IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ニコトランスミッションの特許一覧

<>
  • 特許-鉄道作業車用トランスミッション 図1
  • 特許-鉄道作業車用トランスミッション 図2
  • 特許-鉄道作業車用トランスミッション 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】鉄道作業車用トランスミッション
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/06 20060101AFI20230405BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20230405BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230405BHJP
   B61C 7/04 20060101ALI20230405BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
B60K17/06 H
B60K17/04 G
B60L1/00 L
B61C7/04
B61D15/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018132279
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020006912
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-07-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303025663
【氏名又は名称】株式会社日立ニコトランスミッション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】金子 慎吾
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-030750(JP,A)
【文献】特開2009-090830(JP,A)
【文献】特開2010-115943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/06
B61C 7/04
B61D 15/00
B60K 17/04
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機からの動力を入力する動力入力経路と、モータとの間で動力の伝達を行う動力伝達経路とのそれぞれに、油圧クラッチを備え、車両を駆動させる動力の切替を可能とする鉄道作業車用トランスミッションであって、
前記原動機の稼働に伴って稼働するギアポンプと、
前記車両に備えられ、電力により稼働する電動ポンプと、を有し、
前記ギアポンプと前記電動ポンプとは1つの油圧回路上に並列に配置され、各ポンプの出力側には逆止弁が設けられており、
前記動力入力経路を介した動力伝達を行う場合には、前記油圧クラッチに対して前記ギアポンプから作動油を供給し、
前記動力伝達経路を介した動力の入力を行う場合には、前記油圧クラッチに対して前記電動ポンプから作動油を供給する構成とし
前記油圧クラッチを備えるクラッチ系の油圧系統は、一次側クラッチと二次側クラッチとに大別され、
前記一次側クラッチを構成する系統経路と前記二次側クラッチを構成する系統経路との間には、前記一次側クラッチに供給される作動油圧が所定のパイロット圧以上となることで前記二次側クラッチに作動油の供給を成すリリーフ弁が備えられていることを特徴とする鉄道作業車用トランスミッション。
【請求項2】
前記電動ポンプの電源は、前記モータを駆動させるための電源と共通としたことを特徴とする請求項1に記載の鉄道作業車用トランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道作業車用のハイブリッド型トランスミッションに係り、特に、従来に比べて小型で低価格な構成を実現する事に好適な鉄道作業車用トランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、エンジン駆動と、モータ駆動を可能にする、いわゆるハイブリッド型の鉄道車両用トランスミッションとして、特許文献1に開示されているようなものを提案している。
【0003】
特許文献1に開示されているトランスミッションは、エンジンに接続される駆動軸の他に、モータに接続された動力軸(PTO軸)を備え、エンジンを停止させた状態であっても、モータの駆動により、車両を走行させることが可能な構成としている。PTO軸には、モータと駆動軸との間の動力の伝達を制御するクラッチが備えられ、このクラッチの嵌脱状態と、エンジンの稼働状態との如何により、車両をモータ主体で駆動させることや、モータをジェネレータとして稼働させること、および車両をエンジンのみでの駆動させることなどの切り替え制御が可能とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-30750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に開示されているトランスミッションによれば、理論上、エンジン停止時においてもモータ駆動により車両を走行させることが可能となる。しかし実際には、動力を伝達するためのクラッチの油圧を確保するために、エンジンを停止させることができなかったり、ギアポンプを回転させるための駆動ユニットが必要であるため、トランスミッション自体の小型化や、原価の低減を図ることが困難であった。
【0006】
そこで本発明では、上記問題を解決し、小型化、および低価格化に適したハイブリッド型の鉄道作業車用トランスミッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る鉄道作業車用トランスミッションは、原動機からの動力を入力する動力入力経路と、モータとの間で動力の伝達を行う動力伝達経路とのそれぞれに、油圧クラッチを備え、車両を駆動させる動力の切替を可能とする鉄道作業車用トランスミッションであって、前記原動機の稼働に伴って稼働するギアポンプと、前記車両に備えられ、電力により稼働する電動ポンプと、を有し、前記動力入力経路を介した動力伝達を行う場合には、前記油圧クラッチに対して前記ギアポンプから作動油を供給し、前記動力伝達経路を介した動力の入力を行う場合には、前記油圧クラッチに対して前記電動ポンプから作動油を供給する構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような特徴を有する鉄道作業車用トランスミッションにおいて、前記電動ポンプの電源は、前記モータを駆動させるための電源と共通とすると良い。このような特徴を有することによれば、電源の設置スペースの縮小化を図ることができる。また、モータに接続された電源であれば、モータをジェネレータとして作用させることで給電を行うことができるため、別途給電設備を設ける必要もなくなる。
【発明の効果】
【0009】
上記のような特徴を有する鉄道作業車用トランスミッションは、小型化、および低価格化に適したハイブリッド型の鉄道作業車用トランスミッションとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る鉄道作業車用トランスミッションと鉄道作業車の関係の概略を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る鉄道作業車用トランスミッションの具体的な構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係るトランスミッションにおける油圧クラッチとギアポンプの関係を示す油圧系統の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の鉄道作業車用トランスミッションに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の1つに過ぎない。よって、各要素の機能を逸脱せず、かつ発明の効果を奏することのできる限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の実施とみなすことができる。
【0012】
まず、図1から図3を参照して、実施形態に係る鉄道作業車用トランスミッション(以下、単にトランスミッション10と称す)の構成について説明する。なお、図面において図1は、実施形態に係るトランスミッションと鉄道作業車(車両)の関係の概略を示すブロック図であり、図2は、実施形態に係るトランスミッションの具体的な構成を示すブロック図である。また、図3は、実施形態に係るトランスミッションにおける油圧クラッチとギアポンプの関係を示す油圧系統の概略図である。
【0013】
本実施形態に係るトランスミッション10は、エンジン等の原動機12の動力を伝達するための動力入力経路14と、モータ30との間の動力伝達が成される動力伝達経路28とが備えられ、動力入力経路14と動力伝達経路28には、それぞれ油圧クラッチ(一次側クラッチ:前進用油圧クラッチ22、後進用油圧クラッチ20、モータ用油圧クラッチ36)が備えられている。油圧クラッチから変速部38を介して動力が伝達される出力部46の出力側には、車両を駆動させる車輪64への動力伝達系が備えられている。
【0014】
原動機12からの動力入力経路14には、原動機12による車両駆動時における油圧クラッチの油圧源を確保するためのギアポンプ26が備えられている。ギアポンプ26は、回転軸16からの動力伝達を受けて稼働する構成とされており、原動機12の動力が回転軸16に入力されることで稼働する。
【0015】
一方、モータ30には、車両側に備えられたバッテリ等の電源60が接続されている。また、電源60にはモータ30の他に、車両側に備えられ、電力により稼働可能な電動ポンプ62が接続されている。電動ポンプ62は、原動機12を停止させている状態における一次側クラッチの油圧源を確保するための役割を担い、電磁弁66c(図3参照)による切替制御により、トランスミッション10に対する作動油の供給を成す構成としている。
【0016】
実施形態に係るトランスミッション10は、図2に示すように、動力入力経路14と、動力伝達経路28、変速部38、および出力部46を有する。動力入力経路14は、原動機12からの動力が入力される経路であり、回転軸16と、カップリング18、後進用油圧クラッチ20、前進用油圧クラッチ22を有する。カップリング18は、原動機12の出力軸(不図示)を介して動力が入力(伝達)される要素であり、カップリング18を流体継手とすることで、油圧の調整により、回転軸16に伝達される動力の回転数やトルクの調節を行うことが可能となる。また、カップリング18には、クラッチ等による直結機構を付加することもできる。このような構成とした場合、詳細を後述するように、モータ30をジェネレータとして稼働させる際、動力伝達時のすべりを無くし、発電効率の向上を図ることが可能となる。
【0017】
後進用油圧クラッチ20は、回転軸16に伝達された動力を変速部38へ伝達する役割を担う要素であり、クラッチの入力側と出力側にそれぞれ伝達ギア20a,20bを備えている。入力側に備えられている伝達ギア20aは、前進用油圧クラッチ22へ動力を伝達するためのギアであり、出力側の伝達ギア20bは、動力を変速部38へ伝達するためのギアである。なお、後進用油圧クラッチ20は、原動機12を停止させ、モータ30の動力を変速部38に伝達する際、この動力が原動機12に伝達されることが無いように、動力の伝達を遮断するクラッチの機能を有している。
【0018】
前進用油圧クラッチ22は、後進用油圧クラッチ20とは異なる回転軸22cを備え、後進用油圧クラッチ20の入力側に伝達された動力、すなわち回転軸16に伝達された動力を変速部38へ伝達する役割を担う要素である。前進用油圧クラッチ22も、後進用油圧クラッチ20と同様に、クラッチの入力側と出力側にそれぞれ伝達ギア22a,22bを備えている。前進用油圧クラッチ22の入力側に備えられた伝達ギア22aは、後進用油圧クラッチ20の入力側に設けられた伝達ギア20aが噛み合うギアであり、出力側の伝達ギア22bは、動力を変速部38へ伝達するためのギアである。
【0019】
後進用油圧クラッチ20と前進用油圧クラッチ22はそれぞれ、クラッチを嵌状態とすることで、入力側に伝達された動力を出力側に伝達することが可能となる。また、回転軸16に入力された動力を後進用油圧クラッチ20の入力側に設けた伝達ギア20aを介して前進用油圧クラッチ22に伝達することで、伝達される動力の回転方向が逆転し、車両の進行方向の切り替えが可能となる。
【0020】
また、実施形態に係る動力入力経路14には、出力取り出し経路24が備えられている。出力取り出し経路24には、伝達ギア24a,24bを介してギアポンプ26が備えられ、各油圧クラッチにおける作動油の供給が可能な構成とされている。
【0021】
動力伝経路28は、原動機12以外の動力源からの動力を伝達すると共に、原動機12から入力された動力の一部を取り出す役割を担う要素である。本実施形態では、動力伝達経路28を介して、モータ30からの動力を変速部38へ伝達すると共に、原動機12からの動力をモータ30へ伝達し、モータ30をジェネレータとして作用させる構成としている。
【0022】
このような役割を担う動力伝達経路28には、入出力軸32、伝達軸34、およびモータ用油圧クラッチ36が備えられている。入出力軸32は、モータ30からの動力が入力されると共に、原動機12からの動力の一部をモータ30へ出力する際の動力を伝達する役割を担う要素である。入出力軸32には、伝達ギア32aが備えられ、伝達軸34との間で動力の伝達を行うことが可能な構成とされている。
【0023】
伝達軸34は、入出力軸32を介して入力されるモータ30の動力をモータ用油圧クラッチ36側へ伝達すると共に、モータ用油圧クラッチ36を介して伝達される原動機12の動力の一部を入出力軸32側へ伝達する役割を担う要素である。伝達軸34には、入出力軸32の伝達ギア32aと噛み合う伝達ギア34aと、モータ用油圧クラッチ36の伝達ギア36aと噛み合う伝達ギア34bが備えられている。
【0024】
モータ用油圧クラッチ36は、回転軸16を回転中心とするクラッチであり、嵌脱により、伝達ギア20bと伝達ギア36aとの間における動力の伝達を制御する要素である。このような構成の動力伝達経路28では、モータ30を駆動させ、モータ用油圧クラッチ36を嵌状態とした場合、伝達ギア36aを介してモータ用油圧クラッチ36に入力されたモータ30の動力は、伝達ギア20bを介して変速部38へ伝達されることとなる。
【0025】
また、原動機12から入力された動力が後進用油圧クラッチ20を介して伝達ギア20bに伝達された際、モータ用油圧クラッチ36を嵌状態とすると、その動力が伝達ギア36aを介して伝達軸34、入出力軸32へ伝達され、モータ30(ジェネレータ)へと出力されることとなる。
【0026】
変速部38は、動力入力経路14あるいは動力伝達経路28を介して伝達された動力のトルクや回転数を調整する役割を担う要素である。変速部38には、回転軸40と、この回転軸40に付帯された1速側油圧クラッチ42、および2速側油圧クラッチ44(総称として二次側クラッチ)を備える。回転軸40には、入力ギア40aが備えられ、上述した伝達ギア20bからの動力が入力される構成とされている。
【0027】
1速側油圧クラッチ42は、入力ギア40aに伝達された動力の回転数やトルクを変換して出力部46へ伝達するための役割を担う要素であり、出力側に伝達ギア42aを有する。2速側油圧クラッチ44も、1速側油圧クラッチ42と同様に、入力ギア40aに伝達された動力の回転数やトルクを変換して出力部46へ伝達するための役割を担う要素である。よって、2速側油圧クラッチ44の出力側にも伝達ギア44aが備えられている。1速側油圧クラッチ42における伝達ギア42aに比べ、2速側油圧クラッチ44における伝達ギア44aは、その直径が大きく、歯数が多くなるように構成されている。
【0028】
このような構成とすることで、1速側油圧クラッチ42を介して伝達される動力は、2速側油圧クラッチ44を介して伝達される動力に比べてトルクが大きなものとなる。一方、2速側油圧クラッチ44を介して伝達される動力は、1速側油圧クラッチ42を介して伝達される動力に比べて回転数が高いものとなる。よって、1速側油圧クラッチ42と2速側油圧クラッチ44との切り替えにより、動力の出力特性を変化させることができる。
【0029】
出力部46は、変速部38を介して伝達された動力を車輪64等へ伝達する役割を担う要素であり、本実施形態では、第1出力軸48と、第2出力軸50を備えている。第1出力軸48は、第1入力ギア48aと第2入力ギア48b、および伝達ギア48cを備えている。第1入力ギア48aは、1速側油圧クラッチ42における伝達ギア42aに噛み合うギアであり、第2入力ギア48bは、2速側油圧クラッチ44における伝達ギア44aに噛み合うギアである。本実施形態では、第1入力ギア48aに比べて第2入力ギア48bは小径で、歯数が少ないギアとなるように構成されている。
【0030】
このような構成とすることで、変速部38における1速側油圧クラッチ42と2速側油圧クラッチ44によって伝達される動力の変速比の差をさらに大きなものとすることができる。なお、伝達ギア48cは、第1入力ギア48a、または第2入力ギア48bを介して第1出力軸48に入力された動力を第2出力軸50へ伝達する役割を担う要素である。
【0031】
第2出力軸50は、トランスミッション10から動力を出力する軸であり、入力ギア50aを備えている。入力ギア50aは、第1出力軸48における伝達ギア48cに噛み合うように構成されている。
【0032】
上述したように、実施形態に係るトランスミッション10には、原動機12の動力により稼働するギアポンプ26と、外部(車両)に配置され、電源60からの電力の供給を受けて稼働する電動ポンプ62が備えられ、各油圧クラッチにおける作動油の油圧源を構成している。本実施形態に係るクラッチ系の油圧系統は、図3に示すように、一次側クラッチと、二次側クラッチとに大別されている。ここで、一次側クラッチとしては、動力入力経路14に設けられる後進用油圧クラッチ20や、前進用油圧クラッチ22の他、動力伝達経路28に設けられるモータ用油圧クラッチ36などを挙げることができる。一方、二次側クラッチとしては、変速部38に備えられている1速側油圧クラッチ42や、2速側油圧クラッチ44などを挙げることができる。
【0033】
図3に示すように、ギアポンプ26と電動ポンプ62は、油圧回路上、並列な配置関係にある。このため、ギアポンプ26と電動ポンプ62の出力側にはそれぞれ、逆止弁が備えられ、非稼働時における作動油の逆流の防止が図られている。一次側クラッチを構成する系統経路と二次側クラッチを構成する系統経路の間には、所定のパイロット圧が設定されたリリーフ弁68が備えられている。このような構成とすることで、一次側クラッチに対する作動油圧が充分に確保されていなければ、二次側クラッチに対する作動油が供給されないこととなる。
【0034】
一次側クラッチの系統経路と、二次側クラッチの系統経路にはそれぞれ、各クラッチへの分岐経路に電磁弁66a,66b,66cが備えられており、電磁弁66a,66b,66cの切替制御により、所望する油圧クラッチ(後進用油圧クラッチ20,前進用油圧クラッチ22,モータ用油圧クラッチ36への作動油の供給が可能となるように構成されている。
【0035】
このような構成のトランスミッション10では、原動機12からの動力が回転軸16に入力されている場合には、ギアポンプ26が作動し、一次側クラッチにおいて、電磁弁66a、あるいは電磁弁66bを作動させる。これにより、後進用油圧クラッチ20、あるいは前進用油圧クラッチ22のいずれか一方が嵌状態となる。一次側クラッチが稼働した後、リリーフ弁68が作動し、二次側クラッチの油圧系統に作動油が供給される。二次側クラッチの油圧系統では、電磁弁70aまたは電磁弁70bのいずれかを作動させることで、1速側油圧クラッチ42、あるいは2速側油圧クラッチ44が作動し、車両を低速あるいは高速で、前進、または後進させることが可能となる。
【0036】
また、原動機12が停止している場合には、電源60を介して電動ポンプ62が稼働される。電動ポンプ62から吐出された作動油は、まず、一次側クラッチ側の作動油供給経路へ供給される。この時、電磁弁66cを作動させることで、モータ用油圧クラッチ36への作動油の供給がなされる。その後、リリーフ弁68が開放され、二次側クラッチの油圧系統へ作動油が供給される。二次側クラッチの油圧系統では、電磁弁70aあるいは電磁弁70bを作動させることにより、モータ30の動力を車輪64に伝達し、車両を前進、または後進させることができるようになる。
【0037】
また、原動機12からの動力が回転軸16に入力されている場合に、電磁弁66aと共に電磁弁66cを作動させると、後進用油圧クラッチ20とモータ用油圧クラッチ36を稼働させることができ、原動機12の動力の一部を用いてモータ30をジェネレータとして作用させることもできる。また、後進用油圧クラッチ20とモータ用油圧クラッチ36を嵌脱し、原動機12とモータ30を回転軸16上で同期させることで、両者の動力を車輪64に伝達することができる。また、このような動力伝達方式を採用した場合、原動機12の出力効率が良い回転域で運転することで、原動機12の出力を抑えることが可能となる。このため、エンジン(原動機12)の小型化、及び省エネ化を実現することができる。
【0038】
上記のようなトランスミッション10によれば、モータ30側の動力伝達経路28にクラッチや、ギアポンプを作動させるユニットを設けていないため、トランスミッション10の小型化、および低価格化を実現することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、油圧回路上、ギアポンプ26と電動ポンプ62を並列に配置し、出力側にそれぞれ逆止弁を備える旨記載した。しかしながら、これらの回路構成は、その機能を確保することができれば限定するものでは無い。例えば、ギアポンプ26と電動ポンプ62の出力側経路に、逆止弁に替えて、切り替え弁を備え、その下流側経路を統一化するようにしても良い。
【符号の説明】
【0040】
10………トランスミッション、12………原動機、14………動力入力経路、16………回転軸、18………カップリング、20………後進用油圧クラッチ、20a,20b………伝達ギア、22………前進用油圧クラッチ、22a,22b………伝達ギア、22c………回転軸、24………出力取り出し経路、26………ギアポンプ、28………動力伝達経路、30………モータ、32………入出力軸、32a………伝達ギア、34………伝達軸、34a,34b………伝達ギア、36………モータ用油圧クラッチ、36a………伝達ギア、38………変速部、40………回転軸、40a………入力ギア、42………1速側油圧クラッチ、42a………伝達ギア、44………2速側油圧クラッチ、44a………伝達ギア、46………出力部、48………第1出力軸、48a………第1入力ギア、48b………第2入力ギア、48c………伝達ギア、50………第2出力軸、50a………入力ギア、60………電源、62………電動ポンプ、64………車輪、66a,66b,66c………電磁弁、68………リリーフ弁、70a,70b………電磁弁。
図1
図2
図3