(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】面材施工装置及び面材施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230405BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G21/14
(21)【出願番号】P 2020022968
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2019103104
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西塔 都志雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏明
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-073892(JP,A)
【文献】特開2010-007228(JP,A)
【文献】特開平02-016263(JP,A)
【文献】特開2018-003496(JP,A)
【文献】実開昭63-014603(JP,U)
【文献】特開2018-118795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/16
E04G 21/14
E04F 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に設置された枠体内に面材を嵌め込む施工作業に用いられる面材施工装置であって、
複数の縦部材を有し、前記建物の周囲に設置される足場と、
前記面材をワイヤで吊り上げる揚重装置を支持するアーム部と、
前記足場に対して固定されるとともに前記アーム部を支持するアーム支持部とを備え、
前記アーム支持部は、
前記アーム部における前記揚重装置の支持位置が前記複数の縦部材のうち前記建物に最も近接した縦部材よりも前記建物から離間した状態で前記アーム部を支持し、
前記足場には、
前記揚重装置の前記ワイヤで吊り上げられた前記面材が前記建物側に押し込まれた場合に、前記揚重装置の前記建物側への移動を規制する移動規制部と、
前記支持位置よりも下部に作業者が前記施工作業を行う作業空間とが設けられている
ことを特徴とする面材施工装置。
【請求項2】
前記アーム支持部は、
水平面に交差する回転軸を中心として回転可能に前記アーム部を支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の面材施工装置。
【請求項3】
前記アーム支持部は、
前記建物に対して近接離間する方向に沿って移動可能に前記アーム部を支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の面材施工装置。
【請求項4】
前記足場は、
前記建物に対して最も近接した縦部材と前記建物との距離が30cm以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の面材施工装置。
【請求項5】
建物の開口部に設置された枠体内に面材を嵌め込む面材施工方法であって、
請求項1~4のいずれか一つに記載の面材施工装置を用い、前記アーム部に支持された前記揚重装置の前記ワイヤで前記面材を吊り上げる吊り上げ工程と、
前記面材を前記建物側に押し込むとともに、前記枠体内に前記面材を収容する面材収容工程とを備える
ことを特徴とする面材施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材施工装置及び面材施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に設置された枠体内にガラス等の面材を嵌め込む面材施工方法として、当該建物の周囲に設置される足場と当該建物との間の空間を利用して施工作業を行う面材施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
具体的に、特許文献1に記載の面材施工方法では、上述した空間において足場の上部から吊り下げられたホイスト等の揚重装置を用いて面材を吊り上げ、当該足場内に位置する作業者が当該面材を建物の開口部に設置された枠体内に押し込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の面材施工方法では、上述した空間に揚重装置を配置しているため、足場が建物に対して離間してしまい、当該足場内に位置する作業者が施工作業を行うことが難しく、また作業者が足場から外側に身を乗り出して施工作業を行う必要があるため、安全性に劣る、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、建物に対して足場を近接して配設し、当該足場内に位置する作業者が容易かつ安全に施工作業を行うことができる面材施工装置及び面材施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る面材施工装置は、建物の開口部に設置された枠体内に面材を嵌め込む施工作業に用いられる面材施工装置であって、複数の縦部材を有し、前記建物の周囲に設置される足場と、前記面材をワイヤで吊り上げる揚重装置を支持するアーム部と、前記足場に対して固定されるとともに前記アーム部を支持するアーム支持部とを備え、前記アーム支持部は、前記アーム部における前記揚重装置の支持位置が前記複数の縦部材のうち前記建物に最も近接した縦部材よりも前記建物から離間した状態で前記アーム部を支持し、前記足場には、前記揚重装置の前記ワイヤで吊り上げられた前記面材が前記建物側に押し込まれた場合に、前記揚重装置の前記建物側への移動を規制する移動規制部と、前記支持位置よりも下部に作業者が前記施工作業を行う作業空間とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る面材施工装置及び面材施工方法によれば、建物に対して足場を近接して配設し、当該足場内に位置する作業者が容易かつ安全に施工作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る面材施工装置を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る面材施工装置を示す図である。
【
図3】固定部、アーム部、及びアーム支持部を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係る面材施工装置を示す図である。
【
図8】実施の形態2に係る面材施工装置を示す図である。
【
図10】面材施工方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0010】
(実施の形態1)
〔面材施工装置の概略構成〕
図1及び
図2は、本実施の形態1に係る面材施工装置1を示す図である。
なお、以下で記載する「前後方法」は、建物100の外壁に対して近接離間する方向(
図1中、左右方向)である。また、以下で記載する「左右方向」は、建物100の幅方向(
図1の紙面に直交する方向、
図2中、左右方向)である。
面材施工装置1は、建物100の開口部110に設置された枠体120内にガラス等の面材130を嵌め込む施工作業に用いられる面材施工装置である。この面材施工装置1は、足場2と、アーム部3と、アーム支持部4と、ホイスト5と、吸着装置6とを備える。
【0011】
足場2は、複数の縦部材21と複数の横部材22とを組み合わせて構成された単管足場であり、建物100の周囲に設置される。
複数の縦部材21は、鉛直方向にそれぞれ延在した金属製のパイプであり、足場2全体を支持する支柱としてそれぞれ機能する。そして、複数の縦部材21は、前後方向に並設された一対の縦部材21が左右方向に所定の間隔を空けて、当該左右方向に沿って適宜の数だけ並設されて構成されている。
上記の安全性の問題から、平成8年に厚生労働省が発行した「足場先行工法に関するガイドライン」では、建築物と足場の作業床との間隔は30cm以下が原則とされている。よって、建物100に対して最も近接した縦部材21cと建物100との距離は30cm以下であることが望ましい。
複数の横部材22は、前後方向または左右方向にそれぞれ延在した金属製のパイプであり、複数の縦部材21に対してそれぞれ組み付けられている。
ここで、複数の縦部材21のうち、
図2中、左右方向の中央に位置し、前後方向に並設された一対の縦部材21aは、他の縦部材21に対して、長さ寸法が短く設定され、地面から所定の高さの位置に配置されている。
【0012】
図3は、固定部23、アーム部3、及びアーム支持部4を示す図である。
また、足場2は、3本の金属製のパイプ23a~23cをU字状に組み合わせ、パイプ23a,23b同士を直交クランプ23dにて固定し、パイプ23b,23c同士を直交クランプ23eにて固定した固定部23を備える。
この固定部23は、U字状の開口部分が建物100側に向き、縦部材21と略平行となるパイプ23bが複数の縦部材21のうち建物100から最も離間した縦部材21bよりも建物100から離間した状態で、一対の縦部材21aに対して4つの直交クランプ23f~23iにて固定されている。
【0013】
アーム部3は、ホイスト5を支持する部材である。このアーム部3は、水平方向に延在する金属製の水平部31a、及び鉛直方向に延在する金属製の鉛直部31bを有するL字状のアーム部本体31と、水平部31a及び鉛直部31b間に架設された金属製の補強部32とを備える。
水平部31aにおける鉛直部31bから離間した先端側には、ホイスト5を吊り下げ支持する吊り下げ部31cが設けられている。当該吊り下げ部31cが設けられた位置は、本発明に係る支持位置に相当する。
また、鉛直部31bの上端及び下端には、水平部31aに略平行し、
図3中、右方向にそれぞれ延在する金属製の延在部31dが設けられている。これら延在部31dは、鉛直方向に直交する平板でそれぞれ構成されている。
【0014】
アーム支持部4は、アーム部3を支持する部材である。このアーム支持部4は、支持部本体41と、2つの回動支持部42とを備える。
支持部本体41は、鉛直方向に延在する金属製の柱状部材であり、3つのクランプ41a~41cにてパイプ23bに対して固定される。
2つの回動支持部42は、2つの延在部31dに対応してそれぞれ設けられている。当該回動支持部42は、鉛直方向に直交する金属製の一対の平板42a,42bで構成されている。そして、延在部31dは、一対の平板42a,42b間に挿入された状態で、当該延在部31d及び当該一対の平板42a,42bを貫通する金属製のピン42cによって取り付けられる。これにより、アーム部3は、鉛直方向に略平行な回転軸Ax(ピン42c)を中心としてアーム支持部4に対して回転可能に支持される。また、アーム部3は、吊り下げ部31cが設けられた位置が建物100に対して最も近接した縦部材21cよりも建物100から離間した状態で、アーム支持部4に対して支持される。
【0015】
ホイスト5は、本発明に係る揚重装置に相当する。このホイスト5は、吊り下げ部31cに係合するフック51を有し、当該フック51を介して吊り下げ部31cに吊り下げられた状態で、ワイヤ52で面材130を吊り上げるために用いられる。なお、具体的な図示は省略したが、ホイスト5は、ワイヤ52の巻回または巻き戻し用のモータと、当該モータから垂下したコードの下端部に設けられ、作業者が手元で当該モータの駆動操作を行うための操作部とを備える。
【0016】
吸着装置6は、ホイスト5から垂下したワイヤ52の下端部に吊り下げられ、吸引モータ(図示略)等による吸気に応じて面材130における室外側の表面を吸着する複数(本実施の形態1では3つ)の吸盤61を有する。すなわち、吸着装置6は、面材130を吸着により支持する装置である。
【0017】
〔面材施工方法〕
次に、面材施工装置1を用いて枠体120内に面材130を嵌め込む面材施工方法について説明する。なお、以下では、当該面材施工方法を行う前に、建物100の周囲に面材施工装置1が既に設置されているものとする。
図4は、面材施工方法を示すフローチャートである。
図5及び
図6は、面材施工方法を説明する図である。具体的に、
図5及び
図6は、面材施工方法で行われる各工程を時系列順に図示したものである。
【0018】
本実施の形態1では、足場2内において、吊り下げ部31cよりも下部の空間(開口部110に対向する空間)は、作業者Wが枠体120内に面材130を嵌め込む施工作業を行う作業空間Spとなる。本実施の形態1では、当該作業空間Spは、
図2に示すように、複数の縦部材21のうち4つの縦部材21dと、複数の横部材22のうち4つの横部材22aとによって囲まれた空間である。当該4つの縦部材21dのうち、左右方向に並設される縦部材21d同士の間隔は、面材130における左右方向の寸法よりも大きく設定されている。また、地面から4つの横部材22aまでの高さ寸法は、面材130における高さ寸法よりも大きく設定されている。
【0019】
先ず、作業空間Spにいる作業者Wは、吸着装置6における各吸盤61を面材130における室外側の表面に吸着させる(工程S1)。
工程S1の後、作業者Wは、ホイスト5の操作部(図示略)を操作することで、
図5に示すように、面材130を吊り上げる(工程S2:吊り上げ工程)。
【0020】
工程S2の後、作業者Wは、
図6に示すように、回転軸Axを中心とするアーム部3の回転を利用して面材130を建物100側に押し込むとともに、枠体120内に面材130を収容する(工程S3:面材収容工程)。具体的に、ホイスト5が面材130の全重量を受けているため、作業者Wによって面材130が建物100側に押し込まれれば、それに追従するようにアーム部3が回転軸Axを中心として回転する。すなわち、回転軸Axを中心とするアーム部3の回転は、面材130の前後方向の移動に利用される。
【0021】
ここで、ワイヤ52は、足場2内において、作業空間Spの上方側から当該作業空間Sp内に引き回されている。このため、面材130が建物100側に押し込まれ、当該面材130が作業空間Sp内から外部に移動した場合には、ワイヤ52は、作業空間Spを構成する4つの横部材22aのうち最も建物100に近接した横部材22b(
図2)に当接する。これにより、ホイスト5は、建物100側への移動が規制される。すなわち、横部材22bは、本発明に係る移動規制部に相当する。
【0022】
工程S3の後、作業者Wは、押縁(図示略)等によって枠体120内に面材130を固定する(工程S4)。
以上の工程S1~S4により、枠体120内に面材130を嵌め込む施工作業が完了する。
【0023】
(実施の形態2)
次に、本実施の形態2について説明する。
以下の説明では、実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
図7及び
図8は、本実施の形態2に係る面材施工装置1Aを示す図である。
本実施の形態2に係る面材施工装置1Aでは、上述した実施の形態1で説明した面材施工装置1に対して、以下の点が異なる。
面材施工装置1Aでは、アーム部3及びアーム支持部4の代わりに、アーム部3A及びアーム支持部4Aが採用されている。また、これに伴い、面材施工装置1Aを構成する足場2Aでは、足場2に対して、固定部23と、一対の縦部材21aと、当該一対の縦部材21a同士を連結する前後方向にそれぞれ延在した一対の横部材22c(
図2参照)とが省略されている。さらに、足場2Aでは、足場2に対して、一対の足場板24と、一対の転落防止柵25とが追加されている。なお、
図7では、説明の便宜上、足場板24を一点鎖線で図示している。また、
図8では、足場板24の図示を省略している。
【0024】
一対の足場板24は、作業者が作業を行う作業床となる部材であり、4つの横部材22a上に互いに離間した状態で固定されている。これにより、4つの横部材22aで形成される矩形枠は、左右方向の両側が一対の足場板24にて閉塞され、左右方向の中央部分(以下、開放部24aと記載)のみが閉塞されておらず開放された状態となる。
【0025】
一対の転落防止柵25は、足場板24上にいる作業者が開放部24aを介して下方に転落してしまうことを防止する部材である。具体的に、転落防止柵25は、一対の縦部材25aと、一対の横部材25bとを備える。
一対の縦部材25aは、縦部材21aと同一の構成をそれぞれ有する。そして、一対の縦部材25aは、4つの横部材22aのうち左右方向にそれぞれ延在する一対の横部材22aと、当該一対の横部材22aの上方に位置する一対の横部材22dとの間にそれぞれ架け渡され、前後方向に並設される。
一対の横部材25bは、横部材22cと同一の構成をそれぞれ有する。そして、一対の横部材25bは、一対の縦部材25a間にそれぞれ架け渡され、上下方向に並設される。
なお、以上説明した一対の足場板24及び一対の転落防止柵25については、上述した実施の形態1で説明した足場2に追加しても構わない。
【0026】
図9は、アーム部3A及びアーム支持部4Aを示す図である。
アーム支持部4Aは、前後方向に延在した金属製のパイプであり、一対の転落防止柵25の間(開放部24aの上方)において、一対の横部材22d間に架け渡され、当該一対の横部材22dに対して直交クランプ23j,23kにて固定されている。
アーム部3Aは、アーム支持部4Aが挿通される筒形状を有する。また、アーム部3Aには、ホイスト5を吊り下げ支持する吊り下げ部31cが設けられている。そして、アーム部3Aは、アーム支持部4Aが挿通された状態で、当該アーム支持部4Aの長手方向(前後方向)に沿って移動可能とする。なお、アーム部3Aの移動可能とする範囲は、直交クランプ23j,23kの間の範囲である。すなわち、アーム部3Aは、上述した実施の形態1で説明したアーム部3と同様に、吊り下げ部31cが設けられた位置が建物100に対して最も近接した縦部材21cよりも建物100から離間した状態で、アーム支持部4Aに対して支持されている。
【0027】
また、本実施の形態2に係る面材施工装置1Aでは、ホイスト5を足場板24上に持ち上げるための滑車7が設けられている。この滑車7は、アーム支持部4Aにおいて、アーム部3Aに対して建物100から離間した位置に吊り下げ支持されている。
さらに、本実施の形態2に係る面材施工装置1Aでは、ワイヤ52の下端部と吸着装置6との間には、チェーンブロック8と、スリング9とが設けられている。
チェーンブロック8は、ワイヤ52の下端部に取り付けられ、当該下端部とスリング9とを接続する部材である。そして、当該チェーンブロック8は、吊り代を微調整するために用いられる。
スリング9は、チェーンブロック8と吸着装置6とを接続する部材である。そして、当該スリング9は、チェーンブロック8と同様に、吊り代を微調整するために用いられる。なお、当該スリング9としては、面材130に傷を付けない材料(例えば、ナイロン等)で構成することが好ましい。
なお、以上説明した滑車7、チェーンブロック8、及びスリング9については、上述した実施の形態1で説明した面材施工装置1に追加しても構わない。
【0028】
次に、面材施工装置1Aを用いて枠体120内に面材130を嵌め込む面材施工方法について説明する。なお、以下では、当該面材施工方法を行う前に、建物100の周囲に面材施工装置1Aのうちホイスト5、チェーンブロック8、スリング9、及び吸着装置6以外の部材(足場2A、アーム部3A、アーム支持部4A、及び滑車7)が既に設置されているものとする。
図10は、面材施工方法を示すフローチャートである。
図11及び
図12は、面材施工方法を説明する図である。具体的に、
図11及び
図12は、面材施工方法で行われる各工程を時系列順に図示したものである。なお、
図11及び
図12では、
図8と同様に、説明の便宜上、足場板24の図示を省略している。
【0029】
先ず、足場板24上にいる作業者(図示略)は、滑車7を利用して、ホイスト5を当該足場板24上に持ち上げるとともに、フック51を介して吊り下げ部31cに当該ホイスト5を吊り下げる(工程S5)。
工程S5の後、作業空間Spにいる作業者Wは、ホイスト5の操作部(図示略)を操作することで、当該ホイスト5内部からワイヤ52を引き出し、当該ワイヤ52の下端部を足場板24上から下降させる。そして、当該作業者Wは、チェーンブロック8及びスリング9を介して当該ワイヤ52の下端部に対して吸着装置6を取り付ける(工程S6)。
【0030】
工程S6の後、作業者Wは、工程S1,S2を順次、行う。これにより、面材130は、
図11に示すように、吊り上げられる。
工程S2の後、作業者Wは、
図12に示すように、アーム支持部4Aに対するアーム部3Aの前後方向の移動を利用して面材130を建物100側に押し込むとともに、枠体120内に面材130を収容する(工程S3A:面材収容工程)。具体的に、ホイスト5が面材130の全重量を受けているため、作業者Wによって面材130が建物100側に押し込まれれば、それに追従するようにアーム部3Aがアーム支持部4Aに沿って建物100側へと移動する。
【0031】
ここで、ワイヤ52、チェーンブロック8、及びスリング9は、足場2A内において、開放部24aを介して作業空間Sp内に引き回されている。このため、面材130が建物100側に押し込まれ、当該面材130が作業空間Sp内から外部に移動した場合には、ワイヤ52、チェーンブロック8、及びスリング9のいずれかは、横部材22bに当接する。これにより、ホイスト5は、建物100側への移動が規制される。
【0032】
工程S3Aの後、作業者Wは、工程S4を行う。
以上の工程S5,S6,S1,S2,S3A,S4により、枠体120内に面材130を嵌め込む施工作業が完了する。
なお、工程S5,S6については、上述した実施の形態1で説明した面材施工方法において行っても構わない。
【0033】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態1,2によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態1,2では、面材130として、ガラスを例示していたが、これに限らず、その他の樹脂板や木製パネル等を採用しても構わない。
上述した実施の形態1において、アーム支持部4を省略し、足場2の構成部材(例えば縦部材21)が回転軸Axを中心として回転可能にアーム部3を支持する構成としても構わない。この構成では、当該足場2の構成部材(例えば縦部材21)が本発明に係るアーム支持部に相当する。同様に、上述した実施の形態2において、アーム支持部4Aを省略し、足場2Aの構成部材(例えば横部材22)が前後方向に沿ってアーム部3Aを支持する構成としても構わない。この構成では、当該足場2Aの構成部材(例えば横部材22)が本発明に係るアーム支持部に相当する。
上述した実施の形態1,2では、本発明に係る移動規制部として、横部材22bを例示していたが、これに限らない。足場2,2Aに対して別途、設けた部材を当該移動規制部として機能させても構わない。
【0034】
本発明に係る面材施工装置は、建物の開口部に設置された枠体内に面材を嵌め込む施工作業に用いられる面材施工装置であって、複数の縦部材を有し、前記建物の周囲に設置される足場と、前記面材をワイヤで吊り上げる揚重装置を支持するアーム部と、前記足場に対して固定されるとともに前記アーム部を支持するアーム支持部とを備え、前記アーム支持部は、前記アーム部における前記揚重装置の支持位置が前記複数の縦部材のうち前記建物に最も近接した縦部材よりも前記建物から離間した状態で前記アーム部を支持し、前記足場には、前記揚重装置の前記ワイヤで吊り上げられた前記面材が前記建物側に押し込まれた場合に、前記揚重装置の前記建物側への移動を規制する移動規制部と、前記支持位置よりも下部に作業者が前記施工作業を行う作業空間とが設けられていることを特徴とする。
【0035】
本発明では、アーム部における揚重装置の支持位置は、足場における複数の縦部材のうち建物に最も近接した縦部材よりも当該建物から離間している。すなわち、建物と足場との間の空間には、揚重装置が設置されない。したがって、建物に対して足場を近接して配設し、当該足場内に位置する作業者が容易かつ安全に施工作業を行うことができる。
また、足場に上述した移動規制部が設けられているため、揚重装置のワイヤで吊り上げられた面材が作業者によって建物側に押し込まれた場合に、当該揚重装置が当該建物側に不要に移動して当該建物の外壁等に衝突することを回避することができる。
さらに、足場に上述した作業空間が設けられているため、施工作業を円滑に行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0036】
また、本発明は、上述した面材施工装置において、前記アーム支持部は、水平面に交差する回転軸を中心として回転可能に前記アーム部を支持することを特徴とする。
本発明では、アーム部は、水平面に交差する回転軸を中心として回転可能にアーム支持部に対して支持される。すなわち、揚重装置が面材の全重量を受けているため、作業者によって面材が建物側に押し込まれれば、それに追従するようにアーム部が当該回転軸を中心として回転することとなる。言い換えれば、当該回転軸を中心とするアーム部の回転を面材における建物側への移動に利用することができる。したがって、施工性を向上させることができる。
【0037】
また、本発明は、上述した面材施工装置において、前記アーム支持部は、前記建物に対して近接離間する方向に沿って移動可能に前記アーム部を支持することを特徴とする。
本発明では、アーム部は、建物に対して近接離間する方向に沿って移動可能にアーム支持部に対して支持される。すなわち、揚重装置が面材の全重量を受けているため、作業者によって面材が建物側に押し込まれれば、それに追従するようにアーム部が建物側へと移動することとなる。したがって、施工性を向上させることができる。
【0038】
また、本発明に係る面材施工方法は、建物の開口部に設置された枠体内に面材を嵌め込む面材施工方法であって、上述した面材施工装置を用い、前記アーム部に支持された前記揚重装置の前記ワイヤで前記面材を吊り上げる吊り上げ工程と、前記面材を前記建物側に押し込むとともに、前記枠体内に前記面材を収容する面材収容工程とを備えることを特徴とする。
本発明に係る面材施工方法は、上述した面材施工装置を用いた面材施工方法であるため、上述した面材施工装置と同様の作用及び効果を奏する。
【符号の説明】
【0039】
1,1A 面材施工装置、2,2A 足場、3,3A アーム部、4,4A アーム支持部、5 ホイスト(揚重装置)、21,21a~21d 縦部材、22b 横部材(移動規制部)、100 建物、110 開口部、120 枠体、130 面材、Ax 回転軸、Sp 作業空間