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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】粒子状製剤用の凍結保護剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/12 20060101AFI20230405BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230405BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230405BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230405BHJP
【FI】
A61K9/12
A61K47/10
A61K9/10
A61K31/7088
A61K48/00
A61K47/34
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020559465
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060646
(87)【国際公開番号】W WO2019207061
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】18169325.0
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18189010.4
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512024886
【氏名又は名称】エスリス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ethris GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ドーメン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベック,フィリップ
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524898(JP,A)
【文献】国際公開第2018/011406(WO,A1)
【文献】特表2009-518306(JP,A)
【文献】特開平06-039274(JP,A)
【文献】特表2002-500203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に懸濁されている粒子状組成物からエアゾール剤を形成するための、または、このような組成物を噴霧するためのデバイスであって、前記デバイスが、
(i)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含む、組成物を含み、
前記治療活性剤が、核酸である、デバイス
【請求項2】
前記治療活性剤が、mRNAである、請求項に記載のデバイス
【請求項3】
前記ナノまたはマイクロ粒子製剤が、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す、請求項1または2に記載のデバイス
【請求項4】
記ナノまたはマイクロ粒子製剤の粒子が、前記核酸およびカチオン性賦形剤を含む、請求項からのいずれか一項に記載のデバイス
【請求項5】
前記粒子製剤の粒子が、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性オリゴマーまたはカチオン性ポリマーとで形成される複合体の形態で核酸を含む、請求項に記載のデバイス
【請求項6】
前記粒子製剤の粒子が、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性脂質またはカチオン性リピドイドとで形成される複合体の形態で核酸を含む、請求項に記載のデバイス
【請求項7】
前記凍結保護添加剤が、少なくとも二級ヒドロキシ基を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス
【請求項8】
前記凍結保護添加剤が、1,2-プロパンジオール、2-プロパノール、1,2-ブタンジオール、および1,3-ブタンジオールから選択される、請求項に記載のデバイス
【請求項9】
前記凍結保護添加剤が、1,2-プロパンジオールである、請求項に記載のデバイス
【請求項10】
前記凍結保護添加剤が、液相の体積を基準として0.5~50%w/vの濃度で組成物中に含有される、請求項1からのいずれか一項に記載のデバイス
【請求項11】
定量吸入器、ネブライザー、および鼻噴射デバイスから選択される吸入器である、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイスから得ることができる、エアロゾル。
【請求項13】
疾患の処置または予防での使用のための組成物であって、前記組成物が、
(i)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含み、
前記治療活性剤が、核酸である、
気道へ、または気道を介して投与される、組成物。
【請求項14】
経肺投与を介して、または経鼻投与を介して投与される、請求項13に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療活性剤の粒子製剤(particle formulation)、特にナノ粒子またはマイクロ粒子を含む製剤を含む、組成物の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子およびマイクロ粒子製剤は、治療活性剤が、気道へ、または気道を介する適用により人体に入ることを可能にする能力で知られている。しかし、ナノまたはマイクロ粒子として製剤化された多くの活性剤は、室温や、冷蔵状態(例えば2~8℃)であっても、安定性が限られることに悩まされている。凍結製剤は、長期的な安定性と、それゆえのナノまたはマイクロ粒子として製剤化された治療活性剤の利用可能性を著しく改善する。しかし、凍結により、一般に、機能の喪失を伴う凝集プロセスが起こる。従来の凍結保護添加剤の添加により、凍結中の粒子凝集は防げるが(例えば、W. Abdelwahed et al., Adv. Drug Del. Rev. 58 (2006), 1688-1713;J.C. Kasper et al., J. Contr. Rel. 151 (2011), 246-255)、得られる製剤が肺内適用後に機能的ではないことは、問題のままである。ゆえに、気道へ、または気道を介する適用に対する機能性を維持しながらの凍結中のナノまたはマイクロ粒子の安定化は、糖のような標準的な凍結保護剤では確実に達成することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の文脈では、気道へ、または気道を介する適用の間、機能性を維持しながらのナノまたはマイクロ粒子製剤の凍結を予想外に可能にする添加剤のクラスを同定している。粒子製剤とこのような凍結保護添加剤とを組み合わせる組成物は、製剤を、便宜的に、適用前に固体の凍結状態において保管および/または輸送することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ゆえに、本発明は、第一の様態によって、
(i)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤(nano- or
microparticle formulation)、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含む、組成物を提供する。
【0005】
第二の態様によって、本発明は、
(i)治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含み、
第一の態様による組成物を凍結することにより得られる、固体組成物を提供する。
【0006】
以下において、第一の態様による組成物は、本明細書で「懸濁組成物」とも称し、第二の態様による組成物は、「固体組成物」とも称する。
【0007】
本発明のさらなる態様は、上記の第一の態様による組成物の調製のための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を液相に添加すること
を含み、凍結保護添加剤の液相への添加が、液相に懸濁されているナノまたはマイクロ粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法に関する。
【0008】
同様に、本発明は、さらなる態様によって、上記の第二の態様による固体組成物の調製のための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を液相に添加すること
を含み、凍結保護添加剤の液相への添加が、液相に懸濁されているナノまたはマイクロ粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法により、上記の第一の態様による組成物を調製する、第一のステップ、
ならびに、第一のステップで得られる組成物を凍結する、第二のステップ
を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を保存する方法であって、上記の第一の態様による懸濁組成物を生成すること、および組成物を凍結することを含む、方法に関する。さらに、さらなる態様は、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子状製剤を含む組成物に対する凍結保護添加剤として、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される化合物の使用に関する。
【0010】
さらに、本発明のさらなる態様は、液体に懸濁されている粒子状組成物からエアゾール剤を形成するための、または、このような組成物を噴霧するためのデバイスであって、本発明の第一の態様による組成物を含む、デバイスを提供する。関連する態様は、疾患の処置または予防での使用のための、本発明の第一の態様による組成物であって、気道へ、または気道を介して投与される、組成物を提供する。
【0011】
以下において、本発明および上述の態様の詳細な説明が提供される。本文脈において、これらの態様が密接な相互関係を持つことが理解されよう。ゆえに、一態様の特徴に関して提供される詳細な情報が、別段の指示がない限り、この特徴に依存する他の態様にも適用するであろうことは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】A549細胞での添加剤を含有するbrPEI/FLuc mRNA N/P10製剤のトランスフェクション効率を示す。
図2】1回の凍結-解凍サイクル後の、brPEI/mRNA製剤のインビボでのトランスフェクション効率を示す。
図3】1回の凍結-解凍サイクル後の、brPEI/mRNA製剤のインビボでのトランスフェクション効率を示す。点線:新規の粒子の50%の活性。
図4】濃縮したポリマー/mRNA製剤のインビボでのトランスフェクション効率を示す。
図5】1,2-プロパンジオールに凍結した後の、脂質に基づくナノまたはマイクロ粒子のインビボでのトランスフェクション効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
治療活性剤
本発明による組成物は、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を含む。様々な治療活性剤は、このような粒子製剤に適していると知られている。この文脈では、治療的活性への言及は、疾患または障害を処置するために患者に投与される薬剤、ならびに、疾患または障害が患者に影響を及ぼすのを防ぐために投与される薬剤を含む。
【0014】
本発明の文脈において使用するのに好ましい治療活性剤は、核酸である。ナノまたはマイクロ粒子製剤に含まれる治療活性剤としての核酸のうち、さらに好ましいのはRNAであり、より好ましいのは一本鎖RNAであり、最も好ましいのは、修飾されたmRNAを含むmRNAである。
【0015】
用語「核酸」とは、天然型の核酸、ならびに化学的および/または酵素的に合成された核酸の全ての形態を包含し、核酸類似体および核酸誘導体、例えば、ロックド核酸(locked nucleic acid)(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、オリゴヌクレオシドチオホスフェート(thiophosphate)、およびホスホトリエステル、モルホリノオリゴヌクレオチド、カチオン性オリゴヌクレオチド(米国特許第6017700号明細書、国際公開第2007/069092号パンフレット)、置換したリボオリゴヌクレオチド、またはホスホロチオエート(phosphorothioate)も包含する。さらに、用語「核酸」は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を含む、任意の分子も指す。本発明の組成物に含まれる核酸の配列またはサイズに関して、限定はない。核酸は、本発明の組成物が送達される生物学的標的で達成される生物学的効果で主に規定される。例えば、遺伝子または核酸療法での適用の場合、核酸または核酸配列は、発現されている遺伝子もしくは遺伝子断片、または、欠陥遺伝子もしくは任意の遺伝子標的配列の意図される置換もしくは修復、または、阻害、ノックダウン、もしくは下方制御された遺伝子の標的配列で規定することができる。
【0016】
用語「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを包含する。RNAについて、原則として、任意の種類のRNAを、本発明の文脈において利用することができる。好ましい実施形態では、RNAは、一本鎖RNAである。用語「一本鎖RNA」とは、別々の鎖のハイブリダイゼーションにより、2つ以上の別々の鎖が二本鎖分子を形成するRNA分子と対照的に、リボヌクレオチドの一本の連続する鎖を意味する。用語「一本鎖RNA」は、一本鎖分子が、ループ、二次、または三次構造のような二本鎖構造をそれ自身で形成することを排除しない。
【0017】
用語「RNA」は、アミノ酸配列をコードするRNA、ならびに、アミノ酸配列をコードしないRNAを網羅する。80%超のゲノムが、タンパク質をコードしない機能性DNAエレメントを含有することを示唆している。これらの非コード配列として、調節DNAエレメント(転写因子、レギュレーター、およびコレギュレーターなどの結合部位)、ならびにタンパク質に決して翻訳されない転写物をコードする配列が挙げられる。これらの転写物は、ゲノムによりコードされ、RNAに転写されるが、タンパク質に翻訳されることはなく、ノンコーディングRNA(ncRNA)と呼ばれる。ゆえに、一実施形態では、RNAは、ノンコーディングRNAである。好ましくは、ノンコーディングRNAは、一本鎖分子である。ncRNAが、遺伝子制御、ゲノム完全性の維持、細胞分化、および発生において重要なプレーヤーであり、様々なヒトの疾患において誤調整されることは、研究から実証されている。様々な種類のncRNA:短い(20~50nt)ncRNA、中程度の(50~200nt)ncRNA、および、長い(>200nt)ncRNAが存在する。短いncRNAとして、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、および転写開始RNA(tiRNA)が挙げられる。中程度のncRNAの例は、核内低分子RNA(snRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、転移RNA(tRNA)、転写開始点関連RNA(TSSaRNA)、プロモーター関連小分子RNA(PASR)、およびプロモーター上流転写物(PROMPT)である。長いノンコーディングRNA(lncRNA)として、遺伝子間長鎖ノンコーディングRNA(lincRNA)、アンチセンスlncRNA、イントロンlncRNA、転写された超保存RNA(T-UCR)、および他のものが挙げられる(Bhan A, Mandal SS, ChemMedChem. 2014 Mar 26. doi: 10.1002/cmdc.201300534)。上述のノンコーディングRNAのうち、siRNAのみが二本鎖である。ゆえに、好ましい実施形態では、ノンコーディングRNAは一本鎖であるので、ノンコーディングRNAはsiRNAではないのが好ましい。別の実施形態では、RNAは、コーディングRNA、すなわち、アミノ酸配列をコードするRNAである。このようなRNA分子はまた、mRNA(メッセンジャーRNA)とも称され、一本鎖RNA分子である。核酸は、当業者に公知の合成化学的および酵素的な方法、もしくは組換え技術の使用により作製することができるか、もしくは天然源から単離することができるか、またはこれらの組合せにより作製することができる。オリゴまたはポリヌクレオチドは、任意で、非天然ヌクレオチドを含むことができ、一本鎖または二本鎖または三本鎖であり得る。「核酸」はまた、センスおよびアンチセンスオリゴまたはポリヌクレオチドとも称され、すなわち、DNAおよび/またはRNAにおいて特異的なヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列である。
【0018】
好ましくは、本発明の文脈における用語、核酸とは、RNAを指し、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAを指す。具体的な文脈において別段の指示がない限り、本明細書で使用される用語mRNAが、修飾されたmRNAを包含することは理解されよう。換言すると、本発明の文脈において使用されるナノまたはマイクロ粒子は、好ましくは、治療活性剤として核酸を含み、核酸は、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAであり、mRNAは、修飾されたmRNAであってもよい。
【0019】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、ヌクレオシドとして主にアデノシン、シチジン、ウリジン、およびグアノシンとのブロックを構築するリン酸ヌクレオシドから構成されるコポリマーであり、中間担体として、細胞核におけるDNAからの遺伝子情報を細胞質にもたらし、タンパク質に翻訳される。ゆえに、これらは、遺伝子発現の代替物として好適である。
【0020】
本発明の文脈では、mRNAは、細胞に入る場合、タンパク質もしくはその断片の発現に適しているか、またはタンパク質もしくはその断片に翻訳可能である、任意のポリリボヌクレオチド分子を意味すると理解すべきである。本明細書の用語「タンパク質」とは、あらゆる種類のアミノ酸配列、すなわち、ペプチド結合を介して各々結合する2つ以上のアミノ酸の鎖を包含し、ペプチドおよび融合タンパク質も含む。
【0021】
mRNAは、細胞または細胞近傍部のその機能が必要または有益であるタンパク質またはその断片、例えば、その欠乏もしくは欠陥形態が疾患もしくは疾病の要因であり、その提供は疾患もしくは疾病を緩和もしくは予防することができるタンパク質、または細胞もしくはその近傍部において人体に有益であるプロセスを促進することができるタンパク質をコードする、リボヌクレオチド配列を含有する。mRNAは、完全なタンパク質またはその機能性変異体に対する配列を含有することができる。さらに、リボヌクレオチド配列は、因子、インデューサー、レギュレーター、刺激物質、もしくは酵素として作用するタンパク質、またはその機能的断片をコードすることができ、このタンパク質は、その機能が障害、特に代謝障害を治療するため、または、新規の血管、組織などの形成のようなインビボでのプロセスを開始するために必要なものである。ここで、機能性変異体とは、細胞で必要であるタンパク質の機能を、細胞において引き受けることができるか、または、その欠乏もしくは欠陥形態が病原性である、断片を意味すると理解される。加えて、mRNAはまた、さらなる機能性領域、および/または3’もしくは5’非コード領域を有することができる。3’および/または5’非コード領域は、RNAの安定化に寄与するタンパク質コード配列または人工配列に天然で隣接する領域であり得る。当業者は、通常の実験により、各場合において、これに適した配列を決定することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、mRNAは、特に翻訳を向上するために、3’末端に、m7GpppGキャップ、内部リボソーム進入部位(IRES)、および/または、ポリA尾部を含有する。mRNAは、さらに翻訳を促進する領域を有することができる。
【0023】
好ましい実施形態では、mRNAは、修飾されたヌクレオチドおよび修飾されていないヌクレオチドの組合せを含有するmRNAである。好ましくは、国際公開第2011/012316号パンフレットに記載された、修飾されたヌクレオチドおよび修飾されていないヌクレオチドの組合せを含有するmRNAである。これに記載されたmRNAは、安定性が増し、免疫原性が低下することを示すことが報告されている。好ましい実施形態では、このような修飾されたmRNAにおいて、シチジンヌクレオチドの5~50%、およびウリジンヌクレオチドの5~50%が修飾される。アデノシンおよびグアノシンを含有するヌクレオチドは、非修飾であり得る。アデノシンおよびグアノシンヌクレオチドは、修飾されないか、または部分的に修飾することができ、これらは、好ましくは、非修飾形態を表す。好ましくは、シチジンおよびウリジンヌクレオチドの10~35%は修飾され、特に好ましくは、修飾されたシチジンヌクレオチドの含量は、7.5~25%の範囲内にあり、修飾されたウリジンヌクレオチドの含量は、7.5~25%の範囲内にある。実際に、比較的低い含有量の、例えばそれぞれ10%だけ修飾されたシチジンおよびウリジンヌクレオチドが、所望の特性を達成することができることが見出されている。修飾されたシチジンヌクレオチドが、5-メチルシチジン残基であり、修飾されたウリジンヌクレオチドは、2-チオウリジン残基であることは、特に好ましい。最も好ましくは、修飾されたシチジンヌクレオチドの含量、および修飾されたウリジンヌクレオチドの含量は、それぞれ25%である。
【0024】
別の好ましい実施形態では、mRNAは、当該細胞においてのみ所望のmRNAの活性を可能にするために、標的結合部位、標的化配列、および/または、マイクロRNA結合部位と組み合わせることができる。さらに好ましい実施形態では、RNAは、3’ポリA尾部のマイクロRNAまたはshRNAの下流と組み合わせることができる。
【0025】
さらに、用語「核酸」とは、DNAもしくはRNA、または、そのハイブリッドもしくはその任意の修飾を指し、これは、当該技術分野に知られている(例えば、修飾の例として、米国特許第8278036号明細書、国際公開第2013/052523号パンフレット、国際公開第2011/012316号パンフレット、米国特許第5525711号明細書、米国特許第4711955号明細書、米国特許第5792608号明細書、または、欧州特許出願公開第302175号明細書、(Lorenz et al. 2004, Bioorg Med Chem Lett, 14, 4975-4977、Soutschek et al. 2004, Nature, 432, 173-178)を参照のこと)。このような核酸分子は、一本鎖または二本鎖で、直鎖状または環状で、天然または合成であり、サイズ制限はない。例えば、核酸分子は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、または、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA、アンタゴミル、または、小ヘアピンRNA(shRNA)、tRNA、または、長い二本鎖RNA、または、このようなRNAもしくはキメラプラストをコードするDNA構築物(Colestrauss et al. 1996, Science, 273, 1386-1389)、または、アプタマー、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(RNA誘導性部位に特異的なDNA切断(RNA-guided site-specific DNA cleavage)に対する「CRISPR」)(Cong et al. 2013, Science, 339, 819-823)、または、RNAおよびDNAであり得る。上記の核酸分子は、プラスミド、コスミド、人工染色体、ウイルスDNAもしくはRNA、バクテリオファージDNA、コーディングおよびノンコーディング一本鎖(mRNA)もしくは二本鎖RNA、およびオリゴヌクレオチドの形態であり得、上述の糖骨格および/または塩基における修飾の状態のいずれか、ならびに3’または5’修飾を含む。特に好ましい実施形態では、核酸は、RNAであり、より好ましくはmRNAまたはsiRNA、最も好ましくはmRNAである。
【0026】
核酸は、標的細胞で発現するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有することができる。当業者に周知の方法は、組換え核酸分子を構築するために使用することができ、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (2001) N.Y.およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1989)に記載の技術を参照のこと。
【0027】
上記の通り、核酸は、ナノまたはマイクロ粒子製剤での好ましい治療活性剤として含まれる。一般に、治療効果は、核酸と、細胞分子および小器官との相互作用により達成することができる。このような相互作用単独では、例えば、toll様および他の細胞外または細胞内受容体と、特異的に相互作用するために設計された特定のCpGオリゴヌクレオチドおよび配列の場合のように、先天的免疫系を活性化することができる。さらに、細胞内の核酸の取込みまたは導入は、核酸に含まれる遺伝子のようなヌクレオチド配列の発現をもたらすことを意図することができるか、導入された外因性核酸が細胞内に存在する結果として、内在性遺伝子発現の下方制御、サイレンシング、もしくはノックダウンを意図することができるか、または、選択された塩基、もしくは内因性核酸配列の全ストレッチの修復、切除、挿入、もしくは交換のような、内因性核酸配列の修飾を意図することができるか、または、導入された外因性核酸が細胞内に存在し、相互作用する結果として、実質的にあらゆる細胞プロセスとの干渉を意図することができる。導入された外因性核酸の過剰発現は、特に、少し例を挙げると、嚢胞性線維症、血友病、または筋ジストロフィーのような多くの代謝性遺伝性疾患の場合のように、内在性遺伝子が欠陥またはサイレントであり、遺伝子発現がない、遺伝子発現が不十分である、または、遺伝子発現の欠陥もしくは機能不全な産物をもたらす場合、内在性遺伝子発現を補償または相補することを意図することができる。導入された外因性核酸の過剰発現はまた、発現の産物を、遺伝子発現の制御、シグナル伝達、および他の細胞プロセスのような、任意の内在性細胞プロセスと相互作用または干渉させることを意図することができる。導入された外因性核酸の過剰発現はまた、トランスフェクトまたは形質導入された細胞が存在するまたは存在させる生物に関連して、免疫応答を引き起こすことを意図することができる。例としては、ワクチン接種目的のために抗原を存在させるための、樹状細胞のような抗原提示細胞の遺伝的修飾がある。他の例としては、腫瘍特異的免疫応答を引き出すための、腫瘍におけるサイトカインの過剰発現がある。さらに、導入された外因性核酸の過剰発現はまた、修飾されたT細胞もしくは前駆体、または幹細胞もしくは再生医療用の他の細胞のような細胞療法のために、一過的に、遺伝的に修飾された細胞をインビボまたはエクスビボで生成することを意図することができる。
【0028】
治療目的のための内在性遺伝子発現の下方制御、サイレンシング、またはノックダウンは、例えば、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、tRNA、長い二本鎖RNAとのRNA干渉(RNAi)により達成することができ、このような下方制御は、配列に特異的または非特異的であり得、長い二本鎖RNAが細胞内に導入される場合のように、細胞死ももたらし得る。内在性、または既存の遺伝子発現の下方制御、サイレンシング、またはノックダウンは、ウイルス感染およびがんを含む、後天的、遺伝的、または自発的に生じる疾患の処置に有用であり得る。核酸の細胞内への導入を、例えば、ウイルス感染または新生物を防ぐための予防措置として行うことができることも想定することもできる。内在性遺伝子発現の下方制御、サイレンシング、またはノックダウンは、転写レベルおよび翻訳レベルに対して発揮することができる。多数の機構は、当業者に知られており、例えば、後成的な修飾、クロマチン構造での変化、導入された核酸による転写因子の選択的結合、三重らせん形成のような、従来にはない塩基対形成メカニズムを含む塩基対形成による、ゲノムDNA、mRNA、または他のRNA種において相補配列へ導入された核酸のハイブリダイゼーションを含む。同様に、遺伝子修復、塩基または配列変化は、エキソンスキッピングを含む、ゲノムレベルおよびmRNAレベルで達成することができる。塩基または配列変化は、例えば、RNA誘導性部位に特異的なDNA切断、トランス-スプライシング、トランス-スプライシングリボザイム、キメラプラスト、スプライソソーム媒介RNAトランス-スプライシングを利用する切り貼り機構、または、グループIIイントロンもしくは再標的化されたイントロンを利用すること、または、ウイルスにより媒介される挿入突然変異誘発を利用すること、もしくは原核、真核もしくはウイルス性インテグラーゼシステムを使用する標的化されたゲノム挿入を利用することにより達成することができる。核酸が、生体系の設計計画の担体であり、直接的および間接的な形式で多くの細胞プロセスに加わるので、理論上、あらゆる細胞プロセスは、外部から細胞内に核酸を導入することにより影響を受ける可能性がある。とりわけ、この導入は、細胞または器官培養物においてインビボおよびエクスビボで直接行い、続いて、このようにして修飾された器官または細胞のレシピエントへの移植を行うことができる。治療活性剤として核酸を、本発明の文脈で使用のためのナノまたはマイクロ粒子製剤は、上述の全ての目的に有用であり得る。
【0029】
本発明の文脈での使用のためのナノまたはマイクロ粒子製剤が、単一の治療活性剤を含むことができるが、例えば、単一粒子に組み合わせた2つ以上の種類の治療活性剤を含む粒子の形態、または、そこに含有される治療活性剤の種類が異なる粒子のブレンドの形態で、2つ以上の治療活性剤の組合せを代わりに含むこともできると理解されよう。
【0030】
粒子製剤
本発明による組成物(すなわち、懸濁組成物および固体組成物)は、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を含む。当業者に理解されるであろう通り、「または(or)」は、別段の具体的な指示がない限り、非排他的に本文脈において使用される。ゆえに、ナノまたはマイクロ粒子製剤への言及は、治療活性剤を含むナノ粒子を含有する製剤、治療活性剤を含むマイクロ粒子を含有する製剤、ならびに、治療活性剤を含むナノ粒子およびマイクロ粒子の両方を含有する製剤を包含する。便宜上、「ナノまたはマイクロ粒子製剤」は、本明細書での発明の議論において、「粒子製剤」または「粒子状製剤」と省略することができる。同様に、ナノまたはマイクロ粒子とは、「粒子」を指すことができる。
【0031】
ナノまたはマイクロ粒子製剤の粒子は、成分としてのみ、治療活性剤を含有することができる。しかし、粒子が、1つまたは複数の追加成分との組合せで治療活性剤を含有することが好ましい。これら追加成分は、典型的には、薬学的に許容される成分、例えば、薬学的に許容される賦形剤または添加剤である。
【0032】
本発明による組成物中のナノまたはマイクロ粒子製剤は、治療活性剤を含有するナノまたはマイクロ粒子を含む。粒子製剤は、このようなナノまたはマイクロ粒子からなり得る。本明細書に記載される通り、用語、ナノ粒子とは、一般に、ナノメーターのサイズ範囲の直径、すなわち、1nm以上、1000nm未満の直径の粒子を指す。用語、マイクロ粒子とは、一般に、マイクロメーターのサイズ範囲の直径、すなわち、1000nm以上、100μm以下の直径の粒子を指す。
【0033】
ナノまたはマイクロ粒子製剤は、典型的には、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す。
【0034】
ナノまたはマイクロ粒子製剤での単一粒子の直径の上限値は、好ましくは20μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmである。ゆえに、上記から理解されるであろう通り、極めて好ましい粒子製剤は、5~1000nmの範囲の平均粒径のものであり、最大粒径が5μmである粒子である。
【0035】
本明細書で言及されるナノまたはマイクロ粒子製剤の粒径および平均粒径は、動的光散乱(DLS)を介して、便宜的に測定することができる。一般に、本明細書で言及される直径および平均直径は、動的光散乱を介して測定される懸濁されている状態での粒子の流体力学的直径として示される。温度の効果が、結果を報告する際に測定機器(例えばMalvern ZetaSizer)により考慮されるので、測定された直径は、一般に、温度依存性ではない。しかし、測定は、典型的には、室温(25℃)で行われる。DLS測定用の懸濁媒体として、例えば、水、または凍結保護添加剤を含有する水を、適宜、使用することができる。凍結した固体組成物の場合、粒径は、典型的には、組成物を解凍した後に測定される。平均粒子サイズまたは平均粒径が示される場合、平均は、典型的には、別段の指示がない限りz平均である。
【0036】
好ましくは、ナノまたはマイクロ粒子製剤は、粒子製剤中の粒子の総重量に対する治療活性剤の重量として表される、活性負荷を有し、それは、0.1~95%(w/w)、より好ましくは0.5~90%(w/w)、最も好ましくは1~80%(w/w)の範囲である。
【0037】
治療活性剤に加えて、本発明の文脈での使用のためのナノまたはマイクロ粒子製剤の粒子は、1つまたは複数の追加成分、例えば、典型的に薬学的に許容される成分である賦形剤または添加剤を含むことができる。例えば、このような追加成分は、患者に投与した後、特定部位への輸送を容易にするか、もしくは粒子の特定部位へのさらなる取込みを促進することができるか、または、粒子もしくはそこに含有される治療活性剤の安定化を助けることができる。
【0038】
治療活性剤が核酸である場合、核酸を含む粒子に有用な成分は、ウイルスベクターである。このようなウイルスベクターは、例えば、A.C. Silva et al., Current Drug Metabolism, 16, 2015, 3-16の概説記事、およびそこで論議される文献において論議されているように、当該技術分野で知られている。
【0039】
さらに、様々なポリマーは、ナノまたはマイクロ粒子を含む粒子製剤での治療活性剤の製剤化のための賦形剤として確立されている。このようなポリマーはまた、本発明の文脈において使用される粒子状製剤に対する追加成分を提供し得る。例えば、適したポリマー賦形剤として、患者に粒子を投与した後、体内に再吸収され得るポリマー、例えば、アミノ酸、炭水化物、または乳酸および/もしくはグリコール酸から形成される天然ポリマーを含むポリマーが挙げられる。
【0040】
治療活性剤として、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAを含む粒子製剤に対して、好ましい追加成分は、カチオン性賦形剤である。このようなカチオン性賦形剤および核酸は、負の電荷をもたらすが、共に複合体を形成することができる。カチオン性基が、賦形剤の全体のカチオン性電荷をもたらすのに十分なほどの多数で存在する限り、カチオン性賦形剤への言及が、それぞれの賦形剤のアニオン性基または中性域の存在を排除しないと理解されよう。
【0041】
ゆえに、好ましい一実施形態によって、本発明の文脈で言及されるナノまたはマイクロ粒子製剤は、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性オリゴマーまたはポリマー、好ましくはポリマーとで形成される複合体の形態での治療活性剤として、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAを含む、粒子製剤である。このような複合体は、当該技術分野で、ポリプレックスとも称される。
【0042】
このようなポリプレックス、およびこれを形成することができる適したオリゴマーまたはポリマーは、当該技術分野で知られている。ポリプレックスの形成に適した例示的なカチオン性オリゴマーまたはポリマーは、本発明の文脈において言及される粒子製剤でも使用されることができ、A.C. Silva et al., Current Drug Metabolism, 16, 2015, 3-16、およびそこで参照される文献、J.C. Kasper et al., J. Contr. Rel. 151 (2011), 246-255、国際公開第2014/207231号パンフレット、およびそこで参照される文献、ならびに、国際公開第2016/097377号パンフレット、およびそこで参照される文献で議論されている。
【0043】
適したカチオン性オリゴマーまたはポリマーとして、特に、アミノ基を含有する複数の単位を含む、カチオン性オリゴマーまたはポリマーが挙げられる。アミノ基は、プロトン化して、ポリマーのカチオン性電荷をもたらすことができる。
【0044】
核酸、およびアミノ基を含有する複数の単位を含むカチオン性オリゴマーまたはポリマーから形成されるポリプレックスでは、カチオン性オリゴマーまたはポリマーでのアミン窒素原子の数と核酸でのリン酸基の数とのN/P比は、好ましくは1~100、より好ましくは2~80、最も好ましくは3~60の範囲である。
【0045】
複数のアミノ基を含む、カチオン性オリゴマーまたはポリマーのうち、オリゴマーまたはポリマーは、以下の(1)、(2)、(3)、および(4)から独立して選択される複数の単位を含むことが好ましい。
【0046】
【化1】
ここで、繰返し単位(1)、(2)、(3)、および/または(4)の窒素原子の1つまたは複数は、プロトン化して、ポリマーのカチオン性電荷をもたらすことができる。
【0047】
粒子製剤を提供するためのカチオン性オリゴマーまたはポリマーとして特に好ましいのは、アミノ基を含有する複数の単位を含む、以下の4つのクラスのオリゴマーまたはポリマーである。
【0048】
第一の好ましいクラスとして、ポリ(エチレンイミン)(「PEI」)が挙げられ、分岐ポリ(エチレンイミン)(「brPEI」)を含む。
【0049】
第二の好ましいクラスのカチオン性オリゴマーまたはポリマーは、側鎖および/または末端基として、以下の式(II)の複数の基を含むオリゴマーまたはポリマーであり、これらは、国際公開第2014/207231号パンフレット(出願人ethris GmbH)で開示されている。
【0050】
【化2】
(式中、変数a、b、p、m、nおよびR~Rは、複数のこのような基において式(II)の各基に対して独立して、以下の通り定義され、
aは、1であり、bは、2~4の整数であるか、または、aは、2~4の整数であり、bは、1であり、
pは、1または2であり、
mは、1または2であり、nは、0または1であり、かつ、m+nは、2以上であり、
~Rは、互いに独立して、水素、-CH-CH(OH)-R基、-CH(R)-CH-OH基、-CH-CH-(C=O)-O-R基、-CH-CH-(C=O)-NH-R基、または-CH-R基(式中、Rは、1つのC-C二重結合を有するC3~C18アルキルまたはC3~C18アルケニルから選択される)、アミノ基に対する保護基、ならびにポリ(エチレングリコール)鎖から選択され、
は、水素、-CH-CH(OH)-R基、-CH(R)-CH-OH基、-CH-CH-(C=O)-O-R基、-CH-CH-(C=O)-NH-R基、または-CH-R基(式中、Rは、1つのC-C二重結合を有するC3~C18アルキルまたはC3~C18アルケニルから選択される)、アミノ基に対する保護基、-C(NH)-NH、ポリ(エチレングリコール)鎖、ならびに受容体リガンドから選択され、
式(II)で示される窒素原子の1つまたは複数は、プロトン化して、式(II)のカチオン性基をもたらすことができる)。
【0051】
これらのオリゴマーまたはポリマー、および上記の式(II)に含有される変数のさらに好ましい定義について、国際公開第2014/207231号パンフレットでの各々の開示もまた、別段の具体的な指示がない限り、本明細書に記載の発明に適用される。また、核酸を含有する組成物、ならびにポリプレックスの形態でのこれらのオリゴマーまたはポリマーに関して、国際公開第2014/207231号パンフレットで提供される情報は、本明細書で言及される粒子製剤に適用可能である。
【0052】
第三の好ましいクラスのカチオン性オリゴマーまたはポリマーは、繰返し単位として、以下の式(III)の複数の基を含むオリゴマーまたはポリマーであり、これらは、国際公開第2014/207231号パンフレット(出願人ethris GmbH)で開示されている。
【0053】
【化3】
(式中、変数a、b、p、m、nおよびR~Rは、複数のこのような基において式(III)の各基に対して独立して、以下の通り定義され、
aは、1であり、bは、2~4の整数であるか、または、aは、2~4の整数であり、bは、1であり、
pは、1または2であり、
mは、1または2であり、nは、0または1であり、かつ、m+nは、2以上であり、
~Rは、互いに独立して、水素、-CH-CH(OH)-R基、-CH(R)-CH-OH基、-CH-CH-(C=O)-O-R基、または-CH-CH-(C=O)-NH-R基、または-CH-R基(式中、Rは、1つのC-C二重結合を有するC3~C18アルキルまたはC3~C18アルケニルから選択される)、アミノ基に対する保護基、-C(NH)-NH、ならびにポリ(エチレングリコール)鎖から選択され、
式(III)で示される窒素原子の1つまたは複数は、プロトン化して、式(III)のカチオン性基をもたらすことができる)。
【0054】
これらのオリゴマーまたはポリマー、および上記の式(III)に含有される変数のさらに好ましい定義について、国際公開第2014/207231号パンフレットでの各々の開示はまた、別段の具体的な指示がない限り、本明細書に記載の発明に適用される。また、核酸を含有する組成物、ならびにポリプレックスの形態でのこれらのオリゴマーおよびポリマーに関して、国際公開第2014/207231号パンフレットで提供される情報は、本明細書で言及される粒子製剤に適用可能である。
【0055】
第四の好ましいクラスのカチオン性オリゴマーまたはポリマーは、国際公開第2016/097377号パンフレット(出願人ethris GmbH)で開示されている、統計コポリマーにより提供される。これは、以下の式(a1)および(a2):
【0056】
【化4】
の繰返し単位から独立して選択される、複数の繰返し単位(a)、ならびに、以下の式(b1)~(b4):
【0057】
【化5】
の繰返し単位から独立して選択される、複数の繰返し単位(b)を含み、繰返し単位(a)の合計の、繰返し単位(b)の合計に対するモル比は、0.7/1.0~1.0/0.7の範囲内であり、コポリマーに含有される繰返し単位(a)および/または(b)の窒素原子の1つまたは複数は、プロトン化して、カチオン性コポリマーをもたらすことができる。
【0058】
このコポリマーのさらに好ましい定義について、国際公開第2016/097377号パンフレットでの各々の開示もまた、別段の具体的な指示がない限り、本明細書に記載の発明に適用される。そこに記されるように、特に好ましいコポリマーは、繰返し単位(a1)および(b1)を含むか、または繰返し単位(a1)および(b1)からなる直鎖状コポリマーである。また、核酸を含有する組成物、ならびにポリプレックスの形態でのこれらのオリゴマーおよびポリマーに関して、国際公開第2016/097377号パンフレットで提供される情報は、本明細書で言及される粒子製剤に適用可能である。
【0059】
別の好ましい実施形態によって、本発明の文脈で言及されるナノまたはマイクロ粒子製剤は、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性脂質またはカチオン性リピドイドとで形成される複合体の形態での治療活性剤として、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAを含む、粒子製剤である。別段の定義がない限り、このような複合体は、特に、核酸とカチオン性脂質またはカチオン性リピドイドとの複合体を含む、リポプレックス、リポソーム、および脂質ナノ分子(「LNP」)を包含する。
【0060】
適したカチオン性脂質、またはカチオン性脂質およびリピドイドは、本発明の文脈において核酸との複合体の形成にも使用され得るが、当該技術分野で知られており、例えば、A.C. Silva et al., Current Drug Metabolism, 16, 2015, 3-16、ならびにそこで参照される文献、米国特許出願公開第2017/0267631号明細書、国際公開第2016/081029号パンフレット、国際公開第2011/071860号パンフレット、国際公開第2016/118697号パンフレット、米国特許第8450298号明細書、国際公開第2014/207231号パンフレット、およびE.R. Lee et al., Human Gene Therapy 7:1701-1717, September 10, 1996で議論されている。用語「リピドイド」とは、脂質の構造を有さないが、脂質の特性を示す物質に対して確立されている。
【0061】
カチオン性リピドイドとの複合体の形態での治療活性剤として、例えば、リポプレックス、リポソーム、またはLNPとして、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAを含有する粒子製剤での使用のためのリピドイドの好ましいクラスは、国際公開第2014/207231号パンフレット(出願人ethris GmbH)で開示されている、以下の式(IV)の構造を有するリピドイドである。
【0062】
【化6】
(式中、変数a、b、p、m、nおよびR~Rは、以下の通り定義され、
aは、1であり、bは、2~4の整数であるか、または、aは、2~4の整数であり、bは、1であり、
pは、1または2であり、
mは、1または2であり、nは、0または1であり、かつ、m+nは、2以上であり、
~Rは、互いに独立して、水素、-CH-CH(OH)-R基、-CH(R)-CH-OH基、-CH-CH-(C=O)-O-R基、-CH-CH-(C=O)-NH-R基、または-CH-R基(式中、Rは、1つのC-C二重結合を有するC3~C18アルキルまたはC3~C18アルケニルから選択される)、アミノ基に対する保護基、-C(NH)-NH、ポリ(エチレングリコール)鎖、および受容体リガンドから選択されるが、ただし、R~Rの少なくとも2つの残基は、-CH-CH(OH)-R基、-CH(R)-CH-OH基、-CH-CH-(C=O)-O-R基、-CH-CH-(C=O)-NH-R基、または-CH-R基(式中、Rは、1つのC-C二重結合を有するC3~C18アルキルまたはC3~C18アルケニルから選択される)であり、
式(IV)で示される窒素原子の1つまたは複数は、プロトン化して、式(IV)のカチオン性リピドイドをもたらすことができる)。
【0063】
これらのリピドイド、および上記の式(IV)に含有される変数のさらに好ましい定義について、国際公開第2014/207231号パンフレットでの各々の開示もまた、別段の具体的な指示がない限り、本明細書に記載の発明に適用される。また、核酸を含有する組成物、および複合体の形態、例えば、リポプレックス、リポソーム、またはLNPの形態でのこれらのリピドイドに関して、国際公開第2014/207231号パンフレットで提供される情報は、本明細書で言及される粒子製剤に適用可能である。
【0064】
核酸と、本明細書で言及される粒子製剤に含有され得るカチオン性脂質との複合体を提供するための別の好ましい種類の脂質は、カチオン性脂質Genzyme Lipid 67(GL67)である。このカチオン的に誘導体化された脂質は、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAの複合化に非常に有用である。
【0065】
アミノ基を含有するカチオン性脂質またはカチオン性リピドイドで、例えば式(IV)のリピドイドで形成される核酸の複合体を含む、粒子製剤に対して、リポプレックスでのN/P比は、好ましくは1~100、より好ましくは2~80であり、最も好ましいのは、N/P比が3~60である。
【0066】
核酸と、カチオン性脂質またはカチオン性リピドイド、例えばリポプレックス、LNP、またはリポソームとの複合体の形態での治療活性剤を含む、粒子製剤に含有され得る任意の成分として、ヘルパー脂質を挙げることができる。これらは、例えば、ステロール類(例としてコレステロールまたはデキサメタソン)、中性脂質(例としてDMPE、DOPE、DSPE、DPPE、DMPC、DOPC、DSPC、またはDPPC)、スフィンゴ脂質およびペグ化脂質(例としてDMG-PEG、DMPE-PEG、またはセラミド-PEG)の1つまたは複数から選択することができる。このようなヘルパー脂質は、単独で、またはその2つ以上の種類と組み合わせて使用され得る。また、カチオン性脂質またはリピドイドを含む治療活性剤の粒子状製剤用の賦形剤として有用なのは、ポリエチレングリコール(PEG)およびアルキレン単位のコポリマーである。
【0067】
このような複合体の形成に適した追加成分は、A.C. Silva et al., Current Drug Metabolism, 16, 2015, 3-16、およびそこで論議される文献において言及されている。
【0068】
好ましくは、核酸と、カチオン性脂質またはカチオン性リピドイドとの複合体を含む粒子製剤は、核酸の重量に対する脂質およびリピドイドの総重量(存在するあらゆるヘルパー脂質を含む)の比が、0.1~200、より好ましくは0.2~150、最も好ましくは0.5~100の範囲となるような量で、核酸を含有する。
【0069】
上記説明を鑑みて、本発明の文脈での使用のためのナノまたはマイクロ粒子製剤も好ましく、ここで、治療活性剤が、mRNAであり、mRNAが、カチオン性ポリマーもしくはオリゴマーとの複合体の形態、または、カチオン性脂質もしくはカチオン性リピドイドとの複合体の形態での粒子製剤に含まれることは明らかであろう。カチオン性賦形剤の適切で好ましい種類に関して、上記考察を継続して適用する。また、これら好ましい粒子製剤に対して、粒子製剤での粒子は、典型的には、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す。ナノまたはマイクロ粒子製剤での粒子の直径の上限値は、好ましくは20μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmである。
【0070】
治療活性剤の他に、粒子製剤は、治療剤の送達の間に、好ましくは細胞へ、および細胞内に治療剤としての核酸の送達の間に、1つまたは複数の任意の添加剤として、エフェクター機能を発揮させる1つまたは複数の成分を含むことができる。このような成分は、限定されないが、ポリアニオン、上述の脂質、カチオン性ペプチドのようなポリプレックスの形成のための上述のもの以外のさらなるポリカチオン、遮蔽オリゴマーまたはポリマー、ポロキサマー(プルロニックとしても公知)、ポロキサミン、標的化リガンド、エンドソーム溶解性(endosomolytic)薬剤、細胞透過性シグナルペプチド、磁性および非磁性ナノ粒子、RNAse阻害剤、蛍光色素、医療用イメージングのための放射性同位元素または造影剤であり得る。用語「エフェクター機能」は、生物学的標的でのもしくは生物学的標的内の、または生物学的標的の周囲の組成物の治療活性剤の意図した生物学的な効果を達成する助けとなる、任意の機能を包含する。例えば、核酸送達のための組成物は、スタッファ材としての非コード核酸または非核酸ポリアニオンを含むように製剤化されている(Kichler et al. 2005, J Gene Med, 7, 1459-1467)。このようなスタッファ材を含まない、より高用量の核酸で得られる効果の程度または度合いを維持しながら、意図した生物学的効果を有する核酸の用量を減らすのに、このようなスタッファ材は適している。非核酸ポリアニオンはまた、低い毒性での長期的なインビボでの遺伝子発現を得るために使用されている(Uchida et al. 2011, J Control Release, 155, 296-302)。核酸とカチオン性ポリマーまたはオリゴマーとの複合体を含む、本発明の粒子製剤はまた、リポポリプレックスの場合のような、カチオン性、アニオン性、または中性脂質を含むことができる(Li and Huang in "Nonviral Vectors for Gene Therapy", Academic Press 1999, Chapter 13, 295-303)。リポポリプレックスは、上記で示した式(II)または(III)に相当するポリマーから、上記で示した式(IV)に相当するリピドイドで、有利に調製することができる。さらに、本発明で使用される粒子製剤は、ポリプレックスの形成のための上述のもの以外のオリゴまたはポリカチオンを含むことができる。このような追加のポリカチオンは、核酸のコンパクションの所望の度合いを達成するのに有用であり得るか、または、ポリカチオンペプチドの場合に、先に記載された核局在化シグナル機能を有することができる(Ritter et al. 2003, J Mol Med, 81, 708-717)。ポリ(エチレングリコール)(PEG)のような遮蔽ポリマーは、本発明の文脈において使用される粒子製剤に含まれてもよく、例えば、生物学的環境(オプソニン化)における凝集および/または望まれない相互作用、例として血清成分、血液細胞または細胞外マトリックスとの相互作用に対して、核酸とカチオン性賦形剤との複合体を安定化するために頻繁に使用される。遮蔽はまた、核酸含有組成物の毒性を減らすのに適している可能性がある(Finsinger et al. 2000, Gene Ther, 7, 1183-1192)。例えば、PEGのような遮蔽ポリマーは、他のオリゴマーもしくはポリマー、または、粒子製剤中に存在し得る脂質もしくはリピドイドに直接、共有結合することができる。カップリングは、ポリマー骨格において、好ましくは、可能であれば、ポリマー骨格またはデンドリマーの末端に対して達成することができる。しかし、カップリングはまた、上述の式(1)~(4)、(II)、(III)、(IV)、または(a1)、(a2)、もしくは(b1)~(b4)のいずれか1つを含有するアミノ基に対して達成することができる。
【0071】
核酸とカチオン性賦形剤との複合体を含む粒子製剤に有用な成分であり得る、文献に記載された他の例示的な遮蔽ポリマーとして、ヒドロキシエチルデンプン(HES:Noga et al. Journal of Controlled Release, 2012. 159(1): 92-103)、PASポリペプチド(Pro、Ala、Serポリペプチド:Schlapschy et a. Protein Eng Des Sel. 2013 Aug;26(8):489-501)、またはポリサルコシン(Psar:Heller et al. Macromol Biosci 2014; 14: 1380-1395)が挙げられる。
【0072】
標的化リガンドは、例えば、標的細胞の優先的で改善されたトランスフェクションに対する、核酸送達のための粒子製剤において有用であり得る(Philipp and Wagner in "Gene and Cell Therapy - Therapeutic Mechanisms and Strategy", 3rd Edition, Chapter 15. CRC Press, Taylor & Francis Group LLC, Boca Raton 2009)。標的化リガンドは、本発明の組成物に、標的認識および/または標的結合機能を、直接的または間接的に付与する任意の化合物であり得る。例示的な標的化リガンドは、イロプロスト、またはトレプロスチニルのような、国際公開第2011/076391号パンフレットで開示されるプロスタサイクリン類似体である。抗体はまた、標的化リガンドとして作用することができる。ナノまたはマイクロ粒子のリガンドとして、葉酸およびN-アセチルガラクトサミンを挙げることができる。最も一般的な用語では、標的は、標的化リガンドが分子相互作用を介して特異的に結合することができる、明瞭な生物学的構造であり、このような結合は、最終的に、標的組織内、および/または標的細胞での、もしくは標的細胞内の組成物に含まれる、核酸のような治療剤の優先的な蓄積をもたらすであろう。PEG(またはHESおよびPSar)鎖と同様に、標的化リガンドは、例えば、ポリマー骨格またはデンドリマーの末端にカップリングすることができる。しかし、カップリングはまた、上述の式(1)~(4)、(II)、(III)、(IV)、または(a1)、(a2)、もしくは(b1)~(b4)のいずれか1つの基に対して達成することができる。
【0073】
さらに、エンドソーム溶解性ペプチドのようなエンドソーム溶解性薬剤(Plank et al. 1998, Adv Drug Deliv Rev, 34, 21-35)、またはエンドサイトーシスされた核酸のエンドソーム放出を向上させるのに適した任意の他の化合物は、本発明の組成物の有用な成分である。同様に、細胞透過性ペプチド(別の文脈ではタンパク質伝達ドメインとしても公知)(Lindgren et al. 2000, Trends Pharmacol Sci, 21, 99-103)は、核酸の細胞内送達を媒介するために、本発明の組成物の有用な成分であり得る。いわゆるTATペプチドは、このクラスに含まれ、核局在化機能も有する(Rudolph et al. 2003, J Biol Chem, 278, 11411-11418)。
【0074】
凍結保護添加剤
ナノまたはマイクロ粒子製剤に加える追加成分として、本発明による組成物は、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、凍結保護添加剤を含む。当業者に理解されるであろう通り、これらの置換されたアルカンは、直鎖または分岐アルカンであり得る。これらは、3~5個の炭素原子を有する。ヒドロキシ置換基の数によって、モノもしくはジアルコール、または、アルカノールもしくはアルカンジオールと称すことができる。
【0075】
好ましくは、凍結保護添加剤は、少なくとも1つの二級ヒドロキシ基(例えば、1つの二級ヒドロキシ基のみで他のヒドロキシ基はなし、または、1つの二級ヒドロキシ基および1つの一級ヒドロキシ基、または、2つの二級ヒドロキシ基)を含む。
【0076】
より好ましくは、凍結保護添加剤は、1,2-プロパンジオール、2-プロパノール、1,2-ブタンジオール、および1,3-ブタンジオールから選択される。最も好ましくは、凍結保護添加剤は、1,2-プロパンジオールである。
【0077】
組成物
上記の通り、本発明は、第一の態様として、懸濁組成物を、第二の態様として、固体組成物を提供し、各々は、上記でさらに詳述している、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および凍結保護添加剤を含む。
【0078】
本発明による組成物は、治療活性剤を含有し、患者への治療活性剤の投与に適しているので、治療組成物または医薬組成物と称すことができる。
【0079】
特に、本発明の第一の態様による懸濁組成物は、
(i)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含む。
【0080】
理解されるであろう通り、治療剤、その粒子製剤、および凍結保護添加剤の適切で好ましい実施形態に関する情報は、本文脈に継続して適用する。
【0081】
懸濁組成物は、好ましくは、治療活性剤を提供するような量で、粒子製剤の粒子を含み、粒子製剤中に、組成物の総体積を基準として、0.01~50mg/ml、より好ましくは0.02~30mg/mlの濃度で含有する。
【0082】
凍結保護添加剤は、好ましくは、0.5~50%w/v、より好ましくは1~40%w/v、最も好ましくは1~30%w/vの濃度で、懸濁組成物中に含有され、百分率値は、組成物の総体積の100ml当たりの凍結保護添加剤の重量gを示す。典型的には、凍結保護添加剤は、粒子製剤が懸濁されている液相に、含有され、好ましくは溶解される。しかし、これはまた、液相に懸濁されている粒子にも部分的に関連する可能性がある。
【0083】
本発明の第一の態様による懸濁組成物の液相は、典型的には、溶媒として水を含有する。好ましくは50体積%以上、より好ましくは70体積%以上(20℃での液相の総体積を基準として)は、水で構成される。より好ましくは、水および凍結保護添加剤は、液相に含有される唯一の溶媒である。
【0084】
液相の例示的な追加の任意の添加剤として、塩、糖、有機溶媒、および緩衝液から選択される1つまたは複数を挙げることができる。
【0085】
用語「懸濁されている」で示唆される通り、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤は、連続液相中に不連続な固相を形成する。
【0086】
一般に、懸濁組成物は、凍結保護添加剤を含み、任意でそこに溶解させる追加の添加剤と組み合わせた1つの連続液相と、そこで不連続固相として懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤との二相懸濁組成物として提供されるのが好ましい。
【0087】
第二の態様の固体組成物は、
(i)治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含み、
第一の態様による組成物を凍結することにより得られる。
【0088】
固体組成物は、凍結して固体組成物を得ることができる懸濁組成物と同じ成分を含有する。ゆえに、治療剤、その粒子製剤、凍結保護添加剤、ならびに、懸濁組成物を生成する液相およびその成分の適切で好ましい実施形態に関する情報は、固体組成物に対して継続して適用する。しかし、当業者に理解されるであろう通り、固体組成物および懸濁組成物は、懸濁組成物の液相が、固体組成物では凝固している点で異なる。その分、固体組成物は、凍結液体の連続固相における治療剤のナノまたはマイクロ粒子製剤の分散体を含有する。上記と一致して、凍結保護添加剤は、典型的には、粒子製剤が分散している連続層に含有される。
【0089】
上記の観点から、組成物がまた、(i)治療活性剤が、mRNAであり、mRNAが、カチオン性ポリマーもしくはオリゴマーとの複合体の形態、または、カチオン性脂質もしくはカチオン性リピドイドとの複合体の形態での粒子製剤に含まれる、ナノまたはマイクロ粒子製剤、ならびに(ii)凍結保護添加剤として、1,2-プロパンジオールを含む、本発明による懸濁組成物または固体組成物として好ましいことはさらに明らかであろう。カチオン性ポリマーまたはオリゴマーの適切で好ましい種類に関して、ならびにカチオン性脂質およびカチオン性リピドイドの好ましい種類に関して、上記考察を継続して適用する。また、これら好ましい組成物に対して、粒子製剤での粒子は、典型的には、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す。ナノまたはマイクロ粒子製剤での粒子の直径の上限値は、好ましくは20μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmである。
【0090】
薬学的な態様
本発明の第一の態様による懸濁組成物は、対象に、そこに含有される治療活性剤を投与するのに適している。上記で説明した通り、組成物は、他の凍結保護剤を含有する粒子組成物と比較して、凍結の間または凍結後の粒子の凝集を防ぎ、気道へ、または気道を介する投与、特に、経肺投与または経鼻投与に対する機能性を維持しながら、凍結状態を維持することができるという予想外の利点を有する。したがって、懸濁組成物の投与の好ましい経路は、気道へ、または気道を介する投与、特に、経肺投与または経鼻投与である。
【0091】
しかし、本発明による組成物がまた、例えば、凍結の間または凍結後の粒子凝集を凍結保護剤で防ぐ効果を利用するために、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤の分野で知られている投与の他の経路、例えば、懸濁液の形態での静脈内投与を介して投与することができることは、当業者には理解されよう。本文脈では、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンの存在が、とりわけ、治療剤が、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAであり、懸濁組成物が、静脈内投与のような代替的な経路を介して投与される場合、治療剤の効率における有益な効果を有する可能性があることが見出されている。
【0092】
治療活性剤が、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAである場合、核酸は、気道内の、または気道を介して標的細胞に送達されることができる。用語「標的細胞に送達される」とは、好ましくは、細胞内への、RNA、好ましくはmRNAのような一本鎖RNAの転移を意味する。
【0093】
組成物は、適した用量で対象に投与することができる。投与量レジメンは、担当医および臨床的要因により決定されるであろう。医療技術分野で周知であるであろう通り、任意の1つの対象に対する投与量は、対象のサイズ、対表面積、年齢、投与される粒子化合物、性別、投与の時間および経路、全身の健康、ならびに同時に投与している他の薬物を含む、多くの要因に依存する。治療的活性物質の典型的な用量は、例えば、1ng~数グラムの範囲であり得る。(m)RNA療法の好ましい場合に適用されるとき、発現または発現の阻害のための(m)RNAの投与量は、この範囲に相当すべきであるが、この例示的な範囲より少ないまたは多い用量は、とりわけ前述の要因を考慮して想定される。一般に、医薬組成物の定期的な投与としてのレジメンは、一日当たり、体重1キログラム当たりに0.01μg~10mg単位の範囲であるべきである。また、レジメンが持続注入である場合、それぞれ、体重1キログラム当たりに1μg~10mg単位の範囲でもあるべきである。経過は、定期的な評価によりモニタリングすることができる。投与量は、様々であるであろうが、本発明の組成物の構成成分としての(m)RNAの投与に関する好ましい投与量は、(m)RNA分子のおよそ10~1019コピーである。
【0094】
液体に懸濁されている粒子状組成物からエアゾール剤を形成するための、または、このような組成物を噴霧するためのデバイスは、当該技術分野で知られており、市販されている。本発明の第一の態様による懸濁組成物の、気道へ、または気道を介する投与、特に、経肺投与を達成するために、これらを使用することができる。鼻を介する投与に対して、例えば、鼻噴射デバイスまたは経鼻注入を使用することができる。
【0095】
ゆえに、本発明の一態様は、液体に懸濁されている粒子状組成物からエアゾール剤を形成するための、または、このような組成物を噴霧するためのデバイスであって、本発明による懸濁組成物を含む、デバイスに関する。デバイスは、好ましくは、定量吸入器、ネブライザー、および鼻噴射デバイスから選択される吸入器である。
【0096】
また、上記のデバイスで使用される本発明による組成物に対して、好ましい実施形態について上記で提供される情報は、継続して適用する。ゆえに、例えば、このようなデバイスで使用される好ましい懸濁組成物は、(i)治療活性剤が、mRNAであり、mRNAが、カチオン性ポリマーもしくはオリゴマーとの複合体の形態、または、カチオン性脂質もしくはカチオン性リピドイドとの複合体の形態での粒子製剤に含まれる、ナノまたはマイクロ粒子製剤、ならびに(ii)凍結保護添加剤として、1,2-プロパンジオールを含む。カチオン性ポリマーまたはオリゴマーの適切で好ましい種類に関して、ならびにカチオン性脂質およびカチオン性リピドイドの好ましい種類に関して、上記考察を継続して適用する。また、これらの好ましい組成物に対して、粒子製剤での粒子は、典型的には、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す。ナノまたはマイクロ粒子製剤での粒子の直径の上限値は、好ましくは20μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmである。
【0097】
上記で説明した通り、本発明による懸濁組成物は、調製し、凍結状態で保管し、解凍により回復した後、適宜的に投与することができる。しかし、本発明による懸濁組成物がまた、その調製後に直接投与することができると理解され、1つまたは2つのヒドロキシル基で置換されたC3~C5アルカンの存在が、新たに調製された組成物でも、とりわけ、治療剤が、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAである場合、治療剤の効率における有益な効果を有する可能性があることが見出されている。
【0098】
ゆえに、本発明はまた、疾患の処置または予防での使用のための、本発明による懸濁組成物であって、好ましくは、気道へ、または気道を介して投与される、懸濁組成物を提供する。より好ましくは、組成物は、経肺投与を介して、または経鼻投与を介して投与される。組成物を投与され得る患者は、動物およびヒトを含む。
【0099】
また、本発明により利用可能となるのは、上記の組成物を含有する治療活性剤に予防効果または治療効果をもたらすために、好ましくは気道へ、または気道を介する投与を介して、より好ましくは経肺投与または経鼻投与を介して、患者に本発明の懸濁組成物を投与することを含む、処置の方法である。また、本文脈では、用語「患者」とは、動物およびヒトを含む。
【0100】
また、疾患の処置または予防での使用のための本発明による組成物に対して、好ましい実施形態について上記で提供される情報は、継続して適用する。ゆえに、例えば、疾患の処置または予防での使用のための好ましい懸濁組成物は、(i)治療活性剤が、mRNAであり、mRNAが、カチオン性ポリマーもしくはオリゴマーとの複合体の形態、または、カチオン性脂質もしくはカチオン性リピドイドとの複合体の形態での粒子製剤に含まれる、ナノまたはマイクロ粒子製剤、ならびに(ii)凍結保護添加剤として、1,2-プロパンジオールを含む。カチオン性ポリマーまたはオリゴマーの適切で好ましい種類に関して、ならびにカチオン性脂質およびカチオン性リピドイドの好ましい種類に関して、上記考察を継続して適用する。また、これら好ましい組成物に対して、粒子製剤での粒子は、典型的には、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す。ナノまたはマイクロ粒子製剤での粒子の直径の上限値は、好ましくは20μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmである。
【0101】
上記の通り、投与は、組成物の調製後に直接達成することができるが、懸濁組成物を凍結し、少なくとも1回解凍した後に投与が達成される場合、凍結保護添加剤の効果は顕著である。
【0102】
本発明の懸濁組成物を投与することにより、疾患は、処置または予防することができる。用語「疾患」とは、本発明の組成物を利用することにより処置、予防またはワクチン接種することができる、考えられる任意の病理学的状態を指す。上記の疾患は、例えば、先天性、後天性、感染性もしくは非感染性、加齢性、心血管性、代謝性、腸内、新生物(特にがん)、または遺伝性であり得る。疾患は、例えば、例として生物の遺伝的器官、化学物質または放射線への曝露のような行動的、社会的または環境的な要因に同様に基づくことができる生物内の生理学的プロセス、分子プロセス、生化学反応の不規則さに基づくことができる。本発明による懸濁組成物は、肺疾患の処置または予防での使用に特に適している。
【0103】
上述の好ましい実施形態と一致して、治療活性剤が、RNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAである場合、本発明の懸濁組成物は、RNAに基づく療法で使用することができる。RNA分子、好ましくはmRNA分子は、タンパク質をコードする配列を含むので、RNA、好ましくはmRNAが、治療効果または予防効果を有する、治療的または薬学的に活性なポリペプチドまたはタンパク質をコードするRNAに基づく療法で使用することができる。ゆえに、好ましい実施形態では、本発明の懸濁組成物は、以下の表に記載の疾患の処置または予防において、RNAに基づく療法で使用することができる。したがって、本発明によるRNAに基づく療法は、以下の表に記載の疾患の処置または予防で使用することができる。
【0104】
ゆえに、本発明の懸濁組成物は、以下の表に記載の遺伝子欠陥が、次いで、本発明のRNA分子、好ましくはmRNA分子での転写物置換療法/酵素置換療法により処置または予防することができる疾患をもたらす場合、RNAに基づく療法で使用することができ、RNA分子は、開示される欠陥遺伝子を補償する無傷型のタンパク質またはその機能的な断片をコードする。
【0105】
他の実施形態では、本発明の懸濁組成物は、本発明によって、RNAに基づく療法で使用することができ、RNA、好ましくはmRNAは、治療効果または予防効果を有する、治療的または薬学的に活性なポリペプチド、タンパク質、またはペプチドをコードし、上記のポリペプチド、タンパク質、またはペプチドは、以下の表で概説する遺伝子によりコードされる群から選択される。
【0106】
本発明の懸濁組成物は、肺疾患の処置または予防において、RNAに基づく療法での使用に特に適している。例示的な疾患として、以下の表に記載の、アルファ-1-アンチトリプシン、喘息、嚢胞性線維症、サーファクタント代謝機能不全、または原発性線毛機能不全を挙げることができる。
【0107】
他の例示的な実施形態では、本発明の懸濁組成物は、リソソーム疾患、例えば、ゴーシェ病、ファブリー病、MPS I、MPS II(ハンター症候群)、MPS VIおよびグリコーゲン蓄積症、例としてI型グリコーゲン蓄積症(フォンギールケ病)、II型(ポンペ病)、III型(コーリ病)、IV型(アンダーセン病)、V型(マッカードル病)、VI型(ハース病)、VII型(タウリ病)、VII型、IX型、X型、XI型(ファンコニ-ビッケル症候群)、XI型、または0型の処置または予防において、RNAに基づく療法で使用することができる。転写物置換療法/酵素置換療法は、有益に、原因をなす遺伝子欠陥に影響を及ぼさないが、患者が不足している酵素の濃度を高める。例として、ポンペ病では、転写物置換療法/酵素置換療法は、欠損リソソーム酵素酸アルファ-グルコシダーゼ(GAA)を置換する。
【0108】
さらなる例によると、本発明によるRNAに基づく療法は、がん、心血管疾患、ウイルス感染、免疫機能不全、自己免疫疾患、神経学的障害、先天性代謝障害、もしくは遺伝性障害、または、細胞で産生されるタンパク質もしくはタンパク質断片が、本特許に関して有益な効果を有することができる任意の疾患の処置で使用することができる。がんの例として、頭頚部がん、乳がん、腎がん、膀胱がん、肺がん、前立腺がん、骨がん、脳がん、子宮頚部がん、肛門がん、結腸がん、結腸直腸がん、虫垂がん、眼のがん、胃がん、白血病、リンパ腫、肝がん、皮膚がん、卵巣がん、陰茎がん、膵がん、精巣がん、甲状腺がん、膣がん、外陰部がん、子宮内膜がん、心臓がん、および肉腫が挙げられる。心血管疾患の例として、アテローム性動脈硬化、冠動脈性心疾患、肺性心疾患、および心筋症が挙げられる。免疫機能不全および自己免疫疾患の例として、限定されないが、リウマチ性疾患、多発性硬化症、および喘息が挙げられる。ウイルス感染の例として、限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、ならびにB型およびC型肝炎ウイルスの感染が挙げられる。神経学的障害の例として、限定されないが、パーキンソン病、多発性硬化症、および認知症が挙げられる。先天性代謝障害の例として、限定されないが、ゴーシェ病、およびフェニルケトン尿症が挙げられる。
【0109】
【表1-1】
【0110】
【表1-2】
【0111】
【表1-3】
【0112】
【表1-4】
【0113】
【表1-5】
【0114】
【表1-6】
【0115】
【表1-7】
【0116】
【表1-8】
【0117】
調製の方法
本発明のさらなる態様は、上記の第一の態様による組成物の調製のための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を液相に添加すること
を含み、凍結保護添加剤の液相への添加が、液相に懸濁されている粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法に関する。
【0118】
ナノまたはマイクロ粒子を含む治療活性剤の粒子製剤の提供についての技術は、当該技術分野で確立されている。
【0119】
治療剤として核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAの粒子製剤を提供するための方法について、上記で論議される文献、例えば、A.C. Silva et al., Current Drug Metabolism, 16, 2015, 3-16、およびそこで参照される文献、J.C. Kasper et al., J. Contr. Rel. 151 (2011), 246-255、国際公開第2014/207231号パンフレット、およびそこで参照される文献、国際公開第2016/097377号パンフレット、およびそこで参照される文献、米国特許出願公開第2017/0267631号明細書、国際公開第2016/081029号パンフレット、国際公開第2011/071860号パンフレット、国際公開第2016/118697号パンフレット、米国特許第8450298号明細書、ならびに、E.R. Lee et al., Human Gene Therapy 7:1701-1717, September 10, 1996において、再び言及されている。
【0120】
カチオン性ポリマー、オリゴマー、脂質、またはリピドイド、例えば、ポリプレックス、リポプレックス、リポソーム、またはLNPとの複合体の形態での活性剤として、核酸、好ましくはRNA、より好ましくは一本鎖RNA、最も好ましくはmRNAを含有する、好ましい粒子製剤は、正帯電のオリゴマー、ポリマー、脂質、またはリピドイドとの、負帯電の核酸の自己集合を使用して、適宜的に形成することができる。
【0121】
自己集合は、成分の溶液を混合する際に起こり得る。自己集合は、例えば、ピペッティングおよび振とう/ボルテックスを使用する、もしくは、例えば、Hirotaら(Hirota et al. 1999, Biotechniques, 27, 286-290)、もしくはKasperら(Kasper et al. 2011, Eur J Pharm Biopharm, 77, 182-185)に記載されるようなマイクロ混合用の自動デバイスを使用する、手動での混合、または、Xuanら(Xuan et al. 2010, Microfluidics and Nanofluidics, 9, 1-16)に概説されるようなマイクロ流動集中により達成することができる。粒子製剤の粒子中に組み込まれる核酸、およびオリゴマー、ポリマー、脂質、またはリピドイドに加えて、追加成分を組み込むために、逐次的な混合を使用することができる。この場合、任意の追加成分は、オリゴマー、ポリマー、脂質、もしくはリピドイド、および核酸の自己集合の後に添加することができるか、または、混合する前にこれらのいずれかに添加することができる。
【0122】
例えば、ポリプレックスの形成は、水中に核酸を含有する溶液、および水中にカチオン性ポリマーまたはオリゴマーを含有する溶液を混合することで、適宜的に達成することができる。
【0123】
また、リポソームの形成には、確立した技術が利用可能である。これらは、例えば、必要な場合、例えば、脂質またはリピドイド膜のような、脂質またはリピドイド成分の再水和と、それに続く、例えば超音波処理または押出のようなホモジナイズ技術を含む。代替的な手法は、有機溶媒に溶解している脂質またはリピドイド成分の、水または水溶液への注入である。
【0124】
脂質ナノ粒子またはリポプレックスの形成のために信用することができる例示的な方法として、溶媒置換法を挙げることができる。
【0125】
ウイルスベクターに依存する粒子は、公知の生物学的方法により提供することができる。
【0126】
粒子製剤の調製のさらなる例として、治療活性剤を含む粒子は、任意で、マトリックス形成剤と組み合わせて、活性剤を含有する溶液を乳化することと、それに続いて、粒子を凝固させることにより形成することができる。凝固は、例えば、溶媒を、マトリックス形成剤を含有する、乳化している油相から除去することにより、または、マトリックスの形成のために成分を架橋もしくは重合することにより、達成することができる。また、リポソーム製剤の形成のための材料および方法は、当業者に知られている。
【0127】
凍結保護添加剤は、ナノまたはマイクロ粒子製剤を懸濁させたか、または懸濁液をもたらす液相に、適宜的に添加することができる。換言すると、凍結保護添加剤の液相への添加は、液相で懸濁されている粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる。
【0128】
本発明の第二の態様による固体組成物は、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を液相に添加すること
を含み、凍結保護添加剤の液相への添加が、液相に懸濁されている粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法により、上記の第一の態様による組成物を調製する、第一のステップ、
ならびに、第一のステップで得られる組成物を凍結する、第二のステップ
を含む、方法により調製することができる。
【0129】
第一のステップについて、懸濁組成物の調製について上記で提供される情報が、固体組成物の調製にも等しく適用されることが理解されよう。
【0130】
第二のステップとしての凍結するステップは、典型的には、適した容器で、懸濁組成物を、十分に冷たい温度(例えば、-10℃以下、好ましくは-20℃以下)に供することにより達成する。冷媒として、例えば、冷たい空気または冷たい液体を使用することができる。
【0131】
ところで、上記で説明した通り、本発明の第二の態様による固体組成物は、ナノ粒子またはマイクロ粒子を含有する治療活性剤の粒子製剤を保管することを可能にする組成物である。その分、本発明の第一の態様による懸濁組成物がまた、本発明の第二の態様による固体組成物から、固体組成物を解凍することにより回収することができることは理解されよう。
【0132】
ゆえに、さらなる態様として、本発明はまた、上記の第一の態様による組成物の調製のための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を液相に添加すること
を含み、凍結保護添加剤の液相への添加が、液相に懸濁されている粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法により、上記の第一の態様による組成物を調製する、第一のステップ、
第一のステップで得られる組成物を凍結する、第二のステップ
ならびに、第二のステップで得られる凍結した組成物を解凍する、第三のステップ
を含む、方法を提供する。
【0133】
方法および使用
さらに、本発明は、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を保存する方法であって、本発明の上記の第一の態様による組成物、すなわち、
(i)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含む、組成物を生成すること、
ならびに、組成物を凍結すること
を含む、方法を提供する。
【0134】
また、本発明の本態様について、液相、組成物をもたらすことが可能な方法、および、凍結するステップでの、治療剤、その粒子製剤、凍結保護添加剤の適切で好ましい実施形態に関して、上記で提供される情報は、継続して適用する。
【0135】
当業者に理解されるであろう通り、用語「保存」とは、本文脈では、治療活性剤の粒子製剤の関連する治療特性が、実質的な度合いに保持され、好ましくは、その保存期間で完全に保持されることを示す。粒子製剤を保存する方法は、典型的には、所望の期間にわたって、例えば、数時間、数日、数週、数か月、またはさらに数年にわたって、凍結した状態を保持しながらの、凍結した組成物の保管にさらに関連する。
【0136】
さらに別の態様として、本発明は、治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を含む組成物に対する凍結保護添加剤として、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される化合物の使用を提供する。
【0137】
また、本発明の本態様について、治療剤、その粒子製剤、および凍結保護添加剤の適切で好ましい実施形態に関して、上記で提供される情報は、継続して適用する。
【0138】
理解されるであろう通り、凍結保護添加剤としての使用は、組成物中の、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される化合物の、治療活性剤の粒子製剤との組合せに関連する。2つの成分が組み合わされる組成物は、本発明の第一の態様による組成物である。1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される化合物が、凍結保護剤として作用し得る、すなわち、粒子組成物の粒子を保護することができ、特に、気道へ、または気道を介する適用のためのその機能性が、著しい度合いで維持される、好ましくは完全に維持されることを確実にできるように、使用は、組成物の凍結にさらに関連する。
【0139】
本発明の重要な態様の概要は、以下の項目で提供される。例えば、さらに好ましい実施形態または任意の特徴に関して、本明細書の先行部分で提供される情報も以下の項目に適用するために、これらの項目が、本発明の一般的な開示の部分を形成することが理解されよう。
【0140】
1.(i)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含む、組成物。
【0141】
2.治療活性剤が、核酸である、項目1に記載の組成物。
【0142】
3.核酸が、RNAである、項目2に記載の組成物。
【0143】
4.RNAが、mRNAである、項目3に記載の組成物。
【0144】
5.ナノまたはマイクロ粒子製剤が、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す、項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【0145】
6.ナノまたはマイクロ粒子製剤での粒子が、20μm、より好ましくは10μm、最も好ましくは5μmの最大粒径を有する、項目1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【0146】
7.ナノまたはマイクロ粒子製剤が、粒子製剤中の粒子の総重量に対する治療活性剤の重量として表される、活性負荷を有し、それが、0.1~95%、より好ましくは0.5~90%、最も好ましくは1~80%の範囲である、項目1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【0147】
8.治療活性剤が、核酸であり、ナノまたはマイクロ粒子製剤の粒子が、核酸およびカチオン性賦形剤を含む、項目2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【0148】
9.粒子製剤の粒子が、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性オリゴマーまたはカチオン性ポリマーとで形成される複合体の形態で核酸を含む、項目8に記載の組成物。
【0149】
10.複合体が、核酸、および、アミノ基を含有する複数の単位を含む、カチオン性オリゴマーまたはポリマーにより形成される、項目9に記載の組成物。
【0150】
11.カチオン性オリゴマーまたはポリマーでのアミン窒素原子Nの数と核酸でのリン酸基Pの数とのN/P比が、1~100、より好ましくは2~80、最も好ましくは3~60の範囲である、項目10に記載の組成物。
【0151】
12.カチオン性ポリマーが、以下の(1)、(2)、(3)、および(4):
【0152】
【化7】
から独立して選択される複数の単位を含み、
繰返し単位(1)、(2)、(3)、および/または(4)の窒素原子の1つまたは複数が、プロトン化して、ポリマーのカチオン性電荷をもたらすことができる、
項目10または11に記載の組成物。
【0153】
13.粒子製剤の粒子が、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性脂質またはカチオン性リピドイドとで形成される複合体の形態で核酸を含む、項目8に記載の組成物。
【0154】
14.粒子製剤の粒子が、リポプレックス、リポソーム、または脂質ナノ粒子を含む、項目13に記載の組成物。
【0155】
15.粒子製剤の粒子が、ステロール、中性脂質、スフィンゴ脂質、およびペグ化脂質から選択される、1つまたは複数のヘルパー脂質をさらに含む、項目13または14に記載の組成物。
【0156】
16.核酸の重量に対する脂質およびリピドイドの総重量の比が、0.1~200、より好ましくは0.2~150、最も好ましくは0.5~100の範囲である、項目13から15のいずれか一項に記載の組成物。
【0157】
17.凍結保護添加剤が、少なくとも二級ヒドロキシ基を含む、項目1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【0158】
18.凍結保護添加剤が、1,2-プロパンジオール、2-プロパノール、1,2-ブタンジオール、および1,3-ブタンジオールから選択される、項目17に記載の組成物。
【0159】
19.凍結保護添加剤が、1,2-プロパンジオールである、項目17に記載の組成物。
【0160】
20.凍結保護添加剤が、液相の体積を基準として、0.5~50%w/v、より好ましくは1~40%w/v、最も好ましくは1~30%w/vの濃度で含有される、項目1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【0161】
21.治療活性剤を提供するような量で、ナノまたはマイクロ粒子製剤の粒子を含み、粒子製剤中に、組成物の総体積を基準として、0.01~50mg/ml、より好ましくは0.02~30mg/mlの濃度で含有する、項目1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【0162】
22.水および凍結保護添加剤が、液相に含有される唯一の溶媒である、項目1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【0163】
23.(i)治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含み、項目1から22のいずれか一項に記載の組成物を凍結することにより得られる、固体組成物。
【0164】
24.項目1から22のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を液相に添加すること
を含み、凍結保護添加剤の液相への添加が、液相に懸濁されている粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法。
【0165】
25.項目23に記載の固体組成物を調製するための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を液相に添加すること
を含み、凍結保護添加剤の液相への添加が、液相に懸濁されている粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法により、上記の第一の態様による組成物を調製する、第一のステップ、
ならびに、第一のステップで得られる組成物を凍結する、第二のステップ
を含む、方法。
【0166】
26.治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を保存する方法であって、項目1から22のいずれか一項に記載の懸濁組成物を生成すること、および組成物を凍結することを含む、方法。
【0167】
27.治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を含む組成物に対する凍結保護添加剤として、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される化合物の使用。
【0168】
28.液体に懸濁されている粒子状組成物からエアゾール剤を形成するための、または、このような組成物を噴霧するためのデバイスであって、項目1から22のいずれか一項に記載の組成物を含む、デバイス。
【0169】
29.定量吸入器、ネブライザー、および鼻噴射デバイスから選択される吸入器である、項目28に記載のデバイス。
【0170】
30.処置の方法であって、好ましくは気道へ、または気道を介する投与を介して、より好ましくは経肺投与または経鼻投与を介して、患者に項目1から22のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0171】
31.疾患の処置または予防での使用のための、項目1から22のいずれか一項に記載の組成物であって、気道へ、または気道を介して投与される、組成物。
【0172】
32.経肺投与を介して、または経鼻投与を介して投与される、項目31に記載の使用のための組成物。
【0173】
33.治療活性剤が、RNAであり、より好ましくはmRNAである、RNAに基づく療法を介する疾患の処置または予防での使用のための、項目31または32に記載の組成物。
【0174】
34.処置または予防される疾患が、肺疾患である、項目31から33のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【実施例
【0175】
略語
【0176】
【表2】
【0177】
[実施例I]
ナノまたはマイクロ粒子製剤のための凍結保護添加剤としての、異なるクラスの分子のスクリーニング。
複合体形成
分岐ポリ(エチレンイミン)(brPEI)とルシフェラーゼをコードするmRNAとの複合体を、0.25mg/mLの最終濃度で形成した。標準的な混合法で、mRNAを水で希釈して、0.5mg/mLの濃度にした。同じ体積のbrPEI溶液を、水中で0.65mg/mLの濃度で調製した。ナノまたはマイクロ粒子を、電子式ピペット(Mettler-Toledo、E4 LTS 1000μL)を使用して、mRNA溶液をbrPEI溶液に注入し、続いて混合することにより形成した。混合後、複合体を、使用前に氷上で20分間インキュベートした。
【0178】
サイズ測定
粒径を決定するために、100μLの粒子の懸濁液を、キュベット(Brand、UV-cuvette Micro)に充填し、Malvern ZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments)を使用して測定し、nm単位で、流体力学的直径および平均流体力学的直径(z平均)を得た。懸濁媒体として、示した通り、水、または凍結保護添加剤を含有する水を使用した。
【0179】
凍結-解凍チャレンジ
製剤を、2×(20/10/2%)添加剤溶液(表1)で1:2希釈し、二重に分割した。得られた各製剤の1つのサンプルを、添加剤の存在下で、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用した。残りのサンプルを-20℃で16時間凍結し、室温で解凍し、溶液が室温に達する前に直ちに氷上で保管した。解凍した各製剤を、次いで、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用し、以下の等式にしたがって、凍結前と解凍後の製剤の%サイズずれについて比較した。dは、z平均粒径を示す。
【0180】
【数1】
【0181】
トランスフェクションおよびルシフェラーゼ活性アッセイ
A549細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS)および1%のペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を添加したMEM培地で、37℃、5%のCOで培養した。細胞を、トランスフェクションの24時間前に、96ウェルプレートでの100μL培地に、20000細胞/ウェルで播種した。トランスフェクションの日に、培地を、FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含まないMEMで置き換え、続いて、二重に、60μL/ウェルに複合化したmRNAを添加した。トランスフェクションの4時間後、培地を、10%のFBSおよび1%のP/Sを伴うMEMで置き換えた。プレートを、37℃、5%のCOで24時間インキュベートした。インキュベートの24時間後、培地を除去し、細胞を、100μLの溶解緩衝液(25mMのトリスHCl、0.1%のTritonX-100、pH7.8)に溶解し、600rpmで30分間、プレート振とう機でインキュベートした。次に、各ウェルから50μLの細胞溶解物を、96ウェルプレートに移し、リポーターホタルルシフェラーゼの活性を、ルシフェリン緩衝液(0.47mMのD-ルシフェリン、0.27mMの補酵素A、3.33mMのDTT、0.53mMのATP、1.1mMのMgCO、2.7mMのMgSO、20mMのトリシン、0.1mMのEDTA)の添加後、Tecan Infinite 200 PROでの生物発光強度により測定した。
【0182】
インビボ実験用のサンプル調製
複合体を、以下の変更を加えた上で、「複合体形成」および「凍結-解凍チャレンジ」に記載の通りに調製した。4mLの複合体溶液を、0.5mg/mLのmRNA濃度で調製し、二倍濃縮した添加剤溶液で1:2希釈して、0.25mg/mLの最終mRNA濃度を得た(8mL)。サンプルを、動物への噴霧まで凍結したままにした。
【0183】
噴霧
動物を、Buxco Small Size Mass Dosing Chamber(Data Sciences International、Germany)に設置した。製剤を、室温で解凍し、室温に達する前に砕氷上に置き、次いで、空気循環速度3L/分、デューティーサイクル100%で、Aeroneb Solo Nebulizer(Aeroneb、Germany)を使用して噴霧した。
【0184】
外植した肺での生物発光測定
適用の24時間後、動物を、フェンタニル/ミダゾラム/メデトミジン(0.05/5.0/0.5mg/kg BW)の腹腔内注射を通して、十分な麻酔下に置いた。50μLのD-ルシフェリン(リン酸緩衝化生理食塩水中に溶解して30mg/mL、pH7)を、吸引経路(鼻孔に直接適用した後の溶液の吸入)を介して適用し、100μLのD-ルシフェリンを、腹腔内注射により全身に適用した。ルシフェリン投与の10分後、マウスを、頸椎脱臼により安楽死させた。右心を介したPBSでの潅流後、肺を外植した。生物発光を、ビンニング設定を8にし、曝露時間5分で、Xenogen IVIS Luminar XR(Caliper LifeSciences)を使用して測定した。生物発光を定量化し、Living Image Software4.4(Xenogen)を使用して分析した。過飽和した画像(線形範囲外の発現の検出)の場合、曝露時間を1分に減らした。生物発光を、器官当たりの全光束(光子/秒)として測定した。過飽和の見られない画像のみを、分析に使用した。肺を、急速に凍結し、-80℃で保管した。
【0185】
ホモジナイズした肺でのルシフェラーゼ活性
解凍した器官を秤量し、外植した肺の片方を、FastPrep°-24Homogenisator(MP Biomedicals)を使用して、溶解緩衝液でホモジナイズした。100μLのルシフェリン緩衝液を、75μLの遠心分離した溶解物に、Lumat LB 9507 Luminometer(Berthold Technologies)により自動的に添加した。ルシフェラーゼ活性を、RLU/秒で測定し、RLU/器官に変換した。
【0186】
結果
1回の凍結-解凍サイクル後のポリマー/mRNA製剤の粒子凝集を防ぐ能力を、当該技術分野で、凍結保護添加剤として確立した化合物を含む、様々な種類の添加剤に対して示した。1,2-プロパンジオールを使用する組成物は、本発明による組成物であり、他の組成物は、参考組成物である。流体力学的粒径は、凍結前に評価した。-20℃で16時間後、製剤を解凍し、流体力学的粒径を再び測定した。凍結前、および解凍後の粒子間のサイズ差は、表1bに表示する。高い数値は、サイズの大幅な増加を示し、それゆえ、凝集を示す。
【0187】
【表3】
【0188】
【表4-1】
【0189】
【表4-2】
【0190】
【表5】
【0191】
100%超のサイズ増加(100%は、2倍の直径に相当する)を、凝集プロセスとして定義した。この閾値未満のサイズ差をもたらす添加剤を選択して、1回の凍結-解凍サイクル後、A549細胞でのトランスフェクション効率に対して、インビトロで試験した(図1および表3)。糖は、インビトロで試験しなかった。
【0192】
図1は、A549細胞での添加剤を含有するbrPEI/FLuc mRNA N/P10製剤のトランスフェクション効率を示す。
【0193】
【表6】
【0194】
集計データから、全ての添加剤が、トランスフェクション効率を維持し、それゆえ、選択されて、マウスへの噴霧により試験したことが理解できる。ホタルルシフェラーゼをコードする2mgのmRNAを含有する8mLの複合体溶液を、BALB/cマウスの群に噴霧した(n=3)。処置の24時間後、マウスを安楽死させた。mRNA送達の効率を、切除した器官(Ivisによる)ならびに器官ホモジネートでの、ルシフェラーゼ活性の定量化を介して分析した(図2および表4を参照のこと)。利用したmRNA/ポリマー/1,2-プロパンジオールの重量比は、表5で報告されている。
【0195】
図2は、1回の凍結-解凍サイクル後、噴霧を介して適用されるbrPEI/mRNA製剤のインビボでのトランスフェクション効率を示す。
【0196】
N/P10および0.25mg/mLでbrPEI 25kDaと複合化した2mgのFLuc mRNAを、示した添加剤の存在下で、1回の凍結-解凍サイクル後にマウスに噴霧した。参考として、一群を、添加剤を添加しないで新規に調製された粒子で処置した。10%のPEG4kまたはPEG10kを含有する高粘度の製剤は、Aeronebネブライザーによる噴霧を妨げた。n=3。
【0197】
【表7】
【0198】
【表8】
【0199】
考察および結論
1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール、PG)は、粒子凝集を防ぐ添加剤として同定されており、新規に製剤化されたbrPEI/mRNAナノまたはマイクロ粒子と比較して、1回の凍結-解凍サイクルに続く、インビボでの噴霧後の製剤のトランスフェクション効率を維持する。
【0200】
[実施例II]
ナノまたはマイクロ粒子に対する凍結保護剤として、1,2-プロパンジオールに構造的に関連する、異なる添加剤の比較。
複合体形成
分岐ポリ(エチレンイミン)(brPEI)とルシフェラーゼをコードするmRNAとの複合体を、0.25mg/mLの最終濃度で形成した。標準的な混合法で、mRNAを水で希釈して、0.5mg/mLの濃度にした。同じ体積のbrPEI溶液を、水中で0.65mg/mLの濃度で調製した。ナノ粒子を、電子式ピペット(Mettler-Toledo、E4 LTS 1000μL)を使用して、mRNA溶液をbrPEI溶液に注入し、続いて混合することにより形成した。混合後、複合体を、使用前に氷上で20分間インキュベートした。
【0201】
サイズ測定
粒径を決定するために、100μLの粒子の懸濁液を、キュベット(Brand、UV-cuvette Micro)に充填し、Malvern ZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments)を使用して測定し、nm単位で、流体力学的直径および平均流体力学的直径(z平均)を得た。懸濁媒体として、示した通り、水、または凍結保護添加剤を含有する水を使用した。
【0202】
凍結-解凍チャレンジ
製剤を、2×(20/10/2%)添加剤溶液(表6)で1:2希釈し、二重に分割した。いくつかの添加剤の溶解度が限られていたので、以下の物質を、低下させた濃度で試験した(表6を参照のこと):2-メチル-1,4-ブタンジオール、ペンタエリスリトール。得られた各製剤の1つのサンプルを、添加剤の存在下で、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用した。残りのサンプルを-20℃で16時間凍結し、室温で解凍し、溶液が室温に達する前に直ちに氷上で保管した。解凍した各製剤の1つのサンプルを、次いで、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用し、以下の等式にしたがって、凍結前と解凍後の製剤の%サイズずれについて比較した。dは、z平均粒径を示す。
【0203】
【数2】
【0204】
インビボ実験用のサンプル調製
複合体を、以下の変更を加えた上で、「複合体形成」および「凍結-解凍チャレンジ」に記載の通りに調製した。4mLの複合体溶液を、0.5mg/mLの濃度で調製し、二倍濃縮した添加剤溶液で1:2希釈して、0.25mg/mLの最終mRNA濃度を得た(8mL)。サンプルを、動物への噴霧まで凍結したままにした。
【0205】
噴霧
動物を、Buxco Small Size Mass Dosing Chamber(Data Sciences International、Germany)に設置した。製剤を、室温で解凍し、室温に達する前に砕氷上に置き、次いで、空気循環速度3L/分、デューティーサイクル100%で、Aeroneb Solo Nebulizer(Aeroneb、Germany)を使用して噴霧した。
【0206】
外植した肺での生物発光測定
適用の24時間後、動物を、フェンタニル/ミダゾラム/メデトミジン(0.05/5.0/0.5mg/kg BW)の腹腔内注射を通して、十分な麻酔下に置いた。50μLのD-ルシフェリン(リン酸緩衝化生理食塩水中に溶解して30mg/mL、pH7)を、吸引経路(鼻孔に直接適用した後の溶液の吸入)を介して適用し、100μLのD-ルシフェリンを、腹腔内注射により全身に適用した。ルシフェリン投与の10分後、マウスを、頸椎脱臼により安楽死させた。右心を介したPBSでの潅流後、肺を外植した。生物発光を、ビンニング設定を8にし、曝露時間5分で、Xenogen IVIS Luminar XR(Caliper LifeSciences)を使用して測定した。生物発光を定量化し、Living Image Software4.4(Xenogen)を使用して分析した。過飽和した画像(線形範囲外の発現の検出)の場合、曝露時間を1分に減らした。生物発光を、器官当たりの全光束(光子/秒で)として測定した。過飽和の見られない画像のみを、分析に使用した。肺を、急速に凍結し、-80℃で保管した。
【0207】
ホモジナイズした肺でのルシフェラーゼ活性
器官を秤量し、外植した肺の片方を、FastPrep°-24Homogenisator(MP Biomedicals)を使用して、溶解緩衝液でホモジナイズした。100μLのルシフェリン緩衝液を、75μLの遠心分離した溶解物に、Lumat LB 9507 Luminometer(Berthold Technologies)により自動的に添加した。ルシフェラーゼ活性を、RLU/秒で測定し、RLU/器官に変換した。
【0208】
結果
実施例Iは、1,2-プロパンジオールが、インビボでの活性を維持しながら、凍結中のナノまたはマイクロ粒子凝集を防ぐのに対して、グリセロール(化学的類似性を有する分子)は、インビボでの活性を維持せずに、凍結中の凝集を防ぐことを示す。この試験の結果は、1,2-プロパンジオールと構造的に関連するC3~C5アルカノールおよびアルカンジオールが、1回の凍結-解凍チャレンジの間の凝集を防ぐことができ、続く噴霧後のトランスフェクション効率を維持することができることを示す。複合体を形成し、添加剤溶液(水中)で混合して、表6に列挙している最終添加剤濃度を得た。
【0209】
粒子の流体力学的直径を、-20℃で凍結する前に測定した。16時間後、全ての製剤を解凍し、粒径を再び測定した。凍結前対解凍後の%サイズずれは、表6bに表示する。高い数値は、サイズの大きな増加を示し、それゆえ、凝集を示す。
【0210】
【表9】
【0211】
【表10】
【0212】
100%超の粒子サイズの変化(100%は、2倍の直径に相当する)を、凝集プロセスとして定義した。この閾値未満の%サイズずれをもたらす添加剤を選択して、マウスへの噴霧により試験した(図3および表7)。
【0213】
図3は、1回の凍結-解凍サイクル後の、brPEI/mRNA製剤のインビボでのトランスフェクション効率を示す。
【0214】
N/P10および0.25mg/mLでbrPEI 25kDaと複合化した2mg/8mLのFLuc mRNAを、示した添加剤の存在下で、1回の凍結-解凍サイクル後にマウスに噴霧した。処置の24時間後、マウスを麻酔し、肺を外植し、ホモジナイズし、ルシフェラーゼ活性を測定した。n=3。
【0215】
【表11】
【0216】
考察および結論
この研究では、1,2-プロパンジオールと構造的に関連するアルカノール/アルカンジオールが、1回の凍結-解凍サイクル後、マウス肺への噴霧の後の複合体のトランスフェクション効率を維持する能力を有することが実証されている。粒子の凝集または障害が、非機能性製剤をもたらすので、最初に、生物物理学的特性を、凍結前、および1回の凍結-解凍サイクル後に分析した。実施例Iからの知見が、1,2-プロパンジオールおよびグリセロールが粒子サイズを保存するので、再現され得た。先の研究ですでに実証されているように、粒子サイズの保存により、マウスへの噴霧の後に、機能性粒子は自動的に得られなかった。
【0217】
[実施例III]
様々なmRNA濃度、および/または様々なN/P比での凍結製剤。
複合体形成
分岐(ポリエチレンイミン)(brPEI)、P7(直鎖(ポリエチレンイミン-co-プロピレンイミン)、MW:20kDa)、またはP12(直鎖(ポリエチレンイミン-co-プロピレンイミン)、MW:24kDa)と、ルシフェラーゼをコードするmRNAとの複合体を、0.25mg/mLの濃度で形成した。標準的な混合法で、mRNAを希釈して、水中で0.5mg/mLの濃度にした。同じ体積のポリマー溶液を、水中で0.65mg/mLの濃度で調製した。ナノ粒子を製剤化するために、電子式ピペット(Mettler-Toledo、E4 LTS 1000μL)を使用して、mRNA溶液をbrPEI溶液に注入し、続いて混合した。混合後、複合体を、使用前に氷上で20分間インキュベートした。
【0218】
製剤の濃度
使用前に、Amicon(登録商標)Ultra-15遠心ろ過ユニット(Merck Millipore、PLHK Ultracel-PL膜、100kDa分画分子量)の膜を、15mLの水(500×g)で洗浄した。次いで、ポリプレックス製剤を、ろ過ユニットに移し、500×g、4℃で遠心分離した。5分間隔で、過濃縮を避けるために流体レベルを確認し、溶液を1mLのピペットで完全に混合した。各間隔で、サンプル濃度を、核酸濃度の分光光度的評価によりモニタリングした(A260)。この方法を、所望の濃度に達するまで繰り返した。
【0219】
サイズ測定
粒径を決定するために、200μLの粒子の懸濁液を、キュベット(Brand、UV-cuvette Micro)に充填し、Malvern ZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments)を使用して測定し、nm単位で、流体力学的直径および平均流体力学的直径(z平均)を得た。懸濁媒体として、示した通り、水、または凍結保護添加剤を含有する水を使用した。
【0220】
凍結-解凍チャレンジ
ポリプレックスサイズの最初の決定(Malvern Zetasizer NanoZS)の後、製剤を、96ウェル薄型PCRプレート(透明、RNAseおよびDNaseを含まない)に分散させ、2×(20/10/2%)添加剤溶液(表1)で1:2希釈した。得られた各製剤の1つのサンプルを、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用した。残りのサンプルを-20℃で約16時間凍結し、室温で解凍し、溶液が室温に達する前に直ちに氷上で保管した。解凍した各製剤の1つのサンプルを、次いで、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用し、以下の等式にしたがって、凍結前と解凍後の製剤の%サイズずれについて比較した。dは、z平均粒径を示す。
【0221】
【数3】
【0222】
結果
ナノまたはマイクロ粒子用の凍結保護剤として作用する、請求に係るクラスの同定された分子の能力もまた、高いmRNA濃度および/または低いN/P比で、この実験において示された。この目的のため、1,2-プロパンジオールを、代表的な添加剤として選んだ。表8は、異なるmRNA濃度(0.25、1.1または2.3mg/mL)および異なるN/P比(N/P4または10)で凍結した複合体の凍結前対解凍後の%粒子サイズずれを示す。利用したmRNA/ポリマー/1,2-プロパンジオールの重量比は、表9で報告されている。
【0223】
【表12】
【0224】
データは、試験した全ての条件で、添加剤を使用して凝集を避けたことを示す。
【0225】
【表13】
【0226】
考察および結論
実施例IIIは、粒子サイズが、凍結の間、mRNA比ならびにmRNA濃度に対して、ポリマーから独立して維持することができることを実証する。
【0227】
[実施例IV]
異なるポリカチオン(混合前に添加)に対する同定された添加剤の凍結保護的性質
複合体形成
3つの異なるポリマー構造体:分岐ポリ(エチレンイミン)(brPEI、25kDa)、直鎖ポリ(エチレンイミン-プロピレンイミン)(P7、20kDa)、または直鎖ポリ(エチレンイミン-プロピレンイミン)(P12、24kDa)を使用して、カチオン性ポリマーとルシフェラーゼをコードするmRNAとの複合体を形成した。
【0228】
P7およびP12は、以下の構造の直鎖ポリ(エチレンイミン-プロピレンイミン)ポリマーである。
【0229】
【化8】
【0230】
合成:
乾燥2-エチル-2-オキサゾリンと乾燥2-エチル-2-オキサジンとの混合物を、アセトニトリル中でトリフル酸メチルと組み合わせた。130℃、窒素雰囲気下で30時間、重合を行った。重合を、水を加えて停止し、130℃で3時間、インキュベートした。ポリマーは、冷たいジエチルエーテル中、3回の沈殿ステップにより得た。加水分解のために、ポリマーを、濃塩酸に溶解し、130℃で30時間、インキュベートした。ポリマー溶液のpHを、NaOHでpH10に調節した。精製を脱イオン水に対する透析を介して行い、続いて凍結乾燥を行った。2-エチル-2-オキサゾリンの2-エチル-2-オキサジンに対する比の変更により、得られるエチレンイミン(C2)対プロピレンイミン(C3)の比を、ポリマー内で変更することができる。トリフル酸メチルの使用量と共に、分子量を制御することができる。
【0231】
得られるポリマーは、以下の特性を有した。
【0232】
【表14】
【0233】
複合体を、3つの異なるN/P比、4、6、および10で0.25mg/mLの最終濃度で混合した。標準的な混合法で、mRNAを水中で希釈して、0.5mg/mLの濃度にした。同じ体積のポリマー溶液を、20%または10%(w/v)の1,2-プロパンジオールを含有する水中で調製した(濃度は表10を参照のこと)。ナノ粒子を、電子式ピペット(Mettler-Toledo、E4 LTS 1000μL)を使用して、mRNA溶液をポリマー溶液に注入し、続いて混合することにより形成した。混合後、複合体を、使用前に氷上で20分間インキュベートした。
【0234】
【表15】
【0235】
サイズ測定
粒径を決定するために、100μLの粒子の懸濁液を、キュベット(Brand、UV-cuvette Micro)に充填し、Malvern ZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments)を使用して測定し、nm単位で、流体力学的直径および平均流体力学的直径(z平均)を得た。懸濁媒体として、示した通り、水、または凍結保護添加剤を含有する水を使用した。
【0236】
凍結-解凍チャレンジ
得られた各製剤の1つのサンプルを、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用した。残りのサンプルを-20℃で16時間凍結し、室温で解凍し、溶液が室温に達する前に直ちに氷上で保管した。解凍した各製剤の1つのサンプルを、次いで、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用し、以下の等式にしたがって、凍結前と解凍後の製剤の%サイズずれについて比較した。
【0237】
【数4】
【0238】
インビボ実験用のサンプル調製:
複合体を、N/P4、8mLの体積で、「複合体形成」および「凍結-解凍チャレンジ」に記載の通りに調製した。サンプルを、動物への噴霧まで凍結したままにした。
【0239】
噴霧
動物を、Buxco Small Size Mass Dosing Chamber(Data Sciences International、Germany)に設置した。製剤を、室温で解凍し、室温に達する前に砕氷上に置き、次いで、空気循環速度3L/分、デューティーサイクル100%で、Aeroneb Solo Nebulizer(Aeroneb、Germany)を使用して噴霧した。
【0240】
外植した肺での生物発光測定
適用の24時間後、動物を、フェンタニル/ミダゾラム/メデトミジン(0.05/5.0/0.5mg/kg BW)の腹腔内注射を通して、十分な麻酔下に置いた。50μLのD-ルシフェリン(リン酸緩衝化生理食塩水中に溶解して30mg/mL、pH7)を、吸引経路(鼻孔に直接適用した後の溶液の吸入)を介して適用し、100μLのD-ルシフェリンを、腹腔内注射により全身に適用した。ルシフェリン投与の10分後、マウスを、頸椎脱臼により安楽死させた。右心を介したPBSでの潅流後、肺を外植した。生物発光を、ビンニング設定を8にし、曝露時間5分で、Xenogen IVIS Luminar XR(Caliper LifeSciences)を使用して測定した。生物発光を定量化し、Living Image Software4.4(Xenogen)を使用して分析した。過飽和した画像(線形範囲外の発現の検出)の場合、曝露時間を1分に減らした。生物発光を、器官当たりの全光束(光子/秒で)として測定した。過飽和の見られない画像のみを、分析に使用した。肺を、急速に凍結し、-80℃で保管した。
【0241】
ホモジナイズした肺でのルシフェラーゼ活性
器官を秤量し、外植した肺の片方を、FastPrep°-24Homogenisator(MP Biomedicals)を使用して、溶解緩衝液でホモジナイズした。100μLのルシフェリン緩衝液を、75μLの遠心分離した溶解物に、Lumat LB 9507 Luminometer(Berthold Technologies)により自動的に添加した。ルシフェラーゼ活性を、RLU/秒で測定し、RLU/器官に変換した。
【0242】
結果
実施例I~IIIは、分岐ポリ(エチレンイミン)で形成される粒子のみの異なる条件において、インビボでの効率を維持しながら、凝集を防ぐことに対する添加剤の効率を実証する。これら添加剤の機能性が、ポリマー特性から独立していることを実証するために、異なる種類のポリマーを試験した。1,2-プロパンジオールを、例示的な添加剤として選んだ。ポリマーは、分岐の種類(分岐および直鎖)、分子量(20kDa、24kDa、および25kDa)、モノマー組成(ポリ(エチレンイミン)、およびポリ(エチレンイミン-プロピレンイミン))、ならびにN/P比(4、6、および10)において変化した。選ばれたポリマーは、噴霧後の機能性がすでに証明されている。2つの異なる添加剤濃度に対して、凍結前と解凍後の粒子の%サイズずれの結果を、表10におけるサイズずれとして示す。N/P比(N/P4)もまた、インビボでの機能性に対して試験した。効率データの概要は、図4ならびに表13で得られる。利用したmRNA/ポリマー/1,2-プロパンジオールの重量比は、表12および表14bで報告されている。
【0243】
【表16】
【0244】
【表17】
【0245】
図4は、濃縮したポリマー/mRNA製剤のインビボでのトランスフェクション効率を示す。
【0246】
N/P4でbrPEI 25kDa/P7/P12と複合化した、ホタルルシフェラーゼをコードする2mgのmRNAを、示した添加剤の存在下で、新規の調製(0.25mg/mLのmRNA;8mL/群)、または1回の凍結-解凍サイクル(1mg/mLのmRNA;2mL/群)のいずれかの後でマウスに噴霧した。処置の24時間後、マウスを麻酔し、肺を外植した。ルシフェラーゼ活性を、肺ホモジネートにおいて測定した。n=3。
【0247】
【表18】
【0248】
【表19】
【0249】
【表20】
【0250】
考察および結論
この実験で示される通り、1,2-プロパンジオールの安定化効果は、ポリマーの分岐の種類、分子量、モノマー組成、ならびにN/P比から独立している。これら全てのパラメータの変化により、1回の凍結-解凍チャレンジの後に、無傷の複合体が得られる。加えて、肺内適用後のこれら複合体の機能性は、インビボでの実験で実証された。リポータータンパク質の発現レベルについて、5%または10%の1,2-プロパンジオール中で凍結した同じ複合体と比較して、新規の複合体では、著しい差は検出されなかった。分岐ポリ(エチレンイミン)対ポリ(エチレンイミン-プロピレンイミン)の効率の一般的な差は、国際公開第2013182683号パンフレットの記述と完全に一致している。加えて、この実験では、添加剤の添加の時点が、その機能性に影響を及ぼさないことが確認された。添加剤を、この実験において、実験IおよびIIでの複合化後にナノ粒子に添加しながら、1,2-プロパンジオールを、mRNA溶液で混合する前にポリマー溶液に添加した。
【0251】
[実施例V]
凍結した複合体の安定性
複合体形成
分岐(ポリエチレンイミン)(brPEI)とルシフェラーゼをコードするmRNAとの複合体を、0.25mg/mlの濃度で形成した。標準的な混合法で、mRNAを水中で希釈して、0.5mg/mLの濃度にした。同じ体積のbrPEI溶液を、水または10%の1,2-プロパンジオールのいずれかの中で、0.65mg/mLの濃度で調製した。ナノ粒子を製剤化するために、電子式ピペット(Mettler-Toledo、E4 LTS 1000μL)を使用して、mRNA溶液をbrPEI溶液に注入し、続いて混合した。混合後、複合体を、使用前に氷上で20分間インキュベートした。
【0252】
凍結-解凍チャレンジ
ポリプレックスサイズの最初の決定(Malvern Zetasizer NanoZS)の後、100μLの3通りの各製剤を、-20℃で示した時間、凍結させて保管し、室温で解凍し、溶液が室温に達する前に直ちに氷上で保管した。解凍した各製剤の1つのサンプルを、次いで、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用し、以下の等式にしたがって、凍結前と解凍後の製剤の%サイズずれについて比較した。dは、z平均粒径を示す。
【0253】
【数5】
【0254】
mRNA完全性の測定
ナノ粒子製剤を水中で希釈して、0.2mg/mLのmRNAにした。5μLのこの希釈液を、3μLの40mg/mLのヘパリン、2μLの2%v/vのTritonX-100、および10μLのホルムアミドで処置した。混合物を、完全に粒子崩壊するために70℃で15分間インキュベートし、次いで、砕氷上で保持した。核酸断片の分析を、次いで、キャピラリー電気泳動(Advanced Analytical Fragment Analyzer、PROSize2.0)で行った。処置した製剤(mRNA処置)からの全長mRNAに対するシグナルを、参照として製剤で使用された、同じロットの新規で複合化していないmRNA(mRNA参考)のシグナルと比較し、以下の式にしたがって、mRNA完全性[%]として表した。
【0255】
【数6】
【0256】
結果
mRNAに基づくナノまたはマイクロ粒子の重要なパラメータは、複合体におけるmRNA安定性である。表15に示す通り、25℃で複合体を保管することにより、複合化したmRNAの急速な分解をもたらす。この実験では、複合化したRNAの安定性への、複合体を凍結する能力の影響を試験した。第一のセットでは、複合体を、RNAで形成し、良好な性能の添加剤の群の例示的な候補としての1,2-プロパンジオールの添加後に凍結した。複合体中のmRNAの完全性(全長mRNAの量)を試験した後、凍結し、-20℃で1週間保管した。新規で複合化していないmRNAを測定し、参考として100%に設定した。結果は、表16に概説する。
【0257】
第二のセットでは、-20℃で8週間、複合体を保管した後、実験を繰り返した。結果は、表17に記載する。
【0258】
【表21】
【0259】
【表22】
【0260】
【表23】
【0261】
考察および結論
記載した実験は、長期間の保管に対するナノまたはマイクロ粒子を凍結する能力の強力な利点を示す。室温で保管した複合体が、数時間以内にmRNAの分解プロセスをもたらすと同時に、凍結状態で保管した複合体により、少なくとも8週間、完全に保存したmRNAをもたらす。
【0262】
[実施例VI]
脂質に基づく製剤用の凍結保護剤としての1,2-プロパンジオール
複合体形成
脂質成分(カチオン性リピドイド、ヘルパー脂質コレステロール、およびPEG脂質)を可溶化し、イソプロパノールに混合し、1:4の体積比でクエン酸緩衝液(10mMのクエン酸、150mMのNaCl、pH4.5)中のmRNA溶液に注入し、0.2mg/mLのmRNA濃度をもたらした。複合体を、室温で20分間インキュベートした。インキュベート後、溶液を、16時間、水に対して透析した。透析後のmRNAの濃度は、0.13mg/mLであった。mRNAの濃度が0.2または0.5mg/mLに達するために、粒子を、45℃で、SpeedVac(Concentrator Plus、Eppendorf)において濃縮した。
【0263】
サイズ測定
粒径を決定するために、200μLの粒子の懸濁液を、キュベット(Brand、UV-cuvette Micro)に充填し、Malvern ZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments)を使用して測定し、nm単位で、流体力学的直径および平均流体力学的直径(z平均)を得た。懸濁媒体として、示した通り、水、または凍結保護添加剤を含有する水を使用した。
【0264】
凍結-解凍チャレンジ
製剤を、2×(20または10%)1,2-プロパンジオール溶液で1:2希釈し、異なるサンプルに分割した。得られた各製剤の1つのサンプルを、添加剤の存在下で、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用した。残りのサンプルを-20℃で16時間凍結し、室温で解凍し、溶液が室温に達する前に直ちに氷上で保管した。解凍した各製剤の1つのサンプルを、次いで、サイズ決定(Malvern Zetasizer NanoZS)のために使用し、以下の等式にしたがって、凍結前と解凍後の製剤の%サイズずれについて比較した。dは、z平均粒径を示す。
【0265】
【数7】
【0266】
気管内スプレー適用
50μLの複合体溶液を、イソフルラン吸入麻酔下で、MicroSprayer 1Aデバイス(PennCentury、USA)を使用して気管内に適用した。
【0267】
外植した肺での生物発光測定
適用の24時間後、動物を、フェンタニル/ミダゾラム/メデトミジン(0.05/5.0/0.5mg/kg BW)の腹腔内注射を通して、十分な麻酔下に置いた。50μLのD-ルシフェリン(リン酸緩衝化生理食塩水中に溶解して30mg/mL、pH7)を、吸引経路(鼻孔に直接適用した後の溶液の吸入)を介して適用し、100μLのD-ルシフェリンを、腹腔内注射により全身に適用した。ルシフェリン投与の10分後、マウスを、頸椎脱臼により安楽死させた。右心を介したPBSでの潅流後、肺を外植した。生物発光を、ビンニング設定を8にし、曝露時間5分で、Xenogen IVIS Luminar XR(Caliper LifeSciences)を使用して測定した。生物発光を定量化し、Living Image Software4.4(Xenogen)を使用して分析した。過飽和した画像(線形範囲外の発現の検出)の場合、曝露時間を1分に減らした。生物発光を、器官当たりの全光束(光子/秒で)として測定した。過飽和の見られない画像のみを、分析に使用した。肺を、急速に凍結し、-80℃で保管した。
【0268】
ホモジナイズした肺でのルシフェラーゼ活性
解凍した器官を秤量し、外植した肺の片方を、FastPrep°-24Homogenisator(MP Biomedicals)を使用して、溶解緩衝液でホモジナイズした。100μLのルシフェリン緩衝液を、75μLの遠心分離した溶解物に、Lumat LB 9507 Luminometer(Berthold Technologies)により自動的に添加した。ルシフェラーゼ活性を、RLU/秒で測定し、RLU/器官に変換した。
【0269】
結果
この実施例では、脂質に基づく複合体用の凍結保護剤として、本明細書で定義された添加剤の適性が実証された。第一のステップでは、ナノ粒子を形成し、添加剤の存在または非存在下で、1回の凍結-解凍サイクルを行った。サイズを、凍結前、および解凍後に測定した。1,2-プロパンジオールを、物質の群の代表例として選んだ。実験は、異なる複合体濃度(0.2および0.5mg/mL)、ならびに異なる添加剤濃度(5%および10%(w/v))で行った。サイズ差は、表18bに概説する。
【0270】
【表24】
【0271】
【表25】
【0272】
表18bに示す通り、1,2-プロパンジオールは、脂質に基づく複合体に対しても、1回の凍結-解凍チャレンジの間、粒子サイズを安定化させる。ゆえに、肺内送達後のトランスフェクションの効率を、次のステップで試験した。この目的のため、ホタルルシフェラーゼをコードする10μgのmRNAを、気管内へのマイクロスプレー注入を介して、BALB/cマウスに適用した。送達効率と、それゆえの担体の機能性の尺度としての生成されたタンパク質の検出の結果は、図5および表19に示す。
【0273】
図5は、1,2-プロパンジオールで凍結した後の、脂質に基づくナノまたはマイクロ粒子のインビボでのトランスフェクション効率を示す。
【0274】
ホタルルシフェラーゼをコードするmRNAを含有する複合体を、1,2-プロパンジオールと共に、または伴わずに調製し、4℃での保管、または1回の凍結-解凍サイクルのいずれかの後で、マイクロスプレーを介してマウスに気管内に適用した。処置の24時間後、マウスを麻酔し、ルシフェラーゼ活性を測定するために肺を外植した。n=3。
【0275】
【表26】
【0276】
図5および表19から理解できる通り、1,2-プロパンジオールの存在下で凍結した複合体は、インビボでの適用後に完全な機能性を維持した。ゆえに、添加剤は、トランスフェクション効率に負の影響を及ぼさない。
【0277】
考察および結論
この実施例に示されたデータでは、1,2-プロパンジオールが、ポリマーに基づく複
合体だけでなく、凝集を防ぎ、インビボでの活性を保持する脂質に基づく複合体の凍結も
可能にすることが示されている。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.(i)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含む、組成物。
2.前記治療活性剤が、核酸である、上記1に記載の組成物。
3.前記治療活性剤が、mRNAである、上記2に記載の組成物。
4.前記ナノまたはマイクロ粒子製剤が、1~4000nm、より好ましくは2~2500nm、最も好ましくは5~1000nmの範囲の平均粒径を示す、上記1から3のいずれかに記載の組成物。
5.前記治療活性剤が、核酸であり、前記ナノまたはマイクロ粒子製剤の粒子が、前記核酸およびカチオン性賦形剤を含む、上記2から4のいずれかに記載の組成物。
6.前記粒子製剤の粒子が、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性オリゴマーまたはカチオン性ポリマーとで形成される複合体の形態で核酸を含む、上記5に記載の組成物。
7.前記粒子製剤の粒子が、核酸と、カチオン性賦形剤としてのカチオン性脂質またはカチオン性リピドイドとで形成される複合体の形態で核酸を含む、上記5に記載の組成物。
8.前記凍結保護添加剤が、少なくとも二級ヒドロキシ基を含む、上記1から7のいずれかに記載の組成物。
9.前記凍結保護添加剤が、1,2-プロパンジオール、2-プロパノール、1,2-ブタンジオール、および1,3-ブタンジオールから選択される、上記8に記載の組成物。
10.前記凍結保護添加剤が、1,2-プロパンジオールである、上記9に記載の組成物。
11.前記凍結保護添加剤が、液相の体積を基準として0.5~50%w/vの濃度で含有される、上記1から10のいずれかに記載の組成物。
12.(i)治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤、および
(ii)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤
を含み、上記1から11のいずれかに記載の組成物を凍結することにより得られる、固体組成物。
13.上記1から11のいずれかに記載の組成物を調製するための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を前記液相に添加すること
を含み、前記凍結保護添加剤の前記液相への添加が、前記液相に懸濁されている前記粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法。
14.上記12に記載の固体組成物を調製するための方法であって、
a)液相に懸濁されている治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を生成すること、および
b)1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される、少なくとも1つの凍結保護添加剤を前記液相に添加すること
を含み、前記凍結保護添加剤の前記液相への添加が、前記液相に懸濁されている前記粒子製剤を生成する前、生成する間、または生成した後に達成することができる、
方法により、上記の第一の態様による組成物を調製する、第一のステップ、
ならびに、第一のステップで得られる前記組成物を凍結する、第二のステップ
を含む、方法。
15.治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を保存する方法であって、上記1から11のいずれかに記載の懸濁組成物を生成すること、および前記組成物を凍結することを含む、方法。
16.治療活性剤のナノまたはマイクロ粒子製剤を含む組成物に対する凍結保護添加剤として、1つまたは2つのヒドロキシ基で置換されたC3~C5アルカンから選択される化合物の使用。
17.液体に懸濁されている粒子状組成物からエアゾール剤を形成するための、または、このような組成物を噴霧するためのデバイスであって、上記1から11のいずれかに記載の組成物を含む、デバイス。
18.定量吸入器、ネブライザー、および鼻噴射デバイスから選択される吸入器である、上記17に記載のデバイス。
19.疾患の処置または予防での使用のための、上記1から11のいずれかに記載の組成物であって、気道へ、または気道を介して投与される、組成物。
20.経肺投与を介して、または経鼻投与を介して投与される、上記19に記載の使用のための組成物。
図1
図2
図3
図4
図5