(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230405BHJP
B62D 5/12 20060101ALI20230405BHJP
B62D 5/065 20060101ALI20230405BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20230405BHJP
B62D 123/00 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/12
B62D5/065 B
B62D113:00
B62D123:00
(21)【出願番号】P 2018082908
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183222
【氏名又は名称】住友ナコ フォ-クリフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 恒
(72)【発明者】
【氏名】林 克彦
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-255175(JP,A)
【文献】実開平06-073095(JP,U)
【文献】特開2018-012576(JP,A)
【文献】特開平10-119797(JP,A)
【文献】特開2008-162587(JP,A)
【文献】特開平09-263258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/065
B62D 5/12
B66F 9/24
B62D 113/00
B62D 123/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの回転に応じて操舵輪を操舵する油圧装置を具備するパワーステアリング装置を有するフォークリフトであって、
前記ハンドルのハンドル角
に応じた第1検知結果を提供するハンドル角センサと、
前記操舵輪のタイヤ角
に応じた第2検知結果を提供するタイヤ角センサと、
前記操舵輪の操舵角範囲におけるハンドル角とタイヤ角の初期の関係性を記憶する記憶手段と、
前記操舵輪の直進位置、第1測定位置および第2測定位置における前記
第1検知結果および前記
第2検知結果を取得する取得手段と、
前記取得手段の取得結果に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記初期の関係性を補正し、補正後関係性データを求める補正手段と、
前記補正後関係性データに基づいて、前記油圧装置を制御する制御部と、を有し、
前記第1測定位置は、前記直進位置と最大操舵角位置との間であって前記最大操舵角位置を含まない位置に設定され、
前記第2測定位置は、前記直進位置と最小操舵角位置との間であって前記最小操舵角位置を含まない位置に設定され、
前記第1測定位置および前記第2測定位置は、前記最大操舵角位置および前記最小操舵角位置から操舵角範囲の10%~30%分手前に設定され、
前記取得手段は、操作者から直進位置として指示を受け付けたときに
前記直進位置における前記第1検知結果および前記
第2検知結果を取得し、操作者から第1測定位置として指示を受け付けたとき
に前記第1測定位置における前記第1検知結果および前記
第2検知結果を取得し、操作者から第2測定位置として指示を受け付けたとき
に前記第2測定位置
における前記
第1検知結果および前記
第2検知結果を取得することを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
前記操舵輪のタイヤ角が閾値を超えたら、閾値を超えている旨の表示をする表示部を有することを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記操舵輪のタイヤ角が閾値を超えたら、前記
第1検知結果および前記
第2検知結果を取得しないように制御することを特徴とする請求項1または2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
前記操舵輪の操舵角が所定角度に達すると、前記油圧装置の油圧を下げることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフォークリフト。
【請求項5】
本フォークリフトは、操作者のハンドル操作に応じて所定角度ごとに、前記
第1検知結果および前記
第2検知結果を学習関係性データとして記憶し、
前記補正後関係性データと前記学習関係性データのうち、前記学習関係性データを選択する設定がなされている場合、前記制御部は、前記補正後関係性データの代わりに前記学習関係性データを用いて前記油圧装置を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリング装置を有するフォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ハンドルの回転に応じて操舵輪を操舵するパワーステアリング装置を具備するフォークリフトが記載されている。特許文献1に記載のパワーステアリング装置は、ハンドルの回転操作量に応じた油量を作動油供給ユニットでステアリングシリンダに供給して操舵輪を操舵する全油圧式のパワーステアリング装置で、ハンドルの回転位置に応じたハンドル角と操舵輪のタイヤ角との対応関係のずれを補正するハンドル角補正システムを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフォークリフトでは、パワーステアリング機構は、ステアリングのハンドル角を検知して、その検知結果に応じて、記憶しているハンドル角と操舵輪のタイヤ角の対応関係情報に基づき、油圧装置を制御して操舵を行う。また、記憶している対応関係情報に対して、現実のステアリングのハンドル角と操舵輪のタイヤ角の対応関係がずれることがあり、現実の対応関係に合せて記憶している対応関係情報の補正を行う。
【0005】
この補正は、タイヤ角を最大値(一方のエンド)から最小値(他方のエンド)まで操舵し、そのタイヤ角の両エンドにおけるハンドル角とタイヤ角とを検知し、その検知結果に基づいて記憶している対応関係情報の補正を行う。しかし、タイヤ角を両エンドに操舵すると、タイヤがエンドに当たって作動油がリークしハンドルが空転するため、正確な補正情報が得られないことがある。このため、特許文献1に記載のフォークリフトでは、正確な補正ができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、ハンドル角とタイヤ角の関係性をより正確に補正することができるフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のフォークリフトは、ハンドルの回転に応じて操舵輪を操舵する油圧装置を具備するパワーステアリング装置を有するフォークリフトであって、ハンドルのハンドル角を検知するハンドル角センサと、操舵輪のタイヤ角を検知するタイヤ角センサと、操舵輪の操舵角範囲におけるハンドル角とタイヤ角の初期の関係性を記憶する記憶手段と、操舵輪の直進位置、第1測定位置および第2測定位置におけるハンドル角センサおよびタイヤ角センサの検知結果を取得する取得手段と、取得手段の取得結果に基づいて、記憶手段に記憶された初期の関係性を補正する補正手段と、を有する。第1測定位置は、直進位置と最大操舵角位置との間であって最大操舵角位置を含まない位置に設定され、第2測定位置は、直進位置と最小操舵角位置との間であって最小操舵角位置を含まない位置に設定される。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハンドル角とタイヤ角の関係性をより正確に補正することができるフォークリフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るフォークリフトを示す側面図である。
【
図2】
図1のフォークリフトの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1のフォークリフトのステアリング機構の構成を示す構成図である。
【
図4】
図1のフォークリフトの設定制御動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図4の設定制御動作の表示画面の一例を示す画面図である。
【
図6】
図3のステアリング機構の取得動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図6の取得動作の表示画面の一例を示す画面図である。
【
図8】
図3のステアリング機構のハンドル角とタイヤ角の関係の一例を示すグラフである。
【
図9】
図3のステアリング機構の所定値設定動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図9の所定値設定動作の表示画面の一例を示す画面図である。
【
図11】
図3のステアリング機構の関係性学習動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図11の関係性学習動作の表示画面の一例を示す画面図である。
【
図13】
図3のステアリング機構のノブずれ修正動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直」は、完全な平行、垂直だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直からずれている場合も含むものとする。また、「略」は、おおよその範囲で同一であるという意味である。
【0013】
[実施の形態]
まず、
図1~
図3を参照して、本発明の実施の形態に係るフォークリフト100の全体構成について説明する。
図1は、フォークリフト100を概略的に示す側面図である。
図2は、フォークリフト100の構成を示すブロック図である。
図3は、フォークリフト100のステアリング機構10の構成を示す構成図である。フォークリフト100の走行方向を「前側」、「後側」と、車高方向を「上側」、「下側」ということがある。このような方向の表記はフォークリフト100の使用姿勢を制限するものではなく、フォークリフト100は、用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
図1に示すように、フォークリフト100は、いわゆるカウンタバランス式フォークリフトである。フォークリフト100は、車体20と、荷役部60と、を主に含む。
【0014】
(荷役部)
荷役部60は、車体20の前方部分に設けられる。荷役部60は、フォーク62と、マスト64と、昇降シリンダ66と、を含む。フォーク62は、荷物を載置したパレットのフォークポケット(挿入孔)に差し込まれる。マスト64は、フォーク62を上下方向に昇降可能に支持する。昇降シリンダ66は、フォーク62をマスト64に沿って上下方向に移動させるための油圧シリンダである。
【0015】
(車体)
車体20は、ステアリング機構10と、制御部30と、操舵輪14と、駆動輪16と、運転席24と、駆動機構28と、油圧機構40と、を有する。ステアリング機構10は、ハンドル12の操作に応じて操舵輪を操舵する機構である。制御部30は、操作員の操作および各種センサの検知結果に基づいて、主に駆動機構28、油圧機構40、ステアリング機構10と、を制御する。ステアリング機構10および制御部30については後述する。
【0016】
操舵輪14(後輪)は、車体20の後方において左右に離れて配置される一対の車輪である。本実施形態の操舵輪14は、ハンドル12の回転に応じて、車体20に対する向きが変化するように構成される。駆動輪16(前輪)は、車体20の前方に左右に離れて配置される一対の車輪である。本実施形態の駆動輪16は、駆動機構28によって駆動される。
【0017】
運転席24は、操作者が座った姿勢でフォークリフト100を運転操作するための座席である。運転席24の前方には、荷役部60の動作を制御するレバーを有するレバー操作部18と、各種設定を入力するためのディスプレイを有する設定入力部32と、が設けられる。運転席24の床には、走行を制御するためのペダル操作部38が設けられている。
【0018】
(駆動機構)
駆動機構28は、モータ28mにより駆動輪16を回転駆動してフォークリフト100を走行させる。駆動機構28は、車体20の駆動輪16と操舵輪14の中間に配置される。
図2に示すように、本実施形態の駆動機構28は、モータ28mと、駆動回路28cと、を含む。モータ28mは、駆動輪16を回転駆動させることにより、フォークリフト100を走行させる原動機である。モータ28mは、バッテリ28bから供給される電力によって回転し、制御部30の制御に応じて、駆動輪16を駆動する。駆動回路28cは、制御部30の制御に基づき、モータ28mを駆動する回路である。駆動機構28は、モータ28mの回転を減速または増速して駆動輪16に伝達するための歯車装置を備えてもよい。
【0019】
(油圧機構)
図3に示すように、油圧機構40は、オイルタンク54、油圧ポンプ50、荷役モータ60m、コントロールバルブ46を含み、荷役部60の昇降シリンダ66およびステアリング機構10に昇圧したオイルを供給する。オイルタンク54には、ステアリング機構10および昇降シリンダ66から排出された作動油が、ライン42d、66bを通じて戻される。油圧ポンプ50は、荷役モータ60mにより駆動され、オイルタンク54からの作動油を昇圧してコントロールバルブ46に送出する。荷役モータ60mは、バッテリ28bから供給される電力によって回転する。荷役モータ60mは、制御部30の制御に基づき、荷役駆動回路60cによって駆動される(
図2も参照)。コントロールバルブ46は、油圧ポンプ50からの昇圧された作動油をステアリング機構10と昇降シリンダ66とに分配して送出する。コントロールバルブ46は、ライン42cを通じて作動油を操舵バルブユニット42のPポートに送出し、ライン66aを通じて作動油を昇降シリンダ66に送出する。
【0020】
(ステアリング機構)
次に
図3を参照して、ステアリング機構10について説明する。本実施形態のステアリング機構10は、全油圧式のパワーステアリング機構である。ステアリング機構10は、ハンドル12と、操舵バルブユニット42と、ソレノイドバルブ44と、ステアリングシリンダ48と、リンク機構48e、48fと、キングピン48jと、ハンドル角センサ34と、タイヤ角センサ36と、制御部30と、を主に含む。
【0021】
(ハンドル)
ハンドル12は、操舵のために操作者によって回転操作される円環状のステアリングホイールとして機能する。ハンドル12には、操作者が操作しやすいようにノブ12bが設けられている。ノブ12bが所定の回転位置にある状態で、操舵輪14が直進方向を向くように設定される。本実施形態は、操舵輪14を直進方向に向けた状態で、ノブ12bが8時の位置(真下の位置から時計回りに60°回転した位置)に位置するように設定される。ハンドル12を支持するハンドルシャフト12sは、操舵バルブユニット42に連結される。以下、操舵輪14を直進方向に向けた状態におけるノブ12bの基準位置(8時の位置)からのずれをノブずれという。
【0022】
(操舵バルブユニット)
操舵バルブユニットは、ハンドル12の回転量に応じて作動油を送出するバルブユニットである。本実施形態の操舵バルブユニット42は、イートン株式会社製のオービットロール(登録商標)を採用している。操舵バルブユニット42は、ハンドルシャフト12sに直接駆動され、ハンドル12の回転量に比例した量の作動油を、ステアリングシリンダ48に供給する。
【0023】
図3に示しように、操舵バルブユニット42のPポートには、油圧ポンプ50およびコントロールバルブ46から作動油が供給されるライン42cが接続される。操舵バルブユニット42のTポートには、オイルタンク54に作動油を排出するためのライン42dが接続される。操舵バルブユニット42とステアリングシリンダ48とは2本の油圧ライン42a、42bで接続されている。このように接続された操舵バルブユニット42は、Pポートに昇圧された作動油の供給を受け、ハンドルの回転量に応じて、RポートまたはLポートの一方に所定量の作動油を供給してステアリングシリンダ48を駆動する。また、RポートまたはLポートの他方から作動油を回収し、回収した作動油をTポートからオイルタンク54に排出する。
【0024】
より具体的には、ハンドル12が左旋回された場合、油圧ライン42aが油圧ポンプ50からの作動油を給送する給送ラインとして機能し、油圧ライン42bが油圧ポンプ50に作動油を戻す返送ラインとして機能する。また、ハンドル12が右旋回された場合、油圧ライン42bが給送ラインとして機能し、油圧ライン42aが返送ラインとして機能する。
【0025】
(ステアリングシリンダ)
ステアリングシリンダ48は、操舵輪である操舵輪14を操舵する油圧装置として機能する。ステアリングシリンダ48は、車体に固定された円筒中空状のシリンダチューブ48aと、この内部に往復動可能に配置されたピストン48bと、シリンダチューブ48aの両端部から延出した左右一対のピストンロッド48c、48dとを備えている。各油圧ライン42a、42bは、ピストン48bにより2室に区画されたシリンダチューブ48aの各室に連通されている。
【0026】
各ピストンロッド48c、48dの先端部にはリンク機構48e、48fを介して左右の操舵輪14が連結される。ステアリングシリンダ48が駆動されることにより、各操舵輪14は、キングピン48jを中心に左右に操舵される。
【0027】
(ソレノイドバルブ)
油圧ライン42a、42bはバイパスライン44bで繋がっており、このバイパスライン44bの途中に補正手段としてのソレノイドバルブ44が設けられている。ソレノイドバルブ44を開弁することにより、操舵バルブユニット42から送出された油圧ライン42a、42bの作動油をバイパスして油圧差を小さくすることができる。この油圧差を小さくすることにより、ハンドル12の操作量に対するステアリングシリンダ48のピストン48bの変位量の割合を小さくし、ハンドル12を空転させることができる。
【0028】
ソレノイドバルブ44はノーマルクローズタイプのソレノイドを内蔵した電磁弁である。ソレノイドバルブ44はソレノイドが非励磁のときにバイパスライン44bを遮断し、ソレノイドが励磁されたときにバイパスライン44bを連通させる。ソレノイドは制御部30により制御される。なお、バイパスライン44bには、ソレノイドバルブ44が開弁した状態で故障した場合に、流量を絞る絞り弁が設けられてもよい。ソレノイドバルブ44はノーマルオープンタイプのソレノイドを内蔵した電磁弁であってもよい。
【0029】
(ハンドル角センサ)
ハンドル角センサ34は、ハンドル12の回転を検出するためのセンサである。ハンドル角センサ34は、ハンドル12の回転角を検出可能な公知の手段を用いてもよい。本実施形態のハンドル角センサ34は、ハンドルシャフト12sの回転を検知する光学式ロータリーエンコーダである。ハンドル角センサ34の検知結果は制御部30に提供される。
【0030】
(タイヤ角センサ)
タイヤ角センサ36は、操舵輪14のタイヤ角(切れ角とも称される)を検出するためのセンサである。タイヤ角センサ36は、タイヤ角を検出可能な公知の手段を用いてもよい。本実施形態のタイヤ角センサ36は、ポテンショメータ(不図示)を含んでいる。タイヤ角センサ36は、右側の操舵輪14を支持するキングピン48jの回転に応じて回転するように取付けられている。タイヤ角センサ36の検知結果は制御部30に提供される。
【0031】
(制御部)
次に、
図2を参照して、制御部30について説明する。
図2に示す制御部30の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0032】
制御部30は、後述するノブずれ修正動作の補正精度を高めるために、主に設定制御動作、関係性補正動作、関係性学習動作、所定値設定動作および油圧低減動作を制御する。設定制御動作、関係性補正動作、関係性学習動作、所定値設定動作および油圧低減動作については後述する。
【0033】
制御部30は、ペダル操作取得部30bと、検知結果取得部30cと、関係性記憶部30dと、関係性補正部30eと、関係性学習部30fと、所定値設定部30hと、走行制御部30jと、バルブ制御部30kと、表示制御部30mと、設定入力取得部30nと、油圧低減部30pと、レバー操作取得部30rと、荷役制御部30tと、を含む。
【0034】
ペダル操作取得部30bは、ペダル操作部38から操作結果を取得する。走行制御部30jは、ペダル操作取得部30bの取得結果に基づき駆動回路28cを制御する。
【0035】
検知結果取得部30cは、ハンドル角センサ34とタイヤ角センサ36の検知結果を取得する。取得されたハンドル角を取得ハンドル角Hgと表記し、取得されたタイヤ角を取得タイヤ角Tgと表記する。この取得ハンドル角Hgおよび取得タイヤ角Tgは現実のハンドル角およびタイヤ角を示す。
【0036】
関係性記憶部30dは、ハンドル角とタイヤ角の初期関係性データDmを記憶する記憶手段である。初期関係性データDmは、初期にプリセットされた記憶ハンドル角Hmと記憶タイヤ角Tmとの対応関係を示すいわば初期マップである。
【0037】
関係性補正部30eは、関係性補正動作により補正データDjを取得して保持すると共に、補正データDjに応じて初期関係性データDmを補正し、補正後関係性データDcを求める。補正後関係性データDcは、補正後の目標ハンドル角Hcと目標タイヤ角Tcとの対応関係を示すいわば目標マップである。
【0038】
バルブ制御部30kは、ノブずれ修正動作により、補正後関係性データDcに基づき取得タイヤ角Tgに対応する目標ハンドル角Hcを求め、取得ハンドル角Hgが目標ハンドル角Hcに近づくように、ソレノイドバルブ44を制御する。
【0039】
関係性学習部30fは、関係性学習動作により、操作者のハンドル操作に応じて、所定角度ごとに取得された取得ハンドル角Hgおよび取得タイヤ角Tgから、学習関係性データDeを生成して保持する。学習関係性データDeを用いることにより、補正精度を一層向上することができる。
【0040】
所定値設定部30hは、所定値設定動作により、補正データDjに付加される所定値Dpを設定および変更する設定手段である。
【0041】
表示制御部30mは、運転席24の前方に設けられた設定入力部32のディスプレイである表示部32dに所定の情報を表示する。設定入力取得部30nは、設定入力部32の押しボタンなどを含む入力部32sから所定の入力結果を取得する。設定入力部32と、表示制御部30mと、入力部32sとは、関係性補正動作、関係性学習動作および所定値設定動作におけるヒューマンマシンインタフェースとして機能する。表示部32dと入力部32sとは一体のタッチパネルであってもよい。
【0042】
油圧低減部30pは、油圧低減動作により、操舵輪の操舵角が所定角度に達すると、操舵輪を操舵する油圧装置の油圧を下げる。具体的には、操舵輪14の取得タイヤ角Tgがその操舵範囲の両方の端(以下、エンドという)に接近したらステアリングシリンダ48に供給する油圧を低減する。
【0043】
レバー操作取得部30rは、レバー操作部18から操作結果を取得する。荷役制御部30tは、レバー操作取得部30rの取得結果に基づき、荷役部60の荷役駆動回路60cを介して荷役モータ60mを制御する。荷役モータ60mは、油圧ポンプ50を駆動して油圧を生成し荷役部60を作動させる。
【0044】
(設定制御動作)
次に、
図4を参照して、各種設定に関する設定制御動作の一例を説明する。
図4は、本実施形態の設定制御動作の一例を示すフローチャートであり、この動作に関する処理S100を示す。
図5は、設定制御動作の表示画面を示す画面図である。
【0045】
処理S100が開始されると、制御部30は、設定入力部32の表示部32dに、設定制御動作のメインメニュー(第1画面Sd1)を表示する(ステップS101)。
図5は、第1画面Sd1の一例である。この画面には、取得動作、所定値設定動作または関係性学習動作の実行を選択する選択ボタンと、この処理を終了させる終了ボタンとが表示される。
【0046】
第1画面Sd1を表示すると、制御部30は、取得動作の選択ボタンが操作されたか否かを判定する(ステップS102)。取得動作の選択ボタンが操作された場合(ステップS102のY)、制御部30は、取得動作の処理S70に進む。処理S70については後述する。なお、本明細書では、画面のボタン領域をタッチまたは押下げることを「ボタンを操作する」という。
【0047】
取得動作の選択ボタンが操作されなかった場合(ステップS102のN)、制御部30は、所定値設定動作の選択ボタンが操作されたか否かを判定する(ステップS103)。所定値設定動作の選択ボタンが操作された場合(ステップS103のY)、制御部30は、所定値設定動作の処理S80に進む。処理S80については後述する。
【0048】
所定値設定動作の選択ボタンが操作されなかった場合(ステップS103のN)、制御部30は、関係性学習動作の選択ボタンが操作されたか否かを判定する(ステップS104)。関係性学習動作の選択ボタンが操作された場合(ステップS104のY)、制御部30は、関係性学習動作の処理S90に進む。処理S90については後述する。
【0049】
関係性学習動作の選択ボタンが操作されなかった場合(ステップS104のN)、制御部30は、設定制御動作の終了ボタンが操作されたか否かを判定する(ステップS105)。設定制御動作の終了ボタンが操作されなかった場合(ステップS105のN)、制御部30は、処理をステップS101の先頭に戻し、ステップS101~S105の処理を繰り返す。設定制御動作の終了ボタンが操作された場合(ステップS105のY)、制御部30は、設定制御動作を終了する。
【0050】
これらの処理はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0051】
(関係性補正動作)
フォークリフトでは、実車のタイヤ角-ハンドル角特性が、タイヤ角センサ36の取付位置のバラツキなどにより初期関係性データDmからずれてしまい、ノブずれ修正動作が正常に動作せずに車両操作が難しくなる場合がある。そこで、本実施形態では、実車のタイヤ角-ハンドル角特性を取得し、その結果により初期関係性データDmを補正する関係性補正動作を実行するようにしている。関係性補正動作を実行することにより、実車特性を取得して、タイヤ角-ハンドル角の制御特性を実車特性に合わせて補正することができる。このことにより、ハンドル12のノブずれを減らすことができる。
【0052】
関係性補正動作は、補正データDjを取得する取得動作と、補正データDjに応じて初期関係性データDmを補正し、補正後関係性データDcを求める補正動作と、を含む。取得動作は、操舵輪14の直進位置Ps、第1測定位置P1および第2測定位置P2におけるハンドル角センサ34の検知結果Hs、H1、H2およびタイヤ角センサ36の検知結果Ts、T1、T2を取得する。
【0053】
誤差の影響を小さくするために、補正データDjは操舵範囲の両エンドに近い位置で取得することが望ましい。しかし、操舵輪14を操舵角範囲の両エンドに操舵すると、操舵輪14がエンドに当たって作動油がリークしハンドル12が空転することで正確な情報が得られないことがある。そこで、本実施形態では、第1測定位置P1は、直進位置Psと最大操舵角位置Txとの間であって最大操舵角位置Txを含まない手前の位置に設定され、第2測定位置P2は、直進位置Psと最小操舵角位置Tnとの間であって最小操舵角位置Tnを含まない手前の位置に設定される。一例として、第1測定位置P1および第2測定位置P2は、最大操舵角位置Txおよび最小操舵角位置Tnから操舵角範囲の10%~30%分手前であってもよいし、さらに手前であってもよい。
【0054】
(取得動作)
図6、
図7を参照して、取得動作の一例を説明する。
図6は、本実施形態の取得動作の一例を示すフローチャートであり、この動作に関する処理S70を示している。取得動作の処理S70は、フォークリフト100の製造の際に行われてもよいし、フォークリフト100を販売などにより引き渡す際に実行されてもよいし、フォークリフト100のメンテナンスの際に実行されてもよいし、その他の任意のタイミングにおいて必要に応じて実行されてもよい。
【0055】
処理S70は、前述の設定制御動作において、取得動作の選択ボタンが操作されることにより開始される。処理S70が開始されると、制御部30は、設定入力部32の表示部32dに、取得動作のメニューの第2画面Sd2を表示する(ステップS71)。
図7は、第2画面Sd2の一例を示す画面図である。第2画面Sd2には、操作者に操舵輪を所定の位置に移動させ、データ取得ボタンの操作をするように指示する表示が為される。
【0056】
第2画面Sd2が表示されたら、操作者は、操舵輪14を直進位置Psに移動させ、取得ボタンを操作する(ステップS72)。操作者からのボタン操作があると、処理はステップS73に進む。
【0057】
操作者からの取得操作により直進位置Psとして指示を受け付けると、制御部30は、ハンドル角センサ34およびタイヤ角センサ36の検知結果を、直進位置Psの検知結果Hs、Tsとして取得する(ステップS73)。データの取得後、処理の済んだメッセージは目立たない色に色替えするようにしてもよい。
【0058】
ステップS73が完了したら、操作者は、操舵輪14を第1測定位置P1に移動させ、データ取得ボタンを操作する(ステップS74)。操作者からのボタン操作があると、処理はステップS75に進む。
【0059】
ステップS74において、タイヤ角がステアのエンドに接近しすぎている場合に、第1測定位置P1を変更するように警告表示をしてもよい。具体的には、取得するハンドル角やタイヤ角に上下限の閾値を設定し、これらの角度が閾値を超えたら、表示部32dに、閾値を超えている旨の表示をし、ハンドル角やタイヤ角を取得しないように制御してもよい。この場合、エンドに過接近して不正確なデータを取得することを防ぐことができる。
【0060】
操作者からのボタン操作により第1測定位置P1として指示を受け付けると、制御部30は、ハンドル角センサ34およびタイヤ角センサ36の検知結果を、第1測定位置P1の検知結果T1、H1として取得する(ステップS75)。データの取得後、処理の済んだメッセージは目立たない色に色替えするようにしてもよい。
【0061】
ステップS75が完了したら、操作者は、操舵輪14を第2測定位置P2に移動させ、データ取得ボタンを操作する(ステップS76)。操作者からのボタン操作があると、処理はステップS77に進む。
【0062】
ステップS76でもステップS74と同様に、ハンドル角やタイヤ角が閾値を超えたら、表示部32dに、閾値を超えている旨の表示をし、ハンドル角やタイヤ角を取得しないように制御してもよい。
【0063】
操作者からのボタン操作により第2測定位置P2として指示を受け付けると、制御部30は、ハンドル角センサ34およびタイヤ角センサ36の検知結果を、第2測定位置P2の検知結果T2、H2として取得する(ステップS77)。
【0064】
ステップS77が完了したら、制御部30は、取得した検知結果Hs、H1、H2および検知結果Ts、T1、T2を補正データDjとして関係性補正部30eに記憶して、処理S70を終了する(ステップS78)。これらの処理はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0065】
(補正動作)
次に、補正動作を説明する。関係性補正動作における補正動作は、取得動作によって取得した補正データDjに応じて初期関係性データDmから補正後関係性データDcを求める動作である。本実施形態の補正動作は、フォークリフト100の動作中常時実行される。
図8を参照して、補正動作を説明する。
図8は、ハンドル角Hとタイヤ角Tの関係を示すグラフである。この図は、横軸がハンドル角Hで、正方向は右操舵(右回転)を示し、負方向は左操舵(左回転)を示している。また。縦軸はタイヤ角で、正方向は右操舵でReが右エンドを示し、負方向は左操舵でLeが左エンドを示している。この図において、実線は関係性記憶部30dに記憶された初期関係性データDmを示し、黒ドット(H1、T1)、(Hs、Ts)、(H2、T2)は、補正データDjを示している。このように、補正データDjは、3点の座標として表すことができる。
【0066】
図8において、破線で示す補正後関係性データDcは、各黒ドット(H1、T1)、(Hs、Ts)、(H2、T2)を通り、各黒ドットの間の中間データは、初期関係性データDmを用いて、直進位置Psからの距離比率により補間して求めることができる。一例として、右操舵の初期関係性データDmからハンドル角H1に対応するタイヤ角Tm1を求め、T1とTm1の比を補正比率として、初期関係性データDmに乗じることにより右操舵の補正後関係性データDcを算出することができる。同様に、左操舵の初期関係性データDmからハンドル角H2に対応するタイヤ角Tm2を求め、T2とTm2の比を補正比率として、初期関係性データDmに乗じることにより左操舵の補正後関係性データDcを算出することができる。
【0067】
前述の関係性補正動作の説明では、第1、第2位置と直進位置との3点においてハンドル角とタイヤ角の関係を取得する例を示したが、本発明はこれに限定されない。補正の精度を高めるために、4点以上の多点においてハンドル角とタイヤ角の関係を取得するようにしてもよい。
【0068】
(所定値設定動作)
次に、所定値設定動作を説明する。補正後関係性データDcについて、3つの黒ドットの間の中間データを補間により求めると、中間データの精度が低く所望の特性と乖離することがある。この乖離を減らすため、本実施形態の補正動作は、補間により求めた中間データに予め設定された値Dpを加える処理を含んでいる。したがって、補正後関係性データDcは所定値Dpを含んでいる。所定値Dpは、所定値設定部30hに記憶されており、所定値設定動作により、任意に設定・変更することができる。
【0069】
図9、
図10を参照して、所定値設定動作の一例を説明する。
図9は、本実施形態の所定値設定動作の一例を示すフローチャートであり、この動作に関する処理S80を示している。処理S80は、前述の設定制御動作において、所定値設定動作の選択ボタンが操作されることにより開始される。
【0070】
処理S80が開始されると、制御部30は、設定入力部32の表示部32dに、所定値の入力を促す第3画面Sd3を表示する(ステップS81)。
図10は、所定値設定動作における設定入力部32の表示部32dの第3画面Sd3の一例を示す画面図である。第3画面Sd3には、ハンドル角とタイヤ角の関係性を示すグラフと、複数ポイントの所定値Dpと、所定値Dpの増減を行うためのボタンBm、Bpと、所定値設定動作を終了するための終了ボタンと、が表示される。操作者はこれらのボタンを操作することにより、所定値Dpを増減することができる。
【0071】
第3画面Sd3を表示すると、制御部30は、ボタンBm、Bpが操作されたか否かを判定する(ステップS82)。ボタンBm、Bpが操作された場合(ステップS82のY)、制御部30は、ボタンBm、Bpの操作に対応して所定値Dpを増減し、増減後の所定値Dpを第3画面Sd3に表示し、処理をステップS82の先頭に戻す(ステップS83)。ステップS82~S83を繰り返すことにより、所定値Dpは増減される。
【0072】
ボタンBm、Bpが操作されていない場合(ステップS82のN)、制御部30は、終了ボタンが操作されたか否かを判定する(ステップS84)。終了ボタンが操作されていない場合(ステップS84のN)、制御部30は、処理をステップS82の先頭に戻す。
【0073】
終了ボタンが操作された場合(ステップS84のY)、制御部30は、所定値Dpを所定値設定部30hに記憶して、処理S80を終了する(ステップS85)。これらの処理はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0074】
(関係性学習動作)
前述の取得動作の説明では、第1、第2位置と直進位置との3点においてハンドル角とタイヤ角の関係を取得する例を示したが、さらに多点においてハンドル角とタイヤ角の関係を取得するようにしてもよい。しかし多点について、各点毎にデータを取得させる作業は繁雑で手間がかかる懸念がある。このため、本実施形態は、前述の取得動作に代えて関係性学習動作を選択して実行することができる。本実施形態の関係性学習動作は、操作者のハンドル操作に応じて所定角度ごとに、ハンドル角センサおよびタイヤ角センサの検知結果を取得する動作である。この場合、フォークリフトは、ハンドル角センサとタイヤ角センサの検知結果を自律的に多点学習することができるので、操作者の作業は主にハンドル操作であり手間を大幅に軽減することができる。
【0075】
図11、
図12を参照して、関係性学習動作の一例を説明する。
図11は、本実施形態の関係性学習動作の一例を示すフローチャートであり、この動作に関する処理S90を示している。取得動作の処理S90は、フォークリフト100の製造の際に行われてもよいし、フォークリフト100を販売などにより引き渡す際に実行されてもよいし、フォークリフト100のメンテナンスの際に実行されてもよいし、その他の任意のタイミングにおいて必要に応じて実行されてもよい。
【0076】
処理S90は、前述の設定制御動作において、関係性学習動作の選択ボタンが操作されることにより開始される。処理S90が開始されると、制御部30は、設定入力部32の表示部32dに、関係性学習動作のメニューの第4画面Sd4を表示する(ステップS91)。
図12は、第4画面Sd4の一例を示す画面図である。第4画面Sd4には、操作者にハンドルを中立位置(直進位置)から右エンド、右エンドから左エンド、左エンドから中立位置に回転させ、各ポイントで確認ボタンの操作をするように指示する表示が為される。
【0077】
第4画面Sd4が表示されたら、操作者は、ハンドル12を中立位置(直進位置)から右エンドまで回転させる(ステップS92)。ハンドル12を右エンドまで回転させたら、操作者は、回転を停止し、確認ボタンを操作する。ハンドル12が回転し始めたら、制御部30は、ハンドル角センサ34およびタイヤ角センサ36の検知結果を、所定角度(例えば、ハンドル角で10°)ごとに連続的に取得する(ステップS93)。確認ボタンが操作されたら、制御部30は、連続的に取得した取得結果を保持する。つまり、ステップS92と、ステップS93とは、ほぼ同時に並行して実行される。
【0078】
確認ボタンを操作したら、操作者は、ハンドル12を右エンドから左エンドまで回転させる(ステップS94)。ハンドル12を左エンドまで回転させたら、操作者は、回転を停止し、確認ボタンを操作する。ハンドル12が回転し始めたら、制御部30は、ハンドル角センサ34およびタイヤ角センサ36の検知結果を、所定角度ごとに連続的に取得する(ステップS95)。確認ボタンが操作されたら、制御部30は、連続的に取得した取得結果を保持する。つまり、ステップS94と、ステップS95とは、ほぼ同時に並行して実行される。
【0079】
確認ボタンを操作したら、操作者は、ハンドル12を左エンドから中立位置まで回転させる(ステップS96)。ハンドル12を中立位置まで回転させたら、操作者は、回転を停止し、確認ボタンを操作する。ハンドル12が回転し始めたら、制御部30は、ハンドル角センサ34およびタイヤ角センサ36の検知結果を、所定角度ごとに連続的に取得する(ステップS97)。確認ボタンが操作されたら、制御部30は、連続的に取得した取得結果を保持する。つまり、ステップS96と、ステップS97とは、ほぼ同時に並行して実行される。
【0080】
ステップS92~S97を実行することにより、制御部30は、右エンドから左エンドまでの多点について、1往復分のハンドル角センサ34およびタイヤ角センサ36の検知結果を取得することができる。この1往復分のデータは、往路と復路とでずれている場合がある。このため、制御部30は、往路と復路のデータを揃える処理を行い、その処理結果を関係性学習部30fに学習関係性データDeとして記憶して、処理S90を終了する(ステップS98)。往路と復路のデータを揃える処理は、一方を他方にシフトさせる処理、両方を平均化する処理などであってもよい。これらの処理はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。所定角度は、取得データについて所望の精度に応じて設定することができる。一例として、所定角度は、5°から20°の範囲で設定されてもよい。
【0081】
この動作による学習関係性データDeは、ノブずれ修正動作において、補正後関係性データDcの代わりに用いることができる。学習関係性データDeを用いることにより補正精度を向上することができる。このため、フォークリフト100は、ノブずれ修正動作に補正後関係性データDcを使用するか、学習関係性データDeを使用するかを設定により選択することができる。以下のノブずれ修正動作では、補正後関係性データDcを使用する例を示すが、この説明は、補正後関係性データDcを学習関係性データDeに読み替えることにより、学習関係性データDeを使用する場合に適用することができる。
【0082】
(ノブずれ修正動作)
ノブずれ修正動作について説明する。前述したように、ノブずれ修正動作は、補正後関係性データDcに基づき取得タイヤ角Tgに対応する目標ハンドル角Hcを求め、取得ハンドル角Hgが目標ハンドル角Hcに近づくように、ソレノイドバルブ44を制御する動作である。本実施形態のノブずれ修正動作では、操舵輪14が直進位置にあるときにハンドル12のノブ12bが8時の位置に位置するようにノブずれを修正する。
【0083】
図13を参照して、ノブずれ修正動作の一例を説明する。
図13は、本実施形態のノブずれ修正動作の一例を示すフローチャートであり、この動作に関する処理S110を示している。取得動作の処理S110は、フォークリフト100の運転中は常時実行される。ハンドルが操作されずハンドル角が変化していない間は、処理は停止されてもよい。したがって、処理S110は、フォークリフト100の運転開始により開始される。
【0084】
処理S110では、所定時間Tp(例えば10ms)毎にノブずれ修正動作を実行する。
処理S110が開始されると、制御部30は、所定時間Tpを管理するタイマをリセットして時間カウント (以下、計時という)を開始させる(ステップS111)。
【0085】
ステップS111が完了したら、制御部30は、取得ハンドル角Hgと取得タイヤ角Tgとを読み込む(ステップS112)。取得タイヤ角Tgを取得したら、制御部30は、補正後関係性データDcにより、取得タイヤ角Tgに対応する目標ハンドル角Hcを求める(ステップS113)。
【0086】
目標ハンドル角Hcを求めたら、制御部30は、取得ハンドル角Hgと目標ハンドル角Hcとの差に応じて、ソレノイドバルブ44を開弁させる(ステップS114)。ソレノイドバルブ44を開くことにより、ステアリングシリンダ48に供給される作動油を減らしてハンドル12の操作に空転を生じさせてノブ12bを正規の位置に補正する。このステップでは、ハンドル角の差に応じた時間またはハンドル角の差に応じたデューティ比によってソレノイドバルブ44を開弁させるようにしてもよい。
【0087】
ステップS114が完了したら、制御部30は、タイマの計時が所定時間Tpを越えたか否かを判定する(ステップS115)。計時が所定時間Tpを越えていない場合(ステップS115のN)、制御部30は、処理をステップS115の先頭に戻し、ステップS115を繰り返す。計時が所定時間Tpを越えている場合(ステップS115のY)、制御部30は、処理をステップS111の先頭に戻し、ステップS111~S115の処理を繰り返す。これらの処理はあくまでも一例であり、他のステップを追加したり、一部のステップを変更または削除したり、ステップの順序を入れ替えてもよい。
【0088】
(油圧低減動作)
前述したように、油圧低減動作は、操舵輪のタイヤ角が所定角度に達すると、操舵輪を操舵する油圧装置の油圧を下げる動作であり、油圧低減部30pによって制御される。本実施形態の油圧低減動作は、操舵輪14の取得タイヤ角Tgが両エンドに接近したらステアリングシリンダ48に供給する油圧を低減する。本実施の形態では、油圧低減部30pには、予めタイヤ角の所定角度Taが設定されている。所定角度Taは両エンドの手前5°~15°の範囲に設定されてもよい。
【0089】
制御部30は、取得タイヤ角Tgが所定角度Taを越えて両エンドに接近したら、荷役モータ60mの回転数を徐々に下げて油圧ポンプ50の送出圧力を漸減させる。さらに、取得タイヤ角Tgがエンド近傍に達したら、制御部30は、荷役モータ60mの回転を止めるように制御する。この場合、荷役部60の動作に影響を与えないように、昇降シリンダ66に送出される作動油の油圧は変化させないことが望ましい。一例として、ライン66aの途中に油圧逆止弁を設けてもよい。油圧低減動作を含むことにより、操舵輪がエンドに当り騒動油がリークすることによるハンドル角のずれを抑制することができる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0091】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施の形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施の形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0092】
[変形例]
実施の形態の説明では、フォークリフト100がいわゆるカウンタバランス式フォークリフトである例を示したが、本発明はこれに限定されない。フォークリフト100は、リーチ式フォークリフトなど別形式のフォークリフトであってもよい。
【0093】
実施の形態の説明では、ハンドル12を空転させて補正するいわゆる減量方式の例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、バイパス回路によりステアリングシリンダへの作動油の流量を増加させて補正するいわゆる増量方式であってもよいし、減量方式と増量方式とを併用してこれらの両方の機能を有する補正方式であってもよい。
【0094】
実施の形態の説明では、補正データDjに応じて初期関係性データDmから補正後関係性データDcを求める補正動作は、フォークリフト100の動作中常時実行される例を示したが、本発明はこれに限定されない。補正後関係性データDcを取得した際に、補正後関係性データDcによって初期関係性データDmを書き換えして更新するようにしてもよい。
【0095】
実施の形態の説明では、油圧ポンプ50が荷役モータ60mによって駆動される例を示したが、本発明はこれに限定されない。油圧ポンプ50は、電気モータ以外の原理に基づく原動機によって駆動されてもよい。例えば、油圧ポンプ50は、エンジンによって駆動されてもよく、この場合、このエンジンはフォークリフト100を走行させるためのエンジンであってもよい。
【0096】
実施の形態の説明では、ハンドル角センサ34が光学式ロータリーエンコーダであり、タイヤ角センサ36がポテンショメータである例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ハンドル角センサ34は、レゾルバなど電磁誘導の原理に基づく回転センサであってもよい。
【0097】
実施の形態の説明では、制御部30が関係性学習部30f、所定値設定部30hおよび油圧低減部30pを有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。これらを備えることは必須ではなく、制御部30はこれらの一部または全部を有しなくてもよい。
【0098】
実施の形態の説明では、ハンドル12が円環状のステアリングホイールである例を示したが、本発明はこれに限定されない。ハンドル12は、操作者が手動で操作可能なものであればよく、例えば棒状のものであってもよい。
【0099】
上述の各変形例は実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0100】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる各実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0101】
10・・ステアリング機構、 12・・ハンドル、 12b・・ノブ、 14・・操舵輪、 28・・駆動機構、 30・・制御部、 32・・設定入力部、 34・・ハンドル角センサ、 36・・タイヤ角センサ、 40・・油圧機構、 42・・操舵バルブユニット、 44・・ソレノイドバルブ、 48・・ステアリングシリンダ、 100・・フォークリフト。