IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 家登精密工業股▲ふん▼有限公司の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】帯電防止性能を備えたレチクルポッド
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/673 20060101AFI20230405BHJP
   B65D 85/38 20060101ALI20230405BHJP
   G03F 1/66 20120101ALI20230405BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/38 310
G03F1/66
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021119004
(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公開番号】P2022058167
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】63/085,221
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/237,323
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506017182
【氏名又は名称】家登精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUDENG PRECISION INDUSTRIAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】9F.,No.2,Sec.4,Zhongyang Rd.,Tucheng Dist.,New Taipei,Taiwan236
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】邱 銘乾
(72)【発明者】
【氏名】荘 家和
(72)【発明者】
【氏名】李 怡萱
(72)【発明者】
【氏名】▲温▼ 星閔
(72)【発明者】
【氏名】薛 新民
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-058192(JP,A)
【文献】特開2011-166065(JP,A)
【文献】特開2003-234399(JP,A)
【文献】特開2018-120221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/38
G03F 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止性能を備えたレチクルポッドであって、
担持面を備えた基部を有し、前記担持面は、底面によって構成された凹部を有し、
前記基部の前記担持面を包囲した状態でレチクルを支持するよう構成された複数の支持部材を有し、
前記凹部は、前記担持面と前記底面との間に延びる深さによって規定され、前記深さは、前記担持面に付着している粒子に及ぼされる静電気力を弱めるよう300μmから3400μmまでの範囲にあり、
前記凹部は、前記レチクルのパターンゾーンの面積に等しいまたはこれよりも広い面積のゾーンを包囲したリング状の縁部を有する、レチクルポッド。
【請求項2】
前記基部は、前記担持面を包囲した状態で気密封止された受け入れ空間を形成するよう蓋と接触関係をなすようになっている上方に向いた接触面をさらに有する、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項3】
前記リング状の縁部は、前記レチクルの前記パターンゾーンを覆うーンを包囲するリング状の縁部を有する、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項4】
前記レチクルの残留電圧は、50Vを超え、前記深さは、少なくとも、400μmを超える、請求項1記載のレチクルポッド。
【請求項5】
帯電防止性能を備えたレチクルポッドであって、
機械的加工によって形成された上面を備えた基部を有し
前記上面を包囲した状態でレチクルを支持するよう構成された複数の支持部材を有し、前記レチクルの下方に向いた表面と前記基部の前記上面との間には、前記基部の前記上面に付着した粒子に及ぼされる静電気力を弱めるよう少なくとも300μmを超える隙間が形成され
前記基部は、前記複数の支持部材と前記上面との間に延びるリング状の縁部を有し、前記上面の面積を、前記レチクルのパターンゾーンの面積と等しいか、これよりも広く構成する、レチクルポッド。
【請求項6】
前記基部は、前記上面を包囲するとともに気密封止された受け入れ空間を形成するよう蓋と接触関係をなすようになっている上方に向いた接触面をさらに有する、請求項記載のレチクルポッド。
【請求項7】
前記上面、前記レチクルの前記パターンゾーンを覆、請求項記載のレチクルポッド。
【請求項8】
前記レチクルの残留電圧は、50Vを超え、前記隙間は、少なくとも、400μmを超える、請求項記載のレチクルポッド。
【請求項9】
レチクルポッドの基部に利用されるレチクルポッドの加工方法であって、前記基部は、担持面および複数の支持部材を有し、前記複数の支持部材は、前記基部の前記担持面を包囲した状態でレチクルを支持するよう構成され、前記方法は、
前記担持面を機械的に加工して前記担持面上に凹部を形成するステップを含み、前記凹部は、底面によって構成され、
前記凹部を加工して前記凹部を前記レチクルの残留電圧に応じた深さによって規定するステップを含み、前記深さは、少なくとも300μmを超える、方法。
【請求項10】
前記残留電圧は、50Vを超え、前記深さは、少なくとも、400μmを超える、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記残留電圧は、100Vを超え、前記深さは、少なくとも、400μmを超える、請求項記載の方法。
【請求項12】
前記残留電圧は、200Vを超え、前記深さは、少なくとも、800μmを超える、請求項記載の方法。
【請求項13】
前記残留電圧は、400Vを超え、前記深さは、少なくとも、1600μmを超える、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容(本発明)は、レチクルポッド、特に帯電防止性能を備えたレチクルポッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来型EUVプロセスに用いられるレチクルは、専用EUVレチクルポッドで保護されなければならない。図1は、EUVレチクルを受け入れるレチクルポッドを示しており、このレチクルポッドは、外側ポッド(100)および内側ポッド(110)を有するとともに外側ポッド(100)および内側ポッド(110)によって画定された内側層および外側層受け入れ空間を備えている。外側ポッド(100)は、蓋(101)および基部(102)を有し、蓋(101)と基部(102)は、内側ポッド(110)を受け入れる受け入れ空間を画定するよう互いに結合される。内側ポッド(110)は、蓋(111)および基部(112)を有し、蓋(111)と基部(112)は、レチクル(120)を受け入れるとともにレチクルに対して気密封止作用を提供する受け入れ空間を画定するために専用の手段によって互いに結合される。
【0003】
レチクル(120)が内側ポッド(110)内に受け入れられると、レチクル(120)の縁部または底部は、基部(112)に設けられた支持部材(1121)によって支持され、その結果、レチクル(120)の下方に向いた表面は、レチクル(120)の上方に向いた担持面(1122)よりも僅かに高くなっている。以下、単に「担持面(1122)」と称する上方に向いた担持面(1122)は、支持部材(1121)によって包囲されていて、この担持面(1122)は、レチクル(120)のパターンゾーン(図示せず)の面積よりも広い面積のものである。担持面(1122)は、基部(112)の周囲のところに設けられかつ蓋(111)と接触関係をなすようになっている上方に向いた接触面(1123)とは異なっている。上方に向いた接触面(1123)は、リングの形状をしている。
【0004】
露光機器から取り出されたレチクル(120)は、残留電圧を呈しており、この残留電圧は、50Vを超える。残留電圧のあるレチクル(120)が内側ポッド(110)内に戻された場合、基部(112)に付着している粒子がレチクル(120)の底部に吸着される場合がある。粒子がレチクル(120)のパターンゾーンに吸着された場合、レチクル(120)は、露光プロセスの次の段階においてパターン欠陥を生じることになる。
【0005】
図2は、基部(112)への帯電レチクル(120)の接近のステップを示している。基部(112)をアースし、かくしてこれを帯電させることはないが、粒子(P)は、上面(例えば、基部(112)の上述の担持面(1122))上に存在する。帯電または荷電レチクル(120)がある程度まで基部(112)に近づくと、レチクル(120)の負電荷によって生じた電場により、基部(112)の上面および粒子(P)は、正電荷を発生させる。レチクル(120)が基部(112)にかなり接近すると、静電界の強度は、粒子(P)を引き付けるのに十分であり、その結果、粒子(P)は、基部(112)の上面から逃げ、かくして、レチクル(120)の底部に吸着状態になる。明らかなこととして、基部(112)をアースすることによっては静電荷によって生じる全ての欠陥を解決することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
静電荷により生じるレチクル欠陥を考慮して、静電荷を帯びたレチクルを受け入れるよう帯電防止性能を備えたレチクルポッドを提供することが必要である。
【0007】
図3は、粒子(P)が重力(Fw)および静電力(Fe)を受け入れている状態を示し、Fは、合力を示し、qは、電荷の量を示し、Eは、静電界を示し、mは、粒子の質量を示し、gは、万有引力定数を示し、Vは、電圧を示し、dは、レチクルの底部と基部の上面との間の隙間を示している。かくして、基部上の粒子(P)をレチクル底部に吸着させる際の要因としては、粒径(重量)、レチクル電荷量、およびレチクルの底部と基部の上面との間の距離が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の目的は、帯電防止性能を備えたレチクルポッドであって、レチクルポッドが担持面を備えた基部を有し、担持面が底面によって構成された凹部を有し、レチクルポッドが基部の担持面を包囲した状態でレチクルを支持するよう構成された複数の支持部材をさらに有し、凹部が担持面と底面との間に延びる深さによって規定され、深さが担持面に付着している粒子に及ぼされる静電気力を弱めるよう300μmから3400μmまでの範囲にあることを特徴とするレチクルポッドを提供することにある。
【0009】
特定の実施形態では、基部は、担持面を包囲した状態で気密封止された受け入れ空間を形成するよう蓋と接触関係をなすようになっている上方に向いた接触面をさらに有する。
【0010】
特定の実施形態では、凹部は、レチクルのパターンゾーンの面積に等しいまたはこれよりも広い面積のゾーンを包囲したリング状の縁部を有する。
【0011】
特定の実施形態では、凹部は、レチクルのパターンゾーンを覆うのに十分なゾーンを包囲するリング状の縁部を有する。
【0012】
特定の実施形態では、凹部は、長さ138mm、幅が110mmの長方形の縁部を有する。
【0013】
特定の実施形態では、レチクルの残留電圧は、50Vを超え、深さは、少なくとも、400μmを超える。
【0014】
本発明の別の目的は、帯電防止性能を備えたレチクルポッドであって、レチクルポッドが上面を備えた基部を有し、上面が機械的加工によって形成された偏向面であり、レチクルポッドが上面を包囲した状態でレチクルを支持するよう構成された複数の支持部材をさらに有し、レチクルの下方に向いた表面と基部の上面との間には、基部の上面に付着した粒子に及ぼされる静電気力を弱めるよう少なくとも300μmを超える隙間が形成されていることを特徴とするレチクルポッドを提供することにある。
【0015】
特定の実施形態では、基部は、上面を包囲するとともに気密封止された受け入れ空間を形成するよう蓋と接触関係をなすようになっている上方に向いた接触面をさらに有する。
【0016】
特定の実施形態では、上面の面積は、レチクルのパターンゾーンの面積に等しくまたはこれよりも広い。
【0017】
特定の実施形態では、上面のゾーンは、レチクルのパターンゾーンを覆うのに十分である。
【0018】
特定の実施形態では、上面は、長さ138mm、幅が110mmの長方形の縁部を有する。
【0019】
特定の実施形態では、レチクルの残留電圧は、50Vを超え、隙間は、少なくとも、400μmを超える。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、レチクルポッドの基部に利用されるレチクルポッドの加工方法であって、基部が担持面および複数の支持部材を有し、複数の支持部材が基部の担持面を包囲した状態でレチクルを支持するよう構成されていることを構成要件とする方法を提供することにある。本方法は、担持面を機械的に加工して担持面上に凹部を形成するステップを含み、凹部が底面によって構成され、本方法は、凹部を加工して凹部をレチクルの残留電圧に応じた深さによって規定するステップをさらに含み、深さが少なくとも300μmを超える。
【0021】
特定の実施形態では、残留電圧は、50Vを超え、深さは、少なくとも、400μmを超える。
【0022】
特定の実施形態では、残留電圧は、100Vを超え、深さは、少なくとも、400μmを超える。
【0023】
特定の実施形態では、残留電圧は、200Vを超え、深さは、少なくとも、800μmを超える。
【0024】
特定の実施形態では、残留電圧は、400Vを超え、深さは、少なくとも、1600μmを超える。
【0025】
本開示内容は、添付の図面に示されており、このかかる開示内容について以下に説明する。非限定的かつ非網羅的な実施形態が添付の図面に関して以下に提供されている。添付の図面は、技術的特徴および原理を説明するようになっているが、必ずしも縮尺通りには描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来型レチクルポッドの分解組立図(先行技術)である。
図2】レチクルポッドの基部への荷電粒子の接近のステップを示す図(先行技術)である。
図3】静電力および重力を受けている粒子を示す図(先行技術)である。
図4】本発明のレチクルポッドの分解組立図である。
図5】レチクルポッドの基部の斜視図である。
図6図5に基づく断面図である。
図7図5のレチクルポッドの基部の平面図である。
図8図5のレチクルポッドの基部の底面図である。
図9A】レチクルパターンゾーンと凹部カバーゾーンとの関係を示す図である。
図9B】レチクルと凹部底面との間の隙間を示す図である。
図10】本発明の別の実施形態に係るレチクルポッドの基部の斜視図である。
図11A】粒子に及ぼされる正味の力に対するレチクルの残留電圧、粒径および隙間の影響を示す図である。
図11B】粒子に及ぼされる正味の力に対するレチクルの異なる残留電圧、異なる粒径および異なる隙間の影響を示す図である。
図11C】粒子に及ぼされる正味の力に対するレチクルの異なる残留電圧、異なる粒径および異なる隙間の影響を示す図である。
図11D】粒子に及ぼされる正味の力に対するレチクルの異なる残留電圧、異なる粒径および異なる隙間の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示内容は、添付の図面を参照して以下に説明されるとともに特定の実施形態によって例示される。しかしながら、本開示内容によってクレーム請求されている内容を互いに異なる形態で具体化でき、かくして、その範囲は、以下に開示する例示の実施例および実施形態には限定されない。例示の実施例および実施形態は、説明目的に役立つに過ぎない。本開示内容は、クレーム請求されている内容に合理的に広い範囲をもたらす。
【0028】
本明細書で用いられる「一実施例では」という表現は、必ずしも、同一の実施形態を指していない。本明細書で用いられている「別の実施形態では」という表現は、必ずしも互いに異なる特定の実施形態を指してはいない。クレーム請求されている内容は、全体または一部が例示の実施例および実施形態の組み合わせの範囲に属するものと見なされるべきである。
【0029】
図4は、本発明のレチクルポッドの分解組立図である。図1と同様、図4は、外側ポッド(200)および内側ポッド(210)を示している。外側ポッド(200)は、蓋(201)および基部(202)を有する。蓋(201)と基部(202)は、一緒になって、内側ポッド(210)を受け入れる受け入れ空間を画定する。内側ポッド(210)は、蓋(211)および基部(212)をさらに有し、蓋(211)と基部(212)は一緒になって、レチクル(220)を受け入れる受け入れ空間を画定する。本開示内容における本発明の技術的特徴は、基部(212)にある。外側ポッド(200)および内側ポッド(210)の蓋(211)の他の細部は、以下の説明では省かれている。
【0030】
基部(212)は、複数の支持部材(2121)、上方に向いた担持面(以下、担持面(2122)と呼ばれる)および上方に向いた接触面(2123)を有する。支持部材(2121)は、担持面(2122)と上方に向いた(2123)との間に設けられていて担持面(2122)を包囲している。支持部材(2121)は、レチクル(220)の底部または側縁部を支持するために互いに異なる形状を取るよう構成されている。例えば、この実施形態では、各支持部材(2121)は、レチクル(220)の横方向変位を制限するための2つの制限ポストおよびレチクルの下方に向いた表面に接触し、かくしてレチクル(220)を担持面(2122)の上方に持ち上げる支持ピンを有する。レチクル(220)の下方に向いた表面と担持面(2122)との間の隙間は、支持ピンの高さで決まる。基本的には、担持面(2122)は平坦であるが、実際には、担持面(2122)の少なくとも一部は、機械加工によって形成されるが裸眼でめったに識別できない偏向状態の表面である。担持面(2122)は、これに凹部(2124)を形成するよう機械的に加工されている。凹部(2124)は、実質的に中心が担持面(2122)のところに配置されるだけでなく、担持面(2122)によって包囲されている。レチクル(220)が支持部材(2121)上に位置したとき、レチクル(220)のパターンゾーンは、位置が凹部(2124)に一致する。
【0031】
図5は、基部(212)の微細な構造的特徴を示している。図6は、図5の破線に沿って取った断面図である。図示のように、溝(参照符号によっては示されていない)が基部(212)の周囲のところで担持面(2122)と上方に向いた接触面(2123)との間に形成されており、この溝は、蓋(211)と基部(212)の接合部中に入り込んだ粒子を捕捉するようになっている。図6は、担持面(2122)が上方に向いた接触面(2123)よりも高く、それにより構造的バリヤを形成し、かくして粒子が担持面(2122)上に落下する恐れを軽減し、それにより内側ポッド(210)の清浄さを保証していることを明示している。変形実施形態では、担持面(2122)および上方に向いた接触面(2123)は、同一高さのものであり、あるいは、担持面(2122)は、これよりも低く、溝はまた、完全に満たされるのが良い。凹部(2124)は、底面(600)および壁面(601)によって画定され、かくして、深さ(D)によって規定されている。深さ(D)は、加工深さであり、すなわち、図6に示されているように、担持面(2122)と凹部底面(600)との間の垂直距離である。凹部(2124)もまた機械的加工によって形成されるので、底面(600)もまた偏向される場合がある。
【0032】
図7は、図5の基部(212)の平面図である。図示のように、凹部(2124)の開口部(担持面の内側縁部によって画定されている)および底面(600)は、長方形であり、この開口部と底面(600)の両方は、実質的に同一の面積を有する。一実施形態では、長方形は、各々、長さ138mm、幅110mmのものである。凹部(2124)は、実質的に中心が担持面(2122)のところに配置され、この凹部は、担持面のどの側部にも接触していない。図8は、図5の基部(212)の底面図であり、位置決め構造体(800)が基部(212)の底部に設けられた状態で基部(212)を加工機内に位置決めするようになっていることを示している。
【0033】
図9Aは、レチクル(900)のレチクルパターン領域(901、包囲実線によって境界づけられる)と基部凹部領域(902)との関係を示す平面図である。図中の破線が凹部開口部のリング状縁部を示しており、この破線は、凹部カバー領域(902)が少なくともレチクルパターン領域(901)よりも広いことを明示している。この構成により、レチクルパターンゾーンのあらゆる部分が凹部の底面に向くようになっている。図9Bは、レチクルパターン領域(901)の下方に向いた表面と凹部の底面(903)との間に設けられた隙間(G)を示す側面図である。支持されるべきレチクルの高さに応じて、レチクルの底面(904)の高さは、基部の担持面の高さにほぼ等しいのが良く、レチクルの底面(904)と凹部の底面(600)との間の隙間が凹部の深さ(図6に示された深さD)に等しくなっている。一実施形態では、凹部の深さ(D)は、300μmから3400μmまでの範囲にあり、あるいは3400μmから3750μmまでの範囲にある。かくして、隙間(G)は、少なくとも300μmよりも大きい。したがって、静電荷を帯びたレチクルが基部上に置かれると、凹部深さ(D)または隙間(G)を調節することによって、基部の担持面上の粒子に及ぼされる静電気力を効果的に弱めることができ、かくして粒子がレチクルの下方に向いた表面に引き付けられる恐れを軽減することができる。
【0034】
図10は、本発明の別の実施形態に係るレチクルポッドの基部の斜視図である。図5と比較して、図10は、基部内の担持面のゾーンの大幅な減少および連続壁(1001)によって包囲された上面(1002)を形成する凹部カバーゾーンの増加を示すとともに壁(1001)が上方に向いた接触面(1003)よりも僅かに高く、それにより上面(1002)中への汚染粒子の侵入の恐れが軽減していることを示している。変形実施形態では、壁(1001)が必要とされず、図示の溝が上方に向いた接触面を上面から隔てている。同様に、基部の上面上の粒子に及ぼされる静電気力は、基部上のレチクルの下方に向いた上面(1002)との間の隙間の形成および上面(1002)の深さの適切な調節時に効果的に弱められ、それにより、例えば、壁(1001)の垂直高さが300μmから3400μmまでの範囲にあるようにすることができまたはレチクルの下面と上面(1002)との間の隙間が少なくとも、300μmよりも大きくすることができる。
【0035】
図11A図11Dは、粒子に及ぼされる正味の力に対するレチクルの互いに異なる残留電圧、互いに異なる粒径および互いに異なる隙間の影響を示す図である。図11Aは、特に粒子が凹部の底面(903)上に位置するとともにレチクルの残留電圧が400Vであるときに図6および図9に示された形態に従って6つの互いに異なる粒径の粒子に及ぼされる正味の力と深さ(D)との関係を表わすグラフ図であり、グラフ図によって示されているように、深さが1600μmよりも大きい場合、粒子全ての正味の力が負になり、このことは、粒子が下向きの力を受け、それにより粒子に及ぼされる静電気力が効果的に弱められることを示唆している。同様に、図11Bは、レチクルの残留電圧が200Vであるときに上述の粒径の粒子に及ぼされる正味の力と深さ(D)との関係を表わすグラフ図であり、グラフ図によって示されているように、深さが800μmよりも大きい場合、粒子に及ぼされる静電気力が効果的に弱められる。図11Cは、レチクルの残留電圧が100Vであるときに上述の粒径の粒子に及ぼされる正味の力と深さ(D)との関係を表わすグラフ図であり、グラフ図によって示されているように、深さが400μmよりも大きい場合、粒子に及ぼされる静電気力が効果的に弱められる。図11Dは、レチクルの残留電圧を50Vであるときに上述の粒径の粒子に及ぼされる正味の力と深さ(D)との関係を表すグラフ図であり、これらグラフ図によって示されているように、深さが400μmを超える場合、粒子に及ぼされる静電気力が効果的に弱められる。上述の図では、グラフ図が粒径に従って互いに識別されるような仕方で色分けされていないが、当業者であれば、図に示されている開示内容に従ってグラフ図を互いに識別し、それにより上述の説明を理解することが依然として可能であろう。
【0036】
したがって、本開示内容は、レチクルポッドを提供する。レチクルポッドの基部に設けられた凹部の加工深さまたは凹部の底面(上面)とレチクルの下方に向いた表面との間の隙間を調節することによって、基部の表面上の粒子に対するレチクルの残留電圧の影響が効果的に弱められ、かくして粒子がレチクルの下方に向いた表面に引き寄せられる恐れが軽減し、それによりパターンゾーンが汚染から保護される。
【符号の説明】
【0037】
100 外側ポッド
101,111 蓋
102,112 基部
110 内側ポッド
120 レチクル
212 基部
600 底面
601 壁面
1121 支持部材
1122 担持面
1123 上方に向いた接触面
2121 支持部材
2122 担持面
2123 上方に向いた接触面
2124 凹部
D 深さ
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図11D