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特許7256799プロピレンベースポリマーをベースとするホットメルト接着剤組成物及びそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】プロピレンベースポリマーをベースとするホットメルト接着剤組成物及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/14 20060101AFI20230405BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230405BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230405BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230405BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20230405BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230405BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C09J123/14
C09J7/35
C09J11/08
C09J11/06
C09J5/00
B32B27/00 D
B32B7/12
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020525954
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 US2018059930
(87)【国際公開番号】W WO2019094659
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】62/584,412
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313011456
【氏名又は名称】ボスティック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ワン,バオユ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,ロナルド,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ストゥクズィンスキ,ラッセル
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/123874(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0062548(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 123/10ー123/14
C08L 23/00-23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着剤において使用するためのポリマー組成物であって、
(a)第1の低分子量(LMW)のSSCプロプレンベースポリマーであって、少なくとも1種の半晶質であり、90,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有する、第1のLMWのSSCプロプレンベースポリマーと、
(b)高分子量(HMW)のSSCプロピレンベースポリマーであって、少なくとも1種の本質的に非晶質であり、100,000g/モルより高いMwを有し、かつ0~30J/gのDSC融解エンタルピーを有する、HMWのSSCプロピレンベースポリマーと、
(c)第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーであって、少なくとも1種の本質的に非晶質であり、90,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有し、かつ0~30J/gのDSC融解エンタルピーを有する、第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーと
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1のLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、2%~15%エチレン及び35J/gより大きいDSC融解エンタルピーを有し、
前記HMWのSSCプロピレンベースポリマーは、2%~20%エチレン及び25J/g未満のDSC融解エンタルピーを有し、かつ
前記第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、2%~20%エチレン及び25J/g未満のDSC融解エンタルピーを有する
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記プロピレンベースポリマーのそれぞれは、プロピレンとエチレンとのコポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記第1のLMWのSSCプロプレンベースポリマーは、重量により、かつ前記ポリマー組成物の合計重量を基準にして10%~40%量で存在し、
前記HMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により、かつ前記ポリマー組成物の合計重量を基準にして40%~80%量で存在し、
前記第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により、かつ前記ポリマー組成物の合計重量を基準にして5%~40%量で存在する
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ホットメルト接着剤組成物であって、
(a)第1の低分子量(LMW)のSSCプロプレンベースポリマーであって、少なくとも1種の半晶質であり、90,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有する、第1のLMWのSSCプロプレンベースポリマーと、
(b)高分子量(HMW)のSSCプロピレンベースポリマーであって、少なくとも1種の本質的に非晶質であり、100,000g/モルより高いMwを有し、かつ0~30J/gのDSC融解エンタルピーを有する、HMWのSSCプロピレンベースポリマーと、
(c)第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーであって、少なくとも1種の本質的に非晶質であり、90,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有し、かつ0~30J/gのDSC融解エンタルピーを有する、第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーと、
(d)粘着付与剤、
(e)可塑剤、
(f)安定化剤、又は抗酸化剤、及び
(g)任意選択的に、重量%~20重量%のワックス
を含有するホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
(a)前記第1のLMWのSSCプロプレンベースポリマーは、重量により且つ前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして、2.5%~25%の量で存在し、
(b)前記HMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により且つ前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして、12%~40%の量で存在し、
(c)前記第2のLMWのSSCプロプレンベースポリマーは、重量により且つ前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして、2%~20%の量で存在し、
(d)前記粘着付与剤は、重量により且つ前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして、15%~17%の量で存在し、
(e)前記可塑剤は、重量により且つ前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして、1%~35%の量で存在し、
(f)前記安定化剤又は抗酸化剤は、重量により且つ前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にし、て0.1%~3%の量で存在する
請求項5に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
前記粘着付与剤は、脂肪族及び脂環族炭化水素樹脂並びにそれらの水素化誘導体、水素化芳香族炭化水素樹脂、芳香族変性された脂肪族又は脂環族樹脂及びそれらの水素化誘導体、ポリテルペン並びにスチレン化ポリテルペン樹脂からなる群から選択される
請求項5に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
前記粘着付与剤は、C-5脂肪族炭化水素樹脂、水素化C-5樹脂、水素化C-9樹脂及び水素化DCPD樹脂である
請求項7に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
前記粘着付与剤は、芳香族変性されたC-5樹脂、芳香族変性された水素化DCPD樹脂である
請求項8に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
前記可塑剤は、鉱油及び液体ポリブテンからなる群から選択される
請求項5に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
前記ワックスは、前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして20重量%までの量で存在する
請求項5に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項12】
前記ポリマー組成物は、別のポリマーをさらに含む
請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記HMWのSSCプロピレンベースポリマーの分子量は、前記第1のLMWのSSCプロプレンベースポリマーの分子量、又は前記第2のLMWのSSCプロプレンベースポリマーの分子量のいずれかの分子量の少なくとも3倍である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記第1のLMWのSSCプロプレンベースポリマーは35J/gより大きいDSC融解エンタルピーを有し、
前記HMWのSSCプロピレンベースポリマーは、2%~20%のエチレン及び25J/g未満のDSC融解エンタルピーを有し、
前記第2のLMWのSSCプロプレンベースポリマーは2%~20%のエチレン及び25J/g未満のDSC融解エンタルピーを有する
請求項5に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項15】
前記プロピレンベースポリマーのすべての重量は、前記ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして30%~80%を占める、請求項5に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項16】
積層品を作成する方法であって、
溶融状態における、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物を第一の基材に適用する工程;及び
第二の基材を、前記第二の基材を前記接着剤組成物に接触させることによって前記第一の基材に貼り合わせる工程
を含む方法。
【請求項17】
前記第一の基材は、弾性ストランドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一の基材は、不織布である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第二の基材は、ポリエチレンである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法によって作成された積層品。
【請求項21】
ホットメルト接着剤において使用するためのポリマー組成物であって、
(a)第1の低分子量(LMW)のSSCプロプレンベースポリマーであって、少なくとも1種の半晶質であり、90,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有する、第1のLMWのSSCプロプレンベースポリマーと、
(b)高分子量(HMW)のSSCプロピレンベースポリマーであって、少なくとも1種の本質的に非晶質であり、100,000g/モルより高いMwを有し、かつ0~30J/gのDSC融解エンタルピーを有する、HMWのSSCプロピレンベースポリマーと、
(c)第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーであって、少なくとも1種の本質的に非晶質であり、90,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)を有し、かつ0~30J/gのDSC融解エンタルピーを有する、第2のLMWのSSCプロピレンベースポリマーと、
を含むポリマー組成物であって、
各々のプロピレンベースポリマーは、1~5の多分散性指数(PDIを有する、
ポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119の下、2017年11月10日に出願された米国特許出願第62/584,412号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、好ましくは、シングルサイト触媒を使用して調製される、ポリプロピレンポリマーを含むポリマーブレンド物をベースとする新規なホットメルト接着剤組成物に関する。この接着剤組成物は、接着性と凝集性とをバランスよく有し、包装、製品組立及び積層において用途を見出す。この接着剤組成物は、弾性アタッチメントを含めて、乳幼児用おむつ、成人失禁用物品及び婦人用衛生パッドなどの各種の使い捨て不織布衛生製品を製造するうえで多くの場合に見られる低表面エネルギー基材を接合させるのに特に有用である。
【背景技術】
【0003】
ホットメルト接着剤は、典型的には、周囲温度で固体の物質として存在するが、熱を加えると流動性のある液体に転換され得る。これらの接着剤は、多くの場合、各種の基材を接着させることが必要となる各種の使い捨ての商品の製造において特に有用である。具体的な用途としては、使い捨てのおむつ、病院用のパッド、女性生理用ナプキン、パンティシールド、手術用ドレープ及び成人失禁用ブリーフ(まとめて使い捨ての不織布衛生用品と呼ばれる)が挙げられる。他の雑多な用途としては、紙製品、包装材料、自動車のヘッドライナー、家電製品、テープ及びラベルが挙げられる。これらの用途のほとんどにおいて、ホットメルト接着剤を加熱してその溶融状態とし、次いで基材(多くの場合に一次基材と呼ばれる)に適用する。次いで、第二の基材(多くの場合に二次基材と呼ばれる)を直ちに第一の基材と接触させ、且つそれに対して押し付ける。冷却させると、接着剤が固化し、強力な接着力が生じる。ホットメルト接着剤の大きい利点は、水系又は溶媒系の接着剤の場合のように、液体のキャリヤーが存在しないことであり、それにより溶媒を除去するための高コストのプロセスを使用せずにすむ。
【0004】
多くの用途において、ホットメルト接着剤は、ピストン又はギアポンプ装置を使用することにより、薄いフィルム又はビーズの形態で基材上に直接押出し加工されることが多い。この場合、基材は、圧力下で加熱したダイと密接な接触状態に置かれる。ダイの温度を接着剤の融点より十分に高く維持して、溶融されたホットメルト物質が吐出ノズルからスムーズに流れ出るようにしなければならない。ほとんどの用途、特に食品包装及び使い捨ての不織布衛生物品の製造において遭遇する用途では、多くの場合、デリケートで熱の影響を受けやすい基材、例えば薄い寸法のプラスチックフィルムを接合させることが含まれる。これは、ホットメルト接着剤用途のためのコーティング温度の上限を規定する。今日市販されているホットメルトは、典型的には、基材の焼け又は変形を回避するために、200℃未満、好ましくは150℃未満のコーティング温度を有するように配合されている。直接的なコーティングと共にいくつかの間接的又は非接触的コーティング方法も開発されており、それにより圧縮空気を用いて基材上にホットメルト接着剤をスプレーコートすることもできる。これらの非接触コーティング技術としては、慣用される渦巻スプレー、Omega(商標)、Surewrap(商標)及び各種の形態のメルトブロー方法が挙げられる。しかしながら、間接的な方法では、受容可能なコーティングパターン得るには、適用温度においてその接着剤の粘度が十分に低く、通常、2,000~30,000mPa・sの範囲、好ましくは2,000~15,000mPa・sの範囲である必要がある。他の多くの物理的ファクター、特に接着剤のレオロジー的性質がホットメルトスプレー性能の決定に関与する。市販のホットメルト製品のほとんどは、スプレーで適用するようになっていない。スプレー性能を予測するための理論的モデル又はガイドラインで受容されているものは存在せず、それは、適用設備を用いて実験的に決めなければならない。
【0005】
ホットメルト接着剤は、典型的には、ポリマー、可塑剤、粘着付与性樹脂及び抗酸化剤のパッケージからなる有機物質である。接着性を修正するか又は特別な性質を付与するために他の成分、例えばワックス、充填剤、着色剤及びUV吸収剤を使用することもできる。これらの有機成分は、接着剤のコーティング条件下で熱分解を受けやすい。例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)トリブロックコポリマーをベースとする、広く使用されている市販のホットメルト接着剤は、175℃で24時間おくと、粘度が元の値の約50パーセントまで低下することが起こり得る。スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ベースのホットメルトは、同様の条件下で架橋の問題を起こす可能性がある。架橋は、粘度の劇的な上昇をもたらし、最後的に三次元ポリマーネットワークが生成するため、接着剤が流動不能となる可能性がある。粘度の変化は、多くの場合、炭化、ゲル化及び溶融された物質上での皮膜の形成を伴う。分解は、必然的に接着剤の性質及び性能の劣化をもたらすであろう。加えて、それらは、設備の損傷をもたらす可能性もある。分解速度は、温度依存性があり、温度が高いほど分解が早くなる。したがって、接着剤のコーティング温度を下げることにより、分解速度を落とすことができる。
【0006】
チーグラー・ナッタ触媒を使用して製造された慣用されるポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及びアイソタクチックポリプロピレン(iPP)は、それら自体では接着剤用途に適していない。チーグラー・ナッタ(ZN)触媒系は、触媒と助触媒とのペアで構成される。最も一般的なそのようなペアは、TiCl及びAl(CCl又はTiCl及びAl(Cである。チーグラー・ナッタ触媒系は、多くの科学誌及び教科書の刊行物の主題であり、当業者に周知である。慣用されるZN触媒系は、典型的には、不活性な担体に担持され、いくつかの触媒サイトを有し、それらのそれぞれが異なる活性を有する。この活性における違いが原因となって、コポリマー分子の複数の分子量及び組成を有するポリマー分子の形成がもたらされる。ZN触媒を用いて製造されたポリオレフィンのホモポリマー及びコポリマーは、典型的には、高度に結晶性であり、剛直である。これは、換言すれば、相対的に脆いか又は基材を濡らしにくく、接着性に乏しく、且つ加工性に劣るホットメルト接着剤となる。それにも関わらず、各種のタイプのポリオレフィンブレンド物を含むホットメルト接着剤が各種の先行特許文献で公知である。
【0007】
本明細書で使用するとき、Z-Nは、オレフィン重合のためのチーグラー・ナッタ触媒を指す。
【0008】
本明細書で使用するとき、LDPE及びHDPEは、それぞれ低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを指す。
【0009】
本明細書で使用するとき、iPPは、主としてアイソタクチックな鎖状構造を有するアイソタクチックプロピレンのホモポリマー又はコポリマーを指す。
【0010】
本明細書で使用するとき、APAOは、典型的には、ルイス酸触媒を用いて製造される、低分子量で非晶質のプロピレンのホモポリマー又はエチレン若しくはブテンとのコポリマーのクラスを指す。
【0011】
本明細書で使用するとき、PBは、ポリブテンのホモポリマー及びコポリマーを指す。
【0012】
例えば、Trotterらは、米国特許第4,022,728号明細書において、非晶質のポリ-アルファ-オレフィン(APAO)、低分子量で実質的に非晶質のエラストマー、液体粘着付与剤及び2重量%までの量の慣用される結晶性ポリプロピレン(iPP)の混合物を含む感圧性のホットメルト組成物を記載している。’728号特許によれば、その組成物は、低温で良好な接着性を与える。
【0013】
Meyerらは、米国特許第4,120,916号明細書において、低分子量PE、低分子量iPP及びAPAOのブレンド物を含むホットメルト接着剤組成物を開示している。それらの接着剤組成物は、短いオープンタイムを与え、パラフィン変性された段ボールの接合に有用であると言われている。
【0014】
Lakshmananらは、米国特許第4,761,450号明細書において、LDPE、ブテン-1とエチレン又はプロピレンとのコポリマー、炭化水素系粘着付与剤及び低分子量液体ポリブテンからなる低分子量のポリマー、APAO並びにそれらの混合物を含む、ホットメルト接着剤として有用なポリマーブレンド物を開示している。
【0015】
Ryanは、米国特許第5,747,573号明細書において、プラスチックと金属化フォイル容器とを接合させるのに有用である、APAOベースのホットメルト接着剤組成物を開示している。その接着剤組成物は、APAO、固体のベンゾエート可塑剤及び炭化水素系粘着付与剤のブレンド物を含む。
【0016】
APAOをポリエチレン、ポリブテンコポリマー又は慣用されるiPPとブレンドすると、深刻な欠点がもたらされる。APAO/PE又はAPAO/PBのブレンド物を含む従来技術の接着剤、例えば本明細書において先に述べた米国特許第4,120,916号明細書及び米国特許第4,761,450号明細書におけるものは、相容性に乏しい傾向がある。これらの接着剤は、ホットメルト接着剤が、長い時間、ときに数時間又はさらに数日にわたり高温で溶融状態に維持されなければならない場合、その適用プロセス中に相分離を起こす可能性がある。相分離したホットメルト接着剤中で炭化、皮張り及びゲル化がむしろ速やかに起き、それにより適用設備が詰まるか又は閉塞を起こす可能性がある。そのようなポリマーブレンド物の非相溶性はまた、脆さ、光学的な曇り、存在しないか若しくは乏しいオープンタイム及び低い接合強度をもたらす。APAO及び慣用されるiPPのブレンド物をベースとするホットメルトは、相容性の問題を有さないものの、それらは、依然として、本明細書において先に述べた他の欠点を有する。さらに、慣用されるiPPポリマーの高結晶化度及び高融点のため、APAO/iPPのブレンド物をベースとするホットメルト接着剤は、iPPポリマーの量を極めて低いレベル、例えば米国特許第4,022,728号明細書に開示されているように2重量%以下程度に維持しない限り、硬く且つ脆くなる傾向がある。その結果、これらの接着剤は、低い引張強度、低い接合強度及び低い耐衝撃性を有することになるであろう。iPPの別の有害な作用は、コーティング温度が上がることである。その接着剤は、iPPの融点(180~200℃の範囲)より十分に高くして、液体状態に達するように加熱しなければならない。米国特許第5,723,546号明細書に記載されているような、高分子量及び低分子量のアタクチックポリオレフィンのブレンド物のアプローチ方法は、APAOの引張性質にある程度の改良を与えるものの、単独のAPAOベースのホットメルトの欠陥を克服するのに十分な引張強度及び高温性能を与えることはできなかった。
【0017】
上で述べた従来技術の欠点は、より最近に開示された以下に示す発明により部分的に克服されている:米国特許第6,329,468号明細書(ホットメルト接着剤組成物のための半晶質の可撓性のあるポリオレフィンの使用を教示);米国特許第7,262,251号明細書(アイソタクチックポリプロピレン(RCP)及び第二のポリマーのランダムコポリマーをベースとしたホットメルト接着剤組成物を教示);米国特許出願公開第2003/0096896A1号明細書(シンジオタクチックポリプロピレン(sPP)とAPAOとのブレンド物を含むホットメルト組成物を記載);米国特許第8,383,731号明細書(プロピレンとアルファ-オレフィンとの半晶質のコポリマーをベースとした接着剤のブレンド物を記載)。しかしながら、それらの組成物は、すべて硬質で半晶質のポリマーからなり、分子内及び/又は分子間の組成分布並びに分子鎖の立体規則性分布のいずれも均質ではない。ポリマーの性質と機能との関係の理論的な議論に留まることは、本発明の意図するところではないが、組成及び鎖状構造における非均質性は、極めてブロードな分子量分布と併せてホットメルト組成物での低い接着性及び低い加工性の原因となり得る。上述の組成物中のこれらの半晶質ポリマーは、硬いポリマー鎖構造を有することが可能であり、それは、そのようなポリマーを含むホットメルト接着剤の接着性及び適用性にとって有害となる。適用方法全体で接着性、凝集性、低粘度、ブロードな適用温度範囲及び適用性の複雑な要件のバランスをとることは、不可能ではないが、極めて困難である。
【0018】
最近では、Tseらは、米国特許第9,109,143号明細書において、100,000g/モル未満の重量平均分子量(Mw)を有するコポリマーをベースとする2種の低分子量プロピレンのブレンド物を含む接着剤組成物を公表した。’143特許の低分子量プロピレンコポリマーは、低い融点及び低い結晶化度も有する。そのコポリマーは、主として段ボール箱をシールすることを目的としており、凝集力が貧弱であり、例えば不織布衛生製品のための弾性アタッチメント及び自動車のヘッドライナー集成体における一連の要件に合わせることができない。
【0019】
米国特許出願公開第2016/0121014号明細書は、プロピレンベースであり、約75,000以下の分子量を有する第一のポリマー並びに少なくとも約100,000の分子量を有するプロピレンベースポリマー及び約20%以下のスチレン含量を有するスチレンのブロックコポリマーを含む群から選択される第二のポリマーを含む使い捨ての吸収用物品及び接着剤組成物を開示しており、ここで、その接着剤組成物は、弾性アタッチメント用途に有用であると主張されている。
【0020】
Wangらは、米国特許出願公開第2017/0204306号明細書において、高分子量で本質的に非晶質のプロピレンポリマー及び低分子量で半晶質のプロピレンポリマー(いずれも、好ましくは、シングルサイト触媒を使用して製造される)のブレンド物をベースとしたホットメルト接着剤組成物を開示している。その組成物は、不織布の弾性アタッチメント用途のための優れたクリープ抵抗性を示した。低いコーティング重量で高い剥離強度(>100g/in)を必要とするいくつかの用途(例えば、ある種の不織布構成接着剤)では、この特許出願の接着剤の性能は、さらに改良され得るであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、上述の従来技術の接着剤の短所を克服するであろうホットメルト接着剤を提供することは、有利であろう。本発明において、少なくとも1種の半晶質で低分子量(LMW)のプロピレンベースポリマー;少なくとも1種の本質的に非晶質で高分子量(HMW)のプロピレンベースポリマー;及び少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのプロピレンベースポリマーを含むポリマー組成物は、従来技術のホットメルトシステムでは提供することに成功しなかったユニークな性能の組合せを与えることが見出された。そのような組成物は、各種の低表面エネルギー基材、例えばLDPEフィルム及びPPベースの不織布に対する高いクリープ抵抗性及び高い剥離強度の両方、優れた熱安定性、良好な湿潤性能、ブロードな適用温度範囲、長いオープンタイム並びに良好なグリーン接合強度を与える。その組成物は、弾性アタッチメントだけではなく、不織布衛生物品の周辺の多くの他の接合用途、例えばシャシーに対する腰ストレッチパネルの接合及びランディングゾーンと、腰回り領域のVelcroイヤーとの接合にも適している。
【0022】
本発明では、ホットメルト接着剤組成物は、3種のプロピレンベースポリマー及びホットメルト接着剤において典型的に見出される他の成分を含むポリマー組成物を含む。好ましくは、これらのポリマーは、シングルサイト触媒(SSC)を使用して製造され、以下のものである:少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのプロピレンベースポリマー(本明細書では、ときに「HMWのSSC-非晶質PPポリマー」と呼ばれる);少なくとも1種の本質的に非晶質のプロピレン、LMWのプロピレンベースポリマー(本明細書では、ときに「LMWのSSC-Amorp-PPポリマー」と呼ばれる);及び少なくとも1種の半晶質でLMWのプロピレンベースポリマー(本明細書では、ときに「LMWのSSC-Cryst-PPポリマー」と呼ばれる)。それらの成分ポリマーが個別の分子量を有するため、トリモーダルな分子量分布を有するポリマーブレンド物が得られる。分子量の違いに加えて、そのブレンド物中のSSC-PPポリマーは、融解のエンタルピーも異なり、これは、ポリマーの結晶化度の間接的な尺度となる。
【0023】
そのホットメルト接着剤組成物は、粘着付与剤成分、可塑剤成分、抗酸化剤のパッケージ並びに任意選択的に他の添加剤、例えばワックス、充填剤、着色剤、UV吸収剤及び他のポリマーも含む。その組成物は、各種の直接的及び間接的なコーティング方法を用いた用途によく適しており、低いコーティング温度、広いコーティング温度範囲、低表面エネルギーのプラスチック基材に対する優れた接着性、高い凝集力、高い剪断抵抗性、高いストランド保持性、低い粘度、低い融点及び優れた熱安定性などを含めた新規な性能の組合せを有する。本発明の組成物は、食品包装のため、製品の組立のため、且つポリエチレン及びポリプロピレンフィルム、不織布及び弾性ストランドを相互に又はそれら自体に接合させるための使い捨ての不織布物品の集成体のために特に有用である。
【0024】
本明細書で使用するとき、SSCは、α-オレフィンを重合させるためのシングルサイト触媒を指す。
【0025】
本明細書で使用するとき、Mwは、ポリマーの重量平均分子量を指す。重量平均分子量は、ポリスチレン標準品を使用した高温でのサイズ排除クロマトグラフ(SEC)を用いて同定される。
【0026】
本発明の目的のために、「本質的に非晶質の」という用語は、PPベースポリマーが0J/g~約30J/gの融解のエンタルピーを示す状態を指すのに使用される。
【0027】
本発明の目的のために、「半晶質の」という用語は、PPベースポリマーが30J/gより高い融解のエンタルピーを示す状態を指すのに使用される。
【0028】
本明細書で使用するとき、HMWのSSC-Amorp-PPは、シングルサイト触媒を使用して製造し、約100,000g/モルよりも高いMwを有する、高分子量の本質的に非晶質のプロピレンのホモポリマー又はコポリマーのクラスを指す。それらのポリマーは、DSC曲線上に融解ピークを全く示さない、完全に非晶質であり得るが、それらは、DSC曲線上において、物質1グラムあたり30ジュール(J/g)以下、すなわち0J/g~約30J/gの融解のエンタルピーを伴う、小さいが認識可能な1つ又は複数の融解ピークが立ち上がっている、小さい割合の結晶を有し得る。
【0029】
本明細書で使用するとき、LMWのSSC-Amorp-PPは、シングルサイト触媒を使用して製造し、約90,000g/モルよりも低いMwを有する、高分子量の本質的に非晶質のプロピレンのホモポリマー又はコポリマーのクラスを指す。それらのポリマーは、DSC曲線上に融解ピークを全く示さない、完全に非晶質であり得るが、それらは、DSC曲線上において、物質1グラムあたり30ジュール(J/g)以下、すなわち0J/g~約30J/gの融解のエンタルピーを伴う、小さいが認識可能な1つ又は複数の融解ピークが立ち上がっている、小さい割合の結晶を有し得る。
【0030】
本明細書で使用するとき、LMWのSSC-Cryst-PPは、約90,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)、並びにDSC曲線上において、物質1グラムあたり30ジュール(J/g)以上、すなわち典型的には約30J/g~約100J/g、より好ましくは約35J/g~約80J/gの融解のエンタルピーを伴う個別の1つ又は複数の融解ピークを有する、低分子量で半晶質のプロピレンのホモポリマー又はコポリマーのクラスを指す。「融解のエンタルピー(enthalpy of melting)」又は「融解のエンタルピー(enthalpy of fusion)」及び「融解熱(heat of fusion)」又は「融解熱(heat of melting)」は、相互に交換可能に使用される。
【0031】
本明細書で使用するとき、DSC曲線は、示差走査熱量測定(DSC)機器を使用することにより得られる熱流量又は熱容量対温度のプロットを指す。それらの値を測定するための試験方法は、ASTM E793-01“Standard Test Method for Enthalpies of Fusion and Crystallization by Differential Scanning Calorimetry”である。
【0032】
本明細書で使用するとき、SSC-PPブレンド物は、少なくとも1種のHMWのSSC-Amorp-PPポリマー、少なくとも1種のLMWのSSC-Amorp-PP及び少なくとも1種のLMWのSSC-Cryst-PPポリマーを含むポリマーブレンド物を指す。本発明は、接着剤がこれらの3種のポリマーのみで他のポリマーを一切含まないか、又は接着剤の他の成分に加えて他のポリマーも含み得ることを想定する。
【0033】
本明細書で使用するとき、それがポリプロピレンホモポリマーであるか、又はそれが他のモノマー、例えばエチレンとのコポリマーであり、少なくとも50重量%のプロピレンを含んでいる場合、そのポリマーは、「プロピレンベース」である。
【0034】
ポリマー組成物は、列挙されたポリマーの予備形成された混合物若しくはブレンド物であり得るか、又はホットメルト組成物の成分である特定のポリマーを表し得る(そのようなポリマーが接着剤に添加されるより前に共に混合されていなかったとしても)。
【0035】
したがって、本発明は、3種の個別のポリマー、すなわち半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマー、本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマー及び本質的に非晶質でHMWのSSC-Amorp-PPポリマーを含むポリプロピレンポリマーブレンド物を含むホットメルト接着剤組成物を目的としている。本明細書において記述されたポリマーブレンド物の合計量は、接着剤組成物の20~80%を占める。その接着剤組成物は、SSC-PPブレンド物に加えて、主な成分として粘着付与性樹脂、可塑剤及び抗酸化剤を含む。本発明の組成物は、半晶質でLMWのSSC-Crys-PPポリマー、本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマー及び本質的に非晶質でHMWのSSC-Amorp-PPポリマー間の相補的な性質の利点を有し、従来技術のポリオレフィンベースのホットメルト接着剤の短所を克服した。本発明の実施形態による組成物は、クリープ保持率と剥離強度との間のよくバランスした性質を与え、それにより二元ポリマーブレンド物をベースとした従来技術の組成物の剥離値における欠陥を克服している。その組成物は、高い凝集力も示し、それにより高い剪断抵抗性、優れた熱安定性、良好な湿潤性能、ブロードな適用温度範囲、長いオープンタイム、良好なグリーン接合強度、低い粘度、硬化させたときの低いか又はまったくない残存タック及び本質的に公知のすべてのホットメルトコーティング方法との適合性が得られる。具体的には、本発明の実施形態では、各種のスプレーコーティング塗布技術、例えば渦巻スプレー法、Omega(商標)法、Surewrap(商標)法、メルトフローン法、Control Coat(登録商標)法など、並びに非スプレーコーティング塗布技術、例えばスロットコーティング法、V-slot(商標)法、Allegro(商標)法などに十分に適した接着剤組成物が得られ、これらのコーティング技術は、当業者に周知であり、本発明の議論の対象ではない。
【0036】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1種の半晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマー、少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマー及び少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのSSC-Amorp-PPポリマーを含むポリマーブレンド物を含むホットメルト接着剤組成物を提供することであり、それらのすべては、好ましくは、シングルサイト触媒(SSC)を使用して調製され、ポリマー鎖に沿って統計的にランダムなコモノマー分布を有するプロピレンのホモポリマー又はプロピレンとアルファ-オレフィンコモノマーとのコポリマーのいずれかである。本発明の組成物中のポリマーブレンド物の合計量は、20重量%~80重量%、好ましくは25重量%~60重量%、最も好ましくは30重量%~50重量%である。
【0037】
半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマーは、本発明の実施形態では、重量により且つポリマー組成物の合計重量を基準にして約10%~約40%、好ましくは約15%~約35%、最も好ましくは約18%~約25%の量で存在し得る。本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、本発明の実施形態では、重量により且つポリマー組成物の合計重量を基準にして約5%~約40%、好ましくは約10%~約30%、最も好ましくは約18%~約25%の量で存在し得る。本質的に非晶質でHMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、本発明の実施形態では、重量により且つポリマー組成物の合計重量を基準にして約40%~約80%、好ましくは約50%~約70%、最も好ましくは約54%~約65%の量で存在し得る。半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマーは、本発明の実施形態では、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約2.5%~約25%、好ましくは約4%~約20%、最も好ましくは約5%~約12%の量で存在し得る。本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、本発明の実施形態では、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約2%~約20%、好ましくは約3%~約15%、最も好ましくは約5%~約12%の量で存在し得る。本質的に非晶質でHMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、本発明の実施形態では、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約12%~約40%、好ましくは約15%~約30%、最も好ましくは約18%~約26%の量で存在し得る。本明細書において、各種の成分の種々な範囲が与えられる場合、本発明は、その組成物が第一の範囲の下限から第二の範囲の上限までの成分範囲を含み得ると想定する。
【0038】
本発明の第二の目的は、可塑剤、共存させることが可能な粘着付与剤及び抗酸化剤と組み合わせた本明細書において先に挙げたポリマーブレンド物を含むホットメルト接着剤組成物の配合技術を教示することである。その組成物は、ワックス、官能化ポリマー、着色剤、UV吸収剤及び充填剤(これらに限定されるわけではない)を含む任意の添加剤を含むことができる。
【0039】
本発明の第三の目的は、177℃で500mPa・s~35,000mPa・s、好ましくは1000mPa・s~20,000mPa・s、最も好ましくは2,000mPa・s~15,000mPa・sの低い粘度を有するポリマーブレンド物を含むホットメルト組成物に関する。粘度が低いことは、各種のスプレーコーティング法を含む用途で極めて重要である。
【0040】
本発明の別の目的は、少なくとも80%以上のクリープ保持率を有する、不織布弾性アタッチメント用途のためのホットメルト接着剤組成物を提供することであり、ここで、(本明細書に記述する方法に基づいた)80%という値は、一般的には、使い捨ての不織布衛生物品産業で受容可能な最低値である。
【0041】
本発明は、200℃より低い、好ましくは160℃以下の温度でホットメルト接着剤を使用する一方、接着剤の接合から、低温、周囲温度又は高温で特にクリープ条件下において機械的応力に耐え得る良好な凝集力を得る同種の基材又は異種の基材の接合が含まれる、各種の用途を包含する。本発明の組成物は、プラスチック物質、例えば冷凍食品包装のための紙箱(その箱は、多くの場合、貯蔵の際にその内容物を乾燥から保護するため若しくは美的な理由のため又はその両方の理由から、水バリヤ物資を用いてコーティングされている)の、低表面エネルギーを有する、印刷されるか又はコーティングされた板紙を接合させるのに特に有利である。そのような包装用途では、本発明の組成物は、コーティングされるか又は印刷された箱に、凝固点よりも低い温度での繊維引裂き接合強度を与えることが可能であり、これは、慣用されるEVAホットメルトでは不可能である。したがって、低温包装用途のためのホットメルトを提供することが本発明の別の目的である。
【0042】
本発明の別の目的は、バッチ法を含めて、ホットメルト接着剤組成物を調製する方法を教示することである。
【0043】
本発明の別の目的は、薄い寸法のLDPEフィルム及びPP不織布が典型的に使用される、不織布衛生吸収用物品の製造で必然的に遭遇する熱の影響を受けやすい基材を含む用途のための、約155℃を含めて、160℃より低い温度で良好な加工性を有するホットメルト接着剤組成物を提供することである。
【0044】
別の目的は、各種のホットメルトコーティング方法を使用する、本発明のホットメルト組成物の適用技術を教示することと、最初に第一の基材にホットメルトを適用し、次いで第一の基材と第二の基材とを貼り合わせることによる、2つ以上の基材を接合又は積層する方法を提供することとである。
【0045】
本発明のさらなる目的は、不織布衛生吸収用物品、例えば乳幼児用おむつ、用便しつけ用パンツ、成人失禁用物品、婦人用パッド、パンティライナー、手術衣及び家禽用吸収パッド(これらに限定されるわけではない)などの製造における各種の用途で特に有用であるホットメルト接着剤組成物を提供することであり、その組成物は、引張強度、靱性、可撓性及び接着性でよくバランスのとれた性質を有する。それは、各種の低表面エネルギー基材、例えばLDPE及びiPPフィルムに対する高い接合強度、一定張力下で弾性物質、例えば弾性ストランドを保持する高い凝集力、優れた熱安定性、良好な湿潤性能、ブロードな適用温度範囲、長いオープンタイム、良好なグリーン接合強度、低い粘度、硬化させたときの低いか又はゼロの残存タック及び本質的に公知のすべてのホットメルトコーティング方法との適合性を示す。
【0046】
本発明の目的は、その成分として、以下の成分の混合物を含むホットメルト接着剤組成物により達成することができる:
a.半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマー;本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマー;及び本質的に非晶質でHMWのSSC-Amorp-PPポリマーを含むポリマー組成物(それらのすべては、好ましくは、SSC触媒を使用することにより調製されたホモポリプロピレン又はプロピレンとα-オレフィンコモノマーとのコポリマーのいずれかである)。シングルサイト触媒によって作成される代替として、本明細書において使用されるポリマーの1つ又は複数は、約1~約4、好ましくは約1.7~約3.3の多分散性指数を有し得る;
b.重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約15重量%~約75重量%、好ましくは約30%~約65%、最も好ましくは約35%~約60%の量の、共存させることが可能な粘着付与剤;
c.重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約1%~約35%、好ましくは約2%~約25%、最も好ましくは約3%~約20%の可塑剤;
d.重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約0.1%~約3%、好ましくは約0.2%~約2%の、安定剤又は抗酸化剤;及び
e.任意選択的に、約0重量%~約20重量%、好ましくは約0重量%~約15重量%のワックス。
【0047】
その組成物(さらなる追加の成分を含み得る)の成分を加えると100重量%になる。その接着剤組成物は、他の成分、例えば充填剤、及び/又は着色剤、及び/又は蛍光剤、及び/又は上述の基本接着剤組成物の接着性を修正することが可能な他のポリマーを含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明では、ベースポリマー成分として、半晶質でLMWのSSC-PPポリマー及び本質的に非晶質でHMWのSSC-PPポリマーのブレンド物を含むホットメルト接着剤組成物が製造され、その両方のポリマーは、いくつかの点において、慣用されるZ-N触媒系と区別することが可能なシングルサイト触媒系を使用して調製される。チーグラー・ナッタ触媒系は、典型的には、触媒と助触媒とのペアからなり、最も一般的なそのようなペアは、TiCl及びAl(CCl又はTiCl及びAl(Cである。慣用されるZ-N触媒系は、典型的には、不活性な担体に担持され、担体粒子上において、それぞれ異なる活性を有するいくつかの活性触媒サイトを有する。α-オレフィンのホモ重合では、より多くの活性サイトがそのポリマー骨格中により多くのモノマー分子を取り込むほど、それにより相対的により長い鎖長、すなわちより高い分子量を有するポリマー分子が製造される。逆に、活性サイトが少ないほど、より短い鎖長のポリマー分子が得られるようになるであろう。Z-N触媒によって製造されたポリマーは、10までの多分散性指数(PDI)を有する極めてブロードな分子量分布を有する一方、SSC触媒によって調製されたポリマーは、典型的には約1~約5、好ましくは約1.7~約3.3のPDIを有する狭い分子量分布を有する。PDIは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比として定義される。Z-N触媒を使用すると、その重合反応は、高度に立体特異的である。α-オレフィン分子は、ポリマー鎖に対して、その触媒の化学的構造及び結晶構造に依存して特定の配向のみで付加し、それにより規則的な三次元のポリマー鎖の立体配置が繰り返される。ポリマーの科学的な命名法では、「立体規則性」という用語は、鎖の立体配置、すなわちポリマー鎖の立体構造を記述するのに使用される。ポリマー主鎖を通して引いた仮想平面の同一の側において、連続的なモノマー単位の第三級炭素原子に結合されたラジカルの群を有すると記述される鎖の立体配置を有する場合、そのポリマーは、アイソタクチックと呼ばれる。
【0049】
このタイプの鎖の立体配置を有するポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレン、すなわちiPPと呼ばれている。
【0050】
ポリプロピレン鎖がシンジオタクチックな立体配置をとることも可能であり、その場合、その鎖に沿って連続するモノマー単位の三級メチル基が仮想平面のそれぞれの側に交互に配置される。
【0051】
このタイプの鎖の立体配置を有するポリプロピレンは、シンジオタクチックポリプロピレン、すなわちsPPと呼ばれる。
【0052】
規則的な空間立体配置とは対照的に、プロピレンポリマー鎖は、ポリマー鎖を通る仮想平面のいずれの側にも立体的にランダムに配された、連続のモノマー単位のメチル基を有することを特徴とする鎖の立体構造をとることもできる。この鎖の立体配置は、アタクチックと定義され、例えばアタクチックポリプロピレン(aPP)である。
【0053】
今日使用されている市販のZ-N触媒は、主としてアイソタクチック鎖の立体配置を作るように設計されている。しかしながら、この立体選択性は、完全に満足のいくものではなく、主としてアイソタクチックなポリマー鎖中において、シンジオタクチックな炭素原子の付加が場合により起きることを特徴とする、モノマーの組込みでの間違いが起こり得る。その選択性における間違いは、局所的にランダムな立体配置及び鎖分布の不規則性を招き、それによりある程度のアタクチックな画分が生じる。この現象は、iPPポリマー中に小さいが顕著である非晶質な画分をもたらす原因となる。上述の担持されたZ-N触媒上の異なる活性サイトも異なる立体選択性を示し、そのサイトの一部が他よりも忠実にアイソタクチック立体配置を作り出す。そのようにして得られたポリプロピレンは、必然的に、異なる鎖長と立体規則性とを有する複雑な不均一な一連の分子からなることになる。個々の分子において差があるが、そのポリプロピレンの立体配置は、それにも関わらず、依然として主にアイソタクチックである。この構造が理由で、ポリプロピレンは、巨視的に高い結晶化度及び高い融点を有する半晶質の物質である。
【0054】
Z-N触媒により製造された、プロピレンと他のα-オレフィンとのコポリマーの分子構造は、さらにより複雑である。本明細書において先に述べたような分子量及び立体規則性の違いに加えて、それらのコポリマー分子は、典型的には、コモノマーに対する触媒活性サイトでの活性の違いを原因として、コモノマー含量の点で組成においても異なる。このため、分子量及び立体規則性の点だけではなく、コモノマー分布の点でも異なる分子から構成される不均一な物質が生じる。そのコモノマーは、鎖の立体的な規則性を乱し、それにより結晶化度が低下することが起こり得る。立体化学の見地から、ZN触媒によるプロピレンコポリマーは、アタクチック鎖セグメント又はアタクチック鎖のブロックによって中断された、アイソタクチック鎖セグメント又はアイソタクチックブロックを有するブロック状のものとみなすことができる。熱力学的な力が原因で、そのアイソタクチックなブロックが凝集して、ホモポリプロピレンと本質的に同じ融点を有する結晶を形成するであろう。結晶構造の用語では、プロピレンコポリマーは、基本的にiPPの構造と同じであるが、より低い結晶化度を有する。
【0055】
Z-Nタイプのプロピレンのホモポリマー及びコポリマーは、それらが高い融点及び高い結晶化度を有するため、接着剤分野で用途がこれまで見出されなかった。ポリプロピレン結晶の融点は、典型的には、約165~170℃である。これは、それらを含むホットメルト接着剤が、約170℃のポリプロピレンの融点に達するまで固体で留まり、その温度でホットメルトが溶融を開始し、液体となることを意味する。経験的に、ホットメルト接着剤の適用温度は、その接着剤の融点又は軟化点よりも20~30℃高くなければならないことが要求される。実際の適用温度は、慣用されるPPをベースとした接着剤が存在する場合、少なくとも200℃としなければならないであろう。この温度では、そのホットメルトは、速やかに劣化し、それにより各種の加工上及び性能上の問題が起きる。
【0056】
シングルサイト触媒系(SSC)は、慣用されるZ-N触媒と少なくとも1つの重要な点で異なる。それらは、それぞれの触媒分子において単一の活性遷移金属サイトのみを有するため、したがって、この金属サイトでの活性は、全部の触媒分子で同一である。工業的規模で現在広く使用されているSSC触媒の1つのタイプは、触媒及び助触媒又は活性化剤からなるメタロセン触媒系である。その触媒は、2個の環状有機配位子間に位置する金属原子を有する遷移金属錯体であり、それらの配位子は、同一であるか又は異なるシクロペンタジエンの誘導体である。その助触媒は、メタロセン錯体を触媒的に活性な種に変換させることによってメタロセン触媒を活性化させることが可能ないかなる化合物でもあり得、そのような化合物の一例は、アルモキサン、好ましくは4~30の平均オリゴマー化度を有するメチルアルモキサンである。本発明の目的では、他の中性若しくはイオン性の活性化剤を使用することもでき、そのようなものとしては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:各種の有機ホウ素化合物、例えばテトラキス(ペンタフルオロフェニルホウ酸トリ(n-ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニルホウ酸ジメチルアニリニウム又はテトラキス(ペンタフルオロフェニルホウ酸トリチル。別のタイプのSSC触媒は、拘束構造触媒(CGC)である。
【0057】
本明細書で使用するとき、CGCは、拘束構造触媒として知られているSSC触媒系のサブクラスを指す。メタロセンと異なり、拘束構造触媒(CGC)は、同一の金属中心上の他の配位子の1つにおいて、π系の重心と追加の配位子との間のこの金属での角度が、比較される非架橋錯体より小さくなるように結合された唯一の環状配位子を有することを特徴とする。より具体的には、CGCという用語は、ansa架橋シクロペンタジエニルアミド錯体について使用されるが、その定義は、このクラスの化合物をはるかに超えている。したがって、CGCという用語は、他の多少なりとも関連する配位子系を指すのに広く使用されており、それらは、ansa架橋シクロペンタジエニルアミド配位子系とアイソローバル(isolobal)及び/又はアイソエレクトロニックであってもなくてもよい。さらに、その用語は、多くの場合、歪みをまったく誘導しない長いansa架橋を有する関連の錯体についても使用される。
【0058】
メタロセンと同様に、好適なCGCは、活性化されたメチルアルミノキサン(MAO)、ペルフルオロ化ボラン及びホウ酸トリチル助触媒であり得る。しかしながら、CGCをベースとした触媒系は、相当するメタロセンベースの系よりはるかに多量の高級アルファ-オレフィンの取込みを示す。非メタロセンベースのSSC(ポスト-メタロセンとも呼ばれる)の、オレフィン重合のためのシングルサイト触媒も公知である。典型的なポスト-メタロセン触媒は、バルキーで中性のアルファ-ジイミン配位子を特徴とする。これらのポスト-メタロセン触媒は、しかしながら、プラストマー及びエラストマーを製造するためにエチレンの重合のために使用される方がはるかに多い。それらがプロピレンのようなα-オレフィンの重合のために使用されることは稀である。オレフィン重合のためのシングルサイト触媒系は、当業者に周知であり、次の2つのシンポジウムで精力的に論じられている:「Stereoselective Polymerization with Single-Site Catalysts」(Lisa.S.Baugh及びJo Ann M.Canich編、CRC press出版(2008))及び「Polyolefins:50 Years after Ziegler and Natta II:Polyolefins by Metallocenes and Other Single-Site Catalysts」(Walter Kaminsky編、Springer Heidelberg出版(2013))。
【0059】
本明細書において先に論じたSSC触媒系の進歩により、各種の鎖微細構造及び特定の立体化学構造を有するプロピレンベースポリマー及びコポリマーの製造が現実のものとなった。触媒及び反応条件の選択に応じて、例えば狭い分子量分布、統計的にランダムなコモノマーの取込み、高い割合のアタクチック鎖配列並びにより短い結晶性のアイソタクチック又はシンジオタクチック鎖配列などを有する特定のタイプのプロピレンポリマー及びコポリマーを意図的に作ることが可能となった。巨視的には、それらのポリマーは、低い融点、低い融解のエンタルピー、低い結晶化度及び低い密度を示し、慣用されるポリプロピレンよりエラストマーに類似した挙動を示す。そのようなポリマーは、1000g/モル~1,000,000g/モルの範囲の各種の重量平均分子量(Mw)を有し、iPPの融点170℃より十分に低い20℃~150℃の融点を有し、0J/g~100J/gの融解のエンタルピーを有し、且つ0.85g/cc~0.90g/ccの密度を有するポリマーが製造された。それらのポリマーのいくつかは、ホットメルト接着剤用途に十分に適している。
【0060】
本発明のポリマー組成物は、半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマー;本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマー;及び本質的に非晶質でHMWのSSC-Amorp-PPポリマーを含み、これは、本明細書において、好ましくはシングルサイト触媒(SSC)を使用して調製され、ポリマー鎖に沿って統計的にランダムなコモノマー分布を有する。本発明の組成物中のポリマーブレンド物の合計量は、20重量%~80重量%、好ましくは25重量%~60重量%、最も好ましくは30重量%~50重量%である。
【0061】
本発明のホットメルト接着剤組成物中の半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマー(「PPベースポリマー」とも呼ばれる)は、ホモポリマー又はプロピレンと、プロピレンの約70重量%~約99重量%、好ましくは約80重量%~約98重量%、最も好ましくは約85重量%~約98重量%のエチレン及び4~8個の炭素鎖長を有するアルファ-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーのいずれかを含む。半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマーは、好ましくは、以下の性質を有する:約5,000g/モル~約90,000g/モル、好ましくは約10,000g/モル~約60,000g/モル、最も好ましくは約15,000g/モル~約35,000g/モルの重量平均分子量;約20℃~約150℃、好ましくは約50℃~約130℃、最も好ましくは約80℃~約120℃のDSCで測定した融点;及び約30J/g~約100J/g、好ましくは約35J/g~約80J/g、最も好ましくは約35J/g~約60J/gのDSCで測定した融解のエンタルピー。これらの融解のエンタルピーは、結晶化度に対応し、100%結晶性アイソタクチックPPの場合の融解のエンタルピーが190J/gであることから計算でき、約18重量%~約53重量%、好ましくは約18重量%~約42重量%、最も好ましくは約18重量%~約32重量%に相当する。さらに、LMWのSSC-Cryst-PPポリマーは、好ましくは、190℃において、好ましくは約500mPa・s~約40,000mPa・s、より好ましくは約600mPa・s~約10,000mPa・s、最も好ましくは約800mPa・s~約1,500mPa・sの範囲のブルックフィールド粘度を有する。いくつかの実施形態では、その半晶質でLMWのSSC-PPポリマーは、約10,000g/モル~約30,000g/モル、好ましくは約12,000g/モル~約29,000g/モル、最も好ましくは約15,000g/モル~約30,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0062】
その本質的に非晶質でHMWのSSC-PPポリマーは、主として非晶質の物質であり、DSC融解ピークをまったく示さないか、又は小さい残留結晶性を有してDSCの融解ピークを示すかのいずれかである。それは、プロピレンホモポリマー又はプロピレンベースの、エチレン及び4~8個の炭素鎖長を有するアルファ-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーのいずれかであり、約70重量%~約99重量%、好ましくは約80重量%~約98重量%、最も好ましくは約82重量%~約92重量%のプロピレンを含む。その本質的に非晶質でHMWのSSC-PPポリマーは、100,000g/モルより高い、好ましくは約100,000g/モル~約1,000,000g/モル、より好ましくは約100,000g/モル~約600,000g/モル、最も好ましくは約105,000g/モル~約150,000g/モルの重量平均分子量を有する。そのHMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、好ましくは、以下の性質を有する:約20℃~約150℃、好ましくは約30℃~約90℃、最も好ましくは約40℃~約70℃のDSC融点;好ましくは約800mPa・s~約100,000mPa・s、最も好ましくは約1,000mPa・s~約20,000mPa・sの範囲の、190℃でのポリマーのブルックフィールド粘度;及び約0J/g~約30J/g、好ましくは約5J/g~約25J/g、最も好ましくは約5J/g~約20J/gのDSCを使用して測定した融解のエンタルピー。これらの融解のエンタルピーは、結晶化度に対応し、100%結晶性アイソタクチックPPの場合の融解のエンタルピーが190J/gであることから計算でき、約0重量%~約18重量%、好ましくは約2.6重量%~約15.8重量%、最も好ましくは約2.6重量%~約13.2重量%に相当する。そのHMWのSSC-Cryst-PPポリマーは、約1g/10分~約200g/10分、好ましくは約20g/10分~約70g/10分、最も好ましくは約30g/10分~約60g/10分の、ASTM D1238に準拠した230℃/2.16Kg試験条件でのメルトフローレート(MFR)を有する。その組成物は、スチレン含量がゼロであることが好ましい。
【0063】
その本質的に非晶質でLMWのSSC-PPポリマーは、主として非晶質の物質であり、DSC融解ピークをまったく示さないか、又は小さい残留結晶性を有してDSCの融解ピークを示すかのいずれかである。それは、プロピレンホモポリマー又はプロピレンベースの、エチレン及び4~8個の炭素鎖長を有するアルファ-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーのいずれかであり、約70重量%~約99重量%、好ましくは約80重量%~約98重量%、最も好ましくは約82重量%~約92重量%のプロピレンを含む。その本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、好ましくは、以下の性質を有する:約5,000g/モル~約90,000g/モル、好ましくは約15,000g/モル~約70,000g/モル、最も好ましくは約25,000g/モル~約55,000g/モルの重量平均分子量;約20℃~約150℃、好ましくは約50℃~約130℃、最も好ましくは約80℃~約120℃のDSCで測定した融点;及び約0J/g~約30J/g、好ましくは約5J/g~約25J/g、最も好ましくは約5J/g~約20J/gのDSCで測定した融解のエンタルピー。これらの融解のエンタルピーは、結晶化度に対応し、100%結晶性アイソタクチックPPの場合の融解のエンタルピーが190J/gであることから計算でき、約0重量%~約18重量%、好ましくは約2.6重量%~約15.8重量%、最も好ましくは約2.6重量%~約13.2重量%に相当する。その本質的に非晶質でLMWのSSC-PPポリマーは、好ましくは、約500mPa・s~約20,000mPa・s、好ましくは約1,000mPa・s~約12,000mPa・s、最も好ましくは約2,000mPa・s~約8,000mPa・sの、190℃でのブルックフィールド粘度を有する。その組成物は、スチレン含量がゼロであることが好ましい。
【0064】
そのLMWのSSC-Cryst-PPポリマーは、23℃において約0.86g/cc~約0.90g/ccの密度を有することが好ましい。そのLMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、23℃において約0.84g/cc~約0.88g/ccの密度を有することが好ましい。そのHMWのSSC-Amorp-PPポリマーは、23℃において約0.84g/cc~約0.88g/ccの密度を有することが好ましい。
【0065】
HMW及びLMWの非晶質SSC-PPポリマーのいずれか又は両方は、そのDSC曲線上に融解ピークをまったく示さない、完全に非晶質であり得る。
【0066】
本発明の1つの実施形態では、そのHMWのSCC法PPポリマーの分子量は、LMWのSSC PPポリマーの分子量の少なくとも2倍である。HMWのSCC法PPポリマーの分子量は、LMWのSSC-PPポリマーの分子量の少なくとも3倍大きいことが好ましい。HMWのPPポリマーの分子量は、LMWのSSC-PPポリマーの分子量の1つの少なくとも5倍大きいことがより好ましい。HMWのPPポリマーの分子量は、LMWのSSC-PPポリマーの分子量の1つの少なくとも8倍又は10倍大きいことがさらにあり得る。本明細書に開示された各種の接着剤に関して、そのような分子量にずれがある2種のポリマー成分を使用することにより、本発明の目的がより容易に達成されることが見出された。
【0067】
本発明の1つの実施形態では、そのホットメルト接着剤は、5~10%の可塑剤、50~56%の粘着付与性樹脂、6~13%のLMWのSSC-Cryst-PPポリマー、4~10%のLMWのSSC-Amorp-PP及び20~25%のHMWのSCC-Amorp-PPポリマーを含む。
【0068】
本発明のホットメルト粘着剤において使用される粘着付与性樹脂又は粘着付与剤は、粘着性を向上させ、特有の粘着性を改良するようなものである。本明細書で使用するとき、「粘着付与性樹脂」という用語には、以下のものが含まれる:
(a)ASTM法E28-58Tによって測定されて10℃~150℃の環球式軟化点を有する、脂肪族及び脂環族石油系炭化水素樹脂(後者の樹脂は、主として脂肪族及び/又は脂環族のオレフィン及びジオレフィンからなるモノマーを重合させることにより得られたものである);さらに含まれるのは、水素化された脂肪族及び脂環族石油系炭化水素樹脂である;C5オレフィン留分をベースとする市販されているそのような樹脂の例は、Piccotac 95粘着付与性樹脂(Eastman Chemicals販売)及びEscorez 1310LC(ExxonMobil Chemical Company販売)であり、シクロペンタジエンをベースとする水素化された脂環族石油系炭化水素樹脂の例は、Escorez 5400(Exxonmobil製)及びResinall R1095S(Resinall Corporation製)である;
(b)芳香族石油系炭化水素樹脂及びそれらの水素化誘導体;水素化芳香族炭化水素樹脂の例は、Arkon P-115(Arakawa Chemicals製)である;
(c)脂肪族/芳香族の石油から誘導された炭化水素樹脂及びそれらの水素化誘導体;
(d)芳香族変性脂環族樹脂及びそれらの水素化誘導体;
(e)約10℃~約140℃の軟化点を有するポリテルペン樹脂、後者のポリテルペン樹脂は、一般的には、テルペン炭化水素、例えばピネンとして知られるモノテルペンをフリーデル・クラフツ触媒の存在下において比較的低温で重合させることによって得られたものである;水素化されたポリテルペン樹脂も同様に含まれる;
(f)天然テルペンのコポリマー及びターポリマー、例えばスチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペン及びビニルトルエン/テルペン;
(g)天然及び変性ロジン、例えば、例としてガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン及びポリマー化ロジン;
(h)天然及び変性ロジンのグリセロールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例えばペールウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、ポリマー化ロジンのグリセロールエステル、ペールウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル及びロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステル;及び
(i)フェノール変性テルペン樹脂、例えばテルペン及びフェノールの酸性媒体中での縮合によって得られる樹脂生成物。
【0069】
いくつかの配合物では、上述の粘着性付与樹脂の2種以上の混合物が必要となることもあり得る。粘着付与剤は、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約15%~約75%、好ましくは約30%~約65%、最も好ましくは約35%~約60%の量で存在する。しかしながら、利用可能な極性の粘着付与性樹脂の選択には、極性樹脂の多くがごく部分的にのみポリオレフィンと共存可能であるようであるという事実から限度がある。
【0070】
先にも述べたように、本発明の範囲内において有用な粘着付与性樹脂は、その組成物の約15重量%~約75重量%、好ましくは約30重量%~約60重量%を占める。粘着付与性樹脂は、非極性のタイプの任意のものから選択することが好ましく、それらは、市販されている。好ましい樹脂は、脂肪族石油系炭化水素樹脂であり、最も好ましいのは、非極性の製品、例えば70℃よりも高い軟化点を有する水素化ジシクロペンタジエン(HDCPD)又はそれらの芳香族変性誘導体である。そのような樹脂の例は、ExxonMobil Chemical companyから販売されているEscorez 5400及びEscorez 5600である。
【0071】
可塑剤は、本発明の組成物中において、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約1%~約35%、好ましくは約2%~約20%、最も好ましくは約5%~約10%の量で存在し、所望の粘度調節を与え、且つ可撓性を付与することができる。適切な可塑剤は、例えば、鉱油などの通常の可塑化用オイルだけでなく、オレフィンオリゴマー及び低分子量ポリマー、さらに植物油及び動物油及びそれらの誘導体を含む群から選択され得る。採用することが可能な石油系オイルは、芳香族炭化水素をわずかな比率でのみ含む比較的高沸点の物質である。この点に関して、芳香族炭化水素は、芳香族炭素原子の比率で測定して、オイルの好ましくは30%未満、より好ましくは15%未満であるべきである。オイルは、実質的に非芳香族であることがより好ましい。そのオリゴマーは、約350g/mole~約10,000g/moleの間の平均分子量を有するポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエンなどであり得る。適切な植物油及び動物油としては、通常の脂肪酸のグリセロールエステル及びそれらの重合反応生成物が挙げられる。他の有用な可塑剤は、慣用されるジベンゾエート、ホスフェート、フタレートエステル、さらにモノ-若しくはポリグリコールのエステルの群内に見出すことができる。そのような可塑剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:ジプロピレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、リン酸2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ポリエチレングリコール400-ジ-2-エチルヘキソエート;ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート。本発明における有用性が見出される可塑剤は、任意の数の異なる可塑剤であり得るが、本発明者らは、鉱油及び5,000未満の平均分子量を有する液状のポリブテンが特に有利であることを見出した。理解されるように、可塑剤は、典型的には、接着強度及び/又は接着剤の使用温度を実質的に低下させることなく接着剤組成物全体の粘度を低下させ、さらにオープンタイムを延長させ、且つ接着剤の可撓性を改良するために使用されてきた。
【0072】
ホットメルト接着剤組成物の溶融粘度を下げるためにワックスを使用することができる。本発明の組成物では、約0重量%~約20重量%で量を変更して使用することができるが、好ましい量は、(使用する場合には)約0.1重量%~約15重量%である。1つの実施形態では、接着剤組成物中にワックスを一切含めない。これらのワックスは、粘着剤の硬化時間及び軟化点にも影響する可能性がある。有用なワックスとして以下のものが挙げられる:
1.低分子量(すなわち数平均分子量(Mn)500~6000g/mole)のポリエチレンであって、約0.1~120の、ASTM法D-1321によって測定された硬度値を有し、約65℃~140℃のASTM軟化点を有するポリエチレン;
2.石油ワックス、例えば約50℃~80℃の融点を有するパラフィンワックス及び約55℃~100℃の融点を有する微結晶ワックス(後者の融点は、ASTM法D127-60によって測定される);
3.一酸化炭素と水素とを重合させることによって製造される合成ワックス、例えばフィッシャー・トロプシュワックス;及び
4.ポリオレフィンワックス。本明細書で使用するとき、「ポリオレフィンワックス」という用語は、オレフィン性モノマー単位から構成されるポリマー性又は長鎖のエンティティのものを指す。このタイプの物質は、Westlake Chemical corporation(Houston,Tx)から商品名「Epolene」として、及びHoneywell Corporation(Morristown,NJ)から商品名「A-C」として市販されている。本発明の組成物で使用するのに好ましい物質は、約100℃~170℃の環球式軟化点を有する。理解されるべきあるように、これらのワックス希釈剤のそれぞれは、室温で固体である。
【0073】
水素化された動物性、魚系及び植物性の油脂、例えば水素化された獣脂、豚脂、ダイズ油、綿実油、ヒマシ油、メンハディン油(menhadin oil)、鱈肝油などを含み、それらが水素化されているために室温で固体状である他の物質も、ワックス希釈剤均等物として機能に関して有用である。これらの水素化された物質は、粘着剤業界では多くの場合に「動物性又は植物性ワックス」と呼ばれる。
【0074】
本発明は、約0.1重量%~約3重量%の量で安定剤を含み得る。組成物中に約0.2%~2%の安定剤が組み込まれることが好ましい。本発明のホットメルト接着剤組成物において有用な安定剤を組み入れて、上述のポリマー、従って接着剤系全体を熱分解及び酸化分解の影響から保護するのに役立たせ、そのような分解は、通常、接着剤の製造及び適用時、さらにその最終製品を周囲環境に通常に曝露させる際に起きる。適用可能な安定剤の中でも、高分子量のヒンダードフェノール及び多機能フェノール、例えば硫黄及びリン含有フェノールが好ましい。ヒンダードフェノールは、当業者に周知であり、フェノール性ヒドロキシル基の近くに立体的にバルキーな基を含むフェノール系化合物であることを特徴とする。特に、一般的には、三級ブチル基は、ベンゼン環上のフェノール性ヒドロキシル基に対してオルトである少なくとも1つの位置に置換される。ヒドロキシル基の近くにこれらの立体的にバルキーな置換基が存在することにより、伸縮振動数、それに伴ってその反応性を抑制するのに役立つ。そのため、この立体障害は、フェノール系化合物に安定化性能を付与する。代表的なヒンダードフェノールとしては、以下のものが挙げられる:
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;
ペンタエリスリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
4,4’-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール);
2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;
6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン;
2,3,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン;
ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;
2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;及び
ソルビトールヘキサ-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート。
【0075】
これらの安定剤の性能は、それと組み合わせて以下のものを使用することにより、さらに向上させることができる;(1)相乗剤、例えばチオジプロピオネートエステル及びホスファイト;並びに(2)キレート化剤及び金属不活性化剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、その塩及びジサリチラルプロピレンジイミン。
【0076】
本発明の接着剤組成物中に特定の物理的性質を修正するために他の任意の添加剤を組み込み得ることを理解されたい。そのようなものとしては、例えば、不活性な着色剤としての物質、例えば二酸化チタン、充填剤、蛍光剤、UV吸収剤、界面活性剤、他のタイプのポリマーなどが挙げられる。典型的な充填剤としては、以下のものが挙げられる:タルク、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、マイカ、ウォラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラスミクロスフェア、セラミックミクロスフェア、熱可塑性プラスチックミクロスフェア、バライト及び木粉。界面活性剤は、衛生用の使い捨て不織布で特に重要であり、なぜなら、界面活性剤は、例えば、おむつのコアに適用される接着剤の表面張力を劇的に低下させることが可能であり、それにより尿のより速やかな移行及びその後のコアによる吸収が可能となるからである。
【0077】
本発明のホットメルト組成物は、ASTM-D3236に従い、ブルックフィールド粘度計を使用し、177℃で測定して500mPa・s~約35,000mPa・s、好ましくは約1,000mPa・s~約20,000mPa・s、最も好ましくは約2,000mPa・s~約15,000mPa・sの範囲の低い粘度を有することをさらに特徴とする。いくつかの実施形態では、-60℃~160℃の温度範囲のDSC曲線上に融解ピークがほとんど又はまったくなく、本質的に非晶質である。DSC曲線は、TA Instrument製のDSC Model Q1000を使用して得、試験方法は、本明細書において後に記述する。他の実施形態は、同じ温度範囲でDSC曲線上に認識可能な融解ピークを有し、半晶質である。さらに、その組成物は、約60℃~約120℃、最も好ましくは約80℃~約110℃の、ASTM E-28試験方法に従い、Herzog自動試験機を用い、媒体としてグリセロールを使用した環球式軟化点を有し、ASTM D792-13に従った密度は、20℃において約0.85g/cc~約1.00g/ccである。
【0078】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、当技術分野で公知の各種の混合方法を使用することにより配合することができる。従来技術の混合手順の代表例としては、本発明で使用される本明細書記載のポリマー以外のすべての成分を、ローターを備えたジャケット付きの混合ケトル内に入れ、その後、その混合物の温度を150℃~200℃の範囲まで上げて、その内容物を溶融させる工程が含まれる。この工程で使用される正確な温度は、特定の成分の融点に依存するであろうことを理解されたい。最初に、LMWのPPポリマー、次いで本質的に非晶質でHMWのPPポリマーをこの順で撹拌下のケトルに導入し、ばらつきのない均質な混合物が生成するまで混合を続ける。その混合プロセスにわたり、不活性ガス、例えば二酸化炭素又は窒素を用いてケトルの内容物を保護する。本発明の趣旨に反することなく、本発明の手順に各種の添加物及び変更を加えて、例えば取り込まれている空気の排除を容易にするために真空をかけてホットメルト組成物を製造することができる。本発明の組成物を配合するのに有用な他の設備としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:単軸若しくは二軸のスクリューエクストルーダー又は他のタイプのエクストルーダー機、ニーダー、インテンシブミキサー、Ross(商標)ミキサーなど。次いで、そのホットメルト接着剤を冷却して室温とし、出荷及び使用のために、成形してその表面に保護膜を形成させたチャブ(chub)又はペレットとする。
【0079】
本発明の接着剤組成物は、例えば、使い捨ての不織布衛生物品、紙加工、フレキシブル包装、木工、カートン及びケースのシール、ラベル貼り並びに他の組立用途など、多くの用途で汎用のホットメルト接着剤として使用することが可能である。特に好ましい用途としては、不織布の使い捨てのおむつ及び女性生理用ナプキン構造物、おむつ並びに成人失禁用ブリーフ弾性付属品、おむつ及びナプキンのコアの安定化、おむつのバックシート積層物、工業用フィルター材料の加工、手術衣及び手術用ドレープの組合せなどが挙げられる。
【0080】
次いで、そのようにして得られたホットメルト接着剤を、各種の塗布技術を使用して基材に適用することができる。例としては、以下のものが挙げられる:ホットメルトグルーガン法、ホットメルトスロットダイコーティング法、ホットメルトホイールコーティング法、ホットメルトローラーコーティング法、溶融吹き出しコーティング法、渦巻スプレー法、接触式若しくは非接触式ストランドコーティング法(商品としては、Omega(商標)、Surewrap(商標)、V-slot(商標)及びAllegro(商標))など。1つの好ましい実施形態では、そのホットメルト接着剤を、ストランドコーティング法を使用して弾性ストランド上に直接適用し、この方法は、おむつ及び成人失禁用物品の製造における弾性アタッチメントのための好ましい技術である。1つの例では、本発明のホットメルト組成物を、Allegro(商標)ノズルを使用してコーティングして、乳幼児用おむつ、用便しつけ用パンツ及び成人失禁用物品での弾性化レッグ、レッグカフス及びウェストバンドのために使用される弾性ストランド上に連続の接着剤接合ラインを形成する。各種の技術を完全に説明することは、本発明の意図ではなく、詳細は、文献又はノズル製造業者のウェブサイト(www.nordson.com又はwww.itw.com.)に見出すことができる。
【0081】
本発明の1つの実施形態では、積層品を作成する方法は、以下の工程を含む:(1)溶融状態における本発明のホットメルト接着剤組成物を第一の基材に適用する工程;及び(2)第二の基材を、第二の基材を接着剤組成物に接触させることによって第一の基材に貼り合わせる工程。その第一の基材は、おむつの弾性部分、例えばおむつのレッグカフの一部として使用される弾性ストランドであり得る。そのような弾性ストランド(又はバンド)及びおむつのレッグカフの一部としてのそれらの利用は、米国特許第5,190,606号明細書に示されている(参照により本明細書に組み込まれる)。その第二の基材は、不織布物質又はフィルム、例えばSMS不織布又はポリエチレンフィルムを含み得、その方法は、弾性ストランドの周りに第二の基材を折りたたむことを含み得る。このようにして、第二の基材のみが、レッグカフの1つ又は複数のストランドを包み込む基材として機能することができる。別の実施形態では、第三の基材が使用され、その第二及び第三の基材は、弾性ストランドの反対の側で弾性ストランドと張り合わされ得る。そのような実施形態では、その第二の基材がポリエチレンフィルムであり得、その第三の基材が不織布物質のフィルムであり得るか又はその逆であり得る。さらに、不織布と組み合わされたポリオレフィンフィルムからなる複合おむつバックシートを上述の第二及び第三の基材として使用することも可能である。
【0082】
本発明の別の実施形態では、ホットメルト適用の直接接触方法、例えばスロット又はVスロットアプリケーターヘッドを使用して接着剤を第一の基材に適用する。別の方法では、その接着剤を、ホットメルトの非接触方法、例えばスプレーアプリケーターを使用して第一の基材に適用し得る。溶融状態における接着剤を適用する対象の第一の基材は、弾性ストランド又は不織布であり得る。第一の基材が弾性ストランドである、いくつかの実施形態では、その第二の基材は、弾性ストランドの周りを包んだ不織布であり得るか、又はその第二の基材は、代替的に、不織布の2つの層間の弾性体であり得る。そのような実施形態では、その方法で作成された積層物を使い捨て物品、例えばおむつ内の弾性レッグカフ、スタンディングレッグカフ又は弾性サイドパネルとして使用し得る。そのような実施形態では、第三の基材、例えば不織布を使用し得る。そのような第三の基材は、直接的方法又は非接触方法のいずれによってその上に適用された接着剤も有し得る。そのような実施形態の積層物は、使い捨て物品の弾性サイドパネル又はストレッチイヤーとして使用することもできる。
【0083】
第一の基材が弾性ストランドである他の実施形態では、その第二の基材がポリエチレンフィルムであり得、第三の基材、例えば不織布がそのフィルムに接着され得る。その第一の基材が不織布である実施形態では、その第二の基材が弾性フィルムであり得る。以下の実施例で示すように、本発明の組成物は、弾性ストランドに適用した場合、クリープ試験(これは、業界における性能要件をシミュレートしている)において傑出した結果を与える。本発明の接着剤は、弾性ストランドを含めて、弾性成分(それらの成分に対して高いレベルのスピンフィニッシュが適用されることがあるにしても)を接合するのに使用できることが見出された。
【0084】
本発明の態様
1.ホットメルト接着剤において使用するためのポリマー組成物であって、
(a)少なくとも1種の半晶質で低分子量(LMW)のSSCプロピレンベースポリマー;
(b)少なくとも1種の本質的に非晶質で高分子量(HMW)のSSCプロピレンベースポリマー;及び
(c)少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマー
を含むポリマー組成物。
【0085】
2.ホットメルト接着剤において使用するためのポリマー組成物であって、
(a)少なくとも1種の半晶質で低分子量(LMW)のプロピレンベースポリマー;
(b)少なくとも1種の本質的に非晶質で高分子量(HMW)のプロピレンベースポリマー;及び
(c)少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのプロピレンベースポリマー
を含み、前記プロピレンベースポリマーのそれぞれは、約1~約5、好ましくは約1.7~3.3のPDIを有する、ポリマー組成物。
【0086】
3.少なくとも1種の半晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、90,000g/モル未満の分子量、2~15%(好ましくは3~10%、より好ましくは4~8%)のエチレン及び35J/gより大きいDSC溶融エンタルピーを有し;
少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのSSCプロピレンベースポリマーは、100,000g/モルより大きい分子量、2~20%(好ましくは8~16%、より好ましくは10~15%)のエチレン及び25J/g未満のDSC溶融エンタルピーを有し;及び
少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、90,000g/モル未満の分子量、2~20%(好ましくは8~16%、より好ましくは10~15%)のエチレン及び25J/モル未満のDSC溶融エンタルピーを有する、態様1又は2に記載の組成物。
【0087】
4.プロピレンベースポリマーのそれぞれは、プロピレンとエチレンとのコポリマーを含む、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
【0088】
5.少なくとも1種の半晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により且つポリマー組成物の合計重量を基準にして約10%~約40%、好ましくは約15%~約35%、最も好ましくは約18%~約25%の量で存在し;
少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により且つポリマー組成物の合計重量を基準にして約40%~約80%、好ましくは約50%~約70%、最も好ましくは約54%~約65%の量で存在し;及び
少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により且つポリマー組成物の合計重量を基準にして約5%~約40%、好ましくは約10%~約30%、最も好ましくは約18%~約25%の量で存在する、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
【0089】
6.ホットメルト接着剤組成物であって、
(a)少なくとも1種の半晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマー;
(b)少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのSSCプロピレンベースポリマー;
(c)少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマー;
(d)粘着付与剤;
(e)可塑剤;
(f)安定剤又は抗酸化剤;及び
(g)任意選択的に、約0重量%~約20重量%のワックス
を含むホットメルト接着剤組成物。
【0090】
7.(a)少なくとも1種の半晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約2.5%~約25%、好ましくは約4%~約20%、最も好ましくは約5%~約12%の量で存在し;
(b)少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約12%~約40%、好ましくは約15%~約30%、最も好ましくは約18%~約26%の量で存在し;
(c)少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約2%~約20%、好ましくは約3%~約15%、最も好ましくは約5%~約12%の量で存在し;
(d)粘着付与剤は、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約15%~約75%、好ましくは約30%~約65%、最も好ましくは約35%~約60%の量で存在し:
(e)可塑剤は、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約1%~約35%、好ましくは約2%~約25%、最も好ましくは約3%~約20%の量で存在し;及び
(f)安定剤又は抗酸化剤は、重量により且つホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約0.1%~約3%、好ましくは約0.2%~約2%の量で存在する、態様6に記載の組成物。
【0091】
8.粘着付与剤は、脂肪族及び脂環族炭化水素樹脂並びにそれらの水素化誘導体、水素化芳香族炭化水素樹脂、芳香族変性された脂肪族又は脂環族樹脂及びそれらの水素化誘導体、ポリテルペン並びにスチレン化ポリテルペン樹脂からなる群から選択される、態様6又は7に記載の組成物。
【0092】
9.粘着付与剤は、C-5脂肪族炭化水素樹脂、水素化C-5樹脂、水素化C-9樹脂及び水素化DCPD樹脂である、態様6~8のいずれかに記載の組成物。
【0093】
10.粘着付与剤は、芳香族変性されたC-5樹脂、芳香族変性された水素化DCPD樹脂である、態様6~9のいずれかに記載の組成物。
【0094】
11.可塑剤は、鉱油及び液体ポリブテンからなる群から選択される、態様6~10のいずれかに記載の組成物。
【0095】
12.ワックスは、ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして20重量%までの量で存在する、態様6~11のいずれかに記載の組成物。
【0096】
13.接着剤組成物は、別のポリマーをさらに含む、態様6~12のいずれかに記載の組成物。
【0097】
14.少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのSSCプロピレンベースポリマーの分子量は、少なくとも1種の半晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマー又は少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーのいずれかの分子量の少なくとも3倍である、態様6~13のいずれかに記載の組成物。
【0098】
15.少なくとも1種の半晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、90,000g/モル未満の分子量及び35J/gより大きいDSC溶融エンタルピーを有し;
少なくとも1種の本質的に非晶質でHMWのSSCプロピレンベースポリマーは、100,000g/モルより大きい分子量、2~20%のエチレン及び25J/g未満のDSC溶融エンタルピーを有し;及び
少なくとも1種の本質的に非晶質でLMWのSSCプロピレンベースポリマーは、90,000g/モル未満の分子量、2~20%のエチレン及び25J/モル未満のDSC溶融エンタルピーを有する、態様6~14のいずれかに記載の組成物。
【0099】
16.プロピレンベースポリマーのすべての重量は、ホットメルト接着剤組成物の合計重量を基準にして約30%~約80%、好ましくは約30%~約60%、最も好ましくは約30%~約50%を占める、態様6~15のいずれかに記載の組成物。
【0100】
17.積層品を作成する方法であって、
溶融状態における、請求項1~15のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物を第一の基材に適用する工程;及び
第二の基材を、第二の基材を接着剤組成物に接触させることによって第一の基材に貼り合わせる工程
の工程を含む方法。
【0101】
18.第一の基材は、弾性ストランドである、態様17に記載の方法。
【0102】
19.第一の基材は、不織布である、態様17に記載の方法。
【0103】
20.第二の基材は、ポリエチレンである、態様16~19のいずれかに記載の方法。
【0104】
21.態様17~19のいずれかに記載の方法によって作成された積層品。
【0105】
試験及び原料
ブルックフィールド粘度は、ASTM D-3236法に従い、162.8℃(325゜F)で試験する。
【0106】
環球式軟化点は、ASTM E-28法に従い、自動化Herzogユニットを用い、グリセロール中で求める。
【0107】
固体密度は、ASTM D792-13に従い、23℃で測定する。
【0108】
示差走査熱量測定(DSC)試験は、DSC Model Q1000(TA Instrument製)で加熱-冷却-加熱のプログラムを用いて実施する。好ましくは、約10mgのサイズのサンプルをアルミニウム製のDSCの試料パンに封入する。そのパンを機器のサンプルチャンバーに入れて、20℃/分の加熱速度で周囲温度から200℃まで加熱し、そこからサンプルを-110℃まで急冷する。次いで、温度を20℃/分の加熱速度で200℃まで上昇させ、データを収集する。ジュール/グラム(J/g)の単位で測定した融解のエンタルピー(ΔH)は、Model Q1000型DSCに組みこまれているソフトウェアアプリケーションパッケージを使用して、DSC曲線の融解ピークの面積から計算する。本発明の目的のために、融点は、融解ピークの最大値(すなわち融解ピークの最高点)に相当する温度と定義される。
【0109】
クリープ試験のための試験片は、Surewrap(商標)、Allegro(商標)及びスロットダイチップに対応できるように設計された、Nordson(商標)Zero-Cavityホットメルトコーティングモジュールを備えた特注のコーター/ラミネーターを使用して調製する。本発明のために、Allegro(商標)チップを使用して、本発明の組成物を、680デシテックス(dtex)の繊度を有するInvesta(商標)弾性ストランドに直接的に適用する。そのチップは、5mmの間隔を空けた3本の個別の接着剤ノズル又はオリフィスを有し、3本の弾性ストランドを同時にコーティングすることができる。
【0110】
剥離試験のための試験片は、上で述べたのと同じコーター及びコーティングモジュールを使用して調製する。そのモジュールには、幅1インチのSignature(商標)コーティングチップが取り付けられている。接着剤を第一のSMS不織ウェブ上にスプレーし、第二の同一のSMSに、40PSIの圧力に維持されたニップロールで接合させる。均質なコーティングプロファイルが得られるように、コーティング温度を325~350゜Fで変化させる。積層させたロール商品を、最終的に、剥離試験のために縦方向に長さ約6”に切断する。
【0111】
本明細書で使用するとき、デシテックス(略してdtex)は、繊維長さ10,000メートルあたりの質量(単位、グラム)を指す。それは、織物産業における繊維の繊度の尺度である。
【0112】
剥離強度は、引張試験機を使用し、12インチ/分のクロスヘッド速度において180度剥離モードで測定する。試験片は、20℃、相対湿度50%で一定に維持された環境制御試験室に約12時間置いてコンディショニングする。そのデータは、Illinois Tool Work(Chicago,IL)から購入したBluehill 3ソフトウェアによって自動的に収集し、6回の繰り返し試験の平均剥離強度を下の表1及び2に、g/inの単位で示す。
【0113】
クリープ抵抗試験は、実施例1~5に記載した積層試験片を用いて実施した。それらの積層試験片は、弾性ストランド及び非弾性の基材を含む。約350mmの積層試験片のセグメントを完全に引き伸ばし、硬質のPolyglassボード片に確実に固定する。非弾性の基材をその引き伸ばした形状のまま維持しながら、長さ300mmのところに印を付け、その弾性ストランドをその印のところで切断し、次いでその試験片を37.8℃(100゜F)の空気循環オーブン内に入れる。これらの条件下では、引張状態における弾性ストランドがある程度の距離まで収縮する可能性がある。4時間後、弾性ストランドの両端間の距離を測定する。初期長さに対する最終長さの比率(これをクリープ保持率として定義し、パーセント(%)で表す)は、弾性ストランドを保持するための接着剤の性能の尺度である。
【0114】
Vistamaxx 6502(Exxonmobil Chemical Company(Houston,TX)から入手)は、本質的に非晶質でHMWのSSC-PPコポリマーであり、これは、約13重量%のエチレンコモノマー含み、且つ以下の物性を有する:約119,000g/モルの重量平均分子量(Mw)、約64℃のDSC融点、約9J/gのDSC溶融エンタルピー、23℃で約0.865g/ccのASTM D1505に従った密度及びASTM D1238に従い、230℃/2.16kg試験条件での約48g/10分のメルトフローレート(MFR)。
【0115】
Vistamaxx 8880(これもExxonmobil Chemical Companyから入手)は、半晶質でLMWのSSC-PPコポリマーであり、これは、約5.2重量%のエチレンコモノマーからなり、且つ以下の物性を有する:約27,000g/モルの重量平均分子量(Mw)、約96℃のDSC融点、約38J/gのDSC溶融エンタルピー、20℃で約0.880g/ccASTM D1505に従った密度及びASTM D3236に従い、190℃で約1,200mPa・sのブルックフィールド粘度。
【0116】
Vistamaxx 8780(Exxonmobil Chemical Company(Houston,TX)から入手)は、本質的に非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPコポリマーであり、これは、約12重量%のエチレンコモノマーを含み、且つ以下の物性を有する:約39,200g/モルの重量平均分子量(Mw)、約101℃のDSC融点、約16J/gのDSC溶融エンタルピー、23℃で約0.864g/ccのASTM D1505に従った密度及び190℃で約8000mPa・sのブルックフィールド粘度。
【0117】
Sukorez SU-210(Kolon USA Inc(Atlanta,GA)から購入)は、極めて淡色である、約110℃の環球式軟化点を有する水素化脂環族炭化水素系粘着付与剤である。
【0118】
Nyflex 223及びNyflex 222Bは、Nynas USA Inc.(Houston,TX)から購入される鉱油系可塑剤である。
【0119】
SQN SB 15gsmは、First Quality Nonwovens Inc.(McElhatten,PA)から購入されるスパンボンド不織布である。
【0120】
SMS不織布30gsm基本重量は、Kimberly-Clark Corporation(Neenah,WI)から得られる。
【0121】
Irganox 1010は、BASF Corporation(Florham,NJ)から購入されるヒンダードフェノール系抗酸化剤である。
【0122】
Luhorez A-1100は、100℃の環球式軟化点を有し、且つZibo Luhua Hongjin New Material Co.,Ltd(Shanghai,China)から入手可能な炭化水素ベースの粘着付与性樹脂である。
【0123】
以下で述べる実施例の方法で本発明をさらに説明する。
【実施例
【0124】
実施例1~3
表1において重量パーセントで示した実施例1~3のホットメルト接着剤は、先に本明細書において説明した成分及び混合手順を用いて調製する。それぞれ合計して2500グラムで作成し、混合は、モーターで駆動されるプロペラ、加熱マントル、温度制御ユニット及び約1ガロンのサイズの容器からなる実験室タイプのミキサー中、窒素雰囲気下において177℃で実施する。HMWのSSC-Amorp-PPポリマーを除いて、表に示した比率に従って計算したそれぞれの成分の適切な量をその容器に添加する。次いで、その容器の温度を上昇させて、内容物を溶融させる。容器中の成分が完全に溶融してから、モーターを起動して、撹拌を始める。次いで、HMWのSSC-Amorp-PPポリマー成分を導入する。ポリマーが完全に溶解して、均質な混合物が形成されるまで混合を続ける。接着剤実施例1~3は、高い凝集力、優れたクリープ抵抗性及び高い剥離強度を示し、加工及び一連の基材での適用に適した粘度を有し、且つ高いクリープ保持率、高い剪断及び高い剥離強度のいずれも必要とされる、不織布衛生物品の多くの用途に特に有用であるが、そのようなものとしては、弾性アタッチメント、ランディングゾーンアタッチメント、ストレッチパネルアタッチメント、ファスナーアタッチメントなどが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0125】
【表1】
【0126】
ブルックフィールド粘度、環球式軟化点、剥離粘着力及びクリープ保持率の試験は、本明細書において先に説明した試験方法に従って実施例1~3について実施する。クリープ保持率試験のための試験片は、Allegro(商標)ノズルを取り付けたNordson Zero Cavity(商標)コーティングモジュールを備えた特注のホットメルトコーター上において、Allegro(商標)シングルストランドコーティング法を使用することにより調製する。300%伸びまで伸長させた3本の弾性ストランド(Investa 680)をそれぞれ個々に約148℃~約163℃のコーティング温度でコーティングする。これらのコーティング試験では、ノズルガイドに対する弾性ストランドの入口角度(すなわちアプリケーターの軸に垂直な線と、入口側でノズルとノズルに最も近いガイド又はローラーとの間に延在する弾性ストランドとの間の角度)を2度~5度に維持した。出口ストランド面に対するアプリケーターの角度は、約87度であった。(上述のパラメーターは、ノズル製造業者によって採用された規約「Universal Allegro Elastic Coating Nozzles Customer Product Manual,Part 1120705_01」(2/15発行)を使用して記述されていることに注意されたい)。加えて、アプリケーターの軸に垂直な線と、出口側でノズルとノズルに最も近いガイド又はローラーとの間に延在する弾性ストランドとの間で画定される角度は、約3度であった。したがって、そのアプリケーターは、その標準的な位置にあり、垂直に位置合わせされていた。接着剤は、約300メートル/分のライン速度、25ミリグラム/ストランド/メートル(mg/s/m)の添着量、0.5秒のオープンタイム、40PSIのニップロール圧で適用される。次いで、そのコーティングされたストランドを2枚のポリプロピレンスパンボンド不織布ウェブ(SQN SB 15)間に積層させて、弾性積層品を形成する。
【0127】
剥離強度試験のための試験片は、同じコーターで調製し、そのコーティングモジュールは、先に述べた幅1インチのSignature(商標)ノズルが取り付けられている。接着剤は、325~350゜Fのコーティング温度で2枚の同一のSMS不織ウェブ間に積層される。そのコーティング重量は、4gsm(グラム/平方メートル)である。試験片調製の詳細は、本明細書において先に記述した。
【0128】
表1に見られるように、実施例1~3のすべては、クリープが93%以上であり且つ剥離値が110g/in以上であり、クリープ及び剥離値が共に優れている。これらの数値のすべては、不織布衛生産業界で受容されている、弾性アタッチメント、建設(construction)及び各種の他の接合ニーズのための基準よりも十分に高い。
【0129】
比較例4及び5は、表2に記載の成分を用い、本明細書において先に記述されたのと同じ手順を使用して同様に配合されている。実施例1~3と異なり、例4は、低分子量の半晶質でLMWのSSC-Cryst-PPポリマーであるVistamaxx 8880のみを含む一方、例5は、低分子量の非晶質でLMWのSSC-Amorp-PPポリマーであるVistamaxx 8780のみを含む。本明細書において実施例1~3で記述したのと同じ試験法を使用して、粘度、軟化点、クリープ保持率及び剥離強度を得る。
【0130】
【表2】
【0131】
比較例4は、97%の高いクリープ保持率であるが、30g/inの低い剥離強度を示し、これは、100g/in以上という業界での許容値よりはるかに低いことが明らかである。比較例4は、弾性アタッチメントに良好に適合しているが、建設及びいくつかの他の用途では受容不能であろう。対照的に、比較例5は、132g/inの高い剥離強度を有するが、クリープ保持率が69%と低い。それは、建設及び多くの他の接合用途に対して高性能製品であるが、そのクリープ保持率は、不織布衛生製品製造業者の大半によって受容されている値の80%よりはるかに低い。
【0132】
値の範囲が与えられている場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれ中間の値及び中間の値の各種組合せ又は二次的組合せ並びにその記述された範囲にある各種の他の記述されるか又は中間の値は、表記された値の範囲に含まれることを理解されたい。加えて、本発明は、成分の第一の範囲の下限及び第二の範囲の上限の範囲の成分を含む。
【0133】
他の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び学術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書で具体的に挙げたすべての刊行物及び特許は、本発明に関連して使用される可能性のある、それら刊行物に記載されている化学物質、機器、統計的解析及び方法論の記述及び開示を含めたすべての目的のために、参照によりそのすべてが組み込まれる。本明細書で引用されたすべての参考文献は、当技術分野のレベルを示していると受け取るべきである。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が、先願発明のためにかかる開示の日付を遡って付与される権利が与えられないことを認めるものとして受け取るべきではない。
【0134】
本明細書では、ある種の特定の実施形態を参照しながら説明し、記述してきたが、それにも関わらず、提示された詳細に本発明を限定することは意図されていない。むしろ、請求項の均等物の範囲内において且つ本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細における各種の修正形態がなされ得る。