(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】動釣合い試験機用の被試験体支持装置
(51)【国際特許分類】
G01M 1/02 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
G01M1/02
(21)【出願番号】P 2019128552
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2019051622
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久松 正典
(72)【発明者】
【氏名】稲田 圭志郎
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004355(JP,A)
【文献】実開平05-070810(JP,U)
【文献】特開2000-039376(JP,A)
【文献】特開2004-184214(JP,A)
【文献】特開2005-249393(JP,A)
【文献】特開2003-004597(JP,A)
【文献】特開平06-281525(JP,A)
【文献】特開2007-331080(JP,A)
【文献】特開2000-218414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00- 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体が載せられるテーブルと、テーパー状の内周面を有して拡縮可能であり、前記テーブルの軸線方向に相対移動可能かつ前記テーブルの周方向に相対移動不能に前記テーブルに連結され、被試験体の基準穴に嵌め込まれるコレットとを有し、前記テーブルおよび前記コレットのサイズに応じて複数種類存在する交換セットと、
動釣合い試験機において縦軸まわりに回転駆動されるスピンドルに固定され、前記交換セットが着脱されるベースユニットとを含み、
前記ベースユニットは、
前記軸線方向が縦になった状態の前記コレット内に挿通され、前記内周面に沿って上側へ向けて小径になるテーパー軸と、
前記コレットを伴って前記テーパー軸に対して昇降する第1昇降部と、
前記テーブルを下側から支える支持部とを有する、動釣合い試験機用の被試験体支持装置。
【請求項2】
前記コレットには、第1爪が設けられ、
前記テーブルには、第2爪および位置決め穴が設けられ、
前記第1昇降部には、前記第1爪が挿入される第1縦溝と、前記第1縦溝から前記周方向に延びる第1内爪とが設けられ、
前記支持部には、前記第2爪が挿入される第2縦溝と、前記第2縦溝から前記周方向に延びる第2内爪と、前記支持部を縦に貫通して前記位置決め穴に下側から対向する貫通穴とが設けられ、
前記ベースユニットは、前記支持部を昇降させる第2昇降部と、前記支持部の下降に応じて前記貫通穴を通って前記位置決め穴に下側から嵌り込んで前記テーブルを前記周方向に位置決めする位置決めピンとをさらに含む、請求項1に記載の動釣合い試験機用の被試験体支持装置。
【請求項3】
前記軸線方向が縦になった状態の前記コレットには、それぞれの外径が異なって上側へ向けて次第に小径になるように並んだ複数の円筒部と、第1爪とが設けられ、
前記テーブルには、第2爪と、上側へ窪む凹部と、前記凹部よりも上側に深い逃がし穴とが設けられ、
前記第1昇降部には、前記第1爪が挿入される第1縦溝と、前記第1縦溝から前記周方向に延びる第1内爪とが設けられ、
前記支持部には、前記第2爪が挿入される第2縦溝と、前記第2縦溝から前記周方向に延びる第2内爪とが設けられ、
前記ベースユニットは、前記支持部を昇降させる第2昇降部と、上側へ突出した第1支持ピンと、前記第1支持ピンよりも短く突出した第2支持ピンとをさらに含み、
前記交換セットと前記ベースユニットとの前記周方向の相対位置に応じて、前記第1爪と前記第1内爪とが係合して前記第2爪と前記第2内爪とが係合した状態で、前記第1支持ピンおよび前記第2支持ピンのうち、一方が前記凹部に下側から対向して他方が前記逃がし穴に下側から対向し、
前記第1支持ピンが前記凹部に下側から対向して前記第2支持ピンが前記逃がし穴に下側から対向した状態での前記支持部の下降に応じて、前記第1支持ピンが前記凹部に嵌まり込んで前記テーブルを第1高さ位置に位置決めし、
前記第2支持ピンが前記凹部に下側から対向して前記第1支持ピンが前記逃がし穴に下側から対向した状態での前記支持部の下降に応じて、前記第1支持ピンが前記逃がし穴に嵌まり込み、前記第2支持ピンが前記凹部に嵌まり込んで前記テーブルを前記第1高さ位置よりも低い第2高さ位置に位置決めする、請求項1に記載の動釣合い試験機用の被試験体支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動釣合い試験機に用いられる被試験体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の動釣合い試験機では、係脱機構を有するコレットチャックが、主軸のテーパー部に挿入された状態で、ワーク受け上の供試体のハブ部にセットされる。ドローバーが、係合位置にある係脱機構に係合した状態で、コレットチャックをテーパー部に対して相対移動させると、コレットチャックが拡径して供試体を把持する。係脱機構が解放位置になるとドローバーに係合しなくなるので、供試体の種類変更に伴う段取り替えとして、コレットチャックを交換のために主軸に対して着脱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
供試体の種類によっては、段取り替えの際に、コレットチャックを交換するだけでなく、ワーク受けも交換する必要があるので、特許文献1の動釣合い試験機では、段取り替えの円滑化のために改善の余地がある。
【0005】
この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、段取り替えの円滑化を図れる動釣合い試験機用の被試験体支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被試験体(20)が載せられるテーブル(3)と、テーパー状の内周面(2C)を有して拡縮可能であり、前記テーブルの軸線方向(J)に相対移動可能かつ前記テーブルの周方向(S)に相対移動不能に前記テーブルに連結され、被試験体の基準穴(20A)に嵌め込まれるコレット(2)とを有し、前記テーブルおよび前記コレットのサイズに応じて複数種類存在する交換セット(1)と、動釣合い試験機において縦軸まわりに回転駆動されるスピンドルに固定され、前記交換セットが着脱されるベースユニット(10)とを含み、前記ベースユニットは、前記軸線方向が縦になった状態の前記コレット内に挿通され、前記内周面に沿って上側へ向けて小径になるテーパー軸(11)と、前記コレットを伴って前記テーパー軸に対して昇降する第1昇降部(12)と、前記テーブルを下側から支える支持部(14)とを有する、動釣合い試験機用の被試験体支持装置(100)である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0007】
この構成によれば、被試験体支持装置では、テーブルに載せられた被試験体の基準穴に嵌め込まれたコレットを、コレット内に挿通されたテーパー軸に対して下降させると、コレットが拡径して基準穴に圧入されるので、被試験体を強力に保持できる。コレットとテーブルとが連結されているので、段取り替えの際には、交換セットをベースユニットに対して着脱することによって、コレットおよびテーブルをワンタッチで交換することができるうえ、コレットとテーブルとを連結する手間を省ける。そのため、段取り替えの円滑化を図れる。
【0008】
また、本発明は、前記コレットには、第1爪(2F)が設けられ、前記テーブルには、第2爪(3D)および位置決め穴(3C)が設けられ、前記第1昇降部には、前記第1爪が挿入される第1縦溝(12A)と、前記第1縦溝から前記周方向に延びる第1内爪(12B)とが設けられ、前記支持部には、前記第2爪が挿入される第2縦溝(14A)と、前記第2縦溝から前記周方向に延びる第2内爪(14B)と、前記支持部を縦に貫通して前記位置決め穴に下側から対向する貫通穴(14C)とが設けられ、前記ベースユニットは、前記支持部を昇降させる第2昇降部(15)と、前記支持部の下降に応じて前記貫通穴を通って前記位置決め穴に下側から嵌り込んで前記テーブルを前記周方向に位置決めする位置決めピン(13A)とをさらに含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、コレットの第1爪を第1縦溝に通してから第1内爪に配置することにより、コレットが、第1昇降部に対して上下方向に位置決めされる。テーブルの第2爪を第2縦溝に通してから第2内爪に配置することにより、テーブルが、支持部に対して上下方向に位置決めされる。そして、第2昇降部によってテーブルおよび支持部を下降させると、位置決めピンがテーブルの位置決め穴に嵌り込むことにより、テーブルが周方向に位置決めされる。以上により、交換セットがベースユニットに装着される。装着時とは逆の手順により、交換セットがベースユニットから離脱される。
【0010】
また、本発明は、前記軸線方向が縦になった状態の前記コレットには、それぞれの外径が異なって上側へ向けて次第に小径になるように並んだ複数の円筒部(2DA,2DB,2DC)と、第1爪(2F)とが設けられ、前記テーブルには、第2爪(3D)と、上側へ窪む凹部(3E)と、前記凹部よりも上側に深い逃がし穴(3F)とが設けられ、前記第1昇降部には、前記第1爪が挿入される第1縦溝(12A)と、前記第1縦溝から前記周方向に延びる第1内爪(12B)とが設けられ、前記支持部には、前記第2爪が挿入される第2縦溝(14A)と、前記第2縦溝から前記周方向に延びる第2内爪(14B)とが設けられ、前記ベースユニットが、前記支持部を昇降させる第2昇降部(15)と、上側へ突出した第1支持ピン(13BA)と、前記第1支持ピンよりも短く突出した第2支持ピン(13BB)とをさらに含み、前記交換セットと前記ベースユニットとの前記周方向の相対位置に応じて、前記第1爪と前記第1内爪とが係合して前記第2爪と前記第2内爪とが係合した状態で、前記第1支持ピンおよび前記第2支持ピンのうち、一方が前記凹部に下側から対向して他方が前記逃がし穴に下側から対向し、前記第1支持ピンが前記凹部に下側から対向して前記第2支持ピンが前記逃がし穴に下側から対向した状態での前記支持部の下降に応じて、前記第1支持ピンが前記凹部に嵌まり込んで前記テーブルを第1高さ位置に位置決めし、前記第2支持ピンが前記凹部に下側から対向して前記第1支持ピンが前記逃がし穴に下側から対向した状態での前記支持部の下降に応じて、前記第1支持ピンが前記逃がし穴に嵌まり込み、前記第2支持ピンが前記凹部に嵌まり込んで前記テーブルを前記第1高さ位置よりも低い第2高さ位置に位置決めすることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、コレットの第1爪を第1縦溝に通してから第1内爪と係合させることにより、コレットが、第1昇降部に対して上下方向に位置決めされる。テーブルの第2爪を第2縦溝に通してから第2内爪と係合させることにより、テーブルが、支持部に対して上下方向に位置決めされる。そして、長い第1支持ピンがテーブルの凹部に下側から対向して短い第2支持ピンがテーブルの逃がし穴に下側から対向した状態で第2昇降部によってテーブルおよび支持部を下降させると、第1支持ピンが凹部の底に当たることによってテーブルが第1高さ位置に位置決めされる。一方、第2支持ピンが凹部に下側から対向して第1支持ピンが逃がし穴に下側から対向した状態でテーブルおよび支持部を下降させると、第2支持ピンが凹部の底に当たることによって、テーブルが、第1高さ位置よりも低い第2高さ位置に位置決めされる。このとき、第1支持ピンは、逃がし穴に嵌まり込むので、テーブルの位置決めを邪魔しない。このようにテーブルの高さ位置を調節して交換セットをベースユニットに装着し、コレットにおける複数の円筒部において対応する外径の円筒部をテーブル上の被試験体の基準穴に嵌め込むことによって、1つの交換セットで、基準穴の大きさが異なる複数種類の被試験体に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る被試験体支持装置に含まれる交換セットの斜視図である。
【
図2】
図2は、被試験体支持装置に含まれるベースユニットの平面図である。
【
図3】
図3は、ベースユニットの要部縦断面図である。
【
図4】
図4は、ベースユニットに交換セットが装着される様子を示す要部縦断面図である。
【
図7】
図7は、この発明の変形例に係る交換セットの斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るベースユニットの平面図である。
【
図9】
図9は、変形例においてベースユニットに交換セットが装着される様子を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明する。
図1に示す交換セット1は、円筒状のコレット2と、コレット2を取り囲む円環状のテーブル3とを有し、コレット2の外径サイズやテーブル3の内径サイズに応じて複数種類存在する。
【0014】
テーブル3によって取り囲まれた状態のコレット2は、交互に並ぶ複数の上割溝2Aおよび下割溝2Bの各溝幅が変化することによって拡縮可能である。コレット2は、上側へ向けて小径になるテーパー状の内周面2Cを有する。コレット2は、把持径部2Dと、把持径部2Dよりも下側に配置された共通部2Eとを一体的に有し、共通部2Eの外周面の下端部には、複数の第1爪2Fが、コレット2の周方向Sに並んで設けられている。
【0015】
テーブル3は、大径部3Aと、大径部3Aよりも下側に配置された小径部3Bとを一体的に有する。大径部3Aの下面において、例えば周方向Sに180度離れた2箇所には、位置決め穴3Cが1つずつ形成されている。小径部3Bの外周面の下端部には、複数の第2爪3Dが、周方向Sに並んで設けられている。大径部3Aにボルト留めされた位置決め部4の先端4Aが、いずれかの下割溝2Bに嵌っている。これより、コレット2は、テーブル3の軸線方向Jに相対移動可能かつテーブル3の周方向Sに相対移動不能にテーブル3に挿入されている。位置決め部4は、その上面が大径部3Aの上面と面一となるようにテーブル3に埋め込まれている。
【0016】
図2および
図3に示すベースユニット10は、交換セット1とともに被試験体支持装置100を構成する。ベースユニット10は、動釣合い試験機(図示せず)において縦軸まわりに回転駆動されるスピンドル(図示せず)の上端部に固定されるベース(図示せず)を含む。ベースユニット10は、ベースに固定されて上側へ突出するテーパー軸11と、テーパー軸11の下部を取り囲み、例えばエア駆動によってテーパー軸11に対して昇降する円筒状の第1昇降部12とを含む。テーパー軸11は、上側へ向けて小径になるテーパー状の外周面11Aを有する。第1昇降部12の内周面の上端部には、その上端から下側へ延びる第1縦溝12Aと、第1縦溝12Aから内側に突き出した第1内爪12Bとが設けられている。第1縦溝12Aおよび第1内爪12Bの組は、コレット2の第1爪2Fと同数存在する。
【0017】
ベースユニット10は、ベースに固定されて第1昇降部12を取り囲む円筒状のハウジング13と、第1昇降部12よりも大径の円環状であってハウジング13の真上に配置される支持部14と、エア駆動によって支持部14を昇降させる第2昇降部15を含む。ハウジング13の上面には、例えば6つの台座13Bが、周方向に並んで設けられている。いずれかの台座13Bから上側へ突出する位置決めピン13Aが、テーブル3の位置決め穴3Cと同数設けられている。支持部14の内周面には、その上端から下側へ延びる第2縦溝14Aと、第2縦溝14Aから内側に突き出した第2内爪14Bとが設けられている。第2縦溝14Aおよび第2内爪14Bの組は、テーブル3の第2爪3Dと同数存在する。支持部14には、支持部14を縦に貫通する貫通穴14C(
図6も参照)が、台座13Bと同数設けられている。第2昇降部15は、例えばエアシリンダであり、そのロッド15Aは、ハウジング13の周壁の中空部分を通って支持部14にボルト留めされている。
図3では、支持部14が、ハウジング13から上側へ離れたセット位置にあり、位置決めピン13Aが位置決め穴3Cから抜けた位置にある(
図5も参照)。
【0018】
次に、ベースユニット10に対する交換セット1の着脱について説明する。装着手順として、まず、交換セット1は、作業者による手動またはロボットによる自動によって、
図4に示すようにベースユニット10に仮置きされる。その際、テーブル3がセット位置の支持部14によって下側から支えられ、テーブル3の各第2爪3Dが、支持部14において対応する第2縦溝14Aに挿入される。また、テーパー軸11が、軸線方向Jが縦になった状態のコレット2内に挿通され、テーパー軸11の外周面11Aは、コレット2の内周面2Cに沿う。また、コレット2の各第1爪2Fが、第1昇降部12において対応する第1縦溝12Aに挿入されて、第1縦溝12Aの下端に配置される。
【0019】
その後、スピンドルが例えば30度回転して、ベースユニット10が交換セット1に対して相対回転する。すると、
図5に示すように、各第1爪2Fが第1縦溝12Aの下端から第1内爪12Bの下に嵌まり込むことにより、コレット2が第1昇降部12に対して上下方向に位置決めされる。また、各第2爪3Dが第2縦溝14Aの下端から第2内爪14Bの下に嵌まり込むことにより、テーブル3が、支持部14に対して上下方向に位置決めされる。さらに、各位置決めピン13Aが、テーブル3において対応する位置決め穴3Cに下側から対向する。最後に、
図6に示すように支持部14がテーブル3を伴ってセット位置から下降すると、各台座13Bが支持部14の貫通穴14Cに嵌って各位置決めピン13Aが位置決め穴3Cに下側から嵌まり込むことにより、テーブル3がベースユニット10と同軸状になって周方向Sに位置決めされる。なお、台座13Bを3つ以上設ければ、テーブル3を一層安定して位置決めできる。また、テーパー軸11よりも径方向外側でコレット2が回り止めされることにより、テーパー軸11で回り止めされる場合と比べて、交換セット1では大きなトルクを受けることができる。
【0020】
以上により、交換セット1がベースユニット10に装着される。そして、装着時とは逆の手順により、交換セット1がベースユニット10から離脱される。そのため、段取り替えの際には、昇降や周方向Sの移動といった単純な移動により交換セット1をベースユニット10に対して着脱することによって、コレット2およびテーブル3をワンタッチで交換することができる。さらに、従来ではベースユニット10側に設けられたテーブル3と、コレット2とが一体化されているので、着脱の度にコレット2とテーブル3とを分離連結する手間を省ける。そのため、段取り替えの円滑化を図れる。また、動釣合い試験機においてスピンドルを回転させる既存の駆動装置を利用して、第1爪2Fと第1内爪12Bとの係合および解除や、第2爪3Dと第2内爪14Bとの係合および解除を実行できる。もちろん、スピンドルを回転させずに、手動または自動によって交換セット1自体を回転させることによって当該係合および解除を実行してもよい。
【0021】
動釣合い試験が実施される場合には、タイヤ付ホイール等の被試験体20の中央の基準穴20Aに、コレット2の把持径部2Dが嵌め込まれる。被試験体20における基準穴20Aの周辺部は、テーブル3に載せられる。第1昇降部12が下降すると、コレット2が、第1昇降部12の第1内爪12Bにおいて押し下げられて、テーパー軸11の外周面11Aに対して下側へ相対移動する。これにより、各割溝2Aおよび2Bが広がることによってコレット2が拡径し、基準穴20Aに圧入される。このように被試験体20がチャックされた状態でスピンドルが回転したときの被試験体20の振動が検出されることによって、動釣合い試験が実施される。動釣合い試験後には、第1昇降部12が上昇することによってコレット2を押し上げる。これにより、コレット2がテーパー軸11の外周面11Aに対して上昇しながら縮径して基準穴20Aに圧入されなくなるので、被試験体20がアンチャックされる。
【0022】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、テーブル3の位置決め穴3Cとハウジング13の位置決めピン13Aとは、テーブル3を周方向Sに位置決めする機能と、テーブル3をセンタリングする機能とを有する。テーブル3の内周面の下端部をテーパー状にして、第1昇降部12の下降時にテーパー軸11の外周面11A(または別途設けられたテーパー部材の外周面)に面接触させ、これにより、テーブル3をセンタリングしてもよい。また、位置決めピン13Aをテーパー状にしてもよい。
【0023】
以下では、本発明の変形例において、前述した実施形態と異なる部分について説明する。変形例に係る交換セット1では、
図7に示すように、コレット2の把持径部2Dが、上側へ向けて次第に小径になるように並んだ複数の円筒部2DA~2DCによって構成されている。なお、最上位の円筒部2DCは、交換セット1の移動の際にロボット等によって把持される。そして、テーブル3の大径部3Aの下面では、前述した位置決め穴3Cの代わりに、上側へ窪む凹部3Eと、例えば大径部3Aを貫通することによって凹部3Eよりも上側に深い逃がし穴3Fとが、周方向Sに交互に並んで複数ずつ設けられている。
【0024】
変形例に係るベースユニット10では、
図8に示すように、ハウジング13から上側に突出した複数の台座13Bが、第1支持ピン13BAと、第1支持ピン13BAよりも上端の位置が低い第2支持ピン13BBとのどちらかに分かれていて、第1支持ピン13BAと第2支持ピン13BBとは、周方向Sに交互に並んでいる。また、支持部14では、第2内爪14Bが各第2縦溝14Aから周方向Sの両側へ延びている。隣り合う第2内爪14B同士は、つながっていてもよい。
【0025】
変形例でのベースユニット10に対する交換セット1の装着手順として、まず、交換セット1は、作業者またはロボットによって、前述した実施形態と同様にベースユニット10に仮置きされる(
図9参照)。このとき、コレット2の把持径部2Dでは、最下段の円筒部2DAだけが、セット位置の支持部14によって支えられたテーブル3の上面よりも低い位置にあり、ハウジング13の第1支持ピン13BAおよび第2支持ピン13BBは、テーブル3の凹部3Eおよび逃がし穴3Fのいずれにも対向していない。また、このときのテーブル3は、周方向Sにおいてフリーになっている。
【0026】
交換セット1の仮置き後に、スピンドルが例えば平面視で時計回りに30度回転することにより、ベースユニット10が交換セット1に対して周方向Sに相対回転する。すると、各第1爪2Fが、第1縦溝12Aの下端から周方向Sの一方側の第1内爪12Bと係合することによって、コレット2を第1昇降部12に対して上下方向に位置決めし、各第2爪3Dが、第2縦溝14Aの下端から当該一方側へ延びる第2内爪14Bと係合することによって、テーブル3を支持部14に対して上下方向に位置決めする。この状態では、各第1支持ピン13BAが、貫通穴14Cを介してテーブル3の凹部3Eに下側から対向して、各第2支持ピン13BBが、別の貫通穴14Cを介してテーブル3の逃がし穴3Fに下側から対向する。
【0027】
その後、支持部14がテーブル3を伴ってセット位置から下降すると、
図10に示すように、各第1支持ピン13BAが凹部3Eに下側から嵌まり込むことにより、テーブル3がベースユニット10と同軸状になって周方向Sに位置決めされる。さらに、各第1支持ピン13BAが凹部3Eの底に当たることによって、テーブル3および支持部14が第1高さ位置に位置決めされる。セット位置から第1高さ位置までの下降量は、例えば5mmである。第1高さ位置に位置決めされたテーブル3の上面は、コレット2の円筒部2DAの上端面と面一になる。この状態では、円筒部2DAの上隣の円筒部2DBに対応する種類の被試験体21の基準穴21Aに円筒部2DBが嵌め込まれて、前述した手順により被試験体21がチャックされたりアンチャックされたりする。なお、コレット2の最上段の円筒部2DCは、円筒部2DBよりも小径なので、被試験体21における基準穴21Aの周辺部に干渉しない。
【0028】
一方、交換セット1の仮置き後に、スピンドルが平面視で反時計回りに30度逆回転することにより、ベースユニット10が交換セット1に対して相対回転する。すると、各第1爪2Fが、第1縦溝12Aの下端から周方向Sの他方側の第1内爪12Bと係合し、各第2爪3Dが、第2縦溝14Aの下端から当該他方側へ延びる第2内爪14Bと係合する。この状態では、各第2支持ピン13BBがテーブル3の凹部3Eに下側から対向して、各第1支持ピン13BAがテーブル3の逃がし穴3Fに下側から対向する。
【0029】
その後、支持部14がテーブル3を伴ってセット位置から下降すると、
図11に示すように、各第2支持ピン13BBが凹部3Eに下側から嵌まり込んで各第1支持ピン13BAが逃がし穴3Fに下側から嵌まり込むことにより、テーブル3が周方向Sに位置決めされる。さらに、各第2支持ピン13BBが凹部3Eの底に当たることによって、テーブル3および支持部14が、第1高さ位置よりも低い第2高さ位置に位置決めされる。このとき、第1支持ピン13BAは、逃がし穴3Fに嵌まり込むので、テーブル3の位置決めを邪魔しない。セット位置から第2高さ位置までの下降量は、例えば20mmである。第2高さ位置に位置決めされたテーブル3の上面は、コレット2の円筒部2DAの上端面よりも低くなる。この状態では、円筒部2DAに対応する別の種類の被試験体22の基準穴22Aに円筒部2DAが嵌め込まれて、前述した手順により被試験体22がチャックされたりアンチャックされたりする。
【0030】
以上により、テーブル3を所望の高さ位置に調節して交換セット1をベースユニット10に装着できる。そして、装着時とは逆の手順により、交換セット1がベースユニット10から離脱される。なお、装着状態の交換セット1では、コレット2を上昇させて位置決め部4の先端4Aを下割溝2Bから外すことによって(
図1参照)、コレット2だけをベースユニット10から離脱させることができる。また、この変形例では、テーブル3の高さ位置を2段階に変更することによって、1つの交換セット1で、2種類の被試験体21,22に対応できる。もちろん、テーブル3の高さ位置を3段階以上に変更できてもよく、その場合には、1つの交換セット1で、基準穴の大きさが異なる3種類以上の被試験体に対応できる。
【符号の説明】
【0031】
1 交換セット
2 コレット
2C 内周面
2DA 円筒部
2DB 円筒部
2DC 円筒部
2F 第1爪
3 テーブル
3C 位置決め穴
3D 第2爪
3E 凹部
3F 逃がし穴
10 ベースユニット
11 テーパー軸
12 第1昇降部
12A 第1縦溝
12B 第1内爪
13A 位置決めピン
13BA 第1支持ピン
13BB 第2支持ピン
14 支持部
14A 第2縦溝
14B 第2内爪
14C 貫通穴
15 第2昇降部
20 被試験体
20A 基準穴
21 被試験体
21A 基準穴
22 被試験体
22A 基準穴
100 被試験体支持装置
J 軸線方向
S 周方向