(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】締結デバイスを有する位置決めデバイスを含むシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/88 20060101AFI20230405BHJP
A61B 17/68 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61B17/88
A61B17/68
(21)【出願番号】P 2019554908
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2018058636
(87)【国際公開番号】W WO2018185179
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】102017107259.4
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515121597
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテヒニーク ゲーエムベーハー ウント コーカーゲー
【氏名又は名称原語表記】KARL LEIBINGER MEDIZINTECHNIK GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbinger Strasse 10, 78570 Muehlheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】レイナウエル, フランク
(72)【発明者】
【氏名】グロム, ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】グリゴレ, アニータ
(72)【発明者】
【氏名】イリオン, ファイト
(72)【発明者】
【氏名】ハーベル, エルンスト-ヨハネス
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0228969(US,A1)
【文献】特開2005-131284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0070212(US,A1)
【文献】特表2006-500156(JP,A)
【文献】国際公開第2015/089118(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0210224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/88
A61B 17/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋骨部分を支持するように設計された本体を備え、前記頭蓋骨部分を互いに対して相対的に位置決めするため並びに標的の頭蓋形状をなすように所定の全体の形状及び全体の外形を得るための前記頭蓋骨部分用の位置決めデバイスと、前記頭蓋骨部分を前記位置決めデバイスの本体に一時的に締結するための頭蓋骨締結デバイスとを含むシステムであって、ピン形状をなす固定要素部分は、前記頭蓋骨締結デバイスに設けられて、前記頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分を前記位置決めデバイスの前記本体に締結するように、前記頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分の他方側に配置されたカウンタ部分と相互作用しながら、一方側で前記頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分に接触するように設計され、前記本体は、処置される患者に固有である典型的な個々の前記患者のデータに基づくとともに、頭蓋骨の変形部分に対して、統計的に検出した変形されていない頭蓋骨形状を、前記頭蓋骨形状のばらつきを考慮して、調整することによって得られる改変した解剖学的データにより補って形成されるとともに、交差線構造を有する保持構造を含み、
前記保持構造は、ウェブによって互いに空間的に分離される複数の凹部又は貫通孔を有し、前記本体は、前記保持構造の境界を定めるとともに前記本体を完全に囲う周縁部を有し、前記周縁部は、前記ウェブの厚さ又は幅の2倍以上であって4倍以下の高さを有し、前記本体
の前記周縁部から径方向外側に突出している前記位置決めデバイスを把持するための把持要素が前記位置決めデバイスの前側に配置されている、システム。
【請求項2】
前記周縁部は、概ね高さが一定であり、かつ、前記把持要素の領域において高さ方向に厚みを有する、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記位置決めデバイスは、前記本体が球形くさび形状を有するように、前記位置決めデバイスの後側に傾斜部を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記本体が球体の円周の120度~150度で延びる球形くさび形状を有するように、30度~60度の角度を形成している、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記本体は凸状シェルとして形成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記位置決めデバイスは中心線マークを有し、当該中心線マークは、前記後側から前記前側へ直線的に延びている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項7】
頭蓋骨部分を互いに対して定位させるためのシステムである、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋骨部分を支持するように設計された本体を備えて、頭蓋骨部分を互いに対して相対的に位置決めするため並びに標的の頭蓋形状をなすように所定の全体の形状及び全体の外形を得るための頭蓋骨部分用の位置決めデバイスに関する。さらに、本発明は、位置決めデバイス、及び頭蓋骨部分を位置決めするために、頭蓋骨部分を位置決めデバイスに一次的に締結するように構成される1つ以上の締結デバイスが取り付けられた又は1つ以上の締結デバイスが取り付け可能な位置決めデバイスを製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変形した頭蓋骨部分は、頭蓋変形を矯正するため、通常外科的処置により変形されていない形状にされる。
【0003】
先行技術より、変形した頭蓋骨部分の定位(及び矯正)のためのデバイスが既に知られている。特許文献1は、なかでも、滅菌可能な、額部、頭頂部、及び後頭部を含むヒト頭蓋骨の3次元の実物大モデルを公開している。そうした位置決めデバイスは、主に頭蓋成長疾患を矯正させるように使用される。変形した頭蓋骨部分は、外科的処置によって復位され、望ましい頭蓋形状に適合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第2522289A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術には、平均的な子供の頭蓋骨モデルに相当する、頭蓋骨部分を復位させるための位置決めデバイスが使用される、という欠点が常にある。また、広い選択肢の頭蓋骨モデルをもってしても、個々に望まれる頭蓋骨は平均的なモデルに部分的に又は概ね対応するのみである。また、個々の頭蓋骨に対する次に近い平均的なモデルからのずれは著しく大きく、頭蓋骨部分をモデリングする際、最適な結果を得ることができない。ゆえに、外科的処置の成功は外科医の技術と能力とにかかることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、先行技術の欠点を退ける、又は少なくともそれらを軽減することが本発明の目的である。特に、それぞれ個々の頭蓋骨に最適に適合する位置決めデバイスが開発され、外科医が頭蓋骨を手動で調整する必要がなくなるので、頭蓋骨のモデリングが実質的に容易になる。
【0007】
本発明の目的は、例えば一般的な方法ステップにおいて、処置する患者に固有である個々の患者データに基づくとともに改変した解剖学的データにより補った位置決めデバイスの本体を製造することによって、本発明において解決される。
【0008】
標的の頭蓋形状は、健康な変形されていない頭蓋骨の幾何学的データに基づいて平均的な形状、並びに形状の大部分又はすべての特徴的ばらつきを計算することによって画定される。関連する各頭蓋骨面の幾何学的点は、一方の頭蓋骨形状から他方に、解剖学的関連領域の移行、反映、及び適用の少なくともいずれか1つを行うことによって決定され、変形部分の計量的変形を最小化する。つまり、頭蓋骨の変形部分に対して、統計的に検出した変形されていない頭蓋骨形状を、頭蓋骨形状のばらつきを考慮して、調整することによって得られる、この改変した解剖学的データは、変形されていない頭蓋骨形状が形成されるように頭蓋骨の変形部分を調整及び矯正する、個々の望ましい頭蓋骨形状を計算するために、使用可能である。「改変」は、「さらなる加工」という意味に(も)解釈される。つまり、基準点は、同等の変形されていない頭蓋骨において選択され、矯正値として決定され、そしてさらなる加工によって特定の頭蓋骨に取り入れられる。
【0009】
これには、位置決めデバイスの利用により、復位させた頭蓋骨部分を容易に個々の望ましい頭蓋骨形状にすることができるという利点がある。つまり、取り除いた頭蓋骨部分は、位置決めデバイスの外側又は内側に容易に配置することができ、最適な結果を得るためにその形状に適合させることができる。個々の望ましい頭蓋骨形状及び標的の頭蓋形状の少なくともどちらか一方が、位置決めデバイスの本体の形成において既に適切に考慮されていることから、平均的な頭蓋骨に基づくモデルからのずれに対する個々の調整及び矯正を手動で行うことは必要ではなくなる。頭蓋骨に関するヒト関連患者データにより個々の望ましい頭蓋骨形状を計算することができると有利である。
【0010】
また、本発明の目的は、頭蓋骨部分を支持するように設計されるとともに周縁部を有して保持構造の境界を定める本体を備え、頭蓋骨部分を互いに対して相対的に位置決めするため並びに標的の頭蓋形状をなすように所定の全体の形状及び全体の外形を得るための頭蓋骨部分用の位置決めデバイスを使用することによって、本発明において解決される。
【0011】
有利な実施形態は従属請求項に記載され、以下においてさらに詳細に説明される。
【0012】
また、位置決めデバイスの安定性を増大させることから縁部が閉じているように設計されていると有利である。つまり、縁部は、ベース板及びベース輪郭部の少なくともいずれか1つとして、並びに頭蓋骨部分がモデリング用に取り付けられる保持構造の境界部として機能する。
【0013】
さらに、好ましい例の実施形態は、保持構造が縁部を通る想像上の面又は平面の一方側のみに配置されるということで特徴づけられる。これにより、頭蓋骨部分が配置されるべき領域を正確に決定する。
【0014】
さらに、表面が複数面の共通交点で予め画定されていると実用的である。つまり、縁部は、位置決めデバイスの水平配置の定位にも使用可能なほぼ平坦な外側縁部を有する。
【0015】
また、位置決めデバイスを把持、締結、及び/又は挟持するために、ハンドル部分及び把持要素の少なくともいずれか1つが、概ね縁部及び/又は保持構造の領域において本体から外方に突出していると有利である。これにより、特に外科的処置時における把持を容易にする。また、位置決めデバイスを確実に固定できて傾斜できないようにすることも可能である。
【0016】
ハンドル部分及び把持要素の少なくともいずれか1つが接合接触点で測定した本体に概ね又は正確に垂直であると、ハンドル部分及び把持要素の少なくともいずれか1つを挟持することが特に簡便である。特に、ハンドル部分及び把持要素の少なくともいずれか1つは水平方向に突出可能であり、これは、頭蓋骨部分を配置する際、定位をさらに向上させるためである。
【0017】
また、縁部が周囲部において概ね一定の厚み及び/又は一定の高さを有して、周囲部における安定性が一定であり、縁部の張力が均一であると有利である。しかしながら、また、厚み及び/又は高さは、周囲部に分布した縁部のいくつかの点で、例えば把持要素の領域において、大きく又は小さくすることができる。
【0018】
また、好ましい例の実施形態は、突出するハンドル部分及び把持要素の少なくともいずれか1つの領域において、縁部領域が隆起部及び/又は厚み部を有するということで特徴づけられる。つまり、ハンドル部分及び把持要素の少なくともいずれか1つは、より安定的な方法で位置決めデバイスの本体に接続可能であるので、より良好な力の伝達を確実にする。
【0019】
さらに、保持構造が、保持構造の重量を有利に小さくして取扱性を向上させるネット状又は格子状であり、また、頭蓋骨部分を位置決めデバイスに一時的に固定するために締結要素で貫通することもできると実用的である。
【0020】
さらに、保持構造が、低重量で保持構造の最適な強度を確保する格子構造、ネット構造、又は交差線構造を有すると有利である。
【0021】
また、本体は、凸状シェルとして設計できる、及び/又は好ましくは一定の厚みを有することができる。頭蓋骨部分を配置する本体の側部又は表面、特に内側及び内部面の少なくともいずれか1つが凸状であるので、典型的な頭蓋骨形状に適合する、ということが特に重要である。本体が概ね半球形状であると特に有利である。
【0022】
位置決めデバイスの本体はヘルメット状であることができる、すなわち本体の内側が頭蓋骨の外側に適合する。つまり、頭蓋骨部分は内側に配置され、望ましい頭蓋骨形状にすることができる。
【0023】
保持構造が、ウェブによって互いに空間的に分離される多数の凹部又は貫通孔を有するとさらに実用的である。つまり、これらの凹部又は貫通孔は、保持構造における(締結要素の)通過を可能にし、これは頭蓋骨部分を保持構造に固定するために特に重要である。
【0024】
ウェブは、例えばハニカム構造などの正多角形を画定する多角形形状、及び/若しくは同じ長さのリム部を有する六角形形状、又は連続する円形の外形を有する孔幾何学形状を形成すると有利である。つまり、ウェブにより、頭蓋骨部分を固定するための締結要素の一部が保持構造上に載置可能であるとともに締結要素の他の部分が凹部を貫通可能であるということを可能にする。
【0025】
さらに、貫通孔のすべて又は一部の外形がその幾何学形状及び/又は表面において対応するものであると実用的である。このようにして、同じ締結要素が保持構造の異なる位置及びすべての位置の少なくともいずれか1つで使用可能である。
【0026】
さらに、好ましい例の実施形態は、貫通孔が均一の構造及び特徴の少なくともいずれか1つを有するということで特徴づけられる。つまり、位置決めデバイスの径方向に突出する方向周りに回転するとき締結要素が貫通孔に挿入される定位、特に位置は重要ではない。
【0027】
また、貫通孔が環状、円形、長円形、又は楕円形面を有すると、貫通孔がそれに適合させた締結要素の有利な実施形態を確実に保持可能であるということが可能である。
【0028】
さらに、ウェブが一定及び/又は均一の厚みを有すると実用的である。これにより、ウェブにおいて局所的な脆弱点又は張力のピークが存在しないということが確実になる。
【0029】
ウェブが、保持構造の凸状構成をさらに支持する台形又は三角形の断面を有するとさらに有利である。
【0030】
また、ウェブは、2つの主要境界面が主として径方向に延出して互いの方に向かい、これらの2つの主要境界面の境界を定める2つの二次境界面が互いに対して平行に配置される、四角形の断面を有することができる。つまり、ウェブは、外側面よりも保持構造の内側においてより大きい表面を形成し、これが頭蓋骨部分に対するより大きい接触領域を有利に提供する。
【0031】
また、2つの主要境界面が、内側から外側において見受けられるように、20度~45度、例えば30度、33度、及び35度の角度を例えば形成することによって、互いに接近すると有利である。
【0032】
さらに、ウェブの少なくとも1つ又はすべてが、10/3±10パーセントの長さ/幅比、及び/又は10/3±10パーセントの長さ/厚み比を有すると実用的である。これにより、ウェブ同士の間の好ましい力の伝達を確実にする。
【0033】
基本的に、好ましい例の実施形態は、縁部が、ウェブの厚み又は幅の2~4倍程大きい高さを有することで特徴づけられる。保持構造の縁部におけるこのさらなる補強により、形状が保持されることを確実にする。
【0034】
また、位置決めデバイスが後側に傾斜部を有すると有利である。後側とは、通常は後頭部に配置される頭蓋骨部分が配置される側である。この傾斜部は、位置決めデバイスの内側において頭蓋骨部分の取扱及び配置を容易にする。
【0035】
傾斜部が30度~60度、好ましくは40度~50度、より好ましくは約25度の角度で突き出ると特に有利である。
【0036】
また、位置決めデバイスが中心線マークを有すると実用的である。これにより、外科医が、より良好な定位を得て、頭蓋骨部分をどのように配置するかを容易に見てとることができる。
【0037】
また、中心線マークが縁部の第1領域から縁部の反対の領域に延びるウェブ、又はそのように延びる凹部によって形成されると有利である。好ましくは、中心線マークは前側から後側に延びるので、頭蓋骨部分の頭頂線がマークされている。
【0038】
また、本体は完全に又は部分的にプラスチックから作製されると実用的である。多くのプラスチックが滅菌化可能であり多くの分野で使用されているので、プラスチックは医療用途に特に適する。
【0039】
また、本体が全体的に又は部分的にポリアミドからなると実用的である。ポリアミドは、費用や重量に関して特に好ましい特徴を有し、この用途に適する。
【0040】
また、位置決めデバイスをより容易に把持する又は取り扱うことができて、意図しない滑りを有効に防ぐので、位置決めデバイスが滑り止めコーティングを有すると有利である。
【0041】
また、本発明の目的は、頭蓋骨部分を位置決めデバイスに一時的に締結するように調製される、位置決めデバイスを製造するための本発明にかかる製造方法によって解決され、該方法において、1つの製造ステップで、位置決めデバイスの本体は、処置される特定の患者の頭蓋骨幾何学形状を表す幾何学的データに基づいて、作製、形成、及び製造の少なくともいずれか1つを行う。
【0042】
患者の幾何学的データは、製造方法の前の基準ステップ及び測定ステップの少なくともいずれか1つにおいて検出され、任意的にさらに加工されると有利である。
【0043】
さらに、幾何学的データは、患者の放射線暴露を有利に回避して、ゆえに特に子供への使用に推奨される、光度計測手段及び/又は光度計測法によって基準ステップにおいて取得可能である。
【0044】
特に、典型的な望ましい頭蓋形状全体は、計算式を使用して少数の頭蓋計測点から計算可能であるので、頭蓋計測点が幾何学的データのための測定点とし使用される。これは、平均値又は統計評価に基づくことを必要とすることはなくなり、むしろ個々の完全に適合した望ましい頭蓋形状を計算可能であるということを意味する。
【0045】
少なくとも1つの頭蓋計測点が、グラベラ、後頭点、エウリオン、オルビターレ、ナジオン、ポゴニオン、グナチオン、メントン、ゴニオン、ブレグマ、ラムダ、ジギオン、ポリオン、乳様突起点(mastoidale)、バジオン、イニオン、又は頭頂点から測定されると実用的である。これらの点は、望ましい頭蓋形状を計算するための計算式の開始点として機能する。
【0046】
仮想的な望ましい頭蓋骨モデル(望ましい形状を有する頭蓋骨のもの)は幾何学的データに基づいて計算及び形成の少なくともいずれか1つを行うと有利である。つまり、望ましい頭蓋骨モデルは、変形していない頭蓋骨モデルに対応する。
【0047】
仮想的な望ましい頭蓋骨モデルが位置決めデバイスの内側面を成形するように使用されて、位置決めデバイスの内側面が望ましい頭蓋骨の外側面に正確に適合するとさらに有利である。つまり、変形した頭蓋骨部分を位置決めデバイスに配置することで望ましい形状に成形することが有利に可能になる。ゆえに、位置決めデバイスの内側面が望ましい頭蓋骨及び標的頭蓋骨の少なくともいずれか1つの外側面に対応するように、位置決めデバイスが設計されると有利である。
【0048】
また、仮想的な望ましい頭蓋骨モデルを表す幾何学的値は、位置決めデバイス、すなわち本体と、例えばハンドル部分及び把持要素の少なくともいずれか1つとが1つの製造ステップで製造されるということに基づいて、転送ステップによって幾何学的製造データに変換されると好ましい。
【0049】
ゆえに、まず幾何学的データを検出し、そしてそれに、すなわち望ましい頭蓋骨モデルに基づいて幾何学的値を計算し、そして「ヘルメット」又は本体の内側又は望ましい頭蓋骨モデルの外側に対応する幾何学的製造データを計算することが有利である。そして、生成的位置決めデバイスは、この幾何学的製造データから形成される。
【0050】
また、位置決めデバイスが、アディティブ製造法によって、例えば3Dプリンティングによって製造されると有利である。つまり、許容される費用で、非常に短時間内に、幾何学的製造データに基づいて、任意の形状が形成及びプリントの少なくともいずれか1つを行うことができる。
【0051】
また、本発明の目的は、頭蓋骨部分を位置決めデバイスに一時的に締結するように構成される頭蓋骨締結デバイス及び締結デバイスの少なくともいずれか1つとともにそうした位置決めデバイスによって解決される。頭蓋骨締結デバイス及び締結デバイスの少なくともいずれか1つが、頭蓋骨部分を位置決めデバイスの本体に一時的に締結するように構成されると有利である。
【0052】
締結デバイスは、好ましくは、頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分の他方側のカウンタ部分と相互作用するとき頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分を本体に締結するため、一方側で頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分に一方側の直接的な接触を行うように構成された固定要素部分を有する。固定要素部分及びカウンタ部分は、締結状態において互いに係合するように構成される。
【0053】
締結デバイスは、少なくとも2つの部分で構成することができ、締結デバイスの一部は、ピンを有するとともに、締結状態において頭蓋骨部分の一方側から頭蓋骨部分の他方側に延出するように寸法を有する固定要素部分を形成し、締結デバイスの他の部分は、頭蓋骨部分が位置決めデバイスに締結されるように固定要素部分を受け入れるように構成されたカウンタ部分を形成する。
【0054】
カウンタ部分は、ハンドル領域及び留め具領域を有する。固定要素部分は、ハンドル領域、支持領域、及びねじ部及びピンを含む接続領域を有する。
【0055】
また、本発明の目的は、頭部領域においてヒトの子供などの患者を処置するための本発明にかかる方法によって解決される。
【0056】
まず患者の幾何学的データを検出して、そして仮想的な望ましい頭蓋骨モデルの幾何学的値を計算し、これに基づいて位置決めデバイスの幾何学的製造データを計算すると有利である。
【0057】
外科的処置前に生成的方法において位置決めデバイスを作製することが有利である。このように、外科的処置を可能な限り迅速に行うことができる。
【0058】
さらに、変形した頭蓋骨部分を1つの外科的処置ステップにおいて取り除くと実利的である。また、位置決めデバイスに取り除いた頭蓋骨部分を配置することと、それらを互いに対して定位させて概ね閉じた面を形成することとが有利である。
【0059】
定位した頭蓋骨部分を1つ以上の頭蓋骨締結デバイス及び締結デバイスの少なくともいずれか1つで位置決めデバイスの本体に締結すると実用的である。
【0060】
そして、適合した形状にした頭蓋骨部分は、概ねストリップ形状のインプラントを介して互いに対して固定することができ、その位置を維持する。そして、頭蓋骨締結デバイスは、その後、位置決めデバイス及び頭蓋骨部分から取り外すことができる。
【0061】
その後、互いに取り付けられた頭蓋骨部分は、位置決めデバイスから取り出されて、そして頭蓋骨にインプラントして戻すことができる。
【0062】
図面を利用して以下において本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、第1の例の実施形態における格子構造及び中心線マークを伴う本発明にかかる位置決めデバイスの斜視図を示す。
【
図2】
図2は、格子構造の第1の例の実施形態における位置決めデバイスの側面図を示す。
【
図3】
図3は、カウンタ部分及び固定要素部分を伴う、本発明にかかるシステムに使用される頭蓋骨締結デバイスの斜視図を示す。
【
図4】
図4は、カウンタ部分に螺合された固定要素部分を伴う頭蓋骨締結デバイスの斜視図を示す。
【
図5】
図5は、ハンドル領域及び留め具領域を伴うカウンタ部分の斜視図を示す。
【
図6】
図6は、ハンドル領域、支持領域、及び接続領域を伴う固定要素部分の斜視図を示す。
【
図7】
図7は、斜視図における頭蓋骨締結デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図面は、本質的に概略にすぎず、本発明を理解する役割のみを担う。同じ要素には同じ参照符号が付与される。
【0065】
図1は、頭蓋骨部分用の位置決めデバイス1を示す。位置決めデバイス1は、頭蓋骨部分を互いに対して位置決めするとともに、頭蓋骨部分の所定の全体の形状及び全体の外形を維持又は形成するように構成される。位置決めデバイス1は、頭蓋骨部分が配置される本体2を有する。さらに、位置決めデバイス1は、位置決めデバイス1の縁部4から概ね直角で側方に突出するハンドル部分及び把持要素3の少なくともいずれか1つを有する。縁部4は本体2の一部であり、ネット状及び格子状の少なくともいずれか1つに形成されて想像半球形状を取り囲む保持構造5の境界を周方向に定める。
【0066】
保持構造5は凸状シェルであり、複数の凹部及び貫通孔7の少なくともいずれか1つの境界を定めるウェブ6からなる。凹部は六角形面を有し、一種のハニカム形状8を形成する。凹部7は、保持構造5にわたって均等に分散しており、ウェブ6によって互いに分離されるのみである。保持構造5は、円形の、概ね半球形状を形成する。保持構造5は、縁部4の一方側にのみ延出し、縁部は周方向の閉リム部を形成する。
【0067】
ウェブ6は、一定の厚みと、四角形、特に台形の断面とを有する。これは、ウェブ6が4面を有し、その2つが主要境界面9であり、2つが二次境界面10である、ということを意味する。主要境界面9は、概ね位置決めデバイス1の径方向に延出し、内側から外側へ互いに接近する。周方向に延出する二次境界面10は、概ね互いに平行に配置されている。
【0068】
中心線マーク13は、位置決めデバイス1の前側11から位置決めデバイス1の後側12に延出する。中心線マーク13は、縁部4の一方側から縁部4の反対側に延出する連続する凹部14である。前側11は、位置決めデバイス1がヘルメットのように頭蓋骨に配置された場合に頭部の前側を形成する位置決めデバイス1の側である。したがって、位置決めデバイス1の後側12の形状は後頭部形状に対応するものである。
【0069】
中心線マーク13の凹部14の後、保持構造5は、ウェブ6と凹部7を伴うその格子状、ネット状、及びハニカム状の少なくともいずれか1つの構造に戻る。保持構造5は後側12において傾斜部15を形成するので、保持構造5は完全な半球体を取り囲むものではない。側面図(
図2参照)において、縁部4は、その内に保持構造5が配置される鈍角を形成する。傾斜部15は、水平位置に対し概ね45度の角度に位置する。
【0070】
位置決めデバイス1の前側11において、把持要素3は縁部4に接続する。把持要素3は、本体2から水平方向に外方に突出する。把持要素3は一定の厚みで形成される。把持要素3は、外側において2つの円形縁部を有する矩形である表面を形成する。把持要素3が突出する縁部4の部分において、縁部4の厚み及び高さの少なくともいずれか1つは、残りの縁部領域と比べて大きくなる。全体的に、本体2は、約2~5mmの厚みを有する一種の凸状シェルとして形成される。
【0071】
位置決めデバイス1は、患者の頭蓋骨において比較測定点を検出することと、これらの点に基づいて仮想的な望ましい頭蓋形状を計算し、それを位置決めデバイス1に対応する幾何学的製造データを計算するために使用することとによって、個々の患者のデータに基づいて作製される。位置決めデバイス1は、外側における標的の頭蓋形状に合うシェル及びヘルメットの少なくともいずれか1つとして設計されるので、位置決めデバイス1の内側は頭蓋骨部分の形状に適合するように使用することができる。
【0072】
図2は、位置決めデバイス1の側面図を示す。ここで、この縁部が部分的に水平方向に延出して、そして約45度の角度で上方に折れ曲がっていることが特に容易に見てとれる。
【0073】
図3は、頭蓋骨部分を位置決めデバイス1の本体2に一時的に締結するように設計された頭蓋骨締結デバイス16を示す。頭蓋骨締結デバイス16は、固定要素部分17及びカウンタ部分18を有する。固定要素部分17はピン形状であり、頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分の他方側に配置されたカウンタ部分18と相互作用しながら、一方側で頭蓋骨部分又は複数の頭蓋骨部分に接触するように設計されている。
【0074】
カウンタ部分18は、ハンドル領域19及び留め具領域20を有する。ハンドル領域19は板状であり、同平面において厚み部22の両側から突出する2つのウィング部21を有する。各ウィング部21には円形の環状窪み23が形成されている。2つの窪み23は、等距離で厚み部22の両側に配置されている。厚み部22は、ハンドル領域19の長手方向に配置されている。厚み部22の内側には、凹部24が貫通穴25として長手方向に配置されている。
【0075】
厚み部22は厚みが一定でなく、長手方向の中途領域よりも長手方向の2つの縁部領域の方が大きい直径を有する。カウンタ部分18のハンドル領域19は、特に滑り止め、すなわち滑りにくいように機能するコーティングを有する。カウンタ部分18のハンドル領域19は、カウンタ部分18の留め具領域20に移行する。
【0076】
留め具領域20は、カウンタ部分18の長さ方向に対して直交する平面に、概ね板状に延出する。つまり、留め具領域20は、留め具領域20の凸状シェルをともに形成する凹状面26及び凸状面27を有するように形成されている。留め具領域20の凸状面27はハンドル領域19に面する側である。一方で、凹状面26は、ハンドル領域19から離れる方向に面する、すなわち固定要素部分17に面し、取り付け状態では頭蓋骨部分又は位置決めデバイス1に面する留め具領域20の表面である。
【0077】
留め具領域20は、円形に、特に楕円形になるように形成され、ウェブ29によって互いに分離される凹部28を有する。内側ねじ部30は、ハンドル領域19の厚み部22及び留め具領域20内で貫通穴25に一体になっている。内側ねじ部30は、貫通穴25の長さ全体にわたって、又は貫通穴25の部分のみにわたって延出することができる。
【0078】
頭蓋骨締結デバイス16のカウンタ部分18は、取り付け状態において固定要素部分17に係合される。固定要素部分17は、ウェブ38を介して支持領域32に移行するハンドル領域31からなり、支持領域32には接続領域33が続く。接続領域33は、ねじ領域34、及び厚み部36で終端するねじ無しエンドピン35からなる。ねじ領域34は、ねじ領域34の外側ねじ部が貫通穴25の内側ねじ部30に係合可能であるようにカウンタ部分18に対応する外側ねじ部を有する。
【0079】
図4は、固定要素部分17がねじ領域34でカウンタ部分18の内側ねじ部30に螺合している状態における頭蓋骨締結デバイス16を示す。頭蓋骨部分は、使用時にカウンタ部分18の留め具領域20と固定要素部分17の支持領域32との間において位置決めデバイス1に固定される。
【0080】
図5は、カウンタ部分18の拡大図を示す。ここで、内側ねじ部30が貫通穴25に形成されていることが特に容易に見てとれる。カウンタ部分18は、位置決めデバイス1の内側又は位置決めデバイス1の外側のいずれかに配置される。頭蓋骨部分が位置決めデバイス1の内側に配置されるので、カウンタ部分18は、特に留め具領域20で内側において頭蓋骨部分に、あるいは外側において位置決めデバイス1の格子構造及び保持構造5の少なくともいずれか1つに接触する。
【0081】
図6は、固定要素部分17の拡大図を示す。中央窪み37を有するハンドル領域31は、小ウェブ38を介して支持領域32に移行する。支持領域32は楕円板状に形成される。留め具領域20と同様に、支持領域32は、接続領域33に面する側に配置されるとともに頭蓋骨部分又は位置決めデバイス1に接触するように構成される凹状面39と、ハンドル領域31に面する側に配置される凸状面40とを有する。支持領域32は、複数の概ね三角形の凹部42に互いに分離するウェブ41によって形成される。
【0082】
接続領域33は、支持領域32の中心に接続される。支持領域32とねじ領域34との間には、誤用から守るための所定の破壊点43として機能する接続領域33の薄い部分が存在する。所定の破壊点43は、軸方向に又は軸方向に対して直交若しくは傾斜する方向に過度の力が加えられたとき接続領域33を支持領域32から切断することを確実にする。所定の破壊点43は、カウンタ部分18の内側ねじ部30に適合するねじ領域34に隣接する。
【0083】
ねじ領域34はねじ無しエンドピン35に移行する。エンドピン35は、エンドピン35の長さが少なくとも長手方向にカウンタ部分18全体の長さほどの大きさであるように、カウンタ部分18に対応する。これには、内部ねじ部30及びねじ領域34を連結させることなくエンドピン35がカウンタ部分18の貫通穴25を通過することができるという目的を有する。厚み部36はエンドピン35の遠位端部に配置されている。貫通穴25は厚み部36よりも大きい直径を有する。しかしながら、貫通穴25は、軸方向端部において(又は貫通穴25の任意の点において)テーパリングを有するので、貫通穴25は固定要素部分17の厚み部36よりもテーパリングの領域においてより小さい直径を有する。つまり、厚み部36は紛失防止部として機能する。固定要素部分17を挿入するとき、固定要素部分17の厚み部36は、厚み部が貫通穴25のテーパリング及びテーパ部分の少なくともいずれか1つを通過可能であるように弾性的に変形する。つまり、厚み部36は、固定要素部分17が任意の力もなく、すなわち意図せずにカウンタ部分18の貫通穴25を通って滑って戻ることを防ぐ。
【0084】
図7は、相互作用していない状態における頭蓋骨締結デバイス16の2つの部分17、18を示す。固定要素部分17を締結する際、固定要素部分17は、その接続領域33でカウンタ部分18の貫通穴25に押し通される。締結される頭蓋骨部分は、支持領域32と留め具領域20との間において位置決めデバイス1とともに挟持される。接続領域33は、頭蓋骨部分を通過することができるか、又は複数の頭蓋骨部分同士の間に配置することができる。つまり、頭蓋骨部分が、位置決めデバイス1において留め具領域20と支持領域32との間に保持されるので、留め具領域20と支持領域32とによって取り付けられるというように、接続領域はカウンタ部分18に係合する。
【符号の説明】
【0085】
1 位置決めデバイス
2 本体
3 把持要素
4 縁部
5 保持構造
6 ウェブ
7 凹部/貫通孔
8 ハニカム形状
9 主要境界面
10 二次境界面
11 前側
12 後側
13 中心線マーク
14 凹部
15 傾斜部
16 頭蓋骨締結デバイス
17 固定要素部分
18 カウンタ部分
19 ハンドル領域
20 留め具領域
21 ウィング部
22 厚み部
23 窪み
24 凹部
25 貫通穴
26 凹状面
27 凸状面
28 凹部
29 ウェブ
30 内側ねじ部
31 ハンドル領域
32 支持領域
33 接続領域
34 ねじ領域
35 エンドピン
36 厚み部
37 窪み
38 ウェブ
39 凹状面
40 凹状面
41 ウェブ
42 凹部
43 所定の破壊点