(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ミスト化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230405BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230405BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61Q15/00
(21)【出願番号】P 2018036442
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2020-12-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 知幸
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-278777(JP,A)
【文献】特開2001-163752(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146590(WO,A1)
【文献】特開2015-117239(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146398(WO,A1)
【文献】特開2015-124169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール45質量%以上、
イソプロピルメチルフェノール及び水を含有し、ノズル口径が
0.05mm以上0.3mm以下であるノンガスタイプのポンプ式噴霧容器に充填されていることを特徴とするミスト化粧料
(皮膚洗浄料を除く)。
【請求項2】
皮膚の対象部位へミストを適用後乾燥させて使用するミスト化粧料である請求項1記載のミスト化粧料。
【請求項3】
エタノールの含有量が、50質量%以上90質量%以下である請求項1又は2記載のミスト化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ミスト化粧料は、皮膚や毛髪等に必要な成分を均一に付着させる目的で使用される。例えば、両性樹脂とカチオン性樹脂と油分とアルコールと水とを含有し、ノンガスタイプの噴霧容器に充填する毛髪化粧料(特許文献1)、毛髪セット用ポリマー、液状のポリアルキレングリコール、固体のポリオキシアルキレンアルキルエーテル等、及び炭素数14~20の脂肪族アルコールを含有する毛髪化粧料(特許文献2)、セルロース、アミノ酸等、油性成分及び水を含有する、霧状に噴霧して用いられるジェル状毛髪化粧料(特許文献3)が報告されている。これらは、両性樹脂・カチオン性樹脂、整髪セット用ポリマーや油性成分といった高粘度成分をミスト状に噴霧することにより毛髪に均一に付着させる化粧料である。
また、皮膚に適用するミスト化粧料としては、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、水溶性無機塩及びアルコール0.5~15質量%を含有する液体皮膚清浄剤(特許文献4)、クインスシードエキス、カルボキシメチルセルロース、N,N-ジメチルアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体を含有し、口径がφ0.25mm~φ0.55mmであるポンプ式スプレー容器に充填されたミスト化粧料(特許文献5)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-26541号公報
【文献】特開2010-126523号公報
【文献】特開2009-191047号公報
【文献】特開2001-187726号公報
【文献】特開2014-237615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献4及び5の化粧料は、いずれも皮膚上に洗浄成分や保湿成分を液状で付着させるミスト化粧料であって、皮膚に適用後速やかに乾燥させることを目的としているものではない。従来のミスト化粧料においては、皮膚に噴霧されたミストの乾燥が速やかでない場合、皮膚上の有効成分が衣類などの被覆物に転写してしまい効果が減少してしまうことが指摘されている。
そこで本発明の課題は、皮膚等へミストを適用後速やかに乾燥し、かつ皮膚等の上に抗菌成分を保持させることのできるミスト化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決すべく種々検討した結果、エタノール30質量%以上、抗菌成分及び水を含有する組成物を、ノズル口径が0.5mm以下であるノンガスタイプのポンプ式噴霧容器に充填したミスト化粧料とすれば、皮膚等に噴霧した時にミストを広範囲の対象面に均一に適用することができ、速やかに乾燥することにより、抗菌成分が皮膚等の対象部位から衣類などの皮膚への接触物へ転写することを抑制できるため、対象部位に付着し優れた抗菌成分の残留性、抗菌効果、使用感が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、エタノール30質量%以上、抗菌成分及び水を含有し、ノズル口径が0.5mm以下であるノンガスタイプのポンプ式噴霧容器に充填されていることを特徴とするミスト化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のミスト化粧料を用いれば、ミストを広範囲の皮膚等の対象部位に均一に適用することができ、適用されたミストが速やかに乾燥することにより、適用部に抗菌成分が十分量残存し、さわやかな使用感と優れた抗菌効果が得られる。また、本発明のミスト化粧料を用いれば、皮膚等の対象部位へ適用後速やかに乾燥するため、適用後に対象部位と接触する衣類等への転写が低減され、抗菌成分等の薬剤の効果が減少しない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のミスト化粧料は、エタノール30質量%以上、抗菌成分及び水を含有する。
【0009】
本発明の化粧料において、エタノールは、化粧料の媒体、清涼感付与、速乾性向上及び殺菌の目的で用いられる。
本発明の化粧料中のエタノールの含有量は、清涼感付与、速乾性向上の観点から、30質量%以上である。清涼感付与、速乾性向上の観点から30質量%以上含まれるが、40質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がよりさらに好ましい。また、皮膚がかさつかない等の感触の観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、83質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下がよりさらに好ましい。具体的には、30質量%以上90質量%以下が好ましく、40質量%以上85質量%以下がより好ましく、45質量%以上85質量%以下がさらに好ましく、50質量%以上83質量%以下がさらに好ましく、60質量%以上80質量%以下がよりさらに好ましい。
【0010】
本発明の化粧料は、抗菌成分を含有する。抗菌成分は、化粧料適用皮膚等に抗菌作用を付与する目的で用いられる。
抗菌成分としては、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ピロクトンオラミン、塩化ベンゼトニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、トリクロカルバン、サリチル酸、パラベン、クロルヘキシジン又はその塩、リゾチーム又はその塩、アクリノール、グルコン酸、アルキルジアミノグリシン又はその塩、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、クレゾール、感光素101号、感光素201号、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、ハロカルバン、3,4,4-トリクロロカルバニリド、トリエチルシトレート、レゾルシン、フェノール、ソルビン酸、ヘキサクロロフェン、銀担持ゼオライト、銀担持シリカが挙げられる。
これらの抗菌成分のうち、抗菌効果、防臭効果の観点から、イソプロピルメチルフェノールが好ましい。
【0011】
本発明の化粧料中の抗菌成分の含有量は、抗菌効果、消臭効果、皮膚上での残留性、使用感の観点から、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、また、0.2質量%以下が好ましく、より好ましくは0.15質量%以下であり、さらに好ましくは0.10質量%以下である。抗菌成分の好ましい含有量の範囲は、0.01質量%以上0.2質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以上0.15質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上0.10質量%以下である。
【0012】
本発明の化粧料は、水を含有する。水は、抗菌成分の媒体として機能する。本発明化粧料中の水の含有量は、抗菌成分を溶解できる量以上であればよく、0.1質量%以上69質量%以下が好ましく、15質量%以上50質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
【0013】
本発明の化粧料には、前記成分の他、メントール、液体油、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ノニオン界面活性剤、カルボン酸又はその塩、水溶性高分子、虫よけ成分、保湿成分、香料等を含有させることができる。本発明において、制汗剤は配合してもしなくても問題ないが、配合しない方が成分(A)の皮膚への残留性、使用感の点からより好ましい。
メントールの含有量は、冷感付与の観点から、0.005質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。また、液体油としては、25℃で液体状の油が好ましく、炭化水素油、エステル油、エーテル油が好ましく、エステル油がより好ましい。エステル油としてはジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のジ脂肪酸グリコールがより好ましい。液体油の含有量は、0.01質量%以上0.09質量%以下が好ましい。
【0014】
本発明の化粧料は、ノズル口径が0.5mm以下であるノンガスタイプのポンプ式噴霧容器に充填されているミスト化粧料である。
【0015】
本発明の化粧料が充填されている噴霧容器は、液化石油ガス等のガスエアゾール式ではない。当該噴霧容器としては、ディスペンサー、エアスプレー(空気を圧縮する高圧式容器)、ゴム弾性利用の噴霧容器、電動スプレー、手動アトマイザー等が利用できる。本発明に用いる噴霧容器においては、化粧料をミスト状に噴霧して、速乾性を得る点からノズル口径(直径)は0.5mm以下である。噴霧されたミストの速乾性の観点からより好ましいノズル口径は0.4mm以下であり、より好ましくは0.3mm以下であり、さらに好ましくは、0.2mm以下である。また、ノズル径の下限は噴霧性の点から0.05mm以上が好ましい。
【0016】
本発明のミスト化粧料の噴霧容器は、適用部位での速乾性の点から、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における噴霧液滴の平均粒径が40~55μmとなる噴射手段とするのが好ましい。噴霧液滴の粒径分布は、例えばレーザー回折式粒度分布計(SYMPATEC HELOS & RODOS JEOL.Ltd社製)により測定することができる。
【0017】
本発明の化粧料は、皮膚化粧料、さらに皮膚に清涼感を付与する化粧料、デオドラント剤、保湿剤、虫よけ剤として用いるのが好ましく、デオドラント剤として用いるのがより好ましい。
特に皮膚に適用した場合には、体の前面、腕全体、背中、脇から脇腹、頭、足、脚等の広い範囲に均一にミストを適用でき、かつそのミストは速やかに乾燥し、かつ抗菌剤が皮膚上に残存するため、速乾性、清涼感、デオドラント効果に優れたデオドラント剤として有用である。
【実施例】
【0018】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0019】
実施例1~5及び比較例1~2
表1に示す組成のデオドラント剤を、ノズルを有するポンプ式噴霧容器に充填して、化粧料を製造した。得られた化粧料を0.1g噴霧した際の各化粧料の速乾性、噴霧時の平均粒径、及び噴霧後に衣類を着用した場合の防臭効果を評価した。
【0020】
(速乾性の評価)
10名の被験者(専門パネラー)が、各化粧料を手の甲に1回噴霧(約0.1g)し、噴霧直後の速乾感を、下記の基準で評価した。結果を10名の平均値で表1に示した。
<評価基準>
速乾感強度5:とても早く感じる。(塗布直後に乾燥したことを感じる)
速乾感強度4:早く感じる。(塗布後1秒以内に乾燥したことを感じる)
速乾感強度3:やや早く感じる。(塗布後3秒以内に乾燥したことを感じる)
速乾感強度2:やや遅く感じる。(塗布後5秒以内に乾燥したことを感じる)
速乾感強度1:遅く感じる。(塗布後、乾燥までに5秒以上かかると感じる)
【0021】
(噴霧時の平均粒径の評価)
噴霧液滴の粒径(1.2~102μm)の測定は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(SYMPATEC HELOS & RODOS JEOL.Ltd社製)で評価を行った。各化粧料をレーザーから10cm離れた場所からレーザーに向かって1回噴霧(約0.1g)した際の噴霧液滴の粒径(μm)を測定した。結果を表1に示した。
【0022】
(噴霧後に衣類を着用した場合の防臭効果の評価)
脇部を95%エタノールで清拭後、各化粧料を脇部に1回噴霧(約0.1g)し、10秒後にTシャツを着用し、その上に作業着を着用し、10時間後の脇の匂いを専門評価者(n=10)が、下記の基準で評価した。結果を10名の平均値で示した。結果を表1に示した。
<評価基準>
5:全く匂わない。比較例1の匂いよりも匂いが大変弱くなっている。
4:匂わない。比較例1の匂いよりも匂いがやや弱くなっている。
3:どちらとも言えない。比較例1の場合の匂いと同じレベル。
2:やや匂う。比較例1の匂いよりも匂いがやや強くなっている。
1:匂う。比較例1の匂いよりも匂いが大変強くなっている。
【0023】