IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スライド制限装置 図1
  • 特許-スライド制限装置 図2
  • 特許-スライド制限装置 図3
  • 特許-スライド制限装置 図4
  • 特許-スライド制限装置 図5
  • 特許-スライド制限装置 図6
  • 特許-スライド制限装置 図7
  • 特許-スライド制限装置 図8
  • 特許-スライド制限装置 図9
  • 特許-スライド制限装置 図10
  • 特許-スライド制限装置 図11
  • 特許-スライド制限装置 図12
  • 特許-スライド制限装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】スライド制限装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 3/04 20060101AFI20230405BHJP
   E05B 9/08 20060101ALI20230405BHJP
   E05B 65/08 20060101ALI20230405BHJP
   E05C 17/60 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
E05C3/04 C
E05B9/08 H
E05B65/08 P
E05C17/60 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019218258
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088826
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 麻美
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-55504(JP,A)
【文献】特開2017-150218(JP,A)
【文献】特開2021-55316(JP,A)
【文献】特開2015-45215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 9/08
E05B 65/08
E05C 3/04
E05C 17/60
E05F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的にスライド可能に配設された室内側の内面材及び室外側の外面材の間に構成され、ベースを介して前記内面材に取り付けられるピン部材と、前記ピン部材が挿通される溝状のガイド孔を有し、回転可能となる状態で前記外面材に取り付けられるアーム部材とを備え、前記ガイド孔を介して前記ピン部材を前記アーム部材に貫通させることにより前記内面材及び前記外面材の相対的なスライドを制限するスライド制限装置であって、
前記ベースは、前記内面材と、前記内面材に設けられるクレセント錠のクレセントとの間に介在し、前記クレセントの台座とともに取付ネジによって前記内面材に取り付けられる支持台部を有したものであり、
前記支持台部は、前記取付ネジが挿通されるネジ挿通孔が設けられ、かつ金属によって成形されたネジ挿通部を有し
前記ネジ挿通部において前記内面材との取付面となる部分には、周囲よりも突出した突出当接部が形成されていることを特徴とするスライド制限装置。
【請求項2】
前記支持台部は、前記クレセントの台座を支持し、かつ金属によって成形された台座支持部を有していることを特徴とする請求項1に記載のスライド制限装置。
【請求項3】
前記ピン部材の周囲となる部分には、前記ネジ挿通部と一体の金属によって成形されたピン支持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド制限装置。
【請求項4】
前記ベースは、樹脂によって成形された樹脂ベース部を有し、前記樹脂ベース部は、少なくとも前記ネジ挿通部において前記クレセントに対向する外表面及び前記内面材に対向する外表面を外部に露出させるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き違い窓や片引き窓等のように、相対的にスライド可能に配設された室内側の内面材及び室外側の外面材を備えた建具を適用対象とし、内面材及び外面材の相対的なスライドを制限するスライド制限装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、2枚の障子がそれぞれ枠体に対してスライド可能に配設された引き違い窓には、内面材である室内側の内障子と、外面材である室外側の外障子との間にスライド制限装置が設けられたものがある。スライド制限装置は、内障子に設けたピン部材と、外障子に設けたアーム部材とを備えて構成されている。ピン部材は、見込み方向に沿って移動可能となる状態でブラケットを介して内障子の召し合わせ框に取り付けられている。アーム部材は、見込み方向に沿った軸心を中心として回転することが可能となる状態で外障子の召し合わせ框に取り付けられている。アーム部材には、長手方向に沿って溝状のガイド孔が設けられている。
【0003】
このスライド制限装置では、2枚の障子が閉じられている場合、ピン部材がアーム部材のガイド孔に対向して配置されており、ピン部材を突出する方向に移動させると、ピン部材の先端部がガイド孔を介してアーム部材を貫通した状態となる。この状態から、例えば内障子を開く方向にスライドさせると、アーム部材が適宜回転することでピン部材がガイド孔に沿って移動する。やがて、ガイド孔の端部においてピン部材がアーム部材に当接し、以降の内障子のスライドが阻止される。
【0004】
この種のスライド制限装置は、内障子と外障子との間を施錠するクレセント錠とともに障子に取り付けられているものが多く提供されている。上述した特許文献1においても、外障子に取り付けられたクレセント受けにアーム部材が回転可能に支持され、かつピン部材を支持するベースの支持台部を介してクレセントが内障子にネジ止されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-150218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今の建具では、防火性についても考慮が必要となっている。上述したスライド制限装置が設けられていない建具では、框の金属部分に直接クレセントの台座がネジ止めされている。このため、火災発生時等のように、建具が高温に晒された場合にも框に対するクレセントの取付状態が維持されることになる。従って、内障子と外障子との間に火炎の貫通口が生じる等の問題が招来されるおそれもない。しかしながら、スライド制限装置が設けられる建具では、上述のようにクレセントの台座と框との間にベースの支持台部が介在されるため、支持台部を含めて防火性を考慮することが好ましい。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、適用する建具の防火性を向上させることのできるスライド制限装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライド制限装置は、相対的にスライド可能に配設された室内側の内面材及び室外側の外面材の間に構成され、ベースを介して前記内面材に取り付けられるピン部材と、前記ピン部材が挿通される溝状のガイド孔を有し、回転可能となる状態で前記外面材に取り付けられるアーム部材とを備え、前記ガイド孔を介して前記ピン部材を前記アーム部材に貫通させることにより前記内面材及び前記外面材の相対的なスライドを制限するスライド制限装置であって、前記ベースは、前記内面材と、前記内面材に設けられるクレセント錠のクレセントとの間に介在し、前記クレセントの台座とともに取付ネジによって前記内面材に取り付けられる支持台部を有したものであり、前記支持台部は、前記取付ネジが挿通されるネジ挿通孔が設けられ、かつ金属によって成形されたネジ挿通部を有し、前記ネジ挿通部において前記内面材との取付面となる部分には、周囲よりも突出した突出当接部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取付ネジが挿通されるネジ挿通部を金属によって成形しているため、適用する建具が高温に晒された場合にも、内面材に対するクレセントの取付状態を維持することが可能となる。従って、内面材と外面材との間に火炎の貫通口が生じる等の問題が招来されるおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態であるスライド制限装置を適用した建具を室内側から見た図である。
図2図1に示した建具に適用されるクレセントの一例を示す分解斜視図である。
図3図1に示した建具の要部を室内側から見た拡大図である
図4図1に示した建具の要部を示す拡大縦断面図である。
図5図1に示したスライド制限装置を建具に取り付ける以前の状態を示す要部分解斜視図である。
図6図1に示した建具の要部を室外側から見た拡大図である。
図7図5に示す状態から建具にベースを取り付けた状態の要部分解斜視図である。
図8図7に示す状態から建具にクレセントを取り付けた状態の要部斜視図である。
図9図1に示したスライド制限装置のピン部材及びベースを示す分解斜視図である。
図10図1に示したスライド制限装置のピン部材及びベースを示すもので、(a)は樹脂ベース部を表面側から見た図、(b)は金属ベース部を表面側から見た図、(c)は樹脂ベース部及び金属ベース部を組み合わせた状態を表面側から見た図である。
図11図1に示したスライド制限装置のピン部材及びベースを示すもので、(a)は樹脂ベース部を裏面側から見た図、(b)は金属ベース部を裏面側から見た図、(c)は樹脂ベース部及び金属ベース部を組み合わせた状態を裏面側から見た図である。
図12図1に示したスライド制限装置のピン部材及びベースを示すもので、(a)は樹脂ベース部を室外側から見た図、(b)は金属ベース部を室外側から見た図、(c)は樹脂ベース部及び金属ベース部を組み合わせた状態を室外側から見た図である。
図13図1に示したスライド制限装置及びクレセントを示すもので、(a)は分解平面図、(b)は(a)におけるB-B線分解断面図、(c)は(a)におけるC-C線分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るスライド制限装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるスライド制限装置を適用した建具を示したものである。ここで例示する建具は、内面材である室内側の障子(以下、内障子10という)と、外面材である室外側の障子(以下、外障子20という)とがそれぞれ枠体30に対してスライド可能に配設された引き違い窓である。枠体30は、上枠31、下枠32及び左右の縦枠33,34を四周枠組みすることによって構成したものである。内障子10は、矩形状を成すガラス板11の四周に上框12、下框13及び左右の縦框14,15を装着することによって構成したものである。外障子20についても、内障子10と同様、矩形状を成すガラス板21の四周に上框22、下框23及び左右の縦框24,25を装着することによって構成したものである。これら内障子10及び外障子20は、それぞれにおいて召し合わせとなる縦框14,24を互いに見込み方向に並設した場合に、枠体30の内部開口30aを閉塞することのできる大きさに構成してある。すなわち、この建具では、内障子10及び外障子20を互いに閉じ位置に配置した場合に枠体30の内部開口30aが閉塞され、かつそれぞれの召し合わせとなる縦框14,24が互いに見込み方向に並設されることになる。
【0012】
召し合わせとなる縦框14,24とは、内障子10の室内側から見て左側に位置する縦框(以下、単に内召し合わせ框14という)であり、外障子20の室内側から見て右側に位置する縦框(以下、単に外召し合わせ框24という)である。また、見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については、見込み面と称する。また、以下の説明では、見付け方向という用語を用いる場合もある。見付け方向は、上枠31や下枠32等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠33,34等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する。
【0013】
図には明示していないが、本実施の形態で適用する内障子10及び外障子20は、それぞれの框がアルミニウム合金等の金属と樹脂との複合構造となっている。すなわち、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し型材から成る金属成形部分Mと、金属成形部分Mの室内側に装着した樹脂製の樹脂成形部分Pとを備えた複合材としてそれぞれの框が構成してある。樹脂成形部分Pは、框に対して断熱性及び外観品質を向上させることを目的として、主に金属成形部分Mの室内側となる部分に設けてある。
【0014】
この建具には、内召し合わせ框14と外召し合わせ框24との間に、クレセント錠40及びスライド制限装置50が設けてある。クレセント錠40は、内障子10及び外障子20が閉じた位置に配置された状態で施錠された場合にこれらの相対移動を阻止することで枠体30の内部開口30aを閉塞した状態に維持するものである。スライド制限装置50は、クレセント錠40が解錠された状態において内障子10及び外障子20の相対的なスライドを制限するためのものである。クレセント錠40は、クレセント40A及びクレセント受け40Bを備えて構成してあり、スライド制限装置50は、アーム部材50A及びピン部材50Bを備えて構成してある。
【0015】
図1図9に示すように、クレセント40Aは、台座41に対して係合皿部42が回転可能に配設されたものである。台座41は、金属製の取付ネジ43を螺合することによって内召し合わせ框14の内周側となる見込み面14aにネジ止めされるもので、内召し合わせ框14の長手に沿って縦長となるように構成してある。この台座41には、基板部41a、皿支持部41b及び2つの取付板部41cが設けてある。基板部41aは、台座41の中央部分において平板状に構成したものである。基板部41aの中心部分には、軸挿通孔41dが貫通している。皿支持部41bは、基板部41aにおいて軸挿通孔41dの周囲となる部分から突出したものである。取付板部41cは、それぞれ框14の長手に沿って縦長状となるネジ挿通調整孔41eを有したもので、基板部41aの両側に設けてある。ネジ挿通調整孔41eは、取付ネジ43のネジ軸部43aを挿通可能、かつ取付ネジ43の頭部43bを挿通不可とする寸法に形成してある。図からも明らかなように、これら基板部41a及び2つの取付板部41cには、それぞれの周縁部に連続するように周壁部41fが設けてある。周壁部41fは、台座41において内召し合わせ框14に対向する取付面が開口するように構成してある。
【0016】
この台座41の内部には、支持金具44が配設してある。支持金具44は、台座41の構造体となるもので、主板部44a、皿支持突部44b、2つのネジ挿通座部44c及び2つの框支持突部44dを有している。
【0017】
主板部44aは、台座41の内部において基板部41aに当接されるもので、平板状に構成してある。主板部44aには、基板部41aの軸挿通孔41dに対応する部分に貫通孔44eが設けてある。皿支持突部44bは、主板部44aにおいて外障子20に近接する側(室外側)の縁部中央から基板部41aに向けて突出する小片である。ネジ挿通座部44cは、台座41の取付板部41cに対応して設けられたもので、中空の直方体状を成している。それぞれのネジ挿通座部44cには、取付板部41cのネジ挿通調整孔41eに対応する部分に、ほぼ同一形状のネジ貫通孔44fが設けてある。框支持突部44dは、主板部44aにおいて外障子20に近接する側の縁部から皿支持突部44bとは逆方向に向けて突出した小片であり、主板部44aとネジ挿通座部44cとの境界となる部分に設けてある。
【0018】
この支持金具44は、主板部44aを台座41の基板部41aに当接させた場合に、皿支持突部44bの突出端部が皿支持部41bに当接されるとともに、ネジ挿通座部44cが取付板部41cに当接し、かつネジ挿通座部44c及び框支持突部44dがそれぞれ周壁部41fの開口端面から突出した状態となる。
【0019】
クレセント40Aの係合皿部42は、中心部に設けた支持軸42aを台座41の軸挿通孔41d及び支持金具44の貫通孔44eに挿通させた後、支持軸42aの端部に止め金具45を装着することにより、台座41の支持金具44に対して脱落することなく支持軸42aを中心に回転可能に支持されたものである。この係合皿部42には、周縁部の一部に係合壁42bが設けてあるとともに、径方向に向けてハンドル46が延設してある。係合壁42bは、後述するクレセント受け40Bの爪部47aに係合する部分であり、支持軸42aの軸方向に沿って突出している。ハンドル46は、台座41に対して係合皿部42を回転操作するためのものである。
上記の構成を有するクレセント40Aは、後述するスライド制限装置50のベース60を介して内召し合わせ框14の見込み面14aに取り付けられることになる。
【0020】
クレセント受け40Bは、平板状を成す受け基板47の一端部に爪部47aを有したものである。このクレセント受け40Bは、ブラケットBを介して外召し合わせ框24に取り付けてある。ブラケットBは、外召し合わせ框24の内周側となる見込み面24aよりも内周側に突出したプレート状を成すものである。クレセント受け40Bは、爪部47aがクレセント40Aの係合皿部42に対応する高さ位置において室内側となる状態でブラケットBの突出縁部に支持してある。
【0021】
スライド制限装置50のアーム部材50Aは、幅に比べて長さの大きな板状部材であり、見込み方向に沿った回転軸51を介してブラケットBの下端部に回転可能に取り付けてある。アーム部材50Aには、ガイド孔52が設けてある。ガイド孔52は、アーム部材50Aの長手方向に沿って延在し、かつ両端が閉塞した溝状の切欠である。ガイド孔52において回転軸51に近接する端部には、開口幅の広い挿入部52aが設けてある。このアーム部材50Aは、外力を加えていない場合、自重によって垂下し、回転軸51から鉛直下方に沿って延在している。
【0022】
ピン部材50Bは、円柱状を成す軸部53と、軸部53の先端部に設けられた係合部54とを有したものである。係合部54は、軸部53よりも外径の大きな円板状を成すもので、軸部53の周囲全周に設けてある。軸部53の外径は、ガイド孔52に挿通可能となる寸法に形成してある。係合部54の外径は、ガイド孔52の開口幅よりも大きく、かつ挿入部52aには挿入可能となる寸法に形成してある。このピン部材50Bは、軸部53の軸心に沿って移動可能となる状態でスリーブ55に配設してある。図には明示していないが、スリーブ55とピン部材50Bとの間には、スリーブ55の端部からキー部材を挿入して操作することにより、スリーブ55に対してピン部材50Bを進退移動させるスライド機構が構成してある。上述の構成を有するピン部材50Bは、スリーブ55を介してベース60のピン収容部60Aに収容した状態で取り付けてある。ピン収容部60Aは、両端が開口した筒状に構成したものである。
【0023】
ベース60は、ピン収容部60Aと一体の支持台部60Bを有している。支持台部60Bは、ピン収容部60Aの外周面から延在した板状を成すもので、クレセント40Aの台座41よりも大きな縦横寸法を有している。図からも明らかなように、ピン収容部60Aは、支持台部60Bの表面側(外部に露出する側)からのみ突出し、裏面側(内召し合わせ框14の見込み面14aに対向する取付面側)には突出することなく支持台部60Bに連結してある。
【0024】
支持台部60Bの表面側には、2つのネジ孔調整溝61及び2つの調整凹部62が設けてある。ネジ孔調整溝61は、支持台部60Bの延在方向に沿って長手となる凹所であり、上述したクレセント40Aのネジ挿通座部44cを収容することのできる幅に形成してある。ネジ孔調整溝61の長手に沿った寸法は、クレセント40Aのネジ挿通座部44cがネジ挿通調整孔41eの長さ分だけ移動できるように設定してある。それぞれのネジ孔調整溝61には、ネジ挿通孔63が形成してある。ネジ挿通孔63は、取付ネジ43のネジ軸部43aを挿通可能、かつ取付ネジ43の頭部43bを挿通不可とする寸法の円形に形成してある。調整凹部62は、クレセント40Aに設けた框支持突部44dを収容可能とする幅を有した凹所である。調整凹部62の延在長さは、ネジ孔調整溝61とほぼ同じである。
【0025】
支持台部60Bの裏面側には、突出当接部64が設けてある。突出当接部64は、2つのネジ挿通孔63の間において2つの調整凹部62の裏面側を覆う位置に、周囲よりも突出するように設けた縦長の突出部である。突出当接部64の突出寸法は、内召し合わせ框14の見込み面14aを覆う樹脂成形部分Pの板厚とほぼ等しくなるように形成してある。
【0026】
図10図12は、本実施の形態で適用するスライド制限装置50のベース60を示したものである。図からも明らかなように、ベース60は、金属によって成形した金属ベース部70と、樹脂によって成形した樹脂ベース部80とを備えて構成してある。図示の例では、金属ベース部70と樹脂ベース部80とを明確化するために便宜上、金属ベース部70にのみドットが施してある。
【0027】
金属ベース部70は、調整凹部62が設けられた台座支持部71と、ネジ挿通孔63が設けられたネジ挿通部72と、突出当接部64と、ピン支持部73とを一体に成形したものである。台座支持部71は、支持台部60Bの延在方向に沿って延在したもので、その両端部に調整凹部62を有している。ネジ挿通部72は、ネジ孔調整溝61を含む部分であり、台座支持部71の両端部において外障子20から離隔した側(図10において右側)の縁部に設けてある。一方のネジ挿通部72の裏面側となる部分には、係合凹部72aが形成してある。これら台座支持部71及びネジ挿通部72は、それぞれの表面が同一の平面上に位置するように設けてあり、クレセント40Aを重ね合わせた場合にそのほぼ全面が覆い隠される大きさに構成してある。突出当接部64は、台座支持部71及び2つのネジ挿通部72の裏面側を覆うように設けてある。突出当接部64において台座支持部71から突出し、かつネジ挿通部72の間に位置する部分は、台座支持部71の表面との間に段差が生じるように表面が窪んで構成してある。ピン支持部73は、ピン部材50Bの軸部53を挿通することのできるピン孔73aを有し、ピン孔73aに挿通されたピン部材50Bの進退移動をガイドするものである。図からも明らかなように、このピン支持部73は、ピン収容部60Aにおいて外障子20に近接した端部に配置され、連結板部74を介して台座支持部71及びネジ挿通部72に連結してある。上述の金属ベース部70は、例えばアルミニウム合金やステンレス鋼を材料としてロストワックスにより、容易に、かつ比較的安価に成形することが可能である。
【0028】
樹脂ベース部80は、上述したピン収容部60Aと、台座支持部71及びネジ挿通部72の周囲となる部分に設けられるカバー基部81とを一体に成形したものである。樹脂ベース部80のカバー基部81は、台座支持部71及びネジ挿通部72が嵌め込まれる切欠部81aを有しており、この切欠部81aに台座支持部71及びネジ挿通部72を嵌合させることにより、台座支持部71及びネジ挿通部72が表裏両面において外部に露出した状態で金属ベース部70に装着されている。図からも明らかなように、カバー基部81には、突出当接部64の表面側を覆う第1表面カバー81b及び連結板部74の表面側を覆う第2表面カバー81cが設けてあるとともに、切欠部81aにおいてネジ挿通部72の係合凹部72aに対応する部分に係合突部82が設けてある。第1表面カバー81b及び第2表面カバー81cは、カバー基部81に対して金属ベース部70が表面側に移動するのを規制し、かつ係合突部82は、カバー基部81に対して金属ベース部70が裏面側に移動するのを規制するものである。つまり、金属ベース部70は、第1表面カバー81b、第2表面カバー81c及び係合突部82によって相対移動が規制され、樹脂ベース部80と一体に取り扱うことが可能となっている。
【0029】
上述のベース60を介して内召し合わせ框14の見込み面14aにクレセント40Aを取り付けるには、図5に示すように、内召し合わせ框14の見込み面14aに金属成形部分Mを外部に露出させるように樹脂成形部分Pの一部に予め取り付け穴P1を形成しておく。取り付け穴P1の寸法は、ベース60の裏面を見込み面14aに当接させた場合に、突出当接部64の全面が金属成形部分Mに当接することのできる大きさに形成しておけば良い。また、取り付け穴P1には、金属成形部分Mに形成したネジ孔P2の周囲を外部に露出させるように切欠溝P3を連続させることが好ましい。
【0030】
上記のように取り付け穴P1を設けた内召し合わせ框14の見込み面14aに対しては、図7に示すように、ピン収容部60Aが下方となる姿勢でベース60を配置し、さらに、ベース60の支持台部60Bにクレセント40Aを重ね合わせる。この状態から、台座41のネジ挿通調整孔41e、支持金具44のネジ貫通孔44f及びベース60のネジ挿通孔63を介して金属成形部分Mのネジ孔P2に取付ネジ43を螺合すれば、図8に示すように、内召し合わせ框14とクレセント40Aとの間にベース60の支持台部60Bを介在させた状態でクレセント錠40のクレセント40A及びスライド制限装置50のピン部材50Bが内召し合わせ框14に取り付けられることになる。取付ネジ43を螺合する際には、台座41のネジ挿通調整孔41e及び支持金具44のネジ貫通孔44fが長孔状に形成してあるため、ベース60に対して台座41の位置調整を行うことができ、内召し合わせ框14のクレセント40Aと外召し合わせ框24のクレセント受け40Bとを確実に係合させることが可能である。なお、取付ネジ43を螺合した後においては、取付板部41cに台座カバー48を装着することにより、取付ネジ43を覆うことで外観品質の向上を図ることが可能となる。
【0031】
上記のようにしてスライド制限装置50を設けた建具では、内障子10及び外障子20が閉じ位置に配置されている場合、ピン部材50Bの延長上にアーム部材50Aに設けたガイド孔52の挿入部52aが対向することになる。従って、キー部材の操作によってピン部材50Bを進出移動させれば、ガイド孔52を介してピン部材50Bがアーム部材50Aを貫通した状態となる。この状態からクレセント錠40を解錠して内障子10及び外障子20を相対的にスライドさせると、ピン部材50Bがガイド孔52の端部においてアーム部材50Aに当接し、以降の相対的なスライドが制限される。これにより、例えば人の出入りができない状態で室内の換気を行うことが可能となる。
【0032】
上述したように、クレセント40Aと内召し合わせ框14との間に介在するベース60の支持台部60Bには、金属によって成形した台座支持部71、ネジ挿通部72及び突出当接部64が設けられている。しかも、これら台座支持部71、ネジ挿通部72及び突出当接部64が内召し合わせ框14の見込み面14a及びクレセント40Aの支持金具44に介在した状態で台座41から内召し合わせ框14のネジ孔P2に取付ネジ43が螺合されている。さらに、突出当接部64については、内召し合わせ框14の金属成形部分Mに対して直接当接した状態にある。従って、火災発生時等のように、建具が高温に晒された場合にも框14に対するクレセント40Aの取付状態が維持されることになる。より具体的に説明すると、図13(a)及び図13(b)に示すように、支持金具44のネジ挿通座部44cが金属ベース部70のネジ挿通部72にネジ孔調整溝61に支持された状態でクレセント40Aを取り付けるために取付ネジ43が螺合されているため、高温に晒されて建具の樹脂部品が溶融したり焼失したとしても、クレセント40Aの取付姿勢が変化することはなく、係合皿部42とクレセント受け40Bの爪部47aとの係合状態が継続して維持される。これにより、内障子10と外障子20との間に火炎の貫通口が生じる等の問題が招来されるおそれがない。
【0033】
さらに、上述したスライド制限装置50では、図13(c)に示すように、クレセント40Aに設けた支持金具44の框支持突部44dが金属ベース部70の台座支持部71に設けた調整凹部62に支持されるとともに、支持金具44の皿支持突部44b(図2参照)がクレセント40Aの係合皿部42に近接して配置されている。従って、クレセント受け40Bを設けた外障子20の外召し合わせ框24が熱変形によって室外側に湾曲しようとしても、係合皿部42が引き摺られるおそれがない。これにより、係合皿部42とクレセント受け40Bの爪部47aとの係合状態が解除されることはなく、内障子10と外障子20との間に火炎の貫通口が生じるおそれがない。
【0034】
しかも、実施の形態の建具では、スライド制限装置50において室内側に配置されるベース60が樹脂ベース部80を有し、かつクレセント40Aを取り付けた状態においては金属ベース部70のほとんどが台座41によって覆い隠される。つまり、室内側から視認されるベース60は、ほとんどが樹脂ベース部80となり、框12,13,14,15が複合構造となった内障子10の外観品質に影響を与えるおそれがない。上述のようにベース60の金属ベース部70は、クレセント40Aの台座41によって覆い隠されるため、外観品質を向上するための塗装を施す必要がなく、製造コストを抑えることが可能である点でも有利である。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、内障子10及び外障子20がいずれも枠体30に対してスライド可能となる引き違い窓を対象としたスライド制限装置50を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、室外側の面材が固定で室内側の面材のみがスライドする片引き窓や、内面材が固定で外面材のみがスライドする片引き窓にも同様に適用可能である。また、スライドする面材として四周に框を備えた障子を例示しているが、ドア等のように框を有していない面材であっても良い。さらに、固定側の面材についてはパネルによって構成した壁であっても構わない。
【0036】
また、上述した実施の形態では、クレセント40Aや内召し合わせ框14の詳細構成について説明しているが、クレセント40Aや内召し合わせ框14の構成については実施の形態のものに限らない。例えば、クレセント40Aに設けられる支持金具44のネジ挿通座部44cや框支持突部44dは必ずしも台座41の周壁部41fから突出している必要はない。同様に、内召し合わせ框14については、必ずしも複合構造となっている必要はなく、金属のみによって成形されていても良いし、樹脂のみによって成形されていても良い。但し、樹脂のみによって内召し合わせ框14が成形されたものの場合には、内部に金属製の補強材を設け、この補強材に取付ネジ43を螺合させることが好ましい。
【0037】
さらに、上述した実施の形態では、ピン部材50Bとして軸方向に移動するものを例示しているが、必ずしもピン部材50Bは移動する必要はなく、常にアーム部材50Aのガイド孔52に貫通していても良い。なお、ピン部材50Bの詳細構成及びアーム部材50Aの詳細構成についても実施のものに限定されない。
【0038】
またさらに、上述した実施の形態では、ネジ挿通部72に対して台座支持部71や突出当接部64を一体に成形しているため、部品点数が増大する事態を防止することができる。しかしながら、必ずしもネジ挿通部72に対して台座支持部71や突出当接部64が一体に成形されている必要はない。また、ネジ挿通部72に対してピン支持部73を一体に設けているため、ピン部材50Bがアーム部材50Aのガイド孔52に貫通されている状態において内面材や外面材に大きな外力が加えられた場合にも金属のピン支持部73によってピン部材50Bを支持することが可能となり、強度の点で有利となる。しかしながら、必ずしもピン支持部73は一体である必要はなく、またピン支持部73を設けることも必須ではない。
【0039】
以上のように、本発明に係るスライド制限装置は、相対的にスライド可能に配設された室内側の内面材及び室外側の外面材の間に構成され、ベースを介して前記内面材に取り付けられるピン部材と、前記ピン部材が挿通される溝状のガイド孔を有し、回転可能となる状態で前記外面材に取り付けられるアーム部材とを備え、前記ガイド孔を介して前記ピン部材を前記アーム部材に貫通させることにより前記内面材及び前記外面材の相対的なスライドを制限するスライド制限装置であって、前記ベースは、前記内面材と、前記内面材に設けられるクレセント錠のクレセントとの間に介在し、前記クレセントの台座とともに取付ネジによって前記内面材に取り付けられる支持台部を有したものであり、前記支持台部は、前記取付ネジが挿通されるネジ挿通孔が設けられ、かつ金属によって成形されたネジ挿通部を有していることを特徴としている。
この発明によれば、取付ネジが挿通されるネジ挿通部を金属によって成形しているため、適用する建具が高温に晒された場合にも、内面材に対するクレセントの取付状態を維持することが可能となる。従って、内面材と外面材との間に火炎の貫通口が生じる等の問題が招来されるおそれがなくなる。
【0040】
また本発明は、上述したスライド制限装置において、前記支持台部は、前記クレセントの台座を支持し、かつ金属によって成形された台座支持部を有していることを特徴としている。
この発明によれば、内面材に対してクレセントの取付姿勢が変化する事態を防止することができ、クレセントとクレセント受けとの係合状態がより確実に維持することが可能となる。
【0041】
また本発明は、上述したスライド制限装置において、前記ピン部材の周囲となる部分には、前記ネジ挿通部と一体の金属によって成形されたピン支持部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ピン部材に外力が加えられた場合にも金属製のピン支持部によってこれを支持することができ、アームのガイド孔から逸脱する事態を確実に防止できる等の利点がある。しかも、ピン支持部をネジ挿通部と一体に成形しているため、部品点数が増えることもない。
【0042】
また本発明は、上述したスライド制限装置において、前記ベースは、樹脂によって成形された樹脂ベース部を有し、前記樹脂ベース部は、少なくとも前記ネジ挿通部において前記クレセントに対向する外表面及び前記内面材に対向する外表面を外部に露出させるように設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、クレセントが取り付けられた場合、ベースにおいて外部に露出される部分のほとんどが樹脂によって成形された樹脂ベース部となるため、防火性に影響を与えることなく外観品質の向上を図ることが可能となる。
【0043】
また本発明は、上述したスライド制限装置において、前記ネジ挿通部において前記内面材との取付面となる部分には、周囲よりも突出した突出当接部が形成されていることを特徴としている。
この発明によれば、内面材の外表面が樹脂によって成形されている場合にも、突出当接部に対応する部分のみを切り欠けば、内部の金属部材に対して直接ネジ挿通部を当接させることが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
10 内障子、20 外障子、40 クレセント錠、40A クレセント、41 台座、43 取付ネジ、50 スライド制限装置、50A アーム部材、50B ピン部材、52 ガイド孔、60 ベース、60B 支持台部、63 ネジ挿通孔、64 突出当接部、70 金属ベース部、71 台座支持部、72 ネジ挿通部、73 ピン支持部、80 樹脂ベース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13