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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20230405BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H05K9/00 F
H05K1/02 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021513347
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044658
(87)【国際公開番号】W WO2021112075
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2019218526
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】高見 晃司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正博
(72)【発明者】
【氏名】竹下 茂樹
【合議体】
【審判長】稲葉 和生
【審判官】中野 裕二
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-324683(JP,A)
【文献】特開2017-97169(JP,A)
【文献】特表2001-524219(JP,A)
【文献】特開2005-330409(JP,A)
【文献】特開2015-18669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層、透明金属層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層がこの順に積層されており、
前記第1絶縁層は透明基材であり、厚さは1~15μmであり、
前記第2絶縁層は透明層であり、樹脂から形成される樹脂層、または無機物から形成される無機物層からなり、厚さは10~500nmであり、
前記導電性接着剤層は、バインダー成分及び球状導電性粒子を含み、
前記球状導電性粒子のメディアン径は3~50μmであり、
前記球状導電性粒子の含有割合は、前記導電性接着剤層100質量%に対し5~20質量%であり、
前記導電性接着剤層の厚さと前記球状導電性粒子のD50の比が0.5~1.2である電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記第2絶縁層と前記透明金属層とは直接積層している請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記第2絶縁層は前記無機物層を有する請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記無機物層は前記透明金属層と直接積層している請求項3に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記第2絶縁層は前記無機物層と前記樹脂層の積層構造を有する請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記樹脂層は前記導電性接着剤層と直接積層しており、前記無機物層は前記透明金属層と直接積層している、請求項5に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
全光線透過率が62%以上である請求項1~のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルムを備えたシールドプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。より詳細には、本発明は、プリント配線板に使用される電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、機構の中に回路を組み込むために多用されている。また、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるプリント配線板においても、電磁波シールド対策を施したシールドプリント配線板が用いられている。
【0003】
シールドプリント配線板には、電磁波シールドフィルム(以下、単に「シールドフィルム」と称する場合がある)が使用される。例えば、プリント配線板に接着して使用されるシールドフィルムは、金属層などのシールド層と当該シールド層の表面に設けられた導電性接着シートとを有する。
【0004】
導電性接着シートを有するシールドフィルムとしては、例えば、特許文献1及び2に開示のものが知られている。上記シールドフィルムは、導電性接着シートが露出した表面が、プリント配線板表面、具体的にはプリント配線板の表面に設けられたカバーレイ表面と貼着するように貼り合わせて使用される。これらの導電性接着シートは、通常、高温・高圧条件下で熱圧着してプリント配線板に接着及び積層される。このようにしてプリント配線板上に配置されたシールドフィルムは、プリント配線板の外部からの電磁波を遮蔽する性能(シールド性能)を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-110769号公報
【文献】特開2012-28334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、シールドフィルムには、プリント配線板に貼り付ける際、位置合わせをしやすいという性能が求められる場合がある。このため、シールドフィルムには、透明性が求められる傾向がある。透明性を向上させる方法として、シールドフィルムにおける金属層を薄くすることが考えられる。しかしながら、この方法では、透明性が向上する一方、高温高湿環境や電解質が存在する環境において透明金属層が劣化して白濁して透明性が損なわれる、シールド性能が低下する、すなわち、耐環境性に劣るという問題があった。
【0007】
また、近年、高温・高圧条件下ではなく、比較的緩やかな条件でプリント配線板に接着することができる導電性接着剤層を有するシールドフィルムが求められる傾向がある。しかしながら、シールドフィルムにおける導電性接着剤層として従来の異方導電性粘着シートを用いた場合、外部グランドとの電気的接続が不安定であるという問題があった。電気的接続の安定性を向上させるべく、従来の異方導電性粘着シートにおける導電性粒子の配合量を増やす方法が考えられる。この場合、接続安定性を向上させることができるが、金属層の薄膜化による耐環境性の低下を補うことはできず、また透明性が低下する。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡易に被着体に接着可能であり且つ電気的接続安定性に優れ、透明性、シールド性能、及び耐環境性に優れる電磁波シールドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の導電性接着剤層を用い、且つ特定の層構成を有する電磁波シールドフィルムは、簡易に被着体に接着可能であり且つ電気的接続安定性に優れ、透明性、シールド性能、及び耐環境性に優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、第1絶縁層、透明金属層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層がこの順に積層されており、
上記第2絶縁層の厚さは10~500nmであり、
上記導電性接着剤層は、バインダー成分及び球状導電性粒子を含み、
上記球状導電性粒子のメディアン径は3~50μmであり、
上記球状導電性粒子の含有割合は、上記導電性接着剤層100質量%に対し5~20質量%である、
電磁波シールドフィルムを提供する。
【0011】
上記第2絶縁層と上記透明金属層とは直接積層していることが好ましい。
【0012】
上記第2絶縁層は無機物から形成される無機物層を有することが好ましい。
【0013】
上記無機物層は上記透明金属層と直接積層していることが好ましい。
【0014】
上記第2絶縁層は無機物から形成される無機物層と樹脂から形成される樹脂層の積層構造を有することが好ましい。
【0015】
上記樹脂層は上記導電性接着剤層と直接積層しており、上記無機物層は上記透明金属層と直接積層していることが好ましい。
【0016】
上記第1絶縁層と上記透明金属層の間に第3絶縁層を有することが好ましい。
【0017】
上記電磁波シールドフィルムは全光線透過率が62%以上であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記電磁波シールドフィルムを備えたシールドプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電磁波シールドフィルムは、簡易に被着体に接着可能であり、それでいて電気的接続安定性に優れ、透明性、シールド性能、及び耐環境性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
図2】本発明の電磁波シールドフィルムの他の実施形態を示す断面模式図である。
図3】本発明の電磁波シールドフィルムのさらに他の実施形態を示す断面模式図である。
図4】本発明の電磁波シールドフィルムのさらに他の実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[シールドフィルム]
本発明のシールドフィルムは、第1絶縁層、透明金属層、第2絶縁層、及び導電性接着剤層がこの順に積層された層構成を有する。
【0022】
本発明のシールドフィルムの一実施形態について、以下に説明する。図1は、本発明のシールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。図1に示す本発明のシールドフィルム1は、第1絶縁層11と、透明金属層12と、第2絶縁層13と、導電性接着剤層14とをこの順に有する。
【0023】
(第1絶縁層)
第1絶縁層は、本発明のシールドフィルムにおいて支持体として機能する透明基材である。第1絶縁層としては、例えば、プラスチック基材(特にプラスチックフィルム)、ガラス板などが挙げられる。第1絶縁層は、単層であってもよいし、同種又は異種の積層体であってもよい。
【0024】
上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC);ポリイミド(PI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;ポリスルホン(PS);ポリエーテルスルホン(PES);ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。上記樹脂としては、透明性により優れる観点から、中でも、ポリエステル、セルロース樹脂が好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースである。
【0025】
第1絶縁層の表面(特に、透明金属層側の表面)は、透明金属層などの隣接層との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤)による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。密着性を高めるための表面処理は、第1絶縁層における透明金属層側の表面全体に施されていることが好ましい。
【0026】
第1絶縁層の厚さは、特に限定されないが、1~15μmであることが好ましく、より好ましくは3~10μmである。上記厚さが1μm以上であると、より充分にシールドフィルムを支持及び透明金属層を保護することができる。上記厚さが15μm以下であると、透明性及び柔軟性に優れ、また経済的にも有利である。なお、第1絶縁層が複層構成である場合、上記第1絶縁層の厚さは、全ての層厚さの合計である。
【0027】
(透明金属層)
上記透明金属層は、本発明のシールドフィルムにおいてシールド層として機能する要素である。上記透明金属層は、単層であってもよいし、同種又は異種の積層体であってもよい。
【0028】
上記透明金属層を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、リチウム、ニッケル、スズ、パラジウム、クロム、チタン、亜鉛、又はこれらの合金などが挙げられる。上記合金としては、例えば、銀/銅合金、マグネシウム/銅合金、マグネシウム/銀合金、マグネシウム/アルミニウム合金、マグネシウム/インジウム合金、リチウム/アルミニウム合金、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウム・スズ)などが挙げられる。上記金属としては、中でも、電磁波シールド性能により優れる観点から、銅、銀が好ましく、耐マイグレーション性及び耐硫化性により優れる観点から、銀/銅合金であることが好ましい。
【0029】
上記透明金属層の形成方法は特に限定されず、例えば、電解、蒸着(例えば真空蒸着)、スパッタリング、CVD法、メタルオーガニック(MO)、メッキ、圧延加工などが挙げられる。中でも、製造容易性の観点から、蒸着又はスパッタリングにより形成された透明金属層が好ましい。
【0030】
上記透明金属層の厚さは、10~100nmが好ましく、より好ましくは10~50nmである。上記厚さが10nm以上であると、シールド性能により優れる。上記厚さが100nm以下であると、透明性が優れる。なお、透明金属層が複層構成である場合、上記透明金属層の厚さは、全ての層厚さの合計である。
【0031】
(第2絶縁層)
第2絶縁層は、透明金属層を保護する透明層である。第2絶縁層が透明金属層と導電性接着剤層との間に介在することにより、耐環境性を向上させ、透明性及び接続安定性の低下を抑制することができる。上記透明性及び接続安定性の低下は、導電性接着剤層中の水分や酸成分、あるいは汗に含まれる塩分等の電解質などにより透明金属層が劣化することに起因するものと推測される。第2絶縁層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0032】
第2絶縁層は、主に樹脂から形成される樹脂層、又は、無機物から形成される無機物層が挙げられる。第2絶縁層が無機物層である場合、透明金属層を保護し、高温高湿環境や電解質が存在する環境において透明金属層が劣化して透明性やシールド性能が低下するのを抑制することができ、すなわち、耐環境性に優れる。一方、第2絶縁層が樹脂層である場合、無機物層である場合と同様に耐環境性に優れ、さらに、無機物層よりも柔軟性に優れるため、小径のホールへの埋め込み性に優れ、接続安定性により優れる。
【0033】
上記樹脂層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、又は活性エネルギー線硬化型化合物であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、及び活性エネルギー線硬化型化合物としては、それぞれ、後述の導電性接着剤層が含み得るバインダー成分として例示されたものが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0034】
上記無機物層を形成する無機物としては、例えば、ガラス、クレー、雲母、タルク、カオリナイト(カオリン)、ハロイサイト、ゼオライト、酸性白土、活性白土、ベーマイト、擬ベーマイト、無機酸化物や、金属塩[例えば、アルカリ土類金属塩等]等の無機透明顔料;スチレン系樹脂、ポリジビニルベンゼン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂顔料等の有機透明顔料;上記有機透明顔料から構成され、中空構造(バルーン構造)を有する中空粒子などの透明粒子が挙げられる。上記透明粒子は、公知乃至慣用の表面処理が施されたものであってもよい。
【0035】
上記無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素などが挙げられる。また、上記アルカリ土類金属塩としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどの、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、フッ化物塩などが挙げられる。また、アルカリ土類金属塩以外の金属塩としては、例えば、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0036】
中でも、上記無機酸化物としては、透明性及び経済性の観点から、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素が好ましく、より好ましくは酸化チタンである。
【0037】
第2絶縁層が無機物層である場合には、その形成方法としては、電解、蒸着(例えば真空蒸着)、スパッタリング、CVD法、メタルオーガニック(MO)、メッキ、圧延加工などが挙げられる。中でも、製造容易性の観点から、蒸着又はスパッタリングにより形成された無機物層が好ましい。第2絶縁層が樹脂層である場合には、その形成方法は、コーティング等、公知の方法を採用することができる。
【0038】
第2絶縁層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記樹脂層を形成する樹脂及び無機物層を形成する無機物以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0039】
第2絶縁層の厚さは、10~500nmであり、好ましくは10~300nmである。上記厚さが10nm以上であることにより、接続安定性に優れ、また、耐環境性に優れる。上記厚さが500nm以下であることにより、比較的緩やかな条件でプリント配線板に接着した場合であっても接続安定性に優れる。なお、第2絶縁層が複層構成である場合、上記第2絶縁層の厚さは、全ての層厚さの合計である。
【0040】
第2絶縁層は、上記透明金属層を保護する観点から、上記透明金属層と直接積層していることが好ましい。特に、耐環境性をより良好とする観点から、上記無機物層が上記透明金属層と直接積層していることが好ましい。
【0041】
また、第2絶縁層は、透明性、接続安定性、及び耐環境性により優れる観点から、上記樹脂層と上記無機物層との積層構造を有することが好ましい。この場合、上記透明金属層の、耐環境性に基づく保護性能及び上記導電性接着剤層による損傷に基づく保護性能の観点から、無機物層が上記透明金属層側であり、樹脂層が上記導電性接着剤層側となる構成であることが好ましい。さらに、上記導電性接着剤層と上記樹脂層とが直接積層しており、上記透明金属層と上記無機物層とが直接積層していることが好ましい。
【0042】
例えば、図2に示すシールドフィルム2において、第2絶縁層は、無機物層13a及び樹脂層13bの積層構造を有し、当該積層構造から構成される。無機物層13aは透明金属層12側、樹脂層13bは導電性接着剤層14側となるように配置されており、無機物層13aは透明金属層12と、樹脂層13bは導電性接着剤層14と、それぞれ直接積層している。
【0043】
(導電性接着剤層)
上記導電性接着剤層は、例えば本発明のシールドフィルムをプリント配線板に接着するための接着性と、上記透明金属層と電気的接続するための導電性を有する。また、上記透明金属層とともにシールド性能を発揮するシールド層としても機能する。上記導電性接着剤層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0044】
上記導電性接着剤層は、バインダー成分及び球状導電性粒子を含有する。シールドフィルムにおける導電性接着剤層に用いられる導電性粒子は、接続安定性の観点から一般的に樹枝状(デンドライト状)導電性粒子が用いられることが多いが、本発明のシールドフィルムでは、球状導電性粒子を用いる。これにより、樹枝状導電性粒子を用いる場合に比べて透明性がより優れる。
【0045】
上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。上記熱硬化型樹脂としては、熱硬化性を有する樹脂(熱硬化性樹脂)および上記熱硬化性樹脂を硬化して得られる樹脂の両方が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0046】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンウレア系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0047】
上記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ系樹脂、スピロ環型エポキシ系樹脂、ナフタレン型エポキシ系樹脂、ビフェニル型エポキシ系樹脂、テルペン型エポキシ系樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂、ノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0048】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0049】
上記活性エネルギー線硬化型化合物は、活性エネルギー線照射により硬化し得る化合物(活性エネルギー線硬化性化合物)および上記活性エネルギー線硬化性化合物を硬化して得られる化合物の両方が挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性化合物などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化性化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0050】
上記バインダー成分としては、中でも、熱硬化型樹脂が好ましい。この場合、プリント配線板に接着するために本発明のシールドフィルムをプリント配線板上に配置した後、加圧及び加熱によりバインダー成分を硬化させることができ、プリント配線板との接着性が良好となる。
【0051】
上記バインダー成分が熱硬化型樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。上記硬化剤は、上記熱硬化型樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0052】
上記導電性接着剤層におけるバインダー成分の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、5~95質量%が好ましく、より好ましくは40~95質量%、さらに好ましくは60~95質量%である。上記含有割合が5質量%以上であると、プリント配線板に対する密着性により優れる。上記含有割合が95質量%以下であると、導電性粒子を充分に含有させることができる。
【0053】
上記球状導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、カーボンフィラーなどが挙げられる。上記球状導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0054】
上記金属粒子及び上記金属被覆樹脂粒子の被覆部を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛などが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0055】
上記金属粒子としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。上記金属粒子は、電解法、アトマイズ法、還元法などにより作製することができる。
【0056】
上記金属粒子としては、中でも、銀粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。導電性に優れ、金属粒子の酸化及び凝集を抑制し、且つ金属粒子のコストを下げることができる観点から、特に、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。
【0057】
上記球状導電性粒子のメディアン径(D50)は、3~50μmであり、好ましくは5~30μmである。上記メディアン径は、上記導電性接着剤層中の全ての球状導電性粒子のメディアン径であり、レーザー回折・散乱法により求めた粒度分布における積算値50%での粒径をいうものとする。上記メディアン径が上記範囲内であることにより、球状導電性粒子を用いた本発明において接続安定性に優れる。上記メディアン径は、例えば、レーザー回折式粒子径分布測定装置(商品名「SALD-2200」、株式会社島津製作所製)により測定することができる。
【0058】
上記導電性接着剤層における球状導電性粒子の含有割合は、導電性接着剤層100質量%に対して、5~20質量%であり、好ましくは5~15質量%である。特定のメディアン径を有する球状導電性粒子が上記範囲内であることにより、透明性に優れつつ接続抵抗値に優れる。上記含有割合が20質量%を超えると、接続抵抗値が高くなる。これは、過剰となった導電性粒子が上記透明金属層を損傷させることによるものと推測される。
【0059】
上記導電性接着剤層における球状導電性粒子の含有量は、特に限定されないが、導電性接着剤層中のバインダー成分100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは5~20質量部である。上記含有量が上記範囲内であると、透明性に優れつつ接続安定性に優れる傾向がある。
【0060】
上記導電性接着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の接着剤層に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、球状導電性粒子以外の導電性粒子の含有量は、球状導電性粒子100質量部に対して、例えば10質量部未満、好ましくは5質量部未満、より好ましくは1質量部未満である。
【0061】
上記導電性接着剤層の厚さは、特に限定されないが、3~20μmであることが好ましく、より好ましくは5~15μmである。上記厚さが3μm以上であると、シールド性能がより優れる。上記厚さが20μm以下であると、球状導電性粒子の表面が層表面により近く或いは表面から露出する傾向にあり、接続安定性により優れる。
【0062】
上記導電性接着剤層厚さと球状導電性粒子のD50の比[接着剤層厚さ/D50]は、特に限定されないが、0.5~1.2であることが好ましく、より好ましくは0.8~1.0である。上記比が0.5以上であると、プリント配線板等の被着体に対する接着性がより良好となる。上記比が1.2以下であると、導電性接着剤層表面から露出する球状導電性粒子の量が多くなり、接続安定性により優れる。
【0063】
本発明のシールドフィルムは、図3に示すように、第1絶縁層11と透明金属層12の間に、第3絶縁層15を有していてもよい。
【0064】
第3絶縁層を備えることで、比較的緩やかな条件でプリント配線板に接着した場合の接続安定性がより良好となり、また、上記透明金属層を第1絶縁層側からも保護することで耐環境性により優れる。第3絶縁層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0065】
第3絶縁層は、主に樹脂から形成される樹脂層、又は、無機物から形成される無機物層が挙げられる。上記樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、及び活性エネルギー線硬化型化合物としては、それぞれ、上述の導電性接着剤層が含み得るバインダー成分として例示されたものが挙げられる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0066】
第3絶縁層は、無機物層であることが好ましい。無機物層である場合、透明金属層を保護し耐環境性をより良好とするとともに、透明性をより向上させることができる。上記無機物層を形成する無機物としては、上述の第2絶縁層中に含まれ得る無機物として例示及び説明されたものが挙げられる。中でも、透明性及び経済性の観点から、無機酸化物が好ましく、より好ましくは酸化チタンである。上記無機物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、第3絶縁層が複層である場合、無機物層である第3絶縁層が上記透明金属層側であること(特に、上記透明金属層と直接積層すること)が好ましい。
【0067】
第3絶縁層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記樹脂層を形成する樹脂及び上記無機物層を形成する無機物以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0068】
第3絶縁層の厚さは、特に限定されないが、10~500nmが好ましく、より好ましくは10~300nmである。上記厚さが10nm以上であると、接続安定性及び耐環境性により優れる。上記厚さが500nm以下であると、比較的緩やかな条件でプリント配線板に接着した場合であっても接続安定性に優れる。なお、第3絶縁層が複層構成である場合、上記第3絶縁層の厚さは、全ての層厚さの合計である。
【0069】
図4に、本発明のシールドフィルムの他の実施形態を示す。図4に示すシールドフィルム4は、第2絶縁層として、図2に示すシールドフィルム2における第2絶縁層と同様の構成、すなわち無機物層13a及び樹脂層13bの積層構造からなる構成を有する。また、図3に示すシールドフィルム3と同様に、第1絶縁層11と透明金属層12の間に、第3絶縁層15を有する。第3絶縁層15は、無機物層であることが好ましい。図4に示すように、透明金属層12が無機物層に挟まれることにより透明金属層12両面が保護され、シールドフィルム4としての耐環境性が格段に優れ、また、樹脂層13bの存在により透明金属層14の損傷が抑制される。これにより、比較的緩やかな条件でプリント配線板に接着した場合でもシールドフィルム4の接続安定性が格段に良好となる。
【0070】
本発明のシールドフィルムは、導電性接着剤層側にセパレータ(剥離フィルム)を有していてもよい。セパレータは、本発明のシールドフィルムから剥離可能なように積層される。セパレータは、導電性接着剤層を被覆して保護するための要素であり、本発明のシールドフィルムを使用する際には剥がされる。
【0071】
上記セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが挙げられる。
【0072】
上記セパレータの厚さは、10~200μmであることが好ましく、より好ましくは15~150μmである。上記厚さが10μm以上であると、保護性能により優れる。上記厚さが200μm以下であると、使用時にセパレータを剥離しやすい。
【0073】
本発明のシールドフィルムは、第1絶縁層、透明金属層、第2絶縁層、導電性接着剤層、及び第3絶縁層以外のその他の層を有していてもよい。上記その他の層としては、例えば、その他の絶縁層、反射防止層、防眩層、防汚層、ハードコート層、紫外線吸収層、アンチニュートンリング層などが挙げられる。
【0074】
本発明のシールドフィルムは透明性に優れる。本発明のシールドフィルムの全光線透過率は、62%以上が好ましく、より好ましくは65%以上、特に好ましくは67%以上である。上記全光線透過率は、公知の分光光度計を用いて測定することができる。なお、上記全光線透過率は、第1絶縁層と上記導電性接着剤層とを両端層とする積層体について測定される。
【0075】
本発明のシールドフィルムは、プリント配線板用途であることが好ましく、フレキシブルプリント配線板(FPC)用途であることが特に好ましい。本発明のシールドフィルムは、簡易に被着体に接着可能であり、それでいて電気的接続安定性に優れ、シールド性能にも優れる。また、透明性に優れ、プリント配線板上での位置合わせが容易である。従って、本発明のシールドフィルムは、フレキシブルプリント配線板用の電磁波シールドフィルムとして好ましく使用することができる。
【0076】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
本発明のシールドフィルムの製造方法の一実施形態について説明する。
【0077】
図1に示す本発明のシールドフィルム1の作製においては、まず、第1絶縁層11上に透明金属層12を形成する。透明金属層12の形成は、蒸着法又はスパッタリング法により行うことが好ましい。上記蒸着法及びスパッタリング法は、公知乃至慣用の方法が採用できる。このように、蒸着法又はスパッタリング法により透明金属層12を形成することで、適度な厚さ及び透明性を有する金属層を容易に製造することができる。
【0078】
次に、形成された透明金属層12表面に、例えば、第2絶縁層13形成用の組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒及び/又は一部硬化させて形成することができる。
【0079】
上記組成物は、例えば、上述の第2絶縁層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。上記組成物の固形分濃度は、形成する第2絶縁層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0080】
上記組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、リップコーターディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、スロットダイコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0081】
次に、形成された第2絶縁層13表面に、導電性接着剤層14形成用の接着剤組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒及び/又は一部硬化させて形成することができる。
【0082】
上記接着剤組成物は、例えば、上述の導電性接着剤層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、上述の第2絶縁層を形成するための組成物が含み得る溶剤として例示されたものが挙げられる。上記接着剤組成物の固形分濃度は、形成する導電性接着剤層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0083】
上記接着剤組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、上述の組成物の塗布に用いられるコーターとして例示されたものが挙げられる。
【0084】
なお、図2に示す本発明のシールドフィルム2の作製においては、図1に示すシールドフィルム1と同様にして形成された透明金属層12表面に、例えば、無機物層13a形成用の組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒させて形成することができる。次に、形成された無機物層13a表面に、例えば、樹脂層13b形成用の樹脂組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒及び/又は一部硬化させて形成することができる。上記各組成物は、例えば、上述の無機物層又は樹脂層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、上述の組成物が含み得る溶剤として例示されたものが挙げられる。上記組成物の固形分濃度は、形成する無機物層又は樹脂層の厚さなどに応じて適宜設定される。上記組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、上述の組成物の塗布に用いられるコーターとして例示されたものが挙げられる。その後、形成された樹脂層13b表面に、導電性接着剤層14を形成する。その他の方法は、図1に示す本発明のシールドフィルム1の作製方法と同様である。
【0085】
また、図3に示す本発明のシールドフィルム3の作製においては、まず、透明金属層12形成の前に、第1絶縁層11上に第3絶縁層15を形成する。第3絶縁層15は、例えば、第3絶縁層15形成用の組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒及び/又は一部硬化させて形成することができる。上記組成物は、例えば、上述の第3絶縁層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、上述の組成物が含み得る溶剤として例示されたものが挙げられる。上記組成物の固形分濃度は、形成する第3絶縁層の厚さなどに応じて適宜設定される。上記組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、上述の組成物の塗布に用いられるコーターとして例示されたものが挙げられる。その後、形成された第3絶縁層15表面に、透明金属層12を形成する。その他の方法は、図1に示す本発明のシールドフィルム1の作製方法と同様である。
【0086】
また、図4に示す本発明のシールドフィルム4は、図2に示すシールドフィルム2及び図3に示すシールドフィルム3の作製方法を適宜組み合わせて作製することができる。
【0087】
なお、上述した製造方法では、各層を順次形成して作製する方法(ダイレクトコート法)について説明したが、このような方法に限定されず、例えば、セパレートフィルムなどの仮基材又は基材上に個別に形成した各層をラミネートして順次貼り合わせる方法(ラミネート法)により作製してもよい。
【0088】
本発明のシールドフィルムを用いてプリント配線板を作製することができる。例えば、本発明のシールドフィルムの導電性接着剤層をプリント配線板(例えば、カバーレイ)に貼り合わせることで、プリント配線板に本発明のシールドフィルムが貼り合わされたシールドプリント配線板を得ることができる。上記シールドプリント配線板において、上記導電性接着剤層は、熱硬化していてもよい。
【実施例
【0089】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表1に記載の配合量は各成分の相対的な配合量(純分)であり、特記しない限り「質量部」で表す。
【0090】
実施例1
PETフィルム(厚さ6μm)の表面に、エポキシ樹脂のトルエン溶液(エポキシ樹脂濃度:23.6質量%)を、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で3分加熱することでエポキシ樹脂絶縁膜(厚さ100nm)を形成した。次に、上記エポキシ樹脂絶縁膜表面に、スパッタリング法により銀/銅合金箔(厚さ10nm)を形成した。次に、上記合金箔表面に、ポリエステル系樹脂組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で3分加熱することでポリエステル絶縁膜(厚さ100nm)を形成した。そして、表1に示した配合量で、上記エポキシ樹脂トルエン溶液及び銀コート銅粉(球状、メディアン径6μm)を配合し混合して得られた接着剤組成物を、上記ポリエステル絶縁膜表面に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で3分加熱することで導電性接着剤層(厚さ5μm)を形成した。以上のようにして、実施例1のシールドフィルムを作製した。
【0091】
実施例2~3及び比較例1~2
使用した接着剤組成物を表1に示す組成のものに変更したこと以外は実施例1と同様にして、各シールドフィルムを作製した。
【0092】
実施例4~5及び比較例3~4
ポリエステル絶縁膜(第2絶縁層)の厚さを表1に示すものに変更したこと以外は実施例1と同様にして、各シールドフィルムを作製した。
【0093】
比較例5
銀コート銅粉(球状、メディアン径6μm)の代わりに、銀コート銅粉(球状、メディアン径2μm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、シールドフィルムを作製した。
【0094】
比較例6
銀コート銅粉(球状、メディアン径6μm)の代わりに、銀コート銅粉(球状、メディアン径55μm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、シールドフィルムを作製した。
【0095】
比較例7
銀コート銅粉(球状、メディアン径6μm)の代わりに、銀コート銅粉(樹枝状、メディアン径6μm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、シールドフィルムを作製した。
【0096】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各シールドフィルムについて以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。
【0097】
(1)接続抵抗値測定
幅10mm×長さ30mmの電極2つを間隔100mmになるように厚さ25μmのポリイミドフィルム上に配置した。そして、電極の配置面に、実施例及び比較例で得られたシールドフィルムを、幅10mm×長さ130mmに打ち抜き、2kgローラーで1往復させ電極間を繋ぐように導電性接着剤層面を貼り合わせた。導電性接着剤層面を貼り合わせた後、2つの電極間の抵抗値を、4端子法テスター(商品名「RM3542」、日置電機株式会社製)を用いて測定した。
【0098】
(2)耐塩水性
実施例及び比較例で得られたシールドフィルムについて、JIS Z2371に定める条件に基づいてシールドフィルムに塩水を噴霧し、シールドフィルムの銀/銅合金箔が無色透明から白濁に変化するかどうかを、目視で観察した。そして、白濁したことが目視で確認できなかった場合を○、目視で確認できた場合を×として評価した。
【0099】
(3)全光線透過率
実施例及び比較例で得られたシールドフィルムについて、ヘーズメーター装置(商品名「NDH4000」、日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7361-1に準拠して、PETフィルム面が積分球側となるように測定光を照射して測定した。
【0100】
【表1】
【0101】
本発明のシールドフィルムは、全光線透過率が高く優れた透明性を有し、接続抵抗値が低く優れたシールド性能を有し、さらに、耐塩水性が良好であり耐環境性に優れていることが確認された。一方、接着剤層が導電性粒子を含まない場合、接続抵抗値が高くシールド性に劣っていた(比較例1)。また、導電性粒子の含有割合が過剰である場合も、接続抵抗値が高くシールド性に劣っていた(比較例2)。第2絶縁層の厚さが薄い場合、耐塩水性が不良であり耐環境性に劣っていた(比較例3)。第2絶縁層の厚さが厚い場合(比較例4)、及び、導電性粒子のメディアン径が小さい場合(比較例5)、接続抵抗値が高くシールド性に劣っていた。導電性粒子のメディアン径が大きい場合(比較例6)、及び、導電性粒子の形状が樹枝状である場合(比較例7)、全光線透過率が低く透明性が低かった。
【符号の説明】
【0102】
1~4 シールドフィルム
11 第1絶縁層
12 透明金属層
13 第2絶縁層
13a 無機物層
13b 樹脂層
14 導電性接着剤層
15 第3絶縁層
図1
図2
図3
図4