(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】固定シンカーおよび横編機
(51)【国際特許分類】
D04B 15/06 20060101AFI20230405BHJP
D04B 15/10 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
D04B15/06 Z
D04B15/10 Z
(21)【出願番号】P 2018213493
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101638
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎
(72)【発明者】
【氏名】山野 浩稔
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-132026(JP,A)
【文献】特開2006-161230(JP,A)
【文献】特開2009-127185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B3/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯口を挟んで対向する少なくとも一対の針床を有する横編機で、針床に並ぶ編針間の歯口側先端に配置され、シンカーループ形成の機能を有する板状のシンカー本体を含む、横編機の固定シンカーにおいて、
シンカー本体の少なくとも一側面に、針床への配置状態で、上方の始端から下方の終端に向うように予め定められる変化方向に沿って増加するような、厚さについての傾斜が設けられ
、
前記傾斜が設けられるシンカー本体は、前記シンカーループ形成の機能で編糸が掛かる度決め部を、前記歯口に臨む先端側の前縁で、前記変化方向の前記始端よりも下方で、前記終端よりも上方に有する
ことを特徴とする固定シンカー。
【請求項2】
前記シンカー本体は、前記一側面の裏面側となる他側面にも、前記厚さについての傾斜が設けられる
ことを特徴とする請求項
1記載の固定シンカー。
【請求項3】
前記シンカー本体の前記一側面および前記他側面の両側面には、前記歯口に進出する前記編針の側面に向けて突出する支持突起が設けられ、
前記厚さについての傾斜は、支持突起を除く部分の両側面に設けられる
ことを特徴とする請求項
2記載の固定シンカー。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれかに記載の固定シンカーと、
歯口を挟んで対向する少なくとも一対の針床と、
歯口への進退、および歯口での上下動を行う編成部材と
を備え、
固定シンカーの板状のシンカー本体は、少なくとも一方の針床の歯口側先端に配置され、
編成部材は、少なくとも他方の針床の上方に設けられる
ことを特徴とする横編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機の針床の歯口側先端に設ける固定シンカー、およびそのような固定シンカーを備える横編機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横編機は、針床の長手方向に一定のピッチで並設される編針を有する。針床は、少なくとも二つが歯口の前後に対向するように配置される。各編針は、針床に設ける針溝に収容され、先端に設けるフックが歯口に進退するように駆動される。針床が歯口に臨む先端側の編針間には、独立した部材として板状のシンカーが配置される。編針の駆動は、先端のフックを歯口に進出させ、歯口上方からフックに編糸を供給してから、フックを針床に引込むように行う。シンカーは、編針を針床に引込む際に、フックで形成するニードルループとともにシンカーループを形成して、編目の大きさを決定する度決めを行うために使用される。針床の歯口側に装着されて不動の固定シンカーは、度決めの基本機能を有するとともに、固定シンカーの側面に突起を設ければ、編針の側方荷重に対する支持を行う機能を付加することもできる(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
度決め機能を有するシンカーとしては、歯口側の先端部分が揺動する可動シンカーも用いられる。可動シンカーの揺動する先端部分は、形成された編目を歯口下方に押込む機能を有する。可動シンカーと固定シンカーとを併用し、度決めを固定シンカーで行わせることもできる(たとえば特許文献2参照)。固定シンカーは、歯口側先端付近に設ける孔で天歯となる線材を支持し、新たな編目を形成する際に、旧編目のノックオーバーを安定させることもできる。
【0004】
特許文献2の横編機には、後針床の上方に設ける補助床から、前後の針床の固定シンカーと編針との間に進退するループプレッサーも設けられる。ループプレッサーは、編糸を編針のフックに案内したり、編成される編目を押えたりする機能を有する(たとえば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-161230号公報
【文献】特開2015-132026号公報
【文献】国際公開03/018892号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3のように、前後の両針床に設ける編針および固定シンカーとともに、一針床、たとえば後針床の上方に設けて併用されるループプレッサーは、良好な編目の形成を可能にする編成部材の一つであると考えられる。編成部材の機能は、種々考えられるけれども、前針床に対しては、歯口を挟んで対向する針床の上方から歯口に進出し、歯口で下降しながら固定シンカーの側面まで到達して機能を果す必要がある。各針床には、多くの編針が狭い隙間をあけて配設されるので、編成部材は、編針間の中央となる固定シンカーと編針との間の狭い隙間に侵入する必要がある。編成部材が対向する針床の上方から固定シンカーと編針との隙間に侵入する場合には、前後の針床間でのずれの影響も加わり、編成部材と固定シンカーとが衝突する可能性が生じる。このような編成部材の進退で、編成部材と固定シンカーとが衝突すると、固定シンカーや編成部材が変形したり、破損したりするおそれがある。
【0007】
横編機では、細い編糸を使用して細かい編目の編地を編成するために、編針を並設するピッチを細かくすることが要望されている。ピッチが細かくなると、編成部材を侵入させる固定シンカーと編針との間の隙間も狭くなり、前後の針床間のずれの許容範囲も狭くなって、前後の対向位置の調整が難しくなる。編成部材と固定シンカーとの衝突を避けるためには、編成部材や固定シンカーの板厚を薄くすることも考えられる。しかしながら、板厚を薄くすると、編成部材や固定シンカーは曲がりやすくなり、細くなった編糸は掛かって切れやすくなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、固定シンカーと編成部材とが衝突し難くなる固定シンカーおよび横編機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、歯口を挟んで対向する少なくとも一対の針床を有する横編機で、針床に並ぶ編針間の歯口側先端に配置され、シンカーループ形成の機能を有する板状のシンカー本体を含む、横編機の固定シンカーにおいて、
シンカー本体の少なくとも一側面に、針床への配置状態で、上方の始端から下方の終端に向うように予め定められる変化方向に沿って増加するような、厚さについての傾斜が設けられ、
前記傾斜が設けられるシンカー本体は、前記シンカーループ形成の機能で編糸が掛かる度決め部を、前記歯口に臨む先端側の前縁で、前記変化方向の前記始端よりも下方で、前記終端よりも上方に有する
ことを特徴とする固定シンカーである。
【0011】
また本発明の前記シンカー本体は、前記一側面の裏面側となる他側面にも、前記厚さについての傾斜が設けられる
ことを特徴とする。
【0012】
また本発明で、前記シンカー本体の前記一側面および前記他側面の両側面には、前記歯口に進出する前記編針の側面に向けて突出する支持突起が設けられ、
前記厚さについての傾斜は、支持突起を除く部分の両側面に設けられる
ことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記いずれかに記載の事項を特徴とする固定シンカーと、
歯口を挟んで対向する少なくとも一対の針床と、
歯口への進退、および歯口での上下動を行う編成部材と
を備え、
固定シンカーの板状のシンカー本体は、少なくとも一方の針床の歯口側先端に配置され、
編成部材は、少なくとも他方の針床の上方に設けられる
ことを特徴とする横編機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定シンカーは板状のシンカー本体を含む。シンカー本体は、横編機の針床の歯口側先端に配置され、少なくとも一側面では、上方の始端から下方の終端に向う変化方向に沿って厚さが増加する。対向する針床側から歯口に進出する編成部材は、シンカー本体の一側面と隣接する編針のフックとの間の隙間を、一側面の厚さの変化方向に沿って下降する状態となる。編成部材の隙間への下降が開始される上方の始端でシンカー本体の厚さが下方の終端に比べて薄くなるので、衝突し難くすることができる。シンカー本体は、変化方向に沿う傾斜で終端に向って厚さが増加するので、全体を始端の薄さにする場合に比較して、曲がり難くすることができる。
また、シンカー本体の前縁は、上方の始端で厚さが薄くなっても、編目形成の際にシンカーループが掛かる度決め部は始端から終端までの中間付近になるので、編糸が掛かる部分の厚さが薄くならないようにすることができる。
【0016】
また本発明によれば、板状のシンカー本体の他側面も変化方向に沿って上方の始端で薄く下方の終端で厚くなるので、前後に対向する両針床に配置し、部品として共用する場合に、厚さの傾斜を有効に利用することができる。上方に編成部材が設けられる針床側では、歯口に進出して下降する編成部材が通過する他側面の始端が薄くなるので、編成部材とシンカー本体とが衝突し難くすることができる。両方の針床で可動シンカーも併用する場合にも、可動シンカーが揺動する側面を編成部材が通過する側面の裏面側にして、薄くなる始端との隙間を増やして干渉し難くすることができる。
【0017】
また本発明によれば、歯口を挟んで対向する針床側から編成部材が進退する針床に配置する場合に、固定シンカーのシンカー本体は、編成部材の先端が支持突起に達するまで厚さが増大する一側面側の傾斜に沿って、編成部材を側方に侵入させることができる。支持突起は、一側面側を進退する編針が、侵入した編成部材に近づき過ぎないように側方を支持することができる。
【0018】
また本発明によれば、少なくとも一方の針床の歯口側先端に固定シンカーのシンカー本体を配置し、対向する他方の針床の上方に設けられる編成部材が歯口に進退し、歯口で上下動を行う際に、編成部材とシンカー本体とが衝突し難い横編機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例である固定シンカー1の構成を示す部分的な正面図および全体的な右側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の固定シンカー1を装着した横編機10の部分的な右側面断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の横編機10でのループプレッサー20の動作を示す部分的な右側面断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の横編機10での固定シンカー1やループプレッサー20の配置を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1から
図4で、本発明の一実施例である固定シンカー1の概略的な構成について説明する。説明の便宜上、説明対象の図には記載されていない部分について、他の図に記載される参照符を付して言及する場合がある。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の一実施例である固定シンカー1の構成を示す。(a)は、固定シンカー1で、シンカーループの形成などの機能を果すシンカー本体2の正面図であり、(b)は針床に装着される姿勢で示す固定シンカー1の全体的な右側面図である。シンカー本体2は、板状であり、横編機の針床の歯口側先端に配置され、シンカーループ形成の機能を有する。シンカー本体2の一側面2aに、針床への配置状態で、上方の始端2fから下方の終端2gに向うように予め定められる変化方向Dに沿って増加するような、厚さについての傾斜が設けられる。シンカー本体2で一側面2aの裏面側となる他側面2bにも、同様な傾斜が設けられる。本実施例では、シンカー本体2の両側面2a,2bで対称となるように厚さが増大する傾斜が設けられて、(a)に示す正面図でシンカー本体2はテーパー状になる。
【0022】
固定シンカー1で、シンカー本体2を除く他の部分は、厚さがシンカー本体2よりも大きくなって、支持突起3および装着アーム4となる。支持突起3は、固定シンカー1としての針床への装着時、歯口に進出する編針が側方荷重を受けて曲がろうとする際に、編針の側面に当って側方への撓みを阻止するように支持する。本実施例では、上下二段の針床を有する横編機に使用し、支持突起3は上段用部分3aおよび下段用部分3bを含む。支持突起3は、固定シンカー1の針床への装着時、シンカー本体2の歯口から離れる側に設けられる。シンカー本体2の歯口側は前縁2cとなり、前縁2cの上下中間付近の凹部は度決め部2dとなる。度決め部2dと終端2gとの中間付近に、貫通孔2eが設けられる。貫通孔2eは、天歯となるワイヤーを支持することができる。シンカー本体2および支持突起3の下部は、装着アーム4に続く。装着アーム4は、上端側に掛止め凹所4a、下端側に貫通孔4bを有する。
【0023】
(a)に示すように、シンカー本体2の板厚は、上方の始端2fでT1、始端2fから高さHだけ離れる下方の終端2gでT2となる。始端2fから終端2gに向う方向は、(b)に変化方向Dに沿う方向となる。変化方向Dは編成部材の侵入方向に関連し、侵入方向は
図3に関する説明で後述する。
【0024】
固定シンカー1を製造する際には、装着アーム4として必要な板厚の金属板を素材として使用し、支持突起3は板厚を減少させないで残して、シンカー本体2の部分の板厚を減少させるような加工を施す。この加工は、機械的な切削や研削で行うことが可能である。厚さ増大の傾斜は、一側面2aと他側面2bとで角度が異なるような非対称にしたり、角度が途中で変化したり、曲面にしたり、一側面2aのみに設けることもできる。
【0025】
シンカー本体2の厚さは、加工前の金属板の厚さの4分の1程度となる。金属板としては、たとえば1mm程度の厚さの鋼鉄板を使用することができる。厚さのテーパーは、たとえば始端2fでの厚さT1を0.26mm、終端2gでの厚さT2を0.30mm程度として形成する。高さHは、たとえば8mm程度とする。この場合、8mm進む間に0.04mmの厚さが増大するので、0.5%の傾斜が得られる。始端2fの厚さT1を小さくすれば、対向する針床から侵入する編成部材が衝突し難くなる。厚さT1が薄くなっても、始端2fから終端2gまでの途中に有する度決め部2dでの厚さは、始端2fよりも下方となるので、T1よりも厚くなる。終端2gの厚さT2をあまり薄くしなければ、編糸が掛かる度決め部2sの厚さが薄くならないようにすることができる。ただし、上方の始端2fで厚さT1が薄くなって鋭利になると、編糸が歯口で触れて損傷を受けるおそれが生じる。厚さT1,T2は、素材の金属板の板厚、編成部材が侵入して重複する程度等に応じて適宜決めればよい。
【0026】
図2は、
図1の固定シンカー1を装着した横編機10の部分的な構成を簡略化して示す。固定シンカー1は、シンカー本体2が前針床11と後針床12とで、対向する基板11a,12aの先端側に装着されるように、取付けられる。各針床11,12は、それぞれ上下二段ずつ設けられるけれども、上段側の針床は図示を省略する。固定シンカー1の取付けは、基板11a,12aの先端側に形成される溝に、装着アーム4を挿入して行う。装着アーム4の掛止め凹所4aと基板11a,12aとの間には掛止めワイヤー13を挿入し、図示を省略している下方の貫通孔4bには、基板11a,12aに設ける溝を通るワイヤーを貫通させる。前針床11および後針床12に装着された固定シンカー1は、前針床11と後針床12との間の間隙に形成される歯口14を挟んで対向する。
【0027】
前針床11と後針床12とは、図示を省略している上段側を含めて、基本的に同様な構成を有し、上下二段に編針15を備える。編針15は、先端のフック15aを歯口14に進退させるとともに、フック15aの開閉をスライダー15bで行う複合針を使用する。シンカーとして、固定シンカー1に加えて、可動シンカー16も使用する。編目形成時には、固定シンカー1のシンカー本体2に設ける貫通孔2eで支持する天歯用ワイヤー17を利用して、ノックオーバーを安定化させる。
【0028】
各針床11,12では、歯口14側に並ぶ固定シンカー1のシンカー本体2に対して、歯口14から離れる側にニードルプレートが並ぶように設けられ、ニードルプレート間に編針15を収容する針溝が形成される。ニードルプレートを歯口14側に延長して、先端にシンカー本体2を形成することもできる。上下二段に針床11,12を設ける場合、上段側の針床は、下段側の針床のニードルプレートの上方への延長上に載る。後針床12の上段側のニードルプレートは、上方へ延長され、ループプレッサー20を収容する補助床を支持する。前針床11に装着される固定シンカー1に対して、後針床12の上方からループプレッサー20の先端部21が、シンカー本体2の一側面2a側で重複するように侵入することができる。実線で示すループプレッサー20は、後針床12の上方で待機している状態を示す。ループプレッサー20は、たとえば特許文献3に開示されているように、図示を省略しているキャリッジに搭載されるカム機構で駆動されて、2点鎖線で示すように、上方で後針床12側から歯口14の中央付近に進出し、固定シンカー1のシンカー本体2に接近する。
【0029】
図3は、
図2の横編機10で、
図1(b)の変化方向Dに関連するループプレッサー20の動作を示す。
図2の2点鎖線で示す先端部21がさらに進出して、前針床11の固定シンカー1のシンカー本体2に掛かるようになる位置で、実線で示すように、先端部21は、シンカー本体2の一側面2a側と編針15のフック15aとの隙間を下降する。したがって、シンカー本体2とループプレッサー20の先端部21との重複部分での侵入方向は、
図1(b)に示す上下の変化方向Dに対応する。重複範囲へのループプレッサー20の進出が開始される上方の始端2fでシンカー本体2の厚さが下方の終端2fに比べて薄くなるので、機械的な干渉のおそれが低減され、衝突し難くすることができる。シンカー本体2は、一側面2aの裏面側となる他側面2bにも、厚さについての傾斜を設けることで、他側面2bと編針15のフック15aとの隙間に可動シンカー16を設ける場合に、隙間を増やして干渉し難くすることができる。また、固定シンカー1を後針床12に装着する場合に、ループプレッサー20が通過する他側面2bでも厚さについての傾斜を利用して、隙間を確保することができる。
【0030】
図4は、
図2の横編機10での固定シンカー1やループプレッサー20の配置を模式的に示す。
図2および
図3は、編針15が手前側で固定シンカー1が奥側となる位置から見た断面に相当する。固定シンカー1と編針15との間には、ループプレッサー20の先端部21が進退し、可動シンカー16が配置される。ループプレッサー20の先端部21は、前針床11ではシンカー本体2aの一側面2aと編針15のフック15aとの間の隙間Sに侵入し、後針床12では他側面2bとフック15aとの間に侵入する。また、前針床11ではシンカー本体2の他側面2b側、後針床12ではシンカー本体2の一表面2a側に、可動シンカー16がそれぞれ配置され、先端部分が歯口14で揺動する。揺動する先端部分の側方で、シンカー本体2の側面2a,2bの板厚が減少するので、隙間が確保され、揺動時の干渉を減らすことができる。
【0031】
シンカー本体2の両側面2a,2bには、歯口14に進出する編針15の側面に向けて突出する支持突起3が設けられる。ループプレッサー20は、先端部21が支持突起3に達するまで厚さが増大する一側面2a側の傾斜に沿って側方に侵入させることができる。支持突起3は、一側面2a側を進退する編針15が、侵入したループプレッサー20の先端部21に近づき過ぎないように側方を支持することができる。厚さについての傾斜は、支持突起3を除くシンカー本体2の両側面2a,2bに設けられるので、先端部21が侵入可能な範囲で有効に傾斜を設けることができる。
【0032】
本実施例では、前針床11と後針床12とを上下二段にしているけれども、両方とも一段、または片方が一段でもよい。なお、対向する針床の上方から侵入するループプレッサー20とシンカー本体2の始端2fとが衝突し難くするためには、侵入する一側面2a側のみに板厚が増大する傾斜を設ければよい。板厚の増大は、傾斜によって連続して行うので、段階的に行うような不連続な段部が生じず、ループプレッサー20が接触するような場合でも、円滑に侵入するように案内することができる。
【0033】
以上で説明した板厚の傾斜を設ける効果は、歯口14を挟む前後の針床の一方の上方のみに設ける補助床からループプレッサー20が侵入する場合ばかりではなく、両方の針床の上方からループプレッサー20をそれぞれ侵入させる場合も有効に得られる。編地の編成に寄与するようなループプレッサー20以外の編成部材が侵入する場合にも得られる。たとえば、本実施例では可動シンカー16で行っている編目を下方に押込む作用を、そのよう編成部材で行うようにしてもよい。また、新たな機能を有する編成部材を追加することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 固定シンカー
2 シンカー本体
2a 一側面
2b 他側面
2c 前縁
2d 度決め部
3 支持突起
10 横編機
11 前針床
12 後針床
14 歯口
15 編針
15a フック
16 可動シンカー
20 ループプレッサー
21 先端部