(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】流体供給システム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20230406BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2018225562
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】余湖 隆司
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-214406(JP,A)
【文献】特開2003-286573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/455
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体ラインと、
前記複数の流体ラインの下流端に接続される合流ラインと、
前記複数の流体ラインにそれぞれ設けられる第1三方弁と、
前記複数の流体ラインに前記第1三方弁を介して接続される第1パージラインと、
前記合流ラインに開閉弁を介して接続される第2パージラインと
を備え
、
前記第2パージラインの下流端は、前記合流ラインの上流端に接続され、
前記複数の流体ラインは、
流体の流量を制御する流量制御装置と、
前記流量制御装置から前記合流ラインに至る低圧ラインと、
前記低圧ラインに設けられる第2三方弁と
をそれぞれ備え、
前記低圧ラインに前記第2三方弁を介して接続される第3パージラインをさらに備える、流体供給システム。
【請求項2】
前記第2パージラインの上流端は、前記第1パージラインの
下流端に接続される、請求項
1に記載の流体供給システム。
【請求項3】
前記複数の流体ラインの少なくとも何れか1つをパージ処理するとき、当該流体ラインに前記第1三方弁を介して前記第1パージラインからパージガスを供給するととともに、前記開閉弁を介して前記第2パージラインから前記合流ラインにパージガスを供給する、請求項1
又は2に記載の流体供給システム。
【請求項4】
前記複数の流体ラインの少なくとも何れか1つをパージ処理するとき、前記第1パージライン及び前記第2パージラインからパージガスを供給するとともに、前記第2三方弁を介して前記第3パージラインから前記低圧ラインを経て前記合流ラインにパージガスを供給する、請求項
1から3の何れか一項に記載の流体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給システムに係り、特に複数の流体ラインのパージ処理が可能な流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のパージラインと、これらのパージラインにそれぞれ接続される複数の流体ラインと、これらの流体ラインにそれぞれ設けられる複数の開閉弁とを備えたガス供給装置が開示されている。この装置は、複数のパージラインにパージガスを常時供給しながら開閉弁を開作動することにより、パージラインを介して流体ラインから処理ガスを供給する。
【0003】
この装置には、複数の流体ラインが接続される共通ガス供給配管たる合流ラインは存在しないため、流体供給システムにおける処理ガスの残留、混合、反応、及び反応物の発生を低減することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の場合には、複数のパージラインにパージガスを常時供給しなければならないため、パージガスの消費が膨大な量となり、流体供給システムの運用コストが増大するおそれがある。また、処理ガスはパージガスと常時混合することとなるため、処理ガスの純度が低下し、処理プロセスで製造する例えば半導体基板の生成膜などの性状が悪化するおそれもある。
【0006】
従って、合流ラインを備えた流体供給ラインにおいて、合流ラインにおける処理ガスなどの流体の残留、混合、反応、及び反応物の発生を低減可能な信頼性の高い流体供給システムが求められている。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、合流ラインにおける流体の残留、混合、反応、及び反応物の発生を低減することができる、信頼性の高い流体供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様として実現することができる。
本態様に係る流体供給システムは、複数の流体ラインと、複数の流体ラインの下流端に接続される合流ラインと、複数の流体ラインにそれぞれ設けられる第1三方弁と、複数の流体ラインに第1三方弁を介して接続される第1パージラインと、合流ラインに開閉弁を介して接続される第2パージラインとを備え、第2パージラインの下流端は、合流ラインの上流端に接続され、複数の流体ラインは、流体の流量を制御する流量制御装置と、流量制御装置から合流ラインに至る低圧ラインと、低圧ラインに設けられる第2三方弁とをそれぞれ備え、低圧ラインに第2三方弁を介して接続される第3パージラインをさらに備える。
【0008】
また、本態様に係る前述した流体供給システムにおいて、第2パージラインの上流端は、第1パージラインの下流端に接続される。
【0009】
また、本態様に係る前述した流体供給システムにおいて、複数の流体ラインの少なくとも何れか1つをパージ処理するとき、当該流体ラインに第1三方弁を介して第1パージラインからパージガスを供給するととともに、開閉弁を介して第2パージラインから合流ラインにパージガスを供給する。
【0011】
また、本態様に係る前述した流体供給システムにおいて、複数の流体ラインの少なくとも何れか1つをパージ処理するとき、第1パージライン及び第2パージラインからパージガスを供給するとともに、第2三方弁を介して第3パージラインから低圧ラインを経て合流ラインにパージガスを供給する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の前述した態様によれば、合流ラインにおける流体の残留、混合、反応、及び反応物の発生を低減することができる、信頼性の高い流体供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る流体供給システムの系統図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る流体供給システムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の各実施形態に係る流体供給システムについて説明する。なお、以降に説明する流体が流れる各ラインは配管であっても良いし、流路が形成されたマニホールドであっても良い。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る流体供給システム1の系統図を示す。流体供給システム1は、種々の流体が流れる流体ライン4を複数配列して構成されている。
【0015】
図1の流体供給システム1は、半導体製造装置のガス供給システムなどに用いられ、例えば7本の流体ライン4が設けられている。各流体ライン4には、異なるGAS1~7を個別に供給することが可能である。なお、以降、流体ライン4を流れる流体を処理ガスということもある。
【0016】
各流体ライン4には、GAS1が流れる流体ライン4を代表して符号を付すと、矢印で示す流れ方向の順に、フィルタ6、開閉弁8、レギュレータ10、圧力計12、開閉弁14、第1三方弁16、流体の流量を制御する流量制御装置18、開閉弁20が配置されている。各流体ライン4の下流端4aには1本の合流ライン22が接続されている。
【0017】
流体供給システム1を半導体製造装置のガス供給システムとして用いる場合、流体ライン4から合流ライン22に流入した処理ガスは、処理ガスの反応を行うためのチャンバ24などに供給される。流体供給システム1には、各流体ライン4を流れた処理ガスをパージして不活性ガスで置換するための第1パージライン26が設けられている。
【0018】
本実施形態の第1パージライン26は、例えば窒素(N2)ガスが流れるN2パージラインであって、矢印で示す流れ方向の順に、流体ライン4と同様のフィルタ6、開閉弁8、レギュレータ10、圧力計12、開閉弁14と、逆止弁28とが配置されている。第1パージライン26は、逆止弁28の下流において、各流体ライン4に第1三方弁16を介して接続されている。
【0019】
さらに、本実施形態の流体供給システム1には第2パージライン30が設けられている。第2パージライン30には開閉弁32が設けられ、第2パージライン30は合流ライン22に開閉弁32を介して接続される。第2パージライン30の下流端30aは、合流ライン22の上流端(末端)22aに接続されている。また、第2パージライン30の上流端30bは、第1パージライン26の下流端(末端)26aに接続されている。
【0020】
各流体ライン4の少なくとも何れか1つをパージ処理するときは、処理ガスを流した流体ライン4に第1三方弁16を介して第1パージライン26からN2ガス(パージガス)を供給し、この流体ライン4をパージ処理する。併せて、合流ライン22に開閉弁32を介して第2パージライン30からN2ガスを供給し、合流ライン22をパージ処理する。
【0021】
第1及び第2パージライン26、30によるパージ処理は、図示しない制御ユニットからの指令に基づいて、各第1三方弁16の弁体の切り換え及び開閉弁32の開閉によって自動で行われる。なお、第1及び第2パージライン26、30によるパージ処理は、同時に行っても良いし、第1パージライン26によるパージ処理後に第2パージライン30によるパージ処理を行うようにしても良い。
【0022】
以上のように、本実施形態の流体供給システム1は、合流ライン22に接続された第2パージライン30を備えることにより、合流ライン22における処理ガスの残留、混合、反応、及び反応物の発生を低減することができる。
具体的には、1本の流体ライン4に処理ガスを流した後、この流体ライン4に第1三方弁16を介して第1パージライン26からN2ガスを供給し、この流体ライン4をパージ処理する。
【0023】
併せて、合流ライン22に開閉弁32を介して第2パージライン30からN2ガスを供給し、合流ライン22をパージ処理する。これにより、合流ライン22を備えた流体供給システム1において、流体ライン4のパージ処理に加え、合流ライン22のためだけのパージ処理を別個に行うことができる。従って、流体ライン4のパージ処理後に合流ライン22に処理ガスが残留し、別の流体ライン4に異なる処理ガスを流した場合、合流ライン22において異なる処理ガスが混合して反応し、反応物が合流ライン22に発生するようなことを抑制可能である。
【0024】
また、第2パージライン30の下流端30aは、合流ライン22の上流端22aに接続される。これにより、例えば、合流ライン22の最も上流側に位置する流体ライン4にGAS7を流した後であっても、合流ライン22に残留したGAS7を上流端22aから確実にパージ処理することができる。従って、合流ライン22における処理ガスの残留、混合、反応、及び反応物の発生をより一層確実に低減することができる。
【0025】
また、合流ライン22の最も上流側に位置する流体ライン4を流れるGAS7の比重が他のGAS1~6よりも大きい場合、GAS7が流れる流体ライン4の使用後に他の流体ライン4を使用してパージ処理したとしても合流ライン22にGAS7が残留し易い。このような場合であっても、合流ライン22に残留した処理ガスを合流ライン22の上流端22aから確実にパージ処理可能である。
【0026】
また、第2パージライン30の上流端30bは、第1パージライン26の下流端26aに接続される。これにより、例えば第1パージライン26が既に設けられている場合、第1パージライン26を利用し、その下流端26aから第2パージライン30を延設するだけの簡単な改造により、第2パージライン30によるパージ処理を行うことができる。
【0027】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る流体供給システム1について説明する。
図2は、本実施形態に係る流体供給システム1の系統図を示す。本実施形態の流体供給システム1は、第1実施形態で説明した第1及び第2パージライン26、30に加え、第3パージライン34をさらに備えている。
【0028】
また、各流体ライン4には、流量制御装置18から合流ライン22に至る範囲に低圧ライン4bがそれぞれ形成されている。低圧ライン4bは、流量制御装置18において弁体などにより流路が絞られることによって、流体ライン4の流量制御装置18の下流側に形成される。各低圧ライン4bの開閉弁20の下流側には、それぞれ第2三方弁36が設けられている。
【0029】
本実施形態の第3パージライン34は、例えばアルゴン(Ar)ガスが流れるArパージラインであって、矢印で示す流れ方向の順に、流体ライン4と同様のフィルタ6、開閉弁8、レギュレータ10、圧力計12、開閉弁14、流量制御装置18、開閉弁20が配置されている。第3パージライン34は、開閉弁14の下流において、各低圧ライン4bに第2三方弁36を介して接続されている。なお、
図2においては、GAS1が流れる流体ライン4を代表して低圧ライン4b及び第2三方弁36の符号を付している。
【0030】
第3パージライン34は、
図2に示すように独立して設けても良いし、図示しない既存のパージラインから分岐して形成しても良い。また、第1パージライン26又は第2パージライン30と図示しない三方弁を介して接続し、当該三方弁の切り換えによって第1パージライン26又は第2パージライン30から分流し、第3パージライン34にパージガスを供給しても良い。
【0031】
本実施形態の場合、各流体ライン4の少なくとも何れか1つをパージ処理するときは、第1実施形態の場合と同様に第1及び第2パージライン26、30によるパージ処理を行う。併せて、処理ガスを流した流体ライン4の低圧ライン4bに設けられた第2三方弁36を介して第3パージライン34から該当する低圧ライン4bを経て合流ライン22にArガス(パージガス)を供給し、この低圧ライン4bをパージ処理する。
【0032】
第3パージライン34によるパージ処理は、前述した制御ユニットからの指令に基づいて、該当する第2三方弁36の弁体の切り換えによって自動で行われる。なお、第3パージライン34によるパージ処理は、第1及び第2パージライン26、30によるパージ処理と同時に行っても良いし、第1及び第2パージライン26、30によるパージ処理後に行っても良い。
【0033】
また、第1パージライン26によるパージ処理後に、第2及び第3パージライン30、34によるパージ処理を同時に行っても良いし、第1パージライン26によるパージ処理、第3パージライン34によるパージ処理を順に行った後に第2パージライン30によるパージ処理を行うようにしても良い。
【0034】
以上のように、本実施形態の流体供給システム1は、低圧ライン4bに接続された第3パージライン34を備えることにより、低圧ライン4b及び合流ライン22における処理ガスの残留、混合、反応、及び反応物の発生をより一層確実に低減することができる。具体的には、1本の流体ライン4に処理ガスを流した後、この流体ライン4を第1パージライン26によりパージ処理し、第2パージライン30により合流ライン22をパージ処理し、さらに、第3パージライン34により低圧ライン4bをパージ処理することができる。
【0035】
低圧ライン4bでは、流量制御装置18において弁体などにより流路が絞られることによって低圧となるため、流体ライン4の他の部位に比べて処理ガスが残留し易い。しかし、第3パージライン34によるパージ処理を行うことにより、低圧ライン4b、及びその下流に位置する合流ライン22を確実にパージ処理することができる。従って、低圧ライン4b、及び合流ライン22における処理ガスの残留、混合、反応、及び反応物の発生をより一層確実に低減することができ、流体供給システム1の信頼性をさらに高めることができる。
【0036】
以上で本発明の各実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、流体ライン4、第1~第3パージライン26、30、34に設けられる機器は、前述したものに限定されない。また、第1~第3パージライン26、30、34に使用されるパージガスは、前述したものに限定されない。
【0037】
また、流体供給システム1は、半導体製造装置のガス供給システムに限らず、液体の流体供給システムにも適用可能であり、また、半導体製造プロセス以外の種々のプロセスにも用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 流体供給システム
4 流体ライン
4a 流体ラインの下流端
4b 低圧ライン
14 開閉弁
16 第1三方弁
18 流量制御装置
22 合流ライン
22a 合流ラインの上流端(末端)
26 第1パージライン
26a 第1パージラインの下流端(末端)
30 第2パージライン
30a 第2パージラインの下流端
30b 第2パージラインの上流端
34 第3パージライン
36 第2三方弁