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特許7257032有機EL表示パネル及び有機EL表示パネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】有機EL表示パネル及び有機EL表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/00 20230101AFI20230406BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230406BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230406BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20230406BHJP
【FI】
H10K71/00
G09F9/30 365
G09F9/00 338
G09F9/00 352
H10K59/122
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019021506
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020129478
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠川 泰治
(72)【発明者】
【氏名】梅津 和宏
(72)【発明者】
【氏名】石川 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川勝 康弘
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047021(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133090(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/118883(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/118882(WO,A1)
【文献】特開2010-267576(JP,A)
【文献】特開2009-104030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 71/00
H10K 59/122
H01L 51/50 - 51/56
H05B 33/10
H05B 33/12
H05B 33/22
H05B 33/06
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備する工程と、
前記基板の上面に行列状に並んだ複数の画素電極を形成する工程と、
前記基板上の少なくとも行方向に隣り合う前記画素電極の間に、列方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の列バンクを形成する工程と、
長尺状の前記列バンクの一部が存在しない欠落部を検出する工程と、
前記画素電極の上方において、前記欠落部が検出された列バンクの行方向両側に隣接する列バンクとの間の2つの間隙それぞれに、各一対の補修用バンクを形成する工程と、
前記複数の列バンク間の間隙に有機発光材料を含むインクを塗布することにより発光層を形成する工程と、
前記発光層の上方に共通電極を形成する工程とを有し、
前記補修用バンクを形成する工程は、
前記2つの間隙内に存在し、前記欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである前記画素電極の上方であって、列方向に所定距離以上、離れた位置に、一対の補修用行バンクを形成する第1の工程と、
前記列バンクと行方向に接続されていない前記補修用行バンクの端部を、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分と列方向に接続する補修用列バンクを形成する第2の工程とを含む、
有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、前記一対の補修用行バンクは列方向における距離が最大となる位置に形成される
請求項1に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記発光層を形成する工程において、前記2つの間隙内の何れかに塗布されたインクのうち、前記一対の補修用行バンクに挟まれた範囲に塗布されたインクは、前記欠落部を挟んで行方向に対向する間隙内へ前記欠落部を通して流出し、前記一対の補修用行バンクにより列方向には前記範囲内に堰き止められる
請求項1又は2に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項4】
さらに、前記基板上の少なくとも列方向に隣り合う前記画素電極の間に、行方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の行バンクを形成する工程を有し、
欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分は前記行バンクの上面に位置している
請求項1から3の何れか1項に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記画素電極の前記行バンクの下方に位置する部分に、前記画素電極の表面の一部が凹陥したコンタクトホールを形成する工程を有し、
前記補修用列バンクは、平面視において前記コンタクトホールと重ならない位置に形成される
請求項4に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板の上面に行列状に並んだ複数の画素電極と、
前記基板上の少なくとも行方向に隣り合う前記画素電極の間に、列方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の列バンクと、
長尺状の前記列バンクの一部が存在しない欠落部と、
前記画素電極の上方において、前記欠落部を有する列バンクの行方向両側に隣接する列バンクとの間の2つの間隙それぞれに形成された一対の補修用バンクと、
前記複数の列バンク間の間隙に形成された塗布膜からなる発光層と、
前記発光層の上方に共通電極とを備え、
前記補修用バンクは、
前記2つの間隙内に存在し、前記欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである前記画素電極の上方であって、列方向に所定距離以上、離れた位置に、形成された一対の補修用行バンクと、
前記列バンクと行方向に接続されていない前記補修用行バンクの端部と、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分とを列方向に接続する補修用列バンクとを含む、
有機EL表示パネル。
【請求項7】
前記一対の補修用行バンクは、列方向における距離が最大となる位置に形成されている
請求項6に記載の有機EL表示パネル。
【請求項8】
前記2つの間隙内の一方に形成された前記発光層のうち、
前記一対の補修用行バンクに挟まれた範囲に形成された発光層の部分は、前記欠落部を挟んで行方向に対向する間隙内に形成された発光層に含まれる有機発光材料を含み、
前記一対の補修用行バンクに挟まれた範囲外に形成された発光層の部分は、前記対向する間隙内に形成された発光層に含まれる有機発光材料を含まない、
請求項6又は7に記載の有機EL表示パネル。
【請求項9】
さらに、前記基板上の少なくとも列方向に隣り合う前記画素電極の間には、行方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の行バンクを備え、
欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分は前記行バンクの上面に位置する
請求項7又は8に記載の有機EL表示パネル。
【請求項10】
前記画素電極の前記行バンクの下方に位置する部分には、前記画素電極の表面の一部が凹陥したコンタクトホールを有し、
前記補修用列バンクは、平面視において前記コンタクトホールと重ならない位置に形成されている
請求項9に記載の有機EL表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子が行列状に配された有機EL表示パネルの製造方法に関し、特にバンクを形成する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光型の表示装置として、有機EL表示パネルが実用化されている。有機EL表示パネルにおいて、各有機EL素子は、陽極と陰極の一対の電極対の間に有機発光材料を含む発光層が配設された基本構造を有し、駆動時には、一対の電極対間に電圧を印加し、陽極から発光層に注入されるホールと、陰極から発光層に注入される電子との再結合に伴って発生する電流駆動型の発光素子である。カラー表示の有機EL表示パネルでは、有機EL素子がRGB各色のサブピクセルを形成し、隣り合うRGBのサブピクセルが合わさって一画素が形成されている。
【0003】
有機EL表示パネルの製造において、基板上をバンクで区画し、各区画に発光層が形成される。バンクは、感光性の熱硬化性樹脂を用いてフォトリソグラフィー法でバンク形状にパターニングして、加熱焼成することによって形成される。
発光層の形成には、高分子材料や薄膜形成性の良い低分子を含む発光層形成用のインクを、インクジェット法等によりバンクで区画された凹空間に塗布するウェット方式が多く用いられている。このウェット方式によれば、大型のパネルにおいても発光層をはじめとする有機機能層を比較的容易に形成することができる。
【0004】
このような有機EL表示パネルの製造過程においてバンクに部分的な決壊が生じていると、その後の工程で発光層を形成する際に、その欠陥部が存在するバンクを挟んで塗布される異なる色のインク同士が混合されて混色が生じることがある。その場合、混色が生じた範囲での発光色が本来の発光色と異なっていたり、暗点と認識されたりして、表示品質が低下することがある。特に、列方向に延伸するバンクを設ける構成では、混色がバンクに沿って複数画素に拡大し、重大な表示品質の低下を引き起こす可能性があった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1及び2には、バンクに存在する欠陥部から所定距離離れた位置に熱硬化性のペースト状の補修材を塗布し、加熱焼成することによって堰を形成し、混色の拡大を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-71992号公報
【文献】特開2017-33813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、製造工程において長尺状のバンクの一部分が欠落する態様の欠陥に対しては、特許文献1に記載された方法では混色の拡大を抑制することが難しい場合がある。
本開示は、上記課題に鑑み、有機EL表示パネルの製造過程において、有機EL表示パネルの製造過程において長尺状のバンクの一部分が欠落したときに、欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を限定することのできる有機EL表示パネルの製造方法、及び有機EL表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る自発光表示パネルの製造方法及び有機EL表示パネルは、基板を準備する工程と、前記基板の上面に行列状に並んだ複数の画素電極を形成する工程と、前記基板上の少なくとも行方向に隣り合う前記画素電極の間に、列方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状のバンクを形成する工程と、長尺状の前記バンクの一部が存在しない欠落部を検出する工程と、前記画素電極の上方において前記欠落部が検出されたバンクの行方向両側に隣接するバンクとの間の2つの間隙それぞれに、各一対の補修用バンクを形成する工程と、前記複数のバンク間の間隙に有機発光材料を含むインクを塗布することにより発光層を形成する工程と、前記発光層の上方に共通電極を形成する工程とを有し、前記補修用バンクを形成する工程は、前記2つの間隙内に存在し、前記欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである前記画素電極の上方であって、列方向に所定距離以上、離れた位置に、一対の補修用行バンクを形成する第1の工程と、前記バンクと行方向に接続されていない前記補修用行バンクの端部を、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分と列方向に接続する補修用列バンクを形成する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、基板と、前記基板の上面に行列状に並んだ複数の画素電極と、前記基板上の少なくとも行方向に隣り合う前記画素電極の間に、列方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の列バンクと、長尺状の前記列バンクの一部が存在しない欠落部と、前記画素電極の上方において前記欠落部を有する列バンクの行方向両側に隣接する列バンクとの間の2つの間隙それぞれに形成された一対の補修用バンクと、前記複数の列バンク間の間隙に形成された塗布膜からなる発光層と、前記発光層の上方に共通電極とを備え、前記補修用バンクは、前記2つの間隙内に存在し、前記欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである前記画素電極の上方であって、列方向に所定距離以上、離れた位置に、形成された一対の補修用行バンクと、前記列バンクと行方向に接続されていない前記補修用行バンクの端部と、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分とを列方向に接続する補修用列バンクとを含む。ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る表示パネル及び表示パネルの製造方法によると、製造過程において長尺状のバンクの一部分が欠落したときに、完成した有機EL表示パネルにおいて欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を、欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極を含むサブピクセルに限定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る有機EL表示装置の構成例を示す模式ブロック図である。
図2】実施形態に係る表示パネルを模式的に示す部分平面図である。
図3】実施形態に係る表示パネルを図2のA-A'線で切断した一部拡大断面図である。
図4】(a)は、列バンク14aに生じる欠落部3aの一例を示す模式斜視図であり、(b)は、一対の補修用バンク5X1、5X2が欠落部3aをY方向に挟むように形成された様子を示す模式斜視図である。
図5】(a)は、列バンク14aに生じる欠落部3aよりも長い欠落部3bの一例を示す模式斜視図であり、(b)は、一対の補修用バンク5X1及び5Y1、5X2及び5Y2が欠落部3bをY方向に挟むように形成された様子を示す模式斜視図である。
図6】実施形態に係る表示パネルの製造過程を示す模式工程図である。
図7】実施形態に係る表示パネルの製造工程の一部を示す模式断面図である。
図8】インクジェット法により間隙内にインクを塗布する方法を模式的に示す図である。
図9】欠落部の検出とバンクの補修に用いる補修装置の一例を示す概略構成図である。
図10】(a)は、図7(a)の欠落部の周辺に設定された、ニードルディスペンサによる補修材料の塗布位置を示す模式平面図であり、(b)は、堰部が形成された状態を示す模式平面図である。
図11】(a)は、図8(a)の欠落部の周辺に設定された、ニードルディスペンサによる補修材料の塗布位置を示す模式平面図であり、(b)は、堰部が形成された状態を示す模式平面図である。
図12】(a)~(g)は、ニードルディスペンサで補修材料を塗布することにより、堰部が形成される様子を示す模式断面図である。(a)は、補修材料を塗布する前の状態のタンク及びニードルの状態を示す模式断面図である。(b)は、ニードルに付着した補修材を塗布点P1に塗布した状態を示す模式断面図である。(c)は、ニードルを上方に移動させている途中の状態を示す模式断面図である。(d)は、ニードルを上方に移動させた状態を示す模式断面図である。(e)は、ニードル及びタンクを移動させて塗布点P2に補修材を塗布した状態を示す模式断面図である。(f)は、塗布点P1に塗布された補修材と塗布点P2に塗布された補修材とがつながった状態を示す模式断面図である。(g)は、ニードルを上方に移動させた状態を示す模式断面図である。
図13】(a)は、実施形態に係る表示パネルを図11(b)のB-B線で、(b)はC-C線で、(c)はD-D線で切断した一部拡大断面図である。
図14】(a)(b)比較例として想定される堰部が形成された表示パネルの状態を示す模式平面図である。
図15】表示パネル100にインク層が形成された状態を示す模式平面図である。
図16】比較例に係る表示パネルにインク層が形成された状態を示す模式平面図である。
図17】(a)は、バンクに生じる欠落部の一例を示す模式斜視図であり、(b)は、発明者が想起した堰部が欠落部の周囲に形成された様子を示す模式斜視図である。
図18】(a)は、バンクに生じる欠落部の別の一例を示す模式斜視図であり、(b)は、発明者が想起した堰部が欠落部の周囲に形成された様子を示す模式斜視図である。
図19】(a)は、図17(b)の堰部が形成された状態を示す模式平面図、(a)は、図18(b)の堰部が形成された状態を示す模式平面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明を実施するための形態に到った経緯>
ラインバンク方式の有機EL表示パネルの製造方法では、基板上に列方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状のバンクを形成し、複数のバンク間の間隙に有機発光材料を含むインクを塗布することにより発光層を形成する。ラインバンク方式によれば、インクがバンクに沿って間隙内で流動可能であるので、インク塗布時点での膜厚のバラつきがインクの流動により均一化され、均一な膜厚の発光層を形成することができる。その結果、輝度ムラの少ない有機EL表示パネルを製造することができる。しかしながら、バンクに欠陥が存在すると、間隙内に塗布されたインクが欠陥を通して隣の間隙内に侵入し、発光色の異なるインクが混合する混色領域が発生してしまう可能性がある。特に、ラインバンク方式では、混色したインクがバンクに沿って流動するため、複数画素にわたって表示品質の低下が発生する可能性がある。
【0013】
ラインバンクの欠陥に対する補修方法として、例えば、特許文献1、2には、欠陥の行方向の両側の間隙内に、欠陥から列方向に所定の距離の位置に堰を形成することにより混色による表示品質の低下の発生を欠陥の行方向の両側のサブピクセルに限定する技術が開示されている。
しかしながら、製造工程において長尺状のバンクの一部分が欠落する態様の欠陥に対しては、欠落部分が長尺方向に所定の長さを有する場合には、特許文献1に記載された方法では混色の拡大を抑制することが難しい場合がある。
【0014】
図17(a)は、長尺状のバンクを備えた表示パネルのバンクに生じる欠落部の一例を示す模式斜視図である。
図17に示すように、表示パネルは、その主な構成として、下地基板11、XY方向に行列状に配された画素電極12、ホール注入層13、画素電極12間に配されたY方向(列方向)に延伸する列バンク14aとX方向(行方向)に延伸する高さが低い行バンク24、有機発光層、電子輸送層、共通電極、封止層を備える。そして、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れかの発光色に対応する有機発光層を有する発光素子をサブピクセルが画素電極12に対応してマトリクス状に配設されている。なお、図17(a)は、製造工程において電子輸送層、共通電極、封止層が形成される前の列バンク14aが焼成前の状態を示している。
【0015】
図17(a)にように、表示パネルは、列バンク14aの一部が下地基板11の表面から欠落して長尺状の列バンク14aの一部が存在しない欠落部3cを有する。欠落部3cの両端3c1、3c2がそれぞれ画素電極12c1、12c2上の位置し、欠落部3cは2つの画素電極12c1、12c2とY方向の位置が少なくとも一部分において同じである位置関係にある。そのため、欠陥部からY方向に所定距離離れた位置に堰を形成するといった特許文献1に記載された方法では混色の拡大を抑制することが難しい。
【0016】
これに対し、図17(b)は、欠陥部3cに対し発明者が想起した堰部が形成された表示パネルの態様を示す模式斜視図である。図19(a)は、図17(b)の堰部が形成された状態を示す模式平面図である。なお、図17(b)は、製造工程において電子輸送層、共通電極、封止層が形成される前であって、列バンク14a焼成後の状態を示している。
【0017】
図17(b)に示す表示パネルの態様では、欠落部3が存在する列バンク14の行方向両側に隣接する列バンク14との間の2つの間隙20それぞれにおいて、画素電極12c1、12c2の上方であって、列方向に所定距離A1~A2だけ離れた位置A1、A2に、一対の補修用行バンク52X1、52X2を形成する。ここで、位置A1、A2は、画素電極12c1、12c2の上方であって、Y方向における距離が最大となる位置としてもよい。この場合、補修用行バンク52X1、52X2がそれぞれ形成されて堰501、502が構成され、この一対の堰501、502によって間隙20は、欠落部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られる。これより、混色を第1空間SA内に留め、混色したインクが第2空間SBに流出することを抑制できる。
【0018】
一方、欠落部3cがY方向にさらに拡大して欠落部3dの両端3d1、3d2が第2の行バンク24上に位置する図18(b)に示した方法では混色の拡大を抑制することができない。図18(a)は、バンクに生じる欠落部の別の一例を示す模式斜視図であり、(b)は、発明者が想起した堰部が欠落部の周囲に形成された様子を示す模式斜視図である。図19(b)は、図18(b)の堰部が形成された状態を示す模式平面図である。
【0019】
図18(a)にように、欠落部3dは2つの画素電極12c1、12c2とY方向の位置が同じであるとともに、Y方向において画素電極12c1、12c2を挟む第2の行バンク24の一部分とY方向の位置が重なる。
そのため、図17(b)に示すような、画素電極12d1、12d2の上方であって、列方向に所定距離A1~A2だけ離れた位置A1、A2に、一対の補修用行バンク52X1、52X2を形成するといった方法では、欠落部3のX方向両側に位置する間隙20を堰き止めることはできず、上記した欠落部3に近接する第1空間SAと近接しない第2空間SBとを仕切ることができない。そのため、混色したインクが第1空間SA内から第2空間SBに流出して混色が拡大する。
【0020】
そこで、発明者は、欠落部が画素電極に加え、第2の行バンクの一部分とY方向の位置が重なる場合において、欠落部3を有する第1の列バンクのX方向両側に位置する間隙20を堰き止めるための構造及びその製造方法について鋭意検討を重ね、本開示に係る有機EL表示パネルの製造方法及び有機EL表示パネルに想到するに至ったものである。
≪本発明を実施するための形態の概要≫
本開示の実施の形態に係る有機EL表示パネルは、基板と、前記基板の上面に行列状に並んだ複数の画素電極と、前記基板上の少なくとも行方向に隣り合う前記画素電極の間に、列方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の列バンクと、長尺状の前記列バンクの一部が存在しない欠落部と、前記画素電極の上方において、前記欠落部を有する列バンクの行方向両側に隣接する列バンクとの間の2つの間隙それぞれに形成された一対の補修用バンクと、前記複数の列バンク間の間隙に形成された塗布膜からなる発光層と、前記発光層の上方に共通電極とを備え、前記補修用バンクは、前記2つの間隙内に存在し、前記欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである前記画素電極の上方であって、列方向に所定距離以上、離れた位置に、形成された一対の補修用行バンクと、前記列バンクと行方向に接続されていない前記補修用行バンクの端部と、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分とを列方向に接続する補修用列バンクとを含むことを特徴とする。
【0021】
係る構成により、製造過程において長尺状のバンクの一部分が欠落したときに、完成した有機EL表示パネルにおいて欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を、欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極を含むサブピクセルに限定することができる。
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、前記一対の補修用行バンクは、列方向における距離が最大となる位置に形成されている構成としてもよい。
【0022】
係る構成により、混色領域が欠落部とY方向の位置が少なくとも一部分において同じであるサブピクセルに含まれる最大の範囲に補修用バンクを形成することでできる。
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、前記2つの間隙内の一方に形成された前記発光層のうち、前記一対の補修用行バンクに挟まれた範囲に形成された発光層の部分は、前記欠落部を挟んで行方向に対向する間隙内に形成された発光層に含まれる有機発光材料を含み、前記一対の補修用行バンクに挟まれた範囲外に形成された発光層の部分は、前記対向する間隙内に形成された発光層に含まれる有機発光材料を含まない構成としてもよい。
【0023】
係る構成により、混色領域が欠落部とY方向の位置が少なくとも一部分において同じであるサブピクセルの範囲に限定され、混色に伴う表示品質の低下を欠落部とY方向に一部が重なるサブピクセル内に限定することができる。
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、さらに、前記基板上の少なくとも列方向に隣り合う前記画素電極の間には、行方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の行バンクを備え、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分は前記行バンクの上面に位置する構成としてもよい。
【0024】
係る構成により、製造過程において長尺状のバンクの一部分が欠落して欠落部3のY方向における端部が行バンク上面に位置する場合において、完成した表示パネルにおいて、上記欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を限定することができる。
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、前記画素電極の前記行バンクの下方に位置する部分には、前記画素電極の表面の一部が凹陥したコンタクトホールを有し、前記補修用列バンクは、平面視において前記コンタクトホールと重ならない位置に形成されている構成としてもよい。
【0025】
係る構成により、コンタクトホールの上方に形成した補修用行バンクにおいて平坦化層の厚みに相当する高さの分だけ高さが不足することを抑止できる。
また、本開示の実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板の上面に行列状に並んだ複数の画素電極を形成する工程と、前記基板上の少なくとも行方向に隣り合う前記画素電極の間に、列方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の列バンクを形成する工程と、長尺状の前記列バンクの一部が存在しない欠落部を検出する工程と、前記画素電極の上方において、前記欠落部が検出された列バンクの行方向両側に隣接する列バンクとの間の2つの間隙それぞれに、各一対の補修用バンクを形成する工程と、前記複数の列バンク間の間隙に有機発光材料を含むインクを塗布することにより発光層を形成する工程と、前記発光層の上方に共通電極を形成する工程とを有し、前記補修用バンクを形成する工程は、前記2つの間隙内に存在し、前記欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである前記画素電極の上方であって、列方向に所定距離以上、離れた位置に、一対の補修用行バンクを形成する第1の工程と、前記列バンクと行方向に接続されていない前記補修用行バンクの端部を、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分と列方向に接続する補修用列バンクを形成する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0026】
係る構成により、製造過程において長尺状のバンクの一部分が欠落したときに、欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を、欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極を含むサブピクセルに限定することができる有機EL表示パネルを製造できる。
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、前記第1の工程では、前記一対の補修用行バンクは列方向における距離が最大となる位置に形成される構成としてもよい。
【0027】
係る構成により、補助バンクの形成工程において、画素電極の上方に補修用行バンクを形成することにより、平坦化層の上面に形成した補修用行バンクは画素電極の厚みに相当する高さの分だけ高さが不足するといったデメリットや、補修用行バンクの材料が平坦化層や行バンク上に濡れ広がり硬化する前に流れてしまうといったデメリットを抑止することができる。
【0028】
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、前記発光層を形成する工程において、前記2つの間隙内の何れかに塗布されたインクのうち、前記一対の補修用行バンクに挟まれた範囲に塗布されたインクは、前記欠落部を挟んで行方向に対向する間隙内へ前記欠落部を通して流出し、前記一対の補修用行バンクにより列方向には前記範囲内に堰き止められる構成としてもよい。
【0029】
係る構成により、混色領域が欠落部3とY方向の位置が少なくとも一部分において同じであるサブピクセルの範囲に限定され、混色に伴う表示品質の低下を欠落部とY方向に一部が重なるサブピクセル内に限定する表示パネルを製造できる。
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、さらに、前記基板上の少なくとも列方向に隣り合う前記画素電極の間に、行方向に延伸する互いに並列に形成された複数の長尺状の行バンクを形成する工程を有し、欠落部を有する前記列バンクの最も近接する部分は前記行バンクの上面に位置している構成としてもよい。
【0030】
係る構成により、製造過程において長尺状のバンクの一部分が欠落して欠落部3のY方向における端部が行バンク上面に位置する場合において、欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を限定する表示パネルを製造できる。
また、別の態様では、上記の何れかの態様において、前記画素電極の前記行バンクの下方に位置する部分に、前記画素電極の表面の一部が凹陥したコンタクトホールを形成する工程を有し、前記補修用列バンクは、平面視において前記コンタクトホールと重ならない位置に形成される構成としてもよい。
【0031】
係る構成により、コンタクトホールの上方に形成した補修用行バンクにおいて平坦化層の厚みに相当する高さの分だけ高さが不足することを抑止できる表示パネルを製造できる。
≪実施の形態>≫
<有機EL表示装置の全体構成>
図1は、実施形態に係る表示パネル100を有する有機EL表示装置1の構成を示す模式ブロック図である。
【0032】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、表示パネル100と、これに接続された駆動制御部101とを有している。表示パネル100は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、図2に示すように、複数の発光素子(有機EL素子)10が基板上にマトリクス状に配列されている。駆動制御部101は、4つの駆動回路102~105と制御回路106とから構成されている。
【0033】
なお、表示パネル100に対する駆動制御部101の配置などは、これに限られない。
<有機EL表示パネルの構成>
図2は、表示パネル100の表示面側から見た概略構成を模式的に示す平面図である。図3は、表示パネル100を図2のA-A線で切断した一部拡大断面図である。表示パネル100は、いわゆるトップエミッション型であって、Z方向側が表示面となっている。
【0034】
表示パネル100の構成について、図2、3を参照しながら説明する。
図3に示すように、表示パネル100は、その主な構成として、下地基板11、画素電極12、ホール注入層13、列バンク14、有機発光層15、電子輸送層16、共通電極17、封止層18を備える。
ホール注入層13、電子輸送層16が、機能層に相当し、画素電極12と共通電極17によって、機能層が挟まれた構造となっている。
【0035】
そして、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れかの発光色に対応する有機発光層15を有する発光素子10R、10G、10Bをサブピクセルとし、図2に示すように、サブピクセルがマトリクス状に配設されている。
なお、図2においては、電子輸送層16、共通電極17、封止層18を取り除いた状態を示している。
【0036】
[下地基板]
下地基板11は、基板本体部11a、TFT(薄膜トランジスタ)層11b、平坦化層11cを有する。
基板本体部11aは、表示パネル100の基材となる部分であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル樹脂、アルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。また、基板本体部11aは、ポリイミド材料を用いて形成してもよい。
【0037】
TFT層11bは、基板本体部11aの表面にサブピクセル毎に設けられており、各々には薄膜トランジスタ素子を含む画素回路が形成されている。
平坦化層11cは、TFT層11b上に形成されている。平坦化層11cは、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の有機絶縁材料、SiO(酸化シリコン)やSiN(窒化シリコン)等の無機絶縁材料からなり、TFT層11bと画素電極12との間の電気的絶縁性を確保すると共に、TFT層11bの上面に段差が存在してもそれを平坦化して、画素電極12を形成する下地面への影響を抑える機能を持つ。
【0038】
[画素電極]
画素電極12は、下地基板11上に、サブピクセル毎に個別に設けられた画素電極であり、例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)等の光反射性導電材料からなる。本実施形態において、画素電極12は、陽極である。
【0039】
なお、画素電極12の表面にさらに公知の透明導電膜を設けてもよい。透明導電膜の材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いることができる。透明導電膜は、画素電極12とホール注入層13の間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。
[ホール注入層]
ホール注入層13は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなるホール注入層13は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層15に対しホールを注入および輸送する機能を有する。
【0040】
[バンク]
ホール注入層13の表面には、Y方向(列方向)に沿って伸長する平面視にて短冊状の列バンク14が複数本並列に設けられている。この列バンク14は、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなる。
各列バンク14の断面は、図3に示されるように台形であって、列バンク14同士の間には、列バンク14によって区画された間隙20(20R、20G、20B)が形成され、各間隙20の底部には、複数の画素電極12がY方向に列設され、その上に機能層としてのホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16が形成されている。
【0041】
列バンク14は、X方向に隣接する発光素子10どうしを区画すると共に、有機発光層15をウェット法で形成するときに、塗布されたインクがあふれ出ないようにする構造物としても機能する。
行バンク24は、列バンク14よりも高さが低く(図7参照)、各間隙20においてY方向に隣接する画素電極12と画素電極12との間に形成され、Y方向に隣接する発光素子10どうしを区画している。即ち、表示パネル100は、所謂ラインバンクを有する有機EL表示パネルである。
【0042】
複数の各間隙20において、形成されている複数の行バンク24のY方向の位置は同じである。各行バンク24はX方向(行方向)に伸長し、列バンク14の下を通り隣の行バンク24につながってX方向に伸長する短冊状となっている。従って、下地基板11上において、列バンク14と行バンク24の全体は格子状に形成されている(図2参照)。
[列バンクの欠落部について]
列バンク14aに存在する欠落部3について説明する。
【0043】
表示パネル100おいて、欠落部3は列バンク14aの一部が平坦化層11cの表面から欠落して長尺状の列バンク14aの一部が存在しない状態になっている部分を指す。このような列バンク14aの欠落は、列バンク14aの製造において偶発的に生じる。例えば、バンク材料層に対する露光の工程で、露光が不十分で重合が十分になされなかった箇所が、次の現像工程で洗い流されることによって発生する。このように欠落部3が生じた場合、その欠落部3を介して隣り合う間隙に形成されたインク層15aの間で混色が生じる。そのため、列バンク14aにおいて欠落部3が生じている箇所は、発光色が異なるインクの混色が生じて発光色不良の原因となるので、この箇所は欠陥としている。
【0044】
図4(a)は、列バンク14aに生じる欠落部3aの一例を示す模式斜視図である。図4(a)では、欠落部3aのY方向の一端3a1はY方向に隣り合う行バンク24の間に位置し、欠落部3aの他端3a2は行バンク24上に位置する。
また、図5(a)は、列バンク14aに生じる欠落部3aよりも長い欠落部3bの一例を示す模式斜視図である。図5(a)では、欠落部3bのY方向の一端3b1は行バンク24の間に位置し、欠落部3bの他端3b2も別の行バンク24上に位置する。なお、本明細書では欠落部3a、3bの区別しない場合は欠落部3とする。
【0045】
なお、列バンク14aに発生する欠陥は上述した欠落部3に限られない。1本の列バンク14aの中に異物が入り込み、その異物が列バンク14の壁面を隣の間隙20まで貫通している場合にも欠陥となる。例えば、列バンク14a上に異物が付着して欠陥となっている場合、列バンク14aの中や下に異物が存在する場合でも、異物とバンク材料との密着性が悪い場合には、隙間が生じてインクの流通路ができ欠陥となる。従って、異物を挟んで隣り合う間隙に形成されたインク層15aの間で混色が生じる原因となる。本開示は各種の欠陥のうち欠落部3を対象とした補修を目的とするものである。
【0046】
[補修用バンク]
長尺状の列バンク14の一部が欠落した欠落部3がある場合、欠落部3が存在する列バンク14の行方向両側に隣接する列バンク14との間の2つの間隙20それぞれに形成された一対の補修用バンク52を備えた構成を採る。
以下、補修用バンク52の構成について説明する。
【0047】
図4(b)は、一対の補修用バンク5X1、5X2が欠落部3aをY方向に挟むように形成された様子を示す模式斜視図である。図4(b)に示すように、欠落部3aとY方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極12a1、12a2(区別しない場合には画素電極12aとする)の上方であって、列方向に所定距離A1~A2以上、離れた位置A1、A2に、一対の補修用行バンク52X1、52X2(区別しない場合には補修用行バンク52Xとする)が形成される。ここで、位置A1、A2は、画素電極12a1、12a2の上方であって、Y方向における距離が最大となる位置としてもよい。
【0048】
このとき、一対の補修用行バンク52X1、52X2を、画素電極12a1、12a2の上方に形成することにより、滅点化するサブピクセルの数を最小にすることができる。
また、補修用行バンク52Xを、例えば、行バンク24上に形成した場合には、両者は共に有機材料からなるために親和性が高く、補修用行バンク52Xの材料が行バンク24上で濡れ広がり易く、補修用行バンク52Xの堰として十分な高さまで形成することができない場合がある。これに対し、図4(b)に示すように、補修用行バンク52Xを画素電極12Aの上方に形成することにより、必要な補修用行バンク52Xの高さを確保することができる。
【0049】
係る構成により、図4(b)に示す例では、欠落部3aを有する列バンク14のX方向両側の列バンク14との間の2つの間隙20それぞれにおいて、画素電極12a1の上方に形成された補修用行バンク52X1はX方向の両側の端部が、それぞれX方向に隣接する列バンク14と接続された構造となり、列バンク14間をつなぐ堰501を構築することができる。
【0050】
しかしながら、画素電極12a2に形成された補修用行バンク52X2はX方向の欠落部3a側の端部が、隣接する列バンク14とX方向に接続されていない構造となり、列バンク14間をつなぐ堰を構築することができない。そこで、列バンク14とX方向に接続されていない補修用行バンク52X2の端部と、当該端部に最も近接する列バンク14とをY方向に接続する補修用列バンク52Y2を付加した構成を採る。すなわち、画素電極12a2に形成された補修用バンク52は、補修用行バンク52X2と補修用列バンク52Y2からなる、平面視においてL字型の構成を採る。
【0051】
係る構成により、欠落部3aを有する列バンク14のX方向両側の列バンク14との間の2つの間隙20それぞれにおいて、画素電極12a2の上方に形成された補修用バンク52は、両側の端部が、それぞれX方向に隣接する列バンク14と接続された構造となる。
以上により、図4(b)に示すように、欠落部3aを有する列バンク14の両側にある間隙20に、補修用行バンク52X1からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて堰501が構成され、補修用行バンク52X2及び補修用列バンク52Y2からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて堰502が構成される。そして、この一対の堰501、502によって間隙20は、欠落部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠落部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られている。
【0052】
一方、図5(b)は、一対の補修用バンク5X1及び5Y1、5X2及び5Y2が欠落部3bをY方向に挟むように形成された様子を示す模式斜視図である。図5(b)に示すように、欠落部3bとY方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極12b1、12b2(区別しない場合には画素電極12bとする)の上方であって、列方向に所定距離A1~A2以上、離れた位置A1、A2に、一対の補修用行バンク52X1、52X2(区別しない場合には補修用行バンク52Xとする)が形成される。ここで、位置A1、A2は、画素電極12b1、12b2の上方であって、Y方向における距離が最大となる位置としてもよい。
【0053】
しかしながら、図5(b)に示す例では、画素電極12b1、b2に形成された補修用行バンク52X1、52X2は、共にX方向の欠落部3b側の端部が、隣接する列バンク14とX方向に接続されていない構造となり、列バンク14間をつなぐ堰を構築することができない。そこで、列バンク14とX方向に接続されていない補修用行バンク52X1、52X2の端部と、当該端部に最も近接する列バンク14とをY方向に接続する補修用列バンク52Y1、52Y2をそれぞれ付加した構成を採る。すなわち、画素電極12b1に形成された補修用バンク52は、補修用行バンク52X1と補修用列バンク52Y1からなり、画素電極12b2に形成された補修用バンク52は、補修用行バンク52X2と補修用列バンク52Y2からなり、それぞれ平面視においてL字型の構成を採る。
【0054】
係る構成により、欠落部3bを有する列バンク14のX方向両側の列バンク14との間の2つの間隙20それぞれにおいて、画素電極12b1、b2の上方に形成された2つの一対の補修用バンク52は、両側の端部が、それぞれX方向に隣接する列バンク14と接続された構造となる。
以上により、図5(b)に示すように、欠落部3bを有する列バンク14のX方向両側にある間隙20に、補修用行バンク52X1及び補修用列バンク52Y1からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて堰501が構成され、補修用行バンク52X2及び補修用列バンク52Y2からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて堰502が構成される。そして、この一対の堰501、502によって間隙20は、欠落部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠落部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られている。
【0055】
なお、補修用バンク52の幅(平面視における太さ)は、例えば、5~50μmである。
以上のとおり、本実施の形態では、欠落部3の存在する列バンク14の両側の間隙20では、一対の堰501、502により混色インクをせき止めて、混色領域が広がるのを防ぐことができる。
【0056】
[有機発光層]
有機発光層15は、キャリア(正孔と電子)が再結合して発光する部位であって、R、G、Bのいずれかの色に対応する有機材料を含む。
この有機発光層15は、上記の列バンク14によって区画されたY方向に伸長する溝状の間隙(図7の間隙20R、20G、20B参照)に形成されている。
【0057】
なお、図7に示す間隙20Rは赤色の発光層が形成されて赤色の発光素子10Rが形成される間隙であり、間隙20G、間隙20Bは、それぞれ緑色、青色の発光層が形成されて、緑色、青色の発光素子10G、10Bが形成される間隙である。
従って、互いに色の異なる有機発光層15が、列バンク14を挟んで配置されていることになる。
【0058】
有機発光層15の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8-ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2-ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等が挙げられる。
【0059】
表示パネル100では、欠落部3を有する列バンク14の両側の間隙20には、それぞれ、一対の補修用バンク52が形成されて、補修用バンク52の両端はX方向に両側の列バンク14と接続され堰501、502を形成している。そのため、Y方向に対向する一対の堰501、502によって間隙20は、欠落部3に近接する第1空間SAと、近接しない2つの第2空間SBとに仕切られて、第1空間SAに混色領域ができることがあっても、その混色領域は補修用バンク52を超えて第2空間SBに広がることはない。
【0060】
その結果、欠落部3を挟んで行方向に対向する2つの間隙20内の一方に形成された有機発光層15のうち、一対の補修用行バンク52X1、52X2に挟まれた範囲に形成された有機発光層15の部分は、欠落部3を挟んで行方向に対向する間隙20内に形成された有機発光層15に含まれる有機発光材料を含み、一対の補修用行バンク52X1、52X2に挟まれた範囲外に形成された有機発光層15の部分は、対向する間隙20内に形成された有機発光層15に含まれる有機発光材料を含まない構成を実現することができる。
【0061】
[電子輸送層]
電子輸送層16は、共通電極17から注入された電子を有機発光層15へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などで形成されている。
[共通電極]
共通電極17は、例えば、ITO、IZO等の導電性を有する光透過性材料で形成され全てのサブピクセルに亘って設けられている。
【0062】
本実施形態において、共通電極17は陰極である。
[封止層18]
封止層18は、ホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16、共通電極17を水分及び酸素から保護するために設けられている。
なお、図示はしないが、封止層18の上に、ブラックマトリクス、カラーフィルター等が形成されていてもよい。
【0063】
<表示パネルの製造方法>
図6は、表示パネル100の製造過程を示す模式工程図である。
図7は、表示パネル100の製造工程の一部を模式的に示す断面図である。
表示パネル100の製造方法について、図6の工程図に基づいて、図3、5を参照しながら説明する。
【0064】
まず、基板本体部11a上にTFT層11bを形成する(ステップS1)。
続いて、TFT層11bの上に、絶縁性に優れる有機材料を用いてフォトレジスト法で平坦化層11cを形成して下地基板11を作製する(ステップS2)。平坦化層11cの厚みは例えば約4μmである。なお、図3の断面図および図6の工程図には現れないが、平坦化層11cを形成するときに、コンタクトホール2(図2参照)を形成する。
【0065】
次に、下地基板11上に、真空蒸着法またはスパッタ法によって、厚み200[nm]程度の金属材料からなる画素電極を成膜する(ステップS3)。
続いて、スパッタ法などで酸化タングステンからなるホール注入層を、下地基板11および画素電極上に一様に成膜する(ステップS4)。
続いて、フォトリソグラフィー法によりサブピクセル毎にパターニングして画素電極12、ホール注入層13を形成する(ステップS5)。
【0066】
次に、行バンク24と列バンク14を以下のようにフォトリソグラフィー法で形成する。
まず行バンク24を形成するためのバンク材料(例えば、感光性を有するフォトレジスト材料)を、ホール注入層13上に一様に塗布する(ステップS6)。
その後、塗布されたバンク材料層に、行バンク24のパターンに合わせた開口を有するフォトマスクを重ねて、UV照射して露光する。そして未硬化の余分なバンク材料を現像液で除去することによって未焼成の行バンク24aを形成する。その後、未焼成の行バンク24を加熱焼成することにより、行バンク24を形成する(ステップS7)。
【0067】
次に、列バンク14を形成するためのバンク材料(例えば、ネガ型感光性樹脂組成物を)を、行バンク24を形成した基板上に一様に塗布する。
そのバンク材料層上に、形成しようとする列バンク14のパターンに合わせた開口を有するマスクを重ねて、マスクの上から露光する。その後、余分なバンク材料をアルカリ現像液で洗い出すことによって、バンク材料をパターニングして、列バンクのパターンを形成する(ステップS6)。その後、未焼成の列バンク14を加熱焼成することにより、行バンク14を形成する(ステップS7)。この焼成は、例えば、未焼成の列バンク14を、200℃~240℃の温度で60分間加熱することによって行う。 図7(a)に示すように行バンク24と、列バンク14とがパターン形成される。そして隣接する列バンク14同士の間に、間隙20が形成されている。 次に、このパターン形成された列バンク14における欠落部の発生を調べて(ステップS8)、欠落部があればその補修を行う。
【0068】
このバンク補修については、後で詳しく説明するが、検出した欠落部の近傍において、列バンク14の同士の間の間隙20に補修材を塗布し乾燥して堰部を形成することによって行う。図7(b)には、列バンク14間の間隙20に補修材が塗布され(ステップS9)、未焼成の補修用バンク52aが形成された状態を示している。
その後、未焼成の補修用バンク52aを、加熱焼成することによって、列バンク14、行バンク24に加えて、さらに、補修用バンク52が出来上がり、欠落部3の補修が完了する(ステップS10)。この焼成は、例えば、未焼成の補修用バンク52aを、200℃~240℃の温度で60分間加熱することによって行う。
【0069】
図7(c)は、この焼成によって、列バンク14が形成されると共に補修用バンク52が形成された状態、すなわち、列バンク14における欠落部3が補修された状態を示している。
このように形成された列バンク14において、さらに、次の工程で塗布するインクに対する列バンク14の接触角を調節する処理を施してもよい。あるいは、列バンク14の表面に撥液性を付与するために、所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等による表面処理や、プラズマ処理等を施してもよい。なお、列バンクに撥液性を付与するために、列バンクのバンク材料として、撥液性を持たせた材料を使用してもよい。
【0070】
なお、ここでは、列バンクと堰部はそれぞれ別々に焼成しているが、同時焼成してもよい。すなわち、ここでは、列バンクの形成、列バンクの焼成、欠落部の検出、堰部の形成、堰部の焼成の順番に処理を行っているが、列バンクの形成、欠落部の検出、堰部の形成、列バンク及び堰部の焼成の順番に処理を行ってもよい。
続いて、図7(d)に示すように、隣り合う列バンク14同士間の間隙20に、有機発光層15を形成するためのインクを塗布する。このインクは、有機発光層15を構成する有機材料と溶媒を混合したものであって、各間隙20内にインクジェット法により塗布する。インクジェット法により間隙20内にインクを塗布する方法は詳細を後述する。
【0071】
そして、塗布されたインク層15aに含まれる溶媒を蒸発させて乾燥し、必要に応じて加熱焼成することによって、図7(e)に示すように、各間隙20内に有機発光層15が形成される(ステップS11)。
次に、有機発光層15および列バンク14の上に、電子輸送層16を構成する材料を真空蒸着法で成膜して、電子輸送層16を形成する(ステップS12)。
【0072】
そして、ITO、IZO等の材料を、スパッタ法等で成膜して、共通電極17を形成する(ステップS13)。
そして、共通電極17の表面に、SiN、SiON等の光透過性材料をスパッタ法あるいはCVD法等で成膜して、封止層18を形成する(ステップS14)。
以上の工程を経て表示パネル100が完成する。
【0073】
[インクジェット法により間隙20内にインクを塗布する方法]
インクジェット法を用いて、有機発光層15のインクを間隙20内に塗布する方法の詳細について説明する。
有機発光層15の形成時には、有機発光層15を形成するための溶液であるインク15aを用いて、赤色サブピクセル用の間隙20R内に有機発光層15R、緑色サブピクセル用の間隙20G内に有機発光層15G、及び青色サブピクセル用の間隙20B内に有機発光層15Bを、複数のラインバンク間の各領域に形成する。なお、有機発光層15Rと、有機発光層15G又は有機発光層15Bとは厚みが異なっていてもよい。例えば、間隙20R内に塗布するインクの量を、間隙20B及び間隙20G内に塗布するインクの量よりも多くすることにより、有機発光層15Rの厚みを、有機発光層15B及び有機発光層15Gの厚みよりも大きく形成することができる。
【0074】
説明を簡略にするため、ここでは、ノズルから吐出するインクの量を第1の条件に設定して基板上の複数の第1色目の間隙20にインクを塗布し、次に、ノズルから吐出するインクの量を第2の条件に設定してその基板上の複数の第2色目の間隙20にインクを塗布し、次にノズルから吐出するインクの量を第3の条件に設定してその基板上の複数の第3色目の間隙20にインクを塗布する方法で、3色全部の間隙にインクを順次塗布する。基板に対して第1色目の間隙20へのインクの塗布が終わると、次に、その基板の第2色目の間隙20にインクを塗布し、さらに、その基板の第3色目の間隙20にインクを塗布する工程が繰り返し行われ、3色の間隙20用のインクを順次塗布する。なお、インクを吐出するノズルは、第1色目のインクを吐出するものと、第2色目のインクを吐出するものと、第3色目のインクを吐出するものと、それぞれ異なるノズルを使用してもよい。
【0075】
(列バンク14間の間隙20に一様に塗布する方法)
次に、1色の間隙中にインク(例えば、赤色間隙用のインク)を塗布する方法について説明する。図8は、基板に対して発光層形成用のインクを塗布する工程を示す図であって、列バンク14間の間隙20に一様に塗布する場合の模式図である。
有機発光層15は、発光領域(図2における列バンク14と行バンク24に囲まれた領域)だけでなく、隣接する非自己発光領域(図2における行バンク24上の領域)まで連続して延伸されている。このようにすると、有機発光層15の形成時に、発光領域に塗布されたインクが、非自己発光領域に塗布されたインクを通じて列方向に流動でき、列方向の画素間でその膜厚を平準化することができる。よって、列方向に大きな膜厚むらが発生しにくく画素毎の輝度むらや寿命低下が改善される。
【0076】
本塗布方法では、基板は、列バンク14がY方向に沿った状態で液滴吐出装置の作業テーブル上に載置され、Y方向に沿って複数の吐出口3031がライン状に配置されたインクジェットヘッド301をX方向に走査しながら、各吐出口3031から列バンク14同士の間隙20内に設定された着弾目標を狙ってインクを着弾させることによって行う。
なお、同一の塗布量にて有機発光層15のインクを塗布する領域は、x方向に隣接して並ぶ3つの領域の中の1つである。
【0077】
有機発光層15の形成方法はこれに限定されず、インクジェット法やグラビア印刷法以外の方法、例えばディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷、凸版印刷等の公知の方法によりインクを滴下・塗布してもよい。
[欠落部3の検出と補修用バンク52の形成]
上記製造方法で説明したように、正確には、未焼成の列バンク14a、未焼成の補修用バンク52aを形成した後、これら未焼成の列バンク14a、補修用バンク52aを加熱焼成して硬化させることによって、最終的な列バンク14、補修用バンク52が形成される。しかし、未焼成の列バンク14a、未焼成の補修用バンク52aは、ある程度固体化して安定なバンク形状、堰形状となっているので、本明細書では、未焼成の列バンク14aや未焼成の補修用バンク52についても、単に列バンク14a、補修用バンク52と記載して説明する。
【0078】
列バンク14aにおける欠落部3の検出は、例えば、下地基板11上に形成した列バンク14aの表面画像を撮影し、その表面画像のパターン検査によって行う。
図9は、バンク欠落部の検出と、その補修に用いる補修装置の一例を示す概略構成図である。
この補修装置200においては、ベース201上に、上記の下地基板11を載置するテーブル202と、撮像素子211、ニードルディスペンサ213が取り付けられたヘッド部210とを有している。そして、テーブル202は、コントローラ230のCPU231の指示に基づいてY方向に移動でき、ヘッド部210は、CPU231の指示によって、X方向及びZ方向に移動できるようになっている。
【0079】
従って、ヘッド部210に取り付けられているニードルディスペンサ213は、CPU231の指示によって、テーブル202上に載置された下地基板11の上方で、下地基板11に対して、X方向、Y方向、Z方向に相対移動することができる。
なお、ここでは、下地基板11上に画素電極12、ホール注入層13、列バンク14a、行バンク24が形成されたものを、下地基板11として表す。
【0080】
補修用バンク52の形成は、間隙20内において、補修用バンク52を形成しようとするライン(補修用バンク形成ライン)に沿って設定された複数の位置に、ニードルディスペンサ213から補修材を塗布することによって行う。
(補修用バンク形成ラインの設定)
先ず、図4(a)に示した欠落部3aのY方向の一端3a1Y方向に隣り合う行バンク24の間に位置し、他端3a2はともに行バンク24上に位置する場合について説明する。図10(a)は、図4(a)の欠落部3aの周辺に設定された、ニードルディスペンサによる補修材料の塗布位置を示す模式平面図である。
【0081】
図10(a)に示すように、列バンク14a上に欠落部3aが存在する場合、欠落部3aのY方向における両端3a1、3a2の座標位置を取得し、取得した座標位置に基づき、欠落部3aとY方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極12a1、12a2を特定する。そして、画素電極12a1、12a2の上方において、列方向に所定距離2×a以上、離れた位置A1、A2にX方向の補修用行バンク形成ラインLX1、LX2(以後、ラインLX1、LX2とする)を設定する。図10(a)に示す点P1~P4は、ラインLX1、LX2に沿って設定されたニードルディスペンサによる塗布位置を表す。ここで、ラインLX1、LX2は、画素電極12a1、12a2の上方において、ラインLX1、LX2のY方向における距離が最大となる位置に設定される構成としてもよい。
【0082】
次に、欠落部3aのY方向における両端3a1、3a2の座標位置と、ラインLX1、LX2とのY方向の位置関係を比較する。
図10(a)の例では、欠落部3aのY方向の一端3a1はY方向に隣り合う行バンク24の間に位置する。そのため、画素電極12a1では、ラインLX1のY方向の位置が欠落部3aのY方向の端3a1の座標よりも上方に位置する関係にある。したがって、ラインLX1上に形成される補修用バンク52X1の端部は列バンク14aに接続されると判定する。
【0083】
これに対し、欠落部3aの他端3a2は行バンク24上に位置する。そのため、画素電極12a2では、ラインLX2のY方向の位置が欠落部3aのY方向の端3a2の座標よりも上方に位置する関係にある。したがって、ラインLX2上に形成される補修用バンク52X2の端部は列バンク14aに接続されないと判定する。
この場合、点P1~P4のうち欠落部3aに最も近いP4から、少なくとも欠落部3aのY方向の端3a2までY方向に補修用列バンク形成ラインLY2(以後、ラインLY2とする)を設定する。図10(a)に示す点P5~P7は、ラインLY2に沿って設定されたニードルディスペンサによる塗布位置を表す。このとき、点P7は平面視において行バンク24上に位置に設定されることが必要である。
【0084】
次に、図5(a)に示した欠落部3bのY方向の両端3b1、3b2はともにY方向に隣り合う行バンク24の間に位置する場合について説明する。図11(a)は、欠落部3bの周辺に設定された、ニードルディスペンサによる補修材料の塗布位置を示す模式平面図である。
図11(a)に示す例でも、同様に欠落部3bのY方向における両端3b1、3b2の座標位置に基づき、欠落部3bとY方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極12b1、12b2を特定する。そして、画素電極12b1、12b2の上方において、位置A1、A2にX方向のラインLX1、LX2を設定する。ラインLX1、LX2に沿ってニードルディスペンサによる塗布点P1~P4を設定する。
【0085】
次に、欠落部3bのY方向の両端3b1、3b2の座標位置と、ラインLX1、LX2とのY方向の位置関係を比較する。
図11(a)の例では、欠落部3bのY方向の両端3b1、3b2はともにY方向に隣り合う行バンク24の上面に位置する。そのため。ラインLX1のY方向の位置が欠落部3bのY方向の端3b1の座標よりも下方に位置し、ラインLX2のY方向の位置が欠落部3bのY方向の端3b2の座標よりも上方に位置する関係にある。したがって、画素電極12b1、12b2の両方においてラインLX1、LX2上に形成される補修用バンク52X1、52X2の端部は列バンク14aに接続されないと判定する。
【0086】
この場合、点P1~P4のうち欠落部3aに最も近いP4から、少なくとも欠落部3aのY方向の両端3b1、3b2まで、それぞれY方向にラインLY1、LY2を設定する。図10(a)に示す点P5~P7は、ラインLY1、LY2に沿って設定されたニードルディスペンサによる塗布位置を表す。このとき、点P7は平面視において行バンク24上に位置に設定されることが必要である。
【0087】
(補修材の塗布及び焼成)
図12(a)~(g)は、塗布点P1、P2…に、補修材を順次塗布することによって、補修用バンク52が形成される様子を模式的に示す図である。
補修装置200は、このように設定した塗布点P1、P2、P3、P4あるいは、P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7において、順次、ニードル213aで補修材を塗布することによって補修用バンク52を形成する。ニードルディスペンサ213は、その先端部分に補修材を収納するタンク213bが取り付けられ、タンク213bを貫通するようにニードル213aが上下に移動することによって、ニードル213aに付着させた補修材をマイクロリットル単位で塗布できるようになっている。
【0088】
まず図12(a)、(b)に示すように、ニードル213a、タンク213bを塗布点P1上方に位置させて、ニードル213aを下方に移動してニードル213aに補修材を付着させて、ニードル213aを塗布点P1に近づけることによって補修材を塗布点P1に塗布する。
補修材は、塗布されるまでは流動性を有するが、塗布後は山形状が維持され、図12(c)に示すように、塗布点P1に補修材の山が形成される。
【0089】
続いて、図12(d)に示すように、ニードル213aをタンク213b内に引き上げて、ニードル213a、タンク213bを、塗布点P2に移動させる。そして、図12(e)に示すように、ニードル213aを下方に移動して、補修材を付着させたニードル213aを塗布点P2に近づけることによって補修材を塗布点P2に塗布する。
それによって図12(f)に示すように、塗布点P2に形成される補修材の山は、塗布点P1に形成されている補修材の山と繋がる。
【0090】
続いて、図12(g)に示すように、ニードル213aを引き上げて、塗布点P3に移動させる。
同様にして、塗布点P3、P4あるいは、P3、P4、P5、P6、P7に補修材の山を形成して、塗布点P2の補修材の山とつなげる。
このようにして、欠落部3を有する列バンク14a上の点A1から、隣の列バンク14aに亘る形状で、補修材の山が連なることになる。そして、この塗布された補修材の山を、乾燥させ、必要に応じて露光を行うことによって補修用バンク52が形成される。
【0091】
また、その後の同時焼成工程において、塗布された補修材が硬化するので、より安定した物性を有する補修用バンク52が形成される。
(補修用バンク52の形成)
図10(b)は、図4(a)の欠落部3aの周辺に形成された、補修用バンク52が形成された状態を示す模式平面図である。図10(b)に示すように、欠落部3aを有する列バンク14のX方向両側の列バンク14との間の2つの間隙20それぞれにおいて、図10(a)に示したラインLX1、LX2、LY2に沿って、それぞれ点P1~P4、点P1~P4、点P5~P7の位置においてニードルディスペンサ213による補充材の塗布と、例えばレーザー等を用いた焼成とを行う。
【0092】
これより、図10(b)に示すように、欠落部3aを有する列バンク14のX方向の両側にある間隙20に、補修用行バンク52X1からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて、両側の端部がX方向に隣接する列バンク14に接続された堰501を形成する。また、補修用行バンク52X2及び補修用列バンク52Y2からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて、両側の端部がX方向に隣接する列バンク14に接続された堰502が形成される。
【0093】
そして、Y方向に対向する一対の堰501、502によって間隙20は、欠落部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠落部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られている。
また、図11(b)は、図5(a)の欠落部3bの周辺に形成された、補修用バンク52が形成された状態を示す模式平面図である。図11(b)に示す例では、欠落部3bを有する列バンク14のX方向両側の列バンク14との間の2つの間隙20それぞれにおいて、図11(a)に示したラインLX1、LX2、LY1、LY2に沿って、それぞれ点P1~P4、点P1~P4、点P5~P7、点P5~P7の位置においてニードルディスペンサ213による補充材の塗布と、例えばレーザー等を用いた焼成とを行う。
【0094】
これより、図5(b)に示すように、欠落部3bを有する列バンク14の両側にある間隙20に、補修用行バンク52X1及び補修用列バンク52Y1からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて、両側の端部がX方向に隣接する列バンク14に接続された堰501が形成される。また、補修用行バンク52X2及び補修用列バンク52Y2からなる補修用バンク52がそれぞれ形成されて、両側の端部がX方向に隣接する列バンク14に接続された堰502が形成される。そして、Y方向に対向する一対の堰501、502によって間隙20は、欠落部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠落部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られている。
【0095】
以上のように各列バンク14の欠落部3を補修した上で、次のステップS9(図6参照)の発光層形成工程を行うことによって、後述するように、インクの混色領域を制限するとともに、第1空間SA、第2空間SBに、インクが塗布され、有機発光層15が形成される。
このように、行バンク24の内側の画素の発光領域に一対の堰501、502を設けることにより、一対の堰501、502の外側では、正常発光が望めるため、表示品質が低下するサブピクセルの面積を削減することができる。
【0096】
なお、補修材としては、光や熱を加えることによって硬化する樹脂の組成物を用いることができる。
樹脂としては、例えば、(メタ)アクロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基などのエチレン性の二重結合を有する硬化性の樹脂が挙げられる。
また、樹脂に対して架橋する架橋剤、例えば、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物を添加してもよい。
【0097】
また、この樹脂構造の中に、フッ素が導入されているフッ化ポリマーを用いてもよい。補修材の樹脂にフッ素が導入されることによって、形成される補修用バンク52に撥液性を付与することができる。あるいは、樹脂に各種溌液剤を添加してもよい。撥液剤の添加量は0.01~10wt%とする。撥液剤の添加量をこの範囲にすることで、樹脂組成物の貯蔵安定性が良好で、且つ形成される補修用バンク52の撥液性も良好となる。
【0098】
なお、補修材として、列バンク14aを形成するバンク材料と同じものを用いてもよい。
上記補修材を構成する樹脂の組成物に、必要に応じて、溶剤、光重合開始剤を適宜添加してもよい。
溶剤は、樹脂に対する溶解性を有するもので、沸点が150~250℃程度の溶剤を1種類以上用いてもよい。
【0099】
光重合開始剤としては、市販の各種光重合開始剤を用いることができる。
補修材の塗布時において、補修材の固形分は、例えば20~90wt%に調整し、粘度は例えば10~50cP(センチポイズ)に調整する。
光重合開始剤の添加量は、焼成時における露光量に応じて調整するが、例えば全固形分に対して0.1~50重量%、好ましくは5重量%~30重量%である。
【0100】
(補修用バンク52の製造における効果)
次に、補修用バンク52の製造方法における詳細について説明する。
図13(a)は、実施形態に係る表示パネル100を図11(b)のB-B線で、(b)はC-C線で、(c)はD-D線で切断した一部拡大断面図である。
図13(a)において、平坦化層11cの厚みは約4μm、列バンク14の高さは約1μm、画素電極12の厚みは約0.2μmである。有機発光層15の形成工程において、インク15aの流出を防止するために必要な堰の高さ521は概ね0.7~0.8μmであり、図13(a)に示すように画素電極12(ホール注入層13が積層されている場合はホール注入層13の上面)の上方に高さ521以上の補修用行バンク52Xを形成することが好ましい。仮に、画素電極12と画素電極12との間の平坦化層11cの上面に補修用バンク(52)を形成した場合には、画素電極12の厚みに相当する高さの分だけ補修用行バンク52Xの高さが不足してインク15aが流出する場合がある。
【0101】
また、補修用バンク(52)を、画素電極12と画素電極12との間の平坦化層11cの上面に形成した場合には、両者は共に有機材料からなるために親和性が高く、補修用バンク(52)の材料が平坦化層11c濡れ広がり易く、例えば、レーザーで硬化する前に流れてしまい、補修用バンク(52)は堰として十分な高さまで形成することができない場合がある。これに対し、表示パネル100では、補修用行バンク52Xを画素電極12Aの上方に形成することにより、必要な補修用行バンク52Xの高さを確保することができる。
【0102】
次に、図13(b)において、行バンク24の高さは約0.5μmである。図13(a)に示すように、画素電極12と画素電極12との間隙の上方に位置する行バンク24の上面には、最大、画素電極の厚み約0.2μmに相当する深さの凹部が存在する。当該凹部を跨いで補修用列バンク52Yを形成した場合には、補修用列バンク52Yの上面にも同じ位置にも同等の深さの凹部が形成される。
【0103】
補修用列バンク52Yを堰に必要な高さ524で形成したとき、行バンク24の上面に形成される補修用列バンク52Yの部分は行バンク24の厚み約0.5μmだけ、かさ上げされる。そのため、補修用列バンク52Yの上面に、最大、画素電極の厚み約0.2μmに相当する深さの凹部が存在しても、堰に必要な高さ524(約0.7~0.8μm)を下回ることはない。
【0104】
一方、平坦化層11cに形成されるコンタクトホール2の深さは平坦化層11cの厚みと同じ約4μmである。したがって、コンタクトホール2の上方の補修用列バンク52Yの上面に補修用列バンク52Yを形成した場合には、補修用列バンク52Yの上面に平坦化層11c約4μmに相当する深さの凹部が形成されるので、形成された補修用列バンク52Yは堰として必要な高さ524を確保することができない。そのため、補修用列バンク52Yはコンタクトホール2の上方を避けて形成することが必要となる。表示パネル100ではコンタクトホール2の上方を避けて補修用列バンク52Yが形成されているので、補修用列バンク52Yは堰に必要な高さを確保でき、インクの流出を抑止できる。
【0105】
次に、図13(c)は、仮に、欠落部3と同じ位置に列バンク14の欠落した部分を補うように補修用列バンク(52)を形成することを想定したときの模式図である。この場合、画素電極12と画素電極12との間の平坦化層11cの上面に補修用列バンク(52)を形成することになるので、図13(a)(b)に示した例と同様の理由により、堰に必要な高さ524(約0.7~0.8μm)を確保することができない。
【0106】
図14(a)(b)比較例として想定される堰部が形成された表示パネルの状態を示す模式平面図である。
先ず、図14(a)は、仮に、欠落部3が存在する列バンク14の行方向両側に隣接する列バンク14との間の2つの間隙20において、列方向に所定距離A1~A2だけ離れた位置A1、A2に、2つの間隙20を横断するような一対の補修用行バンク52Iを形成することを想定したときの模式平面図である。
【0107】
この場合、補修用行バンク52Iと欠落部3とが交差する位置A1、A2付近において、補修用行バンク52Iが、画素電極12と画素電極12との間の平坦化層11cの上面に形成される。したがって、上述したように、補修用行バンク52Iは画素電極12の厚みに相当する高さの分だけ補修用行バンク52Xの高さが不足する。また、補修用バンク(52)の材料が平坦化層11cに濡れ広がり易く硬化する前に流れてしまう。そのため、補修用行バンク52Iは堰として十分な高さまで形成することができない場合がある。
【0108】
また、補修用バンク52は透光性を有する補修材からなるため、同じく透光性を有する平坦化層11c上に補修用バンク52を形成することは、平面視したときの視認性が悪くバンクの補修工程における補修材を塗布する際の作業性が著しく低下する。そのため、補修用バンク52は遮光性を有する画素電極12が形成された領域の上方に形成することが好ましい。
【0109】
次に、図14(b)は、欠落部3のY方向における端部が行バンク24上面に位置する場合に、欠落部3Y方向における端部と、欠落部3aを有する列バンク14のX方向両側の列バンク14とを接続する2つの補修用行バンク52Jを行バンク24上面に形成することを想定したときの模式平面図である。
この場合、上述したように補修用行バンク52Jと行バンク24とは共に有機材料からなるために親和性が高く、補修用行バンク52Xの材料が行バンク24上で濡れ広がり易く、補修用行バンク52Xの堰として十分な高さまで形成することができない場合がある。
【0110】
また、平面視したときに行バンク24の範囲にはコンタクトホール2が形成されているので、補修用行バンク52Jはコンタクトホール2の上方を通過するように形成されることになる。そのため、上述したように補修用行バンク52Jの上面に平坦化層11c約4μmに相当する深さの凹部が形成されることになり、堰に必要な高さを確保することが難しい。
【0111】
これに対し、図4(b)に示すように、補修用行バンク52Xを画素電極12Aの上方に形成することにより、堰として必要な補修用行バンク52Xの高さを確保することができる。
表示パネル100では、補修用列バンク52Yの一部分は行バンク24の上面に形成される構成を採る。しかしながら、表示パネル100では、補修用列バンク52Yは、コンタクトホール2の上方を避けて形成されているので、コンタクトホール2に起因する高さの減少はない。また、補修用列バンク52Yは、例えば、図10(b)、図11(b)に示すようにY方向の端部が、それぞれ列バンク14及び画素電極12の上方に形成された補修用列バンク52Yと接続されているので、行バンク24の上面と材料上の親和性が高い場合でも、補修用列バンク52Yの材料が行バンク24上で濡れ広がることを抑止できる。そのため、表示パネル100では、補修用列バンク52Yは行バンク24の上面に形成される場合であっても、堰として必要な高さを確保でき、インクの流出を抑止できる。
【0112】
<表示パネル100の効果>
次に、実施形態に係る表示パネル100と比較例に係る表示パネルとを比較してインクの混色領域の広がりについて説明する。
図15は、表示パネル100にインク層が形成された状態を示す模式平面図である。本実施形態に係る表示パネル100において、欠落部3を有する列バンク14の周囲に一対の補修用バンク52が形成された後、その列バンク14に隣接する一方の間隙20(R)に、赤の発光色のインクが塗布されてインク層15a(R)が、他方の間隙20(G)に緑の発光色のインクが塗布されてインク層15a(G)が形成された状態を示す平面図である。図16は、図8に示した比較例に係る表示パネルにおいて、同様に列バンク14を挟んで隣接する間隙20(R)にインク層15a(R)が形成され、間隙20(G)に)インク層15a(G)が形成された状態を示す平面図である。
【0113】
比較例では、図16に示すように、欠落部3により補修用バンク52と列バンク14とが接続されておらず、補修用バンク52による堰が形成されていない。そのため、間隙20(R)に塗布された赤色インクと間隙20(G)に塗布された緑色インクとが、欠落部3を介して混ざり合ってできる混色領域は、補修用バンク52と列バンク14との隙間を通り抜けて流出し(FL1、FL2)、間隙20(R)及び間隙20(G)では赤色インクと緑色インクとが混色してY方向に広がる。この混色領域は、間隙20に沿ってY方向に長く伸びて、その長さが数cm程度になることもある。そして、製造された表示パネル100において、このような混色領域では、本来の発光色とは異なった発光色で発光する。なお、カラーフィルターを設置する場合には、余計な色がカットされるため、本来の発光色が観察されるが、カラーフィルター透過後の輝度が低下してしまう場合がある。また、混色領域は、製造後、発光層の膜厚が所望のものとは異なるものになり、発光効率や電圧が所望のものから変化する場合がある。
【0114】
これに対して、表示パネル100では、図15に示すように、欠落部3を有する列バンク14の両側の間隙20のうち、緑赤インクを塗布された間隙20(G)内に一対の補修用バンク52が形成されており、補修用バンク52の両端はX方向に両側の列バンク14と接続されY方向に対向する1対の堰501、502を形成している。また、緑色インクを塗布された間隙20(G)内に一対の補修用バンク52が形成されており、補修用バンク52の両端はX方向に両側の列バンク14と接続され同様に堰501、502を形成している。このY方向に対向する一対の堰501、502によって間隙20は、欠落部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠落部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られている。そのため、図15に示すように、第1空間SAに混色領域ができることがあっても、その混色領域は補修用バンク52を超えて第2空間SBに広がることはない。すなわち、混色領域は、欠落部3とY方向の位置が少なくとも一部分において同じであるサブピクセルの範囲に限定され、本来の発光色とは異なった発光色で発光する、カラーフィルター透過後の輝度が低下する、あるいは、発光効率や電圧が所望のものから変化するといった、混色に伴う表示品質の低下や現象の発生を欠落部3とY方向に一部が重なるサブピクセル内に限定することができる。
【0115】
以上のとおり、実施の形態に係る表示パネル100及び表示パネル100の製造方法によると、製造過程において長尺状のバンクの一部分が欠落したときに、完成した有機EL表示パネルにおいて欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を、欠落部と列方向の位置が少なくとも一部分において同じである画素電極を含むサブピクセルに限定することができる。また、バンクの一部分が欠落して欠落部3のY方向における端部が行バンク24上面に位置する場合において、欠落に伴い表示品質が低下するサブピクセルの範囲を限定することができる。
【0116】
<変形例>
実施の形態に係る表示パネル100を説明したが、本開示は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、表示パネル100の変形例を説明する。
【0117】
<変形例1>
上述の実施の形態において、補修用バンク52を形成する位置は画素電極12の上方であるとしたが、実施の形態に係る表示パネル100における補修用列バンク52Yに加えて、図14(a)に示すような補修用行バンク52と欠落部3とが交差する位置A1、A2付近において、補修用行バンク52が、画素電極12と画素電極12との間の平坦化層11cの上面に形成される構成を採ってもよい。平坦化層11cの上面に形成した補修用行バンク52は画素電極12の厚みに相当する高さの分だけ高さが不足したり、補修用行バンク52の材料が平坦化層11cに濡れ広がり易く硬化する前に流れてしまうといったデメリットは、近傍に存在する画素電極12の上方に形成された補修用バンク52と接続されることにより抑制され、欠落部3のY方向の長さを減少することができる。その結果、表示パネル100における補修用列バンク52と比べてサブピクセル内において混色領域の面積を縮小できる。
【0118】
<その他の変形例>
実施の形態に係る表示パネル100では、画素には、赤色画素、緑色画素、青色画素の3種類があったが、本発明はこれに限られない。例えば、発光層が1種類であってもよいし、発光層が赤、緑、青、黄色に発光する4種類であってもよい。
また、上記実施の形態では、画素電極12と共通電極17の間に、ホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16が存在する構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、画素電極12と共通電極17との間に有機発光層15のみが存在する構成としてもよい。また、例えば、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層などを備える構成や、これらの複数又は全部を同時に備える構成であってもよい。また、これらの層はすべて有機化合物からなる必要はなく、無機物などで構成されていてもよい。
【0119】
上記実施形態及び各変形例においては、トップエミッション型有機ELパネルを例にバンク補修方法及びバンク形態について説明したが、ボトムエミッション型有機ELパネルにおいてもこれらは適用可能である。
上記実施形態及び各変形例においては、有機EL表示パネルを例に、バンク補修方法及びバンク形態について説明したが、ラインバンク構造にウェット方式で自発光層を形成する表示パネルであれば有機EL表示パネルに限られるものではない。例えば、electroluminescence quantum dotを分散させた溶媒をラインバンク構造にウェット方式で形成する場合にも適用でき、同様の効果を奏する。
【0120】
≪補足≫
以上で説明した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない工程については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0121】
また、上記の工程が実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記工程の一部が、他の工程と同時(並列)に実行されてもよい。
また、発明の理解の容易のため、上記各実施の形態で挙げた各図の構成要素の縮尺は実際のものと異なる場合がある。また本発明は上記各実施の形態の記載によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0122】
また、各実施の形態及びその変形例の機能のうち少なくとも一部を組み合わせてもよい。
さらに、本実施の形態に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、例えば、家庭用もしくは公共施設、あるいは業務用の各種表示装置、テレビジョン装置、携帯型電子機器用ディスプレイ等に用いられる有機EL表示パネル、有機EL表示装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 有機EL表示装置
3 欠落部
10 有機EL素子
11 下地基板
14、14a 列バンク
15 有機発光層
20 間隙
24、24a 行バンク
52 補修用バンク
52X 補修用行バンク
52Y 補修用列バンク
501、502 堰
100 表示パネル
200 補修装置
213 ニードルディスペンサ
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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