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特許7256618転写フィルム付電磁波シールドフィルム、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】転写フィルム付電磁波シールドフィルム、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20230405BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230405BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230405BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H05K9/00 R
B32B7/022
B32B7/025
H05K1/02 N
H05K1/02 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018160342
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020035858
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-07-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】梅村 滋和
【合議体】
【審判長】稲葉 和生
【審判官】中野 裕二
【審判官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-298285(JP,A)
【文献】特開2012-062351(JP,A)
【文献】特開2015-199878(JP,A)
【文献】特開2017-125184(JP,A)
【文献】特開2016-115725(JP,A)
【文献】特開2015-109404(JP,A)
【文献】糸賀正明ほか3名、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社、平成元年12月22日、694-700ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/02
B32B 7/022-7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写フィルムと、
前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波シールドフィルムは、前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層されたシールド層と、前記シールド層に積層された、接着剤層とを含み、
前記転写フィルムのヤング率は、3.6GPa以上、4.5GPa以下であり、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記接着剤層は、導電性を有する請求項1に記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記シールド層は、金属層からなる請求項1又は2に記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記シールド層は、導電性樹脂からなる請求項1又は2に記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
転写フィルムと、
前記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波シールドフィルムは、前記転写フィルムに積層されるように位置する保護層と、前記保護層に積層された導電性を有する接着剤層とを含み、
前記転写フィルムのヤング率は、3.6GPa以上、4.5GPa以下であり、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
ヤング率が3.6GPa以上、4.5GPa以下である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、
前記転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項7】
ヤング率が3.6GPa以上、4.5GPa以下である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、
前記転写フィルムに保護層、導電性樹脂からなり電磁波シールド機能を有する接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含み、
前記転写フィルムの厚さは、20~100μmであり、
前記保護層の厚さは、1~15μmであり、
前記接着剤層の厚さは、1~50μmであることを特徴とする転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項8】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの上に形成されたグランド回路を含むプリント回路と、前記プリント回路を覆うカバーレイとを含むプリント配線板を準備するプリント配線板準備工程と、
請求項1~5のいずれかに記載の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを準備する転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程と、
前記転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層を、前記プリント配線板の前記カバーレイに接触するように配置し、前記転写フィルム付電磁波シールドフィルムを前記プリント配線板に圧着する圧着工程と、
前記転写フィルム付電磁波シールドフィルムから転写フィルムを剥離する剥離工程とを含み、
前記接着剤層と接触する前記カバーレイの表面には段差があることを特徴とするシールドプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
前記段差は、前記グランド回路を露出する孔であり、
前記接着剤層は、導電性を有する請求項8に記載のシールドプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フィルム付電磁波シールドフィルム、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法及びシールドプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、小型化、高機能化が急速に進む携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、複雑な機構の中に回路を組み込むために多用されている。さらに、その優れた可撓性を生かして、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるフレキシブルプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したフレキシブルプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられるようになってきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、プリント回路を含む基体フィルム上に、電磁波シールドフィルムを被覆するシールドプリント配線板の製造方法が開示されている。
特許文献1に記載のシールドプリント配線板の製造方法では、電磁波シールドフィルムを被覆するに際し、カバーフィルム(保護層)の片面にシールド層及び導電性接着剤層(接着剤層)を設け、他面に剥離可能な粘着性を有する粘着性フィルム(転写フィルム)を貼り合わせて補強シールドフィルム(転写フィルム付電磁波シールドフィルム)を形成し、基体フィルム上に導電性接着剤層が当接するように補強シールドフィルムを載置し、加熱・加圧して接着させた後、前記粘着性フィルムを剥離するシールドプリント配線板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-269632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、電磁波シールドフィルムは、電磁波シールドフィルムの接着剤層を介してプリント配線板に貼付されることになる。
接着剤層と接するプリント配線板の表面は、通常、平坦では無く段差がある。
接着剤層は可塑性を有するので、プリント配線板の表面の段差をある程度埋めることができるが、完全に埋めきることができず、隙間が生じることがあった。
このような隙間は種々の不具合の原因となる。
【0006】
このような不具合の一例として、プリント配線板のグランド回路と、外部グランドとを電磁波シールドフィルムを介して接続する場合を以下に説明する。
プリント配線板は、基本構造として、ベースフィルムと、ベースフィルム上に形成されたグランド回路を含むプリント回路と、プリント回路を覆うカバーレイとを有する。
グランド回路を外部グランドと電気的に接続させるために、グランド回路の上に位置するカバーレイには、グランド回路を露出する孔が形成されることがある。このグランド回路を露出する孔は、プリント配線板の表面の段差となる。
上記の通り、電磁波シールドフィルムは、電磁波シールドフィルムの接着剤層を介してプリント配線板に貼付されることになる。なおこの場合、グランド回路を外部グランドと電気的に接続させるために、電磁波シールドフィルムの接着剤層には導電性を有する接着剤層が用いられることになる。
電磁波シールドフィルムが、プリント配線板に貼付される場合、電磁波シールドフィルムの接着剤層は、変形又は流動して、グランド回路を露出する孔(すなわち、プリント配線板の表面の段差)を埋めることになる。
ただ、グランド回路を露出する孔の径が小さいと、電磁波シールドフィルムの接着剤層がグランド回路を露出する孔を充分に埋めることができず、グランド回路と、電磁波シールドフィルムの接着剤層とが充分に接触できなくなることがある。このような場合、接続抵抗が上昇してしまうという不具合が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シールドプリント配線板を製造する際に、電磁波シールドフィルムの接着剤層とプリント配線板の表面との間に隙間を生じにくくさせることができる転写フィルム付電磁波シールドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムは、
転写フィルムと、上記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
上記電磁波シールドフィルムは、上記転写フィルムに接触する保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された、接着剤層とを含み、
上記転写フィルムのヤング率は、2.0GPa以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになる。
この際、転写フィルムのヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルムは充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができる。
【0010】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムでは、上記接着剤層は、導電性を有していてもよい。
通常、プリント配線板のプリント回路には、グランド回路も設けられる。本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層が、導電性を有する場合、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させるように電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置することにより、これらが電気的に接続する。さらに、電磁波シールドフィルムの接着剤層と外部グランドとを電気的に接続させることにより、グランド回路と外部グランドとを電気的に接続させることができる。
なお、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させる場合、グランド回路の上に位置するカバーレイには、グランド回路を露出する孔(すなわち、プリント配線板の表面の段差)が形成されることになる。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いると、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路とをしっかり接触させることができるので、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路との間の接続抵抗が上昇することを防ぐことができる。
【0011】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムでは、上記シールド層は、金属層からなっていてもよい。
また、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムでは、上記シールド層は、導電性樹脂からなっていてもよい。
このように、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムでは、電磁波をシールドすることができればシールド層の材料は特に限定されない。
【0012】
別の本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムは、
転写フィルムと、上記転写フィルムに積層された電磁波シールドフィルムとからなる転写フィルム付電磁波シールドフィルムであって、
上記電磁波シールドフィルムは、上記転写フィルムに接触する保護層と、上記保護層に積層された導電性を有する接着剤層とを含み、
上記転写フィルムのヤング率は、2.0GPa以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムでは、転写フィルムのヤング率が2.0GPa以上である。すなわち、転写フィルムは充分に硬い。従って、プリント配線板に電磁波シールドフィルムを圧着する際に、圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができる。
なお、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムにおいて、導電性を有する接着剤層は、電磁波シールド機能、及び、プリント配線板との接着機能の両方を有する。
【0014】
また、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させる場合、グランド回路の上に位置するカバーレイには、グランド回路を露出する孔(すなわち、プリント配線板の表面の段差)が形成されることになる。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いると、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路とをしっかり接触させることができるので、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路との間の接続抵抗が上昇することを防ぐことができる。
【0015】
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、上記転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含むことを特徴とする。
また、別の本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備する転写フィルム準備工程と、上記転写フィルムに保護層、導電性樹脂からなり電磁波シールド機能を有する接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する電磁波シールドフィルム形成工程とを含むことを特徴とする。
このような方法により、上記本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを製造することができる。
【0016】
本発明のシールドプリント配線板の製造方法は、
ベースフィルムと、上記ベースフィルムの上に形成されたグランド回路を含むプリント回路と、上記プリント回路を覆うカバーレイとを含むプリント配線板を準備するプリント配線板準備工程と、
上記本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを準備する転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程と、
上記転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層を、上記プリント配線板の上記カバーレイに接触するように配置し、上記転写フィルム付電磁波シールドフィルムを上記プリント配線板に圧着する圧着工程と、
上記転写フィルム付電磁波シールドフィルムから転写フィルムを剥離する剥離工程とを含み、
上記接着剤層と接触する上記カバーレイの表面には段差があることを特徴とする。
【0017】
上記の通り本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムのヤング率は、2.0GPa以上であり充分に硬い。
そのため、プリント配線板のカバーレイの表面に段差がある場合でも、電磁波シールドフィルムの接着剤層をしっかりと圧すことができ、接着剤層が段差をしっかりと埋めることができる。
【0018】
本発明のシールドプリント配線板の製造方法では、上記段差は、上記グランド回路を露出する孔であり、上記接着剤層は、導電性を有することが望ましい。
上記の通り本発明のシールドプリント配線板の製造方法は、接着剤層が段差をしっかり埋めることができる。
特に、段差がグランド回路を露出する孔であり、接着剤層が導電性を有する場合、接着剤層をしっかりとグランド回路に接触させることができる。
そのため接続抵抗が上昇することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法のプリント配線板準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法の転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法の圧着工程の一例を模式的に示す工程図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法の剥離工程の一例を模式的に示す工程図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図7図7(a)及び(b)は、実施例1に係る評価用基板の作製方法を模式的に示す工程図である。
図8図8は、接続抵抗試験における実施例1-1に係る評価用基板の接続抵抗の測定方法を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムについて図面を用いながら詳述する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、転写フィルム20と、転写フィルム20に積層された電磁波シールドフィルム30とからなる。
また、電磁波シールドフィルム30は、転写フィルム20に接触する保護層31と、保護層31に積層されたシールド層32と、シールド層32に積層された、接着剤層33とを含む。
【0023】
そして、転写フィルム20のヤング率は2.0GPa以上である。
なお、転写フィルム20のヤング率の下限は2.5GPaであることが望ましく、2.7であることがより望ましい。
また、転写フィルム20のヤング率の上限は5.0GPaであることが望ましく、4.5であることがより望ましい。
転写フィルムのヤング率が5.0GPaを超えると、転写フィルム付電磁波シールドフィルムをプリント配線板に貼付する際、段差追随性が低下しやすくなる。
【0024】
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用される。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10の接着剤層33を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになる。
この際、転写フィルム20のヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルム20は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム30の接着剤層33をしっかりと圧すことができ、接着剤層33が段差をしっかりと埋めることができる。
【0025】
次に、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10を形成する各層の構成について説明する。
【0026】
(転写フィルム)
転写フィルムの材料としては、転写フィルムのヤング率が2.0GPa以上となれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリブテン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル等のプラスチックシート等、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、コート紙等の紙類、各種の不織布、合成紙、金属層や、これらを組み合わせた複合フィルムなどが挙げられる。
また、転写フィルムは熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂が望ましい。熱可塑性樹脂であると、転写フィルム付電磁波シールドフィルムが、プリント配線板の段差に追随しやすくなる。
転写フィルムは片面又は両面に離型処理をされたフィルムであってもよく、離型処理方法としては、離型剤をフィルムの片面又は両面に塗布したり、物理的にマット化処理する方法が挙げられる。
【0027】
また、転写フィルムがプラスチックシートからなる場合、ヤング率の調整のために、酸化チタンやシリカ等の無機粒子や、コアシェル構造を有する有機物粒子等が含まれていてもよい。
【0028】
転写フィルムの厚さは、10~150μmであることが望ましく、20~100μmであることがより望ましく、さらに望ましくは40~60μmである。
転写フィルムの厚さが、10μm未満であると、シールドプリント配線板の製造時に、転写フィルムが破断して電磁波シールドフィルムから剥離しにくくなる。
転写フィルムの厚さが、150μmを超えると、扱いにくくなる。
【0029】
転写フィルムと保護層との間には転写フィルム用粘着剤層が設けられていてもよい。この場合転写フィルムは転写フィルム用粘着剤層により貼り合わせられた状態となる。転写フィルムは電磁波シールドフィルムの使用時には電磁波シールドフィルムから容易に剥離することができる必要があり、転写フィルム用粘着剤層は転写フィルムの剥離時に転写フィルム側に残るようにすることが望ましい。
【0030】
(保護層)
保護層は、絶縁性を有し、接着剤層及びシールド層を保護できれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等から構成されていることが望ましい。
【0031】
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0032】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、ウレタンウレア系樹脂組成物、スチレン系樹脂組成物、フェノール系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物及びアルキッド系樹脂組成物からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂組成物が挙げられる。
【0033】
上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0034】
保護層は、1種単独の材料から構成されていてもよく、2種以上の材料から構成されていてもよい。
【0035】
保護層には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0036】
保護層の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが望ましく、3~10μmであることがより望ましい。
保護層の厚さが1μm未満であると、薄すぎるので接着剤層及びシールド層を充分に保護しにくくなる。
保護層の厚さが15μmを超えると、厚すぎるので電磁波シールドフィルムが折り曲がりにくくなり、また、保護層自身が破損しやすくなる。そのため、耐折り曲げ性が要求される部材へ適用しにくくなる。
【0037】
保護層とシールド層との間にはアンカーコート層が形成されていてもよい。
アンカーコート層の材料としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂をシェルとしアクリル樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0038】
(シールド層)
図1における転写フィルム付電磁波シールドフィルム10においてシールド層32は、金属層からなっていてもよく、導電性樹脂からなっていてもよい。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10では、電磁波をシールドすることができればシールド層の材料は特に限定されない。
【0039】
シールド層が金属層からなる場合、金属層としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、パラジウム、クロム、チタン、亜鉛等の材料からなる層を含んでいてもよく、銅層を含むことが望ましい。
銅は、導電性及び経済性の観点からシールド層にとって好適な材料である。
【0040】
なお、シールド層は、上記金属の合金からなる層を含んでいてもよい。
また、シールド層としては金属箔を用いてもよく、スパッタリングや無電解めっき、電解めっき等の方法で形成された金属膜であってもよい。
【0041】
シールド層が導電性樹脂からなる場合、シールド層は、導電性粒子と樹脂から構成されていてもよい。
【0042】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0043】
導電性粒子が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが望ましい。
【0044】
導電性粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが望ましい。導電性粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると、導電性樹脂の導電性が良好となる。導電性粒子の平均粒子径が15.0μm以下であると、導電性樹脂を薄くすることができる。
【0045】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0046】
導電性粒子の配合量は、特に限定されないが、15~80質量%であることが望ましく、15~60質量%であることがより望ましい。
【0047】
樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0048】
(接着剤層)
接着剤層は、熱硬化性樹脂からなっていてもよく、熱可塑性樹脂からなっていてもよい。
【0049】
熱可硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びアルキッド系樹脂等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、及びアクリル系樹脂が挙げられる。
また、エポキシ系樹脂としては、アミド変性エポキシ樹脂であることがより望ましい。
これらの樹脂は、接着剤層を構成する樹脂として適している。
【0050】
接着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~50μmであることが望ましく、3~30μmであることがより望ましい。
接着剤層の厚さが1μm未満であると、接着剤層を構成する樹脂の量が少ないため、充分な接着性能が得られにくい。また、破損しやすくなる。
接着剤層の厚さが50μmを超えると、全体が厚くなり、柔軟性が失われやすい。
【0051】
接着剤層は、導電性を有していてもよい。
通常、プリント配線板のプリント回路には、グランド回路も設けられる。本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層が、導電性を有する場合、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させるように電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置することにより、これらが電気的に接続する。さらに、電磁波シールドフィルムの接着剤層と外部グランドとを電気的に接続させることにより、グランド回路と外部グランドとを電気的に接続させることができる。
なお、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させる場合、グランド回路の上に位置するカバーレイには、グランド回路を露出する孔(すなわち、プリント配線板の表面の段差)が形成されることになる。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いると、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路とをしっかり接触させることができるので、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路との間の接続抵抗が上昇することを防ぐことができる。
【0052】
接着剤層が、導電性を有する場合、接着剤層は、導電性粒子と、樹脂とから構成されていてもよい。
【0053】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0054】
導電性粒子が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが望ましい。
【0055】
導電性粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが望ましい。導電性粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると、導電性の接着剤層の導電性が良好となる。導電性粒子の平均粒子径が15.0μm以下であると、導電性の接着剤層を薄くすることができる。
【0056】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0057】
導電性粒子の配合量は、特に限定されないが、15~80質量%であることが望ましく、15~60質量%であることがより望ましい。
【0058】
樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0059】
また、接着剤層が導電性を有する場合は、異方導電性を有することが望ましい。
接着剤層が異方導電性を有すると、等方導電性を有する場合に比べて、プリント配線板のプリント回路で伝送される高周波信号の伝送特性が向上する。
【0060】
次に、本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法について説明する。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、(1)転写フィルム準備工程と、(2)電磁波シールドフィルム形成工程とを含む。
【0061】
(1)転写フィルム準備工程
本工程では、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備する。
転写フィルムの材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0062】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
次に、転写フィルムに保護層、シールド層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する。
これらを積層する方法としては、従来の電磁波シールドフィルムを製造する方法と同様の方法を用いることができる。
例えば、転写フィルムに保護層及びシールド層を形成し、別の剥離フィルムに接着剤層を形成し、これらを貼り合わせることにより、転写フィルム付電磁波シールドフィルムを作製してもよい。
なお、保護層、シールド層及び接着剤層の材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0063】
以上の工程により本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを製造することができる。
【0064】
次に、本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いたシールドプリント配線板の製造方法について説明する。
本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法は、(1)プリント配線板準備工程と、(2)転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程と、(3)圧着工程と、(4)剥離工程とを含む。
【0065】
これらの各工程について図面を用いて以下に詳述する。
図2は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法のプリント配線板準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法の転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
図4は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法の圧着工程の一例を模式的に示す工程図である。
図5は、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法の剥離工程の一例を模式的に示す工程図である。
【0066】
(1)プリント配線板準備工程
まず、図2に示すように、ベースフィルム51と、ベースフィルム51の上に形成されたグランド回路52aを含むプリント回路52と、プリント回路52を覆うカバーレイ53とを含むプリント配線板50を準備する。
プリント配線板50では、カバーレイ53に、グランド回路52aを露出する孔54が形成されており、孔54が段差となっている。
【0067】
ベースフィルム51、プリント回路52及びカバーレイ53は、従来のプリント配線板で使用されるものと同じであってもよい。
【0068】
(2)転写フィルム付電磁波シールドフィルム準備工程
次に、図3に示すように、上記本発明の第1実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルム10を準備する。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム10は、転写フィルム20と、転写フィルム20に積層された電磁波シールドフィルム30とからなる。
また、電磁波シールドフィルム30は、転写フィルム20に接触する保護層31と、保護層31に積層されたシールド層32と、シールド層32に積層された、接着剤層33とを含む。
そして、接着剤層33は導電性を有する。
【0069】
(3)圧着工程
次に、図4に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10の接着剤層33を、プリント配線板50のカバーレイ53に接触するように配置し、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10をプリント配線板50に圧着する。
【0070】
この際、接着剤層33は、可撓性を有するので、孔54を埋めることになる。
転写フィルム20のヤング率は2.0GPa以上であるので、プリント配線板50に電磁波シールドフィルム30を圧着する際に、圧力が分散しにくくなる。
そのため、電磁波シールドフィルム30の接着剤層33をしっかりと圧すことができ、接着剤層33が孔54をしっかりと埋めることができる。
したがって、接着剤層33とグランド回路52aとがしっかりと接触することになる。
【0071】
また、接着剤層33が導電性を有するので、グランド回路52aと接着剤層33とが電気的に接続可能となる。
上記の通り、接着剤層33とグランド回路52aとはしっかり接触しているので接続抵抗が低い状態となる。
【0072】
また、シールドプリント配線板の製造後において、電磁波シールドフィルムの接着剤層と外部グランドとを電気的に接続させることにより、グランド回路と外部グランドとを電気的に接続させることができる。
【0073】
本工程における圧着時の条件は特に限定されないが、例えば、圧力:1.0~5.0MPa、温度:140~190℃、時間:15~90分の条件が望ましい。
【0074】
(4)剥離工程
次に、図5に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10から転写フィルム20を剥離する。
剥離方法は、特に限定されず、従来の方法を採用することができる。
【0075】
以上の工程を経て、シールドプリント配線板60を製造することができる。
【0076】
上記、本発明の第1実施形態に係るシールドプリント配線板の製造方法では、カバーレイ53に段差として孔54が形成されていたが、本発明のシールドプリント配線板の製造方法では、カバーレイには、単なる段差が形成されていてもよい。また、この場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層は導電性を有してなくてもよい。
【0077】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムについて図面を用いながら詳述する。
【0078】
図6は、本発明の第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110は、転写フィルム120と、転写フィルム120に積層された電磁波シールドフィルム130とからなる。
また、電磁波シールドフィルム130は、転写フィルム120に接触する保護層131と、保護層131に積層された導電性を有する接着剤層133と含む。
【0079】
そして、転写フィルム120のヤング率は、2.0GPa以上である。
なお、転写フィルム120のヤング率の下限は2.5GPaであることが望ましく、2.7GPaであることがより望ましい。
また、転写フィルム120のヤング率の上限は5.0GPaであることが望ましく、4.5GPaであることがより望ましい。
転写フィルムのヤング率が5.0GPaを超えると、転写フィルム付電磁波シールドフィルムをプリント配線板に貼付する際、段差追随性が低下しやすくなる。
【0080】
転写フィルム付電磁波シールドフィルム110は、プリント配線板に貼付されてシールドプリント配線板を製造するために使用される。
転写フィルム付電磁波シールドフィルム110を用いてシールドプリント配線板を製造する場合、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110の接着剤層133を、プリント配線板の表面に当接し、圧着することになる。
この際、転写フィルム120のヤング率が2.0GPa以上であると、転写フィルム120は充分に硬いので、圧着の圧力が分散しにくくなる。
そのため、プリント配線板の表面に段差がある場合であったとしても、電磁波シールドフィルム130の接着剤層133をしっかりと圧すことができ、接着剤層133が段差をしっかりと埋めることができる。
【0081】
なお、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110において、接着剤層133は導電性を有し、電磁波シールド機能も有する。
すなわち、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110では、接着剤層133は、電磁波シールド機能、及び、プリント配線板との接着機能の両方を有する。
【0082】
通常、プリント配線板のプリント回路には、グランド回路も設けられる。転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層は導電性を有するので、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させるように電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置することにより、これらが電気的に接続する。さらに、電磁波シールドフィルムの接着剤層と外部グランドとを電気的に接続させることにより、グランド回路と外部グランドとを電気的に接続させることができる。
なお、電磁波シールドフィルムの接着剤層をグランド回路と接触させる場合、グランド回路の上に位置するカバーレイには、グランド回路を露出する孔(すなわち、プリント配線板の表面の段差)が形成されることになる。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いると、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路とをしっかり接触させることができるので、電磁波シールドフィルムの接着剤層と、グランド回路との間の接続抵抗が上昇することを防ぐことができる。
【0083】
接着剤層133は、導電性粒子と、樹脂とから構成されていてもよい。
【0084】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0085】
導電性粒子が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが望ましい。
【0086】
導電性粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが望ましい。導電性粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると、導電性の接着剤層の導電性が良好となる。導電性粒子の平均粒子径が15.0μm以下であると、導電性の接着剤層を薄くすることができる。
【0087】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0088】
導電性粒子の配合量は、特に限定されないが、15~80質量%であることが望ましく、15~60質量%であることがより望ましい。
【0089】
樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0090】
なお、転写フィルム付電磁波シールドフィルム110の転写フィルム120、保護層131の望ましい材料等は、転写フィルム付電磁波シールドフィルム10の転写フィルム20、保護層31の望ましい材料等と同じであるのでここでの説明は省略する。
【0091】
次に、本発明の第2実施形態に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法について説明する。
本発明の転写フィルム付電磁波シールドフィルムの製造方法は、(1)転写フィルム準備工程と、(2)電磁波シールドフィルム形成工程とを含む。
【0092】
(1)転写フィルム準備工程
本工程では、ヤング率が2.0GPa以上である転写フィルムを準備する転写フィルムの材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【0093】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
次に、転写フィルムに保護層、及び、接着剤層を順次積層して電磁波シールドフィルムを形成する。
これらを積層する方法としては、従来の電磁波シールドフィルムを製造する方法と同様の方法を用いることができる。
また、これらの材料等は既に説明しているので、ここでの説明は省略する。
【実施例
【0094】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
(実施例1-1~1-3)及び(比較例1-1)
(1)転写フィルム準備工程
表1に示すヤング率を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる転写フィルム(実施例1-1~1-3)及び厚さ50μmのポリメチルペンテンからなる転写フィルム(比較例1-1)を準備した。なお、ヤング率は、引張試験機(島津製作所(株)製、商品名AGS-X50S)用い、JIS K 7113-1995に準拠して、25℃において測定した値である。
【0096】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
転写フィルムの表面に離型剤を塗布し加熱乾燥して離型剤層を形成した。保護層用組成物としてエポキシ系樹脂を準備し、離型剤層の表面に、当該エポキシ系樹脂を、ワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、厚さ5μmの保護層を形成した。
次に、保護層の表面に厚さ0.1μmの銀からなるシールド層を、真空蒸着にて形成した。
次に、エポキシ系樹脂に、導電性フィラーとして平均粒子径5μmの樹枝状銀被覆銅粉を15質量%となるように添加して接着剤層用組成物を準備した。そして、シールド層の上に当該接着剤層用組成物をワイヤーバーにより塗布した後、100℃×3分の乾燥を行い、厚さ15μmの異方導電性を有する接着剤層を形成した。
以上の工程を経て、実施例1-1~1-3及び比較例1-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを作製した。
【0097】
(実施例2-1~2-3)及び(比較例2-1)
(1)転写フィルム準備工程
表2に示すヤング率を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる転写フィルム(実施例2-1~2-3)及び厚さ50μmのポリメチルペンテンからなる転写フィルム(比較例2-1)を準備した。なお、ヤング率は、引張試験機(島津製作所(株)製、商品名AGS-X50S)用い、JIS K 7113-1995に準拠して、25℃において測定した値である。
【0098】
(2)電磁波シールドフィルム形成工程
転写フィルムの表面に離型剤を塗布した。保護層用組成物としてエポキシ系樹脂を準備し、離型剤を塗布した転写フィルムの表面に、当該エポキシ系樹脂を、ワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、厚さ5μmの保護層を形成した。
次に、エポキシ系樹脂に、導電性フィラーとして平均粒子径5μmの樹枝状銀被覆銅粉を60質量%となるように添加した接着剤層用組成物を準備した。
そして、保護層の上に当該接着剤層用組成物をワイヤーバーにより塗布した後、100℃×3分の乾燥を行い、厚さ15μmの等方導電性を有する接着剤層を形成した。
以上の工程を経て、実施例2-1~2-3及び比較例2-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを作製した。
なお、実施例2-1~2-3及び比較例2-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムにおいて、導電性を有する接着剤層は、電磁波シールド機能、及び、プリント配線板との接着機能の両方を有する。
【0099】
(評価用基板の作成)
図7(a)及び(b)は、実施例1に係る評価用基板の作製方法を模式的に示す工程図である。
まず、図7(a)に示すように、ポリイミドからなるベースフィルム251上に、表面の一部に金めっき層が設けられた銅箔からなる2つのプリント回路252を形成し、その上に、プリント回路を露出する孔254(直径0.5mm)を有するポリイミドフィルムからなるカバーレイ253(厚さ37.5μm)を形成することにより評価用基板として用いるプリント配線板250を作製した。
なお、プリント配線板250において、プリント回路252は、グランド回路を模したものである。
【0100】
次に、図7(b)に示すように、実施例1-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルム210の接着剤層233が、プリント配線板250のカバーレイ253に接触するように転写フィルム付電磁波シールドフィルム210をプリント配線板250に配置した。
次に、プレス機を用いて温度:170℃、時間3分、圧力:3.0MPaの条件で加熱加圧し、転写フィルム付電磁波シールドフィルムをプリント配線板に圧着した。
次に、転写フィルム220を剥離することにより実施例1に係る評価用基板を得た。
なお、図7(b)中、符号230は電磁波シールドフィルムを示し、符号231は保護層を示し、符号232はシールド層を示す。
【0101】
実施例1-2、1-3、2-1~2-3、並びに、比較例1-1及び比較例2-1に係る転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いた以外は、上記実施例1に係る評価用基板を得る方法と同様の方法で、実施例1-2、1-3及び2-1~2-3、並びに、比較例1-1及び比較例2-1に係る評価用基板を得た。
【0102】
(接続抵抗試験)
図8は、接続抵抗試験における実施例1-1に係る評価用基板の接続抵抗の測定方法を模式的に示す模式図である。
実施例1-1に係る評価用基板において、図8に示すように2つのプリント回路252間の電気抵抗値を抵抗計270で測定し、評価用基板のプリント回路と転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層との接続抵抗を評価した。
また、同様の方法で、実施例1-2、1-3及び2-1~2-3、並びに、比較例1-1及び2-1に係る評価用基板における評価用基板のプリント回路と転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層との接続抵抗を評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、実施例1-1~1-3、比較例1-1では接続抵抗が3000mΩ未満の場合を、実施例2-1~2-3、比較例2-1では接続抵抗が250mΩ未満の場合を、導電性に優れるものとして評価した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
表1及び2に示すように、実施例1-1~1-3及び実施例2-1~2-3の転写フィルム付電磁波シールドフィルムを用いた場合、接続抵抗が低い状態になることが判明した。
すなわち、実施例1-1~1-3及び実施例2-1~2-3では、転写フィルム付電磁波シールドフィルムの接着剤層と、評価用基板のプリント回路とがしっかりと接触していることが示された。
【符号の説明】
【0106】
10、110、210 転写フィルム付電磁波シールドフィルム
20、120、220 転写フィルム
30、130、230 電磁波シールドフィルム
31、131、231 保護層
32、232 シールド層
33、133、233 接着剤層
50、250 プリント配線板
51、251 ベースフィルム
52、252 プリント回路
52a グランド回路
53、253 カバーレイ
54、254 孔
60 シールドプリント配線板
270 抵抗計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8