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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】ジアミン架橋剤を用いての超架橋
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230405BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20230405BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20230405BHJP
   G01N 33/543 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/00
C08J3/24 Z CER
G01N33/543 541A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020539698
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019051152
(87)【国際公開番号】W WO2019141779
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】18152316.8
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18200930.8
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】フォンデンホフ,ガストン・フーベルトゥス・マリア
(72)【発明者】
【氏名】フーク,シュテファン
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512569(JP,A)
【文献】特表2010-533493(JP,A)
【文献】特開2003-274942(JP,A)
【文献】特開2005-010177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 3/24
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/543
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスおよび少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子であって、ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含み、少なくとも1個の正電荷を有する分子からなり、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が
Iaの一般構造式
【化1】
[式中、波線
【化2】
は、架橋ポリマーを表し;R 、R およびR は窒素原子と一緒に、3、5、7または9個の炭素原子を含む芳香族環系を形成し;R を各窒素原子に連結する結合は、芳香族結合である]を有し;分子は、対応するアニオン、好ましくはOH により補償される正電荷を有し;
好ましくは、式Iaの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、R は、1個の炭素原子を含み、R 、R は一緒に、2、4、6または8個の炭素原子を含み、R を各窒素原子に連結する結合は、芳香族結合であり;分子は、対応するアニオン、好ましくはOH により補償される正電荷を有するか;あるいは
式Ibの一般構造式
【化3】
[式中、
波線
【化4】
は、架橋ポリマーを表し;
、R は独立に、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH -CH -) -O-CH (ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R 、R のそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、R およびR は、別々であり;
は、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH -CH -) -O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され;
を各窒素原子に連結する結合は、単結合である]を有し;分子は、対応するアニオンにより補償される2個の正電荷を有するか;あるいは
式Icの一般構造式
【化5】
[式中、
波線
【化6】
は、架橋ポリマーを表し;mは、1~10の範囲の整数であり;COO(H)は、カルボキシル(アート)基を表す]を有し;分子は、対応するアニオンにより補償される2個の正電荷を有するか;あるいは
式Idの一般構造式
【化7】
[式中、波線
【化8】
は、架橋ポリマーを表し;m1およびm2は独立に、2~10の範囲の整数である]を有し;分子は、対応するアニオンにより補償される2個の正電荷を有する、
前記超架橋磁性粒子。
【請求項2】
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子の少なくとも1個の正電荷が、少なくとも1個の対応するアニオンにより補償されており、対応するアニオンが、Rのカルボキシラート基であるか、またはF、Cl、Br、I、AtおよびOHからなる群から選択され、好ましくはCl、Br、IおよびOHからなる群から選択され、より好ましくはOHである、請求項1に記載の超架橋磁性粒子。
【請求項3】
式IaまたはIbまたはIcまたはIdの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、前記対応するアニオンがOH である、請求項1または2に記載の超架橋磁性粒子。
【請求項4】
式Ibの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において:
、Rが独立に、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC1~C5-アルキル(akyl)からなる群から選択され;
が、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC2~C8-アルキル(akyl)からなる群から選択され;
を各窒素原子に連結する結合が、単結合であり;分子が、対応するアニオンより補償される2個の正電荷を有する、請求項1または2に記載の超架橋磁性粒子。
【請求項5】
式Icの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、mは、2~8の範囲の整数であり;COO(H)は、カルボキシル(アート)基を表す、請求項1または2に記載の超架橋磁性粒子。
【請求項6】
式Idの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、m1およびm2は独立に、2~5の範囲の整数である、請求項1または2に記載の超架橋磁性粒子。
【請求項7】
ポリマーマトリックスおよび少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子を調製する方法であって、ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子からなり、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が
式Iaの一般構造式
【化9】
[式中、波線
【化10】
は、架橋ポリマーを表し;R 、R およびR は窒素原子と一緒に、3、5、7または9個の炭素原子を含む芳香族環系を形成し;R を各窒素原子に連結する結合は、芳香族結合である]を有し;分子は、対応するアニオン、好ましくはOH により補償される正電荷を有し;
好ましくは、式Iaの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、R は、1個の炭素原子を含み、R 、R は一緒に、2、4、6または8個の炭素原子を含み、R を各窒素原子に連結する結合は、芳香族結合であり;分子は、対応するアニオン、好ましくはOH により補償される正電荷を有するか;あるいは
式Ibの一般構造式
【化11】
[式中、
波線
【化12】
は、架橋ポリマーを表し;
、R は独立に、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH -CH -) -O-CH (ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R 、R のそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、R およびR は、別々であり;
は、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH -CH -) -O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され;
を各窒素原子に連結する結合は、単結合である]を有し;分子は、対応するアニオンにより補償される2個の正電荷を有するか;あるいは
式Icの一般構造式
【化13】
[式中、
波線
【化14】
は、架橋ポリマーを表し;mは、1~10の範囲の整数であり;COO(H)は、カルボキシル(アート)基を表す]を有し;分子は、対応するアニオンにより補償される2個の正電荷を有するか;あるいは
式Idの一般構造式
【化15】
[式中、波線
【化16】
は、架橋ポリマーを表し;m1およびm2は独立に、2~10の範囲の整数である]を有し;分子は、対応するアニオンにより補償される2個の正電荷を有し、
該方法は、
(i)ポリマーマトリックスおよび少なくとも1個の磁心(M)を含み、ポリマーマトリックスが、少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基を含む少なくとも1種の架橋ポリマーを含む、好ましくはそれからなる磁性粒子を得るステップと;
(ii)少なくとも2個のアミン基をその構造内に含む分子を得るステップと;
(iii)(i)において得られた磁性粒子の、アミン基に対して反応性の基を、(ii)において得られた分子のアミン基と反応させ、それにより、少なくとも1つの超架橋結合を形成し;それにより、超架橋磁性粒子を得るステップと
を含み;
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が
式IIaの一般構造式
【化17】
[式中、R 、R およびR は、窒素原子と一緒に、3、5、7または9個の炭素原子を含む芳香族環系を形成しており、R を各窒素原子と連結する結合は、芳香族結合であり;R 、R は独立に、水素であるか、または自由電子対を表す]を有し;好ましくは、式IIaの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子について、R が、1個の炭素原子を含み、R 、R が一緒に、2、4、6または8個の炭素原子を含み、R を各窒素原子と連結する結合が、芳香族結合であり;R 、R が独立に、水素であるか、または自由電子対を表すか;あるいは
式IIbの一般構造式
【化18】
[式中、R 、R は独立に、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH -CH -) -O-CH (ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R 、R のそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、R およびR は、別々であり;R は、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH -CH -) -O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され;R を各窒素原子と連結する結合は、単結合である]を有するか;あるいは
式IIcの一般構造式
【化19】
[式中、mは、1~10の範囲の整数である]を有するか;あるいは
式IIdの一般構造式
【化20】
[式中、m1およびm2は独立に、2~10の範囲の整数である]を有する、
前記方法。
【請求項8】
式IIaの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、イミダゾール(IIa-1)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式IIbの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子について、R、Rが独立に、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC1~C5-アルキル(akyl)からなる群から選択され;Rが、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC2~C8-アルキル(akyl)からなる群から選択され;Rを各窒素原子と連結する結合が、単結合であり、式IIbの一般構造式を有する少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、より好ましくは、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(IIb-1)である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
式IIcの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、mは、2~8の範囲、好ましくは3~6の範囲の整数であ;式IIcの一般構造式を有する少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、より好ましくは、リシン(IIc-1)である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
式IIdの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、m1およびm2は独立に、2~5の範囲の整数であ、式IIdの一般構造式を有する少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、好ましくは、ホモピペラジン(IId-1)である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
流体または気体中の少なくとも1種の分析物を定性的および/または定量的に決定するための、請求項1から6のいずれか1項に記載の超架橋磁性粒子、または請求項7から11のいずれか一項に記載の方法から得られた、もしくは得ることができる超架橋磁性粒子の使用。
【請求項13】
哺乳類の体液試料において分析物を定性的および/または定量的インビトロ決定するための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
植物試料中の分析物を定性的および/または定量的に決定するための、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーマトリックスおよび少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子であって、ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含み、少なくとも1個の正電荷を有する分子からなり、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が式Iの一般構造式を有する、超架橋磁性粒子に関する。さらに、本発明は、前記超架橋磁性粒子を調製する方法に、また、前記方法から得られたまたは得ることができる超架橋磁性粒子に関する。さらなる一態様では、本発明は、流体または気体中の少なくとも1種の分析物を定性的および/または定量的に決定するための超架橋磁性粒子の使用に関する。さらに、本発明は、少なくとも1種の分析物を富化または精製するための超架橋磁性粒子の使用、さらには水を精製するための超架橋磁性粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子は、ヒト試料から分析物を捕捉するための重要なツールである。例えば抗体で被覆された場合、分析物を特異的に捕捉することができ、それらの粒子は光学技法により検出され得る。診断システムの簡単で、迅速で、安価な自動化を可能にし、加えて、時間のかかる遠心および濾過ステップを省くので、磁気特性は非常に重要である。超常磁性材料は、外部磁場が印加されると初めて磁化を示すので、さらに注目されている。外部磁場の非存在下では、磁化はゼロであるようである(「記憶効果」がない)。多種多様なビーズが公知であり、市販されている。
【0003】
試料から分析物を富化するために、磁性粒子上の高い比表面積が必要とされている。表面積を300m/g超に上昇させるために、磁性粒子は、細孔性マトリックスでコーティングされることが必要である。これは通常、磁性粒子を細孔性シリカ-またはチタン酸化物-マトリックスに包埋することにより行われる。欠点の1つは、膜厚の上昇と共に磁化の低下をもたらすシリカおよびチタン酸化物の高い密度である。さらに、シリカまたはチタン酸化物の使用によっては、メソ細孔(細孔>2nm)系しか開発され得ないが、特に、小さな分析物では、マイクロ細孔(細孔<2nm)を有する材料が好ましい。加えて、タンパク質およびリン脂質は大きなメソ細孔に吸着され、これは、LC/MS系において問題となるマトリックス効果を生む。したがって、マイクロ細孔を有する低密度細孔性ポリマーマトリックス(磁化の低下が少ない)が、シリカマトリックスと比較して有益であるはずである。Yangら、さらにはXuらは、磁性細孔性ポリマー粒子の調製を記載している[1、2]。Geremiaらは、連結してポリマー主鎖を形成している酸性モノマーおよびイオン性モノマーを含むポリマーを記載している[3]。心材料を取り囲む架橋シェルの形成が開示されており、図5Aは、2本のポリマー鎖の間に架橋結合を含有する、イミダゾールを含む例示的なポリマーを示す。しかしながら、その架橋は、ポリマーに既に結合したイミダゾール基と反応する分子をさらに架橋させることにより行われる。Georgiらは、架橋を伴わない、クリック化学またはエステル化を介した超分岐ポリ(4-クロロメチルスチレン)およびその誘導体の合成を記載している[4]。Mueller-Schulteは、ポリビニルアルコール(PVAL)ポリマーコーティングを備えた磁性ビーズの合成を記載している[5]。コーティングの種類は、反応性ヒドロキシル基を利用することによるさらなる誘導体化を可能にすべきである。グルタルアルデヒド(ジアルデヒド)は、数分以内に反応するので、最も一般に使用されている。ジアルデヒドを架橋化合物として、ジアミンと組み合わせて使用すると、得られる生成物はケタールであるか、またはジアミンが架橋部分に組み込まれる好ましくない事象では、シッフ塩基が形成される。中国特許第106 432 562A号明細書は、磁性クロロメチル化ポリスチレンナノ球体の調製を記載しており、そのポリマーは架橋されない[6]。
【0004】
通常、ポリスチレンネットワークは、架橋剤を用いてポリスチレン鎖またはスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーを架橋することにより、または内部架橋剤として作用し得る反応性基とスチレン単位を共重合させることにより形成され得る[7]。代表的な架橋剤はビス-クロロベンジル化合物であり、これは、フリーデル-クラフツ(FC)触媒の存在下でスチレン鎖の芳香族主鎖と反応して、架橋を形成する。内部架橋では通常、ビニルベンジルクロリドがコポリマーの形成のために使用され、同様にフリーデル-クラフツ条件下で架橋される。超架橋反応では、ポリスチレン(polysterene)ポリマーは典型的には、ジクロロエタン中で膨潤され、フリーデル-クラフツ触媒としては、ルイス酸FeClが使用される[8、9]。反応条件は、高温(通常、80℃)、長い反応時間(16時間超)および高濃度のルイス酸により苛烈である。フリーデル-クラフツ反応の主な副生成物は塩酸(HCl)であり、これは、溶解効果により、磁鉄鉱または磁赤鉄鉱などの磁性成分を含有するポリスチレン(polysterene)材料に有害である。
【0005】
ポリスチレンネットワークをさらに改変するために、すなわち、これらのビーズの化学的および物理的特性を変更する官能基をさらに導入するために、ビニルベンジルクロリドも、ベンジルクロリドを反応させることによりさらに誘導体化されるモノマーとして使用され得る。
【0006】
試験材料は通常、水性媒体をベースとするので、診断試験において磁性ビーズを使用するためには、ビーズは親水性でなければならない。ビーズをより親水性にするために、最終ステップで、残りのベンジルクロリド部分(すなわち、フリーデル-クラフツ反応において消費されなかったもの)をすべて、ヒドロキシドイオンと反応させて、ヒドロキシル基を導入する。
【0007】
上述のとおりの従来のフリーデル-クラフツ反応の欠点の1つは、HClの形成であり、それというのも、HClはビーズ内部の磁鉄鉱を溶解させて、ビーズの磁性を低下させるためである。さらに、「古典的」ビーズの最終のヒドロキシル化は、実際にビーズをより親水性にはするが、電荷を導入しない余分なステップである。それ自体は不利ではないが、この余分なステップが省略されることで、時間を節約し、経費と廃棄物を減少させることができる。加えて、電荷が導入されるような官能基の導入は、従来の方法によっては行われ得ない。しかしながら、この種の官能基、すなわち電荷は、分析物を捕捉するために、特に、反対電荷を有する分析物では非常に有利であろう。従来のフリーデル-クラフツ反応のさらなる欠点は、必要とされる触媒FeClであり、それというのも、この腐食性試薬は非常に限られた水溶性しかなく、ヒドロキシル化形態では貯蔵/反応容器(例えば、ガラスまたは鋼製)に付着して、これを非実用的な試薬にしているためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、電荷を有する磁性ビーズの提供、さらに、好ましくは、腐食性試薬の使用を必要とせず、磁性ビーズの磁鉄鉱に有害であるHClなどの成分を形成させずに、電荷を有するそのような磁性ビーズを調製するための方法の提供であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、独立特許請求項の特徴を有する本発明により解決される。個別に、または組合せで実現され得る本発明の有利な展開は、従属請求項において、および/または次の明細書および詳細な実施形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(ビーズ)のための富化ワークフローを示す図である。
図2図1に例示されているとおりの富化ワークフローを使用して試料調製した後に得られた分析物回収率を示すグラフである。
図3】ジアミン超架橋細孔性磁性ポリマー粒子が、超架橋細孔性磁性ポリマー粒子から分析物を溶離するために使用される有機溶媒の選択に対して感受性が低いことを示すグラフであって、2種の有機溶媒:MeOHおよびCHCNがこの目的のために選択されているグラフである。ジアゼパムが、最も多く含まれる分析物の代表である。
図4】超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3a)~(3d)で、分析物のゲンタマイシン、メトトレキサート、ノルブプレノルフィン-グルクロニドおよびトブラマイシンについて予測される、実施例3に記載のとおりの分析物回収率を示すグラフである。
図5】超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3a)~(3d)で、分析物の2-オキソ-3-ヒドロキシ-LSD、アミカシン、ベンゾイルエクゴニンおよびエチルグルクロニドについて予測される、実施例3に記載のとおりの分析物回収率を示すグラフである。
図6】超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3a)~(3d)で、分析物の5-フルオロウラシル、エクゴニン、ガバペンチンおよびプレガバリンについて予測される、実施例3に記載のとおりの分析物回収率を示すグラフである。
図7】超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3a)~(3d)で、分析物の硫酸エチル、モルヒネ-3-グルクロニド、ノルオキシモルホンおよびブプレノルフィン-グルクロニドについて予測される、実施例3に記載のとおりの分析物回収率を示すグラフである。
図8】最適なワークフロー条件下で尿から精製される、各ビーズでの絶対分析物回収率を示すグラフである。
図9】最適なワークフロー条件下で血清から精製される、各ビーズでの絶対分析物回収率を示すグラフである。
図10】尿分析物での絶対回収率の差を示すグラフである。(最適なTMEDAビーズでの平均回収率)-(最適なFCビーズでの平均回収率)。
図11】血清分析物での絶対回収率の差を示すグラフである。(最適なTMEDAビーズでの平均回収率)-(最適なFCビーズでの平均回収率)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で使用される場合、用語「有する」、「含む」、もしくは「包含する」またはそのいずれか任意の文法的変化は、非排他的に使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語により導入される特徴の他に、さらなる特徴が、この文脈に記載の実体に存在しない状況と、1つまたは複数のさらなる特徴が存在する状況との両方を指し得る。例として、表現「AはBを有する」、「AはBを含む」および「AはBを包含する」は、Bの他に、他の要素がAに存在しない(すなわち、Aが唯一、排他的にBからなる状況)と、Bの他に、要素C、要素CおよびDまたはさらに他の要素など、1つまたは複数のさらなる要素が実体Aに存在する状況との両方を指し得る。
【0012】
さらに、特徴または要素が1つまたは1つよりも多く存在してもよいことを示す用語「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」または同様の表現は典型的には、それぞれの特徴または要素を導入する場合に、1回だけ使用されることに注意されたい。以下では、ほとんどの場合に、それぞれの特徴または要素に言及するとき、それぞれの特徴または要素が1つまたは1つより多く存在してもよいという事実にもかかわらず、表現「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」は繰り返されない。
【0013】
さらに、以下で使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意選択の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語により導入される特徴は任意選択の特徴であり、特許請求の範囲を何ら制限するものではないことが意図されている。本発明は、当業者には認識されるとおり、代替の特徴を使用することにより行われてもよい。同様に、「本発明の一実施形態では」または同様の表現により導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関する何らかの制限を伴うことなく、本発明の範囲に関する何らかの制限を伴うことなく、そのように導入される特徴を本発明の他の任意選択または非任意選択の特徴と組み合わせる可能性に関する何らかの制限を伴うことなく、任意選択の特徴であることが意図されている。
【0014】
第1の態様では、本発明は、ポリマーマトリックス(P)および少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子であって、ポリマーマトリックス(P)が、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子からなり、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Iの一般構造式
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、
x、yは独立に、1または2であり;
zは、ゼロまたは1であり;
、Rは独立に、水素、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは別々であるか、またはRと一緒に、脂肪族または芳香族環系を形成しており;
は、カルボキシル(アート)基で置換されていてもよいC1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2つ以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;
波線
【0017】
【化2】
【0018】
は、架橋ポリマーを表し;
を各窒素原子と連結する結合は独立に、単結合、二重結合および芳香族結合からなる群から選択される]
を有し、
式Iの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、少なくとも1個の正電荷を有する、超架橋磁性粒子に関する。
【0019】
一実施形態によれば、残基Rは、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2つ以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;好ましくは、各C1~C10-アルキルは、カルボキシル(アート)基で置換されていない、すなわち、各C1~C10-アルキルは、炭素原子のところに置換基として、水素原子のみを有する。
【0020】
ポリマーマトリックス(P)および少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子であって、ポリマーマトリックス(P)が、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含み、少なくとも1個の正電荷を有する分子を含む超架橋磁性粒子(ジアミンビーズ)は、古典的なフリーデル-クラフツアルキル化経路を介して超架橋されているビーズよりも、分析物捕捉および放出の点において良好な性能を示す。少なくとも1個の正電荷により、強いアニオン交換(SAX)官能基が存在する。興味深いことに、正電荷アミンの存在は、負の電荷を持たない分析物の回収にも有利であることが見出された。本発明の第2の態様に関して下でより詳細に説明する、これらのビーズを調製するために使用される方法により、副生成物として形成されるHClは即時に中和される(反応は塩基性条件下で行われる)。したがって、磁鉄鉱は失われず、したがって、ビーズは磁性を維持する。このことは、より強固なビーズ生産に寄与する。さらに、ジアミンビーズは、試料調製のワークフローにおいて、溶媒の選択にあまり依存しないことが示され得た。古典的なFCビーズは、分析物のための溶離溶媒としてアセトニトリルを用いると最良に機能する一方で、ジアミンビーズは、アセトニトリルおよびメタノールの両方と適合性である。
超架橋磁性粒子
好ましくは、超架橋磁性粒子は、ISO13320に従って決定した場合に、1~60マイクロメートルの範囲の粒経を有する。より好ましくは、粒径は、5~55マイクロメートルの範囲に、より好ましくは10~50マイクロメートルの範囲に、より好ましくは15~45マイクロメートルの範囲に、より好ましくは20~40マイクロメートルの範囲に、特に20~35マイクロメートルの範囲にある。
【0021】
上記のとおり、本発明による超架橋磁性粒子は、ポリマーマトリックス(P)および少なくとも1個の磁心(M)を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、磁性粒子は、1個よりも多い磁心(M)を含む、すなわち、各粒子は好ましくは、少なくとも1個、好ましくは、少なくとも2個の磁心(M)を含む。磁心(M)は、例えば、1~20個の磁性ナノ粒子、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、最も好ましくは1~3個の磁性ナノ粒子など、1個または複数の磁性ナノ粒子を含む。別法では、20個よりも多いナノ粒子、好ましくは100~150万個のナノ粒子、より好ましくは750~750,000個のナノ粒子、より好ましくは1,750~320,000個のナノ粒子、特に90,000~320,000個のナノ粒子を含んでもよい。
【0022】
好ましくは、磁心(M)の量は、最終粒子の所望の飽和磁化飽和が達成されるように選択される。好ましくは、本発明による超架橋磁性粒子は、少なくとも1Am/kgの飽和磁化を有する。好ましくは、飽和磁化は、ASTM A894/A894Mに従って決定した場合に、10Am/kg~20Am/kgの範囲、より好ましくは10Am/kg~30Am/kgの範囲など、少なくとも1Am/kg、より好ましくは少なくとも2Am/kg、より好ましくは少なくとも3Am/kg、より好ましくは少なくとも4Am/kg、より好ましくは少なくとも5Am/kg、より好ましくは少なくとも6Am/kg、より好ましくは少なくとも7Am/kg、より好ましくは少なくとも8Am/kg、より好ましくは少なくとも9Am/kg、特に少なくとも10Am/kgである。
【0023】
本発明の超架橋磁性粒子は原則として、任意の幾何学的形態を示してよいが、しかしながら好ましくは、粒子は実質的に球形である。本明細書で使用される場合、用語「実質的に球形」は、好ましくは非ファセットであるか、または稜角を実質的に持たない丸形形状を有する粒子を指す。ある特定の実施形態では、実質的に球形の粒子は典型的には、3:1または2:1未満の平均アスペクト比、例えば、1.5:1未満、または1.2:1未満のアスペクト比を有する。ある特定の実施形態では、実質的に球形の粒子は約1:1のアスペクト比を有してよい。アスペクト比(A)は、最大直径(dmax)およびそれに直交する最小直径(dmin)の関数(A=dmin/dmax)として定義される。直径は、SEMまたは光学顕微鏡測定により決定される。
【0024】
上記のとおりの超架橋磁性粒子のBET比表面積は好ましくは、ISO9277に従って決定した場合に50~2500m/gの範囲にある。より好ましくは、磁性粒子のBET比表面積は、100~1500m/gの範囲、特に300~1000m/gの範囲にある。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記のとおりの超架橋磁性粒子は超常磁性である。用語「超常磁性」は、当業者に公知であり、特に単一の磁気モノ-ドメインよりも小さい粒子で生じる磁気特性を指す。そのような粒子は、外部磁場を印加すると、全体的な磁化である、いわゆる飽和磁化が最大値に達するまで着実に配向を示す。磁場を除去すると、室温で磁気ヒステリシスを伴わずに(磁気が残留せずに)緩和する。外部磁場の非存在下では、超常磁性粒子は双極子配向(ネール緩和)および粒子の位置(ブラウン緩和)の熱変動による非恒久的な磁気モーメントを示す。
【0026】
超架橋磁性粒子では、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子の少なくとも1個の正電荷は、少なくとも1個の対応するアニオンにより補償される。好ましくは、対応するアニオンはRのカルボキシラート基であるか、またはF、Cl、Br、I、AtおよびOHからなる群から選択され、好ましくはCl、Br、IおよびOHからなる群から選択され、より好ましくはOHである。
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子
超架橋磁性粒子の第1の好ましい実施形態によれば、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式Iaの一般構造式:
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、波線
【0029】
【化4】
【0030】
は、架橋ポリマーを表し;R、RおよびRは窒素原子と一緒に、3、5、7または9個の炭素原子を含む芳香族環系を形成し;Rを各窒素原子に連結する結合は、芳香族結合である]を有し;分子は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される正電荷を有する。好ましくは、式Iaの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、Rは、1個の炭素原子を含み、R、Rは一緒に、2、4、6または8個の炭素原子を含み、Rを各窒素原子に連結する結合は、芳香族結合であり;分子は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される正電荷を有する。より好ましくは、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、構造式Ia-1:
【0031】
【化5】
【0032】
[式中、波線
【0033】
【化6】
【0034】
は、架橋ポリマーを表し;正電荷は、好ましくは上記の基から選択される、より好ましくはOHである対応するアニオンにより補償される]を有する。
超架橋磁性粒子の別の好ましい実施形態によれば、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式Ibの一般構造式:
【0035】
【化7】
【0036】
[式中、
波線
【0037】
【化8】
【0038】
は、架橋ポリマーを表し;
、Rは独立に、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは、別々であり;
は、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され;
を各窒素原子に連結する結合は、単結合である]を有し;分子は、好ましくは上記の基から選択される対応するアニオン、より好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する。
【0039】
好ましくは、式Ibの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において:
、Rは独立に、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC1~C5-アルキル(akyl)からなる群から選択され;
は、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC2~C8-アルキル(akyl)からなる群から選択され;
を各窒素原子に連結する結合は、単結合であり;分子は、好ましくは上記の基から選択される対応するアニオン、より好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する。
【0040】
より好ましくは、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、構造式Ib-1:
【0041】
【化9】
【0042】
[式中、波線
【0043】
【化10】
【0044】
は、架橋ポリマーを表し;正電荷は、好ましくは上記の基から選択される対応するアニオン、より好ましくはOHにより補償される]を有する。
超架橋磁性粒子の別の好ましい実施形態によれば、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式Icの一般構造式:
【0045】
【化11】
【0046】
[式中、
波線
【0047】
【化12】
【0048】
は、架橋ポリマーを表し;
mは、1~10の範囲、好ましくは2~8の範囲、より好ましくは3~6の範囲の整数であり;
COO(H)は、カルボキシル(アート)基を表す]を有し;分子は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する。
【0049】
好ましくは、式Icの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、構造式Ic-1:
【0050】
【化13】
【0051】
[式中、波線
【0052】
【化14】
【0053】
は、架橋ポリマーを表し;正電荷は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される]を有する。
超架橋磁性粒子の別の好ましい実施形態によれば、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式Idの一般構造式:
【0054】
【化15】
【0055】
[式中、波線
【0056】
【化16】
【0057】
は、架橋ポリマーを表し;m1およびm2は独立に、2~10の範囲、好ましくは2~5の範囲の整数である]を有し;分子は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する。好ましくは、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式Id-1の一般構造式:
【0058】
【化17】
【0059】
[式中、波線
【0060】
【化18】
【0061】
は、架橋ポリマーを表し;2個の正電荷は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される]を有する。
磁心(M)
上記のとおり、本発明による磁性粒子は、少なくとも1個の磁心(M)、好ましくは少なくとも2個の磁心(M)を含む。好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)は、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む。少なくとも1個の磁心(M)は、金、銀、白金または銅などの金属との合金を含んでもよい。
【0062】
各磁心(M)が上述の群の2種以上の混合物、すなわち、2種以上の金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物を含んでもよいことは理解されるべきである。さらに、2種以上の異なる金属、2種以上の異なる金属酸化物、2種以上の異なる金属炭化物、2種以上の異なる金属窒化物、2種以上の異なる金属硫化物、2種以上の異なる金属リン化物、2種以上の異なる金属キレートの混合物も考えられ得る。
【0063】
さらに、本発明による磁性粒子が1個よりも多い磁心(M)を含む場合、単一粒子中に存在する磁心(M)のそれぞれが、相互に同じでもよいし、または異なってもよいことは理解されるべきである。好ましくは、1個の磁性粒子中に含まれる磁心(M)はすべて、同じである。
【0064】
より好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)は、金属酸化物または金属炭化物を含む。
好ましい実施形態では、少なくとも1個の磁心(M)が、少なくとも1種の遷移金属を含む金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、または金属キレートを含む。本発明による好ましい遷移金属には、これに限定されないが、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、ニッケル、ガドリニウム、銅、およびモリブデンが含まれる。より好ましくは、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、または金属キレートは、少なくとも鉄を含む。より好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)が、金属酸化物または金属炭化物、より好ましくは、酸化鉄、特にFe、α-Fe、γ-Fe、MnFe、CoFe、NiFe、CuFe、ZnFe、CdFe、BaFeOおよびSrFeOからなる群から選択される酸化鉄(ここで、pおよびqは合成方法に応じて変動し、pは好ましくは、1~3の整数、より好ましくは2であり、qは好ましくは、3または4である)、最も好ましくはFeを含む。
【0065】
したがって、本発明はまた、少なくとも1個の磁心(M)が少なくとも1個の磁性ナノ粒子、好ましくは少なくとも1個の酸化鉄ナノ粒子、より好ましくはFe-ナノ粒子を含む、上記のとおりの超架橋磁性粒子に関する。
【0066】
磁心(M)は好ましくは、ナノ粒子およびコーティングC1を含む、より好ましくは、それらからなる。
ナノ粒子
ナノ粒子は好ましくは、粒子の磁性、好ましくは超磁性を示す部分である。ナノ粒子は時には、本明細書において「磁性ナノ粒子」とも称される。
【0067】
好ましくは、少なくとも1個のナノ粒子は、少なくとも1個の磁性、好ましくは超常磁性ナノ粒子および任意選択でコーティングC2などの1つのコーティングを含む、好ましくは、それらからなる。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ粒子」は、少なくとも1つの寸法で100ナノメートル未満である、すなわち、100nm未満の直径を有する粒子を指す。好ましくは、本発明によるナノ粒子は、TEM測定に従って決定した場合に、1~20nm、好ましくは4~15nmの範囲の直径を有する。したがって、好ましい実施形態によれば、本発明はまた、磁性粒子が少なくとも1個のナノ粒子および任意選択でコーティングC2などの1つのコーティングを含む少なくとも1個の磁心(M)を含む、上記のとおりの磁性粒子、さらには、上記の方法により得られたまたは得ることができる磁性粒子に関する。
【0069】
各ナノ粒子は好ましくは、TEM測定に従って決定した場合に、1~20nm、好ましくは4~15nmの範囲の直径を有する。好ましくは、少なくとも1個の磁性ナノ粒子は超常磁性である。
【0070】
磁心(M)は、1個のみのナノ粒子または1個よりも多いナノ粒子を含んでよい。一実施形態では、1~20個のナノ粒子を含む。別の実施形態では、100~150万個のナノ粒子、より好ましくは750~750,000個のナノ粒子、より好ましくは1,750~320,000個のナノ粒子、特に90,000~320,000個のナノ粒子を含む。ナノ粒子は、磁心として個別の(すなわち、ばらばらの)粒子の形態で存在してもよいし、または複数のナノ粒子からなる凝集体を形成してもよい。これらの凝集体は、含まれるナノ粒子の数に応じて異なるサイズを有してよい。典型的には、いわゆるスープラ粒子(supraparticles)が形成され、これは、下記でより詳細にさらに記載される。100個以上のナノ粒子を含む磁心の場合、ナノ粒子は典型的には、そのようなスープラ粒子を形成している。
1~20個のナノ粒子を含む磁心(M)
第1の実施形態によれば、磁心(M)は、1~20個の磁性ナノ粒子および任意選択でコーティングC2を含む、好ましくは、それらからなる、すなわち、1個の磁性ナノ粒子が、任意選択でコーティングC2と共に、磁心(M)のナノ粒子を形成している。典型的には、磁心は、1~20個の磁性ナノ粒子、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個、最も好ましくは1~3個のナノ粒子を含む。
【0071】
好ましくは、この場合、ナノ粒子は、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む、より好ましくは、それらからなる。各ナノ粒子は、上述の群の2種以上の混合物、すなわち、2種以上の金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物を含む、好ましくはそれらからなってもよいことは理解されるべきである。さらに、2種以上の異なる金属、2種以上の異なる金属酸化物、2種以上の異なる金属炭化物、2種以上の異なる金属窒化物、2種以上の異なる金属硫化物、2種以上の異なる金属キレートまたは2種以上の異なる金属リン化物の混合物も考えられる。より好ましくは、ナノ粒子は、金属酸化物または金属炭化物を含む、より好ましくは、それらからなる。好ましい実施形態では、金属は遷移金属である。本発明による好ましい遷移金属には、これに限定されないが、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、ニッケル、ガドリニウム、銅、およびモリブデンが含まれる。最も好ましくは、金属は鉄である。
【0072】
したがって、特に好ましい実施形態によれば、ナノ粒子は、金属酸化物、最も好ましくは酸化鉄、特にFeを含む、より好ましくは、それらからなる。
この実施形態によれば、1個よりも多い磁心(M)が磁性粒子中に存在する場合、これらの磁心(M)が相互に凝集していないことが好ましい。好ましくは、これらの粒子は、ポリマーマトリックス内に実質的に均一に分散されている。
スープラ粒子を含む磁心(M)
別の好ましい実施形態によれば、磁心(M)は、20個超のナノ粒子、典型的には100個超のナノ粒子を含み、これらのナノ粒子は好ましくは、相互に凝集して、スープラ粒子を形成している。より好ましくは、この場合、磁心(M)は、凝集したコーティングされたナノ粒子からなるスープラ粒子を含む。好ましくは、この場合、磁心(M)は、100~150万個のナノ粒子、より好ましくは750~750,000個のナノ粒子、より好ましくは1,750~320,000個のナノ粒子、特に90,000~320,000個のナノ粒子を含むスープラ粒子を含む。好ましくは、各ナノ粒子は、少なくとも1つのコーティングC2でコーティングされている。したがって好ましくは、この場合、磁心(M)は、相互に凝集したコーティングされたナノ粒子からなるスープラ粒子を含む、好ましくはそれからなり、ナノ粒子は、少なくとも1つのコーティングC2でコーティングされており、コーティングは好ましくは、ナノ粒子の表面に堆積される。スープラ粒子は好ましくは、コーティングC1でコーティングされていてもよい。
【0073】
したがって、本発明のこの別の好ましい実施形態によれば、本発明による磁性粒子は、20個超の磁性ナノ粒子、好ましくは100~150万個のナノ粒子を含み、この際、前記ナノ粒子は、少なくとも1個のスープラ粒子を形成している。スープラ粒子中のナノ粒子のそれぞれは典型的には、少なくとも1つのコーティングC2でコーティングされ、スープラ粒子は典型的には、少なくとも1つのコーティングC1でコーティングされる。
【0074】
好ましくは、コーティングC2は、各ナノ粒子の少なくとも一部、好ましくは全表面をカバーするコーティングである。好ましくは、この場合も、各ナノ粒子は、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む、より好ましくは、それらからなる。スープラ粒子中に存在する各ナノ粒子は、上述の群の2種以上の混合物、すなわち、2種以上の金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物を含む、より好ましくは、それらからなってよいことは理解されるべきである。さらに、2種以上の異なる金属、2種以上の異なる金属酸化物、2種以上の異なる金属炭化物、2種以上の異なる金属窒化物、2種以上の異なる金属硫化物、2種以上の異なる金属キレートまたは2種以上の異なる金属リン化物の混合物が考えられる。より好ましくは、スープラ粒子中の各ナノ粒子は、金属酸化物または金属炭化物を含む、より好ましくは、それらからなる。好ましい実施形態では、金属は遷移金属である。本発明による好ましい遷移金属には、これに限定されないが、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、ニッケル、ガドリニウム、銅、およびモリブデンが含まれる。最も好ましくは、金属は鉄である。特に好ましい実施形態によれば、スープラ粒子中に含まれる各ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子、最も好ましくは酸化鉄ナノ粒子、特にFe-ナノ粒子である。
【0075】
したがって、本発明はまた、磁心(M)が凝集した少なくとも20個の磁性ナノ粒子からなるスープラ粒子を含む、より好ましくは、それらからなり、ナノ粒子が好ましくは少なくとも1つのコーティングC2でコーティングされている、上記のとおりの磁性粒子、さらには、上記の方法により得られたまたは得ることができる磁性粒子に関する。
【0076】
好ましくは、任意選択の少なくとも1つのコーティングC1を含む磁心(M)は、DLS(ISO22412)に従って決定した場合に、80~500nm、より好ましくは150~400nm、最も好ましくは200~300nmの範囲の直径を有する。
【0077】
コーティングC2
コーティングC2として一般に、当業者に知られている任意のコーティングが考えられる。しかしながら好ましくは、コーティングC2は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ポリアクリル酸、アミノ酸、界面活性物質および脂肪酸からなる群の少なくとも1つのメンバーから選択される。したがって、上述の群には、上述の化合物の塩ならびにエステルおよびポリマーなどの誘導体が含まれることは理解されるべきである。したがって、コーティングC2は好ましくは、ジカルボン酸、ジカルボン酸塩、ジカルボン酸誘導体、トリカルボン酸、トリカルボン酸塩、トリカルボン酸誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸誘導体、アミノ酸、アミノ酸塩、アミノ酸誘導体、界面活性物質、界面活性物質の塩、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸誘導体からなる群の少なくとも1つのメンバーから選択される。
【0078】
本明細書で使用される場合、コーティングされた、またはコーティングという用語は、吸着、ファンデルワールスおよび/または非極性基相互作用のプロセス(例えば、化学吸着または物理的吸着)、または磁性ナノ粒子もしくはスープラ粒子核とコーティングC2もしくはC1との、または存在するならば2つ以上のコーティングの間での共有結合を指すために使用される。
【0079】
好ましくは、脂肪酸、脂肪酸塩または脂肪酸誘導体として、スープラ粒子の表面に結合し、それにより好ましくは、スープラ粒子を安定化させることができるような化合物が選択される。コーティングC2として用いられる脂肪酸は好ましくは、末端カルボキシル基(-COOH)および磁性粒子の表面に対する高い親和性吸着(例えば、化学吸着または物理的吸着)を有する、8~22個の炭素原子を含有するアルキル基の単鎖である。脂肪酸は、ナノ粒子の磁化を著しく減少させ得る酸化および/または水の存在下での加水分解からの磁性粒子核の保護(Huttenら、(2004)J.Biotech.112:47~63頁);ナノ粒子核の安定化などを含む複数の機能を有する。用語「脂肪酸」には、飽和または不飽和、特に不飽和脂肪酸が含まれる。例示的な飽和脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、トリデシル酸、ペンタデシル酸、マルガリン酸、ノナデシル酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、ペンタコシル酸、セロチン酸、ヘプタコシル酸、モンタン酸、ノナコシル酸、メリシン酸、ヘントリアコンチル酸、ラセロ酸、プシリン酸、ゲダ酸、セロプラスチック、ヘキサトリアコンチル酸、ヘプタトリアコンタン酸およびオクタトリアコンタン酸などが含まれる。例示的な不飽和脂肪酸には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ヘキサデカトリエン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、クルパノドン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、カレンド酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、5-ドデセン酸、7-テトラデセン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、15-ドコセン酸、17-テトラコセン酸、エライジン酸、ゴンドイン酸、ミード酸、エルカ酸、ネルボン酸、ルーメン酸、カレンド酸、ジャカル酸、エレオステアリン酸、カタルプ酸、プニシック酸、ルメレン酸、パリナリン酸、ボセオペンタエン酸、ピノレン酸、ポドカルピン酸などが含まれる。脂肪酸は、合成であってよいか、または確立された方法を使用して天然供給源から単離され得る。さらに、脂肪酸は、脂肪酸エノールエステル(すなわち、アセトンのエノール形態と反応させた脂肪酸)、脂肪酸エステル(すなわち、活性水素が一価アルコールのアルキル基により置き換えられた脂肪酸)、脂肪酸アミンもしくは脂肪酸アミド、または特定の実施形態では、上記のとおりの脂肪酸アルコールなどの誘導体であり得る。特に好ましい脂肪酸は、オレイン酸である。
【0080】
本発明の文脈で使用される場合の界面活性物質は、両親媒性である、すなわち、疎水基および親水基の両方を含有する有機化合物である。好ましくは、スープラ粒子の表面に結合し、それにより、好ましくはスープラ粒子を安定化させることができる界面活性物質が選択され、様々な鎖長、親水-親油バランス(HLB)値および表面電荷を有する界面活性物質が用途に応じて用いられ得る。好ましくは、本発明による界面活性物質は、第四級アンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホナート、リグニンスルホナート、ポリオキシルエトキシラート、または硫酸エステルである。界面活性物質の非限定的例は、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ノニフェノールポリエトキシラート(すなわち、NP-4、NP-40およびNP-7)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウム、ドクサート、ペルフルオロオクタンスルホナート、ペルフルオロブタンスルホナート、アルキル-アリールエーテルホスファート、アルキルエーテルホスファート、ステアリン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アンモニウムペルフルオロノナノアート、ラウレス硫酸マグネシウム、ペルフルオロノナンオイック酸、ペルフルオロオクタン酸、リン脂質、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、パレス硫酸ナトリウム、塩化ベヘントリモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ブロニドックス、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ラウイルメチルグルセス-10ヒドロキシプロピルジモニウムクロリド、二塩酸オクテニジン、オラフルール、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、ステアラルコニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トンゾニウムブロミド、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドDEA、コカミドMEA、デシルポリグルコース、ココアンホジ酢酸二ナトリウム、グリセロールモノステアラート、ポリエチレングリコールイソセチルエーテル、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ラウリルグルコシド、マルトシド、モノラウリン、ミコサブチリン、ノノキシノール、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-オクチルベータ-D-チオグルコピラノシド、オクチルグルコシド、オレイルアルコール、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリドカノール、ポロキサマー、ポリエトキシ化獣脂アミン、ポリグリセロールポリリシノレアート、ポリソルベート、ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ステアリルアルコール、サーファクチン、Triton X-100、Tween80、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ヒドロキシスルタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、レシチン、酸化ミリスタミン、ペプチタージェント、ラウロアンホ酢酸ナトリウムおよびビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸エステルである。
【0081】
本発明の意味内で使用される場合の用語「アミノ酸」は、天然または非天然アミノ酸またはアミノ酸誘導体、さらにはアミノ酸の塩を指す。好ましくは、スープラ粒子の表面に結合し、それにより、好ましくはスープラ粒子を安定化させることができるアミノ酸を選択する。例示的なアミノ酸には、システイン、メチオニン、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、セレノシステイン、ピロリシン、システイン、デヒドロアラニン、エンデュラシジジン(enduracididine)、ランチオニン、ノルバリンおよびその誘導体が含まれる。
【0082】
本発明の意味内での用語「ジカルボン酸」は、2個のカルボン酸官能基(すなわち、R-(C(O)OH))を含有する炭化水素または置換炭化水素(ここで、Rは、(a)0~18個の炭素単位を含有する直鎖炭化水素または(b)芳香環または非芳香環としての、3~8個の炭素単位を含有する環式炭化水素である)を指す。この用語には、脂肪酸のエステルなどの脂肪酸の塩および誘導体が含まれる。代表的なジカルボン酸は、例えば、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカ二酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、トラウマチン酸、ムコン酸、グルチン酸、シトラコン酸、メサコン酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、タルトロン酸、酒石酸、ジアミノピメリン酸、サッカリン酸、メソシュウ酸、オキサロ酢酸、アセトンジカルボン酸、アラビノン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸である。
【0083】
本発明の意味内での用語「トリカルボン酸」は、3個のカルボン酸官能基(すなわち、R-(C(O)OH))を含有する炭化水素または置換炭化水素(ここで、Rは、(a)3~18個の炭素単位を含有する直鎖炭化水素または(b)芳香環または非芳香環としての、3~8個の炭素単位を含有する環式炭化水素である)を指す。この用語には、脂肪酸のエステルなどの脂肪酸の塩および誘導体が含まれる。代表的なトリカルボン酸は、例えば、クエン酸(2-ヒドロキシプロパン-1,2,3トリカルボン酸)、イソクエン酸(l-ヒドロキシプロパン-1,2,3トリカルボン酸)、アコニット酸(プロパ-l-エン-1,2,3トリカルボン酸)、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、トリメリト酸(ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸)、トリメシン酸(ベンゼン-l,3,5-トリカルボン酸)、オキサロコハク酸(1-オキソプロパン-1,2,3-トリカルボン酸)またはヘミメリト酸(ベンゼン-l,2,3-トリカルボン酸)である。好ましくは、トリカルボン酸は、シトラートを含むクエン酸、すなわち、クエン酸の塩および誘導体である。
【0084】
好ましくは、C2は、クエン酸、ヒスチジン、CTAB、CTAC、オレイン酸ナトリウム、ポリアクリル酸またはそれらの2種以上の混合物(そのそれぞれの塩または誘導体を含む)からなる群から選択される。したがって、本発明はまた、磁心(M)が好ましくは、少なくとも1つのコーティングC2を備えた凝集した磁性ナノ粒子からなるスープラ粒子からなり、少なくとも1つのコーティングC2が、クエン酸塩、ヒスチジン、CTAB、CTAC、オレイン酸ナトリウム、ポリアクリル酸またはそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、上記のとおりの磁性粒子、さらには上記方法により得られたまたは得ることができる磁性粒子に関する。
【0085】
好ましくは、コーティングC2の量は、C2およびスープラ粒子の合計の総重量に対して1~80重量%の範囲、より好ましくは5~70重量%の範囲、より好ましくは10~50重量%の範囲、最も好ましくは20~40%である。
コーティングC1
上記のとおり、磁心(M)は好ましくは、磁性ナノ粒子およびコーティングC1を含み、より好ましくはそれらからなる。したがって、本発明はまた、少なくとも1個の磁心(M)がコーティングC1をさらに含む、上記のとおりの磁性粒子、さらには、上記方法により得られたまたは得ることができる磁性粒子に関する。
【0086】
コーティングC1は好ましくは、磁心(M)の表面に堆積される。コーティングC1と磁心(M)との間に、さらなる分離層が存在してもよいが、しかしながら、好ましい実施形態によれば、C1は、磁心(M)のすぐ上にコーティングされることは理解されるべきである。
【0087】
好ましくは、コーティングC1は、磁心(M)の表面全体を取り囲んでいる。
原則として、当業者に知られている任意の適切なコーティングが用いられ得る。好ましくは、コーティングC1は、界面活性物質、シリカ、シリカート、シラン、ホスファート、ホスホナート、ホスホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0088】
したがって、本発明はまた、少なくとも1個の磁心(M)を含み、少なくとも1個の磁心(M)が少なくとも1つのコーティングC1を含み、コーティングC1が、界面活性物質、シリカ、シリカート、シラン、ホスファート、ホスホナート、ホスホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくはコーティングが界面活性物質コーティングである、上記のとおりの磁性粒子、さらには、上記の方法により得られたまたは得ることができる磁性粒子に関する。
【0089】
好ましくは、コーティングC1は、シリカ、テトラエチルオルトシリカート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリラート、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、エチルトリメトキシシラン、トリエトキシ(エチル)シラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(2-フェニルエチル)シラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソブチル(トリメトキシ)シラン、イソブチルトリエトキシシラン、ビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸ジメチル、ビニルホスホン酸ジエチル、アリルホスホン酸ジエチル、アリルリン酸ジエチル、ジエチル(2-メチルアリル)ホスホナート、オクチルホスホン酸、ブチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、n-ドデシルホスホン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびアラキジン酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、トリデシル酸、ペンタデシル酸、マルガリン酸、ノナデシル酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、ペンタコシル酸、セロチン酸、ヘプタコシル酸、モンタン酸、ノナコシル酸、メリシン酸、ヘントリアコンチル酸、ラセロ酸、プシリン酸、ゲダ酸、セロプラスチック、ヘキサトリアコンチル酸、ヘプタトリアコンタン酸、オクタトリアコンタン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ヘキサデカトリエン酸、ステアリドン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、クルパノドン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸、カレンド酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、5-ドデセン酸、7-テトラデセン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、15-ドコセン酸、17-テトラコセン酸、エライジン酸、ゴンドイン酸、ミード酸、エルカ酸、ネルボン酸、ルーメン酸、カレンド酸、ジャカル酸、エレオステアリン酸、カタルプ酸、プニシック酸、ルメレン酸、パリナリン酸、ボセオペンタエン酸、ピノレン酸、ポドカルピン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0090】
好ましくは、各磁心(M)は、コーティングC1を、少なくとも1個の磁心(M)の総重量に対して1~40重量%、好ましくは2~15重量%、より好ましくは5~10重量%の量で含む。
【0091】
本発明の好ましい実施形態によれば、コーティングC1は、ビニルまたはアクリル基を含む。
ポリマーマトリックス(P)
上記のとおり、各粒子は、少なくとも1個の磁心(M)の他に、ポリマーマトリックス(P)を含む。
【0092】
好ましくは、ポリマーマトリックス(P)は、細孔性ポリマーマトリックス、好ましくはISO15901に従って決定した場合に、0.5nm~50nmの範囲、好ましくは1~20nmの範囲などの100nm未満、より好ましくは100nm未満、より好ましくは90nm未満、より好ましくは80nm未満、より好ましくは70nm未満、より好ましくは60nm未満、より好ましくは50nm以下の細孔サイズを有する細孔を含む、細孔性ポリマーマトリックスである。
【0093】
したがって、本発明はまた、ポリマーマトリックス(P)が、ISO15901に従って決定した場合に100nm未満、好ましくは50nm以下の細孔サイズを有する細孔を含む細孔性ポリマーマトリックスである、上記のとおりの磁性粒子、さらには、上記の方法により得られたまたは得ることができる磁性粒子に関する。
【0094】
ISO15901に従って決定した場合に、ポリマーマトリックス中に存在するすべての細孔のうちの好ましくは少なくとも90%は10nm未満の細孔サイズを有し、ポリマーマトリックス中に存在するすべての細孔のうちの少なくとも50%は5nm未満の細孔サイズを有する。
【0095】
特に好ましい実施形態によれば、ポリマーマトリックスは、マクロ細孔、すなわち50nm超の細孔サイズを有する細孔を含まない。
好ましくは、粒子は、ポリマーマトリックス(P)を、粒子の総重量に対して40~98重量%の範囲、より好ましくは50~95重量%の範囲、より好ましくは60~90重量%の範囲、最も好ましくは70~85重量%の範囲の量で含む。
【0096】
ポリマーマトリックス(P)は、好ましくは、スチレン、官能化スチレン、ビニルベンジルクロリド、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸からなる群から選択される少なくとも2種の異なるモノマー構成単位を重合させることを含む方法により得られたまたは得ることができるコポリマーを含む架橋ポリマーを含む。
【0097】
使用される少なくとも1種のモノマー構成単位は、アミン基またはアミン基に対して反応性の官能基を有する。好ましくは、アミン基に対して反応性の官能基は、ハロゲン化C1~C3-アルキル基、ハロゲン原子、エポキシ基および活性化カルボキシ基、好ましくは酸ハライドまたは酸無水物またはスクシンイミドの群から選択される。好ましい実施形態によれば、アミン基に対して反応性の官能基は、ハロゲン化C1~C3-アルキル基、より好ましくは-CH-Cl基である。好ましい実施形態によれば、ビニルベンジルクロリドが、アミン基に対して反応性の官能基を有するモノマー構成単位として使用される。
【0098】
さらに、少なくとも1種のモノマー構成単位は架橋剤であり、したがって、その薬剤を用いると得られるポリマーにおいて、架橋が達成される。ポリマーを架橋するために適した薬剤は当業者に知られており、これに限定されないが、ジビニルベンゼン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルベンジルオキシ)ヘキサン、ビス(ビニルベンジルオキシ)ドデカンおよびその誘導体などの構成単位が含まれる。
【0099】
したがって、ポリマーマトリックスは、アミン基に対して反応性の官能基またはアミン基を有する少なくとも1種のモノマー構成単位および架橋剤である少なくとも1種のモノマー構成単位の存在下で、適切なモノマー構成単位を共重合させるステップを含む方法により得られたまたは得ることができる架橋ポリマーを含む。
【0100】
好ましくは、次のモノマー:
【0101】
【化19】
【0102】
からなる群から選択される少なくとも2種の異なるモノマー構成単位を重合させるステップを含む方法により得られたまたは得ることができるコポリマー
[式中、R、R、R、RおよびRは互いに独立に、-N、-NH、-Br、-I、-F、-NR’R”、-NR’R”R”’、-COOH、-CN、-OH、-OR’、-COOR’、-NO、-SH、-SO、-R’(OH)、-R’(COOH)、-R’(COOR”)、-R’(OR”)x、-R’(NH2)、-R’(NHR”)、-R’(NR”R”’)、-R’(Cl)、-R’(I)、-R’(Br)、-R’(F)、R’(CN)、-R’(N、-R’(NO、-R’(SH、-R’(SO、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、R’、R”およびR”’は、互いに独立に、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ハライド、水素、スルフィド、ニトラートおよびアミンからなる群から選択され、xは、1~3の範囲の整数である]。
【0103】
好ましい実施形態によれば、ジビニルベンゼンが架橋剤として使用される。
さらに好ましい実施形態によれば、ジビニルベンゼンが、架橋剤として使用され、ビニルベンジルクロリドが、アミン基に対して反応性の官能基を有するモノマー構成単位として使用される。
【0104】
好ましくは、ポリマーマトリックスは、すべてのモノマー構成単位のうちの5~90体積%が架橋剤であるモノマー構成単位を共重合させるステップを含む方法により得られる、または得ることができる。好ましくは、得られたポリマーにおいて、少なくとも5%の架橋度が得られる。
超架橋
本発明によれば、ポリマーマトリックス(P)は、上記のとおりの少なくとも2種の異なるモノマー構成単位を重合させ、それにより、架橋ポリマーを得、架橋ポリマーをさらに超架橋させるステップを含む方法により得られたまたは得ることができる架橋コポリマーを含む。したがって、ポリマーマトリックスは、超架橋ポリマーを含む、特にそれからなる。
【0105】
本明細書で使用される場合の用語「超架橋(された)」は、硬質の三次元ネットワークをもたらすいくつかの架橋のうちの1種を指す。超架橋は、架橋ポリマーを化学反応に掛け、それにより超架橋ポリマーを得ることにより達成される。本発明によれば、ポリマーマトリックスは、少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基または少なくとも2個のアミン基を含む少なくとも1種の架橋ポリマーを含む、好ましくは、それらからなり;前記基が、化学反応において、少なくとも2個のアミン基をその構造内に含む分子、または少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基を含む分子と反応して、それにより、少なくとも1つの超架橋結合を形成し;それにより、超架橋磁性粒子を得る。したがって、ポリマーマトリックス(P)は、架橋ポリマーを、化学反応により、少なくとも2個のアミン基をその構造内に含む分子、または少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基を含む分子とさらに超架橋させることにより得られたまたは得ることができるポリマーマトリックスである。上記のとおり、ポリマーマトリックスは、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合は、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含み、少なくとも1個の正電荷を有する分子を含む。
【0106】
少なくとも1個の磁心(M)は好ましくは、ポリマーマトリックス(P)に包埋される。この文脈における用語「包埋される」では、磁心がポリマーマトリックスにより好ましくは完全に取り囲まれていることを意味することが示されている。別法では、ポリマーマトリックスにより部分的に取り囲まれていてもよい。しかしながら、この場合、ポリマーマトリックスは磁心を固定化する。
【0107】
上記のとおり、好ましい実施形態によれば、粒子は、少なくとも2個の磁心(M)を含む。この場合、粒子中に存在する各磁心(M)がポリマーマトリックス(P)に包埋されることは理解されるべきである。したがって、本発明はまた、少なくとも2個の磁心(M)がポリマーマトリックス(P)中に包埋されている、上記のとおりの磁性粒子に関する。
【0108】
超架橋磁性粒子を調製するための方法
さらなる一態様では、本発明はまた、ポリマーマトリックス(P)および少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子を調製する方法であって、ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子からなり、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Iの一般構造式
【0109】
【化20】
【0110】
[式中、
x、yは独立に、1または2であり;
zは、ゼロまたは1であり;
、Rは独立に、水素、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは別々であるか、またはRと一緒に、脂肪族または芳香族環系を形成しており;
は、-COOHまたはCOO基で置換されていてもよいC1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2つ以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;
【0111】
波線
【化21】
【0112】
は、架橋ポリマーを表し;
を各窒素原子と連結する結合は独立に、単結合、二重結合および芳香族結合からなる群から選択される]
を有し;式Iの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、少なくとも1個の正電荷を有し;
(i)ポリマーマトリックス(P)および少なくとも1個の磁心(M)を含み、ポリマーマトリックス(P)が、少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基を含む少なくとも1種の架橋ポリマーを含む、好ましくはそれからなる磁性粒子を得るステップと;
(ii)少なくとも2個のアミン基をその構造内に含む分子を得るステップと;
(iii)(i)において得られた磁性粒子の、アミン基に対して反応性の基を、(ii)において得られた分子のアミン基と反応させ、それにより、少なくとも1つの超架橋結合を形成し;それにより、超架橋磁性粒子を得るステップと
を含む方法に関する。
【0113】
本発明の方法の利点の1つは、「古典的な」アプローチにおける超架橋で使用されるフリーデル-クラフツ反応の副生成物としてのHClの回避である。HClは、ビーズの内部にある磁鉄鉱を溶解させて、ビーズの磁性を低くする。さらに、触媒としてのFeClの使用が回避され得る。この腐食性試薬は、非常に限られた水溶性しかなく、ヒドロキシル化形態では、貯蔵/反応容器(例えば、ガラスまたは鋼製)に付着する傾向があるので、これは、扱うには非実用的な試薬になっている。結局、少なくとも1個の電荷の存在が、驚くべきことに分析物がそれ自体の電荷を有するか有さないかに依存せず、分析物の捕捉に非常に有利な官能性を提供する。
【0114】
ステップ(i)
方法の好ましい実施形態では、(i)は:
(i-1)少なくとも1個の磁心(M)を得るステップと;
(i-2)アミン基に対して反応性の官能基またはアミン基を有する少なくとも1種のポリマー前駆体分子を含むポリマー前駆体分子を得るステップと、
(i-3)少なくとも1個の磁心(M)の存在下で、(i-2)によるポリマー前駆体分子を重合させ、それにより、ポリマーマトリックス(P1)に包埋された少なくとも1個の磁心(M)を含む粒子を形成するステップであって、ポリマーマトリックス(P1)が好ましくは、少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基または少なくとも2個のアミン基を有する架橋ポリマーを含む、より好ましくは、それらからなるステップと
を含む。
【0115】
ステップ(i-1)
上記のとおり、(i-1)により得られる少なくとも1個の磁心(M)は好ましくは、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む。少なくとも1個の磁心(M)は、金、銀、白金または銅などの金属との合金を含んでもよい。より好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)は、金属酸化物または金属炭化物を含み、より好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)は、酸化鉄、特に、Fe、α-Fe、γ- Fe、MnFe、CoFe、NiFe、CuFe、ZnFe、CdFe、BaFeOおよびSrFeO(ここで、pおよびqは、合成方法に応じて変動し、pは好ましくは1~3、より好ましくは2の整数であり、qは好ましくは、3または4である)からなる群から選択される酸化鉄を含み、最も好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)はFeを含む。
【0116】
したがって、本発明はまた、少なくとも1個の磁心(M)が金属酸化物または金属炭化物を含み、より好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)が酸化鉄、特に、Fe、α-Fe、γ-Fe、MnFe、CoFe、NiFe、CuFe、ZnFe,、CdFe、BaFeOおよびSrFeO(ここで、pおよびqは、合成方法に応じて変動し、pは好ましくは1~3、より好ましくは2の整数であり、qは好ましくは、3または4である)からなる群から選択される酸化鉄を含み、最も好ましくは、少なくとも1個の磁心(M)がFeを含む、上記のとおりの方法、および前記方法により得られたまたは得ることができる磁性粒子に関する。
【0117】
上記のとおり、磁心(M)は好ましくは、磁性ナノ粒子およびコーティングC1を含む、より好ましくは、それらからなる。
好ましい実施形態によれば、ステップ(i-1)は:
(i-1.1)少なくとも1個の磁性ナノ粒子を得るステップと、
(i-1.2)少なくとも1個のナノ粒子を、好ましくは、界面活性物質、シリカ、シリカート、シラン、ホスファート、ホスホナート、ホスホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるコーティングC1でコーティングして、磁心(M)を得るステップと
を含む。
【0118】
ステップ(i-2)
好ましくは、(i-2)におけるポリマー前駆体分子は、スチレン、官能化スチレン、ビニルベンジルクロリド、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸からなる群から選択される。
【0119】
使用される少なくとも1個のポリマー前駆体分子は、アミン基に対して反応性の官能基またはアミン基を有する。好ましくは、アミン基に対して反応性の官能基は、ハロゲン化C1~C3-アルキル基、ハロゲン原子、エポキシ基および活性化カルボキシ基、好ましくは-酸ハライドまたは酸無水物またはスクシンイミドの群から選択される。好ましい実施形態によれば、アミン基に対して反応性の官能基は、ハロゲン化C1~C3-アルキル基、より好ましくは-CH-Cl基である。好ましい実施形態によれば、ビニルベンジルクロリドが、アミン基に対して反応性の官能基を有するポリマー前駆体分子として用いられる。
【0120】
さらに、少なくとも1種のポリマー前駆体分子は架橋剤であり、したがって、その薬剤を用いると得られるポリマーにおいて、架橋が達成される。ポリマーを架橋するために適した薬剤は当業者に知られており、それには、これに限定されないが、ジビニルベンゼン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルベンジルオキシ)ヘキサン、ビス(ビニルベンジルオキシ)ドデカンおよびそれらの誘導体などの構成単位が含まれる。
【0121】
したがって、アミン基に対して反応性の官能基またはアミン基を有する少なくとも1種のポリマー前駆体分子と、架橋剤である少なくとも1種のポリマー前駆体分子とが使用される。
【0122】
好ましくは、少なくとも2種の異なるポリマー前駆体分子は、次のモノマーからなる群から選択される:
【0123】
【化22】
【0124】
[式中、R、R、R、RおよびRは互いに独立に、-N、-NH、-Br、-I、-F、-NR’R”、-NR’R”R”’、-COOH、-CN、-OH、-OR’、-COOR’、-NO、-SH、-SO、-R’(OH)、-R’(COOH)、-R’(COOR”)、-R’(OR”)x、-R’(NH、-R’(NHR”)、-R’(NR”R”’)、-R’(Cl)、-R’(I)、-R’(Br)、-R’(F)、R’(CN)、-R’(N、-R’(NO、-R’(SH、-R’(SO、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、R’、R”およびR”’は互いに独立に、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ハライド、水素、スルフィド、ニトラートおよびアミンからなる群から選択される]。
【0125】
好ましい実施形態によれば、ジビニルベンゼンが架橋剤として用いられる。
さらなる好ましい実施形態によれば、ジビニルベンゼンが架橋剤として用いられ、ビニルベンジルクロリドが、アミン基に対して反応性の官能基を有するポリマー前駆体分子として用いられる。
【0126】
好ましくは、ポリマーマトリックス(P1)は、ポリマーを、ポリマーの全量に対して架橋剤5~90体積%で架橋させることにより得られる、または得ることができる。
ステップ(i-3)
ステップ(i-3)において、(i-2)によるポリマー前駆体分子は、少なくとも1個の磁心(M)の存在下で重合され、それにより、ポリマーマトリックス(P1)中に包埋された少なくとも1個の磁心(M)、好ましくは少なくとも2個の磁心(M)を含む粒子を形成し、ポリマーマトリックス(P1)は好ましくは、上記および下記のとおりの架橋ポリマーを含む、より好ましくは、それらからなる。次いで、この架橋ポリマーマトリックス(P1)は、ステップ(iii)においてさらに超架橋されて、ポリマーマトリックス(P)をもたらす。
【0127】
(i-3)における重合は好ましくは、懸濁重合である。用語「懸濁重合」は、水に比較的不溶性であるポリマー前駆体分子を液滴として水相中に懸濁させる系を指す。通常、懸濁を維持するために、懸濁化剤が用いられ、生じるポリマーは、分散固相として得られる。ポリマー前駆体分子(モノマー構成単位としても公知)は懸濁重合系に直接分散させ得るが、混合物を含むn-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素溶媒または希釈剤が通常は、モノマーと共に用いられる。
【0128】
懸濁重合系では、重合されるモノマー混合物は通常、モノマー、または所望の場合には、ポリマー-イン-モノマー溶液(polymer-in-monomer solution)、少なくとも1個の磁心(M)、溶媒および、用いられる場合には、開始剤を含む。
【0129】
(i-3)における重合は好ましくは、アゾビス(イソブチロニトリル)(AlBN)、2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)(VAZO67)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(VAZO88)、ベンゾイルペルオキシド(BPO)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)および4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)からなる群から選択される開始剤の存在下で実施される。
【0130】
好ましくは、ステップ(i-3)は:
(i-3-1)(i-2)によるポリマー前駆体分子、(i-1)による少なくとも1個の磁心(M)、少なくとも1種の有機溶媒、少なくとも1種の開始剤および水相を含む組成物(A)を得るステップであって、有機溶媒が水と混和性ではないステップと、
(i-3-2)組成物(A)を撹拌して、エマルジョン(B)を得るステップであって、エマルジョンが好ましくは、水中有機溶媒エマルジョンであるステップと
を含む。
【0131】
モノマーおよび少なくとも1個の磁心(M)は好ましくは、任意選択で少なくとも1種の懸濁化剤を含有する水溶液中に懸濁される。用いられる水の量は、用いられる反応器の種類、撹拌手段などに応じて幅広く変化し得るが、最終的な懸濁混合物は好ましくは、水を含む混合物全体の総重量に対して、モノマー構成単位約5~60重量パーセントを含有する。
【0132】
懸濁重合系において、様々な懸濁化剤が添加剤として用いられ得るが、それというのも、その方法が、液中液型分散を必要とし、最終生成物を別個の固体粒子の形態でもたらすためである。懸濁化剤には、不溶性カルボナート、シリカート、タルク、ゼラチン、ペクチン、デンプン、セルロース誘導体、不溶性ホスファート、PVA、塩、NaCl、KCl、PVPなどが含まれる。好ましくは、(i-3)における重合は、いずれの界面活性物質も非存在下で実施される。
【0133】
重合に用いられる時間は、所望の変換度または規模に十分な時間であるべきであり、用いられる温度などの様々な反応パラメーターに応じて、わずか数分から48時間などの多くの時間まで幅広い範囲にわたって変化し得る。好ましくは、ステップ(i-3)は、1時間~30時間、好ましくは1時間~8時間までの範囲の時間実施される。
【0134】
用いられる温度は、熱重合を生じさせる、または使用される場合には、反応の開始をもたらすフリーラジカル開始剤の分解をもたらすために少なくとも十分であり、好ましくは、ポリマーのゲル形成をもたらしてしまう温度未満である。好ましく用いられる温度は、約0℃~100℃、好ましくは40~90℃の範囲である。
【0135】
撹拌は好ましくは、オーバーヘッド型撹拌機で実施される。
ステップ(ii)
ステップ(ii)において、少なくとも2個のアミン基をその構造内に含む分子、または少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基を含む分子が得られる。
【0136】
本発明の方法の第1の実施形態では、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式IIの一般構造式
【0137】
【化23】
【0138】
[式中、
x、yは独立に、1または2であり;
zは、ゼロまたは1であり;
、Rは独立に、水素、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは別々であるか、または一緒に、脂肪族または芳香族環系を形成しており;
は、-COOHまたはCOO基で置換されていてもよいC1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2つ以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;
、Rは独立に、水素であるか、または自由電子対を表し;
を各窒素原子と連結する結合は独立に、単結合、二重結合および芳香族結合からなる群から選択される]を有する。
【0139】
一実施形態によれば、残基Rは、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2個以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;好ましくは、各C1~C10-アルキルは、カルボキシル(アート)基で置換されてなく、すなわち、各C1~C10-アルキルは、炭素原子のところに置換基として、水素原子のみを有する。
【0140】
好ましくは、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式IIaの一般構造式
【0141】
【化24】
【0142】
[式中、R、RおよびRは、窒素原子と一緒に、3、5、7または9個の炭素原子を含む芳香族環系を形成しており、Rを各窒素原子と連結する結合は、芳香族結合であり;R、Rは独立に、水素であるか、または自由電子対を表す]を有する。
【0143】
より好ましくは、式IIaの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、Rは、1個の炭素原子を含み、R、Rは一緒に、2、4、6または8個の炭素原子を含み、Rを各窒素原子と連結する結合は、芳香族結合であり;R、Rは独立に、水素であるか、または自由電子対を表す。
【0144】
より好ましくは、式IIaの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、イミダゾール(IIa-1)である。
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式IIbの一般構造式
【0145】
【化25】
【0146】
[式中、R、Rは独立に、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは、別々であり;Rは、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され;Rを各窒素原子と連結する結合は、単結合である]を有する。
【0147】
より好ましくは、式IIbの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子について、R、Rは独立に、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC1~C5-アルキル(akyl)からなる群から選択され;Rは、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC2~C8-アルキル(akyl)からなる群から選択され;Rを各窒素原子と連結する結合は、単結合である]。
【0148】
より好ましくは、式IIbの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(IIb-1)である。
【0149】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式IIcの一般構造式:
【0150】
【化26】
【0151】
[式中、mは、1~10の範囲、好ましくは2~8の範囲、より好ましくは3~6の範囲の整数である]を有する。
より好ましくは、式IIcの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、構造式IIc-1:
【0152】
【化27】
【0153】
を有する。
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式IIdの一般構造式:
【0154】
【化28】
【0155】
[式中、m1およびm2は独立に、2~10の範囲、好ましくは、2~5の範囲の整数である]を有する。
より好ましくは、式IIdの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子は、式IId-1の一般構造式:
【0156】
【化29】
【0157】
を有する。
【0158】
ステップ(iii)
ステップ(iii)において、(i)において得られた磁性粒子の、アミン基に対して反応性の基が、(ii)において得られた分子のアミン基と反応するか、または(i)において得られた磁性粒子のアミン基が、(ii)において得られた分子の、アミン基に対して反応性の基と反応して、それにより、少なくとも1つの超架橋結合を形成し;それにより、超架橋磁性粒子が得られる。
【0159】
したがって、ポリマーマトリックス(P1)は、ステップ(iii)において超架橋される。好ましくは、(iii)における反応は、200℃以下、より好ましくは-80~+200℃の範囲、より好ましくは20~100℃の範囲、より好ましくは50~95℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲の温度で実施される。好ましくは、(iii)における反応は、0.01~200時間の範囲、より好ましくは0.1~200時間の範囲、好ましくは20~150時間の範囲、より好ましくは50~100時間の範囲の反応時間で実施される。好ましくは、(iii)における反応は、溶媒(混合物)中で実施され、溶媒(混合物)は、有機溶媒の群から、好ましくは非ハロゲン化有機溶媒の群から、より好ましくはエーテル、アルコール、芳香族有機溶媒、アセトニトリル、DMF、ジオキサンおよびDMSOからなる群から、より好ましくはイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、THF、エタノール、メタノール、イソ-プロパノール、n-プロパノールアセトニトリル、DMF、ジオキサンおよびDMSOからなる群から、より好ましくはTHF、アセトニトリル、DMF、ジオキサン、トルエンおよびDMSOからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含む。
【0160】
さらなる一態様では、本発明は、上記のとおりの方法から得られたまたは得ることができる超架橋磁性粒子に関する。
分析のための使用/その方法
さらなる一態様によれば、本発明は、流体または気体中の少なくとも1種の分析物を定性的および/または定量的に決定するための、上記のとおりの超架橋磁性粒子、または上記のとおりの方法から得られた、もしくは得ることができる超架橋磁性粒子の使用に関する。
【0161】
本明細書で使用される場合の用語「定性的」決定は、流体または気体中の少なくとも1種の分析物の存在または非存在を決定することを指す。さらに、この用語はまた、分析物の性質の評価を包含してもよく、すなわち、分析物の同定または分析物が属する化学分子の群の同定を包含してもよい。
【0162】
少なくとも1種の分析物の存在または非存在は、流体試料または気体試料を磁性粒子に、磁性粒子への少なくとも1種の分析物の結合を可能にするために十分な時間にわたって、十分な条件下で接触させ、続いて、残りの流体試料を磁性粒子から除去し、少なくとも1種の分析物が磁性粒子に結合しているか、または結合していないかを決定することにより、決定することができる。分析物が磁性粒子に結合しているか、または結合していないかを決定するために、粒子に結合した化合物は、適切な技法により溶離されてよく、続いて、少なくとも1種の分析物の存在または非存在は、溶離液中で決定されてよい。別法では、少なくとも1種の分析物の結合は、直接的に、すなわち、磁性粒子に結合して決定され得る。
【0163】
少なくとも1種の分析物またはそれが属する化学群の同定は、前記分析物が磁性粒子から溶離された後に、質量分析法、UV-vis、NMR、IRなどの適切な分析方法、またはELISA、RIAなどの生化学的方法により行われ得る。
【0164】
本明細書で使用される場合の用語「定量的」は、流体または気体試料中に含まれる少なくとも1種の分析物の絶対または相対量を決定することを指す。
少なくとも1種の分析物の量は、定性的決定について上記したとおりに決定され得る。しかしながら、磁性粒子から分析物を溶離した後に、その量が、溶離液中で決定されることとなる。別法では、結合した分析物の量は、直接的に決定され得る。
【0165】
上記を考慮して、本発明はまた、流体または気体試料中の少なくとも1種の分析物を決定するための方法であって:
(a)本発明による超架橋磁性粒子または本発明の方法により得られたもしくは得ることができる超架橋磁性粒子を、少なくとも1種の分析物を含むか、または含むと疑われる流体または気体試料と接触させるステップと;
(b)前記超架橋磁性粒子から溶離された少なくとも1種の分析物を決定するステップと
を含む方法を企図する。
【0166】
典型的には、この文脈において言及される決定は、定性的または定量的決定である。
典型的には、方法のステップ(a)は、磁性粒子への少なくとも1種の分析物の結合を可能にするために十分な時間にわたり、十分な条件下で実施される。したがって、好ましくは、ステップ(a)において、分析物の少なくとも一部、好ましくは全部が粒子に結合する。決定が定量的決定である場合、流体または気体試料中に存在する分析物の好ましくは実質的に全部が、粒子に結合する。
【0167】
好ましくは、ステップ(a)はさらに:
(a1)少なくとも1種の分析物の少なくとも一部が結合している超架橋磁性粒子を、好ましくは少なくとも1種の分析物が溶離されない条件下で洗浄するステップ;および/または
(a2)少なくとも1種の分析物を、超架橋磁性粒子から、少なくとも1種の分析物の溶離を可能にする適切な条件下で溶離するステップ
を含む。
【0168】
より具体的には、(b)における定性的または定量的決定は、超架橋磁性粒子上に結合した分析物の存在もしくは非存在の決定、または超架橋磁性粒子に結合した分析物の量の決定を含み得る。(a1)における洗浄ステップは、1回の洗浄ステップとして実施され得ることは理解されるべきである。別法では、1回よりも多い洗浄ステップが実施されてもよい。
【0169】
より具体的には、定性的決定は、ステップ(a)および/または(b)の一部として、次のさらなるステップ:
-少なくとも1種の分析物が超架橋磁性粒子に結合しているか、結合していないかを決定するステップ
を含んでもよい。
【0170】
流体試料という用語は、その獲得後に何らかの方法で、例えば、タンパク質またはポリヌクレオチドなどのある特定の成分の試薬での処理、可溶化、または富化などにより操作されている生体試料を含む。典型的には、流体試料は液体試料である。
【0171】
気体試料という用語は、それぞれ気体の形態での純粋な有機化合物および有機化合物の混合物を指す。目的の化合物の沸点に依存して、気体は、流体を加熱すること、および/または圧力を低下させることにより形成され得る。特に、低温から中程度の温度の沸点(例えば、20~100℃)を有する化合物では、磁性ビーズによる(半)選択的捕捉が重要であり得る。技術的には気体ではないが、エアロゾルも、本明細書では、気体混合物と称される。
【0172】
好ましい実施形態では、本明細書で使用される場合の流体試料は、インビトロでの評価を目的として得られた生体試料を指す。本発明の方法では、流体試料または患者試料は好ましくは、任意の体液を含んでよい。定性的および/または定量的決定について上記したとおりの使用の好ましい実施形態では、決定は、哺乳類の体液試料における分析物のインビトロ決定である。好ましくは、体液試料は、血液、血清、尿、胆汁、糞便、唾液、脊髄液(spinal fluid/liquid)、血漿、再溶解された乾燥血斑および上述の試料材料の再構成された乾燥試料からなる群から選択される。
【0173】
流体または気体試料の性質に応じて、種々の群の化学化合物が検出され得る。好ましくは、本発明による分析物は、有機化合物の群、好ましくはステロイド、糖、ビタミン、薬物、タンパク質、核酸、糖およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0174】
定性的および/または定量的決定について上記したとおりの使用の好ましい実施形態では、決定は、植物試料中の分析物の定性的および/または定量的決定である。
植物試料という用語は、植物抽出物を指す。これらの抽出物から化合物を捕捉することができる磁性粒子は、これらの試料から、トラップ-アンド-溶離機構(trap-and-elute mechanism)を介して特異的な化合物を得る、または不所望の化合物を除去するために有用であり得る。植物試料の性質に応じて、種々の群の化学化合物が検出されるはずである。好ましくは、本発明による分析物は、有機化合物の群、好ましくはステロイド、糖、ビタミン、薬物、タンパク質、核酸、糖およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0175】
流体もしくは気体試料中、または植物試料中の分析物を決定するための上述の用途は好ましくは、診断目的、乱用薬物検査、環境管理、食品安全性、品質管理、精製または製造プロセスに適用され得るか、またはそれに関係する。診断用途では、分析物の定性的または定量的決定は、分析物が、例えば、疾患または医学的状態のバイオマーカーである場合には、診断の補助を可能とし得る。同様に、環境変化の指標である分析物の定性的または定量的評価は、汚染を同定する、または環境変化を評価するために役立ち得る。食品安全性、さらには製造または精製プロセスは、指標分析物の定性的または定量的決定により管理され得る。そのような指標はまた、品質管理の一般態様と関連して、例えば、製品の貯蔵安定性評価などにおいても決定され得る。
【0176】
好ましくは、分析物は、質量分析法、UV-vis、NMR、IRにより決定される。
さらなる一態様によれば、本発明は、少なくとも1種の分析物を富化または精製するための、上記のとおりの超架橋磁性粒子、または上記のとおりの方法から得られた、もしくは得ることができる超架橋磁性粒子の使用に関する。この場合も、本発明による分析物は、有機化合物の群、好ましくはステロイド、糖、ビタミン、薬物、タンパク質、核酸、糖およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0177】
さらなる一態様によれば、本発明は、水、特に廃水を精製するための、上記のとおりの超架橋磁性粒子、または上記のとおりの方法から得られた、もしくは得ることができる超架橋磁性粒子の使用に関する。用語「精製」は、本発明による超架橋磁性粒子で水試料を処理することにより、水試料中で少なくとも1種の汚染物の含有量を減少させることを意味する。本発明による汚染物は、有機化合物の群、好ましくは、ステロイド、薬物、および乱用薬物からなる群から選択される。
【0178】
本発明を、それぞれの従属性および後方参照により示されるとおりの次の実施形態および実施形態の組合せによりさらに例示する。特に、実施形態の範囲が、例えば、「実施形態1から4のいずれか1つのプロセス」などの用語の文脈で述べられるそれぞれの場合において、この範囲のすべての実施形態が、当業者に明確に開示されていることが意味されている、すなわち、この用語の表現は、「実施形態1、2、3、および4のいずれか1つのプロセス」と同意であると当業者には理解されるはずであることが注意される。
【0179】
1.
ポリマーマトリックスおよび少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子であって、ポリマーマトリックス(P)が、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含み、少なくとも1個の正電荷を有する分子からなり、
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Iの一般構造式
【0180】
【化30】
【0181】
[式中、
x、yは独立に、1または2であり;
zは、ゼロまたは1であり;
、Rは独立に、水素、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは別々であるか、またはRと一緒に、脂肪族または芳香族環系を形成しており;
は、カルボキシル(アート)基で置換されていてもよいC1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2つ以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;
波線
【0182】
【化31】
【0183】
は、架橋ポリマーを表し;
を各窒素原子と連結する結合は独立に、単結合、二重結合および芳香族結合からなる群から選択される]
を有し、
式Iの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、少なくとも1個の正電荷を有する、超架橋磁性粒子。
【0184】
2.
磁性粒子が、ISO13320に従って決定した場合に、1~60マイクロメートルの範囲の粒経を有する、実施形態1による超架橋磁性粒子。
【0185】
3.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子の少なくとも1個の正電荷が、少なくとも1個の対応するアニオンにより補償されており、対応するアニオンが、Rのカルボキシラート基であるか、またはF、Cl、Br、I、AtおよびOHからなる群から選択され、好ましくはCl、Br、IおよびOHからなる群から選択され、より好ましくはOHである、実施形態1または2による超架橋磁性粒子。
【0186】
4.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Iaの一般構造式:
【0187】
【化32】
【0188】
[式中、波線
【0189】
【化33】
【0190】
は、架橋ポリマーを表し;R、RおよびRは窒素原子と一緒に、3、5、7または9個の炭素原子を含む芳香族環系を形成し;Rを各窒素原子に連結する結合は、芳香族結合である]を有し;分子が、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される正電荷を有する、実施形態1から3のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0191】
5.
式Iaの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において、Rが、1個の炭素原子を含み、R、Rが一緒に、2、4、6または8個の炭素原子を含み、Rを各窒素原子に連結する結合が、芳香族結合であり;分子が、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される正電荷を有する、実施形態4による超架橋磁性粒子。
【0192】
6.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、構造式Ia-1:
【0193】
【化34】
【0194】
[式中、波線
【0195】
【化35】
【0196】
は、架橋ポリマーを表し;正電荷は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される]を有する、実施形態5または6による超架橋磁性粒子。
【0197】
7.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Ibの一般構造式:
【0198】
【化36】
【0199】
[式中、
波線
【0200】
【化37】
【0201】
は、架橋ポリマーを表し;
、Rは独立に、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは、別々であり;
は、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され;
を各窒素原子に連結する結合は、単結合である]を有し;分子が、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する、実施形態1から3のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0202】
8.
式Ibの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子において:
、Rが独立に、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC1~C5-アルキルからなる群から選択され;
が、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC2~C8-アルキルからなる群から選択され;
を各窒素原子に連結する結合が、単結合であり;分子が、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する、実施形態7による超架橋磁性粒子。
【0203】
9.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、構造式Ib-1:
【0204】
【化38】
【0205】
[式中、波線
【0206】
【化39】
【0207】
は、架橋ポリマーを表し;正電荷は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される]を有する、実施形態7または8のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0208】
10.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Icの一般構造式:
【0209】
【化40】
【0210】
[式中、波線
【0211】
【化41】
【0212】
は、架橋ポリマーを表し;mは、1~10の範囲、好ましくは2~8の範囲、より好ましくは3~6の範囲の整数であり;COO(H)は、カルボキシル(アート)基を表す]を有し;分子が、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する、実施形態1~3のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0213】
11.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、構造式Ic-1:
【0214】
【化42】
【0215】
[式中、波線
【0216】
【化43】
【0217】
は、架橋ポリマーを表し;正電荷は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される]を有する、実施形態10による超架橋磁性粒子。
【0218】
12.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Idの一般構造式:
【0219】
【化44】
【0220】
[式中、波線
【0221】
【化45】
【0222】
は、架橋ポリマーを表し;m1およびm2は独立に、2~10の範囲、好ましくは2~5の範囲の整数である]を有し;分子が、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される2個の正電荷を有する、実施形態1から3のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0223】
13.
少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Id-1の一般構造式:
【0224】
【化46】
【0225】
[式中、波線
【0226】
【化47】
【0227】
は、架橋ポリマーを表し;2個の正電荷は、対応するアニオン、好ましくはOHにより補償される]を有する、実施形態12による超架橋磁性粒子。
【0228】
14.
少なくとも1個の磁心(M)が、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む、実施形態の1から13いずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0229】
15.
少なくとも1個の磁心(M)が、金属酸化物または金属炭化物、より好ましくは、酸化鉄、特にFe、α-Fe、γ-Fe、MnFe、CoFe、NiFe、CuFe、ZnFe、CdFe、BaFeOおよびSrFeOからなる群から選択される酸化鉄(ここで、pおよびqは合成方法に応じて変動し、pは好ましくは、1~3の整数、より好ましくは2であり、qは好ましくは、3または4である)、最も好ましくはFeを含む、実施形態1から14のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0230】
16.
少なくとも1個の磁心(M)が、少なくとも1個の磁性ナノ粒子、好ましくは少なくとも1個の酸化鉄ナノ粒子、より好ましくはFe-ナノ粒子を含む、実施形態1から15のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0231】
17.
少なくとも1個の磁心(M)が、磁性ナノ粒子およびコーティングC1を含む、より好ましくは、それらからなる、実施形態1から16のいずれか1つによる超架橋磁性粒子。
【0232】
18.
コーティングC1が、界面活性物質、シリカ、シリカート、シラン、ホスファート、ホスホナート、ホスホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、好ましくはコーティングが界面活性物質コーティングである、実施形態17による超架橋磁性粒子。
【0233】
19.
ポリマーマトリックス(P)および少なくとも1個の磁心(M)を含む超架橋磁性粒子を調製する方法であって、ポリマーマトリックスが、少なくとも1つの超架橋結合を有する少なくとも1種の架橋ポリマーを含み、超架橋結合が、超架橋結合の一部である少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子からなり、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式Iの一般構造式
【0234】
【化48】
【0235】
[式中、
x、yは独立に、1または2であり;
zは、ゼロまたは1であり;
、Rは独立に、水素、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは別々であるか、またはRと一緒に、脂肪族または芳香族環系を形成しており;
は、-COOHまたはCOO基で置換されていてもよいC1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2つ以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;
波線
【0236】
【化49】
【0237】
は、架橋ポリマーを表し;
を各窒素原子と連結する結合は独立に、単結合、二重結合および芳香族結合からなる群から選択される]
を有し;式Iの一般構造式を有する、少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、少なくとも1個の正電荷を有し:
(iv)ポリマーマトリックスおよび少なくとも1個の磁心(M)を含み、ポリマーマトリックスが、少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基を含む少なくとも1種の架橋ポリマーを含む、好ましくはそれからなる磁性粒子を得るステップと;
(v)少なくとも2個のアミン基をその構造内に含む分子を得るステップと;
(vi)(i)において得られた磁性粒子の、アミン基に対して反応性の基を、(ii)において得られた分子のアミン基と反応させ、それにより、少なくとも1つの超架橋結合を形成し;それにより、超架橋磁性粒子を得るステップとを含み;
(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式IIの一般構造式
【0238】
【化50】
【0239】
[式中、
x、yは独立に、1または2であり;
zは、ゼロまたは1であり;
、Rは独立に、水素、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは別々であるか、または一緒に、脂肪族または芳香族環系を形成しており;
は、-COOHまたはCOO基で置換されていてもよいC1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、C5~C10-シクロアルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールおよび-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、2つ以上の環系を有する各環式構造は、分離したまたは縮合した環系を有し;
、Rは独立に、水素であるか、または自由電子対を表し;
を各窒素原子と連結する結合は独立に、単結合、二重結合および芳香族結合からなる群から選択される]を有する、方法。
【0240】
20.
(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式IIaの一般構造式
【0241】
【化51】
【0242】
[式中、R、RおよびRは、窒素原子と一緒に、3、5、7または9個の炭素原子を含む芳香族環系を形成しており、Rを各窒素原子と連結する結合は、芳香族結合であり;R、Rは独立に、水素であるか、または自由電子対を表す]を有する、実施形態19による方法。
【0243】
21.
式IIaの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子について、Rが、1個の炭素原子を含み、R、Rが一緒に、2、4、6または8個の炭素原子を含み、Rを各窒素原子と連結する結合が、芳香族結合であり;R、Rが独立に、水素であるか、または自由電子対を表す、実施形態20による方法。
【0244】
22.
式IIaの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、イミダゾール(IIa-1)である、実施形態21による方法。
【0245】
23.
(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式IIbの一般構造式
【0246】
【化52】
【0247】
[式中、R、Rは独立に、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-CH(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され、R、Rのそれぞれは、水素、C1~C5-アルキル、C5~C12-アリール、C4~C10-ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個のさらなる置換基を有していてもよく、RおよびRは、別々であり;Rは、C1~C10-アルキル、C1~C10-アルケニル、および-(-O-CH-CH-)-O-(ここで、nは、1~15の範囲の整数である)からなる群から選択され;Rを各窒素原子と連結する結合は、単結合である]を有する、実施形態19による方法。
【0248】
24.
式IIbの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子について、R、Rが独立に、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC1~C5-アルキル(akyl)からなる群から選択され;Rが、C1~C10-アルキルからなる群から、好ましくはC2~C8-アルキル(akyl)からなる群から選択され;Rを各窒素原子と連結する結合が、単結合である、実施形態23による方法。
【0249】
25.
式IIbの一般構造式を有する、(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(IIb-1)である、実施形態23または24による方法。
【0250】
26.
(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式IIcの一般構造式:
【0251】
【化53】
【0252】
[式中、mは、1~10の範囲、好ましくは2~8の範囲、より好ましくは3~6の範囲の整数である]を有する、実施形態19による方法。
【0253】
27.
(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、構造式IIc-1:
【0254】
【化54】
【0255】
を有する、実施形態26による方法。
【0256】
28.
(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式IIdの一般構造式:
【0257】
【化55】
【0258】
[式中、m1およびm2は独立に、2~10の範囲、好ましくは、2~5の範囲の整数である]を有する、実施形態19による方法。
【0259】
29.
(ii)による少なくとも2個の窒素原子をその構造内に含む分子が、式IId-1の一般構造式:
【0260】
【化56】
【0261】
を有する、実施形態28による方法。
【0262】
30.
(i)が:
(i-1)少なくとも1個の磁心(M)を得るステップと;
(i-2)少なくとも1種の、アミン基に対して反応性の官能基またはアミン基を有するポリマー前駆体分子を含む、ポリマー前駆体分子を得るステップと、
(i-3)少なくとも1個の磁心(M)の存在下で、(i-2)によるポリマー前駆体分子を重合させ、それにより、ポリマーマトリックス(P1)に包埋された少なくとも1個の磁心(M)を含む粒子を形成するステップであって、ポリマーマトリックス(P1)が好ましくは、少なくとも2個の、アミン基に対して反応性の官能基または少なくとも2個のアミン基を有する架橋ポリマーを含む、より好ましくは、それらからなるステップと
を含む、実施形態19から29のいずれか1つによる方法。
【0263】
31.
アミン基に対して反応性の官能基が、ハロゲン化C1~C3-アルキル基、ハロゲン原子、エポキシ基および活性化カルボキシ基、好ましくは-酸ハライドまたは酸無水物またはスクシンイミドの群から選択される、実施形態19から30のいずれか1つによる方法。
【0264】
32.
(ii)における反応が、200℃以下、好ましくは-80~+200℃の範囲、より好ましくは20~100℃の範囲、より好ましくは50~95℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲の温度で実施される、実施形態19から31のいずれか1つによる方法。
【0265】
33.
(ii)における反応が、0.01~200時間の範囲、好ましくは0.1~200時間の範囲、好ましくは20~150時間の範囲、より好ましくは50~100時間の範囲の反応時間で実施される、実施形態19から32のいずれか1つによる方法。
【0266】
34.
(ii)における反応が、溶媒(混合物)中で実施され、溶媒(混合物)が、有機溶媒の群から、好ましくは非ハロゲン化有機溶媒の群から、より好ましくはエーテル、アルコール、芳香族有機溶媒、アセトニトリル、DMF、ジオキサンおよびDMSOからなる群から、より好ましくはイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、THF、エタノール、メタノール、イソ-プロパノール、n-プロパノールアセトニトリル、DMF、ジオキサンおよびDMSOからなる群から、より好ましくはTHF、アセトニトリル、DMF、ジオキサン、トルエンおよびDMSOからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含む、実施形態19から33のいずれか1つによる方法。
【0267】
35.
(i-3)における重合が懸濁重合である、実施形態19から34のいずれか1つによる方法。
【0268】
36.
(i-3)における重合が、アゾビス(イソブチロニトリル)(AlBN)、2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)(VAZO67)、1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)(VAZO88)、ベンゾイルペルオキシド(BPO)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)および4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(ACVA)からなる群から選択される開始剤の存在下で実施される、実施形態19から35のいずれか1つによる方法。
【0269】
37.
ステップ(i-3)が:
(i-3-1)(i-2)によるポリマー前駆体分子、(i-1)による少なくとも1個の磁心(M)、少なくとも1種の有機溶媒、少なくとも1種の開始剤および水相を含む組成物(A)を得るステップであって、有機溶媒が水と混和性ではないステップと、
(i-3-2)組成物(A)を撹拌して、エマルジョン(B)を得るステップであって、エマルジョンが好ましくは、水中有機溶媒エマルジョンであるステップと
を含む、実施形態19から36のいずれか1つによる方法。
【0270】
38.
少なくとも1個の磁心(M)が、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属硫化物、金属リン化物、金属酸化物、金属キレートおよびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される化合物を含む、実施形態19から37のいずれか1つによる方法。
【0271】
39.
少なくとも1個の磁心(M)が、金属酸化物または金属炭化物、より好ましくは、酸化鉄、特に、Fe、α-Fe、γ-Fe、MnFe、CoFe、NiFe、CuFe、ZnFe、CdFe、BaFeOおよびSrFeO(ここで、pおよびqは、合成方法に応じて変動し、pは好ましくは1~3、より好ましくは2の整数であり、qは好ましくは、3または4である)からなる群から選択される酸化鉄、最も好ましくは、Feを含む、実施形態19から38のいずれか1つによる方法。
【0272】
40.
少なくとも1個の磁心(M)が、少なくとも1個の磁性ナノ粒子、好ましくは少なくとも1個の酸化鉄ナノ粒子、より好ましくはFe-ナノ粒子を含む、実施形態19から39のいずれか1つによる方法。
【0273】
41.
ステップ(i-1)が:
(i-1.1)少なくとも1個の磁性ナノ粒子を得るステップと、
(i-1.2)少なくとも1個のナノ粒子を、好ましくは、界面活性物質、シリカ、シリカート、シラン、ホスファート、ホスホナート、ホスホン酸およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択されるコーティングC1でコーティングして、磁心(M)を得るステップと
含む、実施形態19から40のいずれか1つによる方法。
【0274】
42.
実施形態19から41のいずれか1つによる方法から得られたまたは得ることができる、超架橋磁性粒子。
【0275】
43.
流体または気体中の少なくとも1種の分析物を定性的および/または定量的に決定するための、実施形態1から18のいずれか1つによる超架橋磁性粒子、または実施形態19から41のいずれか1つによる方法から得られた、もしくは得ることができる超架橋磁性粒子の使用。
【0276】
44.
哺乳類の体液試料において分析物を定性的および/または定量的インビトロ決定するための、実施形態43による使用。
【0277】
45.
体液試料が、血液、血清、尿、胆汁、糞便、唾液、脊髄液、血漿、再溶解された乾燥血斑および上述の試料材料の再構成された乾燥試料からなる群から選択される、実施形態44による使用。
【0278】
46.
植物試料中の分析物を定性的および/または定量的に決定するための、実施形態43による使用。
【0279】
47.
前記分析物が、有機化合物の群、好ましくはステロイド、糖、ビタミン、薬物、タンパク質、核酸、糖およびそれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、実施形態43から46のいずれか1つによる使用。
【0280】
48.
少なくとも1種の分析物を富化または精製するための、実施形態1から18のいずれか1つによる超架橋磁性粒子または実施形態19から41のいずれか1つによる方法から得られた、もしくは得ることができる超架橋磁性粒子の使用。
【0281】
49.
前記分析物が質量分析法、UV-vis、NMR、IRにより決定される、実施形態43から48のいずれか1つによる使用。
【0282】
50.
水、特に廃水を精製するための、実施形態1から18のいずれか1つによる超架橋磁性粒子または実施形態19から41のいずれか1つによる方法から得られた、もしくは得ることができる超架橋磁性粒子の使用。
【実施例
【0283】
次の実施例は、本発明を単に例示するものである。そのためこれらは、本発明の範囲を限定するものとは決して解釈されるべきではない。
【0284】
実施例1:超架橋磁性ポリマー粒子(ビーズ)の調製
界面活性物質コーティングされた磁性ナノ粒子(1)
一般手順で、FeCl・4HO126g(0.63mol)およびFeCl248g(1.53mol)を、撹拌しながら水3lに添加し、55℃に加熱した。NHOH460ml(HO中28%)を添加し、15分後に、黒色の沈澱物を、磁石を用いて分離した。上澄みを廃棄し、磁性ナノ粒子を水で3回洗浄した。磁性ナノ粒子を2000mlに再懸濁し、pHをNaOH(10M)で7~9に調整した。30分間の超音波処理の後に、懸濁液を4l反応器に移動し、水1lを添加した。撹拌しながら、オレイン酸120mlを添加し、懸濁液を45分間、25℃で撹拌した。磁性ナノ粒子を磁石で分離し、上澄みを廃棄した。界面活性物質コーティングされたナノ粒子を水およびエタノールで3回洗浄し、エタノール中に貯蔵して、界面活性物質コーティングされた磁性ナノ粒子(1)(203g)を得た。
【0285】
磁性ポリマー粒子(2)
一般手順で、水650mlを、機械撹拌機を備えた2lガラス反応器に添加した。PVA13.5gを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。(1)10gを磁石で分離し、上澄みを廃棄した。磁性ナノ粒子をトルエンで1回洗浄し、次いで、トルエン168ml中で再懸濁した。ジビニルベンゼン23.6ml(0.17mol)およびビニルベンジルクロリド23.6ml(0.17mol)を添加し、混合物を1時間超音波処理した。2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)3.84g(20mmol)を添加し、混合物を、急速撹拌しながらPVA溶液に移動した。混合物を80℃に加熱し、反応を4時間継続した。形成した磁性ポリマー粒子を磁石で分離し、上澄みを廃棄した。粒子を水およびメタノールで3回洗浄し、イソプロパノール/水(10/90v/v)中で再懸濁して、磁性ポリマー粒子(2)(52.3g)を得た。
【0286】
細孔性磁性ポリマー粒子/ジアミン超架橋磁性ポリマー粒子(3)
一般手順で、(2)5gを磁石で分離し、上澄みを廃棄した。磁性ポリマー粒子(2)をCHCNで3回洗浄し、次いで、CHCN150ml中で再懸濁した。KOH2.8g(50mmol)および選択されたジアミンイミダゾール88mmolを、撹拌しながら添加した。懸濁液を80℃に加熱し、この温度で72時間続行した。その後、粒子を磁石で分離し、上澄みを廃棄した。粒子をエタノールで3回、水で6回洗浄して、イミダゾール超架橋磁性ポリマー粒子(3a)(収率:95%、4.8g)を得た。同じ手順を
- 選択されたジアミンとしてTMEDAを用いて実施して、TMEDA超架橋磁性ポリマー粒子(3b)(96%);
- 選択されたジアミンとしてリシンを用いて実施して、リシン超架橋磁性ポリマー粒子(3d)(96%);および
- 選択されたジアミンとしてホモピペラジンを用いて実施して、ホモピペラジン超架橋磁性ポリマー粒子(3e)(96%)
を得た。
【0287】
比較-細孔性磁性ポリマー粒子/フリーデルクラフツ超架橋磁性ポリマー粒子(3c)
一般手順で、(2)5gを磁石で分離し、上澄みを廃棄した。磁性ナノ粒子を超架橋溶媒(ジクロロエタン、トルエン、DMF、CHCN、ジオキサンまたはTHF)で3回洗浄し、次いで、選択された溶媒60ml中で再懸濁した。懸濁液を30分間撹拌し、次いで、80℃に加熱した。その温度に達したら、触媒(FeClまたはZnCl;12mmol)を添加し、窒素を懸濁液に吹き込んだ。1時間後に、粒子を磁石で分離し、上澄みを廃棄した。粒子をエタノールで5回洗浄して、フリーデルクラフツ(FC)超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3c)(4.8g)を得た。
【0288】
実施例2:TMEDA、イミダゾールおよび比較用FC超架橋細孔性磁性ポリマー粒子をベースとする超架橋細孔性磁性ポリマー粒子の評価
合成された超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3a)、(3b)、(3c)を、分析物を捕捉および溶離するそれらの性向について評価した。
【0289】
分析物の捕捉
超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(ビーズ)を評価するために、ビーズを、図1に図示されているとおりの富化ワークフローに掛けた。試験用試料として、スパイクされた血清プールを使用したが、そのスパイクされた分析物を次の表1に列挙する。
【0290】
【表1】
【0291】
試料の調製
表1からの目的の22種の分析物を分析物非含有ヒト血清プールにスパイクすることにより、試料を調製した。内標準溶液は、標的分析物の同位体標識類似体を含有するメタノール/水の50:50v/v混合物であった。
【0292】
ビーズ抽出
各試料について、スパイクされた血清100μLを50mg/mlの濃度の水中のビーズ懸濁液50μLと混合し、穏やかな回転条件下で5分間、室温で平衡化させて、分析物が粒子の表面全体にアクセスできるようにした。次いで、上澄みを廃棄し、磁性ビーズを水200μLで2回洗浄した。溶離を、70:30v/vのアセトニトリル/水中2%ギ酸100μLで行った。次のステップで、溶離液40μLをバイアルから取り出し、HPLCバイアルに移動し、そこで、LC-MS/MS分析の前に内標準溶液40μLを添加した。
【0293】
回収
定量化を外部較正により行った。このために、較正曲線を無溶媒溶液中で記録した。溶離画分における計算濃度を、スパイクされた量と比較することにより、回収率を計算した。
【0294】
図2は、図1に図示されているとおりの富化ワークフローを使用しての試料調製後に得られた分析物回収率を示す。これは、多くの分析物で、ジアミン超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3a)および(3b)の両方が、従来のFC-超架橋細孔性磁性ポリマー粒子(3c)よりも良好に機能することを示す。
【0295】
しかしながら、異なるワークフロー下では(すなわち、異なる有機溶媒/pH設定/緩衝液を用いると)、異なるビーズは異なって機能することが予測され得るので、より良好な比較は、それぞれ可能なワークフローの組合せについて全因子で(full factorial)上述のビーズを試験するものであろう。作業負荷を減少させるために、DoEを行い、それにより、種々の因子が含まれた。次いで、種々のワークフローからの溶離液を、LC-MSを用いて測定し、それにより、いくつかの分析物を定量化し、ワークアップ後のそれらの回収率を決定した。これらのデータから、線形モデルを使用して、予測される最適な回収率を計算した。これらの予測される最適な回収率が表2において見出されるはずである。
【0296】
【表2】
【0297】
一部の分析物は明らかに、より高い回収率を示す一方で、他の分析物は明白に、古典的なFCビーズほど効率的には捕捉および/または溶離されない。加えて、超架橋に使用されるジアミンの選択が、分析物回収率に対して多大に影響するようである。一般に、TMEDAが超架橋のために使用される場合に、より低い回収率が多くの分析物で観察された。しかしながら、極性分析物のガバペンチンおよび5-フルオロウラシルでは、より高い回収率が見出された。特に5-フルオロウラシルは、いままで試験された他のいずれのビーズによっても以前には捕捉されたことがなかったことに留意すべきである。
【0298】
さらに、同じ実験からの結果は、ジアミン超架橋細孔性磁性ポリマー粒子が、超架橋細孔性磁性ポリマー粒子から分析物を溶離するために使用される有機溶媒の選択に対して感受性が低かったことを示す。この目的で、2種の有機溶媒が選択された:MeOHおよびCHCN。これは図3に示されている。FC-超架橋細孔性磁性ポリマー粒子は、CHCNを使用した場合に、より高い回収率を示したが、ジアミン超架橋細孔性磁性ポリマー粒子は、いずれの溶媒でも比較的無差別であった。これは、移動相としてMeOHを用いて運転することが想像されるLC-MSによる測定に関して、ジアミン超架橋細孔性磁性ポリマー粒子の明らかな利点であった。
実施例3:TMEDA、イミダゾール、リシン、ホモピペラジンをベースとする超架橋細孔性磁性ポリマー粒子および比較のFC超架橋細孔性磁性ポリマー粒子の評価
4種の異なるアミンをベースとする、合成された超架橋細孔性磁性ポリマー粒子を、分析物を捕捉および溶離するそれらの性向について評価したが、2種は、二重の第三級アミン(すなわち、TMEDA(3b)およびイミダゾール(3d))で、1種は二重の第二級アミン(すなわち、ホモピペラジン(3d))で、1種は二重の第1級アミン(すなわち、リシン(3c))で架橋された。
【0299】
ヒト血清から極性分析物を精製するための、これらの新たなビーズの性向を試験するために、臨床関連分析物を含む分析物パネルを組み合わせ、血清中でスパイクした(下の表3を参照されたい)。
【0300】
【表3】
【0301】
標準的なビーズ-評価ワークフローは次のとおりであった:
目的の分析物をスパイクしておいた試料に、混合物のpHを設定するpH調整試薬(HCOOHまたはピロリジンまたはなし)を添加した。これに、ビーズ懸濁液を添加し、混合物を振盪し、5分間インキュベートした。続いて、磁場を印加し、磁性ビーズを容器の側面に引き寄せ、上澄みを除去した。次に、洗浄液(水または緩衝液)を添加し、混合物を振盪し、その後、ビーズを再び上澄みから分離し、次いで、再び除去した。この手順をもう1回繰り返した。続いて、溶離液を添加し、混合物を振盪し、さらに5分間インキュベートした。次に、ビーズを上澄みから分離し、次に、別のバイアルに移動した。これに、血清試料にスパイクされた化合物の内標準を含む混合物(ISTD-ミックス)を添加した。したがって、分析物の富化または希釈は、このワークフローを使用しては行わなかった。手順を下の表4にまとめる。
【0302】
【表4】
【0303】
溶離:2種の異なる有機溶媒:MeOHおよびCHCNを評価したが、この際、各溶媒で3種の濃度:0、35および70体積%有機溶媒を使用し、この際、0体積%は、水および緩衝液のみが使用されたことを意味している。各溶媒の各濃度について、3つのpHレベル:pH2.5(100mM HCOOH)、pH11.8(100mM ピロリジン)、pH7(非緩衝)を設定した。したがって、全部で15種の異なる溶離液を使用した。
【0304】
因子の設定およびそれらの範囲を定義した。DoEの使用は、a)新たなビーズを相互に、b)それぞれ3種の異なるpHレベル(すなわち、酸性、塩基性および中性)でのアセトニトリルとメタノールとの溶離強度を、c)溶離溶媒の有機含有率を、d)血清/ビーズ混合物のpH調整を比較することを可能にした。上述のとおり、ビーズの性能は、有機溶媒のpH、体積、存在およびその含有率などの他の設定に直接的に影響された。これらすべての因子をビーズと組み合わせて評価するために、全因子DoEを実施し(含まれる因子については、下の表5を参照されたい)、それにより、スパイクされたヒト血清を、合成ビーズを使用して処理した。
【0305】
【表5】
【0306】
次に、調製した試料を、LC-MS/MSを用いて、イオン供給源としてエレクトロスプレーを使用するAB-Sciex 6500+機器で測定した。分析物濃度の積分および計算には、MultiQuantソフトウェアツールを使用した。DoEデータを、JMP SASソフトウェアを使用してさらに解析した。次に、そのモデルを、評価される分析物の最適な回収率を予測するために使用することができた。グラフの下に、各ビーズでの各分析物についての95%信頼区間を含む、予測された最適な回収率が示されている。
【0307】
一部の分析物で、従来のフリーデル-クラフツ超架橋ビーズ(3c)と比較して高い回収率を得ることができることが観察された。TMEDA超架橋ビーズ(3b)では、メトトレキサート、2-オキソ-3-ヒドロキシLSD、ベンゾイルエクゴニン、5-フルオロウラシルおよびガバペンチンは、回収率の点において改善を示した。ホモピペラジンビーズ(3e)は、メトトレキサート、トブラマイシン、2-オキソ-3-ヒドロキシLSDおよび硫酸エチルについて、より良好な回収率を示した。イミダゾール超架橋ビーズ(3a)は、2-オキソ-3-ヒドロキシLSD、ベンゾイルエクゴニン、ガバペンチンおよび硫酸エチルについて、より良好な回収率を示した。リシン超架橋ビーズ(3d)は、いくつかの場合に、フリーデル-クラフツ超架橋ビーズに少なくとも匹敵し;ノルオキシモルホンでは、リシンをベースとする超架橋細孔性磁性ポリマー粒子は、好ましい代替品であった。
【0308】
実施例4:血清および尿における拡大分析物パネルについての、TMEDAをベースとする超架橋細孔性磁性ポリマー粒子、および比較可能なFC超架橋細孔性磁性ポリマー粒子の評価
実験(例えば、実施例3の結果)から、どの試料調製ワークフローが、原則として、各ビーズおよび所与の各分析物で最高回収率をもたらすかが分かる。最適な条件下で、TMEDA-およびフリーデル-クラフツ超架橋ビーズの両方について各分析物での絶対回収率を得るために、実験を行い、それにより、最適なワークフローを使用して5回の反復試験で、42種の分析物を尿および/または血清から精製した。この場合の最適なワークフローという用語は、各分析物-ビーズ-試料種の組合せで最も最適であると見出されたpH、溶離液pH、洗浄サイクルの回数および溶離の有機含有率を調整するなどの設定を行うことを指す。行われたこれらのワークフローを表6に示す。
【0309】
【表6-1】
【0310】
【表6-2】
【0311】
【表6-3】
【0312】
【表6-4】
【0313】
【表6-5】
【0314】
臨床関連分析物を含む2つの分析物パネルを組み合わせ、血清または尿においてスパイクした(下の表を参照されたい)。
【0315】
【表7-1】
【0316】
【表7-2】
【0317】
【表8】
【0318】
方法
標準的なビーズ-評価ワークフローは次のとおりであった:
目的の分析物をスパイクしておいた試料(詳細については下記参照)に、混合物のpHを設定するpH調整試薬を添加した。これに、ビーズ懸濁液を添加し、混合物を振盪し、5分間インキュベートした。続いて、磁場を印加し、磁性ビーズを容器の側面に引き寄せ、上澄みを除去した。次に、洗浄液を添加し、混合物を振盪し、その後、ビーズを再び上澄みから分離し、次いで、再び除去した。この手順をもう1回繰り返した。続いて、溶離液を添加し、混合物を振盪し、さらに5分間インキュベートした。次に、ビーズを上澄みから分離し、次に、別のバイアルに移動した。これに、血清試料にスパイクされた化合物の内標準を含む混合物を添加した。したがって、分析物の富化または希釈は、このワークフローを使用しては行わなかった。
【0319】
【表9】
【0320】
次に、調製した試料を、LC-MS/MSを用いて、イオン供給源としてエレクトロスプレーを使用するAB-Sciex 6500+機器で測定した。分析物濃度の積分および計算には、MultiQuantソフトウェアツールを使用した。データを、JMP SASソフトウェアを使用してさらに解析した。
【0321】
結果
図8および9は、それぞれ尿および血清についての各分析物および各ビーズでの絶対回収率を示す。ブプレノルフィン-グルクロニドおよびテオフィリンについての尿データは、内在性物質から重大な干渉が発生したので削除した。このことから、大抵の分析物について、これらの物質が大部分、無極であるにもかかわらず、同様の回収率が得られることが分かった。このことは、尿、さらには血清からワークアップされた分析物の両方に当てはまった。しかしながら、2種のビーズの間の違いは、FC-超架橋ビーズからは回収されないか、低い程度しか回収されない一部の分析物が、TMEDAビーズを使用するワークフローを介して回収された場合に、許容される回収率から高い回収率までをもたらし得ることであった。このための顕著な例は、5-FU、エチル-グルクロニド、プレガバリン、エクゴニン、硫酸エチル、トブラマイシン、アミカシンである。2種のビーズの間の違いがさらに、図10(尿分析物)および図11(血清分析物)において可視化されている。THC-COOHの場合にのみ、本発明者らは、TMEDAビーズでの約40%の回収率に比較して、約90%の回収率をもたらすFCビーズの優位性を認める。これは、この物質のカルボン酸間のイオン性相互作用が、この分析物が有し得る疎水性相互作用と比べると、FCビーズでより高度に重要性が低いことを示唆している。
【0322】
結論
2つの重要な結果が得られた:第一に、TMEDAビーズは、尿、さらには血清の両方において、化学的に多様な分析物パネルから、多くの分析物について高い回収率をもたらし得ることが再度示された。第二に、TMEDA-超架橋ビーズは、フリーデル-クラフツアルキル化を介して超架橋されたビーズと比較した場合に、カバーされ得る、より幅広い範囲の化学的に多様な分析物をカバーすることが示された。
【0323】
引用文献
1 X. Yang et al. Polym. Chem., 2013, 4, 1425.
2 S. Xu et al. Polym. Chem., 2015, 6, 2892.
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5 US 6 514 688 B2.
6 CN 106 432 562 A.
7 V.A. Davankov, M.P. Tsyurupa, Hypercrosslinked Polymeric Networks and Adsorbing Materials, Elsevier, 2011, Oxford, UK.
8 V.A. Davankov, M.P. Tsyurupa, Reactive Polymers, 1990, 13, 27-42.
9 Qing-Quan Liu, Li Wang, An-Guo Xiao, Hao-Jie Yu, Qiao-Hua Tan, European Polymer Journal, 2008, 44, 2516-2522.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11