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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/28 20060101AFI20230405BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20230405BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230405BHJP
   B65D 3/00 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
B65D1/28
B65D1/00 120
B65D65/40 D
B65D3/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019084768
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179895
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【氏名又は名称】川島 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】内藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】浜村 政博
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏
(72)【発明者】
【氏名】岬 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石塚 保夫
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-341911(JP,A)
【文献】特開2012-066506(JP,A)
【文献】特開平10-071656(JP,A)
【文献】特開2018-167843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/28
B65D 1/00
B65D 65/40
B65D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層の両面に非晶部分が85%以上の低温ヒートシール性のあるPET樹脂層を積層した原紙を使用して、プレス成形により底部と、前記底部に接続する側壁部と、前記側壁部の外周縁に形成された縁巻部を備え、曲線対応部分には複数の放射状の絞り皺を有する一次紙容器を形成し、前記一次紙容器を加熱処理して、溶融したPET樹脂で前記縁巻部の端部を覆い、前記縁巻部の重なり部位を固着するとともに前記絞り皺を固着し、さらにPET樹脂層の結晶化を高め耐熱性を付与したことを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記加熱処理は、150~180℃の温度に保持した乾燥炉で、20~30秒間加熱したことを特徴とする請求項1に記載の紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームオーブン対応の紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
調理品や被調理品を収容する容器として、紙容器が広く使用されるに至っている。
従来、調理品や被調理品を収容する紙容器として、1枚の原紙をプレス成形のみで形成された、底部と、前記底部に接続する側壁部と、前記側壁部の外周部に形成された縁巻部を備えた紙皿が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された紙皿によれば、前記側壁部の外周部に縁巻部を形成することにより、リブ的な作用により保形性を向上させるとともに紙皿を形成する原紙の端面を巻き込むことにより端面が外周側に露出しないようにすることにより、端面から紙層内への液体の染み込みを防止するようになっている。
【0004】
近年、調理品や被調理品の加熱手段として電子レンジが多用されており、電子レンジ用の紙容器として耐熱性、耐水性のある樹脂をラミネートした紙容器が知られている。
特許文献1に記載された紙皿も、耐熱性、耐水性のある樹脂をラミネートした原紙で形成することにより、電子レンジで加熱する調理品や被調理品を収容する容器として使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公平6-6775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1に記載された紙皿も、耐熱性、耐水性のある樹脂をラミネートした原紙で形成することにより電子レンジ用の容器として使用できるが、電子レンジがスチームオーブンである場合、図4に示すように、スチーム加熱により発生する過熱水蒸気が巻き込まれた縁巻部10の重なり部位Cの間を通って縁巻部10内に入り(図上矢印)、縁巻部10内で露出している紙層11の端面11aから染み込んで、紙層11を緩ませ、縁巻部10に巻き戻りを発生させて、保形性が低下してしまうといった問題があった。
【0007】
本発明者はこのような問題を解決すべく研究を重ねた結果、紙層の両面に非晶部分が85%以上の低温ヒートシール性のあるPET樹脂層を積層した原紙を使用して、プレス成形により紙容器を形成して一次紙容器とし、更にその一次紙容器を加熱処理することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的は、1枚の原紙をプレス成形のみで形成され、側壁部の外周縁に縁巻部が形成されている紙容器であって、スチームオーブンに対応できる紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、紙層の両面に非晶部分が85%以上の低温ヒートシール性のあるPET樹脂層を積層した原紙を使用して、プレス成形により底部と、前記底部に接続する側壁部と、前記側壁部の外周縁に形成された縁巻部を備え、曲線対応部分には複数の放射状の絞り皺を有する一次紙容器を形成し、前記一次紙容器を加熱処理して、溶融したPET樹脂で前記縁巻部の端部を覆い、前記縁巻部の重なり部位を固着するとともに前記絞り皺を固着し、さらにPET樹脂層の結晶化を高め耐熱性を付与したことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、紙層の両面に非晶部分が85%以上の低温ヒートシール性のあるPET樹脂層を積層した原紙を使用して形成した一次紙容器を低い温度で加熱処理することにより、積層したPET樹脂が溶融し、溶融したPET樹脂が前記縁巻部の端部を覆い、前記縁巻部の重なり部位の隙間を埋めることにより前記縁巻部の重なり部位および前記絞り皺が固着するので、縁巻部内で露出していた紙層の端面は溶融したPET樹脂により確実に塞がれ、スチームオーブンに使用してもスチーム加熱により発生する過熱水蒸気が縁巻部内にある紙層の端面へ染み込むことを防止し、また、曲線対応部分にある放射状の絞り皺によりプリーツ状に接触しているPET樹脂層の重なり部位が溶融したPET樹脂により固着し、前記絞り皺を固着して皺の伸びを防止するので、確実に保形性を保ち、更には保形性を強化することができる。
また、加熱処理によりPET樹脂層の結晶化を高め耐熱性を付与したので、スチームオーブンによる高温加熱に適した紙容器を得ることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記加熱処理は、150~180℃の温度に保持した乾燥炉で、20~30秒間加熱したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記加熱処理は、150~180℃の温度に保持した乾燥炉で、20~30秒間加熱したので、積層されているPET樹脂が確実に溶融して前記縁巻部の隙間を埋め前記縁巻部の重なり部位が確実に固着し、そして、曲線対応部分にある放射状の絞り皺によりプリーツ状に接触しているPET樹脂層の重なり部位が溶融したPET樹脂により確実に固着し、また、PET樹脂層の結晶化を高め耐熱性を確実に付与することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る紙容器によれば、スチーム加熱により発生する過熱水蒸気による紙層の緩みと縁巻部の巻き戻りを防止することができ、スチームオーブンに適した紙容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る紙容器の実施形態の一例を示す一部縦断面の正面図である。
図2】溶融したPET樹脂が縁巻部の隙間を埋め縁巻部の重なり部位が固着した状態を示す説明図である。
図3】曲線対応部分にある絞り皺によりプリーツ状に接触しているPET樹脂層の重なり部位が溶融したPET樹脂により固着した状態を示す説明図である。
図4】従来の紙容器の縁巻部の重なり部位から縁巻部内に過熱水蒸気が入る状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る紙容器の実施形態の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
図1図3は本発明に係る紙容器の実施形態の一例を示すものであり、図1は本例の紙容器の一部縦断面の正面図、図2は溶融したPET樹脂が縁巻部の隙間を埋め縁巻部の重なり部位を固着した状態を示す説明図、図3は曲線対応部分にある絞り皺によりプリーツ状に接触しているPET樹脂層の重なり部位が溶融したPET樹脂により固着した状態を示す説明図である。
【0016】
本例の紙容器1は、紙層2の両面に非晶部分が85%以上の低温ヒートシール性のあるPET樹脂層3を積層した原紙4を使用している。
本例では、紙層2の両面に積層した非晶部分が85%以上のPET樹脂層3の溶融温度を130℃に設定している。
このような紙層2の両面に非晶部分が85%以上のPET樹脂層3を積層した原紙4にあっては、本例では、特開2012-66506号公報で開示されている紙容器用積層材を原紙4として使用している。
【0017】
そして、かかる原紙4をプレス成形により、底部5と、底部5に接続する側壁部6と、側壁部6に接続し、且つ水平方向に延びるフランジ部7と、フランジ部7の外周縁に形成された縁巻部8を備え、曲線対応部分には複数の放射状の絞り皺9を有する一次紙容器を形成し、一次紙容器を加熱処理して、溶融したPET樹脂で縁巻部8の重なり部位Aを固着するとともに、PET樹脂層3の結晶化を高め耐熱性を付与している。
【0018】
一次紙容器の加熱処理にあっては、150~180℃の温度に保持した乾燥炉で、20~30秒間加熱している。
加熱処理における加熱温度と加熱時間は以下の条件により求められる。
加熱温度150~180℃は、原紙4に積層されているPET樹脂層3のPET樹脂を溶融し、そして、加熱処理後のPET樹脂層3の結晶部分をスチームオーブンの使用に要求される耐熱性を付与するのに十分な結晶部分に高める温度として求められる。
また、加熱時間20~30秒は、加熱温度150~180℃で、原紙4に積層されているPET樹脂層3のPET樹脂を溶融し、そして、加熱により紙層2に含まれている水分が蒸発して紙層2とPET樹脂層3との間に層間剥離が起きるまでに至らない時間として求められる。
【0019】
加熱温度が150℃未満で且つ加熱時間が30秒未満であると、原紙4に積層されているPET樹脂層3のPET樹脂を溶融させることができず、また、加熱処理後のPET樹脂層3の結晶部分をスチームオーブンの使用に要求される耐熱性を付与するのに十分な結晶部分に高めることができない。また、加熱温度が180℃を超え、加熱時間が20秒を超えると、紙層2に含まれている水分が蒸発し、紙層2とPET樹脂層3との間に層間剥離が起きてしまう場合がある。
加熱処理における加熱温度と加熱時間にあっては、160℃の加熱温度で25秒の加熱時間が最も好ましい。
【0020】
このようにして、一次紙容器を加熱処理することにより、溶融したPET樹脂が縁巻部8の重なり部位Aの隙間を埋めることにより縁巻部8の重なり部位Aが固着する(図2参照。)。
また、曲線対応部分にある放射状の絞り皺9によりプリーツ状に接触しているPET樹脂層3の重なり部位Bが溶融したPET樹脂により固着する(図3参照。)。
【0021】
また、一次紙容器を加熱処理することにより、PET樹脂層の結晶化が高められ、耐熱性の高い紙容器1となる。
【0022】
このように構成された紙容器1によれば、紙層2の両面に非晶部分が85%以上の低温ヒートシール性のあるPET樹脂層3を積層した原紙を使用して形成した一次紙容器を低い温度で加熱処理することにより、積層したPET樹脂層3のPET樹脂が溶融し、溶融したPET樹脂が縁巻部8の重なり部位Aの隙間を埋めることにより縁巻部8の重なり部位Aが固着する。
【0023】
これにより、縁巻部8内で露出していた紙層2の端面2aは溶融したPET樹脂により塞がれ、スチームオーブンに使用してもスチーム加熱により発生する過熱水蒸気が縁巻部8内にある紙層2の端面2aへ染み込むことが防止され、また、曲線対応部分にある放射状の絞り皺9によりプリーツ状に接触しているPET樹脂層3の重なり部位Bが溶融したPET樹脂により固着し、皺9の伸びが防止されるので、紙容器1の保形性が保たれ、更には保形性が強化される。
【0024】
また、加熱処理によりPET樹脂層3の結晶化が高められ、スチームオーブンによる高温加熱に適した紙容器1が得られる。
【0025】
一次紙容器を加熱処理にあって、150~180℃の温度に保持した乾燥炉で、20~30秒間加熱すると、積層されているPET樹脂層3のPET樹脂が確実に溶融して縁巻部8の隙間を埋め縁巻部8の重なり部位Aが確実に固着され、そして、曲線対応部分にある放射状の絞り皺9により重ね合わせ状に接触しているPET樹脂層3の重なり部位Bが溶融したPET樹脂により確実に固着され、また、PET樹脂層3の結晶化が高められ、スチームオーブンによる高温加熱に適した紙容器1が得られる。
【0026】
特に、加熱処理における加熱温度と加熱時間にあっては、160℃の加熱温度で25秒の加熱時間であると、スチームオーブンで使用する紙容器として最適な保形性と耐熱性が付与された紙容器1が得られる。
【符号の説明】
【0027】
1 紙容器
2 紙層
2a 端面
3 PET樹脂層
4 原紙
5 底部
6 側壁部
7 フランジ部
8 縁巻部
9 皺
A 縁巻部の重なり部位
B 皺部におけるPET樹脂層の重なり部位
図1
図2
図3
図4