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特許7256926基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230405BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230405BHJP
   H01L 21/318 20060101ALN20230405BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/455
H01L21/318 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022507966
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012340
(87)【国際公開番号】W WO2021186677
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 佑之輔
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴志
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭吾
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046129(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154823(WO,A1)
【文献】特開平10-335253(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/455
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室に処理ガスを供給する処理ガスノズルと、
前記処理ガスノズルと前記基板の周方向において所定距離離れて配置され、前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガスノズルと、
内部に前記処理室を構成し、前記処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管と、を備え、
前記不活性ガスノズルから供給される前記不活性ガスは、前記第2突出部付近に前記不活性ガスの渦流を形成するように前記処理ガスノズルに向けて供給される
基板処理装置。
【請求項2】
前記不活性ガスノズルから供給される前記不活性ガスにより、前記処理ガスの流れる向きが、前記基板中心方向に向けられる請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理ガスノズルから供給され前記基板の端部と前記反応管の内壁との間を流れる前記処理ガスは、前記不活性ガスの渦流により、前記基板中心方向に向けて流れる請求項記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理室の雰囲気を排気する排気部を有し、
前記不活性ガスノズルから供給される前記不活性ガスは、前記第2突出部付近の前記不活性ガスの渦流により、前記排気部に向けて前記基板の端部と前記反応管の内壁との間を流れる請求項記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記不活性ガスの渦流は、前記基板の周縁部の一部と重なるように形成される請求項記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理ガスの濃度は、前記不活性ガスの渦流が形成される前記基板の周縁部の一部で低減される請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を処理する処理室に処理ガスを供給する処理ガスノズルと、
前記処理ガスノズルと前記基板の周方向において所定距離離れて配置され、前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガスノズルと、
内部に前記処理室を構成し、前記処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管と、を備え、
前記不活性ガスノズルは2本配置され、前記2本の不活性ガスノズルからそれぞれ供給される前記不活性ガスは、前記処理ガスの流れる向きを前記基板側へ向けるように前記処理ガスノズルに向けて供給される
基板処理装置。
【請求項8】
前記処理室の雰囲気を排気する排気部を有し、
前記2本の不活性ガスノズルは、前記処理ガスノズルと前記排気部を結ぶ直線に対して線対称に配置される請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記不活性ガスの渦流と前記処理ガスは混合することなく反発し、前記処理ガスの流れる方向は、前記不活性ガスの渦流の流れる方向に変化する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板を処理する処理室に処理ガスを供給する処理ガスノズルと、
前記処理ガスノズルと前記基板の周方向において所定距離離れて配置され、前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガスノズルと、
内部に前記処理室を構成し、前記処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管と、を備え、
前記不活性ガスノズルは、前記処理ガスノズルの中心と前記基板中心とを結ぶ直線から前記基板の周方向に15度以上120度以下の位置に配置され、前記不活性ガスノズルから供給される前記不活性ガスは、前記処理ガスの流れる向きを前記基板側へ向けるように前記処理ガスノズルに向けて供給される
基板処理装置。
【請求項11】
前記不活性ガスノズルから供給される前記不活性ガスの流量は、前記処理ガスノズルから供給される前記処理ガスの総流量の1/4以上2/3以下である請求項1又は9記載の基板処理装置。
【請求項12】
内部に処理室を構成し、処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記処理ガスノズルと基板の周方向において所定距離離れて配置される不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記処理ガスノズルから処理ガスを前記処理室に供給し、前記基板を処理する工程と、有し、
前記基板を処理する工程では、前記第2突出部付近に不活性ガスの渦流を形成するように前記不活性ガスノズルから前記不活性ガスを前記処理ガスノズルに向けて供給する
半導体装置の製造方法。
【請求項13】
内部に処理室を構成し、処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記処理ガスノズルと基板の周方向において所定距離離れて配置される不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記処理ガスノズルから処理ガスを前記処理室に供給し、前記基板を処理する工程と、有し、
前記基板を処理する工程では、2本の前記不活性ガスノズルから前記処理室に供給される不活性ガスは、前記処理ガスの流れる向きを前記基板側へ向けるように前記処理ガスノズルに向けてそれぞれ供給される
半導体装置の製造方法。
【請求項14】
内部に処理室を構成し、処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記処理ガスノズルと基板の周方向において前記処理ガスノズルの中心と前記基板中心とを結ぶ直線から15度以上120度以下の位置に所定距離離れて配置される不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管の前記処理室に前記基板を搬入する工程と、
前記処理ガスノズルから処理ガスを前記処理室に供給し、前記基板を処理する工程と、有し、
前記基板を処理する工程では、前記不活性ガスノズルから前記処理室に供給される不活性ガスは、前記処理ガスの流れる向きを前記基板側へ向けるように前記処理ガスノズルに向けて供給される
半導体装置の製造方法。
【請求項15】
内部に処理室を構成し、処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記処理ガスノズルと基板の周方向において所定距離離れて配置される不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管の前記処理室に基板を搬入する手順と、
前記処理ガスノズルから処理ガスを前記処理室に供給し、前記基板を処理する手順と、をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記基板を処理する手順において、前記第2突出部付近に不活性ガスの渦流を形成するように前記不活性ガスノズルから前記不活性ガスを前記処理ガスノズルに向けて供給するプログラム。
【請求項16】
内部に処理室を構成し、処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記処理ガスノズルと基板の周方向において所定距離離れて配置される不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記処理ガスノズルから処理ガスを前記処理室に供給し、前記基板を処理する手順と、をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記基板を処理する手順において、2本の前記不活性ガスノズルから前記処理室に供給される不活性ガスは、前記処理ガスの流れる向きを前記基板側へ向けるように前記処理ガスノズルに向けてそれぞれ供給されるプログラム。
【請求項17】
内部に処理室を構成し、処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記処理ガスノズルと基板の周方向において前記処理ガスノズルの中心と前記基板中心とを結ぶ直線から15度以上120度以下の位置に所定距離離れて配置される不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管の前記処理室に前記基板を搬入する手順と、
前記処理ガスノズルから処理ガスを前記処理室に供給し、前記基板を処理する手順と、をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記基板を処理する手順において、前記不活性ガスノズルから前記処理室に供給される不活性ガスは、前記処理ガスの流れる向きを前記基板側へ向けるように前記処理ガスノズルに向けて供給されるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、処理室内の基板(ウエハ)に対して処理ガスを供給し、基板上に膜を形成する処理が行われる。半導体デバイスの高微細化、高深層化に伴い、処理室内のウエハがパターンウエハの場合、ウエハの中心付近において処理ガスの供給量が不足したために、ウエハ上に形成された膜の面内膜厚均一性が悪化することがある。これに対し、処理ガスをウエハ中心に供給して、ウエハ上の面内膜厚均一性を向上させることがある(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/154823号パンフレット
【文献】国際公開第2016/157401号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成された膜の面内膜厚均一性を向上させる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室に処理ガスを供給する処理ガスノズルと、
前記処理ガスノズルと前記基板の周方向において所定距離離れて配置され、前記処理室に不活性ガスを供給する不活性ガスノズルと、
内部に前記処理室を構成し、前記処理ガスノズルを収容するように外側に突出した第1突出部と、前記不活性ガスノズルを収容するように外側に突出した第2突出部とを有する反応管と、を備え、
前記不活性ガスノズルから供給される前記不活性ガスは、前記処理ガスの流れる向きを前記基板側へ向けるように前記処理ガスノズルに向けて供給される技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成された膜の面内膜厚均一性を向上させる構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の一部を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の成膜シーケンスを示す図である。
図5図5(A)は、本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉内における原料ラジカルの濃度分布を示す図であり、図5(B)は、図5(A)におけるカウンターノズル付近のガスの流れを説明するための図である。
図6】本開示の一実施形態(本実施例)に係る基板処理装置と、比較例1に係る基板処理装置と、比較例2に係る基板処理装置と、をそれぞれ用いて基板上に形成した膜の面内膜厚分布の解析結果を示す図である。
図7図7(A)は、比較例2に係る基板処理装置を用いて基板上に膜を形成した場合のカウンターノズルにおける不活性ガスの流量と面内膜厚分布の関係を示した図である。図7(B)は、本開示の一実施形態に係る基板処理装置を用いて基板上に膜を形成した場合のカウンターノズルにおける不活性ガスの流量と面内膜厚分布の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について、図1図4を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばニッケル合金等の金属からなり、上端および下端が開口した短い円筒形に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持する。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の内部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成される。
【0011】
処理室201には、第1ガスノズルとして、成膜ガス(処理ガス)を供給するノズル249a、第2ガスノズルとして、成膜ガス(処理ガス)を供給するノズル249b、第3ガスノズルとして、不活性ガスを供給するノズル249c、第4ガスノズルとして、不活性ガスを供給するノズル249dが、それぞれマニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a~249dには、ガス供給管232a~232dが、それぞれ接続されている。
【0012】
ノズル249aとノズル249bは、処理室201に成膜ガス(処理ガス)を供給する処理ガスノズルとして用いられる。また、ノズル249cとノズル249bは、処理室201に不活性ガスを供給する不活性ガスノズルとして用いられる。ノズル249cとノズル249dは、それぞれ成膜ガスとは別系統から不活性ガスのみを供給するカウンターノズルとして用いられる。カウンターノズルは、処理室201に2本配置されている。カウンターノズルは、それぞれ処理ガスノズルとウエハ200の周方向において所定距離離れて配置される。
【0013】
ガス供給管232a~232dには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241dおよび開閉弁であるバルブ243a~243dがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232e,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232e,232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241e,241fおよびバルブ243e,243fがそれぞれ設けられている。
【0014】
反応管203には、ノズル249aとノズル249bを収容するように外側に突出した第1突出部302と、ノズル249cを収容するように外側に突出した第2突出部303と、ノズル249dを収容するように外側に突出した第3突出部304と、が形成されている。第1突出部302は、ノズル249aとノズル249bをそれぞれ収容するように複数に分割されていてもよい。
【0015】
第1突出部302は、排気口233と対向する位置に形成されている。第2突出部303と第3突出部304は、それぞれ第1突出部302から反応管203の周方向に所定距離離れた位置に形成されている。ここで、所定距離とは、第1突出部302から反応管203の周方向に15°以上120°以下の範囲内の円弧の距離である。言い換えれば、反応管203の第1突出部302の中心とウエハ200中心とを結ぶ直線と、第2突出部303、第3突出部304のそれぞれの中心とウエハ200中心とを結ぶ直線とのなす角θがそれぞれ15°以上120°以下の範囲内の円弧の距離である。第2突出部303と第3突出部304は、第1突出部302の中心と排気口233の中心とを結ぶ直線に対して線対称に配置される。
【0016】
図2に示す例では、第2突出部303、第3突出部304は、それぞれ第1突出部302から反応管203の周方向に90°離れた位置に形成されている。つまり、第2突出部303は、第3突出部304と対向する位置に形成されている。
【0017】
第1突出部302は、内部に処理室201の一部を構成し、ノズル249a,249bを収容するよう構成されている。第2突出部303は、内部に処理室201の一部を構成し、ノズル249cを収容するように構成されている。第3突出部304は、内部に処理室201の一部を構成し、ノズル249dを収容するように構成されている。
【0018】
ノズル249aとノズル249bは、図2に示すように、第1突出部302内に、反応管203の下方から上方に向かってウエハ200の配列方向に沿ってそれぞれ設けられている。ノズル249aとノズル249bは第1突出部302内で隣接して配置されている。ノズル249a,249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで、後述する排気口233と対向するように配置されている。
【0019】
ノズル249cとノズル249dは、図2に示すように、第2突出部303と第3突出部304内に、反応管203の下方から上方に向かってウエハ200の配列方向に沿ってそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249cとノズル249dは、ノズル249a,249bと、搬入されるウエハ200の周方向にそれぞれ所定距離を保つ位置に設けられる。ここで、所定距離とは、反応管203の内壁面とウエハ200の周縁部との間の距離であるギャップGの倍以上の円弧の距離であって、ノズル249a,249bから、搬入されるウエハ200の周方向に15°以上120°以下の範囲内の円弧の距離である。言い換えれば、処理ガスノズルの中心とウエハ200中心とを結ぶ直線と、ノズル249c、ノズル249dのそれぞれの中心とウエハ200中心とを結ぶ直線とのなす角θがそれぞれ15°以上120°以下の範囲内の円弧の距離である。すなわち、ノズル249c,249dは、ノズル249a,249bから、搬入されるウエハ200の周方向にギャップGの倍以上の円弧の距離であって、処理ガスノズルの中心とウエハ中心とを結ぶ直線から搬入されるウエハ200の周方向に15°以上120°以下の位置に配置される。また、ノズル249cとノズル249dは、処理ガスノズルの中心と排気口233の中心とを結ぶ直線に対して線対称に配置される。つまり、ノズル249dは、処理ガスノズルの中心と排気口233の中心を結ぶ線を直線として区画される領域のうち、ノズル249cが設置される領域の反対側の領域に設けられる。ここで、処理ガスノズルの中心とは、ノズル249aの中心、ノズル249bの中心、又はノズル249aの中心とノズル249bの中心の中間点である。
【0020】
ここで、ノズル249a~249dから供給されるガスは、それぞれガス供給孔250a~250dが向いている方向へガスを噴出する吹き出しと、その周囲に流れる引き込みが生じ、これにより渦流が循環する。ノズル249c,249dを、処理ガスノズルの中心とウエハ中心とを結ぶ直線からウエハ200の周方向に15°より小さい位置に配置すると、ノズル249a,249bと、ノズル249c,249dと、がそれぞれ近接し、ノズル249a,249bから供給される処理ガスの渦流と、ノズル249c,249dから供給される不活性ガスの渦流が合流してしまう。すなわち、処理ガスがノズル249c,249dから供給される不活性ガスにより希釈されてしまう。
【0021】
また、ノズル249c,249dを、処理ガスノズルの中心とウエハ中心とを結ぶ直線から搬入されるウエハ200の周方向に120°より大きい位置に配置すると、ノズル249a,249bから供給される処理ガスと、ノズル249c,249dから供給される不活性ガスと、が干渉できる範囲が小さくなってしまうため、ウエハ200上に影響を及ぼさずに、不活性ガスの渦流による影響度合いが薄れてしまう。したがって、ノズル249c,249dは、ノズル249a,249bと、ギャップGの倍以上の円弧の距離を保つ位置であって、処理ガスノズルの中心とウエハ中心とを結ぶ直線から搬入されるウエハ200の周方向に15°以上120°以下の位置に配置されるようにするのが好ましい。
【0022】
ノズル249a~249dの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250dがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、それぞれが、ウエハ200の中心方向に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたってそれぞれのウエハ200の中心へ向いて開口するように、複数設けられている。
【0023】
ガス供給孔250c,250dは、それぞれが、ノズル249a,249bに向けて不活性ガスを供給することが可能となっている。すなわち、ガス供給孔250c,250dは、反応管203の下部から上部にわたってそれぞれノズル249a,249bへ向いて開口するように、複数設けられている。
【0024】
具体的には、ガス供給孔250c,250dは、それぞれが、ウエハ中心から例えば45°ノズル249a,249b側へ向けて開口するように形成され、第1突出部302の壁にかすめる方向に向けて不活性ガスを供給することが可能となるように形成される。すなわち、ガス供給孔250c,250dは、反応管203の下部から上部にわたってそれぞれウエハ中心から例えば45°ノズル249a,249b側へ向けて開口するように形成され、第1突出部302の壁にかすめる方向に向けて不活性ガスを供給することが可能となるように、第1突出部302の壁の内側へ向けて開口するように、複数設けられる。このガス供給孔250c,250dからの不活性ガスの供給により、第2突出部303、第3突出部304付近でそれぞれ不活性ガスの渦流が形成され、この不活性ガスの渦流がギャップG領域の上流側から流れる処理ガスの流れをせき止める。すなわち、ギャップG領域の上流側を流れる処理ガスの、ギャップG領域の下流側への流入を阻止する。また、ギャップG領域の上流側を流れる処理ガスは、不活性ガスの渦流により、不活性ガスに混合することなく、ウエハ200中心方向に向けて流入される。
【0025】
ここで、ガス供給孔250c,250dの向きを、壁にかすめる方向よりもノズル249a,249b側に向けると、ノズル249c,249dから供給された不活性ガスが、第1突出部302内に衝突し、不活性ガスの渦流の径が小さくなってしまい、上述の効果が薄れる。また、ガス供給孔250c,250dの向きを、壁にかすめる方向よりもノズル249a,249bとは反対側(排気側)に向けると、不活性ガスが第1突出部302側の渦流に巻き込まれて処理ガスに混合されてしまうため上述の効果が薄れる。
【0026】
ガス供給管232aからは、原料ガス(処理ガス)として、例えば、所定元素(主元素)としてのSiおよびハロゲン元素を含むハロシラン系ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201へ供給される。
【0027】
ガス供給管232bからは、処理ガスであり、前述の原料とは化学構造(分子構造)が異なる反応体(リアクタント)として、例えば、窒化ガスである窒化水素系ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201へ供給される。窒化水素系ガスは、Nソースとして作用する。窒化水素系ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガスを用いることができる。
【0028】
ガス供給管232c~232fからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N2)ガスが、それぞれMFC241c~241f、バルブ243c~243f、ガス供給管232c,232d,232a,232b、ノズル249c,249d,249a,249bを介して処理室201へ供給される。N2ガスは、パージガス、キャリアガスとして作用し、さらに、ウエハ200上に形成される膜の面内膜厚分布を制御する膜厚分布制御ガスとして作用する。
【0029】
主に、ガス供給管232a,232b、MFC241a,241b、バルブ243a,243bにより、処理ガス供給系が構成される。また、主に、ガス供給管232c~232f、MFC241c~241f、バルブ243c~243fにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0030】
反応管203には、処理室201の雰囲気を排気する排気部としての排気口233が設けられている。図2に示される水平断面視のように、排気口233は、ウエハ200を挟んでノズル249a,249b(ガス供給孔250a,250b)と対向(対面)する位置に設けられる。排気口233には排気管231が接続される。排気管231は、処理室201の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ245が備えられ、また圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空ポンプ(真空排気装置)246に接続される。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて開度を調節することで、処理室201の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246も排気系に含まれうる。
【0031】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えば金属製で円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させる。
【0032】
シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方又は側方には、シールキャップ219を降下させボート217を完全に処理室201内から搬出している間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞する炉口蓋体としてのシャッタ221が設けられている。シャッタ221は、シールキャップ219同様に円盤状に形成され、その上面には、マニホールド209の下端と当接するOリング220cが設けられている。シャッタ221の開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構222により制御される。
【0033】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱板218が多段に支持されている。
【0034】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0035】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0036】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0037】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ243a~243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構222等に接続されている。
【0038】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構222によるシャッタ221の開閉動作等を制御するように構成されている。
【0039】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0040】
(2)成膜処理
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にシリコン窒化膜(SiN膜)を形成するシーケンス例について、図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0041】
図4に示す成膜シーケンスは、
ウエハ200対してノズル249aよりHCDSガスを供給することで第1層としてのSi含有層を形成するステップAと、
ウエハ200に対してノズル249bよりNH3ガスを供給することで第2層としてのシリコン窒化層(SiN層)を形成するステップBと、
を非同時に行うサイクルをn回(nは所定数)行うことで、ウエハ200上に、SiおよびNを含む膜、すなわち、SiN膜を形成する。
【0042】
本明細書では、図4に示す成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。
【0043】
(HCDS→NH3)×n ⇒ SiN
【0044】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「基板」は「ウエハ」の意味を含む。
【0045】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構222によりシャッタ221が移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201へ搬入(ボートロード)される。搬入の完了後、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0046】
(圧力調整および温度調整)
処理室201、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって処理室201が真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201のウエハ200が所望の成膜温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0047】
(成膜ステップ)
その後、次のステップA,Bを順次実行する。
【0048】
[ステップA]
このステップでは、処理室201のウエハ200に対してHCDSガスを供給する。
【0049】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へHCDSガスを流す。HCDSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口233より排気される。つまり、ウエハ200に対してHCDSガスが供給される。このとき、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へN2ガスを流すようにしてもよい。N2ガスは、MFC241eにより流量調整され、HCDSガスと一緒にノズル249aを介して処理室201へ供給され、排気口233より排気されうる。なお、ステップAでは、ノズル249aを介して処理室201へHCDSガスを供給した状態で、ノズル249c,249dを介してそれぞれ処理室201へN2ガスを供給する。ノズル249c,249dから供給されるN2ガスが、第2突出部303,第3突出部304付近にそれぞれ不活性ガスの渦流を形成するようにノズル249aに向けて供給される。その詳細については後述する。
【0050】
ステップAにおいて、ノズル249aから供給するHCDSガスの流量は、例えば1sccm以上2000sccm以下、好ましくは10sccm以上1000sccm以下の範囲内である。またノズル249c,249dから供給するN2ガスの流量は、例えばそれぞれ500sccmであって、ノズル249aから供給されるN2ガスを含むHCDSガスの総流量の約1/4以上2/3以下の所定の流量とする。
【0051】
ノズル249aから供給されるHCDSガスの総流量に対して、ノズル249c,249dから供給されるN2ガスの流量が、HCDSガスの総流量の1/4より少ない場合には、ノズル249c,249dから供給されるN2ガスが、HCDSガスに押し負けてしまう。すなわち、ギャプG領域を流れる原料ガスは希釈されずに下流側へ流れ、ウエハ200中心に到達する原料ガスの総量が減ってしまう。つまり、ウエハ200上に形成される膜の膜厚分布が凹状となり、面内膜厚均一性が悪化してしまう。
【0052】
また、ノズル249aから供給されるHCDSガスの総流量に対して、ノズル249c,249dから供給されるN2ガスの流量が、HCDSガスの総流量の2/3より多い場合には、ノズル249c,249dから供給されるN2ガスによりギャップG領域を流れる原料ガスの希釈効果が大きくなってしまい、ウエハ中心に到達する原料ガスの総量が増えすぎてしまう。つまり、ウエハ200上に形成される膜の膜厚分布は凸状となり、面内膜厚均一性が悪化してしまう。
【0053】
したがって、ノズル249c,249dから供給するN2ガスの流量を、ノズル249aから供給されるN2ガスを含むHCDSガスの総流量の約1/4~2/3の所定の流量とするようにする。なお、これらの流量条件は、ウエハ200の表面積、ウエハピッチ、ギャップGの幅、ノズル249c,249dの位置、ノズル249c,249dのガス供給孔250c,250dの向き、ガス種、成膜温度、処理圧力等により異なる。
【0054】
HCDSガスの供給時間は、例えば1秒以上120秒以下、好ましくは1秒以上60秒以下の範囲内の所定の時間とする。処理室201の圧力は、例えば1Pa以上2666Pa以下、好ましくは67Pa以上1333Pa以下の範囲内の所定の圧力とする。ウエハ200の温度(成膜温度)は、例えば250℃以上800℃以下、好ましくは400℃以上750℃以下、より好ましくは550℃以上700℃以下の範囲内の所定の温度とする。
【0055】
上述の条件下でウエハ200に対してHCDSガス及びN2ガスを供給することにより、ウエハ200の最表面上に、第1層として、例えば1原子層未満から数原子層(1分子層未満から数分子層)程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層であってもよいし、HCDSの吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0056】
HCDSガスが自己分解(熱分解)する条件下では、ウエハ200上にSiが堆積することでClを含むSi層が形成される。HCDSガスが自己分解(熱分解)しない条件下では、ウエハ200上にHCDSが吸着することでHCDSの吸着層が形成される。HCDSの吸着層を形成するよりも、Clを含むSi層を形成する方が、成膜レートの観点では好ましい。以下、Clを含むSi含有層を、便宜上、単にSi含有層とも称する。
【0057】
ステップAでは、ノズル249aよりHCDSガスを供給した状態で、バルブ243c~243fを開き、ガス供給管232c,232d,232b内へN2ガスを流し、ノズル249c,249d,249bより処理室201内へN2ガスを供給する。ノズル249bから少量のN2ガスの供給を維持することは、必須ではないが、ノズル249b内へのHCDSガスの侵入を抑制する観点で好ましい。その目的において、ノズル249bからのN2ガスの供給は、ステップAと同時、或いは、その前に開始するのが好ましい。
【0058】
ステップAにおいて、ノズル249a,249bより供給するN2ガスの各流量(第1流量)は、それぞれ、ノズル249c,249dより供給するN2の流量よりも小さな流量とする。さらに、ノズル249c,249dより供給するN2ガスの各流量は、それらの合計流量が、ノズル249aより供給するHCDSガスとN2ガスの総流量よりも小さな流量となるような流量とする。
【0059】
所望の厚さおよび面内厚さ分布を有する第1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HCDSガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1層の形成に寄与した後のHCDSガスを処理室201内から排除する。ノズル249a~249dから供給されるN2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージステップ)。
【0060】
[ステップB]
ステップAが終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層に対してNH3ガスを供給する。
【0061】
このステップでは、バルブ243b,243c~243fの開閉制御を、ステップAにおけるバルブ243a,243c~243fの開閉制御と同様の手順で行う。NH3ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口233から排気される。このとき、ウエハ200に対してNH3ガスが供給される。
【0062】
ステップBにおいて、ノズル249bから供給するNH3ガスの供給流量は、例えば1000~10000sccmの範囲内の所定の流量とする。この時同時にノズル249c,249dから供給するN2ガスの流量は、ノズル249bから供給されるN2ガスを含むNH3ガスの総流量の約1/4以上2/3以下の所定の流量とする。このように設定することにより、上述したステップAにおいて説明した効果と同様の効果が得られる。
【0063】
NH3ガスの供給時間は、例えば1秒以上120秒以下、好ましくは1秒以上60秒以下の範囲内の所定の時間とする。処理室201の圧力は、例えば1Pa以上4000Pa以下、好ましくは1Pa以上3000Pa以下の範囲内の所定の圧力とする。ステップAよりも高い圧力とすることで、プラズマではなく熱的に活性化されたNH3ガスを用いたとしても、所定の速度で第1層と化学反応させ、第2層を形成させることができる。他の処理条件は、ステップAと同様な処理条件とする。なおステップBでは、ステップAに比べ、ノズル249c,249dからのN2ガス供給の重要性は低く、必要ではない場合もある。
【0064】
上述の条件下でウエハ200に対してNH3ガス及びN2ガスを供給すると、ウエハ200上に形成された第1層の少なくとも一部が窒化(改質)される。これにより、ウエハ200上に、SiおよびNを含む第2層、すなわち、SiN層が形成される。第2層を形成する際、第1層に含まれていたCl等の不純物は、NH3ガスによる第1層の改質反応の過程において、少なくともClを含むガス状物質を構成し、処理室201から排出される。すなわち、第1層中のCl等の不純物は、第1の層中から引き抜かれたり、脱離したりすることで、第1層から分離する。これにより、第2層は、第1層に比べてCl等の不純物が少ない層となる。
【0065】
第2層が形成された後、バルブ243bを閉じ、NH3ガスの供給を停止する。そして、ステップAのパージステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留する未反応もしくは第2層の形成に寄与した後のNH3ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0066】
[所定回数実施]
ステップA,Bを非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを1回以上(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成および所定膜厚のSiN膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、上述のサイクルを1回行う際に形成される第2層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、第2層を積層することで形成されるSiN膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すのが好ましい。
【0067】
(アフターパージ~大気圧復帰)
ウエハ200上に所望組成、所望膜厚の膜が形成されたら、ノズル249a~249dのそれぞれからパージガスとしてのN2ガスを処理室201へ供給し、排気口233から排気する。これにより、処理室201がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0068】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ221が移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ221によりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0069】
(3)シミュレーション
上述した図1に示す基板処理装置の処理炉202を用い、図4に示す成膜シーケンスにおける処理を行って、ベアウエハの70倍の表面積のパターンウエハ上にSiN膜を形成した。図5(A)は、図4に示す成膜シーケンスにおけるステップA時の処理炉202内の原料ラジカルの濃度分布を示す図であり、図5(B)は、図5(A)における第2突出部303付近のガスの流れを示す図である。
【0070】
図5(A)に示すように、ノズル249c,249dのガス供給孔250c,250dは、それぞれウエハ中心方向でなく、処理ガスノズル側の、N2ガスを第1突出部302の壁部にかすめる方向に向いている。なお、ノズル249dは、ノズル249cと同様の構成であり同様の効果を奏するため、以下において、ノズル249cを用いて説明する。
【0071】
本シミュレーションにおいて、ノズル249aから供給する原料ガスであるHCDSガスの流量は200sccm、ノズル249aから供給するN2ガスの流量は12000sccmとした。このとき同時にノズル249c,249dからそれぞれ供給するN2ガスの流量は6250sccmとした。このときの処理室201内の圧力は140Pa、成膜温度は700℃とし、その他の処理条件は、上述したステップAと同様の条件とした。
【0072】
ここで、大表面積のウエハ上に膜を形成する場合には、ノズル249aから供給される原料ガスの大半が、狭いウエハ200間(ウエハピッチ間)でなく、ウエハ200の周縁部と反応管203の内壁との間のギャップG領域に流れてしまう。これにより、ウエハ周縁部において原料ガスが拡散され、ウエハ上に流れる原料ガスの総量が減り、ウエハ中心部に到達する原料ガスが枯渇してしまう。また、ギャップG領域を流れる原料ガスによりウエハの周縁部が増膜され、結果として、ウエハ上に膜が凹状に形成されてしまう。
【0073】
本実施形態のように、ノズル249cから供給されたN2ガスが、ノズル249aに向けて、第1突出部302の壁をかすめる方向に供給されると、図5(B)に示すように、第2突出部303付近のウエハ200の周縁部の一部と重なる位置に不活性ガス(N2ガス)の渦流が形成される。この不活性ガスの渦流により、ギャップG領域を流れる原料ガスは、第2突出部303付近でせき止められ、原料ガスをノズル249cよりも下流側のギャップG領域へ流出させないようにすることができる。このようにして、ウエハ200の周縁部の一部において原料ガスの濃度が低減され、希釈される。結果として、ウエハ200の周縁部の増膜が抑制される。
【0074】
また、この不活性ガスの渦流により、第2突出部303付近でせき止められた原料ガスは、N2ガスと混合されずに、ウエハ200中心方向に向けて誘導される。この不活性ガスの渦流と原料ガスは混合することなく反発し、原料ガスの流れる方向は、不活性ガスの渦流の流れる方向に変化する。つまり、ウエハ200中心部に原料ガスが供給されてウエハ200中心部が増膜される。
【0075】
また、ノズル249cから供給されたN2ガスは、この不活性ガスの渦流により、それぞれ排気口233に向けて下流側のギャップG領域を流れて排出される。つまり、第2突出部303の下流側のギャップG領域はN2ガスにより希釈され、ウエハ200の周縁部の増膜が抑制される。
【0076】
すなわち、ノズル249c,249dによる不活性ガスの供給により不活性ガスの渦流を形成することによって、ウエハ200上の原料ガスの希釈効果範囲を調整することができる。
【0077】
また、不活性ガスの渦流の大きさは、ノズル249c,249dの位置や、ノズル249c,249dのガス供給孔250c,250dの向き、反応管203の壁面形状、或いは原料ガスの総流量に対するノズル249c,249dから供給される不活性ガスの流量を調整することにより、制御可能である。したがって、ウエハの周縁部から任意の距離までの希釈により膜厚を制御することが可能である。
【0078】
よって、面内膜厚分布を制御することが可能となり、処理表面積の大きなパターンウエハにおいても膜厚面内均一性を向上させることが可能となる。
【0079】
以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0080】
図6における本実施例は、図1及び図2に示す基板処理装置を用い、図4に示す成膜シーケンスによりSiN膜を形成したウエハの面内膜厚均一性を評価したものである。図6における比較例1は、処理室にカウンターノズルのない基板処理装置を用いてSiN膜を形成したウエハの面内膜厚均一性を評価したものである。図6における比較例2は、処理室に2本のカウンターノズルを有する基板処理装置を用いてSiN膜を形成したウエハの面内膜厚均一性を評価したものである。比較例2では、2本のカウンターノズルが、それぞれ処理ガスノズルからウエハ200の周方向に90°離れた位置に配置され、それぞれのカウンターノズルのガス供給孔がウエハ200の中心を向いている。
【0081】
本実施例により形成されたウエハの面内膜厚均一性は±0.18%、比較例1により形成されたウエハの面内膜厚均一性は±10.6%、比較例2により形成されたウエハの面内膜厚均一性は±4.45%であった。
【0082】
カウンターノズルのない比較例1では、カウンターノズルを用いた比較例2、本実施例と比較して、ウエハの周縁部(両端部)における膜厚がウエハの中心部における膜厚と比較して厚く形成されてしまい、面内膜厚均一性が悪いことが確認された。また、本実施例に係るカウンターノズルを用いた場合には、比較例2に係るカウンターノズルを用いた場合と比較して、ウエハ200の周縁部(両端部)における増膜が抑制され、面内膜厚均一性が改善されていることが確認された。
【0083】
比較例2では、サイドカウンターにより供給されるN2ガスが原料ガスと混合されてしまい、ウエハ周縁部における原料ガスの希釈効果が薄れてしまう。また、原料ガスが希釈されてしまうことにより、ウエハ中心部へ到達する原料ガスの総量が減ってしまう。さらに、下流側のギャップG領域へ原料ガスが流出し、その流出した原料ガスの拡散によりウエハ周縁部が増膜されてしまう。結果として、面内膜厚分布が凹状となってしまう。
【0084】
これに対して、本実施例では、サイドカウンターにより供給されるN2ガスにより形成された不活性ガスの渦流が、原料ガスと混合されずに、ギャップG領域を流れる原料ガスの流れを変更する。これにより、ギャップG領域を流れる原料ガスの濃度が低減され、ウエハ周縁部の増膜が抑制される。また、この不活性ガスの渦流により、ギャップG領域を流れる原料ガスが、ウエハ中心方向へ向けて誘導され、ウエハ中心部へ到達する原料ガスの流量が増加される。さらに、不活性ガスの渦流により、下流側のギャップG領域が希釈され、ウエハ200の周縁部の増膜が抑制される。
【0085】
したがって、カウンターノズルのガス供給孔の向きを、ウエハ中心側よりも処理ガスノズル側に向けることで、面内膜厚均一性が改善されることが確認された。
【実施例2】
【0086】
次に、膜厚のカウンターノズルにおける不活性ガスの流量依存性を比較した。図7(A)は、上述した比較例2のカウンターノズルによる不活性ガスの流量と面内膜厚分布の関係を示した図である。図7(B)は、上述した本実施例のカウンターノズルによる不活性ガスの流量と面内膜厚分布の関係を示した図である。
【0087】
図7(A)に示すように、比較例2では、カウンターノズルから供給されるN2ガスの流量が少ないと、ウエハ周縁部の膜厚が増膜されてしまう。これは、カウンターノズルから供給されるN2ガスが、ギャップGを流れる原料ガスを充分に希釈させることができず、ウエハ中心部へ原料ガスを到達させることができないためであると考えられる。また、カウンターノズルから供給されるN2ガスの流量を多くすると、ウエハ周縁部の膜厚を減膜させることができるが、周縁部直近にて局所的な増膜が起こることが確認された。これは、カウンターノズルから供給されるN2ガスによってウエハ周縁部が希釈されるが、ギャップGを流れる原料ガスとの濃度差によって、周縁部直近にて濃度拡散が起こるためと考えられる。このように周縁部直近における局所的な増膜に対して、比較例2は有効ではない。ここで、ウエハ周縁部とは、ウエハ中心からの距離が、80mm以上120mm以下であり、ウエハ周縁部直近とは、ウエハ中心からの距離が、120mm以上150mm以下としている。N2ガスの流量をさらに多くすると、ウエハ中心部において膜が増膜されてしまうことが確認された。これは、カウンターノズルから供給されるN2ガスの流量が多いと、N2ガスがウエハ中心部へ向けて供給されるために、ウエハの周縁部での原料ガスが希釈されるが、カウンターノズルから供給されたN2ガスによりギャップGの原料ガスがウエハ中心部へ多く流れたためであると考えられる。
【0088】
図7(B)に示すように、本実施例では、カウンターノズルから供給されるN2ガスの流量を多くすると、ウエハ周縁部直近の局所的な増膜を抑えつつ、ウエハ中心部において増膜されることが確認された。これにより、ウエハエッジの局所的増膜を起こさず、面内の凹凸を制御でき、ウエハの面内膜厚分布がW型の分布にならない。つまり、カウンターノズルから供給される不活性ガスの流量を調整することにより、面内膜厚分布が制御され、面内膜厚均一性を向上させることができることが確認された。
【0089】
(4)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0090】
(a)ウエハに対して処理ガスノズルから処理ガスを供給する際に、処理ガスノズルからウエハの周方向において所定距離離れて設置されているカウンターノズルから不活性ガスを処理ガスノズルに向けて供給することにより、不活性ガスの渦流を形成することで、ウエハ上に形成される膜の面内膜厚均一性を向上させることができる。
【0091】
(b)この不活性ガスの渦流により、ウエハの周縁部と反応管の内壁との間のギャップG領域を流れる処理ガスが、不活性ガスと混合することなく反発し、不活性ガスの渦流の流れる方向に変化して、ウエハの中心方向に向けて流れる。よって、ウエハの中心部に供給する原料ガスを増加させ、ウエハ中心部を増膜させることができる。
【0092】
(c)また、第2突出部303、第3突出部304付近に不活性ガスの渦流を形成することにより、ウエハの周縁部と反応管の内壁との間のギャップG領域への処理ガスの流入を抑制し、第2突出部303、第3突出部304の下流側のギャップG領域へ流れる処理ガスを低減させ、ウエハの周縁部での増膜を抑制することができる。
【0093】
(d)また、ウエハの周縁部の一部と重なるように不活性ガスの渦流を形成することにより、ウエハの周縁部の一部において原料ガスの濃度が低減され、希釈される。これにより、ウエハの周縁部での増膜を抑制することができる。
【0094】
(e)また、カウンターノズルにより供給された不活性ガスが、第2突出部303、第3突出部304付近の不活性ガスの渦流により、排気口に向けて下流側のギャップG領域を流れて排出されることで、第2突出部302、第3突出部304の下流側のギャップG領域が希釈され、ウエハ200の周縁部の増膜が抑制される。これにより、処理室201の下流側のギャップG領域に設けられる温度センサ263に不活性ガスが供給される一方、処理ガスが著しく低減されるので、処理ガスによる付着物が抑制される。よって、温度センサ263の付着物による汚染が保護されるので、温度センサ263のメンテナンス周期が改善される。
【0095】
(f)カウンターノズルにより供給された不活性ガスの流量を制御して、不活性ガスの渦流を形成することにより、ウエハ200上の処理ガスの希釈効果範囲を調整することができる。
【0096】
(g)また、2本のカウンターノズルを、処理ガスノズルの中心と排気口の中心とを結ぶ直線に対して線対称に配置することにより、ウエハ上に形成される膜の面内膜厚均一性を向上させることができる。
【0097】
(h)カウンターノズルの設置位置や、カウンターノズルに形成するガス供給孔の向き、処理ガスの総流量に対するカウンターガスノズルにより供給される不活性ガスの流量等を調整することにより、ウエハ上に形成される面内膜厚分布を制御することができ、面内膜厚均一性を向上させることができる。
【0098】
以上、本開示の一実施形態を具体的に説明した。但し、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0099】
上術の実施形態では、カウンターノズルとしてノズル249cとノズル249dの2本を用いる例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、カウンターノズルはいずれか1本であっても、2本以上であってもよい。なお、カウンターノズルが1本の場合には、カウンターノズルがない側におけるウエハの周端部が増膜されてしまうため、2本以上が好ましい。
【0100】
また、上述の実施形態では、基板処理工程としてウエハ200上にSiN膜を形成する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、SiN膜の他、Siを含むシリコン化合物を含む膜や、タングステン(W)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)等の金属化合物等を含む膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0101】
また、上述の実施形態は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、酸化膜、窒化膜を形成する処理、及び金属を含む膜を形成する処理を含む成膜処理において、好適に適用できる。
【0102】
また、基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0103】
また、上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0104】
また、上述の基板処理装置のような半導体ウエハを処理する半導体製造装置などに限らず、ガラス基板を処理するLCD(Liquid Crystal Display)製造装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
233 排気口
249a ノズル(処理ガスノズル)
249b ノズル(処理ガスノズル)
249c ノズル(不活性ガスノズル)
249d ノズル(不活性ガスノズル)
302 第1突出部
303 第2突出部
304 第3突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7