(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
A61M25/09 550
A61M25/09 514
A61M25/09 516
(21)【出願番号】P 2019086794
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111523
【氏名又は名称】高橋 良文
(72)【発明者】
【氏名】江尾 和也
(72)【発明者】
【氏名】柘 賢太
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-268(JP,A)
【文献】特開2014-23727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0306353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
コアシャフトと、
前記コアシャフトの先端から離間して形成され
、前記コアシャフトの剛性変化点を収容する袋体と、
前記袋体内に封入されたダイラタント流体と、
を備える、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、第1の部分と、前記第1の部分の基端側に隣接
し、前記第1の部分の基端から前記ガイドワイヤの基端側に向けて径が徐々に大きくなるテーパ形状の第2の部分と、を有し、
前記袋体は、前記コアシャフトの前記第1の部分と前記第2の部分との境界を収容するように構成される、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトの前記第2の部分の外周を取り囲むように配置されたリング状の固定部材であって、前記第2の部分との間で前記袋体の基端を挟持することによって前記袋体を封止する、固定部材を備える、ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、血管等に挿入されるガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。一般に、カテーテルを血管等における病変部に案内するために、ガイドワイヤが用いられる。ガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの外周を取り囲むように配置されたコイル体と、コアシャフトの先端とコイル体の先端とを接合する接合部(先端チップ)とを備えている。
【0003】
従来、コイル体の内側空間に放射線不透過性金属の粉末を導入したガイドワイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガイドワイヤの使用の際には、血管等における病変部の通過性を向上させるため、ガイドワイヤの先端部を意図的にU字形状に屈曲させた状態(以下、「プロラプス」という。)を形成することがある。プロラプスは、コアシャフトにおける剛性変化点(例えば、径が変化する点)を起点として形成される。従来のガイドワイヤでは、プロラプスを形成した後にガイドワイヤの突き込み操作を行うと、プロラプスがさらに進行する(プロラプスの起点が基端側に移動し、全長に対する屈曲部分の長さの割合が大きくなる)ことがある。プロラプスの形成後、ガイドワイヤの突き込み操作に伴ってプロラプスがさらに進行すると、例えば血管壁の損傷等の不具合が発生するおそれがあるため、好ましくない。上述した特許文献1に開示されたガイドワイヤのように、コイル体の内側空間に放射線不透過性金属の粉末を導入しても、プロラプス形成後のプロラプスのさらなる進行を抑制することはできない。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるガイドワイヤは、ガイドワイヤであって、コアシャフトと、前記コアシャフトの先端から離間して形成された袋体と、前記袋体内に封入されたダイラタント流体と、を備える。
【0009】
本ガイドワイヤでは、コアシャフトの先端から離間して形成された袋体内に、ダイラタント流体が封入されている。ダイラタント流体は、比較的速いせん断刺激を受けると硬質化するが、比較的遅いせん断刺激を受けても硬質化しない流体である。そのため、ダイラタント流体に比較的速いせん断刺激が生じないように操作を行うことにより、従来と同様に、ガイドワイヤの先端側においてプロラプスを形成することができる。また、プロラプスを形成した後にガイドワイヤの突き込み操作を行うと、該突き込み操作に伴いダイラタント流体に比較的速いせん断刺激が作用してダイラタント流体が硬質化する。そのため、硬質化したダイラタント流体によってコアシャフトにおける先端付近の変形が抑制され、これにより、プロラプスがそれ以上進行することを抑制することができる。従って、本ガイドワイヤによれば、プロラプス形成後のプロラプスのさらなる進行を抑制することができ、プロラプスのさらなる進行に伴う不具合(例えば、血管壁の損傷)の発生を抑制することができる。
【0010】
(2)上記ガイドワイヤにおいて、前記コアシャフトは、第1の部分と、前記第1の部分の基端側に隣接する第2の部分と、を有し、前記袋体は、前記コアシャフトの前記第1の部分と前記第2の部分との境界を収容する構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、例えば第1の部分と第2の部分との材料を異ならせることによって剛性を異ならせる形態と比較して、コアシャフトの製造の容易化、ひいてはガイドワイヤの製造の容易化を実現することができる。
【0011】
(3)上記ガイドワイヤにおいて、前記コアシャフトの前記第2の部分は、前記第1の部分の基端から前記ガイドワイヤの基端側に向けて径が徐々に大きくなるテーパ形状の部分であり、前記ガイドワイヤは、さらに、前記コアシャフトの前記第2の部分の外周を取り囲むように配置されたリング状の固定部材であって、前記第2の部分との間で前記袋体の基端を挟持することによって前記袋体を封止する、固定部材を備える構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、コアシャフトにおけるテーパ形状の部分である第2の部分に、袋体の基端を封止するリング状の固定部材が配置されているため、固定部材が基端側に位置ずれすることを抑制することができ、固定部材の位置ずれに伴う上述したプロラプス進行抑制効果の低下等を防止することができる。
【0012】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図
【
図2】本実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図
【
図3】ガイドワイヤ100の先端部にプロラプスが形成された状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.実施形態:
A-1.ガイドワイヤ100の基本構成:
図1および
図2は、本実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図である。
図1には、ガイドワイヤ100の側断面(YZ断面)の構成が示されており、
図2には、
図1のII-IIの位置におけるガイドワイヤ100の断面(XY断面)の構成が示されている。
図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。なお、
図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。
【0015】
ガイドワイヤ100は、血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテルを案内するために、血管等に挿入される医療用デバイスである。ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部31と、基端側接合部32とを備えている。
【0016】
コアシャフト10は、先端側が細径であり基端側が太径である棒状の部材である。より具体的には、コアシャフト10は、円形断面の棒状の細径部11と、細径部11に対して基端側に位置し、細径部11より径の大きい円形断面の棒状の中間径部13と、中間径部13に対して基端側に位置し、中間径部13より径の大きい円形断面の棒状の太径部15と、細径部11と中間径部13との間に位置し、細径部11との境界位置から中間径部13との境界位置に向けて径が徐々に大きくなる第1のテーパ部12と、中間径部13と太径部15との間に位置し、中間径部13との境界位置から太径部15との境界位置に向けて径が徐々に大きくなる第2のテーパ部14とから構成されている。なお、
図1では、太径部15の一部分の図示を省略している。
【0017】
コアシャフト10は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等により構成されている。
【0018】
本実施形態では、コアシャフト10は、全長にわたって同一材料により構成されている。また、コアシャフト10の第1のテーパ部12は、細径部11と比較して、径が大きい。そのため、コアシャフト10の第1のテーパ部12は、細径部11と比較して、剛性が高い部分であると言える。コアシャフト10の細径部11は、特許請求の範囲における第1の部分に相当し、第1のテーパ部12は、特許請求の範囲における第2の部分に相当する。
【0019】
コイル体20は、素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体20は、コアシャフト10の先端部(本実施形態では、細径部11、第1のテーパ部12、および中間径部13における先端側の一部分)の外周を取り囲むように配置されている。本実施形態では、コイル体20は、1本の素線が疎巻きされた構成である。
【0020】
コイル体20は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金により構成されている。コイル体20が放射線不透過性の材料で形成されていると、手技者は、放射線透視画像下でコイル体20の位置を把握することができる。
【0021】
先端側接合部31は、コアシャフト10の先端18とコイル体20の先端21とを接合する部材である。すなわち、コアシャフト10の先端18とコイル体20の先端21とが、先端側接合部31の内部に埋め込まれるようにして固着されている。先端側接合部31の先端側の外周面は、滑らかな面(例えば、略半球面)となっている。先端側接合部31は、特許請求の範囲における接合部に相当する。
【0022】
先端側接合部31は、例えば、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等により構成されている。
【0023】
基端側接合部32は、コアシャフト10(の中間径部13)とコイル体20の基端22とを接合する部材である。すなわち、コアシャフト10とコイル体20の基端22とが、基端側接合部32の内部に埋め込まれるようにして固着されている。
【0024】
基端側接合部32は、先端側接合部31と同様に、例えば、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等により構成されている。
【0025】
なお、ガイドワイヤ100の一部または全部が、公知のコーティング剤によりコートされていてもよい。
【0026】
A-2.ガイドワイヤ100の詳細構成:
次に、本実施形態のガイドワイヤ100の詳細構成について説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態のガイドワイヤ100は、袋体51を備える。袋体51は、コイル体20に囲まれた内側空間ISに配置された袋状の部材である。袋体51は、コアシャフト10の内、少なくとも細径部11と第1のテーパ部12との接続箇所16を収容するように配置されている。より具体的には、袋体51は、細径部11における基端側の一部分と、第1のテーパ部12における先端側の一部分とを収容している。袋体51は、半透膜(例えば、セロファン膜)により構成されている。
【0027】
また、ガイドワイヤ100は、袋体51を封止する基端側固定部材52および先端側固定部材53を備える。基端側固定部材52は、コアシャフト10の第1のテーパ部12の外周を取り囲むように配置されたリング状の部材である。基端側固定部材52は、コアシャフト10の第1のテーパ部12との間で袋体51の基端を挟持することによって、袋体51の基端を封止している。なお、基端側固定部材52は、例えば、金属により構成されており、コアシャフト10の第1のテーパ部12に対してかしめ固定されている。基端側固定部材52は、第1のテーパ部12に固定されているため、基端側への移動が規制された状態となっている。基端側固定部材52は、特許請求の範囲における固定部材に相当する。
【0028】
また、先端側固定部材53は、コアシャフト10の細径部11の外周を取り囲むように配置されたリング状の部材である。先端側固定部材53は、コアシャフト10の細径部11との間で袋体51の先端を挟持することによって、袋体51の先端を封止している。なお、先端側固定部材53は、例えば、金属により構成されており、コアシャフト10の細径部11に対してかしめ固定されている。
【0029】
袋体51内の空間には、ダイラタント流体55が封入されている。ダイラタント流体55は、比較的速いせん断刺激を受けると硬質化する流体である。ダイラタント流体55としては、例えば、無機材料(例えば、Ni-Ti合金)や高分子材料等からなるダイラタンシー特性を有する微細粉末と、液体(例えば、水)との混合物を用いることができる。なお、ダイラタント流体55を構成する微細粉末は、袋体51の構成材料である半透膜を通過しない粒径(例えば、1~10μm程度)のものであり、ダイラタント流体55を構成する液体は、該半透膜を通過するものである。なお、袋体51内にダイラタンシー特性を有する微細粉末を封入しておき、ガイドワイヤ100が血管内に挿入されることにより血液中の水分が半透膜である袋体51内に浸透し、袋体51内にダイラタント流体55が充填されるのであっても良い。
【0030】
なお、本実施形態のガイドワイヤ100は、例えば、以下のように製造することができる。まず、コアシャフト10とコイル体20とを準備する。
次に、袋体51を準備し、袋体51内に、コアシャフト10の細径部11における基端側の一部分と、第1のテーパ部12における先端側の一部分とが収容された状態で、袋体51内にダイラタント流体55又はダイラタンシー特性を有する微細粉末を充填し、基端側固定部材52をコアシャフト10の第1のテーパ部12に例えばかしめ固定すると共に、先端側固定部材53をコアシャフト10の細径部11に例えばかしめ固定することによって、袋体51の基端および先端を封止する。次に、コアシャフト10の先端側の一部分がコイル体20の内側空間ISに挿入された状態で、公知の方法により、コアシャフト10とコイル体20とを接合する先端側接合部31および基端側接合部32を形成する。主として以上の方法により、上述した構成のガイドワイヤ100を製造することができる。
【0031】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コアシャフト10の外周を取り囲むように配置されたコイル体20と、コアシャフト10の先端18とコイル体20の先端21とを接合する先端側接合部31とを備える。コアシャフト10は、細径部11と、細径部11に対して基端側に隣接し、かつ、細径部11より剛性の高い第1のテーパ部12とを有する。さらに、本実施形態のガイドワイヤ100は、半透膜により形成された袋体51を備える。袋体51は、コイル体20に囲まれた内側空間ISに配置され、コアシャフト10の内、少なくとも細径部11と第1のテーパ部12との接続箇所16を収容している。また、袋体51には、ダイラタント流体55が封入されている。
【0032】
ここで、コアシャフト10の細径部11と第1のテーパ部12との接続箇所16は、コアシャフト10における剛性変化点であり、プロラプス(ガイドワイヤ100の先端部を意図的にU字形状に屈曲させること)の起点となる箇所である。すなわち、
図3に示すように、コアシャフト10における接続箇所16を起点として、接続箇所16より先端側に位置する細径部11がU字形状に屈曲することにより、プロラプスが形成される。なお、
図3では、ガイドワイヤ100の一部の構成(コイル体20等)の図示を省略している。
【0033】
本実施形態のガイドワイヤ100では、コアシャフト10の細径部11と第1のテーパ部12との接続箇所16を収容する袋体51内に、ダイラタント流体55又はダイラタンシー特性を有する微細粉末が封入されている。ダイラタント流体55は、比較的速いせん断刺激を受けると硬質化するが、比較的遅いせん断刺激を受けても硬質化しない流体である。そのため、ダイラタント流体55に比較的速いせん断刺激が生じないように操作を行うことにより、従来と同様に、細径部11と第1のテーパ部12との接続箇所16を起点としたプロラプスを形成することができる。また、プロラプスを形成した後にガイドワイヤ100の突き込み操作を行うと、該突き込み操作に伴いダイラタント流体55に比較的速いせん断刺激が作用してダイラタント流体55が硬質化する。そのため、硬質化したダイラタント流体55によってコアシャフト10における上記接続箇所16付近の変形が抑制され、これにより、プロラプスがそれ以上進行することを抑制することができる。従って、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、プロラプス形成後のプロラプスのさらなる進行を抑制することができ、プロラプスのさらなる進行に伴う不具合(例えば、血管壁の損傷)の発生を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、コアシャフト10の第1のテーパ部12は、コアシャフト10の細径部11より径が大きい部分である。そのため、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、例えば細径部11と第1のテーパ部12との材料を異ならせることによって剛性を異ならせる形態と比較して、コアシャフト10の製造の容易化、ひいてはガイドワイヤ100の製造の容易化を実現することができる。
【0035】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、コアシャフト10の第1のテーパ部12は、細径部11の基端からガイドワイヤ100の基端側に向けて径が徐々に大きくなるテーパ形状の部分である。また、本実施形態のガイドワイヤ100は、さらに、コアシャフト10の第1のテーパ部12の外周を取り囲むように配置されたリング状の基端側固定部材52を備える。基端側固定部材52は、コアシャフト10の第1のテーパ部12との間で袋体51の基端を挟持することによって袋体51を封止する。このように、本実施形態のガイドワイヤ100では、コアシャフト10における第1のテーパ部12に、袋体51の基端を封止するリング状の基端側固定部材52が配置されているため、基端側固定部材52が基端側に位置ずれすることを抑制することができ、基端側固定部材52の位置ずれに伴う上述したプロラプス進行抑制効果の低下等を防止することができる。
【0036】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0037】
上記実施形態におけるガイドワイヤ100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、コイル体20は素線が疎巻きされた構成であるが、コイル体20は素線が密巻きされた構成であってもよい。また、上記実施形態では、コイル体20は、1本の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成された構成であるが、コイル体20は、複数の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよいし、複数の素線を撚って形成した1本の撚線を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよいし、複数の素線を撚って形成した撚線を複数本、螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、袋体51は、細径部11における基端側の一部分と、第1のテーパ部12における先端側の一部分とを収容しているが、袋体51は、少なくとも細径部11と第1のテーパ部12との接続箇所16を収容する限りにおいて、コアシャフト10における他の部分を収容していてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、コアシャフト10が、細径部11と第1のテーパ部12と中間径部13と第2のテーパ部14と太径部15とから構成されているが、コアシャフト10は、これら5つの部分の内の少なくとも1つを有さないとしてもよいし、該5つの部分の他に他の部分を有するとしてもよい。例えば、コアシャフト10が、細径部11の代わりに、円形断面の棒状の第1の細径部と、第1の細径部に対して基端側に位置し、第1の細径部より径の大きい円形断面の棒状の第2の細径部と、第1の細径部と第2の細径部との間に位置し、第1の細径部との境界位置から第2の細径部との境界位置に向けて径が徐々に大きくなるテーパ部とを有するとしてもよい。また、コアシャフト10の一部分と他の一部分との構成材料が互いに異なっていてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、プロラプスの起点となるコアシャフト10の剛性変化点が、細径部11と、細径部11より径の大きい第1のテーパ部12との接続箇所16であるとしているが、該剛性変化点が、コアシャフト10における一部分と、該一部分の構成材料(例えば、Ni-Ti合金)より剛性の高い材料(例えば、ステンレス鋼)により構成された他の部分との接続箇所であるとしてもよい。その場合、ダイラタント流体55を収容する袋体51は、該接続箇所を収容するように配置される。
【0041】
また、上記実施形態では、基端側固定部材52がコアシャフト10の第1のテーパ部12の外周を取り囲むように配置されているが、基端側固定部材52は他の位置(例えば、コアシャフト10の細径部11の外周を取り囲む位置)に配置されていてもよい。
【0042】
また、上記実施形態における各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、上記実施形態におけるガイドワイヤ100の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:コアシャフト 11:細径部 12:第1のテーパ部 13:中間径部 14:第2のテーパ部 15:太径部 16:接続箇所 18:先端 20:コイル体 21:先端 22:基端 31:先端側接合部 32:基端側接合部 51:袋体 52:基端側固定部材 53:先端側固定部材 55:ダイラタント流体 100:ガイドワイヤ IS:内側空間