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特許7256826RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ
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  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図1
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図2
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図3
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  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図5
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図6A
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図6B
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図6C
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図7
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図8
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図9A
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図9B
  • 特許-RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチを用いる広帯域360度位相シフタ
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/26 20060101AFI20230405BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20230405BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20230405BHJP
   H03L 7/08 20060101ALI20230405BHJP
   H03L 7/081 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H04B1/26 R
H04B1/16 R
H04B1/04 T
H03L7/08 220
H03L7/081
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020565261
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019033390
(87)【国際公開番号】W WO2019226698
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】15/989,156
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521458638
【氏名又は名称】スウィフトリンク テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】クオ チェ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チー タイユン
(72)【発明者】
【氏名】チェン トーマス
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0128820(US,A1)
【文献】特表2009-523342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0159259(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/26
H04B 1/16
H04B 1/04
H03L 7/08
H03L 7/081
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数(RF)フロントエンド集積回路(IC)デバイスであって、
予め定められた周波数帯域内でRF信号を送信及び受信するRF送受信機と、
前記RF送受信機に結合され、前記予め定められた周波数帯域を含む広周波数スペクトルで周波数合成を実行する周波数シンセサイザと、
を含み、
前記周波数シンセサイザは、前記RF送受信機に対しローカル発振器(LO)信号を生成して、前記RF送受信機が前記予め定められた周波数帯域内でRF信号を送信及び受信するのを可能にし、
前記周波数シンセサイザは、
前記LO信号の複数の位相シフトされた信号を生成する直交位相生成器(QPG)回路と、
前記QPG回路に結合され、前記LO信号の前記位相シフトされた信号に基づいて複数の象限信号を生成する位相シフト回路と、
を含み、前記象限信号の各々は、位相の4つの象限の1つに対応し、
前記位相シフト回路は、
前記LO信号の前記位相シフトされた信号の象限スペースに対応する1つの象限内で前記LO信号の前記位相シフトされた信号の位相を最初に調節するように構成された可変利得増幅器と、
前記1つの象限内の前記LO信号の前記位相シフトされた信号の前記調節された位相を前記4つの象限のいずれかに更に位相をシフトするように協調して切り替えるように動作可能である複数のスイッチであって、前記スイッチの各々は、位相を0度又は180度シフトするようにオン又はオフ状態のいずれかに個別に構成される右手系伝送ライン及び左手系伝送ラインを含む、複数のスイッチと、
を含む、
無線周波数(RF)フロントエンド集積回路(IC)デバイス。
【請求項2】
前記QPG回路に結合された前記可変利得増幅器は、複数の利得で前記LO信号の前記位相シフトされた信号を増幅するように構成され、
前記複数のスイッチは、前記可変利得増幅器に結合され、前記象限信号を生成するために位相の複数の度を切り替える位相スイッチ論理を含む、
請求項1に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項3】
前記QPG回路は、第1の度にシフトされた第1の信号及び第2の度にシフトされた第2の信号を生成する、請求項2に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項4】
前記第1の度は、位相シフトされた-45度であり、前記第2の度は位相シフトされた+45度である、請求項3に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項5】
前記可変利得増幅器は、第1の可変利得増幅器及び第2の可変利得増幅器を含み、前記第1の可変利得増幅器は、前記QPG回路に結合されて前記第1の信号を受信及び増幅し、前記第2の可変利得増幅器は、前記QPG回路に結合されて前記第2の信号を受信及び増幅する、請求項3に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項6】
前記位相スイッチ論理は、第1の位相スイッチ及び第2の位相スイッチを含み、前記第1の位相スイッチは、前記第1の可変利得増幅器に結合され、前記第2の位相スイッチは、前記第2の可変利得増幅器に結合される、請求項5に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項7】
前記位相スイッチ論理は更に、前記第1の位相スイッチ及び前記第2の位相スイッチに結合されて、前記第1の位相スイッチ及び前記第2の位相スイッチの出力を組み合わせて前記象限信号を生成するパワーコンバイナ論理を含む、請求項6に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項8】
前記第1の位相スイッチ及び前記第2の位相スイッチの各々は、位相をゼロ度遅延又は180度遅延に切り替えることができる、請求項7に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項9】
前記第1の位相スイッチが前記ゼロ度に位置付けられ且つ前記第2の位相スイッチが前記ゼロ度に位置付けられるとき、前記パワーコンバイナ論理は、第1の象限スペースに第1の象限信号を生成する、請求項8に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項10】
前記第1の象限スペースは、0から90度に及ぶ、請求項9に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項11】
前記第1の可変利得増幅器及び前記第2の可変利得増幅器は、前記第1の象限スペース内の前記第1の象限信号の振幅及び位相角度を調節するために異なる利得で構成される、請求項9に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項12】
前記第1の位相スイッチが前記ゼロ度に位置付けられ且つ前記第2の位相スイッチが前記180度に位置付けられるとき、前記パワーコンバイナ論理は、第2の象限スペースに第2の象限信号を生成する、請求項8に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項13】
前記第2の象限スペースは、90から180度に及ぶ、請求項12に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項14】
前記第1の可変利得増幅器及び前記第2の可変利得増幅器は、前記第2の象限スペース内の前記第2の象限信号の振幅及び位相角度を調節するために異なる利得で構成される、請求項12に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項15】
前記第1の位相スイッチが前記180度に位置付けられ且つ前記第2の位相スイッチが前記180度に位置付けられるとき、前記パワーコンバイナ論理は、第3の象限スペースに第3の象限信号を生成する、請求項8に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項16】
前記第3の象限スペースは、180から270度に及ぶ、請求項15に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項17】
前記第1の可変利得増幅器及び前記第2の可変利得増幅器は、前記第3の象限スペース内の前記第3の象限信号の振幅及び位相角度を調節するために異なる利得で構成される、請求項15に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項18】
前記第1の位相スイッチが前記180度に位置付けられ且つ前記第2の位相スイッチが前記0度に位置付けられるとき、前記パワーコンバイナ論理は、第4の象限スペースに第4の象限信号を生成する、請求項8に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項19】
前記第4の象限スペースは、270から360度に及ぶ、請求項18に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項20】
前記第1の可変利得増幅器及び前記第2の可変利得増幅器は、前記第4の象限スペース内の前記第4の象限信号の振幅及び位相角度を調節するために異なる利得で構成される、請求項18に記載のRFフロントエンドICデバイス。
【請求項21】
アンテナと、
前記アンテナに結合される、請求項1から20のいずれかに記載の無線周波数(RF)フロントエンド集積回路(IC)デバイスと、
前記RFフロントエンドICデバイスに結合されたベースバンドプロセッサと、
を含む、モバイルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的には無線周波数(RF)回路の直交位相生成回路に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、RF通信において右手系及び左手系伝送ラインスイッチ(transmission line switches)を用いる広帯域位相シフタに関する。
【背景技術】
【0002】
国際電子通信連合(ITU)は、5G周波数帯域に対して24.25から43.5GHzの間の実施可能な帯域に対して調査を行っており、従って、24から43.5GHzのような広帯域が5G開発に重要になってきている。
【0003】
直交信号は、フロントエンド回路、例えば、周波数変調器、位相シフタなどに広く用いられてきた。ランゲカプラとして知られる従来の1/4波長結合伝送ラインは、低挿入損失及び良好なリターン損失を同時に備えた直交信号を生成することができる。しかしながら、この結合ラインは、家庭用電子デバイス設計に適さない大きなチップサイズを必要とする。位相シフタは、位相アレイシステムに広く用いられる。しかしながら、市場には効率的でコンパクトな位相シフタが存在していなかった。
【0004】
同じ参照符号が同様の要素を示す添付図面の図において、本発明の実施形態について限定ではなく一例として例証する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の1つの実施形態による無線通信デバイスの実施例を示すブロック図である。
図2】本発明の1つの実施形態によるRFフロントエンド集積回路の実施例を示すブロック図である。
図3】本発明の別の実施形態によるRFフロントエンド集積回路を示すブロック図である。
図4】本発明の別の実施形態によるRFフロントエンド集積回路を示すブロック図である。
図5】本発明の1つの実施形態による直交位相生成回路の実施例を示す図である。
図6A】本発明の1つの実施形態による位相シフト回路(phase shifting circuit)の実施例を示す図である。
図6B】本発明の1つの実施形態による位相シフト回路の実施例を示す図である。
図6C】本発明の1つの実施形態による位相シフト回路の実施例を示す図である。
図7】本発明の1つの実施形態による位相スイッチング論理の実施例を示す図である。
図8】本発明の1つの実施形態による位相スイッチング論理の応答曲線を示す図である。
図9A】本発明の一部の実施形態による性能曲線を示す図である。
図9B】本発明の一部の実施形態による性能曲線を示す図である。
図10】本発明の1つの実施形態による回路を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に示す詳細事項を参照して本発明の様々な実施形態及び態様ついて説明し、添付図面は、様々な実施形態を例示する。以下の説明及び図面は、本発明の例証であり、本発明の限定と解釈すべきではない。多くの特定の詳細事項は、本発明の様々な実施形態の完全な理解を提供するために記載されている。しかしながら、特定の事例において、周知又は従来の詳細事項は、本発明の実施形態の簡潔な論議を提供するために記載されていない。
【0007】
本明細書における「1つの実施形態」又は「ある実施形態」の記載は、実施形態に関して記述される特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書における様々な箇所での表現「1つの実施形態では」は、必ずしも全て同じ実施形態を指すとは限らない。
【0008】
一部の実施形態によれば、RFフロントエンドICデバイスは、RF信号を送信及び受信するRF送受信機と、予め定められた周波数帯域内で動作するよう周波数合成(frequency synthetization)を実行する周波数シンセサイザと、を含む。周波数シンセサイザは、RF送受信機へのローカル発振器(LO)信号を生成して、RF送受信機が予め定められた周波数帯域内でRF信号を送信及び受信するのを可能にする。周波数シンセサイザは、LO信号に基づいて位相シフトされた信号を生成する直交位相生成器(quadrature phase generator)(QPG)回路と、位相シフトされた信号に基づいて四分円信号(象限信号)(quadrant signals)を生成する位相シフト回路と、を含む。四分円信号の各々は、それぞれ四分円スペースの位相の4つの四分円(象限)(quadrants)の1つに対応する。位相シフト回路は、QPG回路によって生成された位相シフトされた信号に基づいて更に位相をシフトするコラボレーション方式(collaboration manner)で動作することができる、複数の位相スイッチを含み、適正な四分円スペースに四分円信号を生成する。
【0009】
1つの実施形態によれば、位相シフト回路は、1又は2以上の可変利得増幅器(variable gain amplifiers)と、1又は2以上の位相シフト論理と、を含む。可変利得増幅器は、QPG回路に結合されて、異なる利得信号を増幅する。位相シフト論理は、可変利得増幅器に結合され、位相を異なる角度に切り替え四分円信号を生成する。QPG回路は、第1の度(first degree)(例えば、-45度)シフトされた第1の信号、及び第2の度(例えば、+45度)シフトされた第2の信号を生成する。
【0010】
1つの実施形態では、可変利得増幅器は、QPG回路から生成された第1の信号を増幅する第1の可変利得増幅器と、QPG回路から生成された第2の信号を増幅する第2の可変利得増幅器と、を含む。位相シフト論理は、第1及び第2の可変利得増幅器それぞれに結合された第1の位相スイッチ及び第2の位相スイッチを含む。1つの実施形態では、位相シフト論理は更に、第1の位相スイッチ及び第2の位相スイッチに結合されたパワーコンバイナ論理を含み、第1の及び第2の位相スイッチの出力を組み合わせて四分円信号を生成する。
【0011】
1つの実施形態では、位相スイッチの各々は、異なる位置(例えば、オン又はオフ位置)に位置付けられた時にゼロ度及び180度に切り替えることができる。第1及び第2の位相スイッチの両方がゼロ度で構成された時には、生成される四分円信号は、第1の四分円スペース(例えば、ゼロ度と90度の間)にある。第1の位相スイッチがゼロ度で構成され且つ第2の位相スイッチが180度で構成されたときには、生成される四分円信号は第2の四分円スペース(例えば、90度と180度の間)にある。第1及び第2の位相スイッチの両方が180度で構成されたときには、生成される四分円信号は第3の四分円スペース(例えば、180度と270度の間)にある。第1の位相スイッチが180度で構成され第2の位相スイッチがゼロ度で構成されたときには、生成される四分円信号は第4の四分円スペース(例えば,270度と360度の間)である。1つの実施形態では、可変利得増幅器の利得を調節することによって、対応する四分円信号の振幅及び位相角度を四分円信号に対応する四分円スペース内で調節することができる。
【0012】
図1は、本発明の1つの実施形態による無線通信デバイスの実施例を示すブロック図である。図1を参照すると、無線通信デバイス100(単に無線デバイスとも呼ばれる)は、とりわけ、RFフロントエンドモジュール101及びベースバンドプロセッサ102を含む。無線デバイス100は、例えば、移動電話、ラップトップ、タブレット、ネットワークアプライアンスデバイス(例えば、モノのインターネット又はIOTアプライアンスデバイス)などの何れかの種類の無線通信デバイスとすることができる。無線通信デバイス100は、CPEデバイスとすることができる。
【0013】
無線受信回路では、RFフロントエンドは、ミキサステージを含むそれ以下のアンテナ間の全ての回路の総称である。RFフロントエンドは、信号が低中間周波数(IF)に変換される前に元の着信無線周波数の信号を処理する受信機の構成要素の全てを含む。マイクロ波及び衛星受信機では、これは低雑音ブロック(LNB)又は低雑音ダウンコンバータ(LND)と呼ばれることが多く、多くの場合はアンテナに位置付けられ、これによってアンテナからの信号を扱い易い中間周波数で受信機の残りに転送することができる。ベースバンドプロセッサは、無線機能の全て(アンテナを必要とする全ての機能)を管理するネットワークインタフェースのデバイス(チップ又はチップの一部)である。
【0014】
1つの実施形態では、RFフロントエンドモジュール101は、RF送受信機のアレイを含み、RF送受信機の各々は、複数のRFアンテナのうちの1つを介して特定の周波数帯域(例えば、非オーバーラップ周波数範囲など、特定の周波数の範囲)内でRF信号を送信及び受信する。RFフロントエンド集積回路(IC)チップは更に、RF送受信機に結合されたフルバンド周波数シンセサイザを含む。フルベースの周波数シンセサイザは、ローカル発振器(LO)信号を生成してRF送受信機の各々に提供し、RF送受信機が対応する周波数帯域内でRF信号を混合、変調、及び/又は復調するのを可能にする。RF送受信機のアレイ及びフルバンド周波数シンセサイザは、単一のRFフロントエンドICチップ又はパッケージとして単一のICチップ内に統合することができる。
【0015】
図2は、本発明の1つの実施形態によるRFフロントエンド集積回路の実施例を示すブロック図である。図2を参照すると、RFフロントエンド101は、とりわけ、RF送受信機211-213のアレイに結合されたフルベース周波数シンセサイザ200を含む。送受信機211-213の各々は、RFアンテナ221-223の1つを介して特定の周波数帯域又はRF周波数の特定の範囲内でRF信号を送信及び受信するよう構成される。1つの実施形態では、送受信機211-213の各々は、フルバンド周波数シンセサイザ200からLO信号を受信するよう構成される。LO信号は、対応する周波数帯域に対して生成される。LO信号は、対応する周波数帯域内でRF波信号を送信及び受信する目的で送受信機によって混合、変調、復調するのに用いられる。
【0016】
図3は、本発明の別の実施形態によるRFフロントエンド集積回路を示すブロック図である。図3を参照すると、フルバンド周波数シンセサイザ300は、上述したフルバンド周波数シンセサイザ101を表すことができる。1つの実施形態では、フルバンド周波数シンセサイザ300が送受信機のアレイに通信可能に結合され、各送受信機は幾つかの周波数帯域の1つに対応する。この実施例では、フルバンド周波数シンセサイザ300が、送信機301A、受信機302A、送信機301B、及び受信機302Bに結合される。送信機301A及び受信機302Aは、低帯域(LB)送信機及びLB受信機と呼ばれる低周波数帯域で動作する第1の送受信機の一部とすることができる。送信機301B及び受信機302Bは、高帯域(HB)送信機及びHB受信機と呼ばれる高周波数帯域で動作する第2の送受信機の一部とすることができる。図3に示すように2つの送受信機だけが存在するが、より多くの送受信機を図2に示すようにフルバンド周波数シンセサイザ300に結合してもよいことに留意されたい。
【0017】
1つの実施形態では、周波数シンセサイザ300は、限定ではないが、位相ロックループ(PLL)回路又はブロック311と、LOバッファ312と、LB同相/直交(IQ)生成器313と、LB位相回転器314とを含む。PLLは、位相が入力信号の位相に関係付けられる出力信号を生成する制御システムである。幾つかの異なるタイプが存在するが、可変周波数発振器及び位相検出器からなる電子回路として最初に視覚化することが容易である。発振器は周期信号を生成し、位相検出器が、この信号の位相と入力周期信号の位相を比較して位相を一致させるように発振器を調節する。比較のため入力信号に出力信号を近付けることは、出力が入力に「フィードバック」されループを形成するのでフィードバックループと呼ばれる。
【0018】
入力と出力位相をロックステップの状態にしておくステップはまた、入力及び出力周波数を同じに維持することを意味する。結果的に、同期信号に加えて、位相ロックループが入力周波数を追跡することができ、又は位相ロックループが入力周波数の倍数である周波数を生成することができる。これらの特性は、コンピュータクロック同期、復調、及び周波数合成に用いられる。位相ロックループは、ラジオ、テレコミュニケーション、コンピュータ及び他の電子応用に広く用いられる。これらを用いて、信号を復調し、雑音の多いチャネルから信号を回復し、入力周波数の倍数で安定した周波数を生成する(周波数合成)、又はマイクロプロセッサなどのデジタル論理回路において正確に時間クロックパルスを分配することができる。
【0019】
図3を参照すると、PLLブロック311は、クロック基準信号を受信して、クロック基準信号の周波数にロックオンし、第1のLO信号、すなわち低帯域LO信号又はLBLO信号を生成するためのものである。第1のLO信号は、任意選択的にLOバッファ312によってバッファすることができる。LBLO信号に基づいて、LBIQ生成器313は、RF信号の同相及び直交成分を混合、変調、及び復調するのに適したIQ信号を生成する。IQ信号は、予め定められた角度によって回転すること、又はLB位相回転器314によって遅延させることができる。回転されたIQ信号は次に、LB送信機301A及び受信機302Aに提供される。詳細には、IQ信号は、LB送信機301Aに提供されることになる送信側IQ(TXIQ)信号321Aと、LB受信機302Aに提供されることになる同相及び直交受信側IQ(RXIQ)信号322Aとを含むことができる。
【0020】
1つの実施形態では、周波数シンセサイザ300は更に、周波数コンバータ315、注入同期発振器316、HBIQ生成器317、及びHB位相回転器318を含む。周波数コンバータ315は、PLLブロック311から生成された第1のLO信号を高周波数を有する(例えば、高周波数帯域内)信号に変換するためのものである。1つの実施形態では、周波数コンバータ315は、第1のLO信号の周波数を2倍にする周波数ダブラーを含む。注入同期発振器316は、周波数コンバータ315から受信した2逓倍周波数信号にロックオンして、第1のLO周波数の約2倍の第2のLO周波数を有する第2のLO信号を生成するためのものである。この実施例では、第2のLO周波数は第1のLO周波数の2倍である点に留意されたい。しかしながら、周波数コンバータ315は何れの周波数範囲においても周波数を変換及び生成することができる。RFフロントエンドデバイス内に統合されるより多くの周波数帯域が存在する場合、より多くの周波数コンバータを用いて、基準周波数を複数の他の低周波数又は高周波数に変換することができる。
【0021】
注入ロッキング及び注入プリングは、高調波発振器が近接周波数で動作する第2の発振器によって妨害される時に起こる可能性がある周波数効果である。結合が十分強く且つ周波数が十分近い時に、第2の発振器は第1の発振器を捕捉する可能性があり、第1の発振器が第2の発振器と基本的に同一の周波数を有するようになる。これが注入ロッキングである。第2の発振器が単に第1の発振器を妨害し第1の発振器を捕捉しないときには、この効果は注入プリングと呼ばれる。注入ロッキング及び注入プリング効果は、多くの物理的システムのタイプで観察されるが、これらの用語は。電子発振器又はレーザー共振器に関連付けられることが多い。
【0022】
図3を参照すると、HB IQ生成器317が、高帯域周波数範囲におけるRF信号の同相及び直交成分を混合、変調、及び復調するのに適したIQ信号を生成する。電気工学では、角度変調による正弦波は、1/4サイクル(π/2ラジアン)だけ位相がオフセットされる2振幅-変調正弦波に分解するか、又はこれから合成することができる。全ての3つの関数が同じ周波数を有する。振幅変調正弦波は、同相及び直交成分として知られている。一部の人々は、これらの用語によって振幅変調(ベースバンド)自体のみを指すことが便利であることを見出している。
【0023】
IQ信号は、予め定められた角度だけ回転させるか、又はHB位相回転器318によって遅延させることができる。回転されたIQ信号は次に、HB送信機301B及び受信機302Bに提供される。特に、IQ信号は、HB送信機301Bに提供されることになる送信側IQ(TXIQ)信号321B及びHB受信機302Bに提供されることになる同相及び直交受信側IQ(RXIQ)信号322Bを含むことができる。従って、成分312-314は、LB送信機301A及びLB受信機302Aに対するTXIQ及びRXIQ信号を生成するよう構成され、成分315-318は、HB送信機301B及びHB受信機302Bに対するTXIQ及びRXIQ信号を生成するよう構成される。関係するより多くの周波数帯域のより多くの送信機及び受信機が存在する場合、追加の周波数帯域に対する必要なTXIQ及びRXIQ信号を生成するため、成分312-314及び/又は成分315-318のより多くのセットを周波数シンセサイザ300によって維持することができる。
【0024】
1つの実施形態では、LB送信機301Aは、フィルタ303Aと、ミキサ304Aと、増幅器305Aとを含む。フィルタ303Aは、宛先に送信されることになるLB送信側(LBTX)信号を受信するローパス(LP)フィルタとすることができ、LBTX信号は、ベースバンドプロセッサ102などのベースバンドプロセッサから提供することができる。ミキサ301A(アップコンバートミキサ又はLBアップコンバートミキサとも呼ばれる)は、LB位相回転器314によって提供されたTXIQ信号に基づいてキャリア周波数信号にLBTX信号を混合及び変調するよう構成される。変調された信号(例えば、低帯域RF又はLBRF信号)は次に、増幅器305Aによって増幅され、次いで増幅された信号がアンテナ301Aを介してリモート受信機に送信される。
【0025】
1つの実施形態では、LB受信機302Aは、増幅器306Aと、ミキサ307Aと、フィルタ308Aとを含む。増幅器306Aは、アンテナ310Aを介してリモート送信機からLBRF信号を受信して、受信したRF信号を増幅するためのものである。増幅したRF信号は次にLB位相回転器314から受信されたRXIQ信号に基づいてミキサ307A(ダウンコンバートミキサ又はLBダウンコンバートミキサとも呼ばれる)によって復調される。復調された信号は次いで、低パスフィルタとすることができるフィルタ308Aによって処理される。1つの実施形態では、LB送信機301A及びLB受信機302Aは、送信側及び受信側(T/R)スイッチ309Aを介してアンテナ310Aを共有する。T/Rスイッチ309Aは、特定の時点にてLB送信機301Aと受信機302Aを切り替えて、アンテナ310AをLB送信機301A又はLB受信機302Aの何れかに結合するよう構成される。
【0026】
同様に、HB送信機301Bは、高帯域送信側(HBTX)信号を処理するための、LB送信機301Aのフィルタ303A、ミキサ304A、及び増幅器305Aに類似の機能を有するフィルタ303B、ミキサ304B(HBアップコンバートミキサとも呼ばれる)、及び増幅器305Bそれぞれを含む。HB受信機302Bは、高帯域受信側(HBRX)信号を処理するため、LB受信機302Aの増幅器306A、ミキサ307A、及びフィルタ308Aに類似した機能を有するフィルタ306B、ミキサ307B(HBダウンコンバートミキサとも呼ばれる)、及びフィルタ308Bそれぞれを含む。HB送信機301B及びHB受信機302Bは、LB送信機301A及び受信機302Aの構成と同様にT/Rスイッチ309Bを介してアンテナ310Bに結合される。アンテナ310A-310Bは、RFフロントエンド回路の一部ではない図2のアンテナ221-223の何れか1又は2以上を表すことができる。
【0027】
図4は、本発明の別の実施形態によるRFフロントエンド集積回路の実施例を示すブロック図である。図4を参照すると、この実施形態では、LB送信機301A、LB受信機302A、HB送信機301B、及びHB受信機302Bの各々が、2つの経路、すなわち1)同相成分信号を処理するI経路、及び2)直交成分信号を処理するQ経路を含む。1つの実施形態では、LB送信機301Aは、I経路ベースバンド信号を受信するI経路ローパスフィルタ(例えば、チューナブルローパスフィルタ)及びI経路ベースバンド信号を混合及び変調するI経路アップコンバートミキサを含む。LB送信機301Aは、Q経路ベースバンド信号を受信するQ経路ローパスフィルタ(例えば、チューナブルローパスフィルタ)及びQ経路ベースバンド信号を混合及び変調するQ経路アップコンバートミキサを含む。LB送信機301Aは更に、チューナブル帯域選択フィルタ及び増幅器を含む。帯域選択フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)は、対応する周波数帯域を選択して、対応する帯域の外側にある雑音を取り除くためのものである。増幅器は、アンテナ310Aを介してリモートデバイスに送信されることになる変調されたRF信号を増幅するためのものである。HB送信機301Bは、高周波数帯域の信号を処理するためのLB送信機301Aに類似の構成要素を含む。
【0028】
同様に、1つの実施形態によれば、LB受信機302Aはアンテナ310Aを介してリモートデバイスからLBRF信号を受信する増幅器(例えば、低雑音増幅器又はLNA)及び帯域選択フィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を含む。LB受信機302Aは更に、I経路ダウンコンバートミキサ及びQ経路ダウンコンバートミキサを含み、RF信号をI経路ベースバンド信号及びQ経路ベースバンド信号に混合及び復調する。LB受信機302Aは更に、ベースバンドプロセッサに提供することができるI経路ベースバンド信号及びQ経路ベースバンド信号を処理するI経路ローパスフィルタ及びQ経路ローパスフィルタを含む。HB受信機302Bは、高周波数帯域の信号を処理するためのLB受信機302Aに類似の構成要素を含む。
【0029】
1つの実施形態では、周波数シンセサイザ300が、位相周波数検出器を備えたチャージポンプ、ループフィルタ、プログラマブル分割器、電圧制御発振器を有するPLLブロックを含む。周波数シンセサイザ300は更に、図3に関して上述した周波数ダブラー及び注入ロッキング発振器を含む。
【0030】
加えて、周波数シンセサイザ300は、同相送信側(TXI)位相回転器314A、直交送信側(TXQ)位相回転器314B、同相受信側(RXI)位相回転器314C、及び直交受信側(RXQ)位相回転器314Dを含み、これらは具体的には位相回転を実行してLB送信機301A及びLB受信機302Aのための同相LO信号及び直交LO信号を生成するよう構成される。詳細には、TXI位相回転器314AがLB送信機301AのI経路アップコンバートミキサに結合され、TXQ位相回転器314BがLB送信機301AのQ経路アップコンバートミキサに結合され、I経路及びQ経路ベースバンド信号を対応する周波数帯域内で混合及び変調できるようにする。RXI位相回転器314CがLB受信機302AのI経路ダウンコンバートミキサに結合されRXQ位相回転器314DがLB受信機302AのQ経路ダウンコンバートミキサに結合され、I経路及びQ経路ベースバンド信号を対応する周波数帯域内で混合及び復調できるようにする。
【0031】
1つの実施形態では、周波数シンセサイザ300が、同相送信側(TXI)位相回転器318A、直交送信側(TXQ)位相回転器318B、同相受信側(RXI)位相回転器318C、及び直交受信側(RXQ)位相回転器318Dを含み、これらは具体的には、位相回転を実行してHB送信機301B及びHB受信機302Bのための同相LO信号及び直交LO信号を生成するよう構成される。詳細には、TXI位相回転器318AがHB送信機301BのI経路アップコンバートミキサに結合されTXQ位相回転器318BがHB送信機301BのQ経路アップコンバートミキサに結合され、I経路及びQ経路ベースバンド信号を対応する周波数帯域内で混合及び変調できるようにする。RXI位相回転器318CがHB受信機302AのI経路ダウンコンバートミキサに結合されRXQ位相回転器318DがHB受信機302BのQ経路ダウンコンバートミキサに結合され、I経路及びQ経路ベースバンド信号を対応する周波数帯域内で混合及び復調できるようにする。
【0032】
この場合も同様に、図4に示したこの実施例には、周波数シンセサイザ300によってカバーされる2つの周波数帯域が存在する。しかしながら、これより多くの周波数帯域を集積RFフロントエンド内で実施することができる。実施されることになる多くの周波数帯域が存在する場合、TXI、TXQ、RXI、及びRXQ位相回転器のより多くのセットが必要になることがある。
【0033】
図5は、本発明の1つの実施形態による変圧器ベースの直交信号生成器を示すブロック図である。この直交信号生成器500は、QPG生成器とも呼ばれ、図3のIQ生成器313及び317及び/又は位相回転器314及び318の一部として実施することができる。図5を参照すると、この実施形態では、QPG生成器500が、互いに直列に結合された第1の変圧器511及び第2の変圧器512を含み、入力端子501、終端レジスタ(例えば、50ohm)を介した接地端子502、第1の出力端子503、及び第2の出力端子504を形成する。1つの実施形態では、QPG生成器500が入力端子501からLO信号を受信して、出力端子503での+45度位相シフトなどの第1の位相シフト又は遅延の第1の直交信号を発生し、出力端子504の-45度位相シフトなどの第2の位相シフト又は遅延の第2の直交信号を発生する。
【0034】
1つの実施形態では、変圧器(transformers)511-512は、CMOS処理の一部として実装される。1つの実施形態では、各変圧器の一次巻線(例えば、第1の巻線)及び二次巻線(例えば、第2の巻線)は、ICの異なる基板層上に配置される。この実施例では、変圧器511の第1又は一次巻線521が、基板層513上に配置され、変圧器511の第2又は二次巻線522が、基板層514上に配置される。巻線521及び巻線522は、誘電体550の反対側に配置される。同様に、変圧器512の第1又は一次巻線523が、基板層513上に配置され、変圧器512の第2又は二次巻線524が、基板層514上に配置される。巻線523及び巻線524は、誘電体550の反対側に配置される。巻線521は巻線523に直列に接続され、巻線522は巻線524に直列に接続される。
【0035】
1つの実施形態では、変圧器の巻線は、螺旋形で基板層上に配置された導電性トレース又はマイクロストリップのセットを用いて実施される。この螺旋形は、長方形の螺旋形状とすることができ、円形、楕円、又は正方形の螺旋形状も適用可能とすることができる。1つの実施形態では、変圧器511の一次巻線521を表す導電性トレースの第1のセットが、基板層513などのICの第1の基板層上に配置される。変圧器511の二次巻線522を表す導電性トレースの第2のセットは、基板層514などのICの第2の基板層上に配置される。入力端子501は、第1の基板層上の第1のセットの導電性トレースのセンタータブに結合される。第1の出力端子503は、第2の基板層上の第2のセットの導電性トレースのセンタータブに結合される。
【0036】
同様に、変圧器512の一次巻線523を表す導電性トレースの第1のセットが、基板層513などのICの第1の基板層上に配置される。変圧器512の二次巻線524を表す導電性トレースの第2のセットが、基板層514などのICの第2の基板層上に配置される。接地端子502は、第1の基板層上の終端レジスタ530(例えば、50ohm)を介して第1のセットの導電性トレースのセンタータブに結合される。第2の出力端子504は、第2の基板層上の第2のセットの導電性トレースのセンタータブに結合される。第1の変圧器511の導電性トレースの外側リングの終端は、同じ基板層上の第2の変圧器512の導電性トレースの外側リングの終端に結合され、これによって変圧器511は変圧器512に直列に結合される。1つの実施形態では、各巻線の螺旋形状を形成する導電性トレースの長さは、QPG生成器の動作周波数に関連付けられる波長の1/4にほぼ等しい。2つの導電性トレース(又はトラック、ワイヤ、又はストリップ)間のスペースは可能な限り近くなることが望まれる。
【0037】
図6A-6Cは、本発明の1つの実施形態による位相シフタ回路を示すブロック図である。位相シフタ回路の実施例は、1又は2以上の可変利得増幅器及び1又は2以上の位相シフト論理を含む。可変利得増幅器(VGA)は、QPG回路に結合され、異なる利得信号を増幅する。位相シフト論理は、可変利得増幅器に結合され、位相を異なる角度切り替え四分円信号を生成する。QPG回路は、第1の度(例えば、-45度)シフトされた第1の信号及び第2の度(例えば、+45度)シフトされた第2の信号を生成する。
【0038】
1つの実施形態では、図6Aに関して、位相シフタ回路600は、QPG回路601、第1の可変利得増幅器602、第2の可変利得増幅器603、第1の位相スイッチ604、第2の位相スイッチ605、及びパワーコンバイナ論理606を含む。QPG回路601は、第1の度(例えば、-45度)シフトされた第1の信号及び第2の度(例えば、+45度)シフトされた第2の信号を生成する。第1の可変利得増幅器602は、QPG回路601から受信された第1の信号を増幅する。第2の可変利得増幅器603は、QPG回路から生成された第2の信号を増幅する。第1の位相スイッチ604及び第2の位相スイッチ605は、第1及び第2の可変利得増幅器602-603それぞれに結合される。パワーコンバイナ論理606は、第1の位相スイッチ604及び第2の位相スイッチ605に結合され、第1及び第2の位相スイッチ604-605の出力を組み合わせて四分円信号を生成し、この四分円信号を図3の送受信機305A-305Bなどの送受信機に送信することができる。
【0039】
1つの実施形態では、位相スイッチ604-605の各々は、異なる位置(例えば、オン又はオフ位置)に位置付けられたときにゼロ度及び180度切り替えることができる。第1及び第2の位相スイッチの両方がゼロ度で構成されたときには、生成される四分円信号は、図6Bに示すように第1の四分円スペース(例えば、ゼロ度と90度の間)にある。第1の位相スイッチがゼロ度で構成され第2の位相スイッチが180度で構成されたときには、生成される四分円信号は、第2の四分円スペース(例えば、90度と180度の間)にある。第1及び第2の位相スイッチの両方が180度で構成されたときには、生成される四分円信号は、図6Cに示すように第3の四分円スペース(例えば、180度と270度の間)にある。第1の位相スイッチが180度で構成され第2の位相スイッチがゼロ度で構成されたときには、生成される四分円信号は、第4の四分円スペース(例えば、270度と360度の間)である。1つの実施形態では、可変利得増幅器の利得を調節することによって、対応する四分円信号の振幅及び位相角度は、四分円信号に対応する四分円スペース内で調節することができる。
【0040】
図7は、1つの実施形態による位相スイッチ回路の実施例を示すブロック図である。位相スイッチ回路700は、位相スイッチ回路604又は605の一部として実施することができる。図7を参照すると、位相スイッチ回路700は、右手系伝送ラインとして第1の伝送ライン701と、左手系伝送ラインとして第2の伝送ライン702とを含む。伝送ライン701-702の各々は、1又は2以上の選択論理を介して個々にターンオン又はターンオフすることができる。伝送ラインの各々に対して1対の選択論理が存在するが、伝送ラインをターンオン又はターンオフするのに単一の選択論理で十分であることがある。この実施例では、伝送ライン701-702の1つだけが何れの時点にもターンオンすることができる。伝送ライン701がターンオンされた時には、出力及び入力の位相は同一である(例えば、ゼロ度位相シフト)。伝送ライン702がターンオンされた時には、入力及び出力の位相は180度の差がある。1つの実施形態では、伝送ライン701が単にマイクロストリップを含むことができ、伝送ライン702が1又は2以上の対のインダクタ-コンデンサ(LC)回路を含む。
【0041】
右手系及び左手系伝送ラインからのS21位相応答を図8に示し、ここで広帯域位相差は、2つの位相曲線を減算することによって取得することができる。右/左手伝送ライン180度スイッチの設計結果を図9Aに示している。リターン損失は-10dBより優良であり、挿入損失差は0.3dBより小さい。23から43GHzの位相差は+/-5度変動を有する180度を示し、これは図9Bに示すように5G応用に適している。図10は、図6A-6Cに示した回路に対する特定の実施の実施例を示す概略図である。
【0042】
上述の明細書において、本発明の実施形態について、本発明の特定の例示的な実施形態を参照して説明してきた。添付の請求項に記載される本発明の広範な精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行い得ることは明らかであろう。明細書及び図面は、従って、限定の意味ではなく例証の意味と見なされるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図10