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特許7256872漏電遮断器、その漏電遮断器の制御方法、及びその漏電遮断器を含む漏電遮断器システム
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  • 特許-漏電遮断器、その漏電遮断器の制御方法、及びその漏電遮断器を含む漏電遮断器システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】漏電遮断器、その漏電遮断器の制御方法、及びその漏電遮断器を含む漏電遮断器システム
(51)【国際特許分類】
   H01H 83/12 20060101AFI20230405BHJP
【FI】
H01H83/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021519135
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2019010474
(87)【国際公開番号】W WO2020105844
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0142925
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス、エレクトリック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS ELECTRIC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】127,LS-ro,Dongan-gu,Anyang-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヨンモ
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ソンギュ
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-354883(JP,A)
【文献】特開2014-196920(JP,A)
【文献】特開平05-082010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
H02B 1/40 - 1/44
H02H 3/32 - 3/52
G01R 31/50 - 31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相電路のうち2つの電路に接続された単相負荷と前記三相電路間に形成された複数の漏電遮断器において、
前記複数の漏電遮断器のそれぞれは、
前記三相電路に形成された零相変流器で発生した零相電流を検出する零相電流検出部と、
前記2つの電路のそれぞれから電圧を検知する電圧検知部と、
トリップ(trip)信号が入力されると、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップするトリップ部と、
前記零相電流検出部で零相電流が検出されると、前記電圧検知部の電圧検知結果に基づいて、前記2つの電路のうち予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路を検出し、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があれば、前記トリップ信号を生成して前記トリップ部に出力する制御部とを含み、
各漏電遮断器の制御部は、前記所定のレベルより大きな電圧降下が発生した電路と同一の電路に接続されたトリップ部のみにトリップ信号を出力することを特徴とする複数の漏電遮断器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検出した零相電流が予め設定された設定値以上であるか否かに基づいて、前記電圧検知結果に応じて、前記予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路を検出し、電路検出結果に応じて、前記トリップ信号を生成して出力することを特徴とする請求項1に記載の複数の漏電遮断器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検出した零相電流が予め設定された特定電流値である設定値未満であれば、前記検出した零相電流が漏電によるものであるか否かを判断し、前記零相電流が漏電により発生したものであれば、前記電路の電圧検出結果に関係なく前記トリップ信号を生成して出力することを特徴とする請求項1に記載の複数の漏電遮断器。
【請求項4】
前記零相電流検出部は、
固定接続抵抗及び複数の選択接続抵抗と、選択スイッチとを有し、前記零相変流器から入力される零相電流を、前記選択スイッチにより選択されるいずれかの選択接続抵抗と前記固定接続抵抗の合成抵抗により決定される抵抗値に基づいて電圧信号に変換する感度選択回路を含み、
前記制御部は、
前記合成抵抗により決定される特定電圧値である基準値と、前記変換された電圧信号の電圧値を比較して、前記零相電流が漏電により発生したものであるか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載の複数の漏電遮断器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記合成抵抗に応じて前記設定値に対応する電圧値を算出し、前記感度選択回路で変換された電圧信号の電圧値と、前記設定値に対応する電圧値を比較した結果に基づいて、前記検出した零相電流が前記設定値未満であるか否かを判断することを特徴とする請求項4に記載の複数の漏電遮断器。
【請求項6】
三相電路のうち2つの電路に接続された単相負荷と前記三相電路間に形成された漏電遮断器の制御方法において、
前記三相電路に形成された零相変流器で発生した零相電流を検出する第1ステップと、
検出した零相電流が予め設定された設定値以上であるか否かによって漏電又は地絡が発生したか否かを検出する第2ステップと、
前記第2ステップの検出結果が地絡発生であれば、前記2つの電路のそれぞれの電圧を検知する第3ステップと、
前記第3ステップの電圧検知結果に基づいて、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があるか否かを検出する第4ステップと、
前記第4ステップの検出結果に基づいて、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする第5ステップとを含むことを特徴とする漏電遮断器の制御方法。
【請求項7】
前記第2ステップは、
前記第2ステップの検出結果が漏電発生であれば、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする第2-1ステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の漏電遮断器の制御方法。
【請求項8】
前記第5ステップは、
前記第4ステップの検出の結果、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があれば、前記トリップを所定時間遅延させる第5-1ステップをさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の漏電遮断器の制御方法。
【請求項9】
前記第2ステップは、
前記検出した零相電流の大きさが予め設定された設定値以上であれば、前記零相電流が地絡により発生したものと判断し、
前記検出した零相電流の大きさが予め設定された設定値未満であれば、漏電が発生したか否かを判断するための予め設定された基準値と、前記検出した零相電流の大きさに応じた電圧信号の電圧値を比較して、漏電が発生したか否かを判断するステップであることを特徴とする請求項6に記載の漏電遮断器の制御方法。
【請求項10】
三相電路のうち2つの電路から電力が供給される少なくとも1つの単相負荷と、
各単相負荷と前記単相負荷に電力を供給している2つの電路との間に形成され、トリップ制御信号を受信した場合に、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする少なくとも1つのトリップ部と、
前記三相電路に形成された零相変流器に接続され、前記零相変流器から零相電流が検出されると、前記少なくとも1つのトリップ部から各単相負荷に接続された電路の電圧検知結果を受信し、受信した電圧検知結果に基づいて、前記少なくとも1つのトリップ部の一部に前記トリップ制御信号を送信するシステム制御部とを含むことを特徴とする漏電遮断器システム。
【請求項11】
前記トリップ部は、
前記システム制御部と通信接続を行う通信部と、
単相負荷に電力を供給している2つの電路のそれぞれの電圧を検知する電圧検知部と、
前記トリップ制御信号を受信した場合に、前記単相負荷に電力を供給している2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする遮断部とを含み、
前記通信部は、
前記電圧検知部の電圧検知結果を前記システム制御部に送信し、前記システム制御部からトリップ制御信号を受信すると、受信したトリップ制御信号を遮断部に送ることを特徴とする請求項10に記載の漏電遮断器システム。
【請求項12】
前記システム制御部は、
前記検出した零相電流の大きさと予め設定された設定値を比較し、前記検出した零相電流の大きさが前記設定値以上であれば、各トリップ部から受信した電圧検知結果から予め設定されたレベルより大きな電圧降下を検知した電圧検知部を検出し、検出した電圧検知部に対応するトリップ部にトリップ制御信号を送信することを特徴とする請求項10に記載の漏電遮断器システム。
【請求項13】
前記システム制御部は、
前記検出した零相電流の大きさと予め設定された設定値を比較し、前記検出した零相電流の大きさが前記設定値未満であれば、漏電が発生したか否かを判断するための基準値に基づいて、前記零相電流が漏電により発生したものであるか否かを判断し、前記零相電流が漏電により発生したものであれば、前記少なくとも1つのトリップ部の全てにトリップ制御信号を送信することを特徴とする請求項10に記載の漏電遮断器システム。
【請求項14】
前記システム制御部は、
前記零相変流器から零相電流が検出されると、前記少なくとも1つのトリップ部のそれぞれに電圧検知結果を要求し、要求に対する応答として電圧検知結果を受信することを特徴とする請求項10に記載の漏電遮断器システム。
【請求項15】
前記遮断部は、
前記トリップ制御信号が受信された場合に、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点のトリップを所定時間遅延させるための時間遅延部をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の漏電遮断器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電回路遮断器(以下、漏電遮断器という)及びその漏電遮断器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漏電遮断器は、電動機械器具などの負荷が接続されている電路において漏電による感電の危険性を回避するために用いられる機器である。そのために、漏電遮断器は、前記電路と前記負荷が接続された接点を開閉駆動する遮断部を含み、漏電又は地絡が検出されると、前記遮断部のトリップ動作を行って電路と負荷の接続を遮断する。
【0003】
一方、R相、S相、T相の交流三相電力が供給される電路において、漏電遮断器は、通常、零相変流器(ZCT: Zero Current Transformer)により電流を検出する。その場合、3つの相に流れる電流が正常であれば、磁束が相殺されて零相変流器により電流が検出されることはないが、磁束が相殺されなければ、すなわち前記3つの相の少なくとも1つの位相や流れる電流量が変化すると、零相変流器から電流が検出される。よって、漏電遮断器は、零相変流器の検出結果に基づいて漏電又は地絡の発生を検出し、遮断部を制御して負荷が接続された接点をトリップすることにより、漏電又は地絡による感電事故や火災などを未然に防止することができる。
【0004】
一方、前記負荷が三相負荷であれば、前記三相の各電路の全てから電力が供給されるように、前記三相の各電路と接点が形成されてもよい。しかし、図1に示すように、単相負荷21、22、23であれば、前記三相の電路のうち二相の電路と接点が形成され、前記二相の電路から電力が供給されるようにしてもよい。
【0005】
しかし、三相の交流電路のいずれかの電路において地絡が発生すると、通常の漏電遮断器11、12、13は、前述したように三相電路全体における零相変流器10の電流検出結果に基づいて遮断部のトリップ動作を制御するので、電路に接続された負荷21、22、23の全てが電路から遮断されるという問題がある。すなわち、R相、S相及びT相の電路のうちS相の電路で地絡が発生した場合に、地絡が発生していないR相の電路及びT相の電路から電力が供給されているRT負荷22であっても、RT負荷22に接続された漏電遮断器12は、零相変流器10の電流検出結果に応じてRT負荷22とR相の電路及びT相の電路の接点をトリップするという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、特定電路で地絡が発生した場合に、前記地絡により発生する停電の影響を最小限に抑えることのできる漏電遮断器及びその漏電遮断器の制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、特定電路で地絡が発生した場合に、地絡が発生した電路から電力が供給されていない単相負荷に対してはトリップが行われないようにする漏電遮断器及びその漏電遮断器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的又は他の目的を達成するために、本発明の一態様は、三相電路のうち2つの電路に接続された単相負荷と前記三相電路間に形成された漏電遮断器において、前記三相電路に形成された零相変流器で発生した零相電流を検出する零相電流検出部と、前記2つの電路のそれぞれから電圧を検知する電圧検知部と、トリップ(trip)信号が入力されると、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップするトリップ部と、前記零相電流検出部で零相電流が検出されると、前記電圧検知部の電圧検知結果に基づいて、前記2つの電路のうち予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路を検出し、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があれば、前記トリップ信号を生成して前記トリップ部に出力する制御部とを含むことを特徴とする。
【0009】
一実施形態において、前記制御部は、前記検出した零相電流が予め設定された設定値以上であるか否かに基づいて、前記電圧検知結果に応じて、前記予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路を検出し、電路検出結果に応じて、前記トリップ信号を生成して出力することを特徴とする。
【0010】
一実施形態において、前記制御部は、前記検出した零相電流が予め設定された特定電流値である設定値未満であれば、前記検出した零相電流が漏電によるものであるか否かを判断し、前記零相電流が漏電により発生したものであれば、前記電路検出結果に関係なく前記トリップ信号を生成して出力することを特徴とする。
【0011】
一実施形態において、前記零相電流検出部は、固定接続抵抗及び複数の選択接続抵抗と、選択スイッチとを有し、前記零相変流器から入力される零相電流を、前記選択スイッチにより選択されるいずれかの選択接続抵抗と前記固定接続抵抗の合成抵抗により決定される抵抗値に基づいて電圧信号に変換する感度選択回路を含み、前記制御部は、前記合成抵抗により決定される特定電圧値である基準値と、前記変換された電圧信号の電圧値を比較して、前記零相電流が漏電により発生したものであるか否かを判断することを特徴とする。
【0012】
一実施形態において、前記制御部は、前記合成抵抗に応じて前記設定値に対応する電圧値を算出し、前記感度選択回路で変換された電圧信号の電圧値と、前記設定値に対応する電圧値を比較した結果に基づいて、前記検出した零相電流が前記設定値未満であるか否かを判断することを特徴とする。
【0013】
上記目的又は他の目的を達成するために、本発明の一態様は、三相電路のうち2つの電路に接続された単相負荷と前記三相電路間に形成された漏電遮断器の制御方法において、前記三相電路に形成された零相変流器で発生した零相電流を検出する第1ステップと、検出した零相電流が予め設定された設定値以上であるか否かによって漏電又は地絡が発生したか否かを検出する第2ステップと、前記第2ステップの検出結果が地絡発生であれば、前記2つの電路のそれぞれの電圧を検知する第3ステップと、前記第3ステップの電圧検知結果に基づいて、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があるか否かを検出する第4ステップと、前記第4ステップの検出結果に基づいて、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする第5ステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
一実施形態において、前記第2ステップは、前記第2ステップの検出結果が漏電発生であれば、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする第2-1ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0015】
一実施形態において、前記第5ステップは、前記第4ステップの検出の結果、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があれば、前記トリップを所定時間遅延させる第5-1ステップをさらに含むことを特徴とする。
【0016】
一実施形態において、前記第2ステップは、前記検出した零相電流の大きさが予め設定された設定値以上であれば、前記零相電流が地絡により発生したものと判断し、前記検出した零相電流の大きさが予め設定された設定値未満であれば、漏電が発生したか否かを判断するための予め設定された基準値と、前記検出した零相電流の大きさに応じた電圧信号の電圧値を比較して、漏電が発生したか否かを判断するステップであることを特徴とする。
【0017】
上記目的又は他の目的を達成するために、本発明の一態様による漏電遮断器システムは、三相電路のうち2つの電路から電力が供給される少なくとも1つの単相負荷と、各単相負荷と前記単相負荷に電力を供給している2つの電路との間に形成され、トリップ制御信号を受信した場合に、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする少なくとも1つのトリップ部と、前記三相電路に形成された零相変流器に接続され、前記零相変流器から零相電流が検出されると、前記少なくとも1つのトリップ部から各単相負荷に接続された電路の電圧検知結果を受信し、受信した電圧検知結果に基づいて、前記少なくとも1つのトリップ部の一部に前記トリップ制御信号を送信するシステム制御部とを含むことを特徴とする。
【0018】
一実施形態において、前記トリップ部は、前記システム制御部と通信接続を行う通信部と、単相負荷に電力を供給している2つの電路のそれぞれの電圧を検知する電圧検知部と、前記トリップ制御信号を受信した場合に、前記単相負荷に電力を供給している2つの電路と前記単相負荷間の接点をトリップする遮断部とを含み、前記通信部は、前記電圧検知部の電圧検知結果を前記システム制御部に送信し、前記システム制御部からトリップ制御信号を受信すると、受信したトリップ制御信号を遮断部に送ることを特徴とする。
【0019】
一実施形態において、前記システム制御部は、前記検出した零相電流の大きさと予め設定された設定値を比較し、前記検出した零相電流の大きさが前記設定値以上であれば、各トリップ部から受信した電圧検知結果から予め設定されたレベルより大きな電圧降下を検知した電圧検知部を検出し、検出した電圧検知部に対応するトリップ部にトリップ制御信号を送信することを特徴とする。
【0020】
一実施形態において、前記システム制御部は、前記検出した零相電流の大きさと予め設定された設定値を比較し、前記検出した零相電流の大きさが前記設定値未満であれば、漏電が発生したか否かを判断するための基準値に基づいて、前記零相電流が漏電により発生したものであるか否かを判断し、前記零相電流が漏電により発生したものであれば、前記少なくとも1つのトリップ部の全てにトリップ制御信号を送信することを特徴とする。
【0021】
一実施形態において、前記システム制御部は、前記零相変流器から零相電流が検出されると、前記少なくとも1つのトリップ部のそれぞれに電圧検知結果を要求し、要求に対する応答として電圧検知結果を受信することを特徴とする。
【0022】
一実施形態において、前記遮断部は、前記トリップ制御信号が受信された場合に、前記2つの電路と前記単相負荷間の接点のトリップを所定時間遅延させるための時間遅延部をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以下、本発明による漏電遮断器及びその漏電遮断器の制御方法の効果について説明する。
【0024】
本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、本発明は、零相変流器の電流検出結果と単相負荷の電路接点から測定された電圧検知結果の組み合わせに応じて電路に接続された接点が遮断されるようにするので、地絡が発生していない電路から電力が供給されている単相負荷は電路から遮断されないようにすることができるという利点を有する。
【0025】
また、本発明の実施形態の少なくとも1つによれば、本発明は、特定電路で地絡が発生した場合に、地絡が発生した電路から電力が供給されている負荷のみ電路から遮断されるようにするので、前記地絡により電力供給が中断される単相負荷の数を最小限に抑えることができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】零相変流器の電流検出結果に応じてトリップが行われる通常の漏電遮断器について説明するためのブロック図である。
図2a】本発明の第1実施形態による漏電遮断器について説明するためのブロック図である。
図2b】漏電時と地絡時に検出される電流及び電圧の一例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態による漏電遮断器の構造をより詳細に示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態による漏電遮断器の動作過程を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態による漏電遮断器システムについて説明するためのブロック図である。
図6図5の漏電遮断器システムにおけるシステム制御部の動作過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本明細書に開示される実施形態について詳細に説明するが、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の符号を付し、その説明は省略する。以下の説明で用いる構成要素の接尾辞である「モジュール」及び「部」は、明細書の作成を容易にするために付与又は混用されるものであり、それ自体が有意性や有用性を有するものではない。また、本明細書に開示される実施形態について説明するにあたって、関連する公知技術についての具体的な説明が本明細書に開示される実施形態の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。なお、添付図面は本明細書に開示される実施形態を容易に理解できるようにするためのものにすぎず、添付図面により本明細書に開示される技術的思想が限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物又は代替物が本発明に含まれるものと理解されるべきである。
【0028】
図2aは本発明の第1実施形態による漏電遮断器について説明するためのブロック図である。また、図2bは漏電時と地絡時に検出される電流及び電圧の一例を示す図である。
【0029】
図2aに示すように、本発明の第1実施形態による漏電遮断器は、R相電路、S相電路、T相電路のうち2つの電路から電力が供給される単相負荷に接続されてもよい。よって、前記単相負荷は、S相電路とT相電路から電力が供給される負荷(以下、ST負荷231)、R相電路とT相電路から電力が供給される負荷(以下、RT負荷232)、又はR相電路とS相電路から電力が供給される負荷(以下、RS負荷233)のいずれかであってもよい。よって、以下では、説明の便宜上、前記三相電路から電力が供給される単相負荷は、ST負荷231、RT負荷232又はRS負荷233のいずれかであると仮定して説明する。
【0030】
ここで、単相負荷は、前述した2つの電路から供給される電力を少なくとも1つの電動機械器具に供給できるように形成された配電盤であってもよい。すなわち、少なくとも1つの電動機械器具が前記単相負荷に接続される場合、前記単相負荷に接続された2つの電路から供給される電力が前記少なくとも1つの電動機械器具に伝達されてもよい。
【0031】
一方、零相変流器200は、三相電路に流れる電流の平衡状態を検知するようにしてもよい。よって、前記三相電路の少なくとも1つに漏電又は地絡が発生した場合、前記漏電又は地絡電流により電流平衡が崩れ、それによる零相電流が発生し得る。よって、零相変流器200に接続された、本発明の実施形態による漏電遮断器211、212、213は、零相変流器200で発生した零相電流を検出することにより、前記漏電又は地絡の発生を検知するようにしてもよい。
【0032】
一方、漏電が発生した場合、図2bの(a)に示すように、漏電が発生した電路では漏電による漏電電流が発生するが、電圧には変化がない。それに対して、図2bの(b)に示すように、地絡が発生した場合、地絡が発生した電路では地絡電流と共に地絡による電圧降下が発生することが分かる。よって、電路から検知される電圧に基づいて、当該電路に地絡が発生したか否かを検出するようにしてもよい。よって、本発明においては、零相電流が発生した場合、単相負荷に接続された電路のうち電圧降下が発生した電路があるか否かを検出することにより、現在単相負荷に電力を供給している電路に地絡が発生したか否かを識別し、地絡が発生した電路から電力が供給されている単相負荷に限って電路と単相負荷間の接点をトリップするようにしてもよい。
【0033】
そのために、本発明の実施形態による漏電遮断器は、電路から電力が供給される各単相負荷231、232、233毎に形成されてもよい。また、各漏電遮断器231、232、233は、接続された単相負荷に電力を供給している2つの電路のそれぞれの電圧を検知する電圧検知部を含んでもよい。
【0034】
よって、ST負荷231に接続された第1漏電遮断器211の第1電圧検知部221は、S相電路とT相電路からそれぞれ電圧を検知するようにしてもよい。また、RT負荷232に接続された第2漏電遮断器212の第2電圧検知部222は、R相電路とT相電路からそれぞれ電圧を検知するようにしてもよい。さらに、RS負荷233に接続された第3漏電遮断器213の第3電圧検知部223は、R相電路とS相電路からそれぞれ電圧を検知するようにしてもよい。
【0035】
また、各漏電遮断器211、212、213は、前記R相、S相、T相の三相電路に設置された零相変流器200から電流を検出した結果と、前記電圧検知部で検知された各電路の電圧に基づいて、接続された単相負荷と電路間の接点をトリップするようにしてもよい。
【0036】
より詳細には、漏電遮断器211、212、213は、零相変流器200から電流が検出されると、各単相負荷に電力を供給している電路の電圧をさらに検知するようにしてもよい。また、検知された予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路がある場合に限って、単相負荷と、その単相負荷に電力を供給している電路間の接点をトリップするようにしてもよい。
【0037】
そのために、本発明の第1実施形態による漏電遮断器211、212、213は、検知された電圧に基づいてトリップ信号を出力する制御部を備えてもよく、前記トリップ信号に応じてターンオン信号を出力するスイッチング素子、スイッチング素子により励磁されるトリップコイル、前記トリップコイルにより負荷と電路間の接点をトリップする開閉部を含んでもよい。
【0038】
図3は本発明の第1実施形態による漏電遮断器の構造をより詳細に示すブロック図である。
【0039】
図3は漏電遮断器211、212、213のうち第1漏電遮断器211の構成を詳細に示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、第1漏電遮断器211は、制御部300と、零相電流検出部330と、第1電圧検知部221と、スイッチング素子310と、定電源回路313と、トリップコイル部311と、開閉部312とを含んでもよい。時間遅延回路321をさらに含んでもよい。
【0041】
第1電圧検知部221は、現在単相負荷、すなわちST負荷231に電力を供給しているS相電路とT相電路からそれぞれ電圧を検知するようにしてもよい。また、電圧検知結果を制御部300に送るようにしてもよい。
【0042】
ここで、第1電圧検知部221は、制御部300から制御信号を受信すると、前記単相負荷に電力を供給している各相電路の電圧を検知するようにしてもよい。あるいは、制御部300からの検知要求に関係なく、常に前記各相電路の電圧を検知するようにしてもよい。
【0043】
ここで、第1電圧検知部221は、ターンオフ状態において、制御部300の制御によりターンオンするように形成されてもよい。その場合、制御部300は、零相変流器200で電流が検出されると、第1電圧検知部221をターンオンする制御信号を送信し、前記制御信号に対する応答として各相電路の電圧検知結果を受信するようにしてもよい。
【0044】
零相電流検出部330は、零相変流器200で発生した零相電流を検出するようにしてもよい。また、零相電流検出結果を制御部300に送るようにしてもよい。ここで、前記零相電流検出結果は、零相変流器200から入力される零相電流であってもよい。よって、零相電流検出部330は、零相変流器200から入力された零相電流を制御部300に送るようにしてもよい。
【0045】
一方、零相電流検出部330は、感度選択回路320を含んでもよい。その場合、零相変流器200から入力される零相電流は、感度選択回路320で電圧信号に変換されるようにしてもよい。よって、零相電流検出結果として前記電圧信号が制御部300に送られるようにしてもよい。よって、制御部300は、送られた電圧信号の電圧値に基づいて、前記零相電流の有無及び前記零相電流の大きさを検出するようにしてもよい。
【0046】
また、制御部300は、零相電流が検出されると、第1電圧検知部221で検知された電圧から、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があるか否かを検出するようにしてもよい。さらに、制御部300は、第1電圧検知部221から受信した各相電路の電圧検知結果から、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があるか否かを検出するようにしてもよい。さらに、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があれば、トリップ制御信号を出力するようにしてもよい。
【0047】
例えば、三相電路のうち、S相電路又はT相電路に地絡が発生すれば、電圧検知の結果、S相電路で検知される電圧又はT相電路で検知される電圧が予め設定されたレベルより大きく降下することになる。よって、制御部300は、前記電圧検知結果から、S相電路又はT相電路の地絡を検出するようにしてもよい。また、トリップ制御信号を出力するようにしてもよい。
【0048】
それに対して、制御部300は、零相変流器200で零相電流が検出された状態において、各相電路の電圧検知の結果、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路がなければ、現在単相負荷に電力を供給している電路に地絡が発生していないものと判断するようにしてもよい。よって、制御部300は、トリップ制御信号を出力しないようにしてもよい。よって、零相変流器200の電流検出結果にもかかわらず、単相負荷は、電路から電力が供給されている状態をそのまま維持するようにしてもよい。
【0049】
一方、スイッチング素子310は、サイリスタ(thyristor)のように、ゲート制御信号によりオン又はオフされる半導体スイッチで構成されてもよい。また、スイッチング素子310は、制御部300に接続され、前記ゲート制御信号として前記トリップ制御信号が入力されるようにしてもよい。よって、スイッチング素子310は、制御部300からトリップ制御信号が出力されると、オン状態に切り替えられるようにしてもよい。
【0050】
一方、トリップコイル部311は、スイッチング素子310がオン状態のときに励磁(magnetizing)されるトリップコイル(trip coil)を含んでもよい。また、トリップコイルが励磁されると磁気吸引力により移動するアーマチュア(armature)を含んでもよい。さらに、トリップコイル部311のアーマチュアは、開閉部312が各電路と負荷間の接点をトリップするようにトリガ(trigger)する役割を果たすようにしてもよい。よって、スイッチング素子310がオン状態に切り替えられると、開閉部312が各電路と単相負荷間の接点をトリップするようにしてもよい。ここで、トリップとは、各電路と単相負荷間を開放することを意味する。すなわち、回路が開放されることにより、電路と単相負荷間の接続が遮断される。
【0051】
一方、定電源回路313は、前記トリップコイルを励磁する電源を供給するようにしてもよい。定電源回路313は、スイッチング素子310に接続された二相電路から送られる交流電力を変換して直流電源を供給する回路部であり、例えばダイオードブリッジ(diode bridge)整流回路と、整流回路の出力電圧を降圧して供給する少なくとも1つの分圧抵抗とを含んでもよい。
【0052】
一方、制御部300からトリップ信号が出力されなければ、スイッチング素子310がターンオフ状態をそのまま維持するようにしてもよい。よって、前記トリップコイルの励磁が行われないようにしてもよい。よって、単相負荷が電路から電力を供給されている状態がそのまま維持されるようにしてもよい。
【0053】
一方、感度選択回路320は、制御部300が漏電発生を検出するための基準値(threshold value)を決定するようにしてもよい。感度選択回路320は、1つの固定接続抵抗と、複数の選択接続抵抗と、選択スイッチとを含んでもよい。ここで、複数の選択接続抵抗の抵抗値がそれぞれ異なり、選択スイッチを一方向に移動させると小さい値から大きい値に増加するように選択されてもよい。
【0054】
前記複数の選択接続抵抗のいずれかは、前記選択スイッチにより固定接続抵抗に選択的に並列接続されるようにしてもよい。また、制御部300は、選択された選択接続抵抗に応じて前記基準値を決定するようにしてもよい。例えば、前記基準値は、予め設定された試験信号に対する固定接続抵抗の抵抗値に応じた電圧値と、予め設定された試験信号と前記固定接続抵抗と各選択接続抵抗との合成抵抗に応じた電圧値により決定される電圧値であってもよい。すなわち、その場合、固定接続抵抗が固定された値であるので、選択スイッチにより特定選択接続抵抗が選択されると、制御部300は、選択された選択接続抵抗に基づいて、その算出された特定電圧値を前記基準値として決定するようにしてもよい。
【0055】
一方、感度選択回路320の固定接続抵抗は、零相変流器200の出力端に接続されるようにしてもよい。よって、零相変流器200から零相電流が出力されると、出力された零相電流、及び固定接続抵抗と前記選択スイッチにより選択されたいずれかの選択接続抵抗に応じた電圧信号が制御部300に送られる。よって、制御部300は、送られた電圧信号と現在決定されている基準値を比較して漏電が発生したか否かを判断するようにしてもよい。
【0056】
一方、本発明の実施形態による漏電遮断器は、異なる容量のコンデンサを含む時間遅延回路321をさらに含んでもよい。その場合、制御部300は、漏電が検出されるか、又は単相負荷に接続された電路の少なくとも1つから地絡が検出されると、所定時間遅延させてスイッチング素子310をターンオンするようにしてもよい。よって、所定時間遅延させてからトリップコイルを励磁するようにしてもよく、また、前記所定時間遅延させてから単相負荷と電路間の接点をトリップするようにしてもよい。
【0057】
なお、図3は第1漏電遮断器211の構造についてのみ示しているが、第2漏電遮断器212と第3漏電遮断器213も同様の構造を有することは言うまでもない。もっとも、第1漏電遮断器211は、零相変流器200の電流検出結果と、S相電路とT相電路の電圧検知結果とに基づいて、S相、T相電路とST負荷231間の接点をトリップするのに対して、第2漏電遮断器212は、零相変流器200の電流検出結果と、R相電路とT相電路の電圧検知結果とに応じてトリップ動作を行い、第3漏電遮断器213は、零相変流器200の電流検出結果と、R相電路とS相電路の電圧検知結果とに応じてトリップ動作を行うので、前記単相負荷に接続される電路のみ、R相とT相、又はR相とS相の違いがあるものの、第2漏電遮断器212と第3漏電遮断器213は第1漏電遮断器211と同様の構造を有する。
【0058】
一方、図4は本発明の第1実施形態による漏電遮断器の動作過程を示すフローチャートである。以下、図4の説明における制御部300は、第1漏電遮断器211の制御部300である。しかし、前述したように、第2漏電遮断器212及び第3漏電遮断器213は単相負荷に接続される電路のみ異なるので、第2漏電遮断器212の制御部及び第3漏電遮断器213の制御部も、図4の説明における動作過程と同様の動作を行うことは言うまでもない。
【0059】
まず、制御部300は、零相変流器200から入力される零相電流を検出する(S400)。例えば、制御部300は、感度選択回路320から入力される電圧信号があるか否かに基づいて、前記零相電流があるか否かを検出する。
【0060】
一方、制御部300は、前記零相電流を検出した結果、零相変流器200で零相電流が発生したか否かを判断する(S402)。また、S402ステップの判断の結果、零相変流器200から零相電流が検出されなければ、S400ステップに戻り、零相電流を検出する状態を維持する。
【0061】
それに対して、S402ステップの判断の結果、零相変流器200から零相電流が検出されれば、発生した零相電流の電流値が予め設定された設定値未満であるか否かを判断する(S404)。
【0062】
しかし、S404ステップの判断の結果、発生した零相電流の電流値が予め設定された設定値未満であれば、前記零相電流が漏電により発生したものと判断する(S414)。次いで、制御部300がトリップ制御信号を出力する。次いで、スイッチング素子310がターンオンし、トリップコイル部311及び開閉部312がトリップ動作を行い、単相負荷に電力を供給している電路と前記単相負荷との接点をトリップする(S412)。
【0063】
ここで、前記零相電流の電流値は、感度選択回路320から入力される電圧信号に応じて決定される。その場合、制御部300は、前記設定値に対応する電流値について、現在感度選択回路320で固定接続抵抗と現在選択中の選択接続抵抗に応じた電圧値を算出し、前記入力される電圧信号の電圧と、前記算出した電圧値の大きさを比較することにより、零相変流器200で発生した零相電流の電流値が予め設定された設定値以上であるか否かを判断する。
【0064】
ここで、前記算出した電圧値は、感度選択回路320に現在設定されている漏電発生を検出するための基準値より大きい値である。その場合、制御部300は、感度選択回路320から入力される電圧信号の電圧値が前記基準値より大きく、前記算出した電圧値より小さいと、漏電が発生したものと判断する。
【0065】
それに対して、感度選択回路320から入力される電圧信号の電圧値が前記基準値より小さいと、漏電が発生したものと判断せず、その場合は、S400ステップに戻り、零相電流を検出する状態を維持する。
【0066】
しかし、S404ステップの判断の結果、発生した零相電流の電流値が予め設定された設定値以上であれば、前記零相電流が地絡により発生したものと判断する(S406)。例えば、制御部300は、感度選択回路320から入力される電圧信号の電圧値が前記算出した電圧値以上であれば、地絡が発生したものと判断する。
【0067】
一方、地絡により零相電流が発生したものと判断されると、制御部300は、単相負荷に接続された各電路の電圧を検知する(S408)。次に、S408ステップの検知の結果、単相負荷に現在接続されている電路のうち予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があるか否かを判断する(S410)。さらに、S410ステップの判断の結果、現在単相負荷に接続されている電路のうち予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路があれば、制御部300は、S412ステップに進み、トリップ制御信号を出力する。次いで、スイッチング素子310がターンオンし、トリップコイル部311及び開閉部312がトリップ動作を行い、単相負荷に電力を供給している電路と前記単相負荷との接点をトリップする。
【0068】
一方、S412ステップは、前記トリップ信号により電路と前記単相負荷間の接点がトリップされることを所定時間遅延させる過程をさらに含んでもよい。よって、前記漏電が検出されると、又は零相変流器200から零相電流が検出(S402ステップ)されるという条件と、予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路が検出(S410ステップ)されるという条件の2つの条件をどちらも満たすと、制御部300は、所定時間遅延させてからトリップ制御信号を出力する。よって、漏電を検出した時点、又はS402ステップとS410ステップの2つの条件をどちらも満たした時点から所定時間経過後に、単相負荷が電路から遮断される。
【0069】
それに対して、S410ステップの判断の結果、現在単相負荷に接続されている電路のうち予め設定されたレベルより大きな電圧降下が発生した電路がなければ、制御部300は、S400ステップに戻り、零相電流を検出する状態を維持する。よって、たとえ地絡が発生したとしても、現在単相負荷に電力を供給している電路で地絡が発生していなければ、制御部300は、トリップ制御を行わない。よって、本発明の実施形態による漏電遮断器は、地絡が発生していない電路から電力が供給されている単相負荷に対しては電路から電力が供給されている状態をそのまま維持する。
【0070】
一方、上記説明では、各単相負荷毎に漏電遮断器が接続され、各漏電遮断器に備えられた制御部により各漏電遮断器が個別に制御される例について説明したが、それとは異なり、各単相負荷に形成された漏電遮断器が1つの制御部により統合的に制御されてもよいことは言うまでもない。その場合、各漏電遮断器と制御部は、近接通信や近距離通信などのIOT(Internet Of Thing)方式で接続されるようにしてもよい。また、前記統合制御部により制御される各漏電遮断器は、制御部を含まず、電路と単相負荷をトリップする遮断部と、前記単相負荷に電力を供給している各電路の電圧を検知する電圧検知部とを含む最小の構成であってもよいことは言うまでもない。
【0071】
以下、このように複数の漏電遮断器が1つの制御部により統合的に制御される漏電遮断システムを、第1実施形態と区分するために本発明の第2実施形態という。また、第2実施形態により複数の漏電遮断器を制御する制御部を、第1実施形態の制御部と区分するためにシステム制御部という。さらに、以下の説明では、トリップ制御を行う制御部を含まない第2実施形態の漏電遮断器をトリップ部といい、第1実施形態の漏電遮断器と区分する。
【0072】
図5は本発明の第2実施形態による漏電遮断器システムについて説明するためのブロック図である。
【0073】
図5に示すように、本発明の第2実施形態による漏電遮断器システムは、R相、S相及びT相の交流電力を供給する三相電路に形成された零相変流器510に接続されたシステム制御部500と、前記三相電路の少なくとも2つの電路から電力が供給される少なくとも1つの単相負荷541、542、543と、各単相負荷と各単相負荷に電力を供給している電路間に形成され、トリップ制御信号に応じて単相負荷と前記単相負荷に電力を供給している電路間の接点をトリップする少なくとも1つのトリップ部551、552、553とを含んでもよい。
【0074】
ここで、システム制御部500は、零相変流器510から零相電流の発生を検出し、発生した零相電流の大きさに基づいて漏電発生又は地絡発生を判断するようにしてもよい。また、地絡が発生した場合、各トリップ部551、552、553から電圧検知結果を受信し、受信した電圧検知結果に基づいて、地絡が発生した電路に対応するトリップ部にトリップ制御信号を送信するようにしてもよい。それに対して、漏電が発生した場合、各トリップ部551、552、553の全てにトリップ制御信号を送信するようにしてもよい。
【0075】
また、各トリップ部551、552、553は、システム制御部500の要求があれば、単相負荷に電力を供給している各電路の電圧検知結果をシステム制御部500に送信し、システム制御部500から受信するトリップ制御信号に応じてトリップ動作を行うように形成されてもよい。
【0076】
そのために、トリップ部551、552、553は、システム制御部500と接続を行うことのできる通信部(図示せず)を備えてもよい。また、単相負荷に電力を供給している電路のそれぞれから電圧を検知する電圧検知部521、522、523と、単相負荷と前記単相負荷に電力を供給している電路間の接点をトリップする遮断部531、532、533とを備えてもよい。
【0077】
ここで、遮断部は、スイッチング素子と、トリップコイル部と、定電源回路と、開閉部とを含んでもよい。また、システム制御部500からトリップ信号を受信すると、スイッチング素子のターンオンを遅延させる時間遅延回路を含んでもよい。
【0078】
さらに、通信部は、ブルートゥース(BluetoothTM)(登録商標)、RFID(Radio Frequency Identification)、赤外線通信(Infrared Data Association; IrDA)などの少なくとも1つの近距離通信モジュールを含んでもよい。
【0079】
各トリップ部551、552、553は、前記通信部によりシステム制御部500に接続されるようにしてもよい。よって、各電圧検知部521、522、523は、単相負荷に接続された電路のそれぞれから検知された電圧検知結果をシステム制御部500に送信するようにしてもよい。また、通信部は、システム制御部500からトリップ制御信号を受信し、受信したトリップ制御信号を各遮断部531、532、533に送るようにしてもよい。よって、トリップ制御信号が送られた遮断部は、単相負荷と前記単相負荷に電力を供給している電路間の接点をトリップするようにしてもよい。
【0080】
図6図5の漏電遮断器システムにおけるシステム制御部の動作過程を示すフローチャートである。
【0081】
図6に示すように、まず、システム制御部500は、零相変流器510から零相電流を検出する(S600)。例えば、システム制御部500は、感度選択回路を備え、前記感度選択回路により電圧信号に変換された零相電流が入力されるか否かに基づいて、零相電流があるか否かを判断する(S602)。しかし、S602ステップの判断の結果、零相電流が検出されなければ、システム制御部500は、S600ステップに戻り、零相変流器から零相電流を検出する状態を維持する。
【0082】
一方、S602ステップの判断の結果、零相電流が検出されれば、システム制御部500は、検出した零相電流の大きさに基づいて、前記零相電流が漏電により発生したものであるか、地絡により発生したものであるかを判断する(S604)。例えば、システム制御部500は、発生した零相電流の大きさが予め設定された設定値以上であれば、前記零相電流が地絡により発生したものと判断する。それに対して、発生した零相電流の大きさが予め設定された設定値未満であれば、前記零相電流が漏電により発生したものと判断する。
【0083】
例えば、前記零相電流の大きさは、前記感度選択回路により送られる電圧値に応じて決定される。その場合、システム制御部500は、感度選択回路において、現在選択中の選択接続抵抗と固定接続抵抗及び前記設定値(予め設定された電流値)に応じた電圧値を算出し、算出した電圧値と、前記感度選択回路により零相電流から変換された電圧信号の電圧値を比較し、前記零相電流が漏電により発生したものであるか、地絡により発生したものであるかを判断する。
【0084】
一方、S604ステップの判断の結果、零相電流が漏電により発生したものであれば、システム制御部500は、トリップ部551、552、553の全てにトリップ制御信号を送信する(S612)。次いで、トリップ部551、552、553の各遮断部531、532、533は、受信したトリップ制御信号に応じてトリップ動作を行い、各単相負荷と電路間の接点をトリップする。
【0085】
一方、S604ステップの判断の結果、零相電流が地絡により発生したものであれば、システム制御部500は、各トリップ部551、552、553の電圧検知部521、522、523から電圧検知結果を受信する(S606)。次に、受信した電圧検知結果から予め設定されたレベルより大きな電圧降下が検知された電圧検知部を検出する(S608)。次に、検出した電圧検知部に対応する少なくとも1つのトリップ部にトリップ制御信号を送信する(S610)。よって、トリップ部551、552、553の一部に対してトリップ制御信号を送信し、トリップ部551、552、553のうちトリップ制御信号を受信した一部のみトリップ動作を行う。
【0086】
例えば、前記三相電路のうち、S相電路で地絡が発生した場合、システム制御部500は、前記地絡による電流変化を零相変流器510から検知する。次いで、システム制御部500は、S相、T相電路から電力が供給されるST負荷541の第1トリップ部551、R相、T相電路から電力が供給されるRT負荷542の第2トリップ部552、及びR相、S相電路から電力が供給されるRS負荷543の第3トリップ部553の電圧検知部521、522、523から各電路の電圧検知結果を受信する。
【0087】
よって、前述したように、S相電路に地絡が発生した場合、システム制御部500は、前記電圧検知結果から、S相電路の電圧を検知した第1電圧検知部521と第3電圧検知部523を検出する。次に、システム制御部500は、第1電圧検知部521と第3電圧検知部523に対応する第1トリップ部551と第3トリップ部553にそれぞれトリップ制御信号を送信する。よって、第1遮断部531及び第3遮断部533のトリップ動作により、ST負荷541及びRS負荷543は電力供給が遮断される。しかし、S相電路から電力が供給されていないRT負荷542は、電力が供給されている状態がそのまま維持される。
【0088】
前述した本発明は、プログラム記録媒体にコンピュータ可読コードとして実現することができる。コンピュータ可読媒体には、コンピュータシステムにより読み取り可能なデータが記録されるあらゆる種類の記録装置が含まれる。コンピュータ可読媒体の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Disk)、SDD(Silicon Disk Drive)、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などが挙げられ、また、搬送波(例えば、インターネットによる送信)状に実現されるものも含まれる。
【0089】
さらに、前記コンピュータは、前記制御部を含んでもよい。よって、本発明の詳細な説明は例示的なものであり、あらゆる面で制限的に解釈されてはならない。本発明の範囲は請求の範囲の合理的解釈により定められるべきであり、本発明の均等範囲におけるあらゆる変更が本発明に含まれる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6