(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】医療チューブ用クランプ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/28 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A61M39/28 110
(21)【出願番号】P 2019016919
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 辰也
(72)【発明者】
【氏名】中川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英美
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0016317(US,A1)
【文献】特開2014-200557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療チューブに対して外挿状態で装着される医療チューブ用クランプであって、
前記医療チューブ
の端部を他の液流路へ接続するための部材であって該端部から外れて該医療チューブ上を移動可能とされたカプラを着脱可能に保持するカプラ保持部が設けられている医療チューブ用クランプ。
【請求項2】
前記医療チューブが挿通される挿通孔の開口部分に前記カプラ保持部が設けられている請求項1に記載の医療チューブ用クランプ。
【請求項3】
前記カプラ保持部が前記医療チューブの挿通方向に突出する嵌合突起とされており、該嵌合突起が前記カプラの内周面又は外周面に嵌め合わされるようにした請求項2に記載の医療チューブ用クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野で用いられる医療チューブに装着される医療チューブ用クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野では、血液等の体液の体外循環回路や補助回路又は薬液等の輸液ラインなどの液流路を構成する管体として医療チューブが用いられている。
【0003】
また、医療チューブでは、端部の接続部分にカプラを用いたネジ式のロック機構を採用する場合がある。かかるネジ式のロック機構を構成するカプラの一種として、例えば、特開平7-148271号公報(特許文献1)にロックナットが示されている。このようなロック機構を構成するカプラを用いれば、医療チューブを輸液バッグやニードルレスコネクタなどに対して高い信頼性をもって接続することができる。
【0004】
ところで、特許文献1に示されたロックナットは、医療チューブの端部の雄ルアー部分から外れて医療チューブの長さ方向で移動可能とされ得る。即ち、特許文献1では、ロックナットの溝状部と雄ルアー部分のリブとを適合させることにより、ロックナットの雄ルアー部分への位置決めを解除して、ロックナットを雄ルアー部分の基端側へスライドさせることが可能とされている。このように、ロックナットを雄ルアー部分から取り外してチューブ側へ移動させることにより、ロックナットを用いずに、雄ルアー部分を雌ルアーに差し入れるだけで簡易に嵌合接続させるスリップ型の接続を実現することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献1に記載のロックナットのように、カプラが医療チューブの長さ方向で自由に移動すると、カプラが他の作業の邪魔になるおそれがあるという、新規な課題が明らかになった。
【0007】
本発明の解決課題は、医療チューブ上におけるカプラの自由な移動を抑えることができる新規な機構を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第1の態様は、医療チューブに対して外挿状態で装着される医療チューブ用クランプであって、前記医療チューブの端部を他の液流路へ接続するための部材であって該端部から外れて該医療チューブ上を移動可能とされたカプラを着脱可能に保持するカプラ保持部が設けられているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた医療チューブ用クランプによれば、カプラが医療チューブ用クランプのカプラ保持部によって保持されることで、カプラが医療チューブに対する動きを制限される。それ故、カプラを医療チューブ用クランプによって保持させることで、使用しないカプラが不必要に動いて邪魔になるのを防ぐことができる。
【0011】
また、医療チューブ用クランプによって保持されたカプラを医療チューブ用クランプから離脱させることで、適宜にカプラを使用することができる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に記載された医療チューブ用クランプにおいて、前記医療チューブが挿通される挿通孔の開口部分に前記カプラ保持部が設けられているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた医療チューブ用クランプによれば、カプラ保持部が医療チューブが挿通される挿通孔の開口部分に設けられることから、カプラを医療チューブに沿って移動させることで、カプラをカプラ保持部へ導くことができる。
【0014】
第3の態様は、前記第2の態様に記載された医療チューブ用クランプにおいて、前記カプラ保持部が前記医療チューブの挿通方向に突出する嵌合突起とされており、該嵌合突起が前記カプラの内周面又は外周面に嵌め合わされるようにしたものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた医療チューブ用クランプによれば、嵌合突起が医療チューブの挿通方向に突出していることから、カプラを医療チューブの長さ方向に移動させることで、嵌合突起をカプラの内周面又は外周面に簡単に嵌め合わせてカプラを保持させることができる。
【0016】
しかも、医療チューブ上でのカプラの移動方向への入力により、カプラ保持部に対してカプラを着脱することができることから、カプラの着脱作業を容易にすることが可能になる。
【0017】
第4の態様は、前記第3の態様に記載された医療チューブ用クランプにおいて、前記カプラには嵌合筒部が設けられており、前記嵌合突起が該嵌合筒部の内周へ差し入れられて該嵌合筒部の内周面に嵌め合わされるようにしたものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた医療チューブ用クランプによれば、例えば、嵌合突起が挿通孔の開口周縁部において周方向で部分的に設けられている場合にも、嵌合突起と嵌合筒部の嵌め合わせによってカプラが安定して保持される。
【0019】
第5の態様は、前記第3又は第4の態様に記載された医療チューブ用クランプにおいて、前記嵌合突起には、該嵌合突起が嵌め合わされる前記カプラの内周面又は外周面に対して係合される抜止係合部が設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた医療チューブ用クランプによれば、抜けによる嵌合突起とカプラの嵌合の解除が、抜止係合部のカプラへの係合によって生じ難くなって、カプラを嵌合突起の嵌め合わせによって安定して保持することができる。
【0021】
第6の態様は、前記第1~第5の何れか1つの態様に記載された医療チューブ用クランプにおいて、第1板状部と第2板状部が湾曲部で相互に連結されており、それら第1板状部と第2板状部が該湾曲部の弾性変形によって前記医療チューブを挟み込んで遮断する接近位置へ相対変位可能とされていると共に、それら第1板状部と第2板状部を該接近位置で係止して該医療用チューブを遮断状態に保持する係止機構が設けられている一方、それら第1板状部と第2板状部の対向間に設けられた挿通領域に該医療チューブが挿通されるものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた医療チューブ用クランプでは、第1板状部と第2板状部が湾曲部で連結され、更にそれら第1板状部と第2板状部の間に医療チューブが挿通される特定構造を採用した。それ故、クランプの開閉操作部分である第1板状部と第2板状部を把持して、カプラのクランプに対する着脱作業を行うことが可能であり、作業性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、医療チューブ上におけるカプラの自由な移動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態としての医療チューブ用クランプを示す正面図。
【
図2】
図1に示す医療チューブ用クランプのA矢視図。
【
図3】
図1に示す医療チューブ用クランプの断面図であって、
図2のIII-III断面に相当する図。
【
図4】
図1に示す医療チューブ用クランプを医療チューブへの装着状態で示す正面図。
【
図5】
図1に示す医療チューブ用クランプを医療チューブへの装着状態で示す平面図。
【
図7】
図1に示す医療チューブ用クランプによってカプラが保持された状態を示す断面図。
【
図8】本発明の別の一実施形態としての医療チューブ用クランプを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1~3には、本発明の一実施形態としての医療チューブ用クランプ10(以下、クランプ10)が示されている。クランプ10は、所謂ロバートクランプであって、軟質の合成樹脂で形成されており、第1板状部12と第2板状部14が湾曲部16によって相互に連結された構造を有している。以下の説明において、X方向とは後述する医療チューブ48のクランプ10への挿通方向(チューブ長さ方向)である
図1中の左右方向を、Y方向とはクランプ10の幅方向である
図2中の左右方向を、Z方向とはクランプ10の高さ方向である
図1中の上下方向を、それぞれ言う。更に、X方向において、
図1中の左方向をX
1 、
図1中の右方向をX
2 とする。
【0027】
第1板状部12と第2板状部14は、それぞれ略板形状とされており、本実施形態では、X方向を長手とする長手板状とされている。また、第1板状部12と第2板状部14は、X1 側に向かって徐々に離れるように相対傾斜した状態で、Z方向において所定距離を隔てて対向配置されている。これにより、第1板状部12と第2板状部14の対向面間には、Y方向に貫通する対向間領域18が形成されている。更に、第1板状部12及び第2板状部14におけるX1 側の端部間には、対向間領域18を外部に向かって開放する開口部20が設けられている。
【0028】
また、第1板状部12と第2板状部14は、X2 側の端部側が湾曲部16によって相互に連結されている。湾曲部16は、厚さ方向で略円弧状に湾曲した湾曲板状とされており、周方向一方の端部が第1板状部12につながっていると共に、周方向他方の端部が第2板状部14につながっている。また、湾曲部16のY方向の中間部分には、X方向に貫通する第1挿通孔22が形成されている。
【0029】
なお、第1板状部12と第2板状部14と湾曲部16は、本実施形態において一体形成されているが、例えば、別体とすることによって、第1板状部12と第2板状部14の変形剛性を確保しながら、湾曲部16のばねを調節することなども可能である。
【0030】
また、第1板状部12には、第2板状部14との対向面に突出する第1圧迫用突部24が形成されている。第1圧迫用突部24は、第1板状部12におけるX方向の中間部分に形成されており、山形断面形状で第1板状部12におけるY方向の全長に亘って連続して設けられている。第1圧迫用突部24は、突出先端面が折れ点の無い滑らかな連続面で構成されており、特に最大突出部分の先端面が湾曲面で構成されている。
【0031】
また、第2板状部14には、第1板状部12との対向面に突出する第2圧迫用突部26が形成されている。第2圧迫用突部26は、略山形断面形状で第2板状部14におけるY方向の全長に亘って連続して設けられている。第2圧迫用突部26におけるX
1 側の端面は、略平面とされている。第2圧迫用突部26におけるX
2 側の端面は、湾曲部16の内周面及び第1圧迫用突部24におけるX
2 側の端面と略同一円周上に位置する凹状湾曲面とされている。第1圧迫用突部24と第2圧迫用突部26は、
図1,3に示されているように、相互に離れて対向位置している。
【0032】
第1板状部12は、X1 側の端部に係止板部28を備えている。係止板部28は、第2板状部14に向かって立ち上がるように設けられており、第1板状部12から立ち上がる基端部分30が円弧板形状に湾曲していると共に、基端部分30を介して第1板状部12につながる先端部分32が略平板形状とされている。このように係止板部28の基端部分30が湾曲していることにより、弾性応力と歪みの分散が図られている。本実施形態では、係止板部28と湾曲部16が、第1板状部12の両側に設けられて、X方向で相互に対向している。更に、第1板状部12における係止板部28側がX1 方向とされていると共に、第1板状部12における湾曲部16側がX2 方向とされている。
【0033】
係止板部28の先端部分32には、X2 側に向かって突出する係止爪34が形成されており、第2板状部14の先端係止部36に対して開口部20を隔てて対向位置している。そして、係止板部28の係止爪34と、第2板状部14の先端係止部36とによって、それら第1板状部12と第2板状部14とを相互に接近した接近位置に保持する係止機構が構成される。
【0034】
すなわち、湾曲部16を弾性変形させて第1板状部12と第2板状部14を相互に接近方向へ変位させる遮断操作によって、第2板状部14の先端係止部36が係止爪34を乗り越える。これにより、第2板状部14の先端係止部36が、第1板状部12の係止爪34に対してZ方向において係止されて、第1板状部12と第2板状部14の離隔方向への相対的な復元変位が阻止されることから、第1板状部12と第2板状部14が接近位置に保持される。なお、遮断操作は、例えば、第1板状部12と第2板状部14をZ方向において手指で挟んで、それら第1板状部12と第2板状部14を相互に接近させる方向の力を手指で加えることによって、実現される。
【0035】
第1板状部12の係止爪34と第2板状部14の先端係止部36とが係止された状態で、係止板部28の先端部分32をX1 側へ押すことにより、係止爪34と先端係止部36の係止が係止板部28の弾性変形によって解除される。これにより、第1板状部12と第2板状部14が、湾曲部16の弾性によって、相互に離隔した初期位置に戻るようになっている。
【0036】
係止板部28には、第2挿通孔40が形成されている。第2挿通孔40は、係止板部28の基端部分30及び先端部分32の一部に形成されており、X方向に貫通して設けられている。これにより、対向間領域18と第1挿通孔22と第2挿通孔40とが、X方向において直列的に連続して設けられている。そして、それら対向間領域18と第1挿通孔22と第2挿通孔40とによって、クランプ10をX方向に貫通する挿通領域42が形成されている。本実施形態の挿通領域42は、両側の開口部分が第1挿通孔22と第2挿通孔40によって構成されている。なお、湾曲部16と係止板部28の基端部分30に挿通孔22,40が形成されることで、それら湾曲部16や係止板部28の基端部分30が、第1,第2の板状部12,14に比して容易に変形するようになっている。
【0037】
係止板部28には、カプラ保持部としての嵌合突起44が設けられている。嵌合突起44は、略半円筒状とされており、第2挿通孔40の開口周縁部においてX1 側へ向けて突出している。嵌合突起44は、係止板部28の先端部分32に一体形成されている。本実施形態の嵌合突起44は、抜止係合部としての係合凸部46を備えている。係合凸部46は、嵌合突起44の外周面に突出して周方向へ延びる突条であって、嵌合突起44の突出方向の中間部分に設けられている。
【0038】
このような構造とされたクランプ10は、
図4~6に示すように、医療チューブ48に外挿状態で装着される。医療チューブ48は、薬液や血液の流通ラインを構成する可撓性の樹脂チューブであって、本実施形態では、流通ラインを延長する際に用いられる延長チューブとされている。なお、医療チューブ48の長さや材質、大きさなどは、特に限定されない。例えばクランプ10を長さで外れた部分が、部分的に硬質とされていても良い。また、クランプ10のX方向と、医療チューブ48のチューブ長さ方向は、互いに傾斜していても良いが、好適には傾斜角度の絶対値が45°以下とされて、医療チューブ48のクランプ10への挿通方向が略X方向とされる。
【0039】
医療チューブ48の両端部には、雄コネクタ50とニードルレスコネクタ52が設けられている。雄コネクタ50は、先端に向けて小径となるルアーテーパを有するチップ54と、チップ54の基端側に設けられたカプラ装着部56とを、備えている。カプラ装着部56は、X方向へ延びる複数の凸条58を外周面に備えている。
【0040】
医療チューブ48は、
図6に示すように、クランプ10の挿通領域42に挿通されており、クランプ10の第1圧迫用突部24と第2圧迫用突部26の間を通って、クランプ10のX方向に延びている。そして、医療チューブ48への装着状態において、クランプ10の第1板状部12と第2板状部14とを相互に接近方向へ変位させる遮断操作を行うことにより、クランプ10の第1圧迫用突部24と第2圧迫用突部26が、医療チューブ48に対して両側から押し付けられる。これにより、医療チューブ48が第1圧迫用突部24と第2圧迫用突部26の間で挟み込まれて押し潰される。その結果、医療チューブ48の内部流路は、クランプ10の第1板状部12と第2板状部14の間で閉止された遮断状態とされる。
【0041】
クランプ10は、遮断操作によって、第1板状部12の係止爪34と第2板状部14の先端係止部36が係止されて、第1板状部12と第2板状部14が接近状態に保持される。この係止機構によって、遮断操作後にクランプ10から手を離しても、医療チューブ48の内部流路が遮断状態に保持される。
【0042】
本実施形態では、医療チューブ48の一方の端部にニードルレスコネクタ52が設けられており、このニードルレスコネクタ52には、図示しないシリンジや雄コネクタなどのチップが差し入れられる図示しない弁体が設けられている。そして、弁体に形成された図示しないスリットを押し広げながらチップを差し入れることにより、シリンジやチューブ、輸液バッグなどを医療チューブ48に接続することができる。また、チップを弁体から引き抜いて、ニードルレスコネクタ52からシリンジなどを取り外す際に、医療チューブ48の内部流路には陰圧が作用することから、雄コネクタ50側からニードルレスコネクタ52側へ薬液や血液などの逆流が生じ得る。そこで、ニードルレスコネクタ52からシリンジなどを取り外す前に、クランプ10によって医療チューブ48の内部流路を遮断しておくことにより、陰圧が雄コネクタ50側に伝達されるのを防いで、上述のごとき逆流を防止することができるようになっている。
【0043】
また、クランプ10の係止爪34と先端係止部36との係止を解除すれば、第1圧迫用突部24と第2圧迫用突部26による医療チューブ48の挟み込みが、湾曲部16の弾性や医療チューブ48の弾性に基づいて解除される。これにより、クランプ10による医療チューブ48の押し潰しが解除されて、医療チューブ48の内部流路を連通状態に切り替えることができる。このように、クランプ10が医療チューブ48に装着されて使用されることで、医療チューブ48の内部流路が連通状態と遮断状態に切替可能とされる。
【0044】
図4では、カプラ60が雄コネクタ50に外挿された状態で示されている。このカプラ60は、
図4~7に示すように、医療チューブ48に対してチューブ長さ方向(
図4中、左右方向)の移動を許容されていると共に、医療チューブ48からの抜けが防止されている。カプラ60は、硬質の合成樹脂で形成されて、全体として筒状とされている。カプラ60は、X
1 側が大径のロック筒部62とされていると共に、X
2 側がロック筒部62よりも小径の嵌合筒部64とされている。なお、医療チューブ48に装着されたカプラ60は、同じく医療チューブ48に装着されたクランプ10に対して、嵌合突起44の先端側であるX
1 側に配されており、カプラ60の嵌合筒部64がクランプ10側に位置している。
【0045】
ロック筒部62の内周面におけるX1 側部分には、内周へ突出するネジ突起66が形成されている。ロック筒部62の内周面におけるX2 側部分には、複数の凸部68が形成されている。複数の凸部68が、周方向で相互に離れた位置に設けられている。各凸部68は、雄コネクタ50の周方向で隣り合う凸条58,58の間の溝状部分と対応する形状とされている。
【0046】
そして、雄コネクタ50が図示しない雌コネクタに接続される際に、カプラ60のネジ突起66が雌コネクタ側のネジ突起と噛合することで、雌コネクタと雄コネクタ50が接続状態でカプラ60によってロックされるようになっている。なお、カプラ60によるロック機構を使用する場合において、カプラ60の各凸部68が雄コネクタ50の凸条58,58の間を通ってX1 方向へ差し入れられることによって、カプラ60が雄コネクタ50に対して回転可能とされると共に、凸部68と凸条58のX方向での係止によって、カプラ60の雄コネクタ50に対するX2 方向への抜けが防止されている。
【0047】
ところで、雄コネクタ50は、図示しない雌コネクタに挿し込むだけで接続することも可能であり、この場合にはカプラ60は使用されない。使用されないカプラ60は、雌コネクタと雄コネクタ50の接続の邪魔にならないように、医療チューブ48の端部に設けられた雄コネクタ50から取り外されて、医療チューブ48の長さ方向で中間部分へ移動させられる。即ち、カプラ60の各凸部68が雄コネクタ50の凸条58,58の間を通ってX2 方向へ移動することにより、カプラ60が雄コネクタ50から取り外されて、雄コネクタ50に対してX2 方向への移動を許容される。なお、カプラ60は、内径寸法が医療チューブ48の外径寸法よりも十分に大きくされていることによって、医療チューブ48への外挿状態において、医療チューブ48に対してチューブ長さ方向へ容易に移動可能とされている。
【0048】
ここにおいて、医療チューブ48上をクランプ10付近まで移動したカプラ60の嵌合筒部64に対して、
図7に示すように、クランプ10の嵌合突起44を差し入れて嵌合させることにより、カプラ60がクランプ10に保持される。クランプ10は、第1圧迫用突部24と第2圧迫用突部26が医療チューブ48に対して近接していることから、医療チューブ48に対するチューブ長さ方向の変位が、第1圧迫用突部24及び第2圧迫用突部26と医療チューブ48との接触による摩擦抵抗によって、制限され易くなっている。それ故、クランプ10に保持されてクランプ10に対する相対変位を制限されたカプラ60は、医療チューブ48に対するチューブ長さ方向の変位を制限されて、医療チューブ48の所定の位置に保持され易くなる。その結果、カプラ60が医療チューブ48上を自由に変位することで他の作業の邪魔になるのを防ぐことができる。
【0049】
これにより、医療チューブ48にクランプ10が装着されて、カプラ60をニードルレスコネクタ52に嵌め合わせて保持することができない場合にも、カプラ60の自由な移動を防いで、カプラ60の動きやそれに伴う音などが、他の作業などの邪魔になるのを防ぐことができる。
【0050】
このように、カプラ60を保持する機能が、カプラ60が装着される雄コネクタ50やニードルレスコネクタ52、カプラ60が外挿される医療チューブ48ではなく、カプラ60とは機能的に本来関係がないクランプ10に設定されている。即ち、医療チューブ48においてカプラ60と併せて用いられることの多いクランプ10に着目し、クランプ10によってカプラ60の保持を実現したことで、別途の新規な保持部材を要することなく、カプラ60の自由な移動を抑えることができた。
【0051】
特に、上述するように陰圧が作用し得る医療チューブ48にクランプ10を設ける場合には、一般的に、医療チューブ48から容易には取り外せないクランプ10が採用される。従って、クランプ10が医療チューブ48に常時装着されており、例えば、ニードルレスコネクタ52にカプラ60を保持する機構が設けられていても、カプラ60は、クランプ10によって移動を阻止されて、ニードルレスコネクタ52までは移動できない。そこで、クランプ10にカプラ保持部を設けることにより、陰圧による逆流を防止するなどの目的でクランプ10を装着される医療チューブ48において、カプラ60を有効に保持することができる。
【0052】
また、カプラ60によるロックが必要になれば、カプラ60の嵌合筒部64から嵌合突起44を引き抜いて、カプラ60とクランプ10の連結を解除することにより、カプラ60を雄コネクタ50まで移動させて、カプラ60によるロックを実現することができる。要するに、カプラ60を使用しない間は、クランプ10によって保持させることで、カプラ60が邪魔になり難く、且つ、カプラ60を使用する場合には、クランプ10による保持を容易に解除することが可能とされている。
【0053】
本実施形態では、カプラ保持部を構成する嵌合突起44が、クランプ10において挿通領域42の開口部分に設けられている。それ故、カプラ60を医療チューブ48に沿ってチューブ長さ方向に移動させることで、カプラ60をクランプ10による保持位置まで移動させることができて、カプラ60をクランプ10によって簡単に保持させることができる。要するに、カプラ保持部が挿通領域42の開口部分に設けられていることによって、医療チューブ48が、カプラ60をクランプ10による保持位置まで案内するガイド部材としての機能を備えている。
【0054】
また、カプラ保持部が医療チューブ48のクランプ10への挿通方向に突出する嵌合突起44によって構成されている。それ故、カプラ60を医療チューブ48の長さ方向でクランプ10に対して接近移動させることで、カプラ60を嵌合突起44に容易に嵌め合わせて保持することができる。更に、カプラ60を医療チューブ48の長さ方向でクランプ10から離隔移動させることで、嵌合突起44をカプラ60から引き抜いて、嵌合突起44によるカプラ60の保持を簡単に解除することもできる。
【0055】
さらに、略半筒状の嵌合突起44が略筒状の嵌合筒部64の内周へ嵌め入れられるようになっている。それ故、略半筒状の嵌合突起44が略筒状の嵌合筒部64の外周へ嵌め付けられる場合に比して外れ難く、安定した保持が可能になる。しかも、軟質の嵌合突起44の周囲が、硬質の嵌合筒部64によって保護される。
【0056】
本実施形態のカプラ60は、
図6において拡大して示すように、嵌合筒部64の内周面に係合凹部70が設けられている。そして、
図7に示すように、カプラ60の係合凹部70にクランプ10の係合凸部46が差し入れられて、嵌合突起44の突出方向において、係合凸部46と係合凹部70の内面とが係合される。これにより、嵌合突起44が嵌合筒部64から抜け難くされており、クランプ10とカプラ60の連結状態が安定して維持されるようになっている。なお、
図7では、要部を拡大して示しているが、要部拡大図については、見易さのために医療チューブ48を省略して図示した。
【0057】
尤も、
図8に示す別の一実施形態としての医療チューブ用クランプ80のように、嵌合突起82の外周面が係合凸部を持たない形状とされていても良く、その場合には、図示しないカプラの係合凹部も省略され得る。また、クランプの嵌合突起の外周面に抜止係合部としての係合凹部を設けると共に、カプラの嵌合筒部の内周面に係合凸部を設けて、それら係合凹部の内面と係止突部との係止によって、クランプとカプラの意図しない分離を防ぐようにしても良い。
【0058】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、本発明に係るクランプは、カプラ保持部を備えていれば良く、クランプの具体的な形状等は、前記実施形態の例示によって限定的に解釈されるものではない。例えば、国際公開第2012/111310号に開示された医療チューブ用クランプなどにも、本発明を適用することができる。
【0059】
前記実施形態では、カプラ保持部として嵌合突起44を例示したが、カプラ保持部は、クランプに対してカプラの着脱可能に位置決め保持し得るものであれば良い。即ち、例示の如き凹凸係合を備えた嵌合構造の他、圧入による嵌着構造や、鉤形の引っ掛け構造、ネジ式の螺合構造、面ファスナーや粘着体等による固着構造など、カプラ保持部の具体的な構造は、特に限定されるものではない。嵌合構造としても、例えば第2挿通孔40の開口部分がカプラ60の嵌合筒部64を嵌め入れ得る形状とされることによって、第2挿通孔40の開口部分でカプラ保持部を構成することもできる。
【0060】
前記実施形態の嵌合突起44は、カプラ60の嵌合筒部64に差し入れられて、嵌合筒部64の内周面に嵌め合わされていたが、例えば、嵌合突起がカプラ60の嵌合筒部64の外周面に重ね合わされて、嵌合突起が嵌合筒部64の外周面に嵌め合わされることで、カプラ60が医療チューブ用クランプによって保持されるようにもできる。
【0061】
カプラの保持機構は、クランプ10のカプラ保持部に加えて、ニードルレスコネクタ52のカプラ装着部52a(
図4参照)等に設けることも可能である。特に、クランプ10が医療チューブ48から着脱可能の場合には、クランプ10を外した状態で医療チューブ48に外挿されたカプラ60をニードルレスコネクタ52のカプラ装着部52aまで移動させて、カプラ60をカプラ装着部52aによって保持させることも可能である。なお、本発明は、両端に接続用のコネクタ(例えば雄コネクタ50やニードルレスコネクタ52)を装着した医療チューブ48に対して、コネクタ50,52によって抜け出しが阻止された状態で、要するに着脱不能にクランプ10が装着されたクランプ付チューブも一態様とする。また、接続用のコネクタ50,52の少なくとも一方が医療チューブ48から取外し可能とされて、クランプ10が医療チューブ48に対して着脱可能とされたクランプ付チューブも、本発明の一態様である。
【0062】
また、嵌合突起44は、第1板状部12、第2板状部14、湾曲部16と一体成形されているものに限定されず、第1板状部12、第2板状部14、湾曲部16とは別体で形成されて、後固定によって設けられていても良い。これによれば、嵌合突起と第1板状部12、第2板状部14、湾曲部16の形成材料を異ならせることも可能になる。
【0063】
例えば、第2挿通孔40が係止板部28の先端部分32を貫通するように設けられている場合などには、嵌合突起44は、挿通領域42の開口部分に全周に亘って設けられる筒状であっても良い。更に、嵌合突起44は、必ずしも挿通領域42の開口に沿って設けられる必要はなく、挿通領域42の開口から離れた位置に突出していても良い。
【0064】
前記実施形態では、クランプ10の開口部20側にカプラ60が配されている例を示したが、例えば、クランプ10の湾曲部16側にカプラ60が配されている場合には、カプラ保持部を湾曲部16側に設けることもできる。クランプ10における挿通領域42の両側の開口部分に、それぞれカプラ保持部を設けることも可能である。これによれば、例えば、医療チューブ48に装着されたクランプ10の装着方向に関わらず、カプラ保持部をカプラ60に向けることができて、カプラ60をクランプ10によって保持させることができる。更に、例えば、カプラ60が医療チューブ48の両端部のコネクタ50,52にそれぞれ設けられる場合に、クランプ10の両側に配されたそれらカプラ60,60の両方を、1つのクランプ10で保持することができる。
【0065】
前記実施形態では、医療チューブとして延長チューブを例示したが、医療チューブは延長チューブに限定されない。例えば、輸液バッグに接続されるチューブや、血液透析回路を構成するチューブなどにも、本発明は適用され得る。
【0066】
医療チューブの両端に設けられる接続用のコネクタの具体的構造は、特に限定されない。前記実施形態では、医療チューブ48として、雄型の接続構造を有する雄コネクタ50と、雌型の接続構造を有するニードルレスコネクタ52とを、両端に備えた延長チューブを例示したが、例えば、雄型の接続構造を有するコネクタを両端に備えたコネクタ変換用チューブなどであっても良い。
【0067】
前記実施形態では、医療チューブ48が初期形状のクランプ10の圧迫用突部24,26に対して近接しており、クランプ10が医療チューブ48に対して移動する際に、クランプ10が医療チューブ48に接触し易く、それによって自由な移動が抑えられている。これに対して、クランプ10が初期形状において医療チューブ48を僅かに挟んだ状態で医療チューブ48に装着されて、クランプ10の医療チューブ48に対する自由な移動がより制限されるようにしても良い。また、クランプ10が医療チューブ48に対して大きく離れた状態で装着されて、比較的に自由に移動可能とされていても良い。この場合にも、クランプ10が医療チューブ48を挟んで医療チューブ48を遮断乃至は狭窄するクランプ状態では、クランプ10が医療チューブ48に対して位置を固定されることから、クランプ10によって保持されたカプラ60も、クランプ状態において医療チューブ48に対する自由な移動を抑えられる。
【符号の説明】
【0068】
10,80:医療チューブ用クランプ、12:第1板状部、14:第2板状部、16:湾曲部、22:第1挿通孔(挿通孔)、34:係止爪、40:第2挿通孔(挿通孔)、42:挿通領域、44,82:嵌合突起(カプラ保持部)、46:係合凸部(抜止係合部)、48:医療チューブ、60:カプラ、64:嵌合筒部、70:係合凹部