(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】レーザ線幅の測定装置
(51)【国際特許分類】
G01J 9/02 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
G01J9/02
(21)【出願番号】P 2020147649
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-033309(JP,A)
【文献】特開2017-181115(JP,A)
【文献】特開2016-057297(JP,A)
【文献】特開平04-080629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 9/00-G01J 9/04
G01M 11/00-G01M 11/08
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Optica
IET Digital Library
APS Journals
Scitation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象のレーザが射出するレーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光に分岐する分岐手段と、
前記第2レーザ光に遅延を与える遅延手段と、
前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光と、前記第1レーザ光と、に基づき前記レーザのレーザ線幅を測定する測定手段と、
を備え、
前記遅延手段は、
複数のコアを備えた
マルチコア光ファイバを有し、前記第2レーザ光を
、前記複数のコアの内の少なくとも2つのコアを直列に接続した第1コアにおいて双方向に伝搬させることで前記第2レーザ光に遅延を与えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記遅延手段は、前記第1コアの第1端部から入力され、前記第1コアを伝搬して前記第1端部とは異なる第2端部から出力された前記第2レーザ光を、前記第2端部に入力させることで、前記第2レーザ光を前記第1コアにおいて双方向に伝搬させることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記遅延手段は、前記第1コアの前記第2端部に接続され、前記第2端部から出力された前記第2レーザ光を前記第2端部に向けて反射する反射手段をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記反射手段は、反射するレーザ光の偏波面を、反射前のレーザ光の偏波面に対して所定量だけ回転させることを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記反射手段は、ファラデー回転ミラーであり、
前記所定量は90度であることを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記第2レーザ光及び前記第1レーザ光の内の一方の偏波面を90度だけ回転させる偏波回転手段をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定手段は、
前記分岐手段により分岐された前記第1レーザ光の周波数をシフトさせる周波数シフト手段と、
前記周波数シフト手段により周波数がシフトされた前記第1レーザ光と、前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光とを合波して第3レーザ光を出力する合波手段と、
前記第3レーザ光を光電変換して電気信号を出力する光電変換手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定手段は、前記電気信号に基づき前記レーザのレーザ線幅を判定することを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
測定対象のレーザが射出するレーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光に分岐する分岐手段と、
前記第2レーザ光に遅延を与える遅延手段と、
前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光と、前記第1レーザ光と、に基づき前記レーザのレーザ線幅を測定する測定手段と、
を備え、
前記測定手段は、
前記分岐手段により分岐された前記第1レーザ光と、前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光との和に対応する第3レーザ光と、前記分岐手段により分岐された前記第1レーザ光と、前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光との差に対応する第4レーザ光と、前記分岐手段により分岐された前記第1レーザ光及び前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光の内の一方のレーザ光の位相をπ/2だけシフトさせたレーザ光と、他方のレーザ光との和に対応する第5レーザ光と、前記分岐手段により分岐された前記第1レーザ光及び前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光の内の一方のレーザ光の位相をπ/2だけシフトさせたレーザ光と、他方のレーザ光との差に対応する第6レーザ光と、を出力する出力手段と、
前記第3レーザ光及び前記第4レーザ光それぞれを光電変換し、前記第3レーザ光を光電変換して得た信号と前記第4レーザ光を光電変換して得た信号との差に対応する第1電気信号を出力する第1光電変換手段と、
前記第5レーザ光及び前記第6レーザ光それぞれを光電変換し、前記第5レーザ光を光電変換して得た信号と前記第6レーザ光を光電変換して得た信号との差に対応する第2電気信号を出力する第2光電変換手段と、
を備えていることを特徴とす
る測定装置。
【請求項10】
前記第1光電変換手段及び前記第2光電変換手段はバランスドフォトダイオードであることを特徴とする請求項9に記載の測定装置。
【請求項11】
測定対象のレーザが射出するレーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光に分岐する分岐手段と、
前記第2レーザ光に遅延を与える遅延手段と、
前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光と、前記第1レーザ光と、に基づき前記レーザのレーザ線幅を測定する測定手段と、
を備え、
前記測定手段は、
前記分岐手段により分岐された前記第1レーザ光と、前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光との和又は差に対応する第3レーザ光と、前記分岐手段により分岐された前記第1レーザ光及び前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光の内の一方のレーザ光の位相をπ/2だけシフトさせたレーザ光と、他方のレーザ光との和又は差に対応する第4レーザ光と、を出力する出力手段と、
前記第3レーザ光を光電変換して第1電気信号を出力する第1光電変換手段と、
前記第4レーザ光を光電変換して第2電気信号を出力する第2光電変換手段と、
を備えていることを特徴とす
る測定装置。
【請求項12】
前記測定手段は、前記第1電気信号及び前記第2電気信号に基づき前記レーザのレーザ線幅を判定することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項13】
前記出力手段は90度光ハイブリッドであることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項14】
前記
遅延手段は、複数のコアを備えたマルチコア光ファイバ
を有し、前記第2レーザ光を、前記複数のコアの内の少なくとも2つのコアを直列に接続した
第1コアにおいて双方向に伝搬させることで前記第2レーザ光に遅延を与えることを特徴とする請求項
9から13のいずれか1項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザが射出する光のスペクトル線幅(以下、レーザ線幅)の測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、レーザ線幅の測定構成を開示している。以下、非特許文献1の測定構成について簡単に説明する。まず、測定対象のレーザが射出したレーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光に2分岐し、第1レーザ光の周波数を音響光学変調器(AOM)により数10MHz程度だけシフトさせる。また、第2レーザ光については、数キロ程度の長さの光ファイバを伝送させる。AOMによる周波数シフト後の第1レーザ光と、光ファイバ伝送後の第2レーザ光とを合波して光電変換することで、周波数シフト後の第1レーザ光と、光ファイバ伝送後の第2レーザ光とのビート成分に対応する電気信号を取得する。合波の際の第1レーザ光に対する第2レーザ光の遅延量がコヒーレンス長以上であると、第1レーザ光の周波数の揺らぎと、第2レーザ光の周波数の揺らぎに相関はなく、よって、光電変換で得られる電気信号の周波数の揺らぎは、測定対象のレーザのレーザ線幅に対応するものと見做すことができる。したがって、この電気信号の周波数変動量に基づきレーザ線幅を測定することができる。
【0003】
非特許文献2も、レーザ線幅の測定構成を開示している。非特許文献2においては、測定対象のレーザが射出した第1レーザ光と、基準レーザが射出した第2レーザ光とを合波して光電変換することでレーザ線幅を測定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】T.Okoshi,et.al.,"Novel method for high resolution measurement of laser output spectrum",Electronics Letters 16 (16),630,1980年
【文献】K. Kikuchi,"Characterization of semiconductor-laser phase noise and estimation of bit-error rate performance with low-speed offline digital coherent receivers",Optics Express 20 (5),5291-5302,2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2の構成は、基準レーザを必要とし、測定構成のコストが高くなる。また、非特許文献2の構成において測定されるレーザ線幅は、正確には、測定対象のレーザ線幅と基準レーザのレーザ線幅を合わせたものである。非特許文献1の構成は、基準レーザを必要としないが、第2レーザ光の第1レーザ光に対する遅延をコヒーレンス長以上とするために、極めて長い距離の光ファイバを必要とする。さらに、非特許文献1及び非特許文献2の構成は、共に、第1レーザ光と第2レーザ光の偏波面が一致する様に、合波前に第1レーザ光及び/又は第2レーザ光の偏波面を手動で調整しなければならず、測定における操作が煩雑になる。
【0006】
本発明は、簡易にレーザ線幅を測定する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、測定装置は、測定対象のレーザが射出するレーザ光を第1レーザ光と第2レーザ光に分岐する分岐手段と、前記第2レーザ光に遅延を与える遅延手段と、前記遅延手段により遅延された前記第2レーザ光と、前記第1レーザ光と、に基づき前記レーザのレーザ線幅を測定する測定手段と、を備え、前記遅延手段は、複数のコアを備えたマルチコア光ファイバを有し、前記第2レーザ光を、前記複数のコアの内の少なくとも2つのコアを直列に接続した第1コアにおいて双方向に伝搬させることで前記第2レーザ光に遅延を与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、簡易にレーザ線幅を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による測定装置1の構成図である。測定装置1は、測定対象であるレーザ50のレーザ線幅を測定する。レーザ50が射出するレーザ光は、測定装置1のカップラ10に入力される。なお、レーザ50が射出するレーザ光の偏波の方向をX方向と定義する。また、X方向及びレーザ光の伝搬方向の両方に直交する方向をY方向と定義する。さらに、レーザ光の偏波面の方向がX方向であることをX偏波と表記し、Y方向であることをY偏波と表記する。
図1の矢印近傍の"X"及び"Y"の文字は、近傍の矢印により示されるレーザ光がX偏波であるかY偏波であるかを示している。カップラ10は、入力されるX偏波のレーザ光を2分岐して、一方を測定部30に出力し、他方を遅延付与部20に出力する。なお、以下の説明において、カップラ10が測定部30に出力するレーザ光を第1レーザ光と表記し、カップラ10が遅延付与部20に出力するレーザ光を第2レーザ光と表記する。
【0012】
遅延付与部20は、第2レーザ光に遅延を与える。遅延付与部20の偏波ビームスプリッタ200は、カップラ10と、光ファイバ201と、偏波回転部40と、に接続される。偏波ビームスプリッタ200は、カップラ10に接続されているポートから入力されたX偏波の光を、光ファイバ201に接続されているポートから出力し、Y偏波の光を偏波回転部40に接続されているポートから出力する。また、偏波ビームスプリッタ200は、光ファイバ201に接続されているポートから入力されたX偏波の光をカップラ10に接続されているポートから出力し、Y偏波の光を偏波回転部40に接続されているポートから出力する。したがって、カップラ10から偏波ビームスプリッタ200に入力されたX偏波の第2レーザ光は、光ファイバ201に入力される。本実施形態においては、光ファイバ201は、シングルコア光ファイバであるものとする。光ファイバ201のコアの一端は、上述した様に偏波ビームスプリッタ200に接続され、他端は、ファラデー回転ミラー(FRM)202に接続される。したがって、偏波ビームスプリッタ200から光ファイバ201に入力された第2レーザ光は、光ファイバ201のコアを伝搬した後、FRM202に入力される。なお、光ファイバ201のコアを伝搬する過程で、第2レーザ光の偏波面は変動し、よって、FRM202に入射する第2レーザ光の偏波面は、X偏波とは異なり得る。なお、光ファイバ201が第2レーザ光に与える偏波面の変動量は、様々な要因に依存し、事前にその変動量を決定することは難しい。FRM202は、第2レーザ光を光ファイバ201のコアに向けて反射するが、その際、第2レーザ光の偏波面を、反射前の偏波面に対して90度だけ回転させる。
【0013】
FRM202で反射された第2レーザ光は、光ファイバ201のコアを伝搬して偏波ビームスプリッタ200に入力される。なお、光ファイバ201において、第2レーザ光の偏波面は変動するが、この変動は、第2レーザ光がFRM202に向かって伝搬する際に受けた偏波面の変動と同じ量であり、かつ、その向きは逆向きとなる。つまり、光ファイバ201が第2レーザ光に与える偏波面の変動は、光ファイバ201の同じコアを双方向に伝送されることによって相殺される。したがって、光ファイバ201が偏波ビームスプリッタ200に第2レーザ光を出力する際の第2レーザ光の偏波面は、偏波ビームスプリッタ200が光ファイバ201に第2レーザ光を出力した際の第2レーザ光の偏波面に対して、FRM202が与えた90度だけ回転されたものとなる。つまり、光ファイバ201が偏波ビームスプリッタ200に出力する第2レーザ光はY偏波となる。したがって、偏波ビームスプリッタ200は、Y偏波の第2レーザ光を偏波回転部40に出力する。偏波回転部40は、例えば、1/2波長板であり、Y偏波の第2レーザ光の偏波面を90度だけ回転させる。したがって、偏波回転部40は、X偏波の第2レーザ光を、測定部30のカップラ303に出力する。
【0014】
一方、カップラ10が測定部30に出力した第1レーザ光は、音響光学変調器(AOM)302に入力される。AOM302は、発振器301が生成して出力する正弦波信号の周波数だけ第1レーザ光の周波数をシフトさせ、周波数シフト後の第1レーザ光をカップラ303に出力する。カップラ303は、周波数シフトされた第1レーザ光と第2レーザ光を合波して、X偏波の第3レーザ光をフォトダイオード(PD)304に出力する。PD304は、第3レーザ光を光電変換し、周波数シフトされた第1レーザ光と、第2レーザ光とのビート成分に対応する電気信号を出力する。仮に、レーザ50が射出するレーザ光の周波数に揺らぎがなく、レーザ50が理想的な線スペクトルのレーザ光を射出するものとすると、PD304が出力する電気信号は、第1レーザ光(周波数シフトされている)と、第2レーザ光の周波数差をその周波数とする正弦波信号となる。ここで、レーザ50が射出するレーザ光の周波数が変動すると、PD304が出力する電気信号の周波数もそれに応じて変動する。したがって、判定部305は、PD304が出力する電気信号の周波数の揺らぎ(周波数変動量)を検出することで、レーザ50のレーザ線幅を測定することができる。
【0015】
なお、PD304が出力する電気信号の中心周波数は、発振器301が生成する正弦波信号の周波数になる。ここで、発振器301が生成する正弦波信号に揺らぎが生じると、その揺らぎは、測定結果に重畳される。したがって、判定部305は、発振器301が生成する正弦波信号の周波数に対する、PD304が出力する電気信号の周波数の変動を測定する構成とすることもできる。発振器301が生成する正弦波信号の周波数を基準としてPD304が出力する電気信号の周波数の変動を測定することで、発振器301が生成する正弦波信号の周波数の変動を相殺することができる。
【0016】
なお、カップラ303における第2レーザ光の第1レーザ光に対する遅延量は、2つのレーザ光の周波数の揺らぎに相関が無くなる様に設定する。本実施形態において、この第2レーザ光に遅延を与えるのは、遅延付与部20、より正確には、光ファイバ201である。したがって、光ファイバ201の長さは、カップラ303における第2レーザ光の第1レーザ光に対する遅延量が、コヒーレンス長以上となる様に設定する。但し、非特許文献1の構成とは異なり、本実施形態では、光ファイバ201において第2レーザ光を双方向に伝搬させるため、非特許文献1の構成と比較して光ファイバ201の長さを半分にすることができる。
【0017】
さらに、本実施形態では、光ファイバ201の同じコアにおいて第2レーザ光を双方向に伝搬させるため、光ファイバ201が第2レーザ光に与える偏波変動は相殺される。したがって、手動による偏波面の調整は不要となる。なお、
図1では、カップラ303において第1レーザ光と第2レーザ光の偏波面を一致させるため、遅延付与部20が出力するY偏波の第2レーザ光を偏波回転部40によりX偏波にしていた。しかしながら、例えば、カップラ10と偏波ビームスプリッタ200の間で第2レーザ光の偏波面を90度だけ回転させる構成とすることができる。なお、この場合、偏波ビームスプリッタ200は、Y偏波のレーザ光を光ファイバ201に出力し、X偏波のレーザ光をカップラ303に出力する。また、光ファイバ201とFRM202の間で、第2レーザ光が往復する際に、第2レーザ光の偏波面を合計で90度だけ回転させる構成とすることができる。さらに、カップラ10からカップラ303までの間において、第1レーザ光の偏波面を90度だけ回転させてY偏波とし、カップラ303においては、Y偏波の第1レーザ光とY偏波の第2レーザ光を合波する構成とすることもできる。また、本実施形態では、FRM202により第2レーザ光を反射させて、第2レーザ光を、再度、光ファイバ201に入射させていた。しかしながら、反射前の偏波の方向と、反射後の偏波の方向との関係が既知である任意の光学部材をFRM202に代えて使用することができる。
【0018】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、発振器301及びAOM302により、第1レーザ光の周波数をシフトさせていた。つまり、カップラ303が合波する第1レーザ光と第2レーザ光の周波数は異なっており、測定装置1は、レーザ50のレーザ線幅の測定にヘテロダイン検波を使用していた。本実施形態においては、コストの高いAOM302を省略するため、第1レーザ光の周波数をシフトさせない。したがって、測定装置1は、ホモダイン検波によりレーザ50のレーザ線幅を測定する。
【0019】
図2は、本実施形態による測定装置1の構成図である。なお、第一実施形態の測定装置1と同様の構成要素には同じ参照符号を付与し、その説明については基本的に省略する。また、各レーザ光の偏波面は、第一実施形態と同様であるため、
図2においては偏波面の表記を省略している。
【0020】
まず、第2レーザ光を遅延させるための構成と、第2レーザ光の偏波面を第1レーザ光の偏波面に一致させるための構成は、第一実施形態と同様である。したがって、測定部30には、カップラ10からX偏波の第1レーザ光が入力され、偏波回転部40からX偏波の第2レーザ光が入力される。本実施形態において、測定部30は、90度光ハイブリッド306を有し、第1レーザ光及び第2レーザ光は、90度光ハイブリッド306に入力される。なお、
図2に示す様に、90度光ハイブリッド306に入力される第1レーザ光及び第2レーザ光の電界成分をそれぞれE
1及びE
2と表記する。90度光ハイブリッド306は、第1レーザ光と第2レーザ光との和である第3レーザ光と、第1レーザ光と第2レーザ光との差である第4レーザ光と、をバランスドPD307に出力する。第3レーザ光の電界成分はE
1+E
2であり、第4レーザ光の電界成分はE
1-E
2である。さらに、90度光ハイブリッド306は、第1レーザ光と、位相をπ/2だけシフトさせた第2レーザ光との和である第5レーザ光と、第1レーザ光と、位相をπ/2だけシフトさせた第2レーザ光との差である第6レーザ光と、をバランスドPD308に出力する。第5レーザ光の電界成分はE
1+jE
2であり、第6レーザ光の電界成分はE
1-jE
2である。なお、第1レーザ光と第2レーザ光の関係が逆転している構成であっても良い。
【0021】
バランスドPD307は、第3レーザ光を光電変換して得た第3電気信号と、第4レーザ光を光電変換して得た第4電気信号との差分を出力する。例えば、第3レーザ光を光電変換して得られる第3電気信号は、正確には、第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分(積成分)に加えて、第1レーザ光の2乗成分と、第2レーザ光の2乗成分とを、含んでいる。第一実施形態のヘテロダイン検波において、第1レーザ光の2乗成分及び第2レーザ光の2乗成分の周波数帯域は、第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分の周波数帯域とは異なるため、フィルタにより分離可能である。しかしながら、本実施形態においてはホモダイン検波であるため、総ての成分の周波数帯域は、略同じとなる。ここで、第4電気信号も、第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分に加えて、第1レーザ光の2乗成分と、第2レーザ光の2乗成分とを、含んでいる。しかしながら、第4電気信号に含まれる第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分は、第3電気信号に含まれる第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分とは逆相である。一方、第4電気信号に含まれる第1レーザ光の2乗成分及び第2レーザ光の2乗成分は、第3電気信号に含まれるものと同相である。したがって、第3電気信号と第4電気信号との差分により、第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分を取り出すことができる。バランスドPD308についても同様である。なお、バランスドPD307が出力する信号は同相(I)成分に対応し、バランスドPD308が出力する信号は直交(Q)成分に対応する。
【0022】
したがって、判定部305は、バランスドPD307が出力するI成分を示す電気信号と、バランスドPD308が出力するQ成分を示す電気信号とに基づき、レーザ50のレーザ線幅を判定することができる。具体的には、判定部305は、I成分を示す電気信号とQ成分を示す電気信号とに基づき、電気信号全体の振幅を判定する。レーザ50が理想的な線スペクトルのレーザ光を射出するものとすると、この電気信号の振幅は一定(直流)となる。一方、レーザ50が射出するレーザ光の周波数が変動すると、この電気信号の振幅は、その周波数に応じて変動する。したがって、判定部305は、I成分を示す電気信号とQ成分を示す電気信号とに基づき、電気信号の周波数を検出することで、レーザ50のレーザ線幅を測定することができる。
【0023】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第二実施形態との相違点を中心に説明する。第二実施形態の90度光ハイブリッド306と、2つのバランスドPD307及び308と、を含む部分の構成は、光通信システムのホモダイン検波で使用されるのと同様の構成である。光通信システムにおいては、90度光ハイブリッド306に入力される第1レーザ光及び第2レーザ光の内の一方が信号光となり、他方が局所光となる。ホモダイン検波で必要な成分は、第二実施形態でレーザ線幅の測定に使用する成分と同様、つまり、局所光と信号光とのビート成分であり、局所光の2乗成分及び信号光の2乗成分は、復調において干渉成分となる。したがって、通常、ホモダイン検波においては、
図2に示す様に、バランスドPDを使用して干渉成分である、局所光の2乗成分及び信号光の2乗成分を除去する。ここで、局所光の振幅は一定であるが、信号光の振幅は、一般的に、搬送している情報により変化する。つまり、信号光の2乗成分は、直流ではなく、局所光と信号光とのビート成分の周波数帯域に少なくとも部分的に重複する周波数帯域を有する信号となる。したがって、光通信システムのホモダイン検波においてはバランスドPDが必要となる。
【0024】
しかしながら、第二実施形態の構成において、第1レーザ光と第2レーザ光の振幅は共に一定である。したがって、第1レーザ光の2乗成分と、第2レーザ光の2乗成分は、共に、直流成分であり、フィルタや、デジタル信号処理により除去可能である。本実施形態は、第二実施形態のバランスドPD307及びバランスドPD308に代えて、通常のPDを使用するものである。
【0025】
図3は、本実施形態による測定装置1の構成図である。なお、第二実施形態の測定装置1と同様の構成要素には同じ参照符号を付与し、その説明については基本的に省略する。第二実施形態との相違点は、バランスドPD307に代えてPD309を使用し、バランスドPD308に代えてPD310を使用することである。なお、
図3においては、PD309に第3レーザ光(電界成分E
1+E
2)を入力しているが、第4レーザ光(電界成分E
1-E
2)を入力する構成とすることもできる。また、
図3においては、PD310に第5レーザ光(電界成分E
1+jE
2)を入力しているが、第6レーザ光(電界成分E
1-jE
2)を入力する構成とすることもできる。
【0026】
PD309は、第3レーザ光を光電変換して得た第3電気信号を判定部305に出力し、PD310は、第5レーザ光を光電変換して得た第5電気信号を判定部305に出力する。第3電気信号は、第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分に加えて、第1レーザ光の2乗成分と、第2レーザ光の2乗成分とを含む。判定部305は、第3電気信号の直流成分を除去することで、第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分を取り出す。第1レーザ光と第2レーザ光のビート成分は、同相(I)成分に対応する。直流成分を除去する処理は、アナログ領域で行っても、デジタル領域で行っても良い。第5電気信号は、第1レーザ光と、π/2だけ位相がシフトされた第2レーザ光とのビート成分に加えて、第1レーザ光の2乗成分と、π/2だけ位相がシフトされた第2レーザ光の2乗成分とを含む。判定部305は、第5電気信号の直流成分を除去することで、第1レーザ光と、π/2だけ位相がシフトされた第2レーザ光のビート成分を取り出す。第1レーザ光と、π/2だけ位相がシフトされた第2レーザ光のビート成分は、直交(Q)成分に対応する。直流成分を除去する処理は、アナログ領域で行っても、デジタル領域で行っても良い。そして、判定部305は、第二実施形態と同様に、I成分及びQ成分に基づきレーザ50のレーザ線幅を測定する。
【0027】
以上、本実施形態は、バランスドPDに代えて、通常のPDを使用するため、第二実施形態と比較して測定装置1のコストを抑えることができる。
【0028】
<その他の実施形態>
第一実施形態から第三実施形態において、光ファイバ201は、シングルコア光ファイバであるものとしていた。しかしながら、光ファイバ201として、複数のコアを有するマルチコア光ファイバを使用することができる。マルチコア光ファイバの少なくとも2つのコアを直列に接続することで、光ファイバ201の長さを、短くすることができる。例えば、マルチコア光ファイバの第1端部において、第1コアと第2コアを接続し、当該マルチコア光ファイバの第1端部とは異なる第2端部において、第2コアと第3コアを接続するといったことを繰り返すことで、マルチコア光ファイバのn個(nは2以上の整数)のコアを直列に接続することができる。マルチコア光ファイバのn個のコアを直列に接続することで、シングルコア光ファイバを光ファイバ201として使用する場合と比較して、光ファイバ201の長さを1/nにすることができる。
【0029】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10:カップラ、20:遅延付与部、30:測定部