(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-04
(45)【発行日】2023-04-12
(54)【発明の名称】PCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230405BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20230405BHJP
【FI】
H05K3/46 G
H05K3/46 Q
H05K3/18 E
(21)【出願番号】P 2022510819
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 CN2021105724
(87)【国際公開番号】W WO2022033256
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】202010815413.0
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522061936
【氏名又は名称】博敏▲電▼子股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼▲発▼夫
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼世金
(72)【発明者】
【氏名】梁▲鴻▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】郭茂桂
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼志▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】叶新▲錦▼
(72)【発明者】
【氏名】徐▲緩▼
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103929884(CN,A)
【文献】特開平7-94628(JP,A)
【文献】特開平8-130373(JP,A)
【文献】特開平4-188697(JP,A)
【文献】特開2009-158815(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109413893(CN,A)
【文献】特開昭60-200968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
まず第1コアボード及び第2コアボードに対してそれぞれ内層パターニングを行う、PCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法において、
さらに、第1コアボードに選択的金メッキ処理を行い、第2コアボードに盲溝の事前深度制御電気フライス切削処理を行うステップと、
前記第1コアボード及び第2コアボードにそれぞれ褐色化処理を行うステップと、
pp複合層に貫通溝の電気フライス切削処理を行うステップと、を行い、
前記第1コアボードに選択的金メッキ処理を行うステップは、第1コアボードに、選択的ウェットフィルムのシルクスクリーン印刷、事前乾燥、選択的露光、現像をこの順で施して金メッキされていないPADを取得し、前記PAD以外の部位を選択的インクで被覆し、前記PADに対して無電解ニッケル置換金メッキ、脱膜乾燥をこの順で行い、金メッキPADを有する第1コアボードを取得するものであり、
第1コアボードの金メッキPAD、pp複合層の貫通溝及び第2コアボードの盲溝の位置を対応させ、前記第1コアボード、pp複合層及び第2コアボードをこの順に積層圧着してPCBインナーボードを取得し、
前記PCBインナーボードに対して後処理を行い、
第2コアボードに対して深度制御除覆電気フライス切削処理を行って、第1コアボードの金メッキPADを露出させることを特徴とする、PCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法。
【請求項2】
前記第2コアボードに盲溝の事前深度制御電気フライス切削処理を行うステップは、
第2コアボードに対してターゲッティングを行い、かつ膨張収縮データを測定し、第2コアボードの膨張収縮データに基づいて第2コアボードの第1コアボードに対向する側に盲溝電気フライス切削材料を予備配置し、前記盲溝電気フライス切削材料に基づいて盲溝の鏡像深度制御電気フライス切削を行うものであることを特徴とする、請求項1に記載のPCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法。
【請求項3】
前記pp複合層で貫通溝の電気フライス切削処理を行うステップは、
複数枚のppにFR4光プレート分離処理、位置決め積層を行い、第2コアボードの膨張収縮データに基づいてpp複合層に対して貫通溝電気フライス切削材料を予備配置し、かつppのオーバーフロー量に基づいて貫通溝のサイズを予め拡大し、電気フライス切削パラメータを下げて電気フライス切削過程の温度をppの樹脂硬化温度より低くなるよう制御し、貫通溝電気フライス切削材料に基づいて電気フライス切削を行うものであることを特徴とする、請求項2に記載のPCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法。
【請求項4】
前記第1コアボード、pp複合層及び第2コアボードをこの順に積層圧着してPCBインナーボードを得る前に、まず前記第1コアボードの膨張収縮データを測定し、かつ第1コアボードと第2コアボードの膨張収縮データが整合していることを確認することを特徴とする、請求項3に記載のPCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法。
【請求項5】
第2コアボードに対して深度制御除覆電気フライス切削処理を行うステップは、
後処理を経たPCBインナーボードの膨張収縮データを測定し、PCBインナーボードの膨張収縮データに基づいて、第2コアボードの第1コアボードから遠い方の側の、金メッキPADに対応する位置に除覆電気フライス切削材料を配置し、前記除覆電気フライス切削材料に基づいて電気フライス切削を行うことを特徴とする、請求項1に記載のPCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPCB加工工程に関し、特にPCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB段差溝の底部に対する無電解ニッケル置換金メッキについては、業界内でもメーカーによって加工技術が異なっており、大きな分類の一つとしては機械深度制御フライス板があり、深度制御フライス板方式でステップボードを作成する場合は、主に段差溝の深度制御要求及び作成能力に依存している。もう一つの大きな分類としては、ガスケットクランプの充填/埋込があり、ガスケットクランプの充填/埋込方式でステップボードを作成する場合は、主に樹脂流し込み量の制御方法、段差溝付近のパターン及び孔の信頼性に依存している。上記の2種類の加工方式は、段差溝の形状を実現することはできるが、PCB段差溝底部のPADに無電解ニッケル置換金メッキを行うという需要を満たしているわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、PCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法を提供することにより、上記の従来技術に存在する問題(課題)を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記PCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法は、まず第1コアボード及び第2コアボードに対してそれぞれ内層パターニングを行い、さらに、第1コアボードに選択的金メッキ処理を行い、第2コアボードに盲溝の事前深度制御電気フライス切削処理を行うステップと、前記第1コアボード及び第2コアボードにそれぞれ褐色化処理を行うステップと、pp複合層に貫通溝の電気フライス切削処理を行うステップと、第1コアボードの金メッキPAD、pp複合層の貫通溝及び第2コアボードの盲溝の位置を対応させるステップと、前記第1コアボード、pp複合層及び第2コアボードをこの順に積層圧着してPCBインナーボードを得るステップと、前記PCBインナーボードに対して後処理を行うステップと、第2コアボードに対して深度制御除覆電気フライス切削処理を行って、第1コアボードの金メッキPADを露出させるステップと、を行う。
【0006】
前記第1コアボードに選択的金メッキ処理を行うステップとは、第1コアボードに、選択的ウェットフィルムのシルクスクリーン印刷、事前乾燥、選択的露光、現像をこの順で施して金メッキされていないPADを取得し、前記PAD以外の部位を選択的インクで被覆し、前記PADに無電解ニッケル置換金メッキ、脱膜乾燥をこの順で行い、金メッキPADを有する第1コアボードを得るというものである。
【0007】
前記第2コアボードに盲溝の事前深度制御電気フライス切削処理を行うステップとは、第2コアボードに対してターゲッティングを行い、かつ膨張収縮データを測定し、第2コアボードの膨張収縮データに基づいて第2コアボードの第1コアボードに対向する側に盲溝電気フライス切削材料を予備配置し、前記盲溝電気フライス切削材料に基づいて盲溝の鏡像深度制御電気フライス切削を行うというものである。
【0008】
前記pp複合層に貫通溝の電気フライス切削処理を行うステップとは、複数枚のppにFR4光プレート分離処理、位置決め積層を行い、第2コアボードの膨張収縮データに基づいてpp複合層に対して貫通溝電気フライス切削材料を予備配置し、かつppのオーバーフロー量に基づいて貫通溝のサイズを予め拡大し、電気フライス切削パラメータを下げて電気フライス切削過程の温度をppの樹脂硬化温度より低くなるよう制御し、貫通溝電気フライス切削材料に基づいて電気フライス切削を行うというものである。
【0009】
前記第1コアボード、pp複合層及び第2コアボードをこの順に積層圧着してPCBインナーボードを得る前に、まず前記第1コアボードの膨張収縮データを測定し、かつ第1コアボードと第2コアボードの膨張収縮データが整合していることを確認する。
【0010】
第2コアボードに対して深度制御除覆電気フライス切削処理を行うステップとは、後処理を経たPCBインナーボードの膨張収縮データを測定し、PCBインナーボードの膨張収縮データに基づいて、第2コアボードの第1コアボードから遠い方の側の、金メッキPADに対応する位置に除覆電気フライス切削材料を配置し、前記除覆電気フライス切削材料に基づいて電気フライス切削を行うというものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の前記PCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法の長所は、段差溝の深度を精確に制御するだけでなく、段差溝の底部に樹脂が残存する問題も回避しており、それと同時に、PCB段差溝底部のPADに無電解ニッケル置換金メッキを行うというニーズも満たしているという点にある。本発明の詳細なステップに基づく加工では、設備に対して特に高い基準の要求はなく、一般的な工場の既存の条件に合っているので、他の設備を増設することなく大量生産を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の加工方法によって生産されるPCBインナーボードの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の前記PCB段差溝底部に無電解ニッケル置換金メッキを行う加工方法では、多層ボードを圧着する前に、段差溝底部に対応する第1コアボードにまず選択的無電解ニッケル置換金メッキを行い、段差溝本体に対応する第2コアボードには盲溝の鏡像事前深度制御電気フライス切削を行い、同時に低流動樹脂のPPを準備し、かつ先に貫通溝を位置決めして電気フライス切削を行い、PP複合層を得る。その後、ボードの積層を行い、第1コアボードと第2コアボードの間にPP複合層を配置し、圧着した後、通常のプロセスにより生産を行う。表面処理の完了後、深度制御除覆電気フライス切削、外形の電気フライス切削を行い、最終製品に段差溝を形成し、PCB段差溝底部のPADの無電解ニッケル置換金メッキを実現する。そのうち、第1コアボード及び第2コアボードはいずれもPCBボードの内層コアボードである。
【0014】
具体的なプロセス及び製品構造は、
図1および
図2の通りである。
【0015】
まず、内層パターニングを作成する。内層パターニングでは、後続の加工位置決めに使用するために、3組のX-RAYターゲットを設定する。設定に基づいて、内層がエッチングされた第1コアボード10及び第2コアボード30を作成する。
【0016】
第1コアボードに選択的金メッキ処理を行う。選択的ウェットフィルムを内層がエッチングされた第1コアボード表面にシルクスクリーン印刷し、予備乾燥を経て選択的露光を行うと、現像後、金メッキが必要なPADが露出する。ボード面の他の位置を選択的インクで被覆し、無電解ニッケル置換金メッキを行い、さらに脱膜乾燥を行い、金メッキPAD11が設けられた第1コアボードを得る。
【0017】
第2コアボードに盲溝の事前深度制御電気フライス切削処理を行う。第2コアボードの内層エッチング後、ターゲッティングを行い、かつ膨張収縮データを測定する。第2コアボードの膨張収縮データに基づいて、第2コアボードの第1コアボードに対向する側に盲溝電気フライス切削材料32を配置し、電気フライス盤の平坦性とZ軸の進度を確認してOKであれば、第2コアボードに盲溝の鏡像深度制御電気フライス切削を行って、盲溝が設けられた第2コアボードを得る。
【0018】
pp複合層に貫通溝の電気フライス切削処理を行う。切断後の複数のPPを利用してFR4光プレート分離処理を行った後、ボードの縁に位置決め孔を開ける。第2コアボードの膨張収縮データに基づいて、貫通溝電気フライス切削材料21を予備配置する。電気フライス切削する貫通溝の寸法は、圧着時に樹脂がPADに溢れないよう、PPのオーバーフロー量に基づいて予め拡大しておかなければならない。電気フライス切削パラメータを下げることにより、電気フライス切削時に高温が発生してPP溝辺縁の樹脂が硬化することを防止する。電気フライス盤上では比較的厚いFR4光プレートを用いて底板とし、カバーボードの電気フライス切削にもFR4光プレートを使用する。この過程では、電気フライス切削時に生じた紙屑やアルミ屑がPP上に付着することを防止するために、ボール紙やアルミシートといった補助材料を使用することはできない。以上の貫通溝の電気フライス切削が完了すると、PP複合層20の未積層ボードを得ることができる。
【0019】
その後、第1コアボード及び第2コアボードをそれぞれ褐色化し、ボードの積層に備える。
【0020】
第1コアボードの膨張収縮データを測定し、第2コアボードの膨張収縮データと整合することを確認した上で、第1コアボード、第2コアボードを組み合わせる。さらに、第1コアボード、pp複合層、第2コアボードをホットメルト及びリベットの方式で積層する。ボードの積層前に、第1コアボードの金メッキPAD、pp複合層の貫通溝及び第2コアボードの盲溝の位置を対応させる。
【0021】
積層したボードを圧着し、圧着後、ターゲッティングを行い、縁をフライス切削してPCBインナーボードを得る。
【0022】
最後に、PCBインナーボードに対して、貫通孔40の開設、銅メッキ、電気メッキ、外層配線、外層エッチング、抵抗溶接、キャラクタリゼーション、表面処理などの通常の後処理操作を行う。
【0023】
PCBインナーボードは、表面処理の後、まずターゲッティングを行い、かつ膨張収縮データを測定する。PCBインナーボードの膨張収縮データに基づいて、第2コアボードの第1コアボードに対向する側で、かつ金メッキPADに対応する位置に、除覆電気フライス切削材料31を配置する。深度制御除覆電気フライス切削の前には、過度の深度制御により段差底部のPADを損傷しないよう、電気フライス盤の平坦性及びZ軸の精度を確認してから、深度制御除覆電気フライス切削及び外形の電気フライス切削を行わなければならない。最終的に、段差PCBインナーボードの完成品を得て、段差溝底部PADの無電解ニッケル置換金メッキ工程が実現される。
【0024】
本発明の方法は、PCB基板の段差溝底部のPAD上に無電解ニッケル置換金メッキを施すというものであり、その完成品は、冷熱衝撃テスト、高温テスト、低温テスト、高温高湿テスト、機械振動テストなど様々な信頼性テストにおいて異常が見られない。本発明は、段差溝の深度を精確に制御するばかりでなく、段差溝の底部に樹脂が残留する問題を回避しており、それと同時に、PCB段差溝底部のPADに無電解ニッケル置換金メッキを行うという需要も満足させている。本発明の詳細なステップに基づく加工では、設備に対して特に高い基準の要求はなく、一般的な工場の既存の条件に合っているので、他の設備を増設することなく大量生産を実現することができる。
【0025】
当業者であれば、上記の技術手法及び構想に基づいて、他の各種の相応の変更や変形を行うことができるが、これらの変更及び変形は、すべて本発明の特許請求の範囲の保護範囲内に属するものとする。
【符号の説明】
【0026】
10 第1コアボード
11 金メッキPAD
20 pp複合層
21 貫通溝電気フライス切削材料
30 第2コアボード
31 除覆電気フライス切削材料
32 盲溝電気フライス切削材料
40 貫通孔