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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】道具ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B25H 3/00 20060101AFI20230406BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20230406BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20230406BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B25H3/00 Z
F16B2/10 A
F16B41/00 H
F16C11/04 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017139189
(22)【出願日】2017-07-18
(65)【公開番号】P2019018284
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章夫
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昭仁
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052076(JP,A)
【文献】特開2014-018903(JP,A)
【文献】特開2002-262921(JP,A)
【文献】登録実用新案第3168798(JP,U)
【文献】特開平10-014639(JP,A)
【文献】特開平07-299763(JP,A)
【文献】特開2014-025582(JP,A)
【文献】米国特許第09551367(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102007056740(DE,A1)
【文献】特開2016-159373(JP,A)
【文献】特開2013-099602(JP,A)
【文献】実開昭63-025070(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 3/00
F16B 2/10
F16B 41/00
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持空間を区画形成するフレームと前記保持空間の差込み口を開閉するストッパーとを備え、使用者の体に装着されるベルト状の帯状被装着体に着脱自在に装着されるとともに、前記保持空間に対応する形状のブラケットが道具の一部となっており、前記ブラケットが前記保持空間に差し込まれ、前記ストッパーにより前記道具の抜けを防止する道具ホルダであって、
前記帯状被装着体の周囲を隙間なく取り囲み可能な環形状を構成する閉状態と、前記環形状における周方向の一部が前記帯状被装着体を通過させることが可能な間隔に開放された開状態と、の間で変形可能な環状構成部と、
前記閉状態の前記環状構成部に螺着されることにより該環状構成部が開状態となることを抑制する拘束ねじと、
前記環状構成部に螺着した前記拘束ねじの緩みを抑制する緩み抑制機構と、を備え、
前記緩み抑制機構が、前記拘束ねじの側面に設けられた被係合部に接触して該拘束ねじの緩み方向の回転に対して抵抗力を付与する弾性部を備え、
前記弾性部は、前記環状構成部に係合保持される基部と、前記被係合部に接触する接触部と、前記基部と前記接触部との間に設けられた湾曲部とを有する板ばねであり、
前記道具が、例えばハンマー、バール、ラチェットレンチ、電動ドライバー、巻尺等の工具、工具差しまたはバッグである、道具ホルダ。
【請求項2】
前記環状構成部が、ヒンジ部を介して回動可能に連結された本体部とベース部とで構成されている、請求項1に記載の道具ホルダ。
【請求項3】
前記環状構成部が、本体部と、該本体部に形成された挿入孔に差し込まれて保持される差込み部材とで構成されている、請求項1に記載の道具ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状被装着体に対して着脱自在に装着される道具ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具やバッグ等の道具を作業者の腰ベルトに保持するための道具ホルダが知られている。例えば、特許文献1には、工具用腰袋の保持装置(ホルダ)として、使用者の腰に巻かれた腰ベルトの内側に差し込まれるベルト通し片の下端に、鈎状部を備えた構成が開示されている。
【0003】
上記特許文献1の保持装置によれば、腰ベルトの内側にベルト通し片を差し込み、鈎状部をベルトの下端に引っ掛けることにより、工具用腰袋を腰ベルトに保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭49-30759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような工具用腰袋の保持装置は、工具用腰袋の背面(背板)と、ベルト通し片の鈎状部との間に隙間が形成されているため、当該隙間を腰ベルトが通過して、工具用腰袋が脱落してしまう虞があった。
【0006】
それゆえ本発明は、帯状被装着体からの脱落をより確実に防止して、安全性を高めることができる道具ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の道具ホルダは、保持空間を区画形成するフレームと前記保持空間の差込み口を開閉するストッパーとを備え、使用者の体に装着されるベルト状の帯状被装着体に着脱自在に装着されるとともに、前記保持空間に対応する形状のブラケットが道具の一部となっており、前記ブラケットが前記保持空間に差し込まれ、前記ストッパーにより前記道具の抜けを防止する道具ホルダであって、
前記帯状被装着体の周囲を隙間なく取り囲み可能な環形状を構成する閉状態と、前記環形状における周方向の一部が前記帯状被装着体を通過させることが可能な間隔に開放された開状態と、の間で変形可能な環状構成部と、
前記閉状態の前記環状構成部に螺着されることにより該環状構成部が開状態となることを抑制する拘束ねじと、
前記環状構成部に螺着した前記拘束ねじの緩みを抑制する緩み抑制機構と、を備え、
前記緩み抑制機構が、前記拘束ねじの側面に設けられた被係合部に接触して該拘束ねじの緩み方向の回転に対して抵抗力を付与する弾性部を備え、
前記弾性部は、前記環状構成部に係合保持される基部と、前記被係合部に接触する接触部と、前記基部と前記接触部との間に設けられた湾曲部とを有する板ばねであり、
前記道具が、例えばハンマー、バール、ラチェットレンチ、電動ドライバー、巻尺等の工具、工具差しまたはバッグである、ことを特徴とする。
【0008】
なお、本発明の道具ホルダにあっては、前記環状構成部が、ヒンジ部を介して回動可能に連結された本体部とベース部とで構成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の道具ホルダにあっては、前記環状構成部が、本体部と、該本体部に形成された挿入孔に差し込まれて保持される差込み部材とで構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、帯状被装着体からの脱落をより確実に防止して、安全性を高めることができる道具ホルダを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る道具ホルダを帯状被装着体に装着した状態を示す斜視図である。
図2図1の道具ホルダを背面側から見た斜視図である。
図3図1の道具ホルダの開状態を示す背面側から見た斜視図である。
図4図1の道具ホルダを帯状被装着体に装着する様子を示す図である。
図5図1の道具ホルダにおける拘束ねじを示す側面図である。
図6図1の道具ホルダにおける板ばねを示す斜視図である。
図7図1の道具ホルダをベルトループ上に装着する際のベース部の位置を示す図である。
図8図1の道具ホルダにおける拘束ねじの中心軸線を通る断面図である。
図9図8に示す道具ホルダのA-A断面図である。
図10A】弛み抑制機構の変形例を示す部分断面図である。
図10B図10Aの弛み抑制機構における拘束ねじの装着過程を示す部分断面図である。
図10C図10Aの弛み抑制機構における拘束ねじの装着状態を示す部分断面図である。
図11A】弛み抑制機構の他の変形例を示す部分断面図である。
図11B図11Aの弛み抑制機構におけるB-B断面を示す部分断面図である。
図12】弛み抑制機構の他の変形例を示す部分断面図である。
図13A】弛み抑制機構の他の変形例を示すエキセントリックねじの側面図である。
図13B】他のエキセントリックねじの側面図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る道具ホルダを帯状被装着体に装着した状態を示す斜視図である。
図15図14の道具ホルダの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示説明する。図1は本発明の一実施形態としての道具ホルダ1を、帯状被装着体としての腰ベルト2に装着した状態を示している。図2は、道具ホルダ1を背面側から見た斜視図である。なお、帯状被装着体は、使用者の腰に巻かれる腰ベルト2等の略水平方向に延在する横型の帯状部材に限定されず、例えばハーネス型安全帯の縦ベルト部分等の、略鉛直方向に延在する縦型の帯状部材とすることも可能である。
【0014】
道具ホルダ1は、腰ベルト2に対して着脱自在に構成されたものであり、本体部3及びベース部4を備える。本体部3及びベース部4は、ヒンジ部5を介して回動可能に連結されている。本体部3及びベース部4は、閉状態と開状態との間で変形可能な環状構成部を構成している。閉状態とは、図1、2に示すように、腰ベルト2の周囲を隙間なく取り囲むことができる環形状を構成する閉じた状態である。開状態とは、図3、4に示すように、環形状における周方向の一部が開放された状態であり、本例では、ヒンジ部5の逆側(本体部3とベース部4の自由端側)において、本体部3とベース部4との間に、腰ベルト2を通過させることが可能な間隔が形成される。
【0015】
また、道具ホルダ1は、本体部3に対して着脱可能な拘束ねじ6を備える。拘束ねじ6は、閉状態とした本体部3とベース部4の所定の位置に差し込まれて、当該本体部3及びベース部4の少なくとも何れかに螺着することにより、本体部3とベース部4が開状態となることを抑制する。なお、本例において拘束ねじ6は、本体部3及びベース部4の両方を貫通するとともに、本体部3のみに螺着する構成としているが、ベース部4のみ、または本体部3とベース部4の両方に螺着する構成としてもよい。
【0016】
本体部3は、前面側(ベース部4の逆側)に道具保持部7を有しており、被保持物としての任意の道具を保持することができる。本例の道具保持部7は、道具の一部を収容して保持する保持空間Sを区画形成するフレーム7aと、本体部3にスライド可能に設けられ保持空間Sへの道具の差込み口を開閉するストッパー7bと、を備えている。この道具保持部7に道具を取り付ける際には、道具の一部(保持空間Sに対応する形状を有するブラケット等)を上方から差し込むようにして保持空間S内に配置して、ストッパー7bで道具の抜け出しを防止する。道具を本体部3から取り外す際には、ストッパー7bを斜め下方にスライドさせて、保持空間Sへの差込み口を開放し、上方に引き上げるようにして道具を取り外す。このように、本例の道具保持部7は、道具を着脱自在に保持する機能を有する。なお、道具とは、特に限定されるものではないが、例えばハンマー、バール、ラチェットレンチ、電動ドライバー、巻尺等の工具、工具差しまたはバッグ等とすることができる。道具保持部7は、複数の種類の道具を付け替えて使用できることが好ましい。なお、道具保持部7は、特定の道具のみを保持する構成でもよいし、道具が固定され、取外しができない構成であってもよい。
【0017】
図2、3に示すように、本体部3は、ヒンジ部5の逆側の端部近傍において、後方(道具保持部7)に突出する第1係合部8及び第2係合部9を有している。第1係合部8には、拘束ねじ6が通過可能な貫通孔8aが形成されており、第2係合部9には、ねじ孔9aが形成されている。ねじ孔9aの内面には、雌ねじが設けられている。なお、ねじ孔9aは、第2係合部9を貫通していなくてもよい。
【0018】
ここで、図3に示すように、本体部3の後面(閉状態でのベース部4側の面)には、腰ベルト2の表面に接触した際に滑り止め機能を発揮する凹凸部16が形成されている。これにより、腰ベルト2に装着した道具ホルダ1の、腰ベルト2の延在方向に沿う移動を抑制することができる。滑り止め効果を高めるため、凹凸部16は、図示例のように、本体部3の左右両側に設けられていることが好ましい。なお、凹凸部16に代えて、摩擦抵抗の大きい表面を有するゴム等の部材を取り付けて、滑り止め機能を高めてもよい。
【0019】
また、本体部3の後面には、第1係合部8の貫通孔8aを通して挿入される拘束ねじ6の位置ずれを抑制するための横溝17が設けられている。横溝17の内面形状は、拘束ねじ6の側面形状に対応している。横溝17により、拘束ねじ6を本体部3に差し込む際の位置ずれを防止することができるので、拘束ねじ6の差込み及び螺着操作をスムーズに行うことができる。特に、使用者が腰ベルト2に道具ホルダ1を装着する際には、拘束ねじ6の角度を確認しながら本体部3へと差込み、螺着することが容易ではないため、拘束ねじ6の位置ずれを防止することで、拘束ねじ6をより迅速に、より正確に装着することができる。
【0020】
拘束ねじ6は、図5に示すように、円柱状の軸本体6aと、軸本体6aの一端部に設けられたヘッド部6bと、軸本体6aの他端部に設けられた雄ねじ部6cと、を有する。また、拘束ねじ6は、軸本体6aからヘッド部6b側に向けて徐々に大径となる拡径部6dと、拡径部6dとヘッド部6bとの間に設けられた被係合部としての平面部6eとを有する。本例において平面部6eは、拘束ねじ6の周方向において、90°間隔で4箇所に設けられており、平面部6eの位置での横断面が略正方形となるように構成されている(図9参照)。また、拡径部6dと平面部6eの間には段差6fが形成されている。雄ねじ部6cは、本体部3に設けられた第2係合部9のねじ孔9aに螺合する。なお、本例では、軸本体6aよりも平面部6eの外径を大きくして、平面部6eの面積を大きく確保するようにしている。平面部6eの面積を大きく確保することで、緩み抑制機構による拘束ねじ6の緩みを抑制する効果を高めることができる。
【0021】
本体部3の内部には、本体部3に螺着された拘束ねじ6の緩みを抑制するための板ばね10が配置されている。板ばね10は、緩み抑制機構における弾性部を構成するものである。なお、弾性部としては、拘束ねじ6を径方向内側に向けて付勢できるものであれば特に限定されない。
【0022】
図6に示すように、板ばね10は、本体部3に係合保持される基部10aと、拘束ねじ6の回転を抑制する際に拘束ねじ6に接触する接触部10bと、基部10a及び接触部10bの間に設けられた湾曲形状の変形部10cと、を有する。板ばね10は、例えば、金属製の長方形の板を折り曲げて形成することができる。
【0023】
ベース部4は、閉状態において本体部3に平行に延在するとともに、当該本体部3の後方に対向配置される板状の構成である。ベース部4は、ヒンジ部5の逆側の端部(自由端部)からヒンジ部5に向けて延在する切欠き部11と、当該切欠き部11により形成される左右一対の板部12、13と、を有する。左右一対の板部12、13のそれぞれの先端部付近には、本体部3側に突出する係合部14、15を有する。係合部14、15にはそれぞれ、拘束ねじ6を通過させる貫通孔14a、15aが形成されている。また、一対の板部12、13における自由端側の先端部にはそれぞれ、係合部14、15からヒンジ部5の逆側に突出する突起部12a、13aが設けられている。なお、係合部14、15は、閉状態において第1係合部8及び第2係合部9の内側に配置されているが、第1係合部8及び第2係合部9の外側に配置される構成としてもよい。また、係合部14、15は、閉状態の本体部3に螺着された拘束ねじ6に係合してベース部4が開状態となることを抑制するものであれば、特に形状は限定されない。
【0024】
本実施形態のように、ベース部4に切欠き部11を設けることにより、図7に示すように、ベルトループ2a上であっても道具ホルダ1を腰ベルト2に装着することができる。つまり、ズボンのベルトループ2aに切欠き部11の位置を合わせて、一対の板部12、13がベルトループ2aの両側に配置されるように、腰ベルト2の内側にベース部4を差し込むことで、本体部3はベルトループ2a上に配置されることとなる。これにより、腰ベルト2における道具ホルダ1の装着可能な範囲が大きくなる。また、このように、一対の板部12、13でベルトループ2aを挟んだ場合には、腰ベルト2の延在方向(長手方向)に沿って道具ホルダ1が移動しようとすると板部12、13とベルトループ2aとが引っ掛かり、この移動を抑制する。そのため、例えば使用中の振動等による道具ホルダ1の位置ずれを防止することができる。
【0025】
以下に、道具ホルダ1における緩み抑制機構について説明する。本例の緩み抑制機構は、拘束ねじ6の側面に設けられる被係合部(本例では平面部6e及び段差6f)と、本体部3に設けられる弾性部(本例では板ばね10)とで構成することができる。図8は、拘束ねじ6の中心軸線を通る、道具ホルダ1の前後方向の断面図である。また、図9は、図8における道具ホルダ1のA-A断面を示す部分断面図である。図8、9に示すように、板ばね10の接触部10bが、拘束ねじ6の平面部6eに接触し、拘束ねじ6の回転を抑制している。すなわち、拘束ねじ6が緩み方向に回転しようとすると、板ばね10の接触部10bが、拘束ねじ6の径方向外側(図8、9における上方)に向けて弾性変形する。このように弾性変形した板ばね10の復元力により、接触部10bが平面部6eを拘束ねじ6の中心軸線に向けて(径方向内側に)付勢(押圧)し、拘束ねじ6の回転に対して抵抗力を付与する。このように、板ばね10が、拘束ねじ6の緩み方向の回転に対して抵抗力を付与するため、道具ホルダ1の使用中における振動等により拘束ねじ6が緩むことを抑制することができる。なお、本例では、周方向に複数の平面部6eを設けているため、拘束ねじ6の回転により、仮に1つの平面部6eを板ばね10の接触部10bが乗り越えたとしても、周方向に隣接する次の平面部6eに接触部10bが接触することによって緩み抑制効果が連続して発揮される。その結果、道具ホルダ1の脱落抑制効果を高めることができる。なお、板ばね10による抵抗力よりも大きな力で拘束ねじ6を緩み方向に回転し続ければ拘束ねじ6を螺脱することができ、拘束ねじ6の螺脱過程で、平面部6eに板ばね10の接触部10bが接触しなくなることにより、自動的に緩み抑制機構も解除される。
【0026】
なお、本例では、被係合部として、横断面が正方形となるように平面部6eを設けているが、拘束ねじ6が緩み方向に回転しようとする際に抵抗を生じる形状であれば、被係合部の形状は特に限定されない。例えば、横断面が長方形となるように長さの異なる平面部を設けてもよいし、横断面が四角形以外の多角形、または楕円形となる形状でもよい。あるいは、周方向に凹凸が繰返されるような形状としてもよい。なお、横断面が長方形となるように長さの異なる平面部を設けた場合には、長辺を構成する平面部に弾性部が接触する際に、緩み抑制効果が大きくなる。なお、平面部6eは、横断面が四角形となるように、すなわち拘束ねじ6の周方向に4箇所設けることが好ましい。これによれば、横断面が五角形以上の多角形である場合に比べて、緩み抑制効果を高く確保することができ、且つ、平面部6eの形成も容易となる。
【0027】
また、緩み抑制機構における弾性部を構成する板ばね10は、例えばコイルばね、松葉ばね等の他のばね部材としてもよいし、ゴムやエラストマ等の弾性部材としてもよい。弾性部としては、弾性変形する際の復元力により、拘束ねじ6が緩み方向に回転する際の抵抗を生じるものであればよい。また、板ばね10の接触部10bの形状を変更して、平面部6eとの接触面積を大きく、または小さくすることにより、緩み抑制効果を調整してもよい。
【0028】
また、本例では、拘束ねじ6の側面に段差6fを設けているため、板ばね10が段差6fを乗り越える際にも抵抗が生じる。これにより、拘束ねじ6の緩みを抑制する効果を高めることができる。このように、段差6fは、緩み抑制機構の被係合部として機能するため、平面部6eを設けずに、段差6fのみを設ける構成としてもよい。
【0029】
以下に、腰ベルト2に対する道具ホルダ1の着脱方法について説明する。道具ホルダ1を腰ベルト2に装着する際には、図4に示すように、拘束ねじ6を取り外し、開状態としたベース部4の自由端(突起部12a、13a)を腰ベルト2の内側に上方から差込んでいく。そして、係合部14、15が腰ベルト2の下端よりも下方に位置するまで差込み、本体部3とベース部4を閉じていく。閉状態となるまで本体部3とベース部4を閉じると、側面視において本体部3の第1係合部8及び第2係合部9が、ベース部4の係合部14、15に重なり合うように配置される。これにより、本体部3とベース部4により形成される環形状で腰ベルト2の周囲を、周方向に隙間なく取り囲むことができる。当該閉状態で、拘束ねじ6を、貫通孔8aから挿入し、貫通孔14a、及び貫通孔15aを通過させて、雄ねじ部6cをねじ孔9aに螺着させる。本体部3に装着された拘束ねじ6によって、ベース部4の開状態となる方向への移動が抑制される。これにより、腰ベルト2への道具ホルダ1の装着が完了する。この状態において、拘束ねじ6を取り外さない限りは、腰ベルト2の周囲を本体部3及びベース部4で隙間なく取り囲んだ閉状態が維持されるため、道具ホルダ1が脱落する虞はない。また、拘束ねじ6を本体部3に螺着する過程において、板ばね10の接触部10bが平面部6eに接触した時に、拘束ねじ6の回転に抵抗力が付与される。すなわち、本実施形態では、拘束ねじ6を装着するだけで自動的に緩み抑制機構が機能するよう構成されている。すなわち、緩み抑制機構を機能させるための特別な操作が不要であるため、道具ホルダ1の取付け操作が容易である。
【0030】
道具ホルダ1を腰ベルト2から取外す際には、拘束ねじ6を螺脱して取り外し、ヒンジ部5を支点に本体部3を開いて開状態とし、ベース部4を上方に引き上げて腰ベルト2の内側から引き抜くことで取り外しが完了する。本実施形態では、拘束ねじ6を螺脱する過程で、板ばね10の接触部10bが平面部6eに接触しなくなり、緩み抑制機構による緩み抑制機能が自動的に解除されるよう構成されている。すなわち、緩み抑制機構の機能を解除するための特別な操作が不要であるため、道具ホルダ1の取り外し操作も容易である。
【0031】
以上のような構成を有する本実施形態の道具ホルダ1によれば、帯状被装着体である腰ベルト2からの道具ホルダ1の脱落をより確実に防止して、安全性を高めることが可能となる。また、腰ベルト2に対する道具ホルダ1の着脱操作も容易である。
【0032】
また、本実施形態では、道具ホルダ1を腰ベルト2に装着した状態において、緩み抑制機構を構成する板ばね10及び拘束ねじ6の平面部6eが、外部に露出しない構成となっているため、緩み抑制機構が破損し難く、また、塵埃等の侵入による性能低下も起こり難い。また、板ばね10が本体部3に内蔵されているため、板ばね10の脱落、紛失等の虞も少ない。
【0033】
なお、腰ベルト2に道具ホルダ1を装着する過程において、拘束ねじ6を差し込む際には、本体部3とベース部4とを閉状態で維持しなければならないが、本実施形態では、ベース部4の自由端に突起部12a、13aを設けることにより、この操作を容易にしている。すなわち、閉状態において突起部12a、13aが、本体部3の第1係合部8及び第2係合部9よりも下方に突出するようにしたことにより、突起部12a、13aと本体部3の前面とを、前後両側から指で挟み込むことができる。このように、前後両側から本体部3とベース部4を挟み込んで支持することができるので、閉状態を容易に維持することができ、拘束ねじ6の差込み操作が容易となる。
【0034】
以下に、緩み抑制機構の変形例について説明する。図10A~10Cは、拘束ねじ6の側面に形成した溝21に、直径が弾性的に収縮するCリング22を配置した例を示している。なお、先の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0035】
溝21は、拘束ねじ6の周方向に沿って、全周にわたって延在する環状の溝であり、縮径したCリング22が入り込める程度の深さを有している。Cリング22は、環形状における周方向の一部が間欠した略C字状の金属製もしくは樹脂製の部材であり、図示のように断面は円形である。なお、Cリング22の断面形状は円形に限られるものではなく、例えば多角形等とすることも可能であるが、貫通孔8aを通過させる際にスムーズにCリング22を縮径させる観点から、円形であることが好ましい。
【0036】
図10A及び図10Cに示すCリング22の通常状態では、本体部3の第1係合部8の貫通孔8aの内径よりもCリング22の外径が大きくなっている。図10Bに示す縮径状態では、Cリング22の外径が貫通孔8aの内径以下となる。なお、Cリング22は、図10A、10Cに示す通常状態での内径が、軸本体6aの外径よりも小さくなっているため、溝21から抜け出さずに拘束ねじ6に保持される。
【0037】
閉状態とした本体部3及びベース部4に対して、拘束ねじ6を装着する際には、拘束ねじ6を締め付け方向に回転させる(ねじ部を螺着させる)ことにより、Cリング22が貫通孔8aの傾斜面8bに誘導されながら縮径し、貫通孔8aの内側に圧入される。そして、拘束ねじ6の装着が完了すると、図10Cに示すように、Cリング22がその復元力により元の状態に拡径する。これにより、拘束ねじ6が緩み方向に移動しようとすると、貫通孔8aの周縁部にCリング22が接触して抵抗力を付与するため、拘束ねじ6の緩みを抑制することができる。
【0038】
拘束ねじ6を本体部3から取り外す際には、上記抵抗力を越える力で緩み方向に拘束ねじ6を回転させることで、容易に拘束ねじ6を取り外すことができる。その際、Cリング22は、傾斜面8cに誘導されながら縮径し、貫通孔8aの内側を通過する。また、拘束ねじ6を取り外す過程において、自動的に緩み抑制機構の緩み抑制機能が解除されるため、操作が複雑となることもない。
【0039】
ここで、Cリング22が第1係合部8に接触して拘束ねじ6の移動に抵抗力が生じている間は、常に拘束ねじ6の雄ねじ部6cが、本体部3のねじ孔9aの雌ねじ部に螺合していることが好ましい。これによれば、拘束ねじ6の回転操作のみにより、Cリング22を貫通孔8aの内側に圧入したり、通過させたりすることができるので、大きな力が必要なく、容易に拘束ねじ6の着脱を行うことができる。
【0040】
なお、Cリング22に代えて、ゴム等の弾性材料で形成された環状のOリングを溝21に配置してもよい。この場合には、Oリングが弾性変形して潰れることで、貫通孔8aを通過することができる。Oリングが貫通孔8aを通過する際には、拘束ねじ6に抵抗力が付与されるため、拘束ねじ6の緩み抑制機構として機能し得る。
【0041】
図11A、11Bは、緩み抑制機構の他の変形例を示している。本例では、拘束ねじ6の軸本体6aに、小径部23が設けられており、当該小径部23が、本体部3に設けられた解除ボタン24の軸部24aに形成されたダルマ孔25に係合する構成としている。図11Aは、拘束ねじ6の中心軸線を通る断面図であり、図11Bは、図11AのB-B線における断面図である。小径部23は、軸本体6aにおける軸方向の一部に形成され、軸本体6aの他の部分よりも小径となっている部分である。
【0042】
解除ボタン24は、本体部3に内蔵されたコイルばね26によって、上方に付勢されている。ダルマ孔25の小径領域25aは、その内径が、小径部23の外径よりも大きく、軸本体6aの外径よりも小さくなっている。また、ダルマ孔25の大径領域25bの内径は、軸本体6aの外径よりも大きくなっている。
【0043】
図11A、11Bに示すように、拘束ねじ6を本体部3に螺着した状態において、ダルマ孔25の小径領域25aに拘束ねじ6の小径部23が嵌り込み、拘束ねじ6の軸方向の移動が抑制される。これにより、拘束ねじ6の緩みが抑制される。
【0044】
拘束ねじ6を本体部3から取り外す際には、本体部3の外部に露出する解除ボタン24の押圧部24bを押下げることにより、ダルマ孔25の大径領域25bに拘束ねじ6が配置され、拘束ねじ6の軸方向に規制が解除されるため、拘束ねじ6の取り外しが可能となる。
【0045】
図12は、緩み抑制機構の他の変形例を示している。本例では、解除ボタン24が、本体部3に内蔵された軸部27を支点として揺動可能に構成されている。解除ボタン24は、コイルばね26によって、上方に付勢されている押圧部24bと、押圧部24bに連結され、軸部27を挟んだ逆側に配置される傾斜部24cと、傾斜部24cの先端の係合部24dとを有する。この係合部24dが、拘束ねじ6の小径部23により形成される段差23aに係合することにより、拘束ねじ6の軸方向の移動が抑制される。これにより、拘束ねじ6の緩みが抑制される。
【0046】
拘束ねじ6を本体部3から取り外す際には、解除ボタン24の押圧部24bを押下げながら拘束ねじ6を螺脱し、引き抜く。押圧部24bを押下げると、軸部27を支点として傾斜部24cが揺動し、係合部24dが上方に移動することにより、係合部24dと段差23aとの係合が解除され、拘束ねじ6の取り外しが可能となる。
【0047】
なお、一直線状に延在する通常の拘束ねじ6に代えて、図13A、13Bに示すような、屈曲又は湾曲するエキセントリックねじ31、32を使用することにより、緩み抑制機構を構成してもよい。この場合、雄ねじ部6cに螺合する本体部3のねじ孔9aを除いて、本体部3の貫通孔8a及びベース部4の貫通孔14a、15aは長孔とする。このように、部分的に変形、または偏心させたエキセントリックねじ31、32を使用した場合には、ねじが回転し難くなるため、装着したねじの緩みを抑制することができる。
【0048】
ここで、本発明の環状構成部は、図14、15に示すような、本体部41と、差込み部材42とで構成してもよい。図14は本発明の他の実施形態としての道具ホルダ40を、腰ベルト2に装着した状態を示す斜視図であり、図15は、道具ホルダ40の背面図である。
【0049】
本例において、本体部41は、後方に突出する上側突出部43と下側突出部44とを有する。上側突出部43には、第1挿入孔43aが形成されており、下側突出部44には第2挿入孔44aが形成されている。
【0050】
図14、15に実線で示すように、差込み部材42は、第1挿入孔43aと第2挿入孔44aとに差し込まれて本体部3に保持され、これにより環状構成部が閉状態となる。また、図14、15に二点鎖線で示すように、少なくとも第2挿入孔44aから差込み部材42が引き抜かれた状態が開状態となり、環形状の開放された部分を通して、腰ベルト2を本体部41と差込み部材42の間に配置することができる。腰ベルト2の外側から本体部41を押し当て、第1挿入孔43aを通過した差込み部材42を腰ベルト2の内側に差し込み、さらに第2挿入孔44aに差し込むようにすることで、容易に道具ホルダ40の環状構成部を腰ベルト2に装着することができる。
【0051】
本例では、閉状態とした本体部41の下側突出部44に拘束ねじ6を差し込み、螺着する構成としている。本体部41に螺着した拘束ねじ6が差込み部材42を貫通し、または、差込み部材42に係合することにより当該差込み部材42の第2挿入孔44aからの抜け出しが抑制される。
【0052】
本例の道具ホルダ40においても、例えば、本体部41の下側突出部44に上記の板ばね10を内蔵し、拘束ねじ6の側面に設けた平面部6eに接触させるようにすることで、緩み抑制機構を設けることができる。なお、本例の道具ホルダ40は、上記の何れの緩み抑制機構を設けてもよい。
【0053】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、腰ベルト2に対する道具ホルダ1の装着は、閉状態の道具ホルダ1、40の側方から腰ベルト2の先端を環形状の内側に挿入するようにして行ってもよい。また、道具ホルダ1、40を腰ベルト2から取外す際も同様に、道具ホルダ1、40を閉状態としたまま腰ベルト2を側方に引き抜くようにして行ってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:道具ホルダ
2:腰ベルト(帯状被装着体)
2a:ベルトループ
3:本体部(環状構成部)
4:ベース部(環状構成部)
5:ヒンジ部
6:拘束ねじ
6a:軸本体
6b:ヘッド部
6c:雄ねじ部
6d:拡径部
6e:平面部(被係合部)
6f:段差(被係合部)
7:道具保持部
7a:フレーム
7b:ストッパー
8:第1係合部
8a:貫通孔
9:第2係合部
9a:ねじ孔
10:板ばね(弾性部)
10a:基部
10b:接触部
10c:変形部
11:切欠き部
12、13:板部
12a、13a:突起部
14、15:係合部
14a、15a:貫通孔
16:凹凸部
17:横溝
21:溝
22:Cリング
23:小径部
23a:段差
24:解除ボタン
24a:軸部
24b:押圧部
24c:傾斜部
24d:係合部
25:ダルマ孔
25a:小径領域
25b:大径領域
26:コイルばね
27:軸部
31、32:エキセントリックねじ
40:道具ホルダ
41:本体部(環状構成部)
42:差込み部材(環状構成部)
43:上側突出部
43a:第1挿入孔(挿入孔)
44:下側突出部
44a:第2挿入孔(挿入孔)
S:保持空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15