(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20230405BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230405BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230405BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230405BHJP
C09J 125/04 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J11/08
C09J11/06
C09J7/38
C09J125/04
(21)【出願番号】P 2020534695
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2019029966
(87)【国際公開番号】W WO2020027180
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2018145283
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恵子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 顕士
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 翔
(72)【発明者】
【氏名】安江 智広
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209329(JP,A)
【文献】特開2007-169327(JP,A)
【文献】特開2015-040241(JP,A)
【文献】特開2016-176001(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152275(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が70万以上である(メタ)アクリルポリマー(A)と、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)とを含有する粘着剤組成物であって、
(メタ)アクリルポリマー(A)が、n-ブチル(メタ)アクリレート(a1)を60質量%以上含むモノマーを重合して得られる重合体であり、
(メタ)アクリルポリマー(A)と合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)との合計質量に対し、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の含有量が40質量%以上60質量%以下であ
り、前記合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)が軟化点90℃超のスチレン系樹脂であることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
架橋剤を含むことを特徴とする請求項
1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリルポリマー(A)が、n-ブチル(メタ)アクリレートを80質量%以上含む(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合して得られる重合体である、請求項1
又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着剤組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01~3.0質量部のシランカップリング剤を含有する、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える粘着テープ。
【請求項6】
基材の両面に粘着剤層が設けられている、請求項
5に記載の粘着テープ。
【請求項7】
剥離フィルムを除いた総厚が25μm以下であることを特徴とする、請求項
5又は
6に記載の粘着テープ。
【請求項8】
剥離フィルムを除いた総厚の内、40%以上を粘着剤層が占めることを特徴とする請求項
5乃至
7のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
電子機器の部材固定用である、請求項
5乃至
8のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、OA機器や電子機器の部品の固定のために、粘着テープが広く用いられている。近年、OA機器や電子機器は軽薄短小化が進んでおり、これらの部品固定に用いられる粘着テープについても薄型化が要求されている。
【0003】
しかしながら、粘着テープの粘着力は、粘着剤層の厚さの減少に伴って低下することが一般的である。特に粘着剤層の厚さが10μm以下となる領域では、粘着力は顕著に低下する。このため、薄膜条件においても充分に強い粘着力を発現させる事は困難であり、薄くても高い粘着力を有する粘着テープの開発が強く望まれている。
【0004】
特許文献1には、粘着剤に対し40質量%~60質量%粘着付与樹脂を添加した薄膜用粘着剤組成物が開示されており、2~10μmの粘着剤層を形成している。
しかし、特許文献1の実施例で使用されている粘着付与樹脂はロジン系樹脂である。一般的にロジン系樹脂は黄~橙色でありシートの色味が問題になることがある。また、アクリル系粘着剤に対する相溶性も悪いため、粘着力を大きく向上させることができず、さらにヘイズが問題になることがある。
しかも、ロジン系樹脂は構造中にカルボキシル基や水酸基を有するものが多く、粘着剤同士の架橋を阻害することもある。このため、ロジン系樹脂を多量に用いると保持力や定荷重剥離性も悪化する場合がある。
【0005】
特許文献2には、n-ブチルアクリレート由来の(メタ)アクリル系ポリマー、粘着付与樹脂、及び架橋剤を含有する粘着剤組成物が開示されているが、実施例で用いられているポリマーの重量平均分子量は50万であることから、粘着力は高くなく、また、用いられている粘着付与樹脂はロジン系であるため、好ましい色味ではないと推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-169327号公報
【文献】特開2012-162703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、高い粘着力を有し、しかも、用いられる粘着テープの粘着剤層が薄い場合でも、高い粘着性を示す粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]重量平均分子量が70万以上である(メタ)アクリルポリマー(A)と、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)とを含有する粘着剤組成物であって、
(メタ)アクリルポリマー(A)が、n-ブチル(メタ)アクリレート(a1)を60質量%以上含むモノマーを重合して得られる重合体であり、
(メタ)アクリルポリマー(A)と合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)との合計質量に対し、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の含有量が40質量%以上60質量%以下であることを特徴とする粘着剤組成物。
[2]前記合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)がスチレン系樹脂である、[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]架橋剤を含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[4](メタ)アクリルポリマー(A)が、n-ブチル(メタ)アクリレートを80質量%以上含む(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーを重合して得られる重合体である、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[5]前記粘着剤組成物の樹脂固形分100質量部に対して、0.01~3.0質量部のシランカップリング剤を含有する、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
[6][1]乃至[5]のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える粘着テープ。
[7]基材の両面に粘着剤層が設けられている、[6]に記載の粘着テープ。
[8]剥離フィルムを除いた総厚が25μm以下であることを特徴とする、[6]又は[7]に記載の粘着テープ。
[9]剥離フィルムを除いた総厚の内、40%以上を粘着剤層が占めることを特徴とする[6]乃至[8]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
[10]電子機器の部材固定用である、[6]乃至[9]のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着剤組成物は、粘着性が高い粘着テープを提供することができる。さらには、薄い粘着テープであっても高い粘着性を示すため、小型のOA機器や電子機器に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は発明を実施する形態の記載に限定されるものではない。
【0011】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、重量平均分子量が70万以上である(メタ)アクリルポリマー(A)と、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)とを含有する粘着剤組成物であって、(メタ)アクリルポリマー(A)が、n-ブチル(メタ)アクリレート(a1)を60質量%以上含むモノマーを重合して得られる重合体であり、(メタ)アクリルポリマー(A)と合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)との合計質量に対し、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の含有量が40質量%以上60質量%以下であることを特徴とするものである。
以下、構成を具体的に説明する。
【0012】
<(メタ)アクリルポリマー(A)>
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリルポリマー(A)を含有する。(メタ)アクリルポリマー(A)は、少なくともn-ブチル(メタ)アクリレート(a1)、必要によりこれと共重合性を有するモノマーを重合することにより得られるものである。ここで、(メタ)アクリレートモノマーとは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体である。
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するモノマー成分としては、n-ブチル(メタ)アクリレート(a1)に加えて、例えば、後述のモノマー(a2)と、モノマー(a3)を挙げることができる。
【0013】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を包含することを意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者を包含することを意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両者を包含することを意味する。
【0014】
<n-ブチル(メタ)アクリレート(a1)>
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するモノマー成分中、n-ブチル(メタ)アクリレート(a1)は、粘着剤組成物の耐熱性、粘着性の観点から、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0015】
<モノマー(a2)>
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するモノマーとして、モノマー(a2)をさらに含んでも良い。
モノマー(a2)としては、n-ブチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート、脂環含有(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、アラルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
n-ブチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0017】
脂環含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0018】
アリール(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレートが挙げられ、アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
アリールオキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、キシリルオキシメチル(メタ)アクリレート、ナフチルオキシメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
モノマー(a2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するモノマー成分中、n-ブチル(メタ)アクリレート(a1)とモノマー(a2)の合計量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%である。
【0024】
<モノマー(a3)>
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するモノマーは、モノマー(a3)を含有することが好ましい。モノマー(a3)は架橋性基含有モノマーである。架橋性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマーが挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
【0026】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
モノマー(a3)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するために用いられるモノマー成分中、モノマー(a3)の使用量は、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~8質量%である。このような態様であると、(メタ)アクリルポリマー(A)と後述の架橋剤との反応より、適切な架橋構造を形成できる。
【0029】
<その他モノマー(a4)>
上記共重合性を有するモノマーは、(a1)~(a3)以外のその他モノマー(a4)をさらに含んでもよい。
【0030】
その他モノマー(a4)としては、例えば、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、ビニル基含有モノマー、重合性マクロモノマーが挙げられる。
【0031】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられ;アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミドが挙げられ;グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルが挙げられ;ビニル基含有モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンが挙げられる。
【0032】
重合性マクロモノマーとしては、例えば、主鎖構成モノマーがメチルメタクリレートであるマクロモノマー(製品名:45%AA-6(AA-6S)、AA-6;東亞合成株式会社製)、主鎖構成モノマーがブチルアクリレートであるマクロモノマー(製品名:AB-6;東亞合成株式会社製)主鎖がスチレン/アクリロニトリルの共重合体であるマクロモノマー(製品名:AN-6S;東亞合成株式会社製)が挙げられる。
【0033】
その他モノマー(a4)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0034】
(メタ)アクリルポリマー(A)を形成するために用いられるモノマー成分100質量%中、その他モノマー(a4)の使用量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0035】
(メタ)アクリルポリマー(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)は、接着性の観点から70万以上であり、好ましくは80万以上であり、より好ましくは90万以上である。
【0036】
(メタ)アクリルポリマー(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは20以下、より好ましくは1.5~18、さらに好ましくは1.8~15である。
【0037】
(メタ)アクリルポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃未満であり、より好ましくは-80~-10℃、さらに好ましくは-70~-20℃である。(メタ)アクリルポリマー(A)のTgはFoxの式により求めることができ、Foxの式における各モノマーから形成されたホモポリマーのTgは、Polymer Handbook Fourth Edition(Wiley-Interscience 2003)に記載された値を採用することができる。
【0038】
<(メタ)アクリルポリマー(A)の製造>
(メタ)アクリルポリマー(A)は、上記モノマー成分を重合又は共重合することにより製造することができる。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれでもよいが、ランダム共重合体が好ましい。(メタ)アクリルポリマー(A)は、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知の重合法により製造することができ、これらの中でも溶液重合法が好ましい。
【0039】
具体的には、溶液重合法において、反応容器内にモノマー成分、重合開始剤および必要に応じて連鎖移動剤、重合溶媒等の他の成分を仕込み、反応開始温度を40~100℃に設定し、50~90℃の温度に反応系を維持して、2~20時間反応させる。反応は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行う。また、重合反応中に、モノマー成分、重合開始剤、連鎖移動剤および重合溶媒から選択される少なくとも1種を追加添加してもよい。
【0040】
重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系重合開始剤等の熱重合開始剤が挙げられる。
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2’-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0041】
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0042】
重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0043】
(メタ)アクリルポリマー(A)の製造において、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の合計100質量部に対して、通常は0.001~5質量部、好ましくは0.005~3質量部である。
【0044】
重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシドが挙げられる。
重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
<合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)>
本発明の粘着剤組成物は、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)を含む。合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)は、石油系樹脂であり、かつ、粘着剤組成物に粘着性を付与できる材料であれば特に限定されるものではない。
【0046】
合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の分子量は、耐熱性の観点で、好ましくは800以上であり、より好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは1100以上である。なお、石油系粘着樹脂が重合体である場合は、重量平均分子量(Mw)を表す。
【0047】
合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の軟化点は、耐熱性の観点で、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。
【0048】
合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)としては、例えば、石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン-インデン樹脂を挙げることができる。中でも、n-ブチル(メタ)アクリレートを主成分としたアクリル系ポリマーとの相溶性(外観)の観点で、スチレン系樹脂であることが好ましい。
【0049】
<石油樹脂>
石油樹脂は、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)等が挙げられる。石油樹脂の具体例としては、例えば、クイントンA、B、R、CXシリーズ(以上、日本ゼオン株式会社製)、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-115、アルコンP-125、アルコンP-135、アルコンM-90、アルコンM-100、アルコンM-115(以上、荒川化学工業株式会社製)、日石ネオポリマーL-90、120、130、140、150、170S、S、T-REZ HA085, HA103, HA105, HA125(以上、JXTGエネルギー株式会社製)が挙げられる。
【0050】
<スチレン系樹脂>
スチレン系粘着付与樹脂としては、例えばスチレン系重合体、α-メチルスチレン系重合体、スチレン-(α-メチルスチレン)系共重合体、スチレン-脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン-(α-メチルスチレン)-脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン-芳香族炭化水素系共重合体などが挙げられる。より具体的には、例えば、FMR-0150、FTR-0100、FTR-2120、FTR-2140、FTR-6100、FTR-6110、FTR-6125、FTR-7100、FTR-8100、FTR-8120(以上、三井化学株式会社製)が挙げられる。また、YSレジンSX-100(ヤスハラケミカル株式会社製)も挙げられる。
【0051】
<クマロン-インデン樹脂>
クマロン-インデン樹脂の具体例としては、例えば、クマロンG-90、V-120、L-5(以上、日塗化学株式会社製)などが挙げられる。
【0052】
合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いることができるが、スチレン系樹脂を少なくとも1種含まれていることが好ましい。
【0053】
合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂は、特性を阻害しない範囲で用いることができる。合成炭化水素系粘着付与樹脂以外の粘着付与樹脂としては、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール系粘着付与樹脂などが挙げられる。
【0054】
本発明の粘着剤組成物において、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の含有量の下限は、(メタ)アクリルポリマー(A)と合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の合計量に対して、40質量%以上である。また、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の含有量の上限は、(メタ)アクリルポリマー(A)と合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の合計量に対して、60質量%以下であり、好ましくは、55質量%以下である。40質量%以上であれば、所定の粘着力の物性発現が可能となり、60質量%以下であれば、粘着剤成分の均一性が保たれる。合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)を複数用いる場合は、粘着付与樹脂の合計が、上記範囲内に入るように粘着剤組成物の組成を調整すればよい。
【0055】
<架橋剤>
粘着剤組成物に含まれる架橋剤は、(メタ)アクリルポリマー(A)が有する架橋性基と反応性を有するものである。
【0056】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物が挙げられる。
【0057】
イソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物としては、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物が通常用いられ、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~6である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、(メタ)アクリルポリマー(A)とイソシアネート化合物との架橋反応効率の点、および粘着剤層の柔軟性を保つ点で好ましい。
【0058】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0059】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0060】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の上記イソシアネート化合物の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量多価アルコールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコールが挙げられ;高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0061】
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0062】
イソシアネート化合物の中でも、難黄変性の点で、キシリレンジイソシアネート系およびヘキサメチレンジイソシアネート系の架橋剤が好ましく、応力緩和性の観点からトリレンジイソシアネート系の架橋剤が好ましい。キシリレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられ;ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられ;トリレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられる。
【0063】
エポキシ化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジアミングリシジルアミノメチル)が挙げられる。
【0064】
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0065】
架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0066】
本発明の粘着剤組成物において、架橋剤は(メタ)アクリルポリマー(A)及び合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部、さらに好ましくは0.1~2.5質量部含む。このような態様であると、優れた粘着特性が実現できる。
【0067】
<添加剤>
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤、オルガノポリシロキサン化合物、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。添加剤の含有量は特に限定されないが、本発明の両面粘着シート及び両面粘着シートに用いられる粘着剤組成物の特性を阻害しない範囲の含有量にするべきである。
中でも、本発明の粘着剤組成物にシランカップリング剤を適宜含有させることにより、極性被着体(ガラスやSUSなど)への密着性を付与することができるため、曲面接着性などを向上させることができる。シランカップリング剤を添加する場合は、粘着剤組成物全体に対して、0質量%超、3質量%以下含有させることができ、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.01~1質量%以下含有させることができる。また、難燃剤は含まれても良いが、(メタ)アクリルポリマー(A)及び合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の合計100質量部に対して、24質量部未満が好ましい。
【0068】
<有機溶媒>
本発明の粘着剤組成物は、塗工性を調整するため、有機溶媒を含有してもよい。有機溶媒としては、例えば、(メタ)アクリルポリマー(A)の製造条件の欄で説明した重合溶媒が挙げられる。粘着剤組成物中の有機溶媒の含有量は、通常30~90質量%、好ましくは40~90質量%である。
【0069】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、基材と、基材の両面の少なくとも一方に形成された粘着剤層から構成される。したがって、本発明の粘着テープは、基材と粘着剤層の少なくとも2層の構造を有しており、基材の両面に粘着剤層を形成する場合は、少なくとも3層の構造を有している。粘着剤層における基材と接していない面には、剥離フィルムが貼付されていてもよい。
【0070】
<基材>
本発明の粘着テープは、基材を含む。本発明の粘着テープに用いられる基材の厚さは特に限定されないが、粘着テープを薄型化する場合は、1~12μmの厚さが好ましい。1μm以上であれば適切なシート強度が得られ、12μm以下であれば接着昂進を抑制できる。
また、粘着テープの総厚が薄い方が好ましい用途においては、基材は薄いほうが好ましい。その場合の基材の厚さとしては、10μm以下が好ましく、6μm以下が特に好ましい。
【0071】
基材および剥離フィルムとしては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド(ナイロン)、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)などのプラスチックフィルムが挙げられる。また、基材としてはガラス、紙、不織布等も挙げられる。なお、基材は粘着テープを薄くする場合は、平滑であるためプラスチックフィルムであることが好ましく、強度、扱いやすさの観点から、基材はPETであることがより好ましい。
本発明の粘着テープを遮光テープとして使用する場合、黒色顔料等の黒色系色材または白色顔料等の白色系色材が分散含有された基材を用いてもよい。
【0072】
<粘着剤層>
基材の少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物から形成することができる。基材の両面の粘着剤層を設ける場合は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、粘着テープを薄型化する場合は1~12μmの厚さが好ましい。1μm以上であれば適切な粘着力である粘着テープが得られ、12μm以下であれば接着昂進を抑制できる。
また、電気部材固定用テープとして、薄膜の粘着テープが求められる場合は、剥離フィルムを除いた粘着テープの総厚が25μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
さらに、剥離フィルムを除いた粘着テープの総厚の内、40%以上を粘着剤層が占めることが好ましい。このようにすることにより、粘着テープの十分な粘着力を確保することができる。
【0073】
また、粘着剤層のゲル分率は、凝集力、後述の粘着力、貼り直し適正の観点から、好ましくは10~98質量%、より好ましくは20~90質量%、さらに好ましくは30~85質量%である。
【0074】
[用途]
本発明の粘着テープは、上記したように薄膜でありながら強粘着力であるため、様々な用途に用いることができる。例えば、本発明の粘着テープを用いて、放熱シートや遮光テープを対象物品に貼付することができる。以下、放熱シート、遮光テープを説明する。
【0075】
・放熱シート
放熱シートは局所的な高温部に設置することで、熱をOA機器や電子機器の全面に放熱することができる。放熱シートに使用するグラファイトシートは、例えば、天然黒鉛粉末をシート化して得られた天然グラファイトシート、高分子フィルムを熱処理して得られた人工グラファイトシート等が挙げられる。
前記高分子フィルムとして、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾール等からなるフィルムが挙げられる。
グラファイトシートの厚さは、10~100μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましい。グラファイトシートの厚さを前記範囲とすることで、OA機器や電子機器の部品固定に好適に用いられる。
【0076】
・遮光テープ
遮光テープは、例えば、液晶表示モジュールユニット等の非自発光型表示ユニットと、バックライトユニットとの貼着に用いることで、漏洩光によって生じる問題を防ぐことができる。
【0077】
<粘着テープの製造方法>
本発明の粘着テープは、以下のように製造することができる。両面に粘着剤層を設けるときを例に挙げて説明する。
剥離フィルムの片面に本発明の粘着剤組成物を乾燥後の厚みが所定の厚みとなるように塗工し、通常60~100℃で、1~10分乾燥し溶媒を除去する。その後、得られた粘着剤層を基材の片面(基材の第一面とする)に貼り合わせる。
【0078】
次に、別の剥離フィルムの片面に粘着剤組成物を乾燥後の厚みが所定の厚みとなるように塗工する。そして、60~100℃で、1~10分乾燥し溶媒を除去して得られた粘着剤層を、前記基材の粘着剤層が貼り合わされていない側(基材の第二面とする)に貼り合わせることにより、両面粘着テープを製造する。
塗工方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、ロールコーター、ファウンテンコーター、リップコーター、ナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、リバースコーター、リップコーター、カーテンコーター、スリットダイコーター等を用いる方法が挙げられる。
なお、第一面に形成した粘着剤層と、第二面に形成した粘着剤層とは、同一であっても、異なっていてもよい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0080】
(製造例1:(メタ)アクリルポリマー(A-1)の製造)
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置にn-ブチルアクリレート(n-BA)80質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)17.9質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)0.1質量部、アクリル酸(AA)2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.03質量部を添加し、フラスコ内の内容物の温度が70~71℃に維持できるように加熱および冷却を繰り返しながら6時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチルをさらに20質量部添加することにより、重量平均分子量(Mw)100万の(メタ)アクリルポリマー(A-1)を得た。
【0081】
(製造例2:(メタ)アクリルポリマー(A-2)の製造)
2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を0.06部に変更する以外は、製造例1と同様に行い、重量平均分子量(Mw)70万の(メタ)アクリルポリマー(A-2)を得た。
【0082】
(製造例3:(メタ)アクリルポリマー(A-3)の製造)
n-BAを70質量部、2EHAを27.9質量部に変更する以外は製造例1と同様に行ない、重量平均分子量(Mw)100万の(メタ)アクリルポリマー(A-3)を得た。
【0083】
(製造例4:(メタ)アクリルポリマー(A-4)の製造)
n-BAを90質量部、2EHAを7.9質量部に変更する以外は製造例1と同様に行ない、重量平均分子量(Mw)100万の(メタ)アクリルポリマー(A-4)を得た。
【0084】
(製造例5:(メタ)アクリルポリマー(A-5)の製造)
2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を0.08部に変更する以外は、製造例1と同様に行い、重量平均分子量(Mw)50万の(メタ)アクリルポリマー(A-5)を得た。
【0085】
(製造例6:(メタ)アクリルポリマー(A-6)の製造)
n-BAを50質量部、2EHAを47.9質量部に変更する以外は製造例1と同様に行ない、重量平均分子量(Mw)100万の(メタ)アクリルポリマー(A-6)を得た。
【0086】
(実施例1)
(メタ)アクリルポリマー(A-1)の固形分100質量部に対して、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)(FTR-6100:三井化学株式会社製)80質量部((A)と(B)の合計に対する(B)の比率:44質量%)、イソシアネート架橋剤(L-45:綜研化学株式会社製)を(メタ)アクリルポリマー(A-1)と合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)との合計に対して1.5質量部(固形分)を混合し、粘着剤組成物1を得た。
【0087】
粘着剤組成物1を剥離処理されたポリエチレンテレフタラート(PET)剥離フィルム上に、乾燥後2μmの厚みになるように塗工した。塗工されたシートを80℃で3分間乾燥させた後、2μm厚のPETフィルム基材両面に転写し、室温23℃、湿度50%の環境下で、7日熟成することで両面テープを得た。
得られた粘着テープの諸特性を測定し、表1に示す。
【0088】
(実施例2乃至4、実施例6乃至8及び比較例1乃至5)
(メタ)アクリルポリマー(A)の種類、合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の種類、使用量を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様に行い、粘着剤組成物2乃至4、6乃至13を得た。
得られた粘着テープの諸特性を測定し、表1に示す。
【0089】
(実施例5)
シランカップリング剤(KBM-403:信越化学工業株式会社製)を樹脂固形分100部に対して、0.2質量部添加した以外は実施例1と同様に行い、粘着剤組成物5を得た。
得られた粘着テープの諸特性を測定し、表1に示す。
【0090】
(実施例9)
粘着剤組成物1を剥離処理されたPET剥離フィルム上に、乾燥後25μmの厚みになるように塗工した。塗工されたシートを80℃で3分間乾燥させた後、25μm厚のPETフィルム基材に転写し、室温23℃、湿度50%の環境下で、7日熟成して片面テープを得た。
得られた粘着テープの諸特性を測定し、表2に示す。
【0091】
(比較例6)
粘着剤組成物13に変更した以外は実施例9と同様に行い、片面テープを得た。
得られた粘着テープの諸特性を測定し、表2に示す。
【0092】
【0093】
【0094】
<測定・評価>
測定方法を下記する。
(重量平均分子量(Mw))
(メタ)アクリルポリマー(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、下記条件で標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)を求めた。
・測定装置:HLC-8120GPC(東ソー株式会社製)
・GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー株式会社製)
(1)TSK-GELHXL-H (ガードカラム)
(2)TSK-GELG7000HXL
(3)TSK-GELGMHXL
(4)TSK-GELGMHXL
(5)TSK-GELG2500HXL
・サンプル濃度:1.0mg/cm3となるように、テトラヒドロフランで希釈
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0cm3/min
・カラム温度:40℃
【0095】
(粘着力)
両面粘着テープの場合は、一方のPET剥離フィルムを剥がした後、露出した一方の粘着剤層面に厚み6μmのPETフィルムを裏打ちし、25mm×70mmに裁断することで試験片とした。片面テープの場合は25mm×70mmに裁断するのみで試験片とした。この試験片を、23℃、50%RH条件下で残りのPET剥離フィルムを剥がし、露出した粘着剤層面にステンレス(SUS)を2kgのローラーを用いて貼り合わせた(貼り合わせ面積25mm×70mm)。
貼り合わせから20分後にSUS板から試験片を180°方向に300mm/minの速度で剥離し、その粘着剤層の粘着力を測定した。
【0096】
(保持力)
両面粘着テープの場合は、一方の面のPET剥離フィルムを剥がし、露出した一方の粘着剤層面に厚み100μmのPETフィルムを裏打ちし、20mm幅に裁断することで試験片とした。片面テープの場合は、20mmに裁断するのみで試験片とした。その後、他方の面のPET剥離フィルムを剥離し、露出した他方の粘着剤層面をSUS板に貼り付け、2kgのローラーを用いて圧着した。貼付面積は20mm×20mmとした。貼付から20分後に、80℃かつ乾燥条件で1kgの荷重を粘着剤層面と平行方向にかけ、1時間後のもとの位置からのズレの距離(mm)を測定した。表中、「n.c.」はズレ量が測定下限値以下であることを意味する。
【0097】
(定荷重剥離性)
両面粘着テープの場合は、一方のPET剥離フィルムを剥がした後、露出した一方の粘着剤層面に厚み6μmのPETフィルムを裏打ちし、20mm×50mmの大きさに裁断して試験片を作製した。片面テープの場合は20mm×50mmの大きさに裁断するのみで試験片を作製した。この試験片に残ったPET剥離フィルムを剥離し、表面を研磨し溶剤で清浄にしたSUS板に貼り合わせ、温度80℃で90°の方向に荷重200gをかけ、60分間放置したときの剥がれ距離(mm)又は落下までの時間を測定した。なお、表中の「X’↓」とあるのでは、60分以内に落下した場合を意味し、「X」分で落下したことを意味する。
【0098】
(外観)
両面粘着テープの場合は、一方のPET剥離フィルムを剥がした後、露出した一方の粘着剤層面に厚み6μmのPETフィルムを裏打ちし、20mm×50mmの大きさに裁断して試験片を作製した。片面テープの場合は20mm×50mmの大きさに裁断するのみで試験片を作製した。試験片のPET剥離フィルムを剥離し、ガラスに貼り合わせて試験片を作製した。試験片をオートクレーブ処理した(50℃、5atm、20分)後、試験片の外観を目視にて評価した。無色透明を○、黄色透明や白濁などがやや見られるものを△、明らかに色味が見られるものを×とした。
【0099】
(曲面接着性)
両面粘着テープにおける一方のPET剥離フィルムを剥がした後、露出した一方の粘着剤層面に厚み100μmのPETフィルムを裏打ちし、20mm×60mmの大きさに裁断して試験片を作製した。試験片に残ったPET剥離フィルムを剥離し、表面を研磨し溶剤で清浄にした直径24mm円柱状のSUS棒に、試験片の長辺が円周方向となるように貼り付け、80℃で24時間保持した。24時間後、両末端からの剥がれ長さの平均距離を測定した。剥がれが見られないものを○、剥がれが5mm以下のものを△、剥がれが5mmより大きいものを×とした。
【0100】
比較例1、2は、ロジン系粘着付与樹脂を用いており、実施例1、6、7、8に比べて粘着力、保持力、定荷重剥離性が低下した。更に、比較例2では、実施例1、6、7、8と同等量の粘着付与樹脂添加量であるため、より相溶性が悪く、シート外観不良が発生し、曲面接着性も低下した。
比較例3では、実施例1と同じ合成炭化水素系粘着付与樹脂を用いているが、合成炭化水素系粘着付与樹脂の含有量が(メタ)アクリルポリマー(A)と合成炭化水素系粘着付与樹脂(B)の合計量に対して40質量%未満であるため、実施例1に対して定荷重剥離性は優れているものの、粘着力と曲面接着性が低下した。
比較例4は、(メタ)アクリルポリマー(A)の分子量が70万未満である、実施例1、2に対して、粘着力と定荷重剥離性が低下し、曲面接着性も低下した。
比較例5はn-ブチルアクリレート含有量が70質量%未満であり、実施例1、3、9に対して粘着力、保持力、定荷重剥離性が低下した。
実施例9、比較例6は、実施例1と比較例5で用いた粘着剤組成物を片面テープに適用したものであるが、実施例1、比較例5と同様に、比較例6は、実施例9に対して、粘着力、保持力、定荷重剥離性が低下した。