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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】建築資材
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/108 20060101AFI20230405BHJP
   E04F 15/04 20060101ALI20230405BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
E04F11/108
E04F15/04 601
B32B5/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018154240
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2020029659
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507403160
【氏名又は名称】株式会社中東
(73)【特許権者】
【識別番号】591241718
【氏名又は名称】大和リース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 麻利子
(72)【発明者】
【氏名】池端 正一
(72)【発明者】
【氏名】林 豊
(72)【発明者】
【氏名】中山 武俊
(72)【発明者】
【氏名】高柳 美里
(72)【発明者】
【氏名】小坂 勇治
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀人
(72)【発明者】
【氏名】仲本 克則
(72)【発明者】
【氏名】南古 祥希
(72)【発明者】
【氏名】椙森 亜希恵
(72)【発明者】
【氏名】奥山 孔太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 愛
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-304134(JP,A)
【文献】特開平06-238821(JP,A)
【文献】特開平09-117902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0331135(US,A1)
【文献】登録実用新案第3166232(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00-11/17
15/04
B32B 5/28
21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製材料により形成された複数の木製材料層と、
炭素繊維複合材料によって形成された複合材料部分と、を含み、
前記複合材料部分が前記複数の木製材料層の間に配置され、前記複合材料部分と前記複数の木製材料層とが互いに積み重なり、板厚方向に凸となるアーチ状に形成されている板により形成された建築資材であって、
前記建築資材は、
前記板材を用いて形成された段板を具備する階段であり、
前記段板は、
当該段板の上面の段鼻側の端部が蹴込み側の端部よりも高く、かつ、
当該段板の上面のうち前記段鼻側の端部と前記蹴込み側の端部との間の一部分が、当該段鼻側の端部及び当該蹴込み側の端部よりも高くなるように設けられている、
建築資材
【請求項2】
前記板材は、
板厚方向の中心より凸側及び凹側のそれぞれに位置する層が前記複合材料部分となるように形成されている、
請求項1に記載の建築資材
【請求項3】
前記アーチ状は、
凸側の板面の曲率半径が3000mm以下の円弧状である、
請求項1又は請求項2に記載の建築資材
【請求項4】
前記炭素繊維複合材料は、
母材が熱可塑性樹脂であるものである、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の建築資材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を用いて形成された建築資材の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板材及び当該板材を用いて形成された建築資材の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、複数の段板(板材)と、当該段板の下側に設けられる蹴込み板とを有する階段本体を具備するユニット式建物の階段が記載されている。特許文献1に記載の技術においては、蹴込み板に第一の補強部材を固定し、さらに段板にその長手方向に沿って第二の補強部材が取り付けられている。これにより、荷重に対する階段の強度を向上させることができる。
【0004】
しかしながら、補強部材が増えると構成が複雑になり、ひいてはコストアップにもつながるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-242287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、簡易な構成で荷重に対する強度を向上させることができる板材を用いて形成された建築資材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、木製材料により形成された複数の木製材料層と、炭素繊維複合材料によって形成された複合材料部分と、を含み、前記複合材料部分が前記複数の木製材料層の間に配置され、前記複合材料部分と前記複数の木製材料層とが互いに積み重なり、板厚方向に凸となるアーチ状に形成されている板により形成された建築資材であって、前記建築資材は、前記板材を用いて形成された段板を具備する階段であり、前記段板は、当該段板の上面の段鼻側の端部が蹴込み側の端部よりも高く、かつ、当該段板の上面のうち前記段鼻側の端部と前記蹴込み側の端部との間の一部分が、当該段鼻側の端部及び当該蹴込み側の端部よりも高くなるように設けられているものである。
【0010】
請求項2においては、前記板材は、板厚方向の中心より凸側及び凹側のそれぞれに位置する層が前記複合材料部分となるように形成されているものである。
【0011】
請求項においては、前記アーチ状は、凸側の板面の曲率半径が3000mm以下の円弧状であるものである。
【0012】
請求項においては、前記炭素繊維複合材料は、母材が熱可塑性樹脂であるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、簡易な構成で荷重に対する強度を向上させることができる。また請求項1においては、板材全体に亘って荷重に対する強度を向上させることができる。また請求項1においては、簡易な構成で段板への荷重に対する強度を向上した階段とすることができる。また請求項1においては、階段の利用者の足裏へのフィット感を高めることができる。
【0019】
請求項においては、荷重に対する強度をより向上させることができる。
【0020】
請求項においては、荷重に対する強度をより向上させることができる。
【0021】
請求項においては、加工の容易性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る板材の斜視図。
図2】(a)本発明の一実施形態に係る板材の左側面図。(b)同じく、左側面断面拡大図。
図3】本発明の一実施形態に係る階段の斜視図。
図4】(a)本発明の一実施形態に係る段板の左側面図。(b)同じく、左側面断面拡大図。
図5】段板の曲げ強度の試験結果を示した図。
図6】本発明の別例に係る階段の斜視図。
図7】本発明の別例に係る階段の斜視図。
図8】本発明の別例に係る階段の斜視図。
図9】本発明の別例に係る段板の左側面図。
図10】(a)本発明の第二実施形態に係る段板の左側面図。(b)同じく、傾斜角度を示した図。
図11】利用者の階段の昇降の際の使用感に関する評価の試験結果を示した図。
図12】(a)本発明の一実施形態に係る棚の斜視図。(b)本発明の一実施形態に係る棚の天板又は底板の左側面断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る板材100の構成について説明する。
【0027】
図1に示す板材100は、物を製造するための材料として使用されるものであり、特に建築資材を製造するための材料として使用されるものである。本発明において、「建築資材」とは、建材、家具、建具など建物内で用いられる可能性のあるあらゆる物を含むものであって、例えば階段、棚、建物の床等である。
【0028】
図2(a)に示すように、板材100は、側面視において上方に凸となるアーチ状に形成される。ここで、「アーチ状」には、円弧状だけでなく、楕円弧状、弓形状、放物線状等の形状や、これらにおいて中途に直線部分を含む形状、例えばコの字状も含まれる。本実施形態においては、板材100(の上面100a及び下面100b)は、側面視において一定の曲率半径を有する円弧状に形成される。板材100の上面100aの曲率半径Rは3000mm以下に設定される。板材100は、平面視において略矩形状に形成される。
【0029】
図2(b)に示すように、板材100は、複数の層が積み重なるようにして形成されている。具体的には、板材100は、木製材料層110及び炭素繊維複合材料層120から構成される。
【0030】
図2(b)に示す木製材料層110は、板材100を構成する複数の層のうち、木製材料によって形成される層である。木製材料層110は、最も上面100a側(凸側の板面側)、及び最も下面100b側(凹側の板面側)に形成される。さらに、木製材料層110は、上面100a側の木製材料層110及び下面100b側の木製材料層110との間にも複数形成される。
【0031】
図2(b)に示す炭素繊維複合材料層120は、板材100を構成する複数の層のうち、炭素繊維複合材料によって形成される層である。炭素繊維複合材料層120は、板材100を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層として形成される。本実施形態においては、炭素繊維複合材料層120は、板厚方向の中心より凸側(上面100a近傍)及び板厚方向の中心より凹側(下面100b近傍)にそれぞれ形成される。具体的には、一方の炭素繊維複合材料層120は、上面100a側の木製材料層110の下方に隣接するように、すなわち上方から2番目の層として形成される。他方の炭素繊維複合材料層120は、下面100b側の木製材料層110の上方に隣接するように、すなわち下方から2番目の層として形成される。炭素繊維複合材料層120は、平面視において板材100の全域に広がるように形成される。
【0032】
ここで、炭素繊維複合材料とは、炭素繊維と母材との複合材料であって、例えば炭素繊維と合成樹脂との複合材料であるCFRP(Carbon-Fiber-Reinforced Plastic)である。本実施形態においては、炭素繊維複合材料層120は、母材(合成樹脂)として熱可塑性樹脂が用いられた炭素繊維複合材料によって形成される。
【0033】
このように板材100が、炭素繊維複合材料層120を含むように構成されることにより、木製材料層110だけで構成される場合と比べて、板材100に加えられる荷重に対する曲げ強度を向上させることができる。つまり、本実施形態に係る板材100によれば、木製材料層110だけで構成される段板と同じ厚さ又は同じ重量とした場合と比べて、曲げ強度を向上させることができる。換言すれば、木製材料層110だけで構成される板材と同じ曲げ強度を維持しつつ、厚さ及び重量を小さくすることができる。
【0034】
また、図2(a)に示すように、板材100は、側面視において上方に凸となるアーチ状に形成されることにより、支持部材(補強部材)を追加しなくても、板厚方向の荷重に対する曲げ強度をさらに向上させることができる。すなわち、簡易な構成で荷重に対する曲げ強度をさらに向上させることができる。
【0035】
次に、板材100の製造方法について説明する。
【0036】
まず、木製材料層110を形成するための、木製材料により形成された複数の単板と、炭素繊維複合材料層120を形成するための、炭素繊維複合材料により形成された複数の単板を準備する。各単板は、平板状に形成される。炭素繊維複合材料により形成された単板は、母材(合成樹脂)として熱可塑性樹脂が用いられた炭素繊維複合材料によって形成されている。
【0037】
次に、これら単板を、図2(b)に示す順に積層する。各単板は、適宜の方法で、例えば接着剤によって互いに接着される。
【0038】
木製材料により形成された各単板の積層方向は任意の方向とすることができ、例えば、単板の繊維方向が交互に直交するように積層されたもの(合板)としてもよく、或いは、単板の繊維方向が並行するように積層されたもの(単板積層材(LVL))としてもよい。
【0039】
次に、上述の方法で単板を積層したもの(積層材料)をアーチ状に屈曲させる。具体的には、適宜の形状に形成された型で積層材料を加熱プレスすることにより、当該積層材料をアーチ状に屈曲させる。炭素繊維複合材料により形成された単板は、母材(合成樹脂)として熱可塑性樹脂が用いられた炭素繊維複合材料によって形成されているため、加熱プレスを行うことにより複雑な形状に追従し易く、このため板材100をアーチ状に加工し易いという利点がある。
【0040】
以上のようにして、炭素繊維複合材料層120が含まれ、かつ、上方に凸となるアーチ状に形成された板材100を製造することができる。また、プレス用の型を滑り止め用の溝を付与可能な形状とすることで、滑り止め用の溝を、追加の工程なしで板材100に作製することができる。
【0041】
次に、図3及び図4を用いて、本発明の一実施形態に係る板材100を用いた階段1の構成について説明する。なお、階段1は、本発明に係る建築資材の一例である。
【0042】
図3に示す階段1は、屋外又は屋内に設けられ、例えば住宅に設けられるものである。階段1は、主として、側板10及び段板200を具備する。
【0043】
側板10は、階段1の左右側面部を構成するものである。側板10は、板状に形成され、板面を左右方向に向けた状態で階段1の左右端部に設けられる。側板10は、後方向及び上方向に交互に延びるジグザグ状に形成されている。
【0044】
段板200は、階段1を昇り降りする際に当該階段1の利用者が足を乗せる(踏む)部分である。段板200は、平面視において略矩形状に形成される。段板200は、長手方向を左右方向に向けた状態で、左右の側板10の間に亘るように設けられる。段板200は、当該左右の側板10及び他の支持部材等によって下方から支持される。これにより、段板200は、後上方向(前下方向)に並ぶように(後方に向かうにつれて上方に位置するように)複数設けられる。
【0045】
段板200は、板材100によって形成される。図4(a)に示すように、段板200は、(段板200の)側面視において上方に凸となるアーチ状に形成される。本実施形態においては、段板200(の上面100a及び下面100b)は、側面視において一定の曲率半径を有する円弧状に形成される。段板200の上面100aの曲率半径Rは3000mm以下に設定される。
【0046】
図4(b)に示すように、段板200は、複数の層が積み重なるようにして形成されている。具体的には、段板200は、木製材料層110及び炭素繊維複合材料層120から構成される。木製材料層110及び炭素繊維複合材料層120については、板材100の構成として説明したのでここでは説明を省略する。
【0047】
このように段板200が、炭素繊維複合材料層120を含むように、かつ、アーチ状に構成されることにより、階段1の昇降の際に段板200に加えられる荷重に対する曲げ強度を向上させることができる。すなわち、簡易な構成で荷重に対する曲げ強度をさらに向上させることができる。
【0048】
また、荷重に対する曲げ強度を維持しつつ段板200を軽量化することができるため、段板200を事前に工場で組み立てた状態で現場に運搬することが容易となり、ひいては現場での省力化を図ることができる。
【0049】
さらに別の効果として、段板200が側面視において上方に凸となるアーチ状に形成されることにより、階段1の利用者の足裏へのフィット感を高めることができる。これにより、利用者の踏み心地のよさを高めることができ、かつ、階段1の利用者に与える恐怖感(落下するのではないかという恐れ)を低減させることができる。
【0050】
図5は、板材の曲げ強度の試験結果を示した図である。本試験においては、板材(試験体)を間隔720~760mmの2点で下方から支持された状態とし、その中間点で板材(試験体)に上方から荷重をかけたときの当該段板のたわみ量を測定した。
【0051】
本試験では板材(試験体)として、積層数13、板厚約18mmのものを使用した。また、板材(試験体)としては、実施例として、「R800」、「R1500」及び「R3000」であって「CFあり」のものを使用した。また、比較例として、「ブランク(平板)」であって「CFあり」のもの、及び「R800」、「R1500」、「R3000」及び「ブランク(平板)」であって「CFなし」のものを使用した。
【0052】
図5において、「CFあり」とは、図2(b)に示す如く炭素繊維複合材料層120を含む板材100であり、「CFなし」とは、炭素繊維複合材料層120を含まない板材である。また、「R800」とは、板材100の上面100aの側面視における曲率半径Rが800mmであるものであり、「R1500」とは、板材100の上面100aの側面視における曲率半径Rが1500mmであるものであり、「R3000」とは、板材100の上面100aの側面視における曲率半径Rが3000mmであるものである。また、「ブランク(平板)」とは、板材100の上面100aの側面視における曲率半径Rが0mmであるもの(すなわち、直線状であるもの)である。
【0053】
図5に示す試験結果によれば、炭素繊維複合材料層120を含む板材100は、炭素繊維複合材料層120を含まない場合と比べて、同じ荷重に対するたわみ量が小さいことがわかる。すなわち、板材100が炭素繊維複合材料層120を含むことにより、荷重に対する曲げ強度が向上していることがわかる。
【0054】
また、図5に示す試験結果によれば、ブランク(平板)よりもR3000の板材100の方が同じ荷重に対するたわみ量が小さいことがわかる。また、R3000の板材100よりもR1500の板材100の方が同じ荷重に対するたわみ量が小さく、R1500の板材100よりもR800の板材100の方が同じ荷重に対するたわみ量が小さいことがわかる。すなわち、上面100aの曲率半径Rを3000mm以下とすることにより、荷重に対する曲げ強度を向上させることができ、また上面100aの曲率半径Rが小さいほど(曲率が大きいほど)、荷重に対する曲げ強度を向上させることができることがわかる。
【0055】
このように、板材100が炭素繊維複合材料層120を具備し、かつ、アーチ状に形成されることにより、荷重に対する曲げ強度をより効果的に向上させることができる。
【0056】
以上の如く、本実施形態に係る板材100は、炭素繊維複合材料によって形成された炭素繊維複合材料層120(複合材料部分)を含み、板厚方向に凸となるアーチ状に形成されているものである。
このように構成することにより、簡易な構成で荷重に対する強度を向上させることができる。
【0057】
また、前記板材100は、複数の層が積み重なるようにして形成されているとともに、前記複数の層のうち少なくとも一つの層が前記炭素繊維複合材料層120(複合材料部分)となるように形成されているものである。
このように構成することにより、板材100全体に亘って荷重に対する強度を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る板材100は、板厚方向の中心より凸側及び凹側のそれぞれに位置する層が前記炭素繊維複合材料層120(複合材料部分)となるように形成されているものである。
このように構成することにより、荷重に対する強度をより向上させることができる。
【0059】
また、前記アーチ状は、上面100a(凸側の板面)の曲率半径が3000mm以下の円弧状であるものである。
このように構成することにより、荷重に対する強度をより向上させることができる。
【0060】
また、前記炭素繊維複合材料は、母材が熱可塑性樹脂であるものである。
このように構成することにより、加工の容易性を向上させることができる。
【0061】
また、本発明に係る建築資材は、少なくとも一部が板材100により形成されたものである。
このように構成することにより、簡易な構成で荷重に対する強度を向上した建築資材とすることができる。
【0062】
また、前記建築資材は、前記板材100を用いて形成された段板200を具備する階段1であるものである。
このように構成することにより、簡易な構成で段板200への荷重に対する強度を向上した階段1とすることができる。
【0063】
なお、本実施形態に係る階段1は、建築資材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る炭素繊維複合材料層120は、複合材料部分の実施の一形態である。
【0064】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、本実施形態においては、段板200は上方に凸となるアーチ状に形成されるものとしたが、下方に凸となるアーチ状に形成されていてもよい。但し、強度向上及び利用者の使用感の観点から、段板200は上方に凸となるように形成されることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態においては、板材100(段板200)は複数の層が積み重なるようにして形成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の態様で形成することができる。また、炭素繊維複合材料層120は、これら複数の層の一部として形成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、炭素繊維複合材料で形成された部分が板材100(段板200)に含まれていればよい。また、炭素繊維複合材料層120は、平面視において板材100(段板200)の全域に広がるように形成されるものとしたが、板材100(段板200)の一部に広がるように形成されるものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、板材100(段板200)は、当該板材100(段板200)を構成する複数の層のうちの2つの層が炭素繊維複合材料層120であるものとしたが、複数の層のうちの少なくとも1つの層が炭素繊維複合材料層120であればよく、例えば1つの層が炭素繊維複合材料層120であるものであってもよく、3つ以上の層が炭素繊維複合材料層120であるものであってもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、炭素繊維複合材料層120は、上面100a近傍及び下面100b近傍にそれぞれ形成されるものとしたが、板材100(段板200)の厚さ方向の炭素繊維複合材料層120の位置はこれに限定されるものではない。但し、強度向上の観点から、炭素繊維複合材料層120は引張り荷重が加わる部分に、中でも引張り量が大きい部分に設けられることが好ましい。
【0069】
また、本実施形態においては、段板200の上面100aは、側面視においてアーチ状に形成されるものとしたが、正面視においてアーチ状に形成されるものであってもよい。但し、利用者の使用感を考慮すると、側面視においてアーチ状に形成されることが好ましい。
【0070】
また、本実施形態においては、階段1は左右の側板10等によって段板200が支持されるように構成されるものとしたが、階段1の全体的な構成はこれに限定されるものではない。例えば、図6に示す階段2のように、段板200の左右中央に設けられた力桁20によって、各段板200が下方から支持されるように形成されていてもよい。また、図7に示す階段3のように、段板200の後端部から上方に立ち上がるように形成された蹴込み板30が設けられていてもよい。
【0071】
また、本実施形態においては、板材100(段板200)は、一定の曲率半径Rを有する円弧状に形成されるものとしたが、アーチ状(円弧状だけでなく、楕円弧状、弓形状、放物線状等の形状や、これらにおいて中途に直線部分を含む形状、例えばコの字状も含むもの)であればよい。例えば、図8に示す階段4のように、段板200は、側面視において開口側を下方に向けた略コの字状(C字状)に形成されていてもよい。
【0072】
また、本実施形態においては、板材100(段板200)の上面100aの曲率半径Rは3000mm以下に設定されるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の値に設定することができる。但し、荷重に対する曲げ強度を考慮すると、曲率半径Rは3000mm以下に設定されることが好ましい。
【0073】
また、本実施形態においては、板材100(段板200)は主として木製材料(木製材料層110)によって構成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、主として他の材料で構成されるものであってもよい。
【0074】
また、本実施形態においては、炭素繊維複合材料層120は、母材が熱可塑性樹脂である炭素繊維複合材料によって形成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば母材が熱硬化性樹脂である炭素繊維複合材料によって形成されるものであってもよい。
【0075】
また、図9に示す階段5のように、段板200の天端が平らになるように、調整板210が設けられていてもよい。調整板210は、段板200の上面100aを覆うように、当該上面100aに載置される。調整板210は、例えば複数の層により形成され、最上面が平らとなるように形成される。
【0076】
次に、図10を用いて、第二実施形態に係る階段6について説明する。
【0077】
第一実施形態に係る階段1においては、段板200の上面100aは、前側(段鼻側)の端部と後側(蹴込み側)の端部とが同じ高さとなるように設けられているが、第二実施形態に係る階段6においては、図10(a)に示すように、段板200の上面100aの前側(段鼻側)の端部が後側(蹴込み側)の端部よりも高くなるように設けられている。具体的には、図10(b)に示すように、段板200は、その上面100aの前側(段鼻側)の端部と後側(蹴込み側)の端部とを結ぶ線と、水平面とがなす角度(以下、「傾斜角度」という)が、0°を超える任意の値に設定される。本実施形態においては、傾斜角度は4°とされる。
【0078】
このように段板200が傾けられた状態で設けられることで、利用者は昇降の際に自然とやや前傾姿勢となり易いため、利用者に与える恐怖感(落下するのではないかという恐れ)を低減させることができる。すなわち、利用者に安心感を与えることができる。
【0079】
図11は、利用者の階段の昇り降りの際の使用感に関する評価の試験結果を示すものである。なお、「使用感」には、利用者の足裏へのフィット感や、踏み心地のよさについての感じ方、利用者に与える安心感が含まれる。使用する階段は、段板200の上面100aの曲率半径Rが「R800」、「R1500」及び「R3000」であって、傾斜角度が「0°」、「4°」及び「8°」であるものを使用した。7人の被験者には、使用感を、「大変良い」、「良い」、「普通」、「悪い」、「大変悪い」、の5段階のランク付により、評価をお願いした。
【0080】
まず、曲率半径Rの違いによる評価の差異に着目する。図11に示す試験結果によれば、傾斜角度0°同士で比較すると、R3000は良い評価(「大変良い」及び「良い」)が1人、悪い評価(「悪い」及び「大変悪い」)が0人であり、R1500は良い評価が3人、悪い評価が1人であり、R800は良い評価が3人、悪い評価が4人である。平均値をみると、R1500の値が最も高く、R800の値が最も低いことがわかる。
【0081】
また、傾斜角度4°同士で比較すると、R3000は良い評価が1人、悪い評価が1人であり、R1500は良い評価が3人、悪い評価が2人であり、R800は良い評価が1人、悪い評価が5人である。平均値をみると、R1500の値が最も高く、R800の値が最も低いことがわかる。
【0082】
以上のことから、使用感の観点でみると、段板200の上面100aの曲率半径Rは1500mm以上とすることが好ましい。これは、段板200の上面100aを曲率半径R1500mm以上の円弧状とすることにより、利用者の足裏へのフィット感や、踏み心地のよさが向上するからであると考えられる。また、前述の如く、曲率半径Rが小さいほど荷重に対する曲げ強度は向上する。したがって、荷重に対する曲げ強度及び使用感の両方を考慮するならば、曲率半径Rは1500mmとすることが最も好ましい。
【0083】
次に、傾斜角度の違いによる評価の差異に着目する。図11に示す試験結果によれば、傾斜角度が8°のものよりも傾斜角度が0°及び4°のものの方が平均値が高いという結果が得られた。また、評価が高かったR1500同士で比較した場合、平均値をみると、傾斜角度4°の値が最も高い結果が得られた。
【0084】
以上のことから、傾斜角度は4°以下とすることが好ましい。これは、段板200の上面100aの前側(段鼻側)の端部が後側(蹴込み側)の端部よりも高くなるように、段板200を4°以下の傾斜角度で傾斜させることにより、利用者に安心感を与えることができ、一方、傾斜角度が4°を超えると、角度が急過ぎて逆に利用者に恐怖感を与えるおそれがあるからであると考えられる。
【0085】
以上の如く、第二実施形態に係る階段6において、前記段板200は、当該段板200の上面の段鼻側の端部が蹴込み側の端部よりも高くなるように設けられているものである。
このように構成することにより、使用感を向上させることができる。
【0086】
また、前記段板200は、前記段鼻側の端部が前記蹴込み側の端部よりも高くなるように、前記段鼻側の端部と前記蹴込み側の端部とが同じ高さにある場合を基準として、前後方向に4°以下傾けられているものである。
このように構成することにより、使用感をより向上させることができる。
【0087】
以上、本発明の第一実施形態及び第二実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0088】
例えば、第一実施形態及び第二実施形態においては、本発明に係る建築資材は、階段(階段1、階段2、階段3、階段4、階段5又は階段6)であるものとしたが、これに限定されるものではなく、建材、家具、建具など建物内で用いられる可能性のあるあらゆる物とすることができる。本発明に係る建築資材は、例えば、図12に示す棚7であってもよい。以下、棚7について説明する。
【0089】
図12(a)に示す棚7は、本などの物を載せる又は収容するものである。棚7は、側板51、天板52及び底板53を具備する。
【0090】
側板51は、棚7の左右側面部を構成するものである。側板51は、板状に形成され、板面を左右方向に向けた状態で棚7の左右端部に設けられる。
【0091】
天板52及び底板53はそれぞれ、棚7の上部(天井部)及び下部(底部)を構成するものである。天板52及び底板53は、板材100によって形成される。すなわち、天板52及び底板53は、図12(b)に示すように、炭素繊維複合材料層120を含み、かつ、側面視において上方に凸となるアーチ状に形成される。
【0092】
このように天板52及び底板53が、炭素繊維複合材料層120を含み、かつ、上方に凸となるアーチ状に形成されることにより、天板52や底板53に物が置かれた場合等の荷重に対する曲げ強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0093】
1、2、3、4、5、6 階段
7 棚
100 板材
100a 上面
100b 下面
120 炭素繊維複合材料層
200 段板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12