(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】脂肪酸シンターゼ阻害剤およびその適用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20230405BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230405BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230405BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230405BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230405BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230405BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230405BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230405BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230405BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230405BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230405BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230405BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230405BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230405BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/02
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/08
A61K9/48
A61K9/02
A61K9/12
A61K9/70
A61P3/04
A61P9/00
A61P3/06
A61P11/00
A61P1/04
A61P9/10 101
A61P3/10
A61P13/12
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P25/00
A61P37/06
A61P11/06
A61K31/17
(21)【出願番号】P 2020567258
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 CN2019096319
(87)【国際公開番号】W WO2020248327
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】201910500361.5
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳永泉
(72)【発明者】
【氏名】渠宏雁
(72)【発明者】
【氏名】唐春雷
(72)【発明者】
【氏名】呉国勝
(72)【発明者】
【氏名】崔国禎
(72)【発明者】
【氏名】馮寧翰
(72)【発明者】
【氏名】王小英
(72)【発明者】
【氏名】単▲けい▼
(72)【発明者】
【氏名】朱升龍
(72)【発明者】
【氏名】韋冷云
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1998/022432(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物I-1~I-8またはその薬理学的に許容される塩の、脂肪酸シンターゼ阻害剤の
調製のための使用
。
【請求項2】
前記
化合物I-1~I-8の薬理学的に許容される塩は、乳酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩またはアスパラギン酸塩を含むことを特徴とする
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
請求項1に記載の
化合物I-1~I-8またはその薬理学的に許容される塩を含むことを特徴とする脂肪酸シンターゼを阻害するための医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の一
化合物I-1~I-8またはその薬理学的に許容される塩を含む、
脂肪酸シンターゼを阻害するための治療薬。
【請求項5】
前記治療薬の剤形は、煎じ薬、丸薬、粉末、軟膏、ペレット、薬用ワイン、シロップ、抽出物、錠剤、スティラス、座薬、麹、灸
、錠剤、顆粒、サシェ、経口溶液、カプセル、滴下丸剤、混合物、チンキ剤、エアロゾル、フィルム、注射
または点滴
であることを特徴とする請求項
4に記載の治療薬。
【請求項6】
前記治療薬はさらに結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、抗酸化剤、矯正剤、香料、共溶媒、乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整剤、他の薬理学的に許容される補助物質
のうちの一つ以上を含むことを特徴とする請求項
4に記載の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療バイオテクノロジーの分野に属し、具体的には、脂肪酸シンターゼ阻害剤およびその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
人体内の一部の脂肪酸は外界から摂取された外因性脂肪酸に直接由来するものであり、その他は、体内で合成される内因性脂肪酸である。脂肪酸シンターゼ(FASN)は、生体内での内因性脂肪酸の合成プロセス中の重要な酵素であり、アセチル-CoAとマロニル-CoAを触媒して長鎖脂肪酸を生成する。FASNは、アセチルトランスフェラーゼ(AT)、マロニルトランスフェラーゼ(MT)、β-ケトアシルシンターゼ(KS)、β-ケトアシルレダクターゼ(KR)、β-ヒドロキシアシルデヒドラターゼ(HD)、エノイルレダクターゼ(ER)およびチオエステラーゼ(TE)などという7つの機能ドメインを含み、タイプIとタイプIIという2つのサブタイプに分けることができる。細菌と植物のFASNは、上記の7つの機能ドメインが独立した酵素として集合した多酵素系であるタイプIIに属し、ヒトと他の哺乳類のFASNは、上記の7つの機能ドメインからなる一本鎖多機能酵素であるタイプIに属し、単一の遺伝子によってコードされ、相対分子量は250kuである。一般に、FASNは、肝臓と脂肪などの様々な組織で発現することができ、炭水化物を脂肪酸に合成してトリグリセリドの形で保存する機能がある。FASNは、いくつかの特別な機能もあり、例えば、授乳中にチオエステラーゼと共存すると、FASNは赤ちゃんが消化しやすい中鎖脂肪酸を生成するように機能している。通常の生理学的条件下では、FASNは食事とホルモンによって調節される。炭水化物の摂取、甲状腺、インスリン、グルココルチコイドはすべて、FASNと脂肪酸合成をアップレギュレートできる一方で、不飽和脂肪酸、cAMP、およびグルカゴンはFASNと脂肪酸合成をダウンレギュレートする。
【0003】
近年、FASNは肥満と密接に関連していることが発見された。FASNは、人間の肝臓と脂肪組織、特に肝臓で高度に発現し、その脂肪酸合成能は脂肪組織の8~9倍であり、そして発現量は摂取成分とホルモン量の影響を受け、炭水化物含有の食事は、FASNの高発現を刺激することにより、脂肪の生成を誘導する。したがって、FASN阻害剤の開発は、肥満治療のための新しい方法として期待される。FASN固有の小分子阻害剤は、FASNを阻害することで脂肪酸の合成を低減でき、そして、脂肪酸合成が阻害されるため、その基質であるマロニル-CoAの濃度が増加し、視床下部の摂食中枢に直接作用し、摂食を促進する神経ペプチドYの分泌を阻害し、それにより摂食阻害につながる。同時に、肝臓と脂肪組織などの末梢組織では、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1の活性を高めることができ、それにより、脂肪酸の酸化とエネルギー消費を高め、過剰な体脂肪の代償的消費による減量という目標を達成する。動物実験はまた、FASN阻害剤がインスリン非依存性糖尿病を改善し、高血圧、冠状動脈塞栓症およびその他の肥満合併症の症状を軽減し、発生率を低減できることを示す。
【0004】
1980年代以降、研究者らは乳癌、結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮内膜癌などの他の組織でFASNを発見し、そしてFASNの発現は正常組織よりもはるかに高くなる。研究により、FASNの阻害またはその発現の減少により、腫瘍細胞の増殖を効果的に制御できるか、またはアポトーシスを誘導できることが示される。現在のところ、FASNが腫瘍を調節するメカニズムは明確ではないが、FASNを阻害して細胞増殖に必要な構造脂質とエネルギーを低減させることが腫瘍細胞アポトーシスの原因であると考えている研究者もいる。細胞内のマロニル-CoA濃度の増加が、FASNを阻害して腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こす主な原因であると推測している研究者もいる。FASN阻害剤を使用した後、腫瘍細胞がG0期で停滞し、脂肪酸合成が細胞周期に関連していることを示す研究もある。FASNの阻害は、腫瘍細胞のDNA複製を迅速かつ大幅に阻害でき、S期を遅延させ、これは、脂肪酸合成経路とDNA合成の活動が腫瘍細胞の増殖に関連していることを示す。
【0005】
FASNは肥満患者の肝臓と脂肪細胞、様々な腫瘍患者の腫瘍細胞で高発現し、FASNはそのような疾患を研究するための新しい薬物標的となっている。FASN阻害剤の研究は、内因性脂肪酸の生合成を阻害し、さらに、腫瘍、肥満および関連する様々なメタボリックシンドロームの発生と発症を効果的に制御することは非常に重要である。
【発明の概要】
【0006】
上記課題を問題するために、本発明は、下記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩など、脂肪酸シンターゼ阻害剤の調製における一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩の適用を提供し、
ここで、
は単結合または二重結合であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、C1-C4アルキル、およびC1-C4アルコキシのいずれかから選択される、
環Aは、
であり、U、V、Zはそれぞれ独立して、CH、N、NHから選択され、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、アリールオキシ、およびアルコキシのいずれかから選択され、破線は、含有または非含有を示し、すなわち、環Aは置換フェニル基または置換ベンゾ複素環基である、
Qは、少なくとも1つのヘテロ原子、またはヘテロ原子を含まないC
1-5直鎖または分岐炭化水素基であり、前記ヘテロ原子はそれぞれ独立して、窒素、酸素、硫黄から選択される、
Lはケト基またはイミノ基である、
Wは、-(CH
2)
a、-(CH
2)
aC(O)-、-(CH
2)
a-OC(O)-、-(CH
2)
nC(O)O-のいずれかから選択され、ここで、aは0~3の自然数である、
Xは、-N(R)
mN(R)
n-、-C(O)N(R)
n-または-N(R)
nC(O)-から選択され、mとnはそれぞれ独立して0または1であり、Rは独立して、水素、ハロゲンまたはフェニルである、
Yは、窒素、酸素または硫黄から選択される。
【0007】
本発明の一実施形態では、前記環Aは、単環式アリール、ナフチル、[1,8]ナフチリジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ-1,3-ジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾチアジアゾリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾロ[5,4-b]ピリジルまたはオキサゾロ[5,4-c]ピリジルである。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記Qは、末端基が-N(R)-、-S-、-O-、-SO-、-SO2-、-NRC(O)-、-C(O)NR-、-N(R) SO2-、-SO2N(R)-、-OC(O)-または-C(O)O-であるC1-5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基である。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記Qは、少なくとも1つの二重結合を含む。
【0010】
本発明の一実施形態では、前記一般式(I)で表される化合物の薬理学的に許容される塩は、乳酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩またはアスパラギン酸塩を含む。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記一般式(I)で表される化合物は、以下の構造から選択される、
本発明により提供される一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩は、脂肪酸シンターゼの活性を阻害し、脂肪酸組成を調節する役割を果たす脂肪酸シンターゼ阻害剤として使用することができる。
【0012】
本発明の第二目的は、上記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を、癌、脂肪酸代謝疾患または免疫疾患のための治療薬の調製または開発に適用することである。
【0013】
本発明の第三目的は、上記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を含む、脂肪酸代謝疾患のための治療薬の調製または開発を提供することである。
【0014】
前記脂肪酸代謝疾患は、肥満、心脳血管疾患、高脂血症、原発性肥満、肺高血圧症、ホジキン病、過敏性腸症候群、脳血管障害、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、糸球体腎炎、ウイルス感染症から選択される。
【0015】
本発明の第四目的は、上記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を含む、癌治療薬の調製または開発を提供することである。
【0016】
前記癌は、卵巣癌、乳癌、子宮癌、結腸癌、子宮頸癌、肺癌、前立腺癌、精巣癌、胸腺癌、皮膚癌、膀胱癌、膵臓癌、白血病、リンパ腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、多発性骨腫癌、扁平上皮癌、腎臓癌、尿道癌、気管支癌、食道癌、骨癌、咽頭癌、膀胱癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、眼癌、皮膚癌、口腔癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、脳癌および中枢神経系癌から選択される。
【0017】
本発明の第五目的は、上記一般式(I)で表される化合物またはその薬理学的に許容される塩を含む、免疫疾患のための治療薬の調製または開発を提供することである。
【0018】
前記免疫疾患は、多発性硬化症、中枢神経系損傷、炎症性腸疾患、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、喘息および慢性閉塞性肺疾患から選択される。
【0019】
前記治療薬の剤形は、煎じ薬、丸薬、粉末、軟膏、ペレット、薬用ワイン、シロップ、抽出物、錠剤、スティラス、座薬、麹、灸などの従来の剤形を含み、さらに、錠剤、顆粒、サシェ、経口溶液、カプセル、滴下丸剤、混合物、チンキ剤、エアロゾル、フィルム、注射、点滴などの現代の剤形を含む。
【0020】
前記治療薬はまた、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、抗酸化剤、矯正剤、香料、共溶媒、乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整剤など、他の薬理学的に許容される補助物質を含む。
【0021】
本発明により提供される技術的解決手段は、以下の利点を有する、
(1)本発明の一般式Iで表される構造の化合物またはその薬理学的に許容される塩は、脂肪酸シンターゼ阻害剤を調製するために使用でき、FASNの酵素活性を阻害でき、新しいタイプのFASN阻害剤である。FASNは細胞脂質代謝の主要な酵素として、腫瘍の発生と悪化に関与している。FASNは、腫瘍細胞のエネルギー代謝、細胞周期調節、上皮間葉転換などの制御に重要な役割を果たし、腫瘍診断のマーカーや治療標的となることが期待されている。FASN阻害剤は、腫瘍細胞における内因性脂肪酸の生合成を阻害することにより、癌の発生と悪化を効果的に制御できる。したがって、本発明の脂肪酸シンターゼ阻害剤は、FASNの酵素活性に対して明らかな阻害効果を有し、腫瘍細胞の成長サイクルを間期に停止させ、組織腫瘍細胞を分裂させ、腫瘍細胞の増殖を抑制し、腫瘍細胞のアポトーシスを促進し、腫瘍に対する治療効果を発揮でき、重要な臨床応用の見通しを有する。
(2)本発明の脂肪酸シンターゼ阻害剤は、脂肪酸の組成と比率を調整でき、脂肪酸代謝疾患または免疫系疾患の治療に適用することができる。
(3)本発明の脂肪酸シンターゼ阻害剤により調製される医薬組成物は、脂肪酸酵素に対して明らかな阻害効果を有し、腫瘍細胞の細胞周期停止を引き起こし、そして、生きているマウスのエンドソームの移植腫瘍を大幅に低減させ、脂肪滴の形成を阻害できる。したがって、上記の医薬組成物は、重要な腫瘍治療の見込みのある薬物であり、癌または脂肪酸代謝疾患のための新しい治療アプローチを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、前立腺癌細胞PC3におけるFASNの発現に対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図2】
図2は、様々な腫瘍細胞の増殖に対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図3】
図3は、前立腺癌細胞PC3の成長サイクルに対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図4】
図4は、前立腺癌細胞PC3の分裂に対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図5】
図5は、様々な癌細胞の脂肪酸組成に対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図6】
図6は、前脂肪細胞op9における脂肪滴の合成に対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図7】
図7は、線虫の脂肪滴の蓄積に対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図8】
図8は、マウス前立腺癌細胞PC3の移植腫瘍に対する式Iによって表される化合物の効果を示す。
【
図9】
図9は、式I-1によって表される脂肪酸シンターゼ阻害剤の水素核磁気スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施例1 式I-1の化合物の合成
具体的な合成方法は次のとおりであり、
(1)中間体1である化合物5-(4-ブロモフェニルアミノ)-5-カルボニル吉草酸の合成:
5-エトキシ-5-カルボニル吉草酸(2g,12.5mM)、塩化メチレン(30mL)を100mLのシングルネックフラスコに加え、氷浴で0°Cに冷却して塩化チオニル(3g,25mM)をゆっくりと加え、室温まで温めた後、加熱して還流させた。反応溶液を急冷し、スピン乾燥させて44.9%の収率で中間体1生成物1gを得た。
(2)中間体2である化合物5-(4-ブロモフェニルアミノ)-5-カルボニルバレレートエチルの合成:
p-ブロモアニリン(1.15g,6.7mmol)、ジクロロメタン(15mL)、およびトリエチルアミン(0.85g,8.4mmol)を100mLのシングルネックフラスコに加え、温度を0℃に下げ、中間体1(1g,5.6mmol)をゆっくりと滴下して室温で一晩撹拌した後、TLCは反応の終了を示し、反応液をオレフィン塩酸(15mL)、炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸留して、68%の収率で1.2gの中間体2を得た。
(3)中間体3である化合物N-(4-ブロモフェニル)-5-ヒドラジノ-5-カルボニルペンタンアミドの合成:
中間体2(0.5g,1.6mmol)、ヒドラジン水和物(80%,0.6g,9.5mmol)、エタノール(5mL)を20mLのリザーバーフラスコに加え、90℃に加熱して2時間還流する。TLCは反応の終了を示し、溶媒を減圧下で蒸発させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:1~3:1)を使用して、83%の収率で0.4gの中間体3を得た。
(4)化合物I-1の合成:
中間体3(0.4g,1.3mmol)、5-ブロモ-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(04g,1.95mmol)、水酸化ナトリウム(0.52g,13mmol)、およびメタノール(5mL)を20mLのリザーバーフラスコに加え、室温で3日間撹拌した。反応溶液を濾過し、スピン乾燥させて粗生成物を得て、これをDMFでスラリー化して80%の収率で0.5gの生成物を得た。
【0024】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:1.85(t,2H)、2.27(d,1H)、2.35(t,2H)、2.64(t,1H)、6.83(m,1H)、7.40(m,2H)、7.54(m,2H)、7.23(d,1H)、10.03(d,2H)、10.34(s,1H)、11.24(d,1H)、11.69(s,1H)、マススペクトル(MS+):482、483m/z:[M+1,M+2]。
【0025】
実施例2 式I-2の化合物の合成
(1)4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタン酸の合成:
4-アミノ酪酸(2g,19.4mmol,1.0 eq)、THF(15mL)、水(15mL)、水酸化ナトリウム(1.6g,38.8mmol)を100mLのシングルネックフラスコに加え、0°Cに冷却し、(Boc)
2O(5.1g,23.3mmol)をゆっくりと滴下し、滴下後、25°Cで12時間撹拌した。反応が完了した後、回転蒸発させてTHFを除去し、15mLの水を加え、酢酸エチル(10mL)で抽出して過剰な(Boc)
2Oを除去し、水相をクエン酸または二塩酸でpHを2~3に調整し、酢酸エチル(15mL)で抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、スピン乾燥させて88%の収率で3.5gの生成物を得た。
(2)N-(4-ブロモフェニル)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタンアミドの合成:
p-ブロモアニリン(1g,5.8mmol)、ジクロロメタン(15mL)、およびトリエチルアミン(0.76g,7.4mmol)を100mLのシングルネックフラスコに加え、0℃に冷却し、中間体1(1g,5.6mmol)をゆっくりと滴下し、室温で一晩撹拌し、TLCは反応の終了を示し、反応溶液をオレフィン性塩酸(15mL)、重炭酸ナトリウム水溶液(15mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸留して、61%の収率で1.2gの生成物N-(4-ブロモフェニル)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタンアミドを得た。
(3)4-アミノ-N-(4-ブロモフェニル)-ブチルアミドの合成:
中間体2(0.5g,1.4mmol)、ジクロロメタン(5mL)を100mLのシングルネックフラスコに加え、0°Cに冷却し、トリフルオロ酢酸(1.5mL)をゆっくりと滴下し、室温で3時間撹拌した。TLCは反応の終了を示し、飽和重炭酸ナトリウムで反応溶液のpHを7に調整し、層を分離し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、スピン乾燥させて69.4%の収率で0.25gの生成物4-アミノ-N-(4-ブロモフェニル)-ブタンアミドを得た。
(4)化合物I-2の合成:
トリホスゲン(114mg、0.385mmol)をジクロロメタン(5 mL)に溶解し、温度を-10°Cに下げ、2-メトキシ-5-ブロモベンジルアミン(238mg,1.1 mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液をゆっくりと滴下し、その後、-10℃で30分間撹拌した。次に、温度を0℃に上げ、4-アミノ-N-(4-ブロモフェニル)-ブタンアミド(280mg,1.1mmol)のDCM-THF溶液を加えた。加えた後、室温で一晩放置した。TLCは反応の終了を示し、飽和炭酸水素ナトリウムで反応溶液のpHを7に調整し、層を分離し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、スピン乾燥させて粗生成物を得て、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:1~3:1)で精製して、37%の収率で0.2gのI-2を得る。
【0026】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:1.64(m,2H)、2.31(t,2H)、3.04(t,2H)、3.80(s,3H)4.14(d,2H)、6.16(t,1H)、6.26(t,1H)、6.91(d,1H)、7.22(s,1H)、7.36(d,1H)、7.40(m,2H)、7.62(m,2H)、10.11(s,1H)。マススペクトル(MS+):499、501、m/z:[M+2,M+4]。
【0027】
実施例3 式I-3の化合物の合成
化合物I-3の構造は以下のとおりであり、
化合物I-2(0.6mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、温度を-20°Cに下げ、BBr
3(0.9mmol)をゆっくりと加える。その後、室温で3時間撹拌した。TLCは反応の終了を示した。水(15mL)でクエンチし、DCM(15mL)で抽出し、有機相を乾燥させた後、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、スピン乾燥させて粗生成物を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:1~3:1)で精製して69%の収率で200mgのI-3化合物を得た。
【0028】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:1.65(m,2H)、2.31(t,2H)、3.05(t,2H)、4.13(d,2H)、6.22(t,1H)、6.46(t,1H)、6.74(t,1H)、7.20(m,2H)、7.52(m,2H)、7.60(m,2H)、10.05(s,1H)、10.12(s,1H)。マススペクトル(MS+):485、487、m/z:[M+2、M+4]。
【0029】
実施例4 式I-4の化合物の合成
具体的な合成は、次のステップを含み、
(1)2-ホルミルオキシ-5-ブロモ安息香酸の合成:
5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル酢酸(4.6mmol)、無水酢酸(9.2mmpl)を50mLのシングルネックフラスコに加え、濃硫酸を1滴加えた。室温で3時間反応させた。反応終了後、反応液を氷水に注ぎ、固体を分離し、濾過し、乾燥させて、83.3%の収率で1gの2-ホルミルオキシ-5-ブロモ安息香酸を得た。
(2)2-クロロホルミルベンゼン-4-ブロモ安息香酸メチルエステルの合成:
2-ホルミルオキシ-5-ブロモ安息香酸(3.86mmol)、ジクロロメタン(10mL)を50mLのシングルネックフラスコに加え、温度を0°Cに下げ、塩化チオニル(4.64mmol)をゆっくりと滴下し、還流して2時間撹拌し、反応が完了した後、反応溶液をスピン乾燥させて、83.3%の収率で1gの2-クロロホルミルベンゼン-4-ブロモ安息香酸メチルを得た。
(3)以下の中間体4である化合物の合成:
実施例1の中間体3化合物(0.64g,2.12mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)、およびトリエチルアミン(257mg,2.54mmol)を50mLのシングルネックフラスコに加え、温度を0°Cに下げ、2-クロロホルミルベンゼン-4-ブロモ安息香酸メチル(593mg,1.92mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)をゆっくりと滴下し、室温で一晩撹拌した。反応が完了した後、25mLの水を加え、HCl(1N)で反応溶液のpHを4に調整し、酢酸エチルで抽出し、有機相を廃棄した。炭酸ナトリウムで水相のpHを9に調整し、酢酸エチル(3×10 mL)を使用し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、スピン乾燥させて粗生成物を得て、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1~5:1)で精製し、60%の収率で763mgの中間体4である化合物を得た。
(4)化合物I-4の合成
中間体4(763mg,1.4mmol)、炭酸カリウム(1g,7.2mmol)、メタノール(10mL)を50mLのシングルネックフラスコに加え、室温で一晩撹拌した。反応が完了した後、反応溶液を濾過し、窒素でブロー乾燥させ、15mLの水を加え、酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、スピン乾燥させて粗生成物を得て、この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1~5:1)で精製し、80%の収率で565mgの化合物I-4を得た。
【0030】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:1.81(m,2H)、2.25(m,2H)、2.44(m,2H)、6.85(m,1H)、7.48(m,2H)、7.53(m,3H)、8.01(s,1H)、10.05(d,1H)、10.32(s,1H)、10.5~11.8(1H)。マススペクトル(MS+):499、501、m/z:[M+2,M+4]。
【0031】
実施例5 式I-5の化合物の合成
具体的な合成は、次のステップを含み、
(1)5-ブロモ-2-ベンジルオキシフェニル酢酸メチルの合成:
5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニル酢酸メチルエステル(1g,4.32mmol)、炭酸カリウム(1.2g,8.64mmol)、DMF(10mL)を50mLのシングルネックフラスコに加え、室温で10分間撹拌した後、臭化ベンジル(0.74mg,4.32mmol)を加えた。室温で2時間撹拌し、TLCは、反応の終了を示した。反応溶液に20mLの水を加え、1n塩酸でpHを4に調整し、酢酸エチル(2×10mL)で抽出し、有機相を廃棄した。水相を炭酸ナトリウムでpHを8に調整し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、スピン乾燥させて1.1gの5-ブロモ-2-ベンジルオキシフェニル酢酸メチルエステルを80%の収率で得た。
(2)5-ブロモ-2-ベンジルオキシベンジルアルコールの合成:
中間体1(1.1g,3.4mmol)、THF(11mL)、およびLiOH水溶液(5mL)を50mLのシングルネックフラスコに加えた。室温で一晩撹拌し、TLCは反応の終了を示した。反応液中のTHF溶液をスピン乾燥させて、水相を酢酸エチルで洗浄し、pHを2~3に調整し、濾過して乾燥させて、80%の収率で0.84gの5-ブロモ-2-ベンジルオキシベンジルアルコールを得た。
(3)5-ブロモ-2-ベンジルオキシクロロメチルベンゼンの合成:
5-ブロモ-2-ベンジルオキシベンジルアルコール(1g,3.86mmol)、ジクロロメタン(10mL)を50mLのシングルネックフラスコに加え、温度を0℃に下げ、塩化チオニル(560mg,4.64mmol)をゆっくりと滴下し、還流して2時間撹拌し、反応が完了した後、反応溶液をスピン乾燥させて、85%の収率で0.76gの生成物5-ブロモ-2-ベンジルオキシクロロメチルベンゼンを得た。
(4)化合物I-5の合成:
実施例1の中間体3(0.7g,2.58mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)、およびトリエチルアミン(257mg,2.54mmol)を50mLのシングルネックフラスコに加え、温度を0°Cに下げ、5-ブロモ-2-ベンジルオキシクロロメチルベンゼン(0.76g,2.34mmol)のテトラヒドロフラン溶液(8mL)をゆっくりと滴下した。室温で一晩撹拌した。反応が完了した後、25mLの水を加え、HCl(1n)で反応溶液のpHを4に調整し、酢酸エチルで抽出して有機相を廃棄した。炭酸ナトリウムで水相のpHを9に調整し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、スピン乾燥させて粗生成物を得て、この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=100:1~5:1)で精製して75%の収率で1.03gのI-5を得た。
【0032】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:1.86(m,2H)、2.25(m,2H)、2.37(m,2H)、5.27(s,2H)、7.10(m,1H)、7.38(m,1H)、7.45(m,2H)、7.50(m,4H)、7.59(m,2H)、7.64(m,1H)、7.70(m,1H)、10.07(s,2H)、10.14(s,1H)。マススペクトル(MS+):589、591、m/z:[M+2,M+4]。
【0033】
実施例6 式I-6の化合物の合成
具体的な合成は、次のステップを含み、
(1)4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)酪酸メチルの合成:
5.8mmolのアニリンと8.4mmolの2-ヒドロ-3ヒドロ-ピラン-2,6-ジオン(cas番号108-55-4)を250mlの3ネックフラスコに加え、15mLの有機溶媒AcOHの存在下で、中間体5-(4-ブロモフェニルアミノ)-5-カルボニル吉草酸を合成した。0~20℃の温度で、中間体1を80%の反応収率で生成した。
(2)4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)酪酸の合成:
20mlのメタノール、4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)酪酸メチル(1g)、NaOH(0.8g)を50mlのフラスコに加え、70℃で5時間加熱還流し、室温に冷却し、1M希塩酸を加えてPhを4に調整し、酢酸エチルで抽出し、有機相を分離して乾燥させ、減圧下で濃縮すると、4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)酪酸を得た。
(3)4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)ブタンアミドの合成:
20mlのDMF、4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)酪酸(0.5g)、HOBT(0.3g)、EDC(0.3g)を50mlのフラスコに加え、室温で5時間撹拌し、塩化アンモニウム(0.25g)を加え、室温で24時間撹拌し、20mlの水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を分離して乾燥させ、減圧下で濃縮すると、4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)ブタンアミド生成物を得た。
(4)式I-6の化合物の合成:
20mLのリザーバーフラスコに4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)ブタンアミド(1.3mmol)、ベンズアルデヒド(1.95mmol)、水酸化ナトリウム(0.52g,13mmol)、メタノール(5mL)を加え、室温で3日間撹拌した。反応溶液を濾過し、スピン乾燥させて粗生成物を得て、DMFでパルプ化して85%の収率で0.3gの生成物を得た。 得られた生成物の水素NMRスペクトルデータは以下のとおりであり、
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.60(t,2H)、2.78(t,2H)、7.07(t,1H)、7.30(t,2H)、7.55(t,2H)、7.56(d,2H) )、7.76(d,2H)、9.24(s,1H)、9.97(s,1H)。
【0034】
実施例7 式I-7の化合物の合成:
具体的な合成ステップについては実施例6を参照し、ステップ(4)のベンズアルデヒドを塩化ベンゾイルに置き換えて、I-7化合物を得た。収率は81%であった。
【0035】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.55(t,2H)、2.60(t,2H)、7.07(t,1H)、7.30(t,2H)、7.55(t,2H)、7.56(d,2H)、7.99(d,2H)、9.97(s,1H)、11.69(s,1H)。
【0036】
実施例8 式I-8の化合物の合成:
具体的な合成ステップについては実施例6を参照し、ステップ(4)のベンズアルデヒドのみをフェニルアセトアルデヒドに置き換えた。収率は83%であった。
【0037】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.60(t,2H)、2.78(t,2H)、3.39(s,2H)、7.07(t,1H)、7.22(t,1H)、7.24(d,2H)、7.27(t,2H)、7.30(t,2H)、7.56(d,2H)、8.50(t,1H)、9.91(s,1H)。
【0038】
実施例9 式I-9の化合物の合成:
尿素を100mlのシングルネックフラスコに加え、13.5mmolの4-カルボニル-4-(フェニルアミノ)ブチリルクロリドと1.5gのNaOHを加え、フラスコの口をシーリングし、1時間反応させ、次に6.8mmolの塩化ベンゾイルを加えて1時間反応させた。反応溶液に20mlの水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥させ、減圧下で蒸発乾固させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーに通して、83%の収率で最終生成物を得た。
【0039】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.55(t,2H)、2.60(t,2H)、7.07(t,1H)、7.30(t,2H)、7.55(t,2H)、7.56(d,2H)、7.99(d,2H)、9.97(s,1H)、10.91(s,2H)。
【0040】
実施例10 式I-10の化合物の合成:
具体的な合成ステップについては実施例6を参照し、ステップ(4)のベンズアルデヒドのみを2-ヒドロキシ-5-ブロモフェニルアセトアルデヒドに置き換え、収率は84%であった。
【0041】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.60(t,2H)、2.78(t,2H)、6.81(d,1H)、7.38(d,1H)、7.52(d,4H)、7.59(s,1H)、9.24(s,1H)、9.97(s,1H)、12.72(s,1H)。
【0042】
実施例11 式I-11の化合物の合成:
6.7mmolの4-((4-ブロモフェニル)アミノ)-4-カルボニルブチリルクロリドを100mlのシングルネックフラスコに加え、8.4mmolの5-ブロモ-2-ヒドロキシベンゼン(ホルム)アミドと0.85gのトリエチルアミンを加え、反応溶液に20mlの水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機相を乾燥させ、減圧下で蒸発乾固させ、粗生成物をカラムクロマトグラフィーに通して式I-11の最終生成物を得た。収率は83%であった。
【0043】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.55(t,2H)、2.60(t,2H)、6.88(d,1H)、7.52(d,4H)、7.66(d,1H)、8.00(s,2H)、9.97(s,1H)、11.11(s,1H)、11.69(s,1H)。
【0044】
実施例12 式I-12の化合物の合成:
2.2mmolのN-(4-ブロモフェニル)-5-ヒドラジノ-5-カルボニルペンタンアミドを100mlのシングルネックフラスコに加え、13mmolの5-ブロモ-2-ヒドロキシフェニルアセトアルデヒドと1.5gのNaOHを加え、フラスコをシーリングし、3日間反応させ、生成物を濾過し、減圧下で蒸発乾固させて、最終生成物を得た。収率は83%であった。
【0045】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.60(t,2H)、2.78(t,2H)、3.39(d,2H)、7.25(d,1H)、7.43(s,1H)、7.52(d,4H)、8.50(t,1H)、9.68(s,1H)、9.97(s,1H)。
【0046】
実施例13 式I-13の化合物の合成:
化合物I-13の合成ステップは化合物I-9と同じであり、塩化ベンゾイルのみを2-ヒドロキシ-5-ブロモベンゾイルクロリドで置き換えて81%の収率で化合物I-13を得た。
【0047】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.55(t,2H)、2.60(t,2H)、6.88(d,1H)、7.52(d,4H)、7.66(d,1H)、8.00(s,1H)、8.92(d,2H)、9.97(s,1H)、10.91(s,1H)、11.11(s,1H)、11.77(s,1H)。
【0048】
実施例14 式I-14の化合物の調製:
1.9mmolのN-(4-ブロモフェニル)-5-ヒドラジノ-5-カルボニルバレルアミドを100mlのシングルネックフラスコに加え、4.32mmolの5-ブロモ-2-ヒドロキシベンズアルデヒド、3gのNaOHを追加し、フラスコの口をシーリングし、3日間反応させ、生成物を濾過し、減圧下で蒸発乾固させて、73%の収率で最終生成物を得た。
【0049】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.13(m,2H)、2.34(t,2H)、2.39(t,2H)、6.90(d,1H)、7.38(d,1H)、7.52(d,4H)、7.80(s,1H)、8.78(s,1H)、10.05(s,1H)、11.07(s,1H)、11.19(s,1H)。
【0050】
実施例15
1mmolの化合物I-3と1.92mmolのトリエチルアミンを100mlのシングルネックフラスコに加え、2.16mmolの臭化ベンジルを氷浴で加え、室温で2時間撹拌し、生成物を濾過し、減圧下で蒸発乾固させて85%の収率で最終生成物を得た。
【0051】
1H-NMR(DMSO,400MHz)δ:2.01(m,2H)、2.44(t,2H)、3.38(t,2H)、4.43(d,2H)、5.18(m,2H)、6.02(s,2H)、6.86(m,1H)、7.19(m,1H)、7.35(m,4H)、7.48(m,2H)、7.56(m,2H)、7.87(m,1H)、7.70(m,2H)。
【0052】
実施例16
結腸癌細胞HCT116中のFASN活性に対する以下の式I-1で表される化合物の効果を検出し、
FASN酵素活性の検出:
(1)対数期の細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を調整し、2×106細胞/皿あたり直径6cmのペトリ皿を使用することが適切であった。
(2)5%のCO2、37°Cでインキュベートし、細胞が完全に付着した後、元の培地を廃棄し、20μMの化合物I-1を含む6mlの1%FBS培地を細胞の各皿に加え、20μMのセルレニンを含む6mlの1%FBS培地を陽性対照として加えた。
(3)4時間インキュベートした後、上澄みを廃棄し、トリプシンで2分間消化し、トリプシンの2~4倍量の完全培地で消化を停止し、1000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを廃棄し、細胞を5mlのDPBSに再懸濁し、500μlを取って1.5mlのEPチューブでタンパク質を定量化し、残りを遠心分離して上澄みを廃棄した。
(4)細胞をpH6.5である1mlの10mM KH2PO4/KOHのバッファー(4mM DTT、0.3mg/ml BSA、2.5Mm EDTAを含む)に再懸濁し、NADPH、アセチルコエンザイムAおよびマロニルコエンザイムAをそれぞれ0.14mM、0.18mM、0.09mMの最終濃度になるように加え、340nmでその吸光度値を測定し、測定時間は1分であった。
【0053】
FASN酵素活性の定義:活性単位の定義:37℃で1分間にタンパク質1ミリグラムあたり1μmolのNADPH酸化は1Uである。
FASN(U/mgタンパク質)=[(ΔA測定チューブ-ΔAブランクチューブ)]÷ε÷d×V合計×106]÷(Cpr×Vサンプル)÷T=1.16×(ΔA測定チューブ-ΔAブランクチューブ)÷Cpr、
FASN酵素活性(阻害率)に対する阻害剤の効果は、FASN(%)=[1-(FASN阻害剤÷FASN対照)]×100%として定義され、
ここで、εはNADPHモル吸光係数6.22×103l/mol/cmで、dはキュベット光路1cmで、V合計は反応システムの総容量1000μL=0.001Lで、Cprは上澄みタンパク質濃度mg/mlで、Vサンプルは反応系に加えた上澄みの量100μl=0.1mlで、Tは反応時間1分で、FASN阻害剤は各阻害剤で治療した細胞のFASN酵素活性で、FASN対照は阻害剤治療なしの細胞FASN酵素活性である。
【0054】
IC50値の測定
IC50(最大阻害濃度の半分)は、測定されたアンタゴニストの半分の阻害濃度を指す。これは、特定の濃度の特定の薬物または物質(阻害剤)が腫瘍細胞のアポトーシスを50%誘導することを示すことができ、該濃度は50%の阻害濃度と呼ばれ、すなわち、細胞の総数に対するアポトーシス細胞の比率が50%に等しい場合に対応する濃度である。IC50の値は、薬物がアポトーシスを誘導する能力を測定するために使用でき、すなわち、誘導能力が強いほど、値は低くなり、特定の細胞の薬物に対する耐性の程度を示すこともできる。
(1)対数期の細胞を回収し、細胞懸濁液の濃度を調整し、96ウェルプレートでは、ウェルあたり100μlを使用するのが適切であり、シードプレートでは、測定されるべき細胞の密度を1000~10000細胞/ウェルに調整し、エッジウェルを滅菌PBSで満たした。
(2)37°Cで5%のCO2の中で細胞をインキュベートし、細胞が完全に付着した後、元の培地を廃棄し、0.01μM、0.1μM、1μM、5μMおよび10μMの化合物I-1またはセルレニン(Cerulenin)を含む200μlの1wt%FBS培地を各ウェルに加え、ウェルの数は6であった。陰性対照として等量のDMSOを加えた。
(3)72時間インキュベートした後、写真を撮って細胞の状態を記録し、元の培地を廃棄し、0.5mg/mlのMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド、商品名はチアゾールブルー)を含む無血清培地100μlを各ウェルに加えた。
(4)2~4時間インキュベートした後、元の培地を廃棄し、各ウェルに150μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、300rpmで10分間振とうして紫色の結晶を完全に溶解させた。
(5)酵素結合免疫測定法で各ウェルのOD570nmでの吸光度を測定し、そしてOD630nmでの吸光度を参照として、二波長測定を行い、生存率の結果は、次の式で計算され、
細胞生存率=(OD570-OD630)/(OD570陰性対照-OD630陰性対照)
ここで、OD570は各治療グループのOD570値で、OD630は各治療グループのOD630値で、OD570対照は陰性対照グループのOD570値で、OD630対照は陰性対照グループのOD630値である。
(6)生存率の結果は、濃度勾配に従ってgraphpad6.0ソフトウェアで処理され、分析モードはlog(inhibitor) vs. Nonlinear regression (curve fit)であり、計算されたIC50値はx±SDとして表される。
【0055】
FASN発現量の検出:
Western-blot検出では、化合物I-1で治療した結腸癌細胞HCT116でのFASNタンパク質発現の変化を検出し、セルレニンで治療した結腸癌細胞でのタンパク質発現の変化を陽性対照とした。Western-blotの具体的なステップは次のとおりであり、
A.溶液の調製
(1)10%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウムSDS溶液:0.1gのSDS、1mLのH2O脱イオン水で調製し、室温で保管した。
(2)分離ゲルバッファー:18.15gのTrisを量り、80mlの水で溶解した後、HClでpHを8.8に調整し、水で最終容量100mLに希釈し、1.5mmol/LのTris-HCl(pH8.8)溶液を得た。
(3)濃縮ゲルバッファー:6.05gのTrisを80mLの水に溶解し、約HClでpH6.8に調整し、水で希釈して最終容量を100mlにし、0.5mmol/LのTris-HCl(pH6.8)溶液を得た。
(4)SDS-PAGEローディングバッファー:8mLのpH6.8である0.5mol/LのTrisバッファー、6.4mLのグリセロール、12.8mLの10wt%のSDS、3.2mLのメルカプトエタノール、1.6mLの0.05wt%のブロモフェノールブルー、32mLのH2Oを後で使用するために混合した。
(5)Tris-グリシンランニングバッファー:30.3gのTris、188gのグリシンおよび10gのSDSを量り、蒸留水で1000mlに溶解し、使用前に10倍に希釈した。
(6)トランスファーメンブレンバッファー:14.4gのグリシン、6.04gのTrisを量り、その中に200mlのメタノールを加え、最後に総量を1lにするために水を加えた。
(7)Tris緩衝塩溶液(TBS):20mMのTris-HCl(pH 7.5)と500mMのNaClを含む。
【0056】
B、PBSで癌細胞を3回洗浄し、ライセートを加え、直接5分間沸騰させ、氷上で冷却した後、12000rpmで2分間遠心分離し、上澄みを取り、後で使用するために-20℃で保存した。
【0057】
C、BCA方法でタンパク質の濃度を測定した。
ウェルプレートに0.5mg/ml標準タンパク質勾配を加え、20μlになるようにPBSを加えた。適切な量(3μl)のタンパク質サンプルをウェルプレートに加え、20μlになるようにPBSを加えた。200μlの(毎回の使用前に調製された)BCA作業溶液を各ウェルに加え、37°Cで30分間インキュベートした。562nmでの吸光度を測定し、検量線とサンプル量からタンパク質の濃度を計算した。
【0058】
D、SDS-PAGEゲル電気泳動
(1)洗浄後の2枚のガラス板を位置合わせしてクリップに入れて固定し、棚に垂直に固定して接着剤を充填した。
(2)10wt%分離ゲルの充填:TEMED(テトラメチルエチレンジアミン)を分離ゲルバッファーに加えた後、すぐによく振って、2枚のガラスプレートの隙間に充填した後、エタノールで密封し、接着剤が完全に固まったら、接着剤上層のエタノールを流し出し、そして吸収紙で拭き取った。
(3)5wt%の濃縮ゲルの充填:TEMED(テトラメチルエチレンジアミン)を濃縮ゲルバッファーに加えた後、すぐによく振って、分離ゲルの上層に充填し、残りのスペースを濃縮ゲルで満たした後、コームを濃縮ゲルに挿入した。ゲル濃縮物が固まったら、上向きに引き上げて静かに引き出した。
(4)ゲル充填後のガラスプレートを電気泳動タンクに入れ、十分な電気泳動溶液を加えたサンプルローディングの準備を始めた。タンパク質サンプルのタンパク質含有量を測定した後、5×SDSローディングバッファーを加え、沸騰水中で3分間沸騰させ、よく混合してからサンプルをローディングすると、サンプルをローディングした総タンパク質含有量は35μgであった。
(5)定電圧80Vの電気泳動でゲルを流し、サンプルをゲルの下層に入れたら、ブロモフェノールブルーがゲルの底に到達するまで120Vの定電圧で電気泳動を行い、メンブレンを転写した。
【0059】
E、メンブレン転写
(1)接着剤の切断:ガラスプレートをこじ開け、小さなガラスプレートを取り外し、濃縮された接着剤をこすり落とし、Markerを対照として実験の必要に応じてタンパク質の分子量に応じて接着剤を切断した。
(2)メンブレンの準備:PVDFメンブレンと濾紙をカットし、カットしたPVDFを80%のメタノール溶液に入れて30秒間アクティブにした。
(3)メンブレンの装填:転写メンブレン用のクリップを開いて、黒い面(負極)を水平に保持させた。その上にスポンジパッドを乗せ、転写液を加えて浸し、浸した濾紙をパッドの上に置き、次に、ゲル-ニトロセルロースメンブレン-濾紙-スポンジパッドの順に積み重ねた。最後に、白いプレート(正極)をカバーして転写タンクに入れた。
(4)メンブレン転写:クリップの黒い面がタンクの黒い面に向き、クリップの白い面がタンクの赤い面に向くように、クリップを転送タンクに入れた。4℃でメンブレンを転写し、定電流400mAにした。
(5)転写後、メンブレンを取り外し、あるコーナーをマークした。
【0060】
F、免疫反応
(1)シーリング:TBSTで毎回5分間、メンブレンを3回洗浄した。洗浄後、ニトロセルロースメンブレンを5%の脱脂粉乳に入れ、室温で1時間振とうした。
(2)一次抗体(FASN)の追加:シーリングしたニトロセルロースメンブレンをTBST含有の洗浄タンクに入れ、シェーカーで3回、それぞれ5分間洗浄した。一次抗体が加えられたプレートで4℃で一晩インキュベートした。
(3)二次抗体(マウス抗体またはウサギ抗体)の追加:一次抗体を回収し、ニトロセルロースメンブレンをTBST洗浄タンクにおいて室温シェーカーで3回、毎回5分間洗浄し、次に、洗浄したニトロセルロースメンブレンを二次抗体の入ったプレートに入れ、室温で暗所で45分間インキュベートした。インキュベート後、ニトロセルロースメンブレンをTBST洗浄タンクで3回、各回5分間洗浄した。
【0061】
G、化学発光
発色試薬を小さな遠心チューブに入れ、発光キットの指示に従ってそれらを混合し、ニトロセルロースメンブレンに加え、化学発光イメージャーで発色した。
【0062】
テーブル1は、結腸癌細胞HCT116中の脂肪酸シンターゼFASNの活性に対する化合物I-1~I-8および2つの中間生成物の影響を示し、対照グループと比較して、多種の化合物およびセルレニンは、結腸癌細胞のFASN活性を低減させる可能性があり、かつ、セルレニンと比較して、化合物I-1~I-8の阻害効果は、セルレニンの阻害効果よりも大幅に高くなった。
【0063】
図1は、結腸癌細胞HCT116中のFASN発現の変化に対する化合物I-1~I-8の影響を示し、結果は、化合物I-1~I-8またはセルレニンの添加に関係なく、FASNの発現が有意に変化しないことを示し、化合物I-1~I-8はFASNの酵素活性を阻害できるが、FASNの通常発現には影響しないことを示した。
【0064】
記の結果は、式I-1~I-8で表される化合物が、FASNの効果的阻害を形成する、新しいタイプの脂肪酸シンターゼ阻害剤として使用できることを示した。式I-1で表される化合物は、腫瘍、肥満および他の関連する代謝性疾患の治療薬として使用して、疾患の発生と発症を予防および/または治療できることを示した。
【0065】
実施例17
腫瘍細胞(22RV1、PC-3、HT-29、Hela、Hep G2およびCaCo-2)の増殖に対する式I-1で表される化合物の影響の検出:
(1)対数期の細胞を回収し、細胞懸濁液の濃度を調整し、96ウェルプレートでは、ウェルあたり100μlを使用するのが適切であり、シードプレートでは、測定されるべき細胞の密度を1000~10000細胞/ウェルに調整し、エッジウェルを滅菌PBSで満たした。
(2)37°Cで、5%のCO2で細胞をインキュベートし、細胞が完全に付着した後、元の培地を廃棄し、10μMの化合物I-1を含む1μ%のFBS培地200μlを各ウェルに加え、ウェルの数は6であった。同じ濃度の脂肪酸シンターゼ阻害剤C75、セルレニン(Cerulenin)およびGSK2194069(以下、GSKと呼ぶ)を陽性対照として加え、等量のDMSOを陰性対照として加えた。
(3)72時間インキュベートした後、写真を撮って細胞の状態を記録し、かつ、元の培地を廃棄し、0.5mg/mlのMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド、商品名:チアゾールブルー)を含む無血清培地100μlを各ウェルに加えた。
(4)2~4時間インキュベートした後、元の培地を廃棄し、各ウェルに150μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、300rpmで10分間振とうして、紫色の結晶を完全に溶解させた。
(5)各ウェルの吸光度を酵素結合イムノアッセイにおいてOD570nmで測定し、そしてOD630nmでの吸光度を基準として、二波長測定を行い、結果は次の式で計算され、
細胞生存率=(OD570-OD630)/(OD570陰性対照-OD630陰性対照)
ここで、OD570は各治療グループのOD570値で、OD630は各治療グループのOD630値で、OD570対照は陰性対照グループのOD570値で、OD630対照は陰性対照グループのOD630値であった。
【0066】
図2は、脂肪酸シンターゼ阻害剤C75、セルレニンとGSK、および化合物I-1が22RV1、PC-3、HT-29、Hela、Hep G2、CaCo-2、およびHCT116という合計7つの異なる腫瘍細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
図2から、脂肪酸シンターゼ阻害剤としてのC75、セルレニン、およびGSKは腫瘍細胞の増殖を阻害する効果があるが、その効果は腫瘍細胞の種類によってまったく異なり、一部の腫瘍細胞の増殖には大きな影響を与えず、安定性が低いことがわかった。上記の3つの阻害剤と比較して、化合物I-1の腫瘍増殖に対する阻害効果は大幅に改善され、かつ、多種の腫瘍細胞を効果的に阻害できる。
【0067】
実施例18
前立腺癌細胞PC-3の成長サイクルに対する式I-1で表される化合物の影響に対する検出:
(1)対数増殖期にある癌細胞を6cmペトリ皿に接種し、皿あたりの接種量は2×106細胞であり、5%のCO2、37℃でインキュベートした。
(2)細胞が完全に付着した後、それらを血清なしで12時間飢餓状態にし、異なる濃度勾配(4μM、8μMおよび10μM)を有する式Iで表される構造化合物を含む6mlの2%FBS培地を加えた。
(3)24時間のインキュベートした後、上澄みを廃棄し、トリプシンで2分間消化し、2~4倍容量のトリプシンの完全培地で消化を停止し、1000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを廃棄し、1mlのDPBSで2回洗浄し、上澄みを廃棄した。
(4)1mlの70%エタノール溶液に細胞を再懸濁し、4℃で18時間以上保存して細胞を固定させた。
(5)遠心分離して上澄みを廃棄し、DPBSで2回洗浄して残留エタノールを除去した。
(6)遠心分離して上澄みを廃棄し、1mlのPI染色溶液に室温で15分間暗所でインキュベートし、フローサイトメーターで1時間以内に検出した。
【0068】
図3は、前立腺癌細胞PC-3の成長サイクルに対する式Iで表される構造化合物の異なる濃度の影響を示した。
図3は、G0/G1フェーズ、Sフェーズ(S-Phase)およびG2/Mフェーズで、阻害剤治療なしの対照グループの前立腺癌細胞PC-3と、それぞれ4μM、6μM、8μMおよび10μMの化合物I-1で治療された前立腺癌細胞PC-3の割合関係の統計結果グラフを示す。
図3から、Sフェーズ細胞における式Iで表される構造化合物で治療されたPC3細胞の割合が大幅に増加し、対照グループの10.34%から10μM治療グループの19.10%に増加し、それにより、分裂フェーズ(Mフェーズ)およびG0/G1フェーズに入る腫瘍細胞の割合が減少し、前立腺癌細胞PC3の有糸分裂が阻害され、Sフェーズサイクルブロックになり、そして、薬物濃度の増加に伴い、ブロックが大幅に増加していることがわかった。
【0069】
したがって、式Iで表される構造の化合物は、PC-3に明らかなSフェーズサイクルを出現させ、腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍細胞のアポトーシスを促進でき、かつ、該化合物は腫瘍細胞の増殖サイクルの濃度依存性阻害を示した。式Iで示される構造の化合物は、腫瘍の発生と発症を阻害でき、腫瘍の臨床治療のための新しいタイプの治療薬として使用されることを示した。
【0070】
実施例19
前立腺癌細胞PC3の細胞分裂に対する式I-1で表される化合物の影響に対する検出
(1)対数増殖期にある癌細胞を取り、培地を廃棄し、2分間トリプシンで消化し、トリプシン完全培養液の2~4倍の容量で消化を停止し、1000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを廃棄した。
(2)1mlの無血清培地で1回洗浄し、遠心分離して上澄みを廃棄した。
(3)4mlの無血清培地に細胞を再懸濁し、それらを数えた。
(4)1:1(v:v)で10μmのCFSE作業液を加え、37℃で15分間、暗所でインキュベートした。
(5)最終濃度が40%になるように血清を加え、氷上で10分間インキュベートして染色を停止した。
(6)遠心分離して上澄みを廃棄し、細胞を完全培地に再懸濁し、6cmのペトリ皿に播種し、ペトリ皿あたり2×106細胞であり、5%のCO2で、37℃でインキュベートした。
(7)細胞が完全に付着した後、式Iで表される構造の化合物10μMを含む2%のFBS培地6mlを加えた。
(8)24時間インキュベートした後、培地を廃棄し、2分間トリプシンで消化し、完全培地の2~4倍量のトリプシンで消化を停止し、1000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを廃棄し、細胞を1mlのDPBSに再懸濁し、フローサイトメーターで検出した。
【0071】
図4は、式Iで表される化合物が前立腺癌細胞PC-3の細胞分裂に及ぼす影響を示し、図面から、化合物I-1を含まない化合物と比較して、式Iで表される化合物で治療された前立腺癌細胞PC3の分裂ピークの数が大幅に減少し、化合物が効果的に細胞分裂を阻害し、細胞分裂の数を減らすことができ、それによって癌細胞の増殖に影響を及ぼし、腫瘍増殖を阻害することがわかった。式I-1で示される構造を有する化合物は、腫瘍の発生と発症を阻害でき、腫瘍の臨床治療のための新しいタイプの治療薬として適用されることを示した。
【0072】
実施例20
式I-1で表される構造の化合物が、腫瘍細胞(前立腺癌細胞PC-3および結腸癌癌細胞HCT116)によって合成される脂肪酸含有量と組成に及ぼす影響に対する検出:
(1)対数増殖期の癌細胞を取り、6cmのペトリ皿に接種し、接種密度は2×106細胞であり、5%のCO2、37℃でインキュベートした。
(2)細胞が完全に付着した後、式Iで表される化合物20μMを含む1%FBS培地6mlを各ペトリ皿に加え、培地を陰性対照とし、セルレニンを陽性対照とした。
(3)24時間インキュベートした後、培地を廃棄し、トリプシンで2分間消化し、完全培地の2~4倍量のトリプシンで消化を停止し、1000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを廃棄した。
(4)10mlのDPBSに再懸濁し、タンパク質定量のために1ml細胞懸濁液を1.5mlのepチューブに移し、残りの9mlを再度遠心分離して上澄みを廃棄し、適量の内部標準物を加え、凍結乾燥させた。
(5)1mlの0.5M NaOH-メタノール溶液を加え、窒素で満たし、30秒間ボルテックスし、100℃で5分間固浴し、室温まで冷却させた。
(6)1mlの40%三フッ化ホウ素-メタノール溶液を加え、窒素で満たし、30秒間ボルテックスし、100℃で5分間固浴し、室温まで冷却させた。
(7)4mlのn-ヘキサン、2mlの飽和塩化ナトリウム溶液を加え、ボルテックスし、2000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを取り、窒素を吹き込んで、500μlのn-ヘキサンに再懸濁し、サンプルバイアルに移し、GC-MSで検出した。
【0073】
図5は、式Iで表される化合物が前立腺癌細胞PC-3と結腸癌細胞HCT116の脂肪酸含有量と組成に及ぼす影響を示し、脂肪酸のタイプには、18:2、18:1、18:0、16:1、16:0と14:0がある。
図5から、式Iで表される化合物で治療されたPC-3とHCT116細胞の総脂肪酸含有量は対照グループより大幅に低く、かつ、16:0の脂肪酸含有量も対照グループより低いことが分かり、式Iで表される化合物がPC-3とHCT116における脂肪酸の合成を阻害し、腫瘍細胞内の脂肪酸の分布を変化させ、それにより腫瘍細胞の代謝に影響を与えることができることを示した。脂肪酸の合成を阻害すると、細胞増殖に必要な構造脂質とエネルギーを低減させ、これは、腫瘍の増殖を阻害し、腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こす重要な理由となり、したがって、化合物I-1は、腫瘍の発生と発症を抑制することができ、重要な臨床応用の見通しがある。
【0074】
実施例21
前脂肪細胞OP9に対する式I-1で表される構造を有する化合物の影響に対する検出:
(1)対数増殖期にある癌細胞を取り、6cmのペトリ皿に接種し、接種密度は2×106細胞であり、5%のCO2、37℃でインキュベートした。
(2)細胞が完全に付着した後、20μMの式Iで表される化合物を含む6mlの1%FBS培地を各ペトリ皿に加え、培地を陰性対照とし、セルレニンを陽性対照とした。
(3)24時間インキュベートした後、培地を廃棄し、トリプシンで2分間消化し、完全培地の2~4倍量のトリプシンで消化を停止し、1000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを廃棄した。
(4)10mlのDPBSに再懸濁し、タンパク質定量のために1mlの細胞懸濁液を1.5mlのepチューブに移し、残りの9mlを再度遠心分離して上澄みを廃棄し、適量の内部標準物を加え、凍結乾燥させた。
(5)1mlの0.5M NaOH-メタノール溶液を加え、窒素で満たし、30秒間ボルテックスし、100℃で5分間固浴し、室温まで冷却させた。
(6)1mlの40%三フッ化ホウ素-メタノール溶液を加え、窒素で満たし、30秒間ボルテックスし、100℃で5分間固浴し、室温まで冷却させた。
(7)4mlのn-ヘキサン、2mlの飽和塩化ナトリウム溶液を加え、ボルテックスし、2000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを取り、窒素を吹き込んで、500μlのn-ヘキサンに再懸濁し、サンプルバイアルに移し、GC-MSで検出した。
【0075】
図6Aは、顕微鏡下で式Iの化合物で治療されたop9細胞の脂肪滴オイルレッド染色、およびn-ヘキサン溶解後に測定されたOD510値である。
図6Aから、対照グループと比較して、式Iで表される化合物で治療されたOP9細胞の脂肪滴の数は大幅に減少し、かつ、セルレニンで治療された実験グループよりも減少が大きかったことがわかり、
図6Bで得られたOD
510値も同じ結果を証明し、式Iで表される構造が前脂肪細胞OP9における脂肪滴の蓄積を阻害できることを示した。
【0076】
実施例22
線虫における脂肪滴の蓄積に対する式Iで表される構造を有する化合物の影響に対する検出:
線虫を取り、M9バッファーに再懸濁し、3mlの線虫懸濁液を各試験チューブに加え、式Iで表される化合物を実験グループに加えて最終濃度を10μMにし、式Iで表される化合物のないものを対照とし、シェーカーで200rpm /分で振とう培養し、9日後にオイルレッド染色を行い、顕微鏡でガラススライド上に脂肪滴を観察した。
【0077】
図7は、式Iで表される化合物で9日間治療された線虫体内の脂肪滴の蓄積を示す。図に示すように、式Iで表される化合物で治療された線虫の色は、オイルレッド染色後に対照グループよりも明らかに明るく、明らかな白い領域が見られるが、対照グループの線虫全体は、白い領域のない暗い色を示し、式Iで表される化合物で治療された線虫における脂肪滴の蓄積は対照グループのそれより有意に少なく、式Iで表される化合物が線虫における脂質滴の合成と蓄積を効果的に阻害できることがわかった。脂質小滴の合成と蓄積に対する化合物I-1の阻害効果は、それが肥満などの代謝性疾患の治療に有効であり得ることを示した。
【0078】
実施例23
マウスの移植された腫瘍の成長に対する式Iで表される構造の化合物の影響に対する検出:
(1)癌細胞を80%(対数増殖期)の密度まで培養し、細胞継代実験に従って続行し、PBSで洗浄し、消化し、遠心分離して上澄みを除去し、その後、無血清培地で細胞を再懸濁して2回洗浄した。無血清培地で細胞懸濁液の濃度を2×10
7細胞/mlに調整した。一晩で4度溶かした等量のマトリゲルを加え、振って均一に混合した(マトリゲルを含むすべてのステップは氷上で操作した)。
(2)各ヌードマウスに100μlの細胞とマトリゲルの混合物を皮下接種し、接種後、毎日定期的に腫瘍の成長を観察し、移植された腫瘍モデルが成功するかどうかを判断し、腫瘍の体積が約200mm
3になったら、薬物治療を開始した。
(3)実験では、移植された腫瘍モデルが成功したヌードマウスを選択し(腫瘍形成率100%)、ヌードマウスを7日間飼育し、皮下癌細胞移植実験を行い、腫瘍が肉眼で見えた後、2日ごとに1回の腹腔内注射を行い、注射量は5mg/kgの化合物I-1で、注射溶媒グループを対照として、各グループ5匹であった。投与の4週間後、腫瘍を取って秤量した(
図9A)。
(4)腫瘍体積の計算式:
V=ab
2/2、ここで、Vは体積(mm
3)、aは長さ(mm)で、bは幅(mm)である。
(5)腫瘍をスライスした後、H&E染色を行い、マウス腫瘍組織の変化を観察した。
【0079】
図8は、マウスにおけるPC3移植腫瘍に対する式I-1で表される化合物の影響を示す。
図8Aは、化合物I-1治療後のマウス腫瘍の質量変化を示し、
図8Bは、化合物I-1治療後の移植腫瘍のHE染色効果を示す。
図8Aに示すように、式I-1で表される化合物で4週間治療したマウスの腫瘍の質は、対照グループのそれより有意に減少した。
図8Bは腫瘍HE染色切片であり、式Iで表される化合物で治療されたマウス腫瘍組織は明るい色の広い領域を有し、点状の深い領域が大幅に減少し、式I-1で表される化合物が腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍組織内の浮腫の広い領域につながる可能性があることを示した。
【0080】
上記の結果から、化合物I-1はマウス腫瘍に対して明らかな阻害効果を有し、化合物I-1は新しいタイプの抗腫瘍薬として重要な適用の見通しがあることがわかった。
【0081】
実施例24
化合物I-1~化合物I-8および中間体1と中間体2がHCT116中のFASN活性に対する阻害効果、および腫瘍細胞(PC-3とHCT116)の増殖に対する影響を検出した。
【0082】
実験例18に示すFASN酵素活性測定法で、FASN酵素活性に対する異なる物質の影響を検出し、実験例19に示す方法で、腫瘍細胞の増殖に対する異なる物質の影響を検出し、そしてセルレニンを対照として、FASN酵素活性に対する異なる物質の阻害率(%)と腫瘍増殖の阻害率(IC
50nM)を計算した。検出結果を以下の表1に示し、
【0083】
上記表1から分かるように、本発明の化合物I-1~I-8は、脂肪酸合成酵素活性を効果的に阻害でき、このうち、脂肪酸シンターゼ(FASN)に対する化合物I-1の阻害率は58.63%と最高で、陽性対照のセルレニン阻害率21.32%よりも有意に高かった。IC50の結果によると、化合物I-1の有効濃度はセルレニンの有効濃度よりも著しく低く、9±1.1nMは前立腺癌細胞PC3の50%の死亡率を引き起こす可能性があるが、13±1.7nMは結腸癌細胞HCT116の50%の死亡率を引き起こす可能性がある。脂肪酸シンターゼ(FASN)は、腫瘍の脂肪酸代謝と細胞周期プロセスに関与し、腫瘍の成長、浸潤と移動に重要な役割を果たし、本発明によって提供される一般式I-1で表される構造を有する化合物は、FASN阻害剤として、腫瘍細胞における脂肪酸の合成と分布に影響を与え、細胞周期を間期に停止させ、腫瘍細胞の有糸分裂を組織化し、腫瘍増殖に対する阻害を達成できる。したがって、新しいタイプの脂肪酸シンターゼ阻害剤として、一般式Iで表される構造を有する化合物は、腫瘍の臨床治療および肥満などの代謝性疾患の治療において重要な適用の見通しを有する。
【0084】
以上、本発明を好適な実施形態により開示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱することなく様々な変更と修正を加えることができるため、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定義されるべきである。