(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20230406BHJP
H01R 13/514 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R13/514
(21)【出願番号】P 2020004206
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-228451(JP,A)
【文献】実開昭60-132126(JP,U)
【文献】特開2011-82112(JP,A)
【文献】特表2010-534919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/639
H01R 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングとを備え、
前記第2ハウジングは、
前記第1ハウジングに対する嵌合と前記第1ハウジングからの離脱が可能な着脱可能ハウジングと、
前記第1ハウジングに対する嵌合が可能な離脱不能ハウジングとを有し、
前記第1ハウジングと前記離脱不能ハウジングには、前記離脱不能ハウジングと前記第1ハウジングを嵌合状態にロックする嵌合用ロック部が設けられ、
前記嵌合用ロック部は、前記嵌合用ロック部によるロックの解除を可能にする部位を有しない形態であるコネクタ。
【請求項2】
前記着脱可能ハウジングと前記離脱不能ハウジングは、合体用係止部を有しており、
前記着脱可能ハウジングと前記離脱不能ハウジングは、前記第1ハウジングに未嵌合の状態で前記合体用係止部同士を係止させることによって、合体状態に保持される請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記離脱不能ハウジングが有する前記合体用係止部は、突起状の係止用受け部であり、
前記着脱可能ハウジングが有する前記合体用係止部は、前記離脱不能ハウジングに対する前記着脱可能ハウジングの組付け方向と交差する第1の撓み方向へ弾性変位可能な弾性係止片であり、
前記着脱可能ハウジングを前記離脱不能ハウジングに組み付ける過程では、前記弾性係止片が前記係止用受け部との干渉によって前記第1の撓み方向へ弾性変位し、
前記着脱可能ハウジングが前記離脱不能ハウジングに組み付けられた状態では、弾性復帰した前記弾性係止片が前記係止用受け部に係止される請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1ハウジングは撓み規制部を有し、
前記着脱可能ハウジングが前記第1ハウジングに嵌合した状態では、前記弾性係止片が、前記撓み規制部によって前記第1の撓み方向への弾性変位を規制される請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1ハウジングは離脱用干渉部を有し、
前記着脱可能ハウジングを前記第1ハウジングから離脱させる過程で、前記弾性係止片が、前記離脱用干渉部と干渉することによって前記係止用受け部から解離する請求項3から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1ハウジングは撓み規制部を有し、
前記着脱可能ハウジングが前記第1ハウジングに嵌合した状態では、前記弾性係止片が、前記撓み規制部によって前記第1の撓み方向への弾性変位を規制され、
前記弾性係止片は、前記離脱不能ハウジングに対する前記着脱可能ハウジングの組付け方向と前記第1の撓み方向との両方向に対して交差する方向である第2の撓み方向へ弾性変位することが可能であり、
前記弾性係止片は、前記離脱用干渉部と干渉したときに前記第2の撓み方向へ弾性変位する請求項5に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雄コネクタの雄コネクタハウジング内に雌コネクタの雌コネクタハウジングを嵌合し、雌コネクタハウジングに形成したロックアーム部を雄コネクタハウジングのロック受け部に係止させることにより、雌雄両コネクタを接続状態にロックするコネクタ構造が開示されている。このコネクタ構造では、ロックアーム部の操作部を操作することにより、ロックアーム部とロック受け部との係止を解除し、両コネクタを離脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車用の安全走行に必要な重要回路と、その他の通常回路とを含むコネクタ構造の場合、メンテナンス等のために通常回路を開成するあいだ、重要回路を閉成状態に保っておくことが要望される。この場合、例えば雌コネクタを、重要回路用と通常回路用の2つのサブコネクタに分割し、2つのサブコネクタを1つの雄側コネクタに接続するようにすればよい。しかしながら、サブコネクタにロックアーム部を設けて、雄コネクタと両サブコネクタを接続状態に保つようにすると、重要回路用のサブコネクタのロックアーム部が誤ってロック解除操作されてしまうことが懸念される。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、嵌合状態の複数のハウジングのうち、一部のハウジングのみを離脱可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングとを備え、
前記第2ハウジングは、
前記第1ハウジングに対する嵌合と前記第1ハウジングからの離脱が可能な着脱可能ハウジングと、
前記第1ハウジングに対する嵌合が可能な離脱不能ハウジングとを有し、
前記第1ハウジングと前記離脱不能ハウジングには、前記離脱不能ハウジングと前記第1ハウジングを嵌合状態にロックする嵌合用ロック部が設けられ、
前記嵌合用ロック部は、前記嵌合用ロック部によるロックの解除を可能にする部位を有しない形態である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、嵌合状態の複数のハウジングのうち、一部のハウジングのみを離脱可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1ハウジングに離脱不能ハウジングが嵌合した状態をあらわす斜視図である。
【
図3】
図3は、着脱可能ハウジングを正面側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、離脱不能ハウジングを背面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、着脱可能ハウジングを離脱不能ハウジングに嵌合した状態をあらわす正面図である。
【
図6】
図6は、着脱可能ハウジングを離脱不能ハウジングに合体する過程をあらわす
図5のX-X線相当断面図である。
【
図7】
図7は、着脱可能ハウジングを離脱不能ハウジングに合体した状態をあらわす
図5のX-X線断面図である。
【
図8】
図8は、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合した状態をあらわす正断面図である。
【
図9】
図9は、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合した状態をあらわす
図8のY-Y線断面図である。
【
図10】
図10は、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合する過程をあらわす
図8のZ-Z線相当断面図である。
【
図11】
図11は、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合した状態をあらわす
図8のZ-Z線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)第1ハウジングと、前記第1ハウジングと嵌合可能な第2ハウジングとを備え、前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングに対する嵌合と前記第1ハウジングからの離脱が可能な着脱可能ハウジングと、前記第1ハウジングに対する嵌合が可能な離脱不能ハウジングとを有し、前記第1ハウジングと前記離脱不能ハウジングには、前記離脱不能ハウジングと前記第1ハウジングを嵌合状態にロックする嵌合用ロック部が設けられ、前記嵌合用ロック部は、前記嵌合用ロック部によるロックの解除を可能にする部位を有しない形態である。本開示の構成によれば、第1ハウジングと第2ハウジングを嵌合した状態では、着脱可能ハウジングを第1ハウジングから離脱したときに、離脱不能ハウジングは第1ハウジングに嵌合した状態にロックされたままである。本開示のコネクタによれば、嵌合状態の着脱可能ハウジングと離脱不能ハウジングのうち、着脱可能ハウジングのみを第1ハウジングから離脱させることができる。
【0010】
(2)前記着脱可能ハウジングと前記離脱不能ハウジングは、合体用係止部を有しており、前記着脱可能ハウジングと前記離脱不能ハウジングは、前記第1ハウジングに未嵌合の状態で前記合体用係止部同士を係止させることによって、合体状態に保持されることが好ましい。この構成によれば、第2ハウジングを第1ハウジングに嵌合する作業をワンアクションで行うことができる。
【0011】
(3)(2)において、前記離脱不能ハウジングが有する前記合体用係止部は、突起状の係止用受け部であり、前記着脱可能ハウジングが有する前記合体用係止部は、前記離脱不能ハウジングに対する前記着脱可能ハウジングの組付け方向と交差する第1の撓み方向へ弾性変位可能な弾性係止片であり、前記着脱可能ハウジングを前記離脱不能ハウジングに組み付ける過程では、前記弾性係止片が前記係止用受け部との干渉によって前記第1の撓み方向へ弾性変位し、前記着脱可能ハウジングが前記離脱不能ハウジングに組み付けられた状態では、弾性復帰した前記弾性係止片が前記係止用受け部に係止されることが好ましい。この構成によれば、着脱可能ハウジングを離脱不能ハウジングに組み付ける際に、弾性係止片を変位させるための手動による別操作が不要なので、作業性が良い。
【0012】
(4)(3)において、前記第1ハウジングは撓み規制部を有し、前記着脱可能ハウジングが前記第1ハウジングに嵌合した状態では、前記弾性係止片が、前記撓み規制部によって前記第1の撓み方向への弾性変位を規制されることが好ましい。この構成によれば、嵌合状態の第1ハウジングと第2ハウジングが振動しても、弾性係止片と係止用受け部との係止状態を保つことができる。
【0013】
(5)(2)から(4)において、前記第1ハウジングは離脱用干渉部を有し、前記着脱可能ハウジングを前記第1ハウジングから離脱させる過程で、前記弾性係止片が、前記離脱用干渉部と干渉することによって前記係止用受け部から解離することが好ましい。この構成によれば、着脱可能ハウジングを第1ハウジングから離脱させる際に、弾性係止片を係止用受け部から解離させるための手動による別操作が不要なので、作業性が良い。
【0014】
(6)(5)において、前記第1ハウジングは撓み規制部を有し、前記着脱可能ハウジングが前記第1ハウジングに嵌合した状態では、前記弾性係止片が、前記撓み規制部によって前記第1の撓み方向への弾性変位を規制され、前記弾性係止片は、前記離脱不能ハウジングに対する前記着脱可能ハウジングの組付け方向と前記第1の撓み方向との両方向に対して交差する方向である第2の撓み方向へ弾性変位することが可能であり、前記弾性係止片は、前記離脱用干渉部と干渉したときに前記第2の撓み方向へ弾性変位することが好ましい。この構成によれば、弾性係止片は、第1の撓み方向への弾性変位を規制されていても、第2の撓み方向へ弾性変位することによって係止用受け部から解離することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタを具体化した実施例1を、
図1~
図11を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、
図6,7,9~11における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1~5,8~11にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図1,2,4にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
図3,5,8における図示内容は、左右逆向きにあらわれる。
【0016】
本実施例のコネクタは、第1コネクタ10と第2コネクタ20とを備えている。第1コネクタ10と第2コネクタ20は、前後方向に相対変位することによって嵌合され、前後方向に相対変位することによって離脱される。本実施例1のコネクタは、自動車に搭載されたワイヤーハーネス(図示省略)と走行安全装備を制御する回路の回路基板とを接続するものである。
【0017】
第1コネクタ10は、合成樹脂製の第1ハウジング11と、第1ハウジング11に取り付けられた複数の第1端子金具19とを有する。第1コネクタ10は、回路基板(図示省略)に取り付けられる基板側コネクタとして用いられる。
図1,2に示すように、第1ハウジング11は、全体として左右方向に細長い形状であり、第1端子金具19を保持する壁状の端子保持部12と、端子保持部12から後方へ角筒状に突出したフード部13とを有する。
【0018】
第1ハウジング11の左端部には、端子保持部12の奥端面からフード部13内へ後方に突出した撓み規制部14が形成されている。撓み規制部14は、板厚方向を左右方向に向けた板状をなす。撓み規制部14の上下両端部とフード部13の内面との間には、隙間が空けられている。撓み規制部14の右側面には、離脱用干渉部15が形成されている。離脱用干渉部15は、軸線を左右方向に向けた円柱形をなす。
【0019】
フード部13を構成する下壁部には、解除可能ロック部16が形成されている。解除可能ロック部16は、撓み規制部14よりも右方に配置されている。
図9に示すように、フード部13を構成する上壁部には、解除不能ロック部17が形成されている。解除不能ロック部17は、撓み規制部14よりも左方に配置され、上壁部における開口端部に配置されている。解除不能ロック部17のロック用受け面18は、フード部13の開口部側には臨んでおらず、端子保持部12と前後方向に対向するように面している。
【0020】
第2コネクタ20は、第2ハウジング21と、複数の第2端子金具22とを備えている。第2ハウジング21は、合成樹脂製の着脱可能ハウジング23と、合成樹脂製の離脱不能ハウジング30とを合体して構成されている。着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30の合体方向は、第1ハウジング11に対する第2ハウジング21の嵌合方向と平行な方向である。第2端子金具22は、着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30に収容されている。
【0021】
図3に示すように、着脱可能ハウジング23は、全体として左右方向に長い直方形状をなす。着脱可能ハウジング23は、フード部13のうち撓み規制部14よりも右方の空間内に嵌入される。着脱可能ハウジング23の下面には、解除可能ロック片24が形成されている。解除可能ロック片24は、着脱可能ハウジング23の後方からロック解除方向へ操作するための操作部(図示省略)を有している。着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11に嵌合した状態では、解除可能ロック片24が解除可能ロック部16に係止することにより、着脱可能ハウジング23が第1ハウジング11に対して嵌合状態にロックされる。解除部を操作すると、解除可能ロック片24が解除可能ロック部16から解離して、着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11から離脱させることができる。
【0022】
図3に示すように、着脱可能ハウジング23の左端部(
図3,5においては右側の端部)には、上下対称な一対の弾性係止片25が形成されている。着脱可能ハウジング23の左外側面23Lにおける上下両端部には、一対の支持部26が形成され、弾性係止片25の後端部が支持部26に連なっている。上下一対の弾性係止片25は、支持部26を支点として、左外側面23Lから左方へ遠ざかる第1の撓み方向D1(
図6,7を参照)へ弾性変位することが可能である。第1の撓み方向D1は、第1ハウジング11に対する着脱可能ハウジング23の嵌合方向、及び離脱不能ハウジング30に対する着脱可能ハウジング23の合体方向の両方向と直交する方向である。弾性係止片25の前端部(延出端部)には、第1の撓み方向D1とは反対方向へ突出する第1係止突起27が形成されている。
【0023】
上下一対の弾性係止片25は、支持部26を支点として、着脱可能ハウジング23の左外側面23Lと平行に、かつ相手側の弾性係止片25から遠ざかる第2の撓み方向D2(
図10,11を参照)へ弾性変位することが可能である。第2の撓み方向D2は、離脱不能ハウジング30に対する着脱可能ハウジング23の合体方向と、第1の撓み方向D1との両方向に対して直交する方向である。弾性係止片25の前端部には、第2の撓み方向D2とは反対方向へ突出した形態の第2係止突起28が形成されている。
【0024】
図4に示すように、離脱不能ハウジング30は、左右寸法が着脱可能ハウジング23よりも小さい直方形状をなし、フード部13のうち撓み規制部14よりも左側の空間内に嵌入される。離脱不能ハウジング30の上面には、ロックアーム31が形成されている。ロックアーム31は、離脱不能ハウジング30の上面から後方へ片持ち梁状に延出した形態であり、上下方向(第1ハウジング11に対する離脱不能ハウジング30の嵌合方向と直交する方向)へ弾性変位することが可能である。ロックアーム31の後端面(延出端面)は、解除不能ロック面32となっている。
【0025】
離脱不能ハウジング30の右端部には、支持壁部33が形成されている。支持壁部33の前端部は、離脱不能ハウジング30の右外側面に連なっている。離脱不能ハウジング30の(外面)右外側面と支持壁部33との間には、離脱不能ハウジング30の後面側へ開放された縦長の係止空間34が形成されている。支持壁部33の左側面(係止空間34に臨む面)には、突起状の係止用受け部35が形成されている。
【0026】
第1端子金具19と第2端子金具22によって構成される回路は、第1ハウジング11と第2ハウジング21を嵌合することによって閉成状態となる。着脱可能ハウジング23に収容した第2端子金具22によって構成される回路は、メンテナンス等の必要があれば、開成状態に切り換えることができる。これに対し、離脱不能ハウジング30に収容した第2端子金具22によって構成される回路は、自動車の安全走行等に必要な重要回路であるため、一旦閉成状態にした後は、開成状態に切り換えられず、閉成状態に保たれる。
【0027】
第1ハウジング11と第2ハウジング21を嵌合する際には、まず、着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30を合体させて第2ハウジング21を構成する。第2ハウジング21を合体状態にする際には、離脱不能ハウジング30を着脱可能ハウジング23に対して前方から接近させるように組み付ける。このとき、離脱不能ハウジング30の支持壁部33を着脱可能ハウジング23の左外側面23Lと、一対の弾性係止片25との間に進入させる。
【0028】
着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30を組み付ける過程では、
図6に示すように、第1係止突起27が係止用受け部35と干渉することによって、弾性係止片25が第1の撓み方向D1へ弾性変位する。このとき、離脱不能ハウジング30の右外側面と弾性係止片25との間には、係止用撓み空間36が確保されているので、弾性係止片25は、係止用撓み空間36内に進入しながら第1の撓み方向D1へ変位する。
【0029】
着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30が正規の合体状態に至ると、
図7に示すように、第1係止突起27が係止用受け部35を通過することによって弾性係止片25が弾性復帰し、第1係止突起27が係止用受け部35に対して前方から対向する。これにより、着脱可能ハウジング23が離脱不能ハウジング30に対して後方への相対変位を規制される。また、支持壁部33の前端部と支持部26の後端部とが係止することにより、着脱可能ハウジング23が離脱不能ハウジング30に対して前止まりされる。以上により、着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30が合体状態に保持され、一体化された第2ハウジング21が構成される。
【0030】
この一体化した第2ハウジング21を、第1ハウジング11のフード部13に嵌入する。このとき、着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11側へ押すようにする。第2ハウジング21を嵌入する過程では、
図10に示すように、第2係止突起28が離脱用干渉部15と干渉することによって、弾性係止片25が第2の撓み方向D2へ弾性変位する。このとき、弾性係止片25は一時的に係止用受け部35から解離するが、離脱不能ハウジング30は着脱可能ハウジング23によって前方へ押されているので、離脱不能ハウジング30は着脱可能ハウジング23と一体となってフード部13内に嵌入される。
【0031】
第2ハウジング21が正規の嵌合位置まで嵌入されると、
図11に示すように、第2係止突起28が離脱用干渉部15を通過することによって弾性係止片25が弾性復帰し、第2係止突起28が離脱用干渉部15に係止するとともに、第1係止突起27が係止用受け部35に係止する。着脱可能ハウジング23の解除可能ロック片24が、第1ハウジング11の解除可能ロック部16に係止し、この係止によって、着脱可能ハウジング23が第1ハウジング11に対して嵌合状態にロックされる。
【0032】
第1ハウジング11と第2ハウジング21の嵌合過程では、離脱不能ハウジング30のロックアーム31が、第1ハウジング11の解除不能ロック部17と干渉することによって弾性変位する。第1ハウジング11と第2ハウジング21が正規の嵌合状態に至ると、ロックアーム31が弾性復帰し、解除不能ロック面32がロック用受け面18に対し、前後方向に接近して対向する。離脱不能ハウジング30に対して第1ハウジング11から離脱する方向の外力が作用したときには、解除不能ロック面32がロック用受け面18に突き当たることにより、離脱不能ハウジング30の離脱が規制される。
【0033】
第1ハウジング11と第2ハウジング21が嵌合している状態から着脱可能ハウジング23を離脱させる際には、解除可能ロック片24を解除操作して解除可能ロック部16から解離させ、着脱可能ハウジング23に対するロックを解除する。次に、このロック解除状態を保ったまま、着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11に対して後方へ引っ張ると、
図10に示すように、第2係止突起28が離脱用干渉部15と干渉することによって、弾性係止片25が第2の撓み方向D2へ弾性変位する。
【0034】
弾性係止片25が第2の撓み方向D2へ弾性変位すると、第1係止突起27が離脱不能ハウジング30の係止用受け部35から解離するので、着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30の合体状態が解除される。したがって、離脱不能ハウジング30はロックアーム31と解除不能ロック部17との係止によって第1ハウジング11と嵌合した状態のままで、着脱可能ハウジング23だけが第1ハウジング11から離脱される。
【0035】
第1ハウジング11から離脱させた着脱可能ハウジング23を、再び、第1ハウジング11に嵌合する際には、第2係止突起28が離脱用干渉部15と干渉することによって弾性係止片25が第2の撓み方向D2へ弾性変位する。したがって、弾性係止片25が離脱用干渉部15に引っ掛かることに起因して、着脱可能ハウジング23の嵌合動作に支障を来すことはない。また、弾性係止片25が第2の撓み方向D2へ弾性変位すると、第1係止突起27が係止用受け部35と干渉しない位置へ退避するので、第1係止突起27は係止用受け部35に引っ掛かることがない。以上により、離脱不能ハウジング30を第1ハウジング11に嵌合したままで、着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11に嵌合することができる。
【0036】
本実施例1のコネクタは、第1ハウジング11と、第1ハウジング11と嵌合可能な第2ハウジング21とを備えている。第2ハウジング21は、着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30とを有する。着脱可能ハウジング23は、第1ハウジング11に対する嵌合と第1ハウジング11からの離脱がいずれも可能である。
【0037】
これに対し、離脱不能ハウジング30は、第1ハウジング11に対する嵌合が可能であるが、一旦第1ハウジング11に嵌合した状態から離脱させることはできない。離脱を規制する手段として、第1ハウジング11には嵌合用ロック部としての解除不能ロック部17が形成され、離脱不能ハウジング30には嵌合用ロック部としてのロックアーム31が形成されている。ロックアーム31を解除不能ロック部17に係止させることより、離脱不能ハウジング30と第1ハウジング11が嵌合状態にロックされる。ロックアーム31と解除不能ロック部17は、ロックアーム31と解除不能ロック部17によるロックの解除を可能にする部位を有しない形態である。
【0038】
具体的には、解除不能ロック部17は変形しない形態である。離脱不能ハウジング30を第1ハウジング11に嵌合した状態では、ロックアーム31の延出端面に形成された解除不能ロック面32の全体が、第1ハウジング11の解除不能ロック部17の陰に隠れている。したがって、離脱不能ハウジング30の後方からフード部13と離脱不能ハウジング30との間に治具を差し込んでも、その治具を、解除不能ロック面32に引っ掛けることはできない。
【0039】
また、離脱不能ハウジング30を第1ハウジング11に嵌合した状態では、ロックアーム31とフード部13の上壁部との間のロック用撓み空間37が、離脱不能ハウジング30の後面において外部に連通している。しかし、ロックアーム31のうちロック用撓み空間37に臨む面は、滑らかな傾斜面のみで構成されており、治具などを引っ掛けるための凹凸部を有しない。したがって、離脱不能ハウジング30の後方からロック用撓み空間37内に治具を差し込んでも、その治具をロックアーム31に引っ掛けることはできない。
【0040】
なお、ロック用撓み空間37は、第1ハウジング11の端子保持部12の外面に開口しているが、第1ハウジング11は密閉された機器(図示省略)内に収容されているので、端子保持部12の外部からロック用撓み空間37内に治具などを差し込むことはできない。したがって、ロックアーム31と解除不能ロック部17とによるロック状態を解除することはできない。
【0041】
第1ハウジング11と第2ハウジング21を嵌合した状態では、着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11から離脱したときに、離脱不能ハウジング30は第1ハウジング11に嵌合した状態にロックされたままである。したがって、本実施例1のコネクタによれば、嵌合状態の着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30のうち、着脱可能ハウジング23のみを第1ハウジング11から離脱させることができる。
【0042】
着脱可能ハウジング23は合体用係止部としての弾性係止片25を有し、離脱不能ハウジング30は合体用係止部としての係止用受け部35を有する。着脱可能ハウジング23と離脱不能ハウジング30は、第1ハウジング11に未嵌合の状態で弾性係止片25と係止用受け部35とを係止させることによって、合体状態に保持される。この構成によれば、第2ハウジング21を第1ハウジング11に嵌合する作業をワンアクションで行うことができる。
【0043】
離脱不能ハウジング30が有する係止用受け部35は、突起状をなす。着脱可能ハウジング23が有する弾性係止片25は、離脱不能ハウジング30に対する着脱可能ハウジング23の組付け方向と交差する第1の撓み方向D1へ弾性変位可能である。着脱可能ハウジング23を離脱不能ハウジング30に組み付ける過程では、弾性係止片25が係止用受け部35との干渉によって第1の撓み方向D1へ弾性変位する。着脱可能ハウジング23が離脱不能ハウジング30に組み付けられた状態では、弾性復帰した弾性係止片25が係止用受け部35に係止される。この構成によれば、着脱可能ハウジング23を離脱不能ハウジング30に組み付ける際に、弾性係止片25を変位させるための手動による別操作が不要なので、作業性が良い。
【0044】
第1ハウジング11は撓み規制部14を有する。着脱可能ハウジング23が第1ハウジング11に嵌合した状態では、
図8に示すように、撓み規制部14が係止用撓み空間36内に進入するので、弾性係止片25が撓み規制部14によって第1の撓み方向D1への弾性変位を規制される。この構成によれば、嵌合状態の第1ハウジング11と第2ハウジング21が振動しても、第1係止突起27が係止用受け部35から解離するおそれがないので、弾性係止片25と係止用受け部35との係止状態を保つことができる。
【0045】
弾性係止片25は、離脱不能ハウジング30に対する着脱可能ハウジング23の組付け方向と第1の撓み方向D1との両方向に対して交差する方向である第2の撓み方向D2へ弾性変位することが可能である。弾性係止片25は、離脱用干渉部15と干渉したときに第2の撓み方向D2へ弾性変位する。この構成によれば、弾性係止片25が、撓み規制部14によって第1の撓み方向D1への弾性変位を規制されていても、弾性係止片25を第2の撓み方向D2へ弾性変位させることによって係止用受け部35から解離させ、着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11から離脱させることができる。
【0046】
第1ハウジング11は離脱用干渉部15を有する。着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11から離脱させる過程では、弾性係止片25が、離脱用干渉部15と干渉することによって係止用受け部35から解離する。この構成によれば、着脱可能ハウジング23を第1ハウジング11から離脱させる際に、弾性係止片25を係止用受け部35から解離させるための手動による別操作が不要なので、作業性が良い。
【0047】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、着脱可能ハウジングと離脱不能ハウジングを合体させた状態で第1ハウジングに嵌合したが、着脱可能ハウジングと離脱不能ハウジングを第1ハウジングに対して別々に嵌合してもよい。
上記実施例では、離脱不能ハウジングの嵌合用ロック部が弾性変位可能な弾性ロック片であるが、第1ハウジングの嵌合用ロック部を弾性変位可能なとしてもよい。
上記実施例では、着脱可能ハウジングを第1ハウジングから離脱させる過程で、合体用係止部のロックが解除されるが、着脱可能ハウジングを第1ハウジングから離脱させる前に、手動操作によって合体用係止部のロックを解除するようにしてもよい。
上記実施例では、第1ハウジングに、弾性係止片が第1の撓み方向へ弾性変位することを規制する撓み規制部を設けたが、第1ハウジングは撓み規制部を有しない形態であってもよい。
上記実施例では、弾性係止片が互いに異なる第1の撓み方向と第2の撓み方向の両方向へ弾性変位するようになっているが、弾性係止片の撓み方向は、いずれか一方の撓み方向だけであってもよい。
上記実施例では、着脱可能ハウジング側の合体用係止部を弾性変位可能な弾性係止片としたが、離脱不能ハウジング側の合体用係止部を弾性変位可能な弾性係止片としてもよい。
上記実施例では、第1ハウジングが回路基板に取り付けられる基板側コネクタを構成するものであるが、第1ハウジングは、ワイヤーハーネスの端末部に取り付けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…第1コネクタ
11…第1ハウジング
12…端子保持部
13…フード部
14…撓み規制部
15…離脱用干渉部
16…解除可能ロック部
17…解除不能ロック部
18…ロック用受け面
19…第1端子金具
20…第2コネクタ
21…第2ハウジング
22…第2端子金具
23…着脱可能ハウジング
23L着脱可能ハウジングの…左外側面
24…解除可能ロック片
25…弾性係止片
26…支持部
27…第1係止突起
28…第2係止突起
30…離脱不能ハウジング
31…ロックアーム
32…解除不能ロック面
33…支持壁部
34…係止空間
35…係止用受け部
36…係止用撓み空間
37…ロック用撓み空間
D1…第1の撓み方向
D2…第2の撓み方向