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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】バイポーラ膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/22 20060101AFI20230406BHJP
   B01J 43/00 20060101ALI20230406BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230406BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20230406BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20230406BHJP
   B01J 39/19 20170101ALI20230406BHJP
   B01J 39/20 20060101ALI20230406BHJP
   B01J 41/13 20170101ALI20230406BHJP
   B01J 41/14 20060101ALI20230406BHJP
   B01J 47/12 20170101ALI20230406BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230406BHJP
   B01D 67/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C08J5/22
B01J43/00
B32B27/00 Z
B01J39/05
B01J39/07
B01J39/19
B01J39/20
B01J41/13
B01J41/14
B01J47/12
B01D69/12
B01D67/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018235406
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097647
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503361709
【氏名又は名称】株式会社アストム
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】岸野 剛之
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲二
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190417(JP,A)
【文献】特開2018-003059(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179672(WO,A1)
【文献】特開2009-039694(JP,A)
【文献】特開2000-212306(JP,A)
【文献】特開平04-228591(JP,A)
【文献】米国特許第04253900(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0320053(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106310950(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
B01D 53/22
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/44 - 1/44
B01J 39/00 - 49/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層とが接合されてなるバイポーラ膜において、
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面には、水解離促進触媒が分布しており、
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面に跨って多孔質シートが含まれており、
該多孔質シートの厚みをTとしたとき、前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面が、上記厚みTの3/10~7/10の箇所に位置してなり、
引っ張り速度100mm/分におけるT形剥離強度が0.5N/cm以上である、
ことを特徴とするバイポーラ膜。
【請求項2】
前記水解離促進触媒が、錫塩化物またはルテニウム塩化物である請求項1に記載のバイポーラ膜。
【請求項3】
前記多孔質シートの空隙率が70~90%の範囲にある請求項1に記載のバイポーラ膜。
【請求項4】
前記多孔質シートが、不織布繊維シートである請求項に記載のバイポーラ膜。
【請求項5】
前記不織布繊維シートの目付量が、3~50g/m2の範囲にあり、繊維径が8~30μmの範囲にある請求項に記載のバイポーラ膜。
【請求項6】
イオン交換樹脂層と、該イオン交換樹脂層とは逆極性のカウンターイオン交換樹脂層とが接合され、その接合界面には水解離反応促進用の触媒が分布してなるバイポーラ膜の製造方法において、
多孔質シート、剥離フィルム、イオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解しており、25℃での粘度が5.0~55dPa・sの高粘度溶液である第1の有機溶媒溶液、水解離促進触媒が分散ないし溶解した触媒液、及びカウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解しており、前記第1の有機溶媒溶液よりも低粘度の溶液である第2の有機溶媒溶液を用意し、さらに下記の(a-1)~(a-3)、(b)、及び(c-1)~(c-3)の工程を含むことを特徴とするバイポーラ膜の製造方法:
(a-1)前記剥離フィルムの一方の表面に、第1の有機溶媒溶液を塗布して第1の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(a-2)前記第1の有機溶媒溶液の塗布層に、前記多孔質シートを重ね合わせ、該多孔質シートの厚み方向途中まで、前記第1の有機溶媒溶液を含浸させる工程;
(a-3)前記多孔質シートが重ね合わされた状態で、前記第1の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥して、該重ね合わせ面から多孔質シートの厚み方向途中までの領域にイオン交換樹脂層を形成することにより、剥離フィルム、イオン交換樹脂層及び多孔質シートが積層されたイオン交換樹脂シートを得る工程;
(b)前記イオン交換樹脂シートの多孔質シート側の表面に、前記触媒液を塗布して該多孔質シート内に侵入させ、次いで乾燥することにより、前記イオン交換樹脂層の表面に、前記触媒を分布させる工程;
(c-1)前記第2の有機溶媒溶液を、前記イオン交換樹脂シートの多孔質シートの表面に塗布して、該第2の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(c-2)前記第2の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥してカウンターイオン交換樹脂層を形成する工程;
(c-3)次いで、前記剥離フィルムを剥離することにより、バイポーラ膜を作製する工程;
【請求項7】
前記多孔質シートとして、不織布繊維シートを使用する請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記イオン交換樹脂形成用ポリマーとして、イオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(a-3)において、前記多孔質シートが重ねあわされた状態で、前記塗布層を乾燥した後、該イオン交換樹脂前駆体にイオン交換基を導入する請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記カウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーとして、カウンターイオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(c-2)において、カウンターイオン交換樹脂前駆体を含む塗布層を乾燥した後、カウンターイオン交換樹脂前駆体にカウンターイオン交換基を導入する請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン交換膜とアニオン交換膜とが貼り合わされたバイポーラ膜及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ膜は、カチオン交換膜とアニオン交換膜が貼り合わされた複合膜であり、水溶液中に浸漬されたバイポーラ膜の両側に電圧を印加することにより、膜内の水をプロトンと水酸化物イオンとに解離する水解と呼ばれる現象を生じさせる機能を有する。この機能を利用して、バイポーラ膜とカチオン交換膜やアニオン交換膜とを組み合わせて電気透析を行うことにより、例えば中性塩から酸、アルカリを製造できる。
【0003】
このようなバイポーラ膜は、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを貼り合わせた構造を有しているため、カチオン交換膜とアニオン交換膜との界面で剥離を生じ易いという問題がある。
かかる問題を解決するための手段として、イオン交換性を有するペースト状の接着剤を用いて、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを貼り合わせ、この後に、適宜、放射線照射等により接着剤を硬化させる等の手段が、古くは特許文献1等により提案されている。
しかしながら、このような接着剤を用いて貼り合わせたバイポーラ膜は、水中に浸漬したときに、カチオン交換膜とアニオン交換膜との間で膨潤による反りの程度が異なっているため、やはり剥離を効果的に防止することが困難である。
【0004】
また、カチオン交換膜とアニオン交換膜との剥離を確実に回避するための手段として、特許文献2には、イオン交換基の導入に適した官能基を有する高分子膜状物を2枚用意し、2枚の高分子膜状物の間に、ポリエステル、ポリビニルアルコールまたはセロファンからなる被覆フィルム(剥離フィルム)が位置するようにして三者を重ね合わせて一体化し、この一体化物をスルホン化することによりカチオン交換基を導入し、この後、被覆フィルムを剥離し、被覆フィルムが剥がされた面にアニオン交換基を導入するという方法が提案されている。
この方法では、接合することなく一体化されている高分子膜の一方の側にカチオン交換膜が形成され、該高分子膜の他方の側にアニオン交換膜が形成されるため、両者が剥離するという問題は確実に回避されている。
【0005】
ところで、バイポーラ膜では、低電圧で水をプロトンと水酸化物イオンとに解離させるために、カチオン交換膜とアニオン交換膜との界面に、水解離を促進する水解離促進触媒(例えば塩化錫など)を設けるという手法が知られている。
【0006】
上記の特許文献2で提案されている方法では、水解離促進触媒を設けることができない。カチオン交換膜を形成している樹脂基材とアニオン交換膜を形成している樹脂基材とが一体化されており、後からカチオン交換基やアニオン交換基が導入されるため、両膜の界面に水解離促進用触媒を分布させることができないからである。
従って、特許文献2の手法により得られるバイポーラ膜は、水解電圧を低くすることができず、改善の余地がある。
【0007】
また、イオン交換膜は、通常、補強材として、多孔性シートが膜内に設けられている。このような多孔性シートにより、機械的強度を向上させ、膨潤等による変形を有効に回避するためである。従って、こうした膜内に多孔性シートを有するイオン交換膜を用いて、前記バイポーラ膜を製造しようとすると、該イオン交換膜(基材イオン交換膜)の表面に逆極性のカウンターイオン交換樹脂のコーティング層を形成させるものになる(例えば、特許文献3)。この場合、多孔性シートは基材イオン交換膜の内部に存在しているため、該基材イオン交換膜と、前記カウンターイオン交換樹脂のコーティング層との界面に実質作用を及ぼすものではない。従って、これら両層の接合強度の向上には何も寄与しない。
また、前記かかる多孔性シートとしては、多孔質化されたポリオレフィン樹脂等の樹脂シートや織布繊維シートが使用されているが、コストダウンの観点から、不織布繊維シートを用いることが提案されている。即ち、前記特許文献3では、バイポーラ膜の補強材の例として、不織布が例示されている。
しかし、当然のことながら、不織布繊維シートは強度が低いため、実際に補強材としては使用されておらず、特許文献3の実施例でも、補強材として不織布は使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭51-4113号公報
【文献】特公平1-14251号公報
【文献】特許第6166814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、カチオン交換膜とアニオン交換膜との界面に水解離促進触媒が分布しており、低電圧で水を解離することができるばかりか、カチオン交換膜とアニオン交換膜との界面での剥離も有効に防止されたバイポーラ膜及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、補強材として不織布繊維シートが使用されているバイポーラ膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層とが接合されてなるバイポーラ膜において、
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面には、水解離促進触媒が分布しており、
前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面に跨って多孔質シートが含まれていることを特徴とするバイポーラ膜が提供される。
【0011】
本発明のバイポーラ膜においては、
(1)前記カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面が、多孔質シートの厚みの2/10~8/10に位置していること、
(2)前記水解離促進触媒が、錫塩化物またはルテニウム塩化物であること、
(3)前記多孔質シートの空隙率が70~90%の範囲にあること、
(4)前記多孔質シートが、不織布繊維シートであること、
(5)前記不織布繊維シートの目付量が、3~50g/mの範囲にあり、繊維径が8~30μmの範囲にあること、
が好適である。
【0012】
本発明によれば、また、イオン交換樹脂層と、該イオン交換樹脂層とは逆極性のカウンターイオン交換樹脂層とが接合され、その接合界面には水解離反応促進用の触媒が分布してなるバイポーラ膜の製造方法において、
多孔質シート、剥離フィルム、イオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第1の有機溶媒溶液、水解離促進触媒が分散ないし溶解した触媒液、及びカウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第2の有機溶媒溶液を用意し、さらに下記の(a-1)~(a-3)、(b)、及び(c-1)~(c-3)の工程を含むことを特徴とするバイポーラ膜の製造方法が提供される。
(a-1)前記剥離フィルムの一方の表面に、第1の有機溶媒溶液を塗布して第1の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(a-2)前記第1の有機溶媒溶液の塗布層に、前記多孔質シートを重ね合わせ、該多孔質シートの厚み方向途中まで、前記第1の有機溶媒溶液を含浸させる工程;
(a-3)前記多孔質シートが重ね合わされた状態で、前記第1の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥して、該重ね合わせ面から多孔質シートの厚み方向途中までの領域にイオン交換樹脂層を形成することにより、剥離フィルム、イオン交換樹脂層及び多孔質シートが積層されたイオン交換樹脂シートを得る工程;
(b)前記イオン交換樹脂シートの多孔質シート側の表面に、前記触媒液を塗布して該多孔質シート内に侵入させ、次いで乾燥することにより、前記イオン交換樹脂層の表面に、前記触媒を分布させる工程;
(c-1)前記第2の有機溶媒溶液を、前記イオン交換樹脂シートの多孔質シートの表面に塗布して、該第2の有機溶媒溶液の塗布層を形成する工程;
(c-2)前記第2の有機溶媒溶液の塗布層を乾燥してカウンターイオン交換樹脂層を形成する工程;
(c-3)次いで、前記剥離フィルムを剥離することにより、バイポーラ膜を作製する工程;
【0013】
本発明の製造方法によれば、
(1)前記多孔質シートとして、不織布繊維シートを使用すること、
(2)前記イオン交換樹脂形成用ポリマーとして、イオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(a-3)において、前記多孔質シートが重ねあわされた状態で、前記塗布層を乾燥した後、該イオン交換樹脂前駆体にイオン交換基を導入すること、
(3)前記カウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーとして、カウンターイオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、前記工程(c-2)において、カウンターイオン交換樹脂前駆体を含む塗布層を乾燥した後、カウンターイオン交換樹脂前駆体にカウンターイオン交換基を導入すること、
(4)前記第1の有機溶媒溶液として、25℃での粘度が1.0~60dPa・sの高粘度溶液を使用し、前記第2の有機溶媒溶液として、該第1の有機溶媒溶液よりも低粘度の溶液を使用すること、
が好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイポーラ膜は、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層とを跨ぐようにして多孔質シートが配置されているため、カチオン交換膜とアニオン交換膜との接合強度を高め、両膜の剥離を有効に回避することができる。しかも、多孔質シートがカチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層とを跨いでいるため、多孔質シートとして不織布繊維シートを用いた場合においても、不織布繊維シートの強度不足などを有効に回避することができ、安価な不織布繊維シートをバイポーラ膜の補強材として有効に使用することができる。
さらに、本発明によれば、多孔質シート内に水の解離を促進する水解離促進触媒が浸透しており、カチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面に水解離促進触媒を分布している。これにより、本発明のバイポーラ膜は、低電圧で水の解離を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のバイポーラ膜の概略断面構造を示す図。
図2】本発明のバイポーラ膜の製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<バイポーラ膜BPの構造>
図1を参照して、本発明のバイポーラ膜BPは、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとが対面して設けられているが、その接合界面Sを跨ぐようにして多孔質シート1が設けられており、さらに、この接合界面S上には、水解離促進触媒が分布した触媒層3が形成されている。
【0017】
即ち、本発明のバイポーラ膜BPでは、多孔質シート1が、バイポーラ膜BPの補強材としての機能と同時に、且つカチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合材としての機能を有している。即ち、多孔質シート1がカチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの接合界面Sを跨ぐようにして設けられているため、格別の接着剤を用いることなく、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとが接合固定されている。
【0018】
また、上記のバイポーラ膜BPでは、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの接合界面に、水解離促進触媒が分布した触媒層3が設けられている。かかる触媒層3の存在により、低電圧で水の解離を促進させることができる。
尚、かかる触媒層3は、カチオン交換樹脂層C或いはアニオン交換樹脂層Aの何れか一方に保持された多孔質シート1に対して、この多孔質シート1の露出表面側から水解離促進触媒の触媒液を供給して浸透させ、カチオン交換樹脂層C或いはアニオン交換樹脂層Aの表面に該触媒液の層を形成し、次いで乾燥することにより形成することができる。即ち、この後、対イオンとなるアニオン交換樹脂層A或いはカチオン交換樹脂層Cを形成すればよいわけである。かかる方法については、後述する。
【0019】
本発明において、カチオン交換樹脂層C及びアニオン交換樹脂層Aは、それぞれ、それ自体公知のイオン交換樹脂により形成され、用途に応じた厚みを有していればよい。
【0020】
また、多孔質シート1としては、イオン交換樹脂の補強材として公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンやポリ塩化ビニルなどからなる多孔質フィルム、或いは織布、不織布などの繊維シートが使用される。
さらに、適度な強度を維持しながら通電性を確保するという点で、この多孔質シート1の空隙率は70~90%、好ましくは75~85%の範囲にあることが好適である。
【0021】
本発明においては、コスト等の観点から不織布繊維シートが多孔質シート1として最も好適である。
このような不織布繊維シートは、目付量が3~50g/m、好ましくは5~30g/mの範囲にあり、繊維径が8~30μm、好ましくは10~20μmの範囲にあることが、このバイポーラ膜BPに適度な強度を付与する上で好ましい。
【0022】
尚、上記の不織布繊維シートの繊維は、熱可塑性樹脂により形成されるが、かかる熱可塑性樹脂の例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、5-メチル-1-ヘプテン等のα-オレフィンの単独重合体また共重合体であるオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフロオロエチレン-ペルフロオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等のフッ素系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂等を挙げることができる。
本発明において多孔質シート1として好適に使用される不織布繊維シートでは、イオン交換膜として使用したときの膜特性(機械的強度、化学的安定性、耐薬品性)の観点から、ポリエステル系樹脂繊維、オレフィン系樹脂繊維(特に、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)が好ましく、ポリエチレン繊維が最も好ましい。
【0023】
また、本発明において、上記多孔質シート1は、その厚みをTとしたとき、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの接合界面Sが、該厚みTの2/10~8/10の箇所、より好適には、3/10~7/10の箇所に位置していることが、バイポーラ膜BPの強度をバランスよく確保するために好適である。
さらに、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの厚みは、ほぼ同等であるが、カチオン交換樹脂層Cの厚みt1とアニオン交換樹脂層Aの厚みt2との合計厚み(t1+t2)の50~90%程度、好ましくは60~85%程度が、多孔質シート1の厚みTであることが、このバイポーラ膜BPに適度な強度、形状安定性を確保する上で好適である。また、バイポーラ膜の厚みとしては適当な強度と抵抗の観点から、30~300μm、好ましくは50~200μmの範囲が好適である。さらに取り扱い性の観点から強度としては破裂強度で50~3000kPa、好ましくは100~2000kPaの範囲が好適である。
【0024】
本発明において、水解離促進触媒としては、鉄、スズ、クロム、ルテニウム等の重金属イオンを放出し得る塩類、酸化物等が使用され、好ましくは、これら重金属の塩化物、特にスズ、ルテニウムの塩化物が使用される。
このような水解離促進触媒は、一般に、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの接合界面S上に、重金属換算で、1~5000mg/m、好ましくは5~2000mg/mの量で分布しているのがよい。
【0025】
また、カチオン交換樹脂層C及びアニオン交換樹脂層Aは、何れも有機溶媒に溶解し塗布により形成可能なイオン交換樹脂により形成されるものであり、例えば、ビニル系、スチレン系、アクリル系等のエチレン系不飽和二重結合を有する単量体を重合して得られるポリマー、または、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾールなどの主鎖に芳香環を含有するポリマーなどの炭化水素系の樹脂に、イオン交換能を発現させるイオン交換基(例えば、カチオン交換基或いはアニオン交換基)が導入された構造を有するものである。
【0026】
尚、イオン交換基は、水溶液中で負又は正の電荷となり得る官能基であり、カチオン交換基の場合には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、一般的に、強酸性基であるスルホン酸基が好適である。また、アニオン交換基の場合には、1~3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基等が挙げられ、一般的に、強塩基性である4級アンモニウム基や4級ピリジニウム基が好適である。
【0027】
例えば、カチオン交換樹脂の例としては、α-ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体、ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体、それらの塩類およびエステル類等を重合させることにより得られたポリマーを挙げることができる。
また、アニオン交換樹脂の例としては、ビニルベンジルトリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体、それらの塩類及びエステル類を重合させることにより得られたポリマーを挙げることができる。
【0028】
これらのイオン交換樹脂は、有機溶媒に溶解した溶液を調製することができる限りにおいて、架橋構造が導入されていてもよく、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタリン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物に代表される多官能性単量体によって架橋されていてもよい。また、他の単量体、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が共重合されている共重合体であってもよい。
【0029】
本発明において、カチオン交換樹脂層C及びアニオン交換樹脂層Aを形成するイオン交換樹脂は、そのイオン交換容量が0.5~3.0meq/g、特に0.8~2.5meq/gの範囲にあることが好ましい。特に、このイオン交換容量が0.8meq/g以上のときには膜抵抗が十分に低く、高い膜性能となり、2.5meq/g以下のときには電解液への溶解を抑制でき、また、膨潤の程度をより効果的に抑えることができ、形状変化や膜剥離を生じ難くなる。従って、このようなイオン交換容量となるように、カチオン交換基或いはアニオン交換基が導入されていることが好ましい。
尚、図1の例では、カチオン交換樹脂層Cの表面上に、水解離促進触媒が分布した触媒層3を介してアニオン交換樹脂層Aが形成されているが、勿論、これとは逆に、アニオン交換樹脂層Aの表面上に触媒層3を介してカチオン交換樹脂層Cを設けた構造とすることもできる。
【0030】
<バイポーラ膜BPの製造>
図2を参照して、上述した本発明のバイポーラ膜BPは、多孔質シート1、剥離フィルム10、イオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第1の有機溶媒溶液、水解離促進触媒3が分散ないし溶解した触媒液、及びカウンターイオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第2の有機溶媒溶液を用い、図2に示されている(a-1)~(a-3)、(b)、及び(c-1)~(c-3)の工程にしたがって製造される。
【0031】
第1の有機溶媒溶液及び第2の有機溶媒溶液は、何れも、イオン交換樹脂として、カチオン交換樹脂形成用ポリマー或いはアニオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解しているものであり、第1の有機溶媒溶液中にカチオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している場合には、第2の有機溶媒溶液中にはアニオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解したものとなり、これとは逆に、第1の有機溶媒溶液中に溶解しているイオン交換樹脂用ポリマーがアニオン交換樹脂を形成するものであるとき、第2の有機溶媒溶液中には、カチオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解したものである。
【0032】
第1の有機溶媒溶液或いは第2の有機溶媒溶液に溶解しているイオン交換樹脂形成用ポリマーとしては、例えばイオン交換基が既に導入されているカチオン交換樹脂或いはアニオン交換樹脂であってよいが、代わりに、まだイオン交換基が導入されていないイオン交換樹脂前駆体であってもよい。このようなイオン交換樹脂前駆体が溶解している有機溶媒溶液を使用した場合には、その後、イオン交換基を導入するための処理が必要である。
【0033】
イオン交換樹脂前駆体は、イオン交換基導入可能な官能基を有するポリマーであり、例えば、カチオン交換基導入用官能基を有するポリマーの例としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン類等の単量体を重合して得られるものを挙げることができる。また、アニオン交換基導入用官能基を有するポリマーの例としては、スチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン等の単量体を重合して得られるものを挙げることができる。
勿論、これらのイオン交換樹脂前駆体は、有機溶媒に溶解し得る限りにおいて、前述したジビニル化合物等の多官能性単量体を共重合させることによって架橋構造が導入されたものであってもよいし、必要により、他の単量体が共重合されていてもよい。
このようなイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液を用いる場合は、かかる溶液に、イオン交換基導入剤を含有させておき、樹脂層の形成と並行してイオン交換基の導入が実施されてもよい。イオン交換基導入剤としては、例えば、ポリアルキルベンゼンスルホン酸(例えば、1,3,5-トリメチルベンゼン-2-スルホン酸、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン-3-スルホン酸、1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゼン-6-スルホン酸等)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-オクタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,6-ヘキサンジアミンなどが挙げられる。あるいは、イオン交換樹脂前駆体の樹脂層を作製した後、上記イオン交換基導入剤で処理してイオン交換基を導入しても良い。
【0034】
上記のイオン交換樹脂形成用ポリマー或いはイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液の調製に用いる有機溶媒としては、上述したポリマーを溶解し得るものであれば特に制限されないが、乾燥によって容易に除去できるという観点から、エチレンクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、メチルアルコール、酢酸ブチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンなどが1種単独で或いは2種以上を混合した混合溶媒の形で好適に使用される。
【0035】
また、以下の説明から理解されるように、第1の有機溶媒溶液は塗布層11を形成するものであり、この塗布層11に多孔質シート1を重ねて多孔質シート1中に塗布層11を侵入させる。従って、第1の有機溶媒溶液は、適宜の厚みの塗布層11を形成することができ、多孔質シート1を重ねたときにも流れてしまわない程度に高粘性であることが必要である。また、製造するバイポーラ膜において、該多孔質シートがカチオン交換樹脂層とアニオン交換樹脂層との接合界面に跨って存在する必要があることから、多孔質シート1を塗布層11に重ねた際に、第1の有機溶媒溶液がその厚み方向途中までに留まって浸透するような適度に低粘性でなければならない。このような観点から、第1の有機溶媒溶液は、粘度(25℃)が1.0~60dPa・sの範囲、より好適には5.0~55dPa・sの範囲となるように調整されていることが好ましい。
一方、第2の有機溶媒溶液は、前記第1の有機溶媒溶液がその厚み方向途中まで浸透した状態の多孔質シート1の前記重ね合わせ面とは反対面上に塗布して、その残り空隙に浸透させるものである。これを高い充填性で実施するには、第2の有機溶媒溶液にはより高い浸透性が求められ、このためその粘度は前記第1の有機溶媒溶液に比して低粘性であることが好ましく、例えば粘度(25℃)が5dPa・s以下、特には0.1~3.0dPa・sであることが好適である。
【0036】
また、水解離促進用触媒が分散ないし溶解した触媒液としては、前述した重金属イオンを放出し得る化合物(塩類、酸化物など)が溶解した溶液或いはこれらの化合物が粒状物の形態で分散している分散液などが使用される。このような触媒液は、溶解あるいは分散している触媒化合物が多孔質シート1内に浸透し得るものであれば、溶媒或いは分散媒として水或いは有機溶剤の何れも使用することができ、また、分散粒径も特に制限されないが、溶媒に溶解せずに分散している場合には、分散粒径は小さい方が好ましく、例えば10μm以下、好ましくは0.1~5.0μmの微粒状態で分散していることが好ましい。
【0037】
工程(a-1);
先ず、剥離フィルム10の一方の表面に、カチオン交換樹脂形成用ポリマーまたはアニオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第1の有機溶媒溶液を塗布して第1の有機溶媒溶液の塗布層11を形成する。
この剥離フィルム10は、第1の有機溶媒溶液中に溶解しているイオン交換樹脂と接着しないようなものであり、塗布層11中の有機溶媒に溶解せず、最期に容易に剥離し得るようなものであれば、その種類や厚みを問わないが、一般的には、耐久性、機械的強度などに優れ、繰り返し使用可能であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムが好適に使用される。
【0038】
尚、この塗布層11の厚みは、乾燥厚みが触媒層3の下地となるイオン交換樹脂層(図1の例ではカチオン交換樹脂層C)の厚みになるように調整する。例えば、図1のバイポーラ膜BPを作製する場合には、第1の有機溶媒溶液としてはカチオン交換樹脂形成ポリマーが使用され、従って、塗布層11の厚みは、乾燥厚みがカチオン交換樹脂層Cの厚みt1に相当するものとなる。
このような厚みに塗布層11を形成するため、第1の有機溶媒溶液は、垂れ等を生じないように、ある程度、高粘性であることが必要である。
【0039】
有機溶媒溶液の塗布は、それ自体公知の手段で行うことができ、例えば、ドクターブレードコート、ナイフコート、ロールコート、バーコートなどにより塗布することができる。
【0040】
工程(a-2);
上記のようにして第1の有機溶媒溶液の塗布層11を形成した後、この塗布層11に多孔質シート1を重ね合わせ、多孔質シート1の厚み方向途中まで、第1の有機溶媒溶液を含浸させる。このような含浸によって、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの界面Sの位置が決定される。
【0041】
このように、多孔質シート1を重ね合わせることにより、多孔質シート1の厚み方向途中まで、第1の有機溶媒溶液を浸透させるため、この第1の有機溶媒溶液は、多孔質シート1への浸透性は有するものの、その浸透が前記多孔質シート1の厚み方向途中で留まるような粘性を有するものでなければならない。即ち、この第1の有機溶媒溶液は、ある程度の厚みの塗布層11を形成し且つ塗布層11に重ね合わせた多孔質シート1中に浸透させるために、適度な粘度を有するものでなければならず、この結果、この第1の有機溶媒溶液の粘度は、前述した範囲に調整されるわけである。
尚、多孔質シート1内に塗布層11を浸透させるために、適宜、多孔質シート1を加圧することもできる。
【0042】
工程(a-3);
この工程では、触媒層3の下地となるイオン交換樹脂層(図1の例では、カチオン交換樹脂層C)を確定させる。
即ち、多孔質シート1が重ね合わされた状態で、第1の有機溶媒溶液の塗布層11を乾燥する。これにより、重ね合わせ面から多孔質シート1の厚み方向途中までの領域に、触媒層3の下地となるイオン交換樹脂層(例えばカチオン交換樹脂層C)が形成され、剥離フィルム、イオン交換樹脂層及び多孔質シート1が積層されたイオン交換樹脂シート20が得られ、界面Sの位置が定まる。
【0043】
尚、第1の有機溶媒溶液中のイオン交換樹脂形成用ポリマーとして、イオン交換基が導入されていないイオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、上記の乾燥後にイオン交換基の導入処理が行われる。
例えば、イオン交換樹脂形成用ポリマーとしてカチオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、スルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理によりカチオン交換基が導入される。また、イオン交換樹脂形成用ポリマーとしてアニオン交換樹脂前駆体が使用されている場合には、アミノ化、アルキル化等の処理によってアニオン交換基が導入されることとなる。
【0044】
工程(b);
この工程では、上記のように形成されたイオン交換樹脂層(図の例ではカチオン交換樹脂層C)の表面(多孔質シート1内に位置する表面であり、図1の界面Sに相当する面)に触媒層3を形成する。
具体的には、前述した水解離促進用触媒が分散乃至溶解した触媒液を、上記イオン交換樹脂シート20中の多孔質シート1の表面に塗布、或いは、該表面を触媒液に浸漬させ、下地となるイオン交換樹脂層(例えばカチオン交換樹脂層C)の表面にまで触媒液を浸透させ、次いで乾燥することにより、界面S上に水解促進用触媒が分布した触媒層3が形成される。
【0045】
上記のように触媒層3を形成した後は、以下の工程(c-1)~(c-3)により、この触媒層3上に、第2の有機溶媒溶液を使用して、下地のイオン交換樹脂層とは逆極性のカウンターイオン交換樹脂層を形成する。即ち、図2では、触媒層3の下地のイオン交換樹脂層がカチオン交換樹脂層Cとして示されているので、アニオン交換樹脂形成用ポリマーが溶解している第2の有機溶媒溶液を使用してアニオン交換樹脂層Aを形成する。また、下地のイオン交換樹脂層がアニオン交換樹脂層Aであるときには、この第2の有機溶媒溶液は、カチオン交換樹脂形成用ポリマーを含むものであり、アニオン交換樹脂層A上にカチオン交換樹脂層Cが形成されることとなる。
【0046】
工程(c-1);
この工程では、上記の第2の有機溶媒溶液を、イオン交換樹脂シート20の多孔質シート1の表面に塗布する。これにより、第2の有機溶媒溶液が多孔質シート1内に浸透し、触媒層3を介して、先に形成されたイオン交換樹脂層(例えばカチオン交換樹脂層C)の表面にまで到達した塗布層13が形成される。
即ち、第2の有機溶媒溶液は、前記第1の有機溶媒溶液がその厚み方向途中まで浸透した状態の多孔質シート1に対して、その残り空隙に浸透させて塗布層13を形成するものであるから、前記したようにより高い浸透性が求められる。このためその粘度は前記第1の有機溶媒溶液よりも低く、このため前述した範囲に調整されるのが好ましい。
【0047】
工程(c-2);
上記のようにして多孔質シート1内に浸透している第2の有機溶媒の塗布層13を形成した後は、この塗布層13を乾燥することにより、カウンターイオン交換樹脂層(例えば、図2の例ではアニオン交換樹脂層A)が形成される。即ち、上記の塗布層13の乾燥厚みは、カウンターイオン交換樹脂層の厚み(例えばアニオン交換樹脂層Aの厚みt2)に相当するものである。
この場合において、第2の有機溶媒溶液中のポリマーとして、カウンターイオン交換基が導入されていない前駆体が使用された場合には、乾燥後、カウンターイオン交換基の導入処理が行われることとなる。これは、触媒層3の下地のイオン交換樹脂層を形成する場合と同様である。
【0048】
工程(c-3);
上記のようにして、カウンターイオン交換樹脂層が形成された後は、最後は、剥離フィルムを剥離することにより、目的とするバイポーラ膜BPが得られることとなる。
【0049】
このようにして得られる本発明のバイポーラ膜BPは、カチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの剥離が有効に防止されているばかりか、これらの交換樹脂層の界面Sには、水解離促進用触媒が分布しているため、低電圧で水の解離を進行させることができる。後述の実施例で測定されるバイポーラ電圧が、通常2.0V以下、好ましくは1.5V以下、より好ましくは1.3V以下に抑制されている。
さらに、多孔質シート1として不織布繊維シートを用いた場合には、極めて安価であるばかりか、この不織布繊維シートがカチオン交換樹脂層Cとアニオン交換樹脂層Aとの間にまたがって形成されているため、界面Sの接着性が高く、引っ張り速度100mm/分におけるT形剥離強度が0.5N/cm以上、好ましくは0.8N/cm以上となっている。また、不織布繊維シートの強度不足も有効に改善されている。
【実施例
【0050】
本発明の優れた効果を次の例で説明する。
なお、実施例、比較例において、バイポーラ膜の特性、ポリマー溶液の粘度、及び触媒量について、次のような測定により求めた。
【0051】
1)バイポーラ電圧;
以下の構成を有する4室セルを使用した。
陽極(Pt板)(1.0mol/L-NaOH)/ネオセプタBP-1E(株式会社
アストム製)/(1.0mol/L-NaOH)/バイポーラ膜/(1.0mol
/L-HCl)/ネオセプタBP-1E(株式会社アストム製)/(1.0mol
/L-HCl)陰極(Pt板)
液温25℃、電流密度10A/dmの条件でバイポーラ電圧の測定を行った。バイポーラ電圧はバイポーラ膜を挟んで設置した白金線電極によって測定した。
【0052】
2)バイポーラ膜の接着性;
バイポーラ膜のアニオン交換樹脂面にテープ(粘着力3.2N/15mm)を貼りつけて、よく圧着し、テープを部分的に剥離してアニオン交換樹脂面がテープ側に張り付いて剥離した状態でミネベア(株)製荷重測定器LTS-500NBにて引っ張り速度100mm/分にてT形剥離強度を測定した。
【0053】
3)イオン交換樹脂のイオン交換容量の測定;
イオン交換樹脂を1mol/L-HCl水溶液に10時間以上浸漬した。
その後、カチオン交換膜の場合には、1mol/L-NaCl水溶液でイオン交換基の対イオンを水素イオンからナトリウムイオンに置換させ、遊離した水素イオンを水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE-900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。一方、アニオン交換膜の場合には、1mol/L-NaNO水溶液で対イオンを塩化物イオンから硝酸イオンに置換させ、遊離した塩化物イオンを硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE-900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じイオン交換膜を1mol/L-NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、その後に60℃で5時間減圧乾燥して乾燥時の重さ(Dg)を測定した。上記測定値に基づいて、イオン交換膜のイオン交換容量を次式により求めた。
イオン交換容量=A×1000/D[meq/g-乾燥質量]
【0054】
4)バイポーラ膜の破裂強度;
バイポーラ膜をイオン交換水に4時間以上浸漬し、次いで、膜を乾燥させることなく、ミューレン破裂試験機(東洋精機製)により、JIS-P8112に準拠して破裂強度を測定した。
【0055】
5)バイポーラ膜厚み、イオン交換樹脂層厚み、不織布層厚み及び界面位置についての測定;
非対称イオン交換膜をミクロトーム(ヱルマ販売(株)製ESM-150S)にて切削し、測定断面を形成させた。次いで、カラー3Dレーザー顕微鏡VK-8700(株式会社キーエンス社製)を用い、50倍の対物レンズで膜サンプル断面を観察し、観察画像からイオン交換樹脂層厚み、不織布層厚み及び第1と第2のイオン交換樹脂層の界面位置を測定した。界面位置は第1イオン交換樹脂層側の不織布表面を位置0として1/10単位で表記した。
また、バイポーラ膜の厚みを、マイクロメ-ターMED-25PJ(株式会社ミツトヨ社製)を用いて測定した。
【0056】
6)ポリマー溶液粘度;
回転円筒式粘度計ビスコテスタVT-04F(リオン株式会社製)を用いて、イオン交換樹脂或いはイオン交換樹脂前駆体の有機溶媒溶液(ポリマー溶液)の粘度を測定した。
【0057】
7)触媒量の測定;
触媒処理を実施したカチオン交換膜を蛍光X線分析で測定し、硫黄元素と触媒元素のモル比を求め、硫黄元素をイオン交換容量との相対比から触媒量を算出した。
【0058】
実施例及び比較例において使用されるカチオン交換ポリマー溶液及びアニオン交換ポリマーは、以下のようにして調製した。
【0059】
カチオン交換ポリマー溶液の調製;
(1)カチオン交換ポリマー(SPPO)の溶液(C1)の調製
ポリフェニレンオキシドをクロロホルムに溶解し、この溶液にクロロスルホン酸を加えて、ポリフェニレンオキシドにクロロスルホン酸を反応させた。次いで、水酸化ナトリウムを加えて中和し、溶媒除去することでイオン交換容量が1.6meq/gであるスルホン化ポリフェニレンオキシド(カチオン交換ポリマー、SPPO)を得た。
次に、上記で得られたカチオン交換ポリマー(SPPO)を、その濃度が28質量%となるように、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)になるように溶解し、スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)からなるカチオン交換ポリマーの溶液(C1)を調製した。
このカチオン交換ポリマー溶液(C1)の粘度(25℃)は、20dPa・sであった。
【0060】
(2)カチオン交換ポリマー(SPPO)の溶液(C2)の調製
カチオン交換ポリマー(SPPO)を、その濃度が15質量%となるようにN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた以外は、上記と同様にして、スルホン化ポリフェニレンオキシド(SPPO)からなるカチオン交換ポリマーの溶液(C2)を調製した。
このカチオンポリマー溶液(C2)の粘度(25℃)は、2dPa・sであった。
【0061】
(3)カチオン交換ポリマー(SPEEK)の溶液(C3)の調製
ポリエーテルエーテルケトンを濃硫酸に溶解させ、撹拌しながらスルホン化反応を行った。反応後にポリエーテルエーテルケトン/濃硫酸溶液を純水中にクエンチすることでスルホン化ポリエーテルエーテルケトン(カチオン交換ポリマー、SPEEK)を得た。このポリマーのイオン交換容量は1.5meq/gであった。
次に、上記で得られたカチオン交換ポリマー(SPEEK)を、その濃度が25質量%となるように、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)からなるカチオン交換ポリマーの溶液(C3)を調製した。このカチオン交換ポリマー溶液(C3)の粘度(25℃)は5dPa・sであった。
【0062】
アニオン交換ポリマー溶液の調製;
(1)アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A1)の調製
ポリスチレンのセグメント(65質量%)とポリイソプレンの水素添加されたセグメント(35質量%)から成る共重合体100gをクロロホルム1000gに溶解し、この溶液に、クロロメチルメチルエーテル100gと塩化スズ10gを加え、40℃で15時間反応させ、ポリスチレンブロックのクロロメチル化を行った。
次いで、メタノール中で沈澱、洗浄した後、乾燥させ、クロロメチル化したスチレン系ブロック共重合体を得た。
次に、上記で得られたクロロメチル化したスチレン系ブロック共重合体に、分子量5000のクロロメチル化ポリスチレンを混合し、クロロメチル化ポリスチレンの割合が40質量%になるように調整した。
【0063】
このようにして得られたクロロメチル化重合体混合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ポリマー濃度が25質量%アニオン交換樹脂前駆体溶液を調製した。
このアニオン交換樹脂前駆体溶液に、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(アニオン交換基導入剤)を、その濃度が6.6質量%となるように加えて、アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A1)を調製した。
このアニオン交換ポリマー溶液(A1)の粘度(25℃)は5dPa・sであった。
【0064】
このようにして得られたアニオン交換ポリマー溶液(A1)を、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布、乾燥して得たアニオン交換膜を用いてイオン交換容量を測定したところ、2.2meq/g-乾燥質量であった。
【0065】
(2)アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A2)の調製
一方、ポリマー濃度が20質量%となるように変更した以外は、上記と全く同様に、クロロメチル化重合体混合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解してアニオン交換樹脂前駆体溶液を調製した。
このアニオン交換樹脂前駆体溶液に、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(アニオン交換基導入剤)を、その濃度が5.3質量%となるように加えて、アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A2)を調製した。
このアニオン交換ポリマー溶液(A2)の粘度(25℃)は3dPa・sであった。
【0066】
このようにして得られたアニオン交換ポリマー溶液(A2)を、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布、乾燥して得たアニオン交換膜を用いてイオン交換容量を測定したところ、2.0meq/g-乾燥質量であった。
【0067】
(3)アニオン交換ポリマー(QPS)の溶液(A3)の調製
スチレンとクロロメチルスチレンのモノマーのモル比10:1をトルエン中で70℃、重合開始剤ベンゾイルパーオキシドの存在下に10時間共重合し、次いで反応液をメタノール中に注ぎ、共重合体を得た。
この共重合体のクロロメチル基をN,N,N’,N’-テトラメチルエタン-1,2-ジアミンにて4級アンモニウム塩基化し、その濃度が20質量%となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、4級アンモニウム塩基の交換容量が0.9meq/gの部分アミノ化ポリスチレン(QPC)からなるアニオン交換ポリマー溶液(A3)を調製した。
このアニオン交換ポリマー溶液(A3)の粘度(25℃)は10dPa・sであった。
【0068】
不織布シート;
不織布シートとしては次のものを使用した。
(N1)廣瀬製紙(株)製HOP-10
目付量:10g/m
厚み:0.05mm
空隙率:78%
繊維径:12μm
材質:ポリエチレン
(N2)廣瀬製紙(株)製HOP-15
目付量:15g/m
厚み:0.07mm
空隙率:76%
繊維径:12μm
材質:ポリエチレン
(N3)フロイデンベルグ社製Novatexx2473
目付量:27g/m
厚み:0.11mm
空隙率:73%
材質:ポリエチレン/ポリプロピレン
【0069】
尚、以下の実施例及び比較例2において、剥離フィルム(PETフィルム)に塗布されて形成されるイオン交換樹脂層を第1イオン交換体層と表現し、この第1イオン交換層上に形成されるカウンターイオン交換樹脂層を第2イオン交換層と表現している。
【0070】
<実施例1>
バイポーラ膜の製造;
1.第1イオン交換層の形成
上記で調製されたカチオン交換ポリマー(SPPO)の溶液(C1)を、バーコーターを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに100μm液厚になるように塗布して、塗布層を形成した。
上記塗布層が形成されているPETフィルムを50℃で5分間乾燥させ、次いで、この塗布層に、上記の不織布シート(N1)を重ね合わせてローラ加圧により積層することで、不織布シートの片面にカチオン交換樹脂塗布層を形成させた。
次いで、60℃で加熱乾燥して塗布層を固化せしめ、第1イオン交換層を形成した。
【0071】
2.水解離促進触媒の付与
得られた第1イオン交換層を5.0質量%の塩化スズ水溶液に60分浸漬した。次いで第1イオン交換層を取り出し60℃で乾燥した。
【0072】
3.第2イオン交換層の形成
次いで、上記の第1イオン交換層の不織布シート面側に、アニオン交換ポリマー(CMPS/CMSEPS)の溶液(A2)を塗布し、50℃で30分間乾燥した後、PETフィルムを剥離してバイポーラ膜を得た。
【0073】
得られたバイポーラ膜について、第1イオン交換層の組成、第1イオン交換層の形成に用いた溶媒種、カチオン交換ポリマー(イオン交換ポリマー)の溶液粘度及び該溶液の塗布厚みを表1に示した。また、不織布シートの物性及び水解離促進用触媒を表2に示し、表3には、第2イオン交換層の組成、第2イオン交換層の形成に用いた溶媒種、アニオン交換ポリマー(イオン交換ポリマー)の溶液粘度及び該溶液の塗布厚みを示した。
【0074】
上記バイポーラ膜ついての接着性(T型剥離強度)、触媒量、バイポーラ電圧を評価し、その結果を、バイポーラ膜の厚み、不織布シート厚み、及びバイポーラ膜の接合界面の位置と共に、表4に示した。
【0075】
<実施例2~6>
バイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1~3に示す通りに変えた他は実施例1と同様の手順で、バイポーラ膜を作成した。バイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
【0076】
<実施例7>
実施例6で得た第1イオン交換層を塩化スズ水溶液で処理する代わりに2.0質量%塩化ルテニウム(III)水溶液で処理した以外は同じ手順にてバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1~3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
【0077】
<実施例8>
第1イオン交換層にQPS溶液を用いた以外は実施例6と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。バイポーラ膜の構成は表1に特性は表2に示す通りであった。
【0078】
<実施例9>
不織布シート(N3)(Novatexx2473)を熱プレスにて厚みが0.075mmになるように処理し、空隙率62%の厚み調整不織布シート(N3’)を得た。この不織布シート(N3’)を用いた以外は、実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。
このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1~3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、不織布シート(N3’)の空隙率が62%と低いためにバイポーラ膜の触媒界面形成面積が少なく、バイポーラ電圧が高電圧となった。
【0079】
<比較例1>
不織布シートを使用しなかった以外は、実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や触媒濃度を表1~3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、不織布シートがないためイオン交換層の界面での接着性が低くなった。
【0080】
<比較例2>
触媒液を使用しなかった以外は、実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類を表1~3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、触媒がないために水解離電圧が高く、バイポーラ電圧が高くなった。
【0081】
<比較例3>
第1イオン交換層のコート厚みを200μmにした以外は実施例1と同様な方法にてバイポーラ膜を得た。
このバイポーラ膜の作成に用いたイオン交換樹脂種や不織布シートの種類、触媒濃度を表1~3に示し、表4には、そのバイポーラ膜の構成と共に、その特性を表4に示した。
この例では、第1イオン交換層を厚く塗ったために不織布シートが第1イオン交換層に覆われており、不織布シートが第1イオン交換層と第2イオン交換層とに跨った構造とならず、第1イオン交換層と第2イオン交換層の接着性が低かった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【符号の説明】
【0086】
1:多孔質シート
3:触媒層
C:カチオン交換樹脂層
A:アニオン交換樹脂層
BP:バイポーラ膜
図1
図2