IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特許7256706全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体、全固体リチウムイオン二次電池用電極、全固体リチウムイオン二次電池及び全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体、全固体リチウムイオン二次電池用電極、全固体リチウムイオン二次電池及び全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20230405BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230405BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230405BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230405BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230405BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20230405BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/13
H01M4/36 B
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/0565
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019122844
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2020021729
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018135186
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-195494(JP,A)
【文献】特開2013-201062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/13
H01M 4/66
H01M 10/052
H01M 10/0565
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体であり、
前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、
前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体。
【請求項2】
請求項1に記載の電極活物質成形体と樹脂集電体とを含む全固体リチウムイオン二次電池用電極。
【請求項3】
請求項1に記載の電極活物質成形体を含む全固体リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する工程を含み、前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、
前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体、全固体リチウムイオン二次電池用電極、全固体リチウムイオン二次電池及び全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
【0003】
リチウムイオン電池には、液体状態の電解質、特に非水系有機溶媒に塩を溶解したイオン伝導性有機液体電解質が主に用いられてきた。しかし、液体状態の電解質を用いた電池においては、有機溶媒が揮発する可能性があるだけでなく、充放電時の副反応である有機溶媒の分解反応が進行することよって電池内部にガスが発生して電池を膨脹させる問題点等があった。
このような問題を解決する電池として、液体状態の電解質を用いない全固体リチウムイオン二次電池が検討されており、そのうちの一例として高分子固体電解質(ポリマー電解質又はゲルポリマー電解質とも言う)を用いた全固体リチウムイオンポリマー二次電池が知られている。
そして、高分子固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池に用いる電極の製造方法として、例えば、活物質の粉体とポリマー電解質の粉体との混合物を含む有機溶媒を集電体に塗布、乾燥して正極、負極の集電体上に活物質層を形成する工程を含む全固体リチウムイオン二次電池の製造方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-201062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたスラリーから溶媒を乾燥留去して製造する方法は、厚さを均一に保つことが難しく、また乾燥時に活物質層の一部に亀裂が発生する場合があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体であり、前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である全固体リチウム二次電池用電極活物質成形体;前記の電極活物質成形体と樹脂集電体とを含む全固体リチウムイオン二次電池用電極;前記の電極活物質成形体を含む全固体リチウムイオン二次電池;及びポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する工程を含み、前記リチウム塩の重量割合が、前記ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて10~40重量%であり、前記高分子固体電解質の重量割合が、前記高分子固体電解質と前記電極活物質との合計重量に基づいて5~25重量%である全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、外観が良好で亀裂のない全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質層の提供を目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物及びリチウム塩を含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体である全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体である。
【0009】
本発明におけて全固体リチウムイオン二次電池とは、非水系有機溶剤と電解質塩との混合物であるリチウムイオン電池用電解液を含まないリチウムイオン電池を意味する。
【0010】
本発明の全固体リチウム二次電池用電極活物質成形体に含まれるポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物は、ポリオキシエチレン鎖を有していれば特に制限はなく、ポリエチレンオキサイド(PEO、PEG及びポリエチレングリコールとも言うことがある)、ポリエチレンオキサイドと低級脂肪酸とのエステル、ポリオキシエチレン鎖を有する共重合体[モノアルコキシポリエチレンオキサイドと(メタ)アクリル酸とのエステルを構成単量として含む共重合体、及びポリエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等]及びこれらの架橋体並びにこれらの混合物等を用いることができる。さらに 特開2015-173017号公報、特開2015-187941号公報及び特開2016-069388号公報等に記載の電解質に用いている高分子化合物も用いることができる。
ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。
【0011】
ポリエチレンオキサイドとしては、常温(好ましくは10~30℃)において固体(粉体状、フレーク状及びワックス状を含む)のポリエチレンオキサイド及び常温で液体のポリエチレンオキサイドが挙げられる。
常温で固体のポリエチレンオキサイドとしては、PEG-4000(凝固点55~60℃)、PEG2000(凝固点45~55℃)、PEG1000(凝固点35~40℃)及びPEG600(凝固点約20℃)等が挙げられる。
常温で液体のポリエチレンオキサイドとしては、PEG200(凝固点-50℃)及びPEG400(凝固点4~8℃)等が挙げられる。
ポリエチレンオキサイドの内、成形性等の観点からPEG4000、PEG2000及びPEG1000等が好ましい。
ポリエチレンオキサイドは、公知の方法で得ることができ、PEGとして市販されている各種の重合度のものを市場から入手して用いることもできる。
ポリオキシエチレン鎖を有する共重合体及びこれらの架橋体としては、特公平8-32752号公報及び特許3022317号公報等に記載の公知のものを用いることができる。
【0012】
リチウム塩としては、リチウムイオン電池に用いられる公知のものを使用することができ、LiCFSO、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩系電解質、LiN(FSO、LiN(CFSO及びLiN(CSO等のフッ素原子を有するスルホニルイミド系電解質、LiC(CFSO等のフッ素原子を有するスルホニルメチド系電解質等が挙げられる。
【0013】
高分子固体電解質は、前記のポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでいれば制限はないが、電池の内部抵抗の観点から、acインピーダンス法により測定されるイオン伝導度が、常温(好ましくは10~30℃)において10-7S/cm以上である高分子固体電解質が好ましい。
高分子固体電解質に含まれるリチウム塩の重量は、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物が有するエーテル結合中の酸素原子の重量に対して調整されるが、電池の充放電性能の観点から、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量に基づいて、10~40重量%含む高分子固体電解質が好ましい。
ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質は、特公平8-32752号公報及び特許3022317号公報等に記載の公知の方法でえることができ、例えばリチウム塩を溶剤(エタノール等)に溶解した溶液に高分子化合物を溶解した後、溶液からエタノールを留去する方法及び加熱溶融したポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物にリチウム塩を溶解する方法等を用いることができる。
【0014】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体に用いる電極活物質は、正極活物質であっても負極活物質であっても良い。
【0015】
電極活物質としての正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0016】
電極活物質としての負極活物質としては、炭素系材料[例えば黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭化ケイ素及び炭素繊維等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物、リチウム・チタン酸化物及びケイ素酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質は、不可逆容量を低減する目的で、負極活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0017】
電極活物質は、表面の一部又は全部に被覆用樹脂を含む電極被覆層を有する被覆電極活物質であってもよい。
電極活物質の表面に電極被覆層を有すると成形体の強度が良好となり好ましい。
【0018】
電極被覆層は、被覆用樹脂を含んでなる。また、必要に応じて、さらに、後述する導電助剤を含んでいてもよい。
なお、被覆電極活物質は、電極活物質の表面の一部又は全部が、被覆用樹脂を含んでなる電極被覆層によって被覆されたものであるが、電極活物質成形体中において、例え被覆電極活物質同士が接触したとしても、接触面において電極被覆層同士が被覆用樹脂によって不可逆的に接着することはない。
【0019】
被覆用樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられ、例えば、国際公開第2015/005117号に記載のリチウムイオン電池活物質被覆用樹脂等が挙げられる。
【0020】
電極被覆層は、電池の充放電性能の観点から、さらに導電助剤を含んでいることが好ましい。
導電助剤は、導電性を有する材料から選択され、具体的には、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維等のカーボンファイバー、カーボンナノファイバー並びにカーボンナノチューブ、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]を用いることができる。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに前記の金属をめっき等でコーティングしたものでもよい。グラフェンを練り込んだポリプロピレン樹脂も導電助剤として好ましい。
【0021】
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態であっても、粒子形態以外の形態であってもよく、粒子形態以外の形態としては、例えば、繊維状の導電助剤等が挙げられる。
粒子形態の導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、リチウムイオン電池用電極の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.02~5μmであることがより好ましく、0.03~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、導電助剤の粒子径は、導電助剤が形成する粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「導電助剤の平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0022】
繊維状の導電助剤としては、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。
繊維状の導電助剤の平均繊維径は、電池の充放電性能の観点から、0.1~20μmであることが好ましい。
【0023】
電極被覆層が導電助剤を含んでいる場合、電極被覆層に含まれる導電助剤の重量は、被覆用樹脂と導電助剤との合計重量に対して15~75重量%であることが好ましい。
被覆電極活物質が有する電極被覆層が導電助剤を含んでいる場合、予備充電後に電極活物質の表面にSEI膜が形成された場合であっても電極被覆層に含まれる導電助剤の効果によって活物質間の導通経路を維持することができ、SEI膜の形成による抵抗上昇が抑制できるため好ましく、導電助剤の割合がこの範囲であると抵抗抑制が容易になり更に好ましい。
【0024】
電極活物質として被覆電極活物質を用いる場合には、例えば、電極活物質を万能混合機に入れて30~50rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂を含む高分子溶液を1~90分かけて滴下混合し、さらに必要に応じて導電材料を混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持することにより、被覆電極活物質を得ることができる。
【0025】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、導電助剤を含む。全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体が含む導電助剤は、前記の電極被覆層に含まれている導電助剤として含んでいてもよいし、電極被覆層の外側に別に含んでいても良い。
前記の電極被覆層に含まれている導電助剤と電極被覆層の外側に別に含んでいる導電助剤とは、電極被覆層に含まれている導電助剤が電極活物質と一体になっているのに対し、電極被覆層の外側に別に含んでいる導電助剤は電極活物質と別個に存在していることから外観観察することによって区別することができる。
電極被覆層の外側に別に含んでいる導電助剤としては、前記の電極被覆層が含んでも良い導電助剤と同じものを用いることができ、好ましいものも同じである。
【0026】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体において、高分子固体電解質の重量割合は、電極活物質成形体の電気特性と成形強度等の観点から、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づいて1~50重量%が好ましく、5~25重量%がさらに好ましい。
電極活物質の重量割合は、電極活物質成形体の電気特性と成形強度等の観点から、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づいて50~99重量%が好ましく、65~90重量%がさらに好ましい。なお、電極活物質として被覆電極活物質を含む場合には、電極活物質の重量に電極被覆層の重量は含まない。
導電助剤の重量割合は、電極活物質成形体の電気特性と成形強度等の観点から、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づいて0.1~5重量%が好ましく、0.1~3重量%がさらに好ましい。なお、電極活物質として被覆電極活物質を含む場合であって、電極被覆層に導電助剤を含む場合の導電助剤の重量は、電極被覆層に含まれる導電助剤と電極被覆層の外側にある導電助剤との合計重量である。
ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物の重量割合は、電池の容量密度の観点から、高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づいて、1~30重量%が好ましく、更に好ましくは2~8重量%である。また、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物として常温で液体のポリエチレンオキサイドを用いる場合、常温で液体のポリエチレンオキサイドの重量割合は、成形性等の観点から高分子固体電解質と電極活物質との合計重量に基づいて1~5重量%が好ましい。
【0027】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、前記の高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成形体であるが、電池の異常時信頼性の観点から、混合物が溶剤を含まない混合物の成形体であることが好ましい。
すなわち、本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、前記の高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物の成形体であることが好ましい。
本発明において溶剤とは、0~60℃の間に蒸気圧を有し、常温において液体である有機化合物を意味し、リチウムイオン電池用電解液に含まれる溶媒成分である非水溶媒、及びポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを混合して高分子固体電解質を作成する際に用いる溶媒等を含む。
全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体が溶剤を含まない混合物の成形体であると、溶剤の揮発に伴うひび割れの発生が起こりにくくなり好ましい。
【0028】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体を構成する混合物は、リチウムイオン電池電極用バインダーを含まないことが好ましい。リチウムイオン電池電極用バインダーはデンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の溶剤に溶解又は分散して用いられる公知のリチウムイオン電池電極用バインダーであり、これらを用いないと乾燥が不要になるため好ましい。
【0029】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体を構成する高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤を含む混合物は、高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを一括又は段階的に万能混合機等の公知の粉体混合装置等に入れ、公知の方法で混合することで得ることができる。
【0030】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極は、前記の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体と集電体とからなる。
【0031】
集電体としては、金属集電体及び樹脂集電体を用いることができ、集電体が正極集電体である場合には、さらに炭素質材料からなる集電体を用いることができる。
金属集電体としては、公知の金属集電体を用いることができる。
金属集電体は、白金、金、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、およびこれらの一種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される一種以上が挙げられる。
正極金属集電体としては、集電体の耐腐食性の観点から、アルミニウム、ステンレス合金、白金及び金が好ましく、コストの観点から、アルミニウムが好ましい。
負極金属集電体としては、集電体の耐腐食性の観点から、銅、ステンレス合金、白金、金及びニッケルが好ましく、コストの観点からは銅が好ましい。
金属集電体は薄板または金属箔から形成されてもよいし、基材の表面にスパッタリング、電着および塗布等の手法により金属層を形成してもよい。
【0032】
樹脂集電体は導電性を有する高分子組成物からなる集電体であり、好ましくは非導電性の高分子材料と導電性フィラーとの混合物からなり、日本国特許公開第2012-150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載のもの等を用いることができる。
非導電性の高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)およびポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリメチルペンテン(PMP)である。
【0033】
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択され、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料(アセチレンブラック等)、金属(アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン及びニッケル等)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、ステンレス(SUS)等のこれらの合金材が用いられてもよい。耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料及びニッケル、より好ましくはカーボン材料である。また、これらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、前記の金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
【0034】
樹脂集電体は、日本国特許公開第2012-150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の方法で得ることができ、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5~20部分散させた後、熱プレス機で圧延したものが挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0035】
集電体としては、樹脂集電体であることが好ましい。前記の全固体リチウムイオン二次電池用電極は加熱乾燥工程を行うことなく得ることができるため、樹脂集電体に熱履歴を与えることなく電極が得られる。そのため、樹脂集電体を加熱することによる集電体の電気特性の低下を防ぐことが出来るので好ましい。
【0036】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極は、集電体に全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体を積層する方法及び集電体の上で高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する方法等で得ることができる。
【0037】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、前記の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体を含んでいればよく、前記の電極活物質成形体と集電体とを含む全固体リチウムイオン二次電池用電極を含んでいてもよい。
【0038】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体である電極活物質成形体を用い、かつリチウムイオン電池用電解液を含まないリチウムイオン二次電池であれば制限はない。
例えば、高分子固体電解質と正極電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体である正極電極活物質成形体及び高分子固体電解質と負極電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体である負極電極活物質成形体を用いたリチウムイオン二次電池、並びに高分子固体電解質と正極電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体である正極電極活物質成形体又は高分子固体電解質と負極電極活物質と導電助剤とを含む混合物の成型体である負極電極活物質成形体のいずれか一方の電極活物質成形体と対極であるリチウム金属箔を用いたリチウムイオン二次電池等が挙げられる。
【0039】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、集電体と電極活物質成形体と対極である電極活物質成形体又はリチウム金属箔と対極集電体とを電池外装容器(ラミネート容器等)内に積層し、集電体に接続した電流取り出し用端子を容器の外側に出した状態で電池外装容器を封止する方法等で得ることができる。
【0040】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、電極活物質成形体と、対極となる電極活物質成形体又は対極となるリチウム金属箔との間にさらにリチウムイオン電導性を有する高分子固体電解質からなる膜(以下、本発明においては高分子固体電解質膜という)を有していても良い。
高分子固体電解質膜は、リチウムイオン伝導性を有する高分子固体電解質による層であれば制限はなく、電極活物質成形体に含まれる高分子固体電解質と同じであっても異なっていても良く、高分子固体電解質膜には公知のリチウムイオン伝導性高分子固体電解質を用いることができるほか、リチウムイオンを含む公知の固体状帯電防止剤(三光化学工業株式会社製サンコノール等)を用いることができる。
高分子固体電解質膜を有している場合、電極活物質成形体に含まれる電極活物質と、対極の電極活物質又は対極であるリチウム金属とが直接接触することによる不具合を防止できる点で好ましい。
なお、全固体リチウムイオン二次電池において正極と負極との間に配置される高分子固体電解質膜をセパレータという場合もある。
【0041】
本発明の製造方法は、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物とリチウム塩とを含んでなる高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含み、溶剤を含まない混合物を圧縮成形する工程(以下、圧縮成形工程とも言う)を含む、全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体の製造方法である。
【0042】
圧縮成形工程では、上記混合物を圧縮成形する。
圧縮成形は、ロールプレス装置及び油圧プレス装置等の任意の加圧装置及び加圧治具を用いて行うことができる。例えば、円筒形状又は直方体の有底容器内に混合物を入れて、その上から加圧治具を挿入し、加圧装置により圧縮することで成形された成形体が得られる。
加圧治具の形状を変更することにより、任意の形状の成形体を得ることができる。
成形体の形状は、厚さ100~1000μmとすることが好ましい。
【0043】
圧縮成形工程における条件は、高分子固体電解質が融点を有する場合には融点以下の環境温度であることが好ましい。
このようにすると、圧縮成形工程後の電極活物質成形体の形状が崩れることなく安定した形で得られる。また、表面状態が平滑な電極活物質成形体が得られる。
【0044】
また、加圧装置の加圧治具の温度を高分子固体電解質の融点未満であることが好ましい。
圧縮成形工程を行う部屋の室温が溶媒の融点よりも高い場合であっても、加圧装置の加圧治具の温度を低くすることによって、圧縮成形工程における環境温度を非プロトン性溶媒の融点未満にすることができる。
加圧装置の加圧治具の温度を低くする方法としては、加圧治具内に冷却管を配し、冷凍装置を経て冷却された水又は冷凍液を冷却管に流通させる方法等が挙げられる。
【0045】
圧縮成形工程における環境温度以外の圧縮条件としては、上記混合物にかかる圧力は5~500MPa(さらに好ましくは5~300MPa、特に好ましくは5~200MPa)であることが好ましい。また、加圧時間は1~300秒であることが好ましい。
【0046】
圧縮成形工程において混合物に圧力を加えると、詳細は明らかではないが、高分子固体電解質の表面が軟化又は溶融することがあり得る。圧縮成形工程において加圧により軟化又は溶融した高分子固体電解質が、常圧に戻した時に再び固化することにより、高分子固体電解質が電極活物質間を結合する機能を発現させ、厚みが一定で亀裂のないだけでなく、電気特性が良好な電極活物質成形体ができていることも考えられる。
【0047】
圧縮成形工程は、集電体上で行ってもよい。集電体上に混合物を配置して圧縮成形を行うことにより、集電体上で電極活物質成形体が得られる。
集電体上で得られた電極活物質成形体は、集電体とともにリチウムイオン電池の電極として使用することができる。
【0048】
上記工程により、電極活物質成形体を得ることができる。
上記圧縮成形工程によって得られた電極活物質成形体は、溶剤を用いていないにもかかわらず、混合物中の高分子固体電解が電極活物質間を結合しているため、その形状を維持することが出来る。
【0049】
上記工程により得られた電極活物質成形体は、集電体に重ね、更に対極である電極活物質成形体又はリチウム金属箔と対極集電体とを重ねた積層体を電池外装容器(ラミネート容器等)内に配置し、集電体に接続した電流取り出し用端子を容器の外側に出した状態で電池外装容器を封止することで全固体リチウムイオン二次電池とすることができる。
【0050】
また、電極活物質成形体を集電体の上で得た場合には、集電体と合わせて電極活物質成形体を電極として用いて全固体リチウムイオン二次電池を製造することも可能である。
【実施例
【0051】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0052】
<製造例1:高分子固体電解質の作製>
乾燥空気で置換したグローブボックス内において、ポリオキシエチレン鎖を有する高分子化合物としてPEG4000(富士フイルム和光純薬株式会社、試薬)10重量部、リチウム塩としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(東京化成工業株式会社、試薬)3重量部及び超脱水エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社、試薬)100部を、撹拌装置付きの容器内で撹拌して均一に溶解し、その後55℃で2時間減圧乾燥することでエタノールを留去して高分子固体電解質を作製した。
【0053】
<製造例2:高分子固体電解質膜の作製>
三光化学工業株式会社製サンコノールTBX-310のペレットを厚さ68μmに加圧成形し、高分子固体電解質膜を作製した。
【0054】
<製造例3:樹脂集電体の作製>
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー (株)製]70部、ニッケル粒子[Vale社製]25部、及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融 混練して樹脂混合物を得た。 得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それをフィルム形状に成形することで、膜厚85μmの導電性樹脂層を得た。 この導電性樹脂層の両主面に、真空蒸着法により銅の金属層を厚さ5nmでそれぞれ形成 して、金属層を両面に設けた樹脂集電体を得た。
【0055】
<実施例1:全固体リチウムイオン二次電池用電極>
製造例1で作成した高分子固体電解質19重量部と、電極活物質としてリチウムイオン電池用ハードカーボン負極材(株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製、商品名カーボトロン(登録商標))60重量部と、導電助剤として導電性炭素フィラー:カーボンナノファイバー[昭和電工(株)製 VGCF(登録商標)](アスペクト比:60、電気抵抗率:40μΩm)1重量部とを、遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで1分間かけて均一混合し、高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物を得た。
次いで、プレス機(アズワン製ハイプレッシャージャッキ、型式J-5)を用いて集電体となる銅箔(厚さ25μm)の上で前記の混合物10重量部に60℃の環境下で20MPaの圧力をかけて成形し、直径15mm厚さ200μmの円形である本発明の電極活物質成形体及び本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体と集電体とを含む全固体リチウムイオン二次電池用電極を作成した。
得られた電極の外観観察を行ったところ、電極活物質層にひび割れなく平滑な表面を有することが確認できた。
【0056】
<実施例2:全固体リチウムイオン二次電池>
実施例1で作製した全固体リチウムイオン二次電池用電極と、製造例2で作製した高分子固体電解質膜と、対極になるリチウム金属箔(厚さ500μm)と、銅箔(厚さ25μm)とを順に積層し、さらにプレス機アズワン製ハイプレッシャージャッキ、型式J-5)を用いて120℃の条件下で20MPaの圧力を3回かけて各層を密着させ、さらに市販のラミネートフィルムで封止して本発明の全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
【0057】
<実施例3:全固体リチウムイオン二次電池用電極>
集電体となる銅箔を、製造例3で得られた樹脂集電体に代えた以外は実施例1と同様にして、本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体と集電体とを含む全固体リチウムイオン二次電池用電極を作製した。
得られた電極の外観観察を行ったところ、電極活物質層にひび割れなく平滑な表面を有することが確認できた。
【0058】
<実施例4:全固体リチウムイオン二次電池>
銅箔(厚さ25μm)と、実施例3で作製した全固体リチウムイオン二次電池用電極と、製造例2で作製した高分子固体電解質膜と、対極になるリチウム金属箔(厚さ500μm)と、製造例3で作製した樹脂集電体と、銅箔(厚さ25μm)とを順に積層し、実施例2と同様にプレス機を用いて圧力をかけて各層を密着させ、さらにラミネートフィルムで封止して、本発明の全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
【0059】
<比較例1:比較の全固体リチウムイオン二次電池>
製造例1で作成した高分子固体電解質(19重量部)、リチウムイオン電池用ハードカーボン負極材(60重量部)、カーボンナノファイバー(1重量部)及び超脱水エタノール(100重量部)を撹拌装置付きの容器内で撹拌して均一に混合して分散液を作成した。分散液を集電体となる銅箔上にアプリケータを用いて塗布し、次いで55℃で2時間減圧乾燥することでエタノールを乾燥留去して高分子固体電解質と電極活物質と導電助剤とを含む混合物からなる電極活物質層(厚さ213μm)を集電体上に有する比較用の電極を作成した。
得られた比較用電極に含まれる集電体上の電極活物質層の表面には微細なひび割れがあり、それに伴う表面の凹凸が確認できた。
次いで、比較用の電極に、製造例2で作成した高分子固体電解質膜と、対極になるリチウム金属箔(厚さ500μm)と、銅箔(厚さ25μm)とを順に積層し、実施例2と同様にプレス機を用いて圧力をかけて各層を密着させ、さらにラミネートフィルムで封止して、比較用の全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
【0060】
実施例2及び4及び比較例1の全固体リチウムイオン二次電池の充放電特性評価を以下に示した方法で行い、その結果を表1に記載した。
(充放電試験条件)
充放電測定装置「HJ0501SM」[北斗電工(株)製]に接続した全固体リチウムイオン二次電池を加圧容器に入れ、次いで加圧容器内を約4気圧に加圧した。
次いで、45℃の条件下で定電流定電圧充電方式により、まず0.01Cの電流で0Vまで充電して10分間の休止を行った。その後0.01Cの電流で1.5Vまで放電して10分間の休止の後に再び0.01Cの電流で0Vまで充電した。その後、前記の10分間の休止時間を挟んで行う0.01Cでの0Vまで充電と0.01Cでの1.5Vまで放電とを回繰り返し、合計10回の充放電を行った。
このうち、1回目の放電試験によって得られた放電電気量の値を放電容量、および1回目と10回目の放電容量の比率を容量維持率%として表1に記載した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1及び3で得られた全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、比較用の全固体リチウムイオン二次電池用電極に比べ、電極活物質層にひび割れもなく、表面の平滑性に優れていた。
【0063】
さらに、実施例2及び4で得られた全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体を用いた全固体リチウムイオン二次電池は、比較例1で作製した全固体リチウムイオン二次電池に比べて電気特性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の全固体リチウムイオン二次電池用電極活物質成形体は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車に用いられリチウムイオン二次電池等に有用である。