(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/027 20060101AFI20230405BHJP
B62D 1/04 20060101ALI20230405BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
B60R16/027 T
B62D1/04
B60R16/02 630J
(21)【出願番号】P 2019073837
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】原澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】神谷 直城
(72)【発明者】
【氏名】山本 恒行
(72)【発明者】
【氏名】武内 秀平
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-072000(JP,A)
【文献】特開2002-258959(JP,A)
【文献】実開昭59-026621(JP,U)
【文献】特開2003-280814(JP,A)
【文献】特開2003-034262(JP,A)
【文献】特開2005-50028(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04120975(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/027
B62D 1/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの片手操作に基づいて移動体の移動方向を制御する操舵部と、
前記移動体の移動に伴い所定の補助機能の実行を制御する補助機能部と、
を備え、
前記補助機能部は、前記操舵部を操作する前記ユーザの操作手を前記操舵部に固定したまま、前記操作手
の主根部による押下により操作が可能な位置に配置さ
れ、
前記補助機能は、前記移動体の周囲に存在する人物に対する報知機能である、
操舵装置。
【請求項2】
前記操舵部は、ダイヤル形状に形成され、前記ユーザの前記操作手による回転操作に基づいて、前記移動体の移動方向を制御する、
請求項
1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記補助機能は、警音出力機能である、
請求項1
または2のいずれかに記載の操舵装置。
【請求項4】
前記移動体は、乗り物であり、
前記ユーザは、前記乗り物の搭乗者である、
請求項1~
3のいずれかに記載の操舵装置。
【請求項5】
前記移動体は、自律移動機能を有する移動体である、
請求項1~
4のいずれかに記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両などの移動体の操舵を行う種々の操舵装置が開発されている。また、上記のような操舵装置には、移動体の移動方向の制御に加え、他の機能の制御を行うための構造を有する装置もある。例えば、特許文献1には、回転スイッチやプッシュスイッチ、操作ノブなどを備え、ステアリングホイール上に配置されるステアリングスイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるステアリングスイッチのように、操舵装置に操舵制御以外の機能を制御する構造を搭載する場合、当該構造に対する操作が操舵操作を妨げないよう、当該構造の位置、形状、機構を考慮することが重要となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、操舵制御と他の機能制御とを同時かつより安全に行うことが可能な、新規かつ改良された操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ユーザの片手操作に基づいて移動体の移動方向を制御する操舵部と、上記移動体の移動に伴い所定の補助機能の実行を制御する補助機能部と、を備え、上記補助機能部は、上記操舵部を操作する上記ユーザの操作手を上記操舵部に固定したまま、上記操作手と同一側の腕部の少なくとも一部で操作が可能な位置に配置される、操舵装置が提供される。
【0007】
また、上記補助機能部は、上記操作手を上記操舵部に固定したまま、上記操作手の主根部による押下により操作が可能な位置に配置されてもよい。
【0008】
また、上記操舵部は、ダイヤル形状に形成され、上記ユーザの上記操作手による回転操作に基づいて、上記移動体の移動方向を制御してもよい。
【0009】
また、上記補助機能は、上記移動体の周囲に存在する人物に対する報知機能であってもよい。
【0010】
また、上記補助機能は、警音出力機能であってもよい。
【0011】
また、上記移動体は、乗り物であり、上記ユーザは、上記乗り物の搭乗者であってもよい。
【0012】
また、自律移動機能を有する移動体あってもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、操舵制御と他の機能制御とを同時かつより安全に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る操舵装置10の外観の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<1.実施形態>
まず、本発明の一実施形態の背景について述べる。近年、種々の移動体や、当該移動体の移動を制御する操舵装置が開発されている。また、操舵装置には、例えば、片手での操作を想定して形成される装置もある。
【0017】
上記のような操舵装置には、例えば、フォークリフトに備えられるノブを有するステアリング、電動車いすやシニアカーなどに備えられる移動制御レバーなどが挙げられる。また、一般的な自動車においても、片手が不自由なユーザによるハンドル操作を補助するための外付けノブなどが流通している。
【0018】
さらには、昨今では近い将来における自動運転車の実用化が期待されているが、例えば、ユーザが自動運転をアシストする場合、ごく近い距離を移動する場合、また緊急時などには、ユーザによる操舵操作が求められることも想定される。
【0019】
一方、上記のような状況のために、一般的な車両と同等のステアリングを設けた場合、通常時には使用しない構成により車室を圧迫すると共に機能美を損ねる可能性もある。このため、自動運転車などに具備される装置は、片手で操作が可能な程度の小型かつ簡易な装置であることが望ましい。また、上記のような操舵装置に、例えば、ホーンや方向指示器などの制御を行う構成を搭載することで、片手により車両の操舵と周囲への報知などを行うことが可能となる。
【0020】
しかし、上述したように、操舵装置に操舵制御以外の機能を制御する構造を搭載する場合、当該構造に対する操作が操舵操作を妨げないよう、当該構造の位置、形状、機構を考慮することが重要となる。
【0021】
図2は、片手で操作を行う操舵装置90の一例である。
図2に示す操舵装置90は、操舵部912、ホーンスイッチ914、方向指示器スイッチ916Lおよび916Rを含む操作部910を備えている。
【0022】
(操舵部912)
操舵部912は、例えば、図示するようなダイヤルとして実現されてもよい。また、操舵部912は、ユーザが片手で操作を行うのに適した形状および大きさで形成される。ユーザは、操舵部912を回転させることで、移動体の移動方向を制御することができでよい。
【0023】
また、操舵部912は、ユーザによる回転操作が行われない場合、自動的に基準方向まで復帰するように設計されてよい。すなわち、操舵部912からユーザの手が離れた場合、移動体の移動方向は、自動的に基準方向に復帰する。なお、上記の基準方向は、移動体の正面方向であってもよい。
【0024】
(ホーンスイッチ914)
ホーンスイッチ914は、ホーンなどの警音の出力を制御する構成である。ユーザは、ホーンスイッチ914を指で押下することで、移動体に警音を出力させることができる。
【0025】
(方向指示器スイッチ916)
方向指示器スイッチ916Lおよび916Rは、移動体に具備される方向指示器の点灯および消灯を制御するための構成である。ユーザは、方向指示器スイッチ916Lまたは916Rを指で押下することで、それぞれ移動体の左側に具備される方向指示器または移動体の右側に具備される方向指示器の点灯と消灯とを切り替えることができる。
【0026】
上記のような操舵装置90の構成によれば、ユーザが手の位置をほぼ動かすことなく、片手で操舵部912、ホーンスイッチ914、方向指示器スイッチ916Lおよび916Rを操作することができ、緊急時などにも迷うことなく直感的な運転を行うことができる。
【0027】
しかし、ホーンスイッチ914や方向指示器スイッチ916Lおよび916Rが操舵部912と別途に配置されており、かつ指での押下による操作を行う機構である場合、ユーザが操舵操作中に各スイッチを押下するためには、手を操舵部912から離す必要があり、移動体の操舵操作が一時的に行えなくなる可能性がある。
【0028】
また、
図2に示すように、各スイッチが操舵部912の情報近傍に配置される場合であっても、操舵操作中に各スイッチを押下するためには、少なくとも一本の指を操舵部912から離す必要があり、操舵操作がおろそかになる可能性や、操舵部912を把持する力が弱まり、操舵部912が基準位置に復帰してしまう可能性もある。
【0029】
さらには、
図2に示すような配置では、操舵部912の操舵操作中に方向指示器スイッチ916Lまたは916Rを押下しようとした際に、誤って指がホーンスイッチ914にホーンが作動してしまうなどの誤操作を招くことも想定される。
【0030】
上記のような誤操作を防止するためには、ホーンを作動させるために必要な荷重を大きくすることも考えられるが、この場合、指により力を入れる必要があることから、操舵操作がさらにおろそかとなる可能性がある。
【0031】
本発明の一実施形態に係る操舵装置10は上記の点に着目して発想されたものであり、操舵制御と他の機能制御とを同時かつより安全に行うことを可能とする。以下、上記の効果を奏する操舵装置10について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る操舵装置10の外観の一例である。本実施形態に係る操舵装置10は、操舵部112と補助機能部114を含む操作部110を少なくとも備える。
【0033】
(操舵部112)
本実施形態に係る操舵部112は、
図1に示すように、ユーザの片手操作に基づいて移動体の移動方向を制御する構成である。なお、
図1には、本実施形態に係る操舵部112が上述した操舵部912と同様にダイヤル形状に形成され、ユーザによる回転操作に基づいて、移動体の移動方向を制御する場合の一例が示されている。
【0034】
一方、本実施形態に係る操舵部112の形状は係る例に限定されない。本実施形態に係る操舵部112は、片手での操舵操作に適した種々の形状で形成されてよい。本実施形態に係る操舵部112は、例えば、レバーやスティック、スライダーなどで実現されてもよい。
【0035】
(補助機能部114)
本実施形態に係る補助機能部114は、移動体の移動に伴い所定の補助機能の実行を制御する。本実施形態に係る補助機能は、移動体の移動中において実行が可能な、移動体が有するなんらかの機能であってよい。
【0036】
本実施形態に係る補助機能は、例えば、移動体の周囲に存在する人物などに対する報知機能であってもよい。上記報知機能は、例えば、方向指示器やハザードの点灯、またホーンなどによる警音出力機能が挙げられる。なお、
図1には、本実施形態に係る補助機能部114がホーンスイッチとして実現される場合の一例が示されている。
【0037】
また、本実施形態に係る補助機能部114は、操舵部112を操作するユーザの操作手を操舵部12に固定したまま、操作手と同一側の腕部の少なくとも一部で操作が可能な位置に配置されること、を特徴の一つとする。
【0038】
ここで、上記の操作手とは、操舵部112を操作するユーザの一方の手、すなわち左手あるいは右手を指す。例えば、
図1に示すように、ユーザが右手の五指で操舵部112を掴みながら操作している場合、本実施形態に係る補助機能部114は、五指のすべてを操舵部112に固定しながら操作が可能な位置に配置される。
【0039】
また、上記の腕部とは、肩から指先までの部位を指す。このため、例えば、ユーザが右手で操舵部112を操作している場合、本実施形態に係る補助機能部114は、右腕の少なくとも一部で操作が可能な位置に配置されてよい。補助機能部114は、例えば、肘、前腕、手などにより操作が可能であってよい。
【0040】
例えば、
図1に示す一例の場合、補助機能部114は、操作手を操舵部112に固定したまま、操作手の主根部(手の付け根部分)による押下により操作が可能な位置に配置されている。また、この場合、補助機能部114は、操舵部112の回転操作に伴い操作手の主根部の位置が変化した場合でも押下が行える大きさ、および形状を有してよい。
【0041】
上記のような配置によれば、操舵部112から指を離すことなく補助機能を制御することができ、より安全に移動体の操舵を行うことが可能となる。
【0042】
また、例えば、ホーンなどの警音出力に係る誤操作防止のために補助機能部114の押下に必要な荷重を大きくした場合であっても、主根部は物理的に力を入れやすい部位であることから、操舵部112から指や手のひらを離さずに補助機能部114を押下することができ、操作性と補助機能制御に係る誤操作防止を両立することができる。
【0043】
以上、本実施形態に係る補助機能部114を操作手の主根部での押下操作する場合について説明した。一方、本実施形態に係る補助機能部114の配置や形状は係る例に限定されない。例えば、本実施形態に係る補助機能部114は、操舵部112と一体に形成されてもよい。
【0044】
例えば、補助機能部114が方向指示器の制御を行う場合、操舵部112兼補助機能部114は、左右にスライドが可能なように設けられてもよい。この場合、ユーザは、操舵部112兼補助機能部114を右側にスライドさせることで、移動体の右側に配置される方向指示器をオンにできてよい。また、同様に、ユーザは、操舵部112兼補助機能部114を左側にスライドさせることで、移動体の左側に配置される方向指示器をオンにできてよい。
【0045】
以上、本実施形態に係る操舵部112および補助機能部114の機能や配置に係る特徴について説明した。なお、本実施形態に係る操舵装置10は、例えば、上述した操舵操作が求められる乗り物に搭載されてもよい。この場合、当該乗り物の搭乗者であるユーザは、片手で操舵操作を行いながら、ホーンや方向指示器などを安全に操作することが可能である。
【0046】
なお、上記の乗り物には、上述したフォークリフトや、電動車いす、シニアカーなどが挙げられる。また、上記の乗り物には、自律移動機能を有する車両(自動運転車)、船舶、航空機などが含まれてよい。
【0047】
本実施形態に係る操舵装置10が上記のような乗り物に搭載される場合、操舵装置10は、例えば、搭乗者が着座するシートのアームレストや、シート前方のインストルメントパネル近傍などに配置されてもよい。
【0048】
<2.まとめ>
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る操舵装置10は、ユーザの片手操作に基づいて移動体の移動方向を制御する操舵部112と、上記移動体の移動に伴い所定の補助機能を制御する補助機能部114と、を備え、補助機能部114は、操舵部112を操作する上記ユーザの操作手を操舵部112に固定したまま、当該操作手と同一側の腕部の少なくとも一部で操作が可能な位置に配置されること、を特徴の一つとする。操舵制御と他の機能制御とを同時かつより安全に行うことが可能となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0050】
10 操舵装置、 110 操作部、 112 操舵部、 114 補助機能部