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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】潤滑油添加剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 145/14 20060101AFI20230405BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20230405BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20230405BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230405BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230405BHJP
   C10N 40/06 20060101ALN20230405BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20230405BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
C10M145/14
C10N20:04
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:25
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020039960
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021017559
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019132441
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木口 真之介
(72)【発明者】
【氏名】羽田 晃輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
【審査官】宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-157790(JP,A)
【文献】特開昭61-238891(JP,A)
【文献】特開2016-147950(JP,A)
【文献】特開2002-194371(JP,A)
【文献】特開2009-007562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体(a1)、下記一般式(2)で表される単量体(a2)、下記一般式(3)又は一般式(3’)で表される単量体(a3)、下記一般式(4)で表される単量体(a4)及び下記一般式(5)で表される単量体(a5)からなる群より選ばれる1種以上の脂環構造を有する単量体(a)、並びに一般式(6)で表される単量体(b)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する潤滑油添加剤であって、共重合体(A)の構成単量体中の前記単量体(a)及び前記単量体(b)の合計重量割合が共重合体(A)の構成単量体の合計重量に基づいて80重量%以上である潤滑油添加剤
【化1】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは0~3の整数、mは0~2の整数である。]
【化2】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。jは0~3の整数である。]
【化3】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。kは0~3の整数である。]
【化4】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。pは0~3の整数で、qは0~3の整数である。]
【化5】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、R10はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。rは0~3の整数で、sは0~1の整数である。]
【化6】
[R11は水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-で表される基を表し、R12Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表す。tは0の整数であり、R 13は炭素数1~20のアルキル基、R14は炭素数~20のアルキル基を表す。]
【請求項2】
共重合体(A)の重量平均分子量が1,000~500,000である請求項1に記載の潤滑油添加剤。
【請求項3】
さらに基油(I)を含む請求項1又は2に記載の潤滑油添加剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の潤滑油添加剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項5】
さらに粘度指数向上剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、腐食防止剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤を含有してなる請求項4に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油用添加剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に使用される潤滑油や作動油等は、省燃費性の追求により近年低粘度化が進んでいる。低粘度化により流体潤滑領域の摩擦抵抗が下がり省燃費性が向上する一方、液漏れや焼き付きといった問題が生じる。
この問題を解決するには、一般に潤滑油の油膜厚を向上させることや、金属表面の摩耗を防止することが必要とされ、従来からシクロヘキシル(メタ)アクリレートと直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの共重合体である油膜向上剤(特許文献1)や、油性向上剤としての長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、摩耗防止剤としてのリン酸エステル、ジチオリン酸亜鉛、極圧剤としての有機硫黄、有機ハロゲン化合物、摩擦制御剤としては有機モリブデン化合物等の各種の添加剤が使用されている。
しかしながら、上記の潤滑油添加剤では油膜向上能及び摩耗特性が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-238891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は潤滑油組成物に優れた油膜厚形成能及び摩耗特性を付与する潤滑油添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される単量体(a1)、下記一般式(2)で表される単量体(a2)、下記一般式(3)又は一般式(3’)で表される単量体(a3)、下記一般式(4)で表される単量体(a4)及び下記一般式(5)で表される単量体(a5)からなる群より選ばれる1種以上の脂環構造を有する単量体(a)、並びに一般式(6)で表される単量体(b)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する潤滑油添加剤であって、共重合体(A)の構成単量体中の前記単量体(a)及び前記単量体(b)の合計重量割合が共重合体(A)の構成単量体の合計重量に基づいて80重量%以上である潤滑油添加剤;並びにこの潤滑油添加剤を含有する潤滑油組成物である。
【0006】
【化1】
【0007】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは0~3の整数、mは0~2の整数である。]
【0008】
【化2】
【0009】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。jは0~3の整数である。]
【0010】
【化3】
【0011】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。kは0~3の整数である。]
【0012】
【化4】
【0013】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。pは0~3の整数で、qは0~3の整数である。]
【0014】
【化5】
【0015】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、R10はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。rは0~3の整数で、sは0~1の整数である。]
【0016】
【化6】
【0017】
[R11は水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-で表される基を表し、R12Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表す。tは0の整数であり、R 13は炭素数1~20のアルキル基、R14は炭素数~20のアルキル基を表す。]
【発明の効果】
【0018】
本発明の潤滑油添加剤を含む潤滑油組成物は、油膜厚形成能及び摩耗特性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の潤滑油添加剤は、下記一般式(1)で表される単量体(a1)、下記一般式(2)で表される単量体(a2)、下記一般式(3)又は一般式(3’)で表される単量体(a3)、下記一般式(4)で表される単量体(a4)及び下記一般式(5)で表される単量体(a5)からなる群より選ばれる1種以上の脂環構造を有する単量体(a)、並びに一般式(6)で表される単量体(b)を必須構成単量体とする共重合体(A)を含有する。
【0020】
【化7】
【0021】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは0~3の整数、mは0~2の整数である。]
【0022】
【化8】
【0023】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。jは0~3の整数である。]
【0024】
【化9】
【0025】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。kは0~3の整数である。]
【0026】
【化10】
【0027】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。pは0~3の整数で、qは0~3の整数である。]
【0028】
【化11】
【0029】
[Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、R10はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。rは0~3の整数で、sは0~1の整数である。]
【0030】
【化12】
【0031】
[R11は水素原子又はメチル基を表し、Xは-O-又は-NH-で表される基を表し、R12Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表す。tは0~20の整数であり、tが2以上の場合の複数個あるR12Oは同一でも異なっていてもよい。R13は炭素数1~20のアルキル基、R14は炭素数1~20のアルキル基を表す。]
【0032】
本発明の潤滑油添加剤の必須成分である共重合体(A)は、脂環構造を有する単量体(a)及び一般式(6)で表される単量体(b)を必須構成単量体とする共重合体であって、この単量体(a)は、上記一般式(1)で表される単量体(a1)、上記一般式(2)で表される単量体(a2)、上記一般式(3)又は一般式(3’)で表される単量体(a3)、上記一般式(4)で表される単量体(a4)及び上記一般式(5)で表される単量体(a5)からなる群より選ばれる1種以上の脂環構造を有する単量体である。
【0033】
本発明の共重合体(A)の必須構成単量体としての脂環構造を有する単量体(a)のうち、単量体(a1)は上記一般式(1)で表される。
一般式(1)中のXは-O-又は-NH-で表される基を表す。
は水素原子又はメチル基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、複数個あるRは同一でも異なっていてもよい。nは0~3の整数である。
mは0~2の整数であり、m=0のときは5員環、m=1の時は6員環、m=2の時は7員環を表す。
単量体(a1)の具体例としては、m=0のもの{シクロペンチル(メタ)アクリレート等}、m=1のもの[n=0のものシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-、3-又は4-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2-、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-又は3,5-ジメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3-、2,2,4-、2,2,5-、2,2,6-、3,3,4-又は3,3,5-、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-、3-又は4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等}、n=1のもの{(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル等}、n=2のもの{(メタ)アクリル酸2-シクロヘキシルエチル等}、n=3のもの{(メタ)アクリル酸3-シクロヘキシルプロピル等}等]、m=2のもの{(メタ)アクリル酸シクロヘプチル等}等が挙げられる。
これらのうち、油膜厚形成能の観点から、好ましくはシクロヘキシル(メタ)アクリレート及び4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートである。
なお、単量体(a1)としては、シクロヘキシルメタクリレート(共栄社化学(株)製、「ライトエステルCH」)、シクロヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、「ビスコート#155,CHA」)、4-t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(MCCユニテック(株)製、東京化成工業(株)製)、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(東京化成工業(株)製)等が市販されており、入手可能である。
【0034】
単量体(a2)は上記一般式(2)で表される。
一般式(2)中のXは-O-又は-NH-で表される基を表す。
は水素原子又はメチル基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、複数個あるRは同一でも異なっていてもよい。jは0~3の整数である。
単量体(a2)の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、イソボルニルアクリレート(東京化成工業(株)製)、イソボルニルメタクリレート(東京化成工業(株)製)等が市販されており、入手可能である。
【0035】
単量体(a3)は上記一般式(3)又は一般式(3’)で表される。
一般式(3)及び一般式(3’)中のXは-O-又は-NH-で表される基を表す。
は水素原子又はメチル基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、複数個あるRは同一でも異なっていてもよい。kは0~3の整数である。
単量体(a3)の具体例としては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、ジシクロペンタニルアクリレート(東京化成工業(株)製)、ジシクロペンタニルメタクリレート(東京化成工業(株)製)等が市販されており、入手可能である。
【0036】
単量体(a4)は上記一般式(4)で表される。
一般式(4)中のXは-O-又は-NH-で表される基を表す。
は水素原子又はメチル基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、複数個あるRは同一でも異なっていてもよい。pは0~3の整数で、qは0~3の整数であり、q=0のときは3員環、q=1の時は4員環、q=2の時は5員環、q=3の時は6員環を表す。
単量体(a4)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、グリシジルアクリレート(東京化成工業(株)製)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(東京化成工業(株)製)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(東京化成工業(株)製)等が市販されており、入手可能である。
【0037】
単量体(a5)は上記一般式(5)で表される。
一般式(5)中のXは-O-又は-NH-で表される基を表す。
は水素原子又はメチル基を表し、R10はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、複数個あるR10は同一でも異なっていてもよい。rは1~3の整数で、sは0~1の整数でありs=0の時はジオキソを含めて5員環、s=1の時は6員環を表す。
単量体(a5)の具体例としては、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル等が挙げられる。
なお、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、「MEDOL-10」)、アクリル酸(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(東京化成工業(株)製)、アクリル酸(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(大阪有機化学工業(株)製、「ビスコート#200」)等が市販されており、入手可能である。
【0038】
これらの脂環構造を有する単量体(a)のうち1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の共重合体(A)の必須構成単量体(b)は上記一般式(6)で表される単量体であり、一般式(6)中のR13は炭素数が1~20のアルキル基であり、R14は炭素数が1~20のアルキル基である。
13において、炭素数1~20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基及びn-エイコシル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基等の分岐アルキル基等が挙げられる。
14において、炭素数1~20のアルキル基としては、上記炭素数1~20のアルキル基のうち炭素数1~20のものが挙げられる。
13としては、油膜厚形成能、摩耗特性、低温粘度特性及び摩擦低減効果の観点から、炭素数が1~15のアルキル基が好ましい。
14としては、油膜厚形成能、摩耗特性、低温粘度特性及び摩擦低減効果の観点から、炭素数が7~20のアルキル基が好ましい。
13の炭素数とR14の炭素数との合計は、油膜厚形成性、摩耗特性、低温粘度特性及び摩擦低減効果の観点から、8~32が好ましく、更に好ましくは20~24である。
共重合体(A)において、単量体(b)として1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
共重合体(A)の構成単量体のうち、単量体(a)の含有量は、油膜厚形成能及び摩耗特性の観点から、単量体(a)と単量体(b)の合計重量に基づいて、好ましくは1~90重量%であり、更に好ましくは1~70重量%である。
共重合体(A)の構成単量体のうち、単量体(a)の含有量は、油膜厚形成能、摩耗特性及び低温粘度特性の観点から、単量体(a)と単量体(b)の合計重量に基づいて、好ましくは1~40重量%であり、更に好ましくは1~25重量%である。
共重合体(A)の構成単量体のうち、単量体(a)の含有量は、油膜厚形成能、摩耗特性及び摩擦低減効果の観点から、単量体(a)と単量体(b)の合計重量に基づいて、好ましくは10~90重量%であり、更に好ましくは30~70重量%である。
共重合体(A)の構成単量体のうち、単量体(b)の含有量は、油膜厚形成能及び摩耗特性の観点から、単量体(a)と単量体(b)の合計重量に基づいて、好ましくは10~99重量%であり、更に好ましくは30~99重量%である。
共重合体(A)の構成単量体のうち、単量体(b)の含有量は、油膜厚形成能、摩耗特性及び低温粘度特性の観点から、単量体(a)と単量体(b)の合計重量に基づいて、好ましくは60~99重量%であり、更に好ましくは75~99重量%である。
共重合体(A)の構成単量体のうち、単量体(b)の含有量は、油膜厚形成能、摩耗特性、摩擦低減効果及び(A)の基油への溶解性の観点から、単量体(a)と単量体(b)の合計重量に基づいて、好ましくは10~90重量%であり、更に好ましくは30~70重量%である。
【0041】
本発明の共重合体(A)は、(A)の構成単量体として、単量体(a)、単量体(b)以外に、さらに炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)を含有してもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)中の炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びn-ブチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基及びt-ブチル基等の分岐アルキル基等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)としては、低温粘度特性の観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸メチルである。
炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
共重合体(A)の構成単量体のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)の含有量は、共重合体(A)の重量に基づいて、好ましくは1~20重量%であり、更に好ましくは1~10重量%である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)の含有量は、共重合体(A)を熱分解ガスクロマトグラフィーによって分析することで定量測定できる。
【0042】
共重合体(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略記することがある。)は、摩擦低減効果、低温粘度特性及びせん断安定性の観点から好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは1,000~100,000であり、更に好ましくは1,000~50,000であり、最も好ましくは1,000~25,000である。(A)のMwが1,000以上であると摩擦低減効果が良好である傾向があり、500,000以下であるとせん断安定性、低温粘度特性及び粘度特性が良好である傾向がある。
Mwは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによるものであり、ポリスチレンに換算して求めたものである。
共重合体(A)のMwの測定条件は以下の通りである。
装置 :「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
共重合体(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量又は連鎖移動剤量等により調整できる。
【0043】
共重合体(A)の溶解性パラメーター(以下「SP値」と略記することがある。)は、潤滑油への溶解性の観点から7.3~9.6(cal/cm1/2が好ましく、さらに好ましくは8.8~9.5(cal/cm1/2である。
【0044】
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)に記載の方法で算出される値である。
【0045】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及び2-プロパノール等の有機溶媒;
鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等)及び合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα-オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]等の基油等が挙げられる。
溶媒としては、好ましくは基油であり、さらに好ましくは鉱物油である。
重合触媒としては、アゾ系触媒(アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスバレロニトリル等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(A)を得ることができる。
(A)が共重合体である場合の重合形態としては、ランダム重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0046】
本発明の潤滑油添加剤は、上記共重合体(A)を含有するものであり、さらに基油(I)を含有してもよい。基油(I)を、共重合体(A)を製造する際の溶剤として用いた場合、得られた共重合体(A)と基油(I)とを含む混合物をそのまま潤滑油添加剤として用いてもよい。さらに、得られた混合物を基油(I)で希釈したものを潤滑油添加剤として用いてもよい。
【0047】
潤滑油添加剤中の共重合体(A)の含有量は、ハンドリング性の観点から、潤滑油添加剤の重量を基準として、好ましくは40~100重量%であり、更に好ましくは40~60重量%である。
【0048】
基油(I)としては、鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリ-α-オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち好ましいのは鉱物油及びエステル系合成潤滑油であり、更に好ましくは鉱物油である。
なお、基油(I)は1種を用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0049】
基油(I)の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、粘度指数向上効果の観点から好ましくは1~15mm/sであり、更に好ましくは2~5mm/sである。
基油の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの)は、好ましくは90以上であり、更に好ましくは100以上である。
【0050】
基油の曇り点(JIS-K2269で測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下である。基油の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好である。
【0051】
基油(I)のSP値は7.8~9.3(cal/cm1/2が好ましく、さらに好ましくは8.0~8.5(cal/cm1/2である。
【0052】
本発明の潤滑油添加剤は、潤滑油組成物に優れた油膜形成能及び摩耗特性を付与することができ、さらに低温粘度特性及び低温から中温域(40~80℃)の摩擦低減効果にも優れているので、摩擦摩耗調整剤及び油性向上剤等として用いることができる。
【0053】
本発明の潤滑油組成物は、上記本発明の潤滑油添加剤を含有する。
本発明の潤滑油組成物における共重合体(A)の含有量は、油膜厚形成能、摩耗特性、低温粘度特性及び摩擦低減効果の観点から、潤滑油組成物の重量に基づいて、好ましくは0.1~20重量%であり、更に好ましくは0.5~15重量%であり、特に好ましくは1~10重量%である。
【0054】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは1~15mm/sであり、更に好ましくは2~5mm/sである。
本発明の潤滑油組成物の粘度指数は、好ましくは90以上であり、更に好ましくは100以上である。
【0055】
潤滑油組成物において、共重合体(A)のSP値と基油(I)のSP値との差の絶対値は、(A)の(I)への溶解性の観点から、0.5~3.0(cal/cm1/2が好ましく、さらに好ましくは0.8~1.6(cal/cm1/2である。
なお、2種以上の基油(I)を併用した場合は、混合物としての基油のSP値は、そのそれぞれの重量比率による相加平均の計算値を用いる。
【0056】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、ミッションギヤ油(MTF)、変速機油[ATF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油等に好適に用いられる。これらのうち好ましいのは、ギヤ油、MTF、変速機油、トラクション油及びエンジン油であり、更に好ましいのはデファレンシャル油、MTF、ATF、belt-CVTF及びエンジン油であり、特に好ましいのはMTF、ATF、belt-CVTF及びエンジン油である。
【0057】
本発明の潤滑油組成物は、さらに粘度指数向上剤、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、腐食防止剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる1種以上の添加剤を含有してもよい。添加剤として具体的は、以下のもの等が挙げられる。
(1)粘度指数向上剤:
C(以下、炭素数をCと略称する)1~7のアルキル(メタ)アクリレート/C8~40の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート共重合体、分散モノマー(アミンモノマー等)/C1~7のアルキル(メタ)アクリレート/C8~40の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ヒドロキシ基含有モノマー/(C1~7の)アルキル(メタ)アクリレート/C8~40の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート共重合体、櫛形ポリマー[C1~7のアルキル(メタ)アクリレート/C8~40の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート/ポリオレフィンマクロモノマー]、エチレン/C1~18のアルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等;
(2)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(3)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(4)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(5)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(10)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等;
(11)流動点降下剤:
ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート等。
【0058】
添加剤の合計含有量は、油膜形成能、摩耗特性、低温粘度特性及び摩擦低減効果の観点から、潤滑油組成物の重量を基準として、0.1~20重量%が好ましく、更に好ましくは0.1~10重量%である。
【実施例
【0059】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0060】
実施例1~9及び比較例1~4
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、鉱物油(I-1)(S-Oil社製「Ultra S-2」、100℃の動粘度:2.3mm/s、粘度指数:103)40部、表1に記載した各種単量体(a)~(d)の配合物60部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相の酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で5時間重合反応を行った。その後、さらに90℃まで昇温し、1時間熟成した。120℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)、未反応の単量体を2時間かけて除去し、本発明の潤滑油添加剤(R-1)~(R-9)、および比較のための潤滑油添加剤(R’-1)~(R’-4)を製造した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1及び下記の表3に記載した各種単量体(a)~(d)は以下の単量体を用いた。
(a1-1):シクロヘキシルメタクリレート
(a1-2):4-t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート
(a2-1):イソボルニルメタクリレート
(a3-1):ジシクロペンタニルメタクリレート
(a4-1):テトラヒドロフルフリルメタクリレート
(a5-1):アクリル酸(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチル(大阪有機工業社製「ビスコート#200」
(b-1):一般式(6)のR13がメチル基、R14が炭素数8~10の直鎖アルキル基の脂肪族アルコールと、一般式(6)のR13がエチル基、R14が炭素数8~10の直鎖アルキル基の脂肪族アルコールとの混合物[Shell Chemicals社の高級アルコール「NEODOL 23」]とメタクリル酸とのエステル)
(b-2):一般式(6)のR13がメチル基、R14が炭素数10~12の直鎖アルキル基の脂肪族アルコールと、一般式(6)のR13がエチル基、R14が炭素数10~12の直鎖アルキル基の脂肪族アルコールとの混合物[Shell Chemicals社の高級アルコール「NEODOL 45」]とメタクリル酸とのエステル
(b-3):メタクリル酸2-ドデシルヘキサデシル
(b-4):メタクリル酸2-テトラデシルオクタデシル
(b-5):一般式(6)のR13が炭素数10の直鎖アルキル基、R14が炭素数12の直鎖アルキル基の脂肪族アルコール[Sasol社の高級アルコール「ISOFOL 24」]とメタクリル酸とのエステル
(b’-1):n-ドデシルメタクリレート
(b’-2):n-ヘキサデシルメタクリレート
(d-1):メタクリル酸メチル
(I-1):S-Oil社製「Ultra S-2」
(I-2):SK社製「YUBASE4」
なお、共重合体(A)のSP値及び重量平均分子量(Mw)を表1、表3に記載した。
【0063】
実施例10~18及び比較例5~8
実施例1~9で得られた潤滑油添加剤(R-1)~(R-9)、及び比較例1~4で得られた比較のための潤滑油添加剤(R’-1)~(R’-4)を、鉱物油(I-2)(SK社製「YUBASE3」、100℃動粘度3.1mm/s、粘度指数:112)で、100℃動粘度が5.4mm/sになるように希釈し、本発明の潤滑油組成物(V―1)~(V―9)、比較のための潤滑油組成物(V’―1)~(V’―4)を得た。
【0064】
実施例10~18で作成した本発明の潤滑油組成物(V-1)~(V-9)、及び比較例5~8で作成した比較のための潤滑油組成物(V’-1)~(V’-4)について、以下の方法で(1)油膜厚形成能、(2)摩耗特性、(3)低温粘度特性を測定し、評価した。その結果を表2に示す。
【0065】
<油膜厚形成能>
EHD試験機(PCSインスツルメント社製)を用いた光干渉法により、一定の荷重・滑り率での油膜厚さ(nm)を算出し、各潤滑油組成物の油膜厚形成能を評価した。
EHD試験機の試験条件を以下に示す。
ディスク:EHD Silica Spacer Layer Disc
ボール:3/4’’Plain Steel Ball
荷重:30N
ボールの速度:10mm~3,000mm/s温度 :100℃
すべり率:50%
10mm~3,000mm/sの範囲の各速度における油膜厚さから曲線が得られ、10mm/sでの油膜厚さ(nm)を測定結果とする。
【0066】
測定された油膜厚さ(nm)から下記の判定基準で評価した。
◎:6nm以上
○:4~6nm
△:2~4nm
×:2nm未満
【0067】
<摩耗特性>
以下の条件で高周波往復動リグ試験を行い、摩耗痕径から摩耗特性を評価した。
装置としてはHigh-Frequency-Reciprocating-Rig(HFRR;PCSインスツルメント社製)を、試験鋼球の材質はSUJ2を、試験鋼球の直径は6mmを、試験円盤の材質はSUJ2を用いた。荷重3.92N(400g)、ストローク1000μm、周波数20Hz、試験時間60分、温度100℃にて試験を行い、摩耗痕径を測定した。
【0068】
摩耗痕径から下記の判定基準で評価した。
◎:摩耗痕径が180μm以下
○:摩耗痕径が180~200μm
△:摩耗痕径が200~230μm
×:摩耗痕径が230μm超え
【0069】
<低温粘度特性>
ASTM D2983-2001の方法に準拠して、-40℃におけるブルックフィールド粘度(BF)(mPa・s)を測定した。
【0070】
ブルックフィールド粘度(mPa・s)から下記の判定基準で評価した。
◎:5000mPa・s以下
○:5000~7000mPa・s
△:7000~10000mPa・s
×:10000mPa・s超え
【0071】
【表2】
【0072】
表2の結果から明らかなように、本発明の潤滑油添加剤を含有してなる実施例10~18の潤滑油組成物は、膜厚形成能及び摩耗特性が優れており、さらに低温粘度特性が優れている。
一方、単量体(a)を構成単量体として含まない共重合体を含む比較例5の潤滑油組成物は油膜形成能と摩耗特性が不良であることがわかる。また、実施例11と単量体(b)を用いていない(一般式(6)のR13がアルキル基ではなく水素原子である単量体(b’-1)及び/又は(b’-2)を用いた)以外は同じ比較例6~8とを比較すると、比較例6(n-ドデシルメタクリレートを用いたもの)は、実施例11と比較して油膜厚形成能及び摩耗特性が共に劣っていることがわかる。また、比較例6よりも炭素数の長いものを用いた比較例7(n-ヘキサデシルメタクリレートを用いたもの)は、油膜厚形成能は実施例11と同程度で良好であるものの、摩耗特性が極めて劣ることがわかる。また、炭素数の異なるものを併用した比較例8は、実施例11と比較して油膜厚形成能も摩耗特性も劣っていることがわかる。つまり、一般式(6)のR13がアルキル基ではなく水素原子である単量体(b’)を用いた場合は、油膜厚形成能と摩耗特性とが優れた潤滑油組成物を得ることが困難であることがわかる。さらに、比較例6~8は低温粘度特性が極めて劣ることがわかる。
【0073】
実施例19~28及び比較例9~11
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、鉱物油(I-2)(SK社製「YUBASE3」、100℃動粘度3.1mm/s、粘度指数:112)50部、表3に記載した各種単量体(a)~(d)の配合物50部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、窒素置換(気相の酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で5時間重合反応を行った。その後、さらに90℃まで昇温し、1時間熟成した。120℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)、未反応の単量体を2時間かけて除去し、本発明の潤滑油添加剤(R-10)~(R-19)、及び比較のための潤滑油添加剤(R’-5)~(R’-7)を製造した。
【0074】
【表3】
【0075】
実施例29~38及び比較例12~14
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、エンジン油用添加剤パッケージ(インフィニアム製)10重量部と、鉱物油[SP値:8.3(cal/cm1/2、100℃の動粘度:4.2mm/s、粘度指数:122]90重量部とを加え、実施例10~19で得られた潤滑油添加剤(R-10)~(R-19)、及び比較例9~11で得られた比較のための潤滑油添加剤(R’-5)~(R’-7)を共重合体(A)の含有量が1重量%となるようにそれぞれ加えさらに得られる潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度が2.60±0.05(mm/s)になるように、粘度指数向上剤(ポリアルキルメタクリレート、Mw500,000、樹脂分21重量%)を加えて混合し、本発明の潤滑油組成物(V―10)~(V―19)、比較のための潤滑油組成物(V’―5)~(V’―7)を得た。
【0076】
実施例29~38で作成した本発明の潤滑油組成物(V-10)~(V-19)、及び比較例12~14で作成した比較のための潤滑油組成物(V’-5)~(V’-7)について、上記の方法で(1)油膜厚形成能、(2)摩耗特性を測定し、評価した。また、下記の方法で(3)MTM摩擦係数を測定、評価した。その結果を表4に示す。
【0077】
潤滑油組成物(V-10)~(V-19)及び(V’-5)~(V’-7)の低温域から中温域の条件下として、40℃、60℃及び80℃での摩擦評価を以下の方法で測定した。結果を表4に示す。
<転がり摩擦特性-MTM(摩擦係数)>
機器:PCS Instruments MTM-2
ディスク:MTM polished disc(standard)(0.01micron)
ボール:Drilled 3/4 AISI52100precision steel ball
速度 :10mm/s~3,000mm/s
温度 :40℃、60℃、80℃
スライディング/ローリング比:50%
負荷 :30N
摩擦評価の結果としてストライベック曲線が得られ、各温度における速度:10mm/s、100mm/s、1,000mm/sの摩擦係数を測定結果とした。
【0078】
【表4】
【0079】
表4の結果から明らかなように、本発明の潤滑油添加剤を含有してなる実施例29~38の潤滑油組成物は、膜厚形成能及び摩耗特性が優れており、さらに摩擦低減効果が優れている。
一方、単量体(a)を構成単量体として含まない共重合体を含む比較例12の潤滑油組成物は油膜形成能及び摩耗特性が不良であることがわかる。また、実施例33と単量体(b)を用いていない(一般式(6)のR13がアルキル基ではなく水素原子である単量体(b’-1)及び/又は(b’-2)を用いた)以外は同じ比較例13及び14とを比較すると、比較例13(n-ドデシルメタクリレートを用いたもの)は、実施例33と比較して油膜厚形成能及び摩耗特性が共に劣っていることがわかる。また、比較例13よりも炭素数の長いものを用いた比較例14(n-ヘキサデシルメタクリレートを用いたもの)は、油膜厚形成能は実施例33と同程度で良好であるものの、摩耗特性が劣っていることがわかる。つまり、一般式(6)のR13がアルキル基ではなく水素原子である単量体(b’)を用いた場合は、油膜厚形成能と摩耗特性とが優れた潤滑油組成物を得ることが困難であることがわかる。さらに、比較例13~14は摩擦低減効果が極めて劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の潤滑油組成物は、油膜厚形成能及び摩耗特性に優れており、さらに低温粘度特性及び低温から中温域(40~80℃)の摩擦低減効果にも優れるため、駆動系潤滑油(MTF、デファレンシャルギヤ油、ATF及びbelt-CVTF等)、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油及びショックアブソーバー油等)、エンジン油(ガソリン用及びディーゼル用等)及びトラクション油として好適である。