、医薬組成物の形で投与され、抗体分子意外に少なくとも1つの成分を含んでもよい。すなわち医薬組成物は、抗CD47抗体分子に加えて、医薬的に許容し得る賦形剤、担体、緩衝物質、安定剤、又は当業者に公知の他の材料を含んでよい。そのような材料は非毒性で、抗CD47抗体分子の有効性を妨げてはならない。担体又は他の物質の正確な性質は、投与経路に依存し、これは、以下に議論されるように、ボーラス、注入、注射、又は他の適切な経路によるものでもよい。
【0160】
非経口投与、例えば注射による例えば皮下又は静脈内投与では、抗CD47抗体分子を含む医薬組成物は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性、及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であり得る。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性ビヒクルを使用して、適切な溶液を調製することは十分に可能である。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤、及び/又はその他の添加剤を使用することができ、例えば緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸やメチオニン;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3’-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;糖類、例えばマンニトール、トレハロース、ソルビトール;塩形成性対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)などが含まれる。
【0161】
抗CD47抗体分子を含む医薬組成物は、単独で、又は他の治療と組み合わせて、治療される状態に応じて同時に又は連続して投与することができる。
【0162】
本明細書に記載の抗CD47抗体分子は、予防的又は予防的治療(例えば、個体における症状の発症のリスクを低減するための、その発症を遅らせるための、又は発症後の重症度を低下させるための、個体における症状の発症前の治療)を含む、ヒト又は動物の体の治療方法で使用し得る、治療方法は、それを必要とする個体に抗CD47抗体分子を投与することを含んでもよい。
【0163】
投与は通常「治療有効量」であり、これは患者に利益を示すのに十分である。このような利益は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であり得る。投与される実際の量、及び投与の速度と時間経過は、治療被験体の性質と重症度、治療中の特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、組成物の送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医療従事者に公知の他の要因に依存する。治療の処方、例えば投与量などの決定は、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、症状の重症度及び/又は治療中の疾患の進行に依存する場合がある。抗体分子の適切な用量は、当技術分野で公知である(Ledermann J.A. et al., 1991, Int. J. Cancer 47: 659-664; Bagshawe K.D. et al., 1991, Antibody, Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4: 915-922)。具体的な投与量は、本明細書に示されている場合もあり、又は、投与される薬剤の種類に応じてPhysician's Desk Reference (2003) を適切に使用することができる。抗体分子の治療的有効量又は適切な用量は、動物モデルにおけるそのインビトロ活性とインビボ活性を比較することにより決定され得る。マウス及び他の試験動物の有効用量をヒトに外挿する方法が知られている。正確な用量は多くの要因に依存し、例えば抗体が予防用か治療用か、治療する部位の大きさと位置、抗体の正確な性質(全抗体、断片など)、及び抗体に付着した検出可能な標識物又はその他の分子の性質に依存する。
【0164】
典型的な抗体用量は、全身投与の場合は100μg~1gの範囲で、局所投与の場合は1μg~1mgの範囲である。最初のより高い負荷用量に続いて、低用量を1回以上投与してもよい。典型的には、抗体は全抗体であり、例えばIgG1又はIgG4アイソタイプである。これは成人患者の単回治療の用量であり、小児と幼児では比例して調整され、分子量に比例して他の抗体形態でも調整し得る。治療は、医師の裁量で、毎日、週2回、毎週、又は毎月の間隔で繰り返すことができる。個体の治療スケジュールは、抗体組成物の薬物動態学的及び薬力学的特性、投与経路、及び治療される状態の性質に依存する。
【0165】
治療は定期的であってもよく、投与間の期間は約2週間以上、例えば約3週間以上、約4週間以上、約1か月以上に1回、約5週間以上、又は約6週間以上でもよい。例えば治療は2~4週間ごと、又は4~8週間ごとでもよい。治療は、手術の前及び/又は後に行うことができ、及び/又は外科的治療又は侵襲的操作の解剖学的部位に直接投与又は適用することができる。適切な製剤及び投与経路は上記に記載されている。
【0166】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗CD47抗体分子は、皮下注射として投与され得る。皮下注射は、例えば長期の予防/治療のために自動注射器を使用して投与することができる。
【0167】
いくつかの好適な実施態様において、抗CD47抗体分子の治療効果は、用量に応じて、半減期の数回分にわたって持続し得る。例えば抗CD47抗体分子の単回投与の治療効果は、個体において1ヵ月以上、2ヵ月以上、3ヵ月以上、4ヵ月以上、5ヵ月以上、あるいは6数ヶ月以上持続し得る。
【0168】
本発明はまた、ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分を産生する方法を提供し、この方法は以下の工程を含む:
(1)非ヒト起源の抗CD47 CDRをヒトvドメインフレームワークに移植して、ヒト化抗CD47抗体分子又はその抗原結合部分を産生する工程;
(2)CDR内に1つ以上の変異を含むヒト化抗CD47抗体分子又はその抗原結合部分のクローンのファージライブラリを生成する工程;
(3)ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47への結合について、ファージライブラリをスクリーニングする工程;
(4)ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に対する結合特異性を有するクローンを、スクリーニング工程(3)から選択する工程;及び
(5)工程(4)から選択されたクローンから、ヒトCD47、及び任意選択的にカニクイザルCD47、及び/又はマウスCD47に特異的に結合する抗体分子、又はその抗原結合部分を産生する工程。
【0169】
この方法は、工程(4)で選択されたクローンに基づいて、例えば工程(4)で選択されたクローンのCDRの特定の位置におけるさらなる探索的変異誘発に基づいて、追加のクローンを産生して、ヒト化を増強し、ヒトT細胞エピトープ含有量を最小化し、及び/又は工程(5)で産生された抗体分子又はその抗原結合部分の製造特性を改善する、工程をさらに含むことができる。
【0170】
この方法は、工程(4)で選択されたクローン又は工程(5)で作成された抗体分子の1つ以上のvドメインの免疫原性を評価し、例えばCDR及びフレームワーク領域中に任意選択的に1つ以上のさらなる突然変異を生成して、免疫原性を低下させるさらなる工程を含むことができる。免疫原性は、例えば本明細書に記載されるインシリコ技術を使用して、T細胞エピトープの位置を特定することにより評価することができる。
【0171】
上記の方法に適用できる改良点は、以下の実施例1に記載されている。
【0172】
本明細書で使用される「CD47」という用語は、CD47の生物活性の少なくとも一部を保持するインテグリン関連タンパク質(IAP)及びその変種を指す。本明細書で使用される場合、CD47は、ヒト、ラット、マウス、及びニワトリを含むすべての哺乳類種の未変性配列CD47を含む。「CD47」という用語は、ヒトCD47の変種、アイソフォーム、及び種のホモログを含むために使用される。本発明の抗体は、ヒト以外の種由来のCD47、特にカニクイザル(Macaca fascicularis)由来のCD47と交差反応する可能性がある。特定の実施態様において、この抗体はヒトCD47に完全に特異的であり得、非ヒト交差反応性を示さない場合がある。
【0173】
本明細書で使用する場合、本発明の抗体の文脈で使用される「アンタゴニスト」又は「抗CD47アンタゴニスト抗体」(互換的に「抗CD47抗体」と呼ばれる)は、CD47に結合することができ、CD47シグナル伝達によって媒介されるCD47の生物活性及び/又は下流経路を阻害することができる抗体を指す。抗CD47アンタゴニスト抗体は、受容体結合及び/又はCD47への細胞応答の誘発などのCD47シグナル伝達により媒介される下流経路を含むCD47の生物活性をブロック、拮抗、抑制、又は低減(顕著に低減を含む)できる抗体を包含する。本発明の目的において、用語「抗CD47アンタゴニスト抗体」は、CD47自体、及びCD47の生物活性(特に限定されるものではないが、骨髄系の細胞による食作用の活性化を増強する能力)、又は活性若しくは生物活性の結果が、有意な程度に実質的に無効化、低下、又は中和される、全ての用語、標題、及び機能的状態と特性を包含する。
【0174】
CD47は、他の受容体に結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、及び/又はより長い期間、CD47に結合する場合、CD47と「特異的に相互作用」、「優先的に結合」、「結合」又は「相互作用」する。
【0175】
「抗体分子」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される「抗体分子」という用語は、未変性のポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、その任意の抗原結合断片(例えば「抗原結合部分」)又はその単鎖、抗体を含む融合タンパク質、及び、特に限定されるものではないが、scFv、単一ドメイン抗体(例えばサメ抗体[VNAR抗体]又はその断片、及びラクダ科抗体[VHH抗体]又はその断片)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びビス-scFvを含む抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の改変された構成を含む。
【0176】
「抗体分子」は、IgG、IgA、又はIgM(又はそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体は特定のクラスのものである必要はない。重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA1に分類される場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、ミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造と3次元配置はよく知られている。
【0177】
本明細書で使用される抗体分子の「抗原結合部分」という用語は、CD47に特異的に結合する能力を保持する未変性の抗体の1つ以上の断片を指す。抗体分子の抗原結合機能は、未変性の抗体の断片によって実行され得る。抗体分子の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例には、Fab-;Fab’-;F(ab’)2;VH及びCH1ドメインから成るFd断片;抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片;単一ドメイン抗体(dAb)断片、及び単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0178】
用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、天然配列のFc領域又は変異体Fc領域でもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化する可能性があるが、通常ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226位のアミノ酸残基又はPro230位から、そのカルボキシル末端までのストレッチとして定義される。Fc領域の残基の番号は、Kabat のEU指数の番号である。免疫グロブリンのFc領域は、一般に2つの定常ドメイン、CH2とCH3を含む。当技術分野で知られているように、Fc領域は2量体又は単量体の形で存在し得る。
【0179】
抗体の「可変領域」とは、単独の又は組み合わせた、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を指す。当技術分野で知られているように、重鎖及び軽鎖の可変領域はそれぞれ、超可変領域としても知られている3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)から成り、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。例えば抗体をヒト化又は最適化する際にCDRに隣接するFRを選択する場合、同じ標準クラスのCDR配列を含む抗体からのFRが好ましい。
【0180】
本出願で使用されるCDRの定義は、免疫グロブリンのレパートリー分析と単離された場合の及び抗原とのそれらの共結晶の抗体の構造解析の組み合わせに基づく、フィールドで作り出された多くの異なるしばしば矛盾するスキームで使用されるドメインを組み合わせたものである(Swindells et al., 2016, abYsis: Integrated Antibody Sequence and Structure-Management, Analysis, and Prediction. J Mol Biol. [PMID: 27561707; Epub 22 August 2016]による総説を参照)。ここで使用されるCDRの定義(「統一された」定義)は、そのような以前のすべての洞察の教訓を取り込み、標的結合相補性を媒介する可能性のある完全な残基状況を見つけるために必要なすべての適切なループ位置を含む。
【0181】
表1は、同じCDRを定義するための公知の代替システムと比較した、本明細書で定義される(「統一」スキーム)VxP037マウス抗CD47抗体CDRのアミノ酸配列を示す。
【0182】
本明細書で使用される「保存的置換」という用語は、あるアミノ酸を、機能的活性を著しく有害に変化させない別のアミノ酸により置換することを指す。「保存的置換」の好適な例は、1つのアミノ酸を、以下のBLOSUM62置換マトリックスで値≧0を有する別のアミノ酸で置き換えることである(Henikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89: 10915-10919を参照)。
【0183】
A R N D C Q E G H I L K M F P S T W Y V
A 4 -1 -2 -2 0 -1 -1 0 -2 -1 -1 -1 -1 -2 -1 1 0 -3 -2 0
R -1 5 0 -2 -3 1 0 -2 0 -3 -2 2 -1 -3 -2 -1 -1 -3 -2 -3
N -2 0 6 1 -3 0 0 0 1 -3 -3 0 -2 -3 -2 1 0 -4 -2 -3
D -2 -2 1 6 -3 0 2 -1 -1 -3 -4 -1 -3 -3 -1 0 -1 -4 -3 -3
C 0 -3 -3 -3 9 -3 -4 -3 -3 -1 -1 -3 -1 -2 -3 -1 -1 -2 -2 -1
Q -1 1 0 0 -3 5 2 -2 0 -3 -2 1 0 -3 -1 0 -1 -2 -1 -2
E -1 0 0 2 -4 2 5 -2 0 -3 -3 1 -2 -3 -1 0 -1 -3 -2 -2
G 0 -2 0 -1 -3 -2 -2 6 -2 -4 -4 -2 -3 -3 -2 0 -2 -2 -3 -3
H -2 0 1 -1 -3 0 0 -2 8 -3 -3 -1 -2 -1 -2 -1 -2 -2 2 -3
I -1 -3 -3 -3 -1 -3 -3 -4 -3 4 2 -3 1 0 -3 -2 -1 -3 -1 3
L -1 -2 -3 -4 -1 -2 -3 -4 -3 2 4 -2 2 0 -3 -2 -1 -2 -1 1
K -1 2 0 -1 -3 1 1 -2 -1 -3 -2 5 -1 -3 -1 0 -1 -3 -2 -2
M -1 -1 -2 -3 -1 0 -2 -3 -2 1 2 -1 5 0 -2 -1 -1 -1 -1 1
F -2 -3 -3 -3 -2 -3 -3 -3 -1 0 0 -3 0 6 -4 -2 -2 1 3 -1
P -1 -2 -2 -1 -3 -1 -1 -2 -2 -3 -3 -1 -2 -4 7 -1 -1 -4 -3 -2
S 1 -1 1 0 -1 0 0 0 -1 -2 -2 0 -1 -2 -1 4 1 -3 -2 -2
T 0 -1 0 -1 -1 -1 -1 -2 -2 -1 -1 -1 -1 -2 -1 1 5 -2 -2 0
W -3 -3 -4 -4 -2 -2 -3 -2 -2 -3 -2 -3 -1 1 -4 -3 -2 11 2 -3
Y -2 -2 -2 -3 -2 -1 -2 -3 2 -1 -1 -2 -1 3 -3 -2 -2 2 7 -1
V 0 -3 -3 -3 -1 -2 -2 -3 -3 3 1 -2 1 -1 -2 -2 0 -3 -1 4.
【0184】
「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、例えば真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む単一のコピー又はクローンに由来する抗体又はその抗原結合部分を指し、それを産生する方法ではない。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、均一な又は実質的に均一な集団で存在する。
【0185】
「ヒト化」抗体分子とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合部分配列)である、非ヒト(例えばマウス)抗体分子又はその抗原結合部分の形態を指す。ヒト化抗体は、受容体のCDRの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種のCDRの残基(ドナー抗体)で置き換えられたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)であってもよい。
【0186】
「ヒト抗体又は完全ヒト抗体」とは、ヒト抗体遺伝子を保有するトランスジェニックマウス又はヒト細胞に由来する抗体分子又はその抗原結合部分を指す。
【0187】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体分子又はその抗原結合部分を指し、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体分子である。
【0188】
「抗体-薬物結合体」及び「免疫結合体」とは、CD47に結合し、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、及び/又は治療薬に結合された抗体誘導体を含む、抗体分子又はその抗原結合部分を指す。
【0189】
本発明の抗体分子又はその抗原結合部分は、当技術分野で公知の技術、例えば組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、又はそのような技術又は当技術分野で容易に知られる他の技術の組み合わせを使用して産生することができる。
【0190】
「エピトープ」という用語は、抗体分子の抗原結合領域の1つ以上において、抗体分子又はその抗原結合部分によって認識され、結合されることができる分子の部分を指す。エピトープは、1次、2次、又は3次タンパク質構造の定義される領域からなり、抗体の抗原結合領域又はその抗原結合部分によって認識される標的の2次構造単位又は構造ドメインの組み合わせを含む。同様にエピトープは、アミノ酸や糖側鎖などの分子の定義される化学的に活性な表面グループから成り、特定の3次元構造特性と特定の電荷特性を有することができる。本明細書で使用される「抗原性エピトープ」という用語は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば従来のイムノアッセイ、抗体競合結合アッセイ、又はX線結晶構造解析、又は関連する構造決定法(NMRなど)によって決定される、抗体分子が特異的に結合できるポリペプチドの一部として定義される。
【0191】
「結合親和性」又は「KD」という用語は、特定の抗原-抗体相互作用の解離速度を指す。KDは、解離速度(「オフレート(koff)」とも呼ばれる)と会合速度又は「オンレート(kon)」の比率である。すなわちKDはkoff/konに等しく、モル濃度(M)で表される。KDが小さいほど、結合の親和性が強くなる。従って、1μMのKDは1nMのKDと比較して弱い結合親和性を示す。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKD値を決定する1つの方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)、通常Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することである。
【0192】
「効力」という用語は、生物活性の測定値であり、IC50、又は本明細書に記載のCD47活性アッセイで測定される活性の50%を阻害する、抗原CD47に対する抗体又は抗体薬物結合体の有効濃度として指定することができる。
【0193】
本明細書で使用される「有効量」又は「治療有効量」という語句は、所望の治療結果を達成するために(投与量及び期間及び投与手段で)必要な量を指す。有効量は、被験体に治療的利益を与えるのに必要な活性薬剤の少なくとも最小量であるが、毒性量未満である。
【0194】
本発明の抗体分子の生物活性に関して本明細書で使用される「阻害する」又は「中和する」という用語は、例えば、特に限定されるものではないが、CD47への抗体分子の生物活性又は結合相互作用を含む阻害される進行又は重症度を、抗体が実質的に拮抗、禁止、予防、抑制、減速、破壊、排除、停止、低減、又は逆転する能力を意味する。
【0195】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクターのレシピエントであり得るか又はレシピエントであった個々の細胞又は細胞培養物が含まれる。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、自然の、偶発的な、又は意図的な突然変異により、元の親細胞と必ずしも完全に同一ではない場合(形態又はゲノムDNA相補体において)がある。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチドでインビボでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0196】
本明細書で使用される「ベクター」とは、宿主細胞内で1つ以上の目的の遺伝子又は配列を送達し、好ましくは発現することができる構築物を意味する。ベクターの例には、特に限定されるものではないが、ウイルスベクター、裸のDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド、又はファージベクター、カチオン性凝縮剤に関連するDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が含まれる。
【0197】
本明細書で使用される「治療する」という用語は、特に明記しない場合は、そのような用語が適用される障害又は状態、又はそのような障害又は状態の1つ以上の症状の、逆転、緩和、進行の阻害、進行の遅延、発症の遅延、又は予防を意味する。本明細書で使用される「治療」という用語は、特に明記しない場合は、上記で定義した治療行為を指す。「治療する」という用語はまた、被験体のアジュバント治療及びネオアジュバント治療も含む。疑念を避けるために、本明細書における「治療」への言及には、治癒的、緩和的、及び予防的治療が含まれる。
【0198】
本明細書で実施態様が「含む」という文言で説明されている場合は常に、「からなる」及び/又は「から本質的になる」という用語で説明される類似の実施態様も提供されている。
【0199】
本発明の態様又は実施態様がマーカッシュグループ又は代替のその他のグループに関して説明される場合、本発明は、全体としてリストされたグループ全体だけでなく、グループの各メンバー及びメイングループのすべての可能なサブグループを包含するが、グループメンバーの1つ以上が存在しないメイングループも包含する。本発明はまた、特許請求される発明のグループメンバーのいずれか1つ以上の明示的な除外を想定している。
【0200】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。本明細書及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」などの変形は、述べられた整数又は整数のグループの包含を意味するが、他の整数又は整数のグループを除外することを意味しないと理解される。文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。「例えば(e.g.)」又は「例えば(for example)」という用語に続く例は、網羅的又は限定的であることを意図していない。
【0201】
本発明の実施は、特に明記しない場合は、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来技術(これらは当業者の範囲内である)を使用する。
【実施例】
【0202】
次に、本発明の具体的な非限定的実施態様を、添付の図面を参照して説明する。
【0203】
実施例1
最適化された抗CD47治療抗体の生成と特性決定
緒言
この例では、我々は拮抗的で最適化された抗CD47抗体のパネルの生成に成功した。これらの抗CD47抗体はよく発現され、生物物理学的に安定で、溶解性が高く、好適なヒト生殖細胞系と最大の同一性を有する。
【0204】
材料と方法
IgGクローニング、一過性発現、精製
抗体vドメインをコードするDNA配列を、制限-連結クローニングを介して、別のプラスミドベクターの別個のIgG重鎖及び軽鎖発現カセットにクローニングした。抗体は、ヒトIgGの2つの形態で発現された:IgG4ヒンジを安定化するS228P変異を有するIgG4、及びFcγ 受容体駆動エフェクター機能を最小化する下位ヒンジ変異L234A/L235A/G237Aを有するIgG1ヌル-IgG1。製造業者のプロトコールに従って、エンドトキシンを含まないIgG発現プラスミド調製物による一過性トランスフェクション後に、IgGをHEK-293expi細胞で発現させた。IgGを1工程プロトコールを使用して精製した:PBS(pH7.4)で事前に平衡化した1mlのProAセファロースカラムに調整培地を加えた(未希釈)。カラムを5カラム容量のPBS(pH7.4)で洗浄した後、タンパク質を100mMグリシン(pH2.7)で溶出し、30kDaカットオフの透析膜を使用してPBS(pH7.4)で透析した。
【0205】
IgG力価測定結合ELISA
Greiner Bio-One High bind ELISAプレートをコーティングするために、標的タンパク質を炭酸緩衝液で1μg/mlに希釈し、ウェルあたり100μlを4℃で一晩加えた。コーティングされたプレートをPBS(pH7.4)で3回洗浄し、PBS(380μl/ウェル)中の1%BSAで室温で1時間ブロックした後、PBS-ツイーン20(PBST)で3回洗浄した。次にCD47抗体(100μl/ウェル;PBSTで希釈)を加え、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートをPBSTで3回洗浄し、室温で1時間、ヤギ抗ヒトカッパ鎖-HRPを加えた(100μl/ウェル)。次に、プレートをPBSTで3回、PBSで2回洗浄してから、ウェルあたり100μlのTMBを加えた。100μlの2M H2SO4/ウェルを加えることにより反応を停止させ、プレートリーダーで450nmでODを読んだ。
【0206】
抗CD47抗体をELISAにより多反応性について試験した。精製した組換え標的及び非標的抗原を、炭酸緩衝液中100ng/ウェルで96ウェルの Nunc maxisorp プレートで4℃で一晩コーティングした。次にプレートをPBSで3回洗浄し、PBS中の1%BSAでブロックした後、PBS-ツイーン20で3回洗浄した。次に、1次抗体の希釈系列を適用し、プレートをPBS-ツイーン20で3回洗浄した後、ヤギ抗ヒトカッパ鎖-HRP(1:4,000)2次抗体を適用した。次に、ウェルをPBS-ツイーン20で3回、PBSで2回洗浄し、ウェルあたり100μlのTMBペルオキシダーゼ基質を加え、100μlの2M H2SO4を加えることにより反応を停止させ、吸光度を450nmで読んだ。負に帯電した生体分子表面でのELISAによるIgG結合分析を、以前に記載されたように実施した(Mouquet et al., 2010, Nature 467: 591-595 を参照)。
【0207】
CD47ライブラリの生成と選択
CD47 scFvレパートリーを、大量オリゴ合成とPCRによって組み立てた。次に、増幅されたscFvレパートリーを制限-連結によりファージミドベクターにクローニングし、大腸菌TG-1細胞に形質転換し、ファージレパートリーを本質的に以前に詳細に説明したようにレスキューした(Finlay et al., 2011, Methods Mol Biol 681: 383-401)。
ストレプトアビジン磁気マイクロビーズをCD47-Fcタンパク質(ヒト又はカニクイザル)でコーティングし、PBSでビーズを3回洗浄し、5%スキムミルクタンパク質を含むPBS(pH7.4)(MPBS)に再懸濁することにより、ファージ選択を行った。これらのビーズを、選択のラウンド1では200nMの標的タンパク質でコーティングし、その後のラウンドでは100、50、及び10nMでコーティングした。
【0208】
CD47-SIRPα結合競合アッセイ
競合ELISAアッセイを、CD47とSIRPαの結合相互作用をブロックする最適化されたリードの能力を調べるために確立した。Greiner Bio-One High bind ELISAプレートをコーティングするために、炭酸コーティング緩衝液中の10μg/mlヒトSIRPα-Fcを、ウェルあたり100μlで4℃で一晩加えた。コーティングされたプレートをPBS(pH7.4)で3回洗浄し、PBS中の1%BSA(380μl/ウェル)で室温で1時間ブロックした後、PBS-ツイーン20(PBST)で3回洗浄した。次に、競合IgGの添加有り又は無しで、ビオチン化ヒト、マウス、又はカニクイザルCD47-Fcを、PBS中0.2μg/mlで100μl/ウェルで室温で60分間添加した。次に、プレートをPBSTで3回洗浄し、ストレプトアビジン-HRPを室温で1時間添加した(100μl/ウェル)。次に、プレートをPBSTで3回、PBSで2回洗浄してから、ウェルあたり100μlのTMBを加えた。100μlの2M H2SO4/ウェルを加えることにより反応を停止させ、プレートリーダーで450nmでODを読んだ。
【0209】
抗体vドメインT細胞エピトープ含量:インシリコ分析
治療用抗体及びタンパク質のT細胞エピトープの位置の特定に基づくインシリコ技術(Abzena, Ltd.)を使用して、抗体vドメインの潜在的な免疫原性を評価した。iTope(登録商標)を使用して、ヒトMHCクラスIIに無差別に高親和性結合するペプチドについて、主要リードのVL及びVH配列を分析した。無差別な高親和性MHCクラスII結合ペプチドは、薬物タンパク質の臨床的免疫原性の高リスク指標であるT細胞エピトープの存在と相関すると考えられている。iTope(登録商標)ソフトウェアは、ペプチドのアミノ酸側鎖と34個のヒトMHCクラスII対立遺伝子のオープンエンド結合溝内の特定の結合ポケット(特定のポケット位置;p1、p4、p6、p7、及びp9)との好適な相互作用を予測する。これらの対立遺伝子は、特定の民族集団で最も一般的に見られるものに起因する加重なしで、世界中で見られる最も一般的なHLA-DR対立遺伝子を表す。20個の対立遺伝子には「オープン」p1構成が含まれ、14個の対立遺伝子には位置83のグリシンがバリンに置き換えられた「クローズド」構成が含まれている。重要な結合残基の位置は、試験タンパク質配列にまたがる8つのアミノ酸が重複する9量体ペプチドのインシリコ生成によって達成される。このプロセスは、MHCクラスII分子に結合するペプチド又は結合しないペプチドを高精度で識別する。
【0210】
さらに、他のタンパク質配列のインビトロのヒトT細胞エピトープマッピング分析で以前に特定されたT細胞エピトープとの一致について、TECD(登録商標)(T Cell Epitope Database(登録商標))検索を使用して配列を分析した。TECD(登録商標)は、無関係のタンパク質及び抗体配列に由来するペプチドの大規模な(>10,000ペプチド)データベースに対して任意の試験配列を検索するために使用される。
【0211】
癌細胞の食作用分析
密度勾配遠心分離により、全血からヒト末梢血単核細胞(PBMC)を分離した。続いて、CD14マイクロビーズを用いた磁気細胞分離によりCD14+PBMCを分離した。並行して、緑色のCFSE(カルボキシフルオレセイン二酢酸、スクシンイミジルエステル)細胞トレーサー色素を使用して、HL-60細胞を標識した。合計1.25×106 個の標識HL-60細胞を、5%CO2を含む加湿雰囲気中で37℃で1時間、24ウェルプレート中で抗CD47抗体の存在下でプレインキュベートした。インキュベーション後、5×105個のCD14陽性細胞を各ウェルに添加し、同じ培養条件下でさらに1時間インキュベートした。細胞を激しくピペッティングして回収し、氷冷4%パラホルムアルデヒドを使用して10分間固定し、Fc受容体結合阻害剤モノクローナル抗体で10分間ブロックした。ブロッキング工程に続いて、細胞をAlexa Fluor 647(AF647)結合抗ヒトCD14抗体とともに室温で30分間インキュベートし、4%パラホルムアルデヒドでさらに5分間固定した。
【0212】
細胞を、CFSE及びAF647蛍光強度データとともに、側方散乱及び前方散乱特性を記録するBD Fortessa フローサイトメーターで分析した。少なくとも1×104 個のAF647陽性イベントが記録されるまで、データをキャプチャした。データを取得後に、FlowJo ソフトウェア(バージョン10.4.2)を使用して分析した。簡単に述べると、細胞破片を散乱特性によりゲートアウトした(SSC面積対FSC面積)。単一細胞も、SSC面積対SSC高さによって、次にFSC面積対FSC高さによってゲート制御された。残りの単一細胞集団から、CFSE及びCD14二重陽性細胞を、ビヒクル処理試験においてCD14陽性細胞の集団に基づいて配置された象限ゲートを使用してゲート制御した。GraphPad Prism ソフトウェア(バージョン7.0a)を使用して、CD14陽性集団からCFSE陽性細胞の割合を計算してプロットした。
【0213】
結果と考察
好適なヒト生殖細胞系v遺伝子へのCDR移植
CDR移植を使用して、拮抗性マウス抗CD47 IgG VP037(mVH/mVL;国際公開第2014/093678号及び表2を参照)のCDRを、まずヒト生殖細胞系の免疫グロブリンvドメインフレームワーク配列足場に導入した。最適な薬物様特性を備えた最終リード治療用IgG化合物に我々の工学的努力を集中させるために、我々は、良好な溶解性を持つことが知られており、発現されたヒト抗体のレパートリーに高頻度で使用されている「好適な」生殖細胞系足場IGHV5-51及びIGKV2-28に、親抗体のCDRを移植することを選択した。
【0214】
これらの足場と移植されたCDR定義を表2に概説する。マウス抗CD47抗体の重鎖及び軽鎖配列も表2に示される。このCDR移植のプロセスはよく知られているが、特定のヒトvドメイン配列のセットが非ヒトCDR移植に適したアクセプターフレームワークとして機能するかどうかを予測するにはまだ問題がある。不適切なフレームワークを使用すると、標的結合機能の喪失、タンパク質の安定性の問題、又は最終的なIgGの発現障害に至る可能性がある。従って、IGHV5-51/IGKV2-28移植片は、CDR変異誘発及び改善されたクローンの選択の鋳型として進められた。
【0215】
ライブラリの生成とスクリーニング
CDR移植IGHV5-51/IGKV2-28 vドメイン配列は、VL-VH scFv形式に結合され、大量オリゴ合成及びアセンブリにより、突然変異誘発ライブラリカセットが生成された。最終的なscFvライブラリをファージディスプレイベクターに連結し、電気穿孔法を介して大腸菌に形質転換して、1.3×109 個の独立したクローンを生成した。ライブラリのビルド品質は、96個のクローンを配列決定することで検証された。この配列決定データは、各分散位置でマウス又はヒト生殖細胞系残基のいずれかをコードする位置が、約50%の頻度で効果的にサンプリングされたことを示した。ライブラリはヘルパーファージM13を使用してレスキューされ、3つの別々のブランチA、B、C中のビオチン化ヒト、マウス、及びカニクイザルCD47-Fcタンパク質で選択を行った。
【0216】
選択後のスクリーニング(
図1)及びDNA配列決定により、CDR内のヒト含有量が大幅に増加した854個のユニークなヒト及びマウスCD47結合scFvクローンの存在が明らかになったが、フレームワーク配列は完全に生殖細胞系のままであった。これらの854個のクローンの中で、すべてのCDRで生殖細胞内変異が観察された(表3)。リードクローンは、ヒトとマウスの両方のCD47-Fcへの結合についてのELISAシグナルに対するCDR生殖細胞系のレベルに基づいてランク付けされた(
図1)。このランキングの上位4クローンのvドメインと、最もヒト化された2つの観察された重鎖及び軽鎖vドメインを組み合わせた5番目のクローン(「VH-A1/VL-B1」)は、以下の追加試験用のIgG発現ベクターにサブクローニングされた(表4)。
【0217】
ライブラリ選択から直接誘導されたリードクローンのすべてのCDRで、生殖細胞系内変異が観察されたが、配列解析がさらにヒト化を最大化するクローンの設計できる可能性が残った。従って、ヒト及びマウスのタンパク質に対する結合シグナルによる854個の配列固有のヒットを使用して、この機能的に特性決定された集団のCDRにおけるマウスアミノ酸の保持頻度を分析した。位置的アミノ酸保持頻度は、V
H及びV
Lドメインに見られる割合として表された(
図2A及びB)。RF<75%のマウス残基は、一連のコンビナトリアル設計において、標的結合パラトープに必須ではない可能性があり、生殖細胞系に対してオープンである可能性が高い位置と見なされた。
【0218】
RF>75%のマウス残基のみを含む設計は、「MH」(MH=最大にヒト化された)と名付けた。集団で観察された最もヒト化された5つのCDRを組み合わせた別のデザイナークローン(「TTP」=理論的に可能な合計)も作り出された。MH及びTTPクローンは遺伝子合成によって生成され、(上記の4つのライブラリ由来クローンと、陽性対照mVH/mVL及び陰性対照アイソタイプ一致非CD47反応性vドメインとともに)、IgG1ヌル及びIgG4(S228P)として産生するためのヒト発現ベクターにクローン化された。すべてのIgGは、HEK-293細胞の一過性トランスフェクション物から容易に発現及び精製された。
【0219】
リードIgGの特異性と効力特性
上記の精製IgGを、直接力価測定ELISA形式で、ヒト、マウス、及びカニクイザルCD47-Fcへの結合について試験した(
図3)。驚くべきことに、この分析は、クローンMH、A-D5、及びD-H3がCD47の3つのオーソログすべてに対して結合親和性を保持しているのに対し、2つのクローン(G-B6及びF-E7)はマウスCD47への結合が低下し、1つのクローン(VH-A1/VL-B1)は、ヒト及びマウスの両方のCD47に対して同等の結合を維持したが、マウスCD47との交差反応性を失い、1つのクローン(TTP)はほとんどすべての結合機能を失ったことを示した。
【0220】
CD47-SIRPα阻止アッセイ(
図4)では、A-D5、G-B6、F-E7、及びD-H3はすべて、mVH/mVL IgG1抗体と同様の濃度範囲で、SIRPα-Fcとのヒト、マウス、及びカニクイザルのCD47相互作用の濃度依存性阻止を示した。特に、VH-A1/VL-B1 IgG1はヒト及びカニクイザルCD47の強力な阻止を示したが、マウスCD47の阻止はなかった。興味深いことに、クローンMHは、ELISAでCD47の3つのオーソログすべてに結合を示したのにもかかわらず、どのアッセイでも阻止シグナルを示さなかった。クローンTTPもすべての阻止アッセイで陰性であった。
【0221】
リードクローンが突然変異及び再選択プロセス中に標的特異性を消失していないことを確認するため、免疫グロブリンスーパーファミリー由来の14個の精製ヒトタンパク質のパネルへの結合について、リード及び対照IgG1クローンを試験した(
図5)。5つのIgGはすべて、1μg/mlでCD47-Fcに対しての結合シグナルを示し(ヒトOD450nm>2.0、カニクイザル>2.0、マウス>1.25)、他のタンパク質に対する検出可能な結合はなかった(OD450nm<0.1)。注目すべき例外の1つは、VH-A1/V1-B1クローンであり、これは再度ヒト及びカニクイザルCD47への強い結合を示したが、マウスCD47に対するシグナルは示さなかった。
【0222】
細胞膜でのリードIgGの結合特異性のフローサイトメトリー分析
CD47に対する抗体を細胞表面での濃度依存性結合について、フローサイトメトリーにより分析した。CHO-K1細胞を、ヒト、マウス、又はカニクイザルのCD47の完全長cDNAを用いて安定的にトランスフェクトした。抗CD47 IgG mVH/mVL、VH-A1/VL-B1、A-D5、G-B6、F-E7、及びD-H3、及びアイソタイプ対照IgG1を、すべてIgG1ヌル及びIgG4(S228P)形態で、市販のマウス抗ヒトCD47モノクローナルMS1991とともに、100,000~24ng/mlの濃度範囲で、ヒト、カニクイザル、又は野生型対照(「wt」、すなわちトランスフェクトされていない)CHO-K1への結合について試験した。アイソタイプ対照以外のすべてのIgGは、ヒト及びカニクイザルCD47+細胞への濃度依存性結合を示し、それぞれの場合の最大MFIは、トランスフェクトされていないCHO-K1への結合について観察されたシグナルよりも10倍以上高かった(
図6)。CHO-K1 wt細胞への測定可能な結合は、VH-A1/VL-B1以外のすべてのクローンで観察されたが、高い抗体濃度でのみ観察された。しかし、mVH/mVL IgGは、24ng/mlの低濃度で、「抗体なし」の陰性対照よりも10倍以上高いシグナルで最も強い反応性を示した。このバックグラウンド結合は、元のマウス抗体VxP037がマウスCD47と交差反応性を有するだけでなく、ハムスターへの交差反応性も有することを示している可能性がある。抗体は臨床的使用のために通常CHO細胞培養で産生されるため、ハムスターCD47に対するこの交差反応性の最小化は治療用タンパク質にとって好ましい。ハムスターCD47タンパク質に対する高いIgG結合親和性は、生産工程での望ましくない共精製CD47宿主細胞タンパク質(これは、患者の免疫原性を回避するために製剤から除去する必要がある)の含有量の大幅な増加につながる可能性がある。
【0223】
CD47+ヒト癌細胞へのリードIgGの結合を調べるために、HL60細胞(ヒト急性骨髄性白血病由来)も上記のフローサイトメトリー分析で使用された。アイソタイプ対照IgG以外のすべての抗体は、HL60細胞への濃度依存性の強い結合を示した(
図7)。
【0224】
「開発性」ELISAアッセイによるリードIgG分析
当技術分野では、いくつかの指標となる生物学的基質への、治療用途を意図したIgGの結合は、生物学的利用能が低くインビボ半減期が短いため、患者での性能低下の高リスクの指標であることが知られている。このような生物学的基質の3つは、インスリン、dsDNA、及びssDNAである。従って、これら3つの基質を使用して、ELISAプレートをコーティングし、最適化されたリード抗体のIgG1ヌルバージョンの結合を調べた。これらのヒトIgGベースの抗体の結合シグナルを、多反応性で性能が低いことがわかっており臨床試験(ボコシズマブ及びブリアキヌマブのヒトIgG1類似体)で進行を停止した「陽性対照」ヒトIgG抗体と比較した。陰性対照のヒトIgG1抗体については、ブリキヌマブと同じ治療標的と反応するが、IgG1ウステキヌマブ類似体がより長いpKを有し、治療製品として成功裏に承認されているため、IgG1ウステキヌマブ類似体が使用された。
図8に示すELISA分析では、陽性対照抗体は3つすべての基質に対して予想される強い反応性を示したが、陰性対照は低い反応性を示した。重要なことに、試験したすべてのIgG1ヌルリードタンパク質は、3つの基質すべてに対する陰性対照の結合以下の結合を示した。この知見は、最適化されたクローンA-D5、G-B6、D-H3、及びVH-A1/VL-B1における非常に特異的な標的駆動型結合の維持を強調している。
【0225】
リードクローンA-D5に基づくデザイナーIgGの分析
上記のように、クローンA-D5は、ヒト、カニクイザル、及びマウスCD47への高度に特異的な結合、低いオフターゲット結合能力、マウスCD47の中和の改善、CHO細胞へのバックグラウンド結合の減少、及びCDR中の複数のヒト生殖細胞系変異を有することが証明された。しかし、ライブラリ由来のクローンとして、A-D5配列は、
図2A及び2Bで見つかったデータでは潜在的に不要であることが示唆された多くの非生殖細胞系(マウス由来)残基を保持していた。A-D5配列及び他のすべてのライブラリ由来クローンも、長く柔軟なIGKV2-28生殖細胞系鋳型CDR-L1ループの頂点で高い溶媒露出を示すことがわかったため、脱アミノ化のリスクが高いCDR-L1中に「NG」モチーフを保持していた。A-D5の可変ドメインのヒト生殖細胞系配列を同時に最大化し、タンパク質中の高リスク脱アミノ化モチーフの含量を最小化する試みにおいて、一連のデザイナークローンが作り出された。この試みは2期に分けて実施され、第1期のA-D5.1~A-D5.10クローンは表4に概説したCDR配列を含有した。これらのクローンは、IgG1ヌル形態で発現及び精製され、すべてのCD47オーソログのELISAによる標的結合(
図9A、B、C)について、及びすべてのオーソログについてのCD47-SIRPαB相互作用の中和(
図10A、B、C)について調べられた。この段階では、ヒト生殖細胞系とこれらの改善は、中程度の効力の喪失と関連している可能性があることがわかった。さらに、標的結合ELISAとCD47-SIRPα相互作用の中和の両方の効力の関連する低下にもかかわらず、CDR-L1の「NG」モチーフを(NからQへの保存的置換を介して)除去しようとする最初の変異は成功した(
図10A、B、C)。
【0226】
第2期では、第1期の最高性能の変異体であるA-D5.4について一連のさらなる変異体が設計された(表5)。これらの9つの変異体は、「NG」脱アミノ化リスクモチーフ中の「N」をS、G、A、Tなどの保存的及び非保存的変異で置き換えるか置き換えずに、又は「G」残基をAで置き換えるか置き換えずに、AD.4のCDR-H2のさらなるヒト化を見いだした。これらのクローンを再度IgG1ヌル形態で発現及び精製し、すべてのCD47オーソログでのELISAによる標的結合について(
図11A、B、C)、及びすべてのオーソログについてCD47-SIRPα相互作用の中和について(
図12A、B、C)調べた。この段階では、クローンA-D5と比較して効力を失うことなく、CDR-H2のヒト生殖細胞系含有量をさらに2残基上げることができることがわかった。さらに、Nの置換を介してCDR-L1の「NG」モチーフを除去しようとする変異は成功して、クローンA-D5.16が同定され、これは、非保存的なNからAへの変異と、A-D5とmVL/mVHの両方に対する、CD47-SIRPの標的結合ELISA又は中和のいずれかの効力のわずかな(約3倍)低下のみで、最大にヒト化されたCDR-H2を含有した。AD.16のCDR-L1配列「RSSQSLLHS
AGYNYL
H」(配列番号82)(及びクローンA-D5.14、A-D5.15、A-D5.17、及びA-D5.28)は、2箇所のみ(下線)で非生殖細胞系残基を含み、最大のヒト生殖細胞系含有量と最大の安定性特性の最適なバランスを達成した。
【0227】
次にA-D5誘導体であるA-D5.4及びA-D5.16は、変異及び再選択プロセス中に標的特異性の消失がなかったことを確認するために、結合特異性の維持のためにIgG1ヌル形態でも試験した;免疫グロブリンスーパーファミリー由来の14個の精製ヒトタンパク質のパネルへの結合について、両方のクローンを試験した(
図13)。両方のIgGは、10μg/mlでCD47-Fcへの結合シグナルを示し(ヒト、カニクイザル、及びマウスのすべて>2.0 OD450nm)、他のタンパク質に対する検出可能な結合はなかった(OD450nm<0.1)。
図14に示される「開発性」ELISA分析では、陽性対照抗体は3つすべての基質に対して予想される強い反応性を示したが、陰性対照は低い反応性を示した。重要なことは、A-D5.4及びA-D5.16 IgG1ヌルリードタンパク質の両方が、3つの基質すべてに対する陰性対照の結合以下の結合を示したことである。この知見は、最適化されたクローンA-D5、A-D5.4、及びA-D5.16における非常に特異的な標的駆動型結合の維持を強調している。
【0228】
最後に、A-D5誘導変異体であるA-D5.4及びA-D5.16を、野生型CHO(
図15)及びHL60(
図16)細胞への結合について、フローサイトメトリーにより調べた。これらの分析により、IgG1ヌル又はIgG4形態のクローンmVH/mVLの元のマウスvドメインが、CHO細胞への強い濃度依存性の結合を駆動するのに対し、クローンA-D5、A-D5.4、及びA-D5.16は、どちらのIgG形態でも結合シグナルはほとんど又はまったく媒介しない(
図15)ことを確認した。対照的に、クローンmVH/mVL、A-D5、A-D5.4、及びA-D5.16はすべて、ヒトCD47+ HL60細胞への強い結合を示し(
図16)、細胞膜でのヒトCD47の結合が、我々の最適化されたクローンでは保持されていたが、ハムスターCD47の反応性は改善されていたことを示した。
【0229】
抗体vドメインT細胞エピトープ分析
治療用抗体及びタンパク質のT細胞エピトープの位置の特定に基づくインシリコ技術(Abzena, Ltd.)を使用して、mVH/mVL及びリード抗体vドメインの両方の免疫原性を評価した。vドメイン配列の分析は、34個のMHCクラスIIアロタイプのそれぞれに対して試験された重複する9量体ペプチド(それぞれ8残基ずつ最後のペプチドと重複する)で実施された。各9量体は、MHCクラスII分子との潜在的な「適合」と相互作用に基づいてスコア化された。ソフトウェアによって計算されたペプチドスコアは0~1である。高い平均結合スコア(iTope(登録商標)スコア化関数で>0.55)を生成したペプチドが強調され、50%を超える(すなわち、34の対立遺伝子のうちの17)MHCクラスII結合ペプチドは高い結合親和性(スコア>0.6)を持ち、そのようなペプチドは、CD4+ T細胞エピトープを含むリスクが高いと考えられる「高親和性」MHCクラスII結合ペプチドと定義された。低親和性MHCクラスII結合ペプチドは、多数の対立遺伝子(>50%)に結合し、結合スコアは0.55を超える(しかし、過半数は0.6を超えない)。TCED(登録商標)を使用して、配列のさらなる分析を行った。この配列を使用してBLAST検索によりTCED(登録商標)を調べて、Abzena Ltd.で行われた以前のインビトロT細胞エピトープマッピング研究でT細胞応答を刺激した無関係なタンパク質/抗体からのペプチド(T細胞エピトープ)間の高い配列相同性を同定した。
【0230】
ペプチドは4つのクラスに分類された:高親和性外来(「HAF」-高い免疫原性リスク)、低親和性外来(「LAF」-低い免疫原性リスク)、TECD+(以前にTCED(登録商標)データベースで特定されたエピトープ)、及び生殖細胞系エピトープ(「GE」-MHCクラスII結合親和性の高いヒト生殖細胞系ペプチド配列)。生殖細胞系エピトープ9量体ペプチドは、広範囲の生殖細胞系ペプチドを用いた以前の研究で検証されているように、T細胞耐性があるため免疫原性を持つ可能性は低い(つまり、これらのペプチドは宿主で「自己」として認識される)。重要なことに、そのような生殖細胞系vドメインエピトープ(ヒト抗体定常領域中の類似した配列によってさらに支援される)は、抗原提示細胞の膜でMHCクラスII占有についても競合し、T細胞刺激に必要な「活性化閾値」を達成するのに十分な外来ペプチド提示のリスクを低減する。従って、高いGE含有量は、抗体治療薬の臨床開発において有益な品質である。
【0231】
図17に示すように、主要なリードvドメインは、mVH/mVLと比較して、ペプチドエピトープの含有量に顕著な有益な変化を示した。ここで行われたvドメイン工学的プロセスは、フレームワークに含まれるマウス残基を必要とせずに抗CD47効力を維持する抗体を選択することに成功したため(表2)、mVH/mVLの重鎖と軽鎖の両方のvドメインのフレームワーク中に見つかった複数のHAF及びLAFエピトープは、すべてのライブラリ由来及びデザイナーリードに欠如していた(
図17)。GEエピトープ含有量も顕著に増加していることがわかり(すべてのリードで3~14以上)、特にリードクローンのVH領域では、GE含有量がすべてのリードで0から9に増加し、TCED+エピトープがすべてのリードで3から2に減少した(表8)。しかし重要なことは、複数の外来エピトープも、リードクローンのCDRで見つかった生殖細胞系変異によって排除されたことである。例えばmVH/mVLのLCDR-1で見つかったTCED+ペプチド「LVHSNGNTY」(配列番号116)(従って、CDR移植により以前ヒト化された任意の形態のVxP037)は、大部分のリードクローンにおいて位置2での変異V>L及び位置7でのN>Yによって排除された(表4及び5)。同様に、mVH/mVL配列のLCDR2は、VLフレームワーク2-LCDR2-フレームワーク3にまたがる3つの外来エピトープペプチドをコードした。これらには、2つのHAFペプチド(「LLIYKVSYR」(配列番号117)及び「YRFSGVPDR」(配列番号118))と1つのLAFペプチド(’LIYKVSYRF’(配列番号119))とを含有した。LCDR2をヒト生殖細胞系フレームワークIGKV2-28に挿入しても、この問題は完全には解消されず、mVH/mVLからの全配列「LLIYKVSYRFSGVPDR」(配列番号120)は、IGKV2-28移植配列中で100%の同一性を維持する(表2)。クローンA-D5、A-D5.4、及びA-D5.16については、この領域で1つのHAFと2つのLAFペプチドがまだ見つかったが、HAF配列「YRFSGVPDR」(配列番号118)は位置1で突然変異Y>Nによって削除された。しかし驚くべきことに、ライブラリスクリーニング(表3)中に機能的結合集団内で同定されており、及び位置4で単一のヒト生殖細胞系変異Y>Nを含有したLCDR2配列KVSNRFS(配列番号85)は、この領域で予測されるすべての外来エピトープを完全に改善することがわかった(HAF、LAF、及びTECD+ペプチドは予測されない)が、さらに2つのGE配列も生成された(
図18)。また、リードクローンA-D5及びそのすべてのデザイナー誘導体(表4及び5)は、VLフレームワーク3とLCDR3領域にまたがるTECD+であるHAFペプチド「VGVYYCFQN」(配列番号121)を保持していることも観察された。このペプチドの位置1のVからA、T又はFへの変異はすべて、予測されたエピトープ構造を破壊し、このペプチドの免疫原性リスクを除去することがわかった。
【0232】
上記知見により、クローン「A-D5.16-DI」を形成するためにA-D5.16 VH配列(表4)と対になった最大限に脱免疫化された軽鎖配列の設計が可能になった。A-D5.16-DIは、LCDR配列「RSSQSLLHSAGYNYLH」(配列番号82)、LCDR2配列「KVSNRFS」(配列番号85)、及びフレームワーク2-LCDR3配列「
AGVYYCFQNTHTPRT」(配列番号122)(フレームワーク2残基に下線が引かれている)を含有した。このクローンはIgG1ヌル形態で容易に発現され、mVH/mVL IgG(マウスで低下している、
図18)に匹敵する、ヒト、カニクイザル、及びマウスCD47に対する標的結合親和性を保持することがわかった(
図18A~C)。A-D5.16-DIはまた、A-D5.16と比較して改善されたCD47-SIRPα阻止を示し、ヒト及びカニクイザルCD47に対してmVH/mVLと同等の阻止を示し、マウスでわずかに低下していることがわかった(
図19)。これらの知見は、LCDR配列「RSSQSLLHSNGYTYLH」(配列番号52)(又はAHo定義を使用してSSQSLLHSNGYTY 配列番号92])、LCDR2配列「KVSNRFS」(配列番号85)、及びフレームワーク2-LCDR3配列「
AGVYYCFQNTHTPRT」(配列番号12s2)(フレームワーク2残基に下線が引かれている)を含む軽鎖設計を有する脱免疫化クローンA-D5.4-DIをもたらした。
【0233】
癌細胞の食作用
ヒト始原マクロファージによるHL60ヒト癌細胞の食作用を駆動する際のCD47阻止の相対的効力を調べるための、研究を行った。
図20Aに示されるように、IgG4(S228P)形態では、mVH/mVL、A-D5、A-D5.4、及びA-D5.16はすべて、試験したすべての濃度で顕著な食作用を駆動した。IgG1ヌル形態のA-D5は20μg/mlで顕著な効力を示さず、食作用を誘発するためのFcガンマ受容体1結合親和性の必要性を示した。予想外に、IgG4 A-D5、A-D5.4、及びA-D5.16は、mVH/mVLと比較した場合、1及び10μg/mlの両方で顕著に強力な食作用を駆動した。次にこの現象を、ヒトマクロファージの4つの別々のドナーにわたってIgG4 A-D5及びmVH/mVLについて調べた(
図20B)。この分析は、
図20Aに示されるより高い効力が正しいことを示し、A-D5はすべてのドナーにおいて顕著により強力であった(
図20B)。
【0234】
好適な又は例示的な実施態様を参照して本発明を説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、これらに対する様々な修正及び変更を達成できること、及びそのような修正が本明細書において明らかに企図されていることを認識するであろう。本明細書に開示され、添付の特許請求の範囲に記載された特定の実施態様に関する限定は意図されておらず、また限定されていると推測すべきではない。
【0235】
本明細書に引用されるすべての文書は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0236】
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表4-1】
【表4-2】
【表5】
【配列表】