(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】バルブ装置および流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
F16K 7/16 20060101AFI20230406BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230406BHJP
G05D 7/06 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
F16K7/16 C
H01L21/02 Z
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2020511690
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011742
(87)【国際公開番号】W WO2019193978
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2018073798
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 尊
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-193747(JP,A)
【文献】米国特許第05485984(US,A)
【文献】特表2016-505125(JP,A)
【文献】特開2016-011744(JP,A)
【文献】特開2005-172026(JP,A)
【文献】特開2016-011743(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152457(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/061731(WO,A1)
【文献】米国特許第11402029(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/12 - 7/17
F16K 27/00 - 27/02
H01L 21/02
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流路及び第2の流路を形成するバルブボディと、
前記第1の流路の開口周囲に配置される内側環状部、前記内側環状部の外周側に配置された外側環状部、及び前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、前記内側環状部と前記外側環状部とを接続する接続部を有するインナーディスクと、
前記内側環状部上に配置されるバルブシートと、
周縁部が前記外側環状部と接触し、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、
前記外側環状部との間に前記ダイヤフラムの周縁部を挟んで接触する押えアダプタと、を備え、
前記ダイヤフラムは、前記開位置における曲面を形成する曲線が変曲点を有しないドーム型であり、前記ダイヤフラムの前記周縁部は、外側に向かって下がるように傾斜し、当該周縁部の下面に対し、前記外側環状部の上面の外周角部が縦断面視で略点接触しており、
前記外周角部の位置は、前記外側環状部が軸方向に垂直な面で前記バルブボディと接触するボディ接触面の最外側の位置よりも外側である、バルブ装置。
【請求項2】
前記内側環状部と前記バルブボディとの間に配置されるディスクシールを更に備え、
前記ディスクシールは、前記内側環状部の前記バルブボディ側に形成されたディスクシール凹部に保持される、請求項
1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記内側環状部は、前記ダイヤフラム側に形成されたバルブシート凹部を有し、
前記バルブシートは、前記バルブシート凹部に保持され、
前記バルブシートは、前記ディスクシールと同じ材料及び形状からなる、請求項
2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記内側環状部は、前記外側環状部よりも中心線が延びる方向に長い筒状であり、前記内側環状部の内側が前記第1の流路と連通し、前記内側環状部の外側が前記第2の流路と連通している、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
第1の流路及び第2の流路を形成するバルブボディと、
前記第1の流路の開口周囲に配置される内側環状部、前記内側環状部の外周側に配置された外側環状部、及び前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、前記内側環状部と前記外側環状部とを接続する接続部を有するインナーディスクと、
前記内側環状部上に配置されるバルブシートと、
周縁部が前記外側環状部と接触し、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、
前記外側環状部との間に前記ダイヤフラムの周縁部を挟んで接触する押えアダプタと、を備え、
前記ダイヤフラムは、前記開位置における曲面を形成する曲線が変曲点を有しないドーム型であり、前記ダイヤフラムの前記周縁部は、外側に向かって下がるように傾斜し、当該周縁部の下面に対し、前記外側環状部の上面の外周角部が縦断面視で略点接触しており、
前記外側環状部に形成される、互いに対向する面であるダイヤフラム側の面、及びバルブボディ側の面のうち、前記ダイヤフラム側の面の外側の縁で形成される円の半径は、前記バルブボディ側の面の外側の縁で形成される円の半径よりも大きい、バルブ装置。
【請求項6】
上流側から下流側に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のバルブ装置を含むことを特徴とする流体制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のバルブ装置を用いて、流体の流量を調整する流量制御方法。
【請求項8】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のバルブ装置を用いる半導体製造装置。
【請求項9】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のバルブ装置を用いる半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置および流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程においては、半導体製造装置のチャンバに対して、各種のプロセスガスの供給を制御するバルブ装置が用いられている。
引用文献1は、ボディに着脱可能に配置されてシートを保持するシートホルダを保持するリテーナを備え、リテーナは、略円筒状で、シートホルダの外周縁部を受ける内向きフランジ部を有しており、シートホルダを保持した状態でダイヤフラム保持部材に着脱可能に取り付けられたダイヤフラム弁について開示している。
引用文献2は、別のダイヤフラム弁について開示している。このダイヤフラム弁の本体の凹所は、開口に近い大径部および段差部を介して大径部の下方に連なる小径部からなる。凹所に流路形成ディスクが嵌め合わせられている。流路形成ディスクは、凹所大径部に嵌め合わせられている大径円筒部と、凹所段差部に受け止められている連結部と、凹所小径部の内径よりも小さい外径を有し下端が凹所の底面で受け止められている小径円筒部とからなる。流路形成ディスクの連結部に、小径円筒部外側環状空間と大径円筒部内側環状空間とを連通する複数の貫通孔が形成されている。流体流入通路は流路形成ディスクの小径円筒部下端に、流体流出通路は小径円筒部外側環状空間にそれぞれ通じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-265392号公報
【文献】特開2015-175502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)等においては、基板に膜を堆積させる処理プロセスに使用する処理ガスをより大きな流量で安定的に供給することが求められている。
本開示は、上述の事情に鑑みてされたものであり、より安定的に大きな流量を制御することのできるバルブ装置、そのバルブ装置を用いた流体制御装置、流体制御方法、半導体製造装置及び半導体製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のバルブ装置は、第1の流路及び第2の流路を形成するバルブボディと、前記第1の流路の開口周囲に配置される内側環状部、前記内側環状部の外周側に配置された外側環状部、及び前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、前記内側環状部と前記外側環状部とを接続する接続部を有するインナーディスクと、前記内側環状部上に配置されるバルブシートと、周縁部が前記外側環状部と接触し、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、前記外側環状部との間に前記ダイヤフラムの周縁部を挟んで接触する押えアダプタと、を備え、前記外側環状部が前記ダイヤフラムと接触するダイヤフラム接触面の最外側の位置は、前記外側環状部が軸方向に垂直な面で前記バルブボディと接触するボディ接触面の最内側の位置よりも外側であるバルブ装置である。
【0006】
また、本開示のバルブ装置においては、前記ダイヤフラム接触面の最外側の位置は、前記ボディ接触面の最外側の位置よりも外側であってもよい。
【0007】
また、本開示のバルブ装置においては、前記ダイヤフラムは、前記開位置における曲面を形成する曲線が変曲点を有しないドーム型であってもよい。
【0008】
また、本開示のバルブ装置においては、前記内側環状部と前記バルブボディとの間に配置されるディスクシールを更に備え、前記ディスクシールは、前記内側環状部の前記バルブボディ側に形成されたディスクシール凹部に保持されることとしてもよい。
【0009】
また、本開示のバルブ装置においては、前記内側環状部は、前記ダイヤフラム側に形成されたバルブシート凹部を有し、前記バルブシートは、前記バルブシート凹部に保持され、前記バルブシートは、前記ディスクシールと同じ材料及び形状からなることとしてもよい。
【0010】
また、本開示のバルブ装置においては、前記内側環状部は、前記外側環状部よりも中心線が延びる方向に長い筒状であり、前記内側環状部の内側が前記第1の流路と連通し、前記内側環状部の外側が前記第2の流路と連通していることとしてもよい。
【0011】
本開示のバルブ装置は、第1の流路及び第2の流路を形成するバルブボディと、前記第1の流路の開口周囲に配置される内側環状部、前記内側環状部の外周側に配置された外側環状部、及び前記第2の流路と連通する複数の開口を有し、前記内側環状部と前記外側環状部とを接続する接続部を有するインナーディスクと、前記内側環状部上に配置されるバルブシートと、周縁部が前記外側環状部と接触し、前記バルブシートに対して接触しない開位置及び接触する閉位置の間で移動することにより前記第1の流路と前記第2の流路との連通及び遮断を行うダイヤフラムと、前記外側環状部との間に前記ダイヤフラムの周縁部を挟んで接触する押えアダプタと、を備え、前記外側環状部に形成される、互いに対向する面であるダイヤフラム側の面、及びバルブボディ側の面のうち、前記ダイヤフラム側の面の外側の縁で形成される円の半径は、前記バルブボディ側の面の内側の縁で形成される円の半径よりも大きいバルブ装置である。
【0012】
また、本開示のバルブ装置においては、前記ダイヤフラム側の面、及び前記バルブボディ側の面のうち、前記ダイヤフラム側の面の外側の縁で形成される円の半径は、前記バルブボディ側の面の外側の縁で形成される円の半径よりも大きいこととしてもよい。
【0013】
本開示の流体制御装置は、上流側から下流側に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、前記複数の流体機器は、上述のいずれかのバルブ装置を含む流体制御装置である。
【0014】
本開示の流量制御方法は、上述のいずれかのバルブ装置を用いて、流体の流量を調整する流量制御方法である。
【0015】
本開示の半導体製造装置は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの制御に上述のいずれかに記載のバルブ装置を用いる半導体製造装置である。
【0016】
本開示の半導体製造方法は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上述のいずれかに記載のバルブ装置を用いる半導体製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より安定的に大きな流量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の構成を示す断面図。
【
図2】
図1のバルブ装置における、閉状態を示す断面図。
【
図4】
図3のIV-IV線におけるインナーディスクの断面図。
【
図5】バルブボディのインナーディスク配置位置に、ディスクシールを収める溝を形成した場合について示す一部断面図。
【
図6】外側環状部について説明するための拡大断面図。
【
図7】インナーディスクにおける、ダイヤフラムからの力の掛かり方について説明するための模式図。
【
図8】インナーディスクにおける、ダイヤフラムからの力の掛かり方について説明するための模式図。
【
図10】ハット型のダイヤフラムの外側環状部について説明するための拡大断面図。
【
図11】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の半導体製造プロセスへの適用例を示す概略図。
【
図12】本実施形態のバルブ装置を用いる流体制御装置の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。説明において同様の要素には同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
先ず、
図12を参照して、本発明が適用される流体制御装置の一例を説明する。
図12に示す流体制御装置には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992によって、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0020】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、マスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0021】
本発明は、上記した開閉弁991A、991D、レギュレータ991B等の種々のバルブ装置に適用可能であるが、本実施形態では、開閉弁に適用する場合を例に挙げて説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る開状態におけるバルブ装置1の構成を示す断面図である。
図2は、
図1のバルブ装置1における、閉状態を示す断面図である。
図1に示すように、バルブ装置1は、ケーシング6と、ボンネット5と、バルブボディ2と、インナーディスク3と、バルブシート48と、ダイヤフラム41と、押えアダプタ43と、ダイヤフラム押え42と、ステム44と、コイルばね45とを有している。なお、図中の矢印A1,A2は上下方向であってA1が上方向、A2が下方向を示すものとする。
【0023】
バルブボディ2は、ステンレス鋼により形成されており、上面2a及び互いに対向する側面2b及び2cを有している。上面2aからは、インナーディスク3を配置する空間であり、段差部24を有する弁室23が開けられると共に、ボンネット5と螺合するネジ溝を有するネジ穴25が形成されている。またバルブボディ2は第1の流路21及び第2の流路22を形成している。第1の流路21は、側面2bと、弁室23の底面で開口する流路である。第2の流路22は、側面2cと、弁室23の側面に開口する流路である。
【0024】
ダイヤフラム41は、その周縁部が、後述するインナーディスク3の外側環状部31と接触し、バルブシート48に対して接触する閉位置及び非接触の開位置の間で移動することにより第1の流路21と第2の流路22との連通及び遮断を行う。ケーシング6は、ダイヤフラム41を駆動するアクチュエータ8を内蔵し、接続部材65を介してボンネット5上に固定される。本実施形態においては、バルブボディ2及びボンネット5は、接続部材65を介してケーシング6に螺合されているが、接続部材65を介さない構成であってもよい。操作部材7は、弁体であるダイヤフラム41に第1の流路21の開口を閉鎖させる閉位置と、開口を開放させる開位置との間で移動する。アクチュエータ8の操作部材7は、略円筒状に形成され、ボンネット5の円孔54の内周面と、ケーシング6内に形成された円孔64の内周面に保持され、上下方向A1,A2に移動自在に支持されている。円孔54及び64の内周面と、操作部材7との間はOリング91が配置され、気密性が確保されている。
【0025】
ボンネット5の内部において、操作部材7はステム44に結合され、ステム44は操作部材と共に移動する。ステム44は、ボンネット5の内部において、コイルばね45により、ボンネット5に対して下方向A2、つまりダイヤフラム41を閉位置に移動させる方向に付勢されている。本実施形態では、コイルばね45を使用しているが、これに限定されるわけではなく、皿ばねや板バネ等の他の種類の弾性部材を使用することができる。ステム44の下端面にはダイヤフラム41の中央部上面に当接するポリイミド等の合成樹脂製のダイヤフラム押え42が装着されている。
【0026】
ケーシング6内部には、操作部材7の周囲に一つ又は複数の環状のバルクヘッド82が形成され、ボンネット5の上面5a、及び一つ又は複数のバルクヘッド82で挟まれたシリンダ83には一つ又は複数のピストン81が配置される。ケーシング6内部の空間を形成する内周面とピストン81との間、及び操作部材7とピストン81との間はOリング91が配置され、気密性が確保されている。
【0027】
シリンダ83およびピストン81は、操作部材7をコイルばね45に抗して開位置に移動させるアクチュエータ8を構成している。アクチュエータ8は、例えば複数のピストン81を用いて圧力の作用面積を増加させることにより、操作ガスによる力を増力できる構成とすることができる。各シリンダ83のピストン81上側の空間は、通気路62等により大気に開放されている。
【0028】
各シリンダ83のピストン81下側の空間は、操作部材7に形成された操作部材流通路71と連通している。操作部材流通路71は、ケーシング6の上面6aに形成された円孔64に繋がる操作ガス供給口61に連通している。これにより操作ガス供給口61から供給される操作ガスは、シリンダ83に供給され、ピストン81を上方向A1に押し上げる。なお、ケーシング6、アクチュエータ8、ボンネット5、ステム44、ダイヤフラム押え42及びコイルばね45の構成は、圧縮空気により弁体の開閉を制御する自動バルブ装置における構成の一例であり、これらの構成は他の公知の構成等適宜選択することができる。また手動バルブ装置である場合等においてこれらの構成は有していなくてもよい。
【0029】
インナーディスク3は、弁室23に配置され、第2の流路22に対する第1の流路21のシール性を確保しつつ、ダイヤフラム41側で開口する。
図3は、インナーディスク3の上面図である。
図4は、
図3のIV-IV線におけるインナーディスク3の断面図である。これらの図に示されるように、インナーディスク3は、内側環状部32、外側環状部31及び接続部37を有している。内側環状部32は第1の流路21の開口周囲に配置され、第1の開口33を有している。外側環状部31は内側環状部32と同心の環状形状である。接続部37は、第2の流路22と連通する複数の第2の開口34を有して内側環状部32と外側環状部31とを接続する。なお、外側環状部31は、弁室23の段差部24に配置される。
【0030】
本実施形態においては、内側環状部32は、外側環状部31よりも中心線CLが延びる方向に長い筒状であり、内側環状部32の内側が第1の流路21と連通し、内側環状部32の外側が第2の流路22と連通している。このような構成とすることにより、弁室23の底面に第1の流路21の開口を設け、弁室23の側面に第2の流路22の開口を設けることができるため、第1の流路21及び第2の流路22の径をより大きくすることができる。これにより開状態における流量を大きくすることができる。しかしながら、弁室23を浅い深さのものとして、内側環状部32は、外側環状部31と同程度の長さのものを使用することとしてもよい。
【0031】
バルブシート48は、内側環状部32上に配置される。また、バルブ装置1は、内側環状部32とバルブボディ2との間に配置されるディスクシール49を更に有していてもよい。ディスクシール49は、内側環状部32のバルブボディ2側に形成された溝であるディスクシール凹部36に保持される。更に内側環状部32は、ダイヤフラム41側に形成された溝であるバルブシート凹部35を有し、バルブシート48は、バルブシート凹部35に保持されることとしてもよい。ディスクシール49は、内側環状部32のバルブボディ2側において、内側環状部32の内側と外側との間を遮断し、気密性を確保する。
【0032】
バルブシート48はバルブシート凹部35で加締め等により固定されることとしてもよい。また、ディスクシール49はディスクシール凹部36で加締め等により固定されることとしてもよい。このようにバルブシート48やディスクシール49をインナーディスク3に固定することにより、組立時及び動作時の位置ずれ等を防止すると共に、製造工程をより簡易化することができる。特にディスクシール49をインナーディスク3に固定することにより、バルブボディ2に対してディスクシール49を位置決めするための溝等を形成する必要がなく、更に組立時の位置決め作業も簡易になるため、より製造コストを低減し、歩留まりを向上させることができる。また、
図5の一部断面図に示すように、バルブボディ2は、ディスクシール49を配置するための溝Mを有していてもよい。高温の流体を流す場合には、バルブボディ2に溝Mを形成することにより流体とディスクシール49との接触面積を最小限に抑え、ディスクシール49の熱による膨張を抑制することができる。また、ディスクシール49を溝Mに収め、インナーディスク3の下端がバルブボディ2に接触してインナーディスク3の内側と外側とを隔離することにより、バルブシート48の高さを正確に定めることができる。また、例えディスクシール49が膨張した場合であっても、膨張したディスクシール49の体積が溝M内で収められることにより、シール性を保ちつつ、インナーディスク3が浮き上がることを防ぎ、バルブシート48の高さを安定して保持することができる。よって、ディスクシール49によりインナーディスク3のバルブボディ2側のシールをより確実にするため、バルブ装置1は、より安定的に大きな流量を制御することができる。
バルブシート48及びディスクシール49は、合成樹脂(PFA、PA、PI、PCTFE等)製とすることができる。また、バルブシート48は、ディスクシール49と同じ材料及び形状からなるものであってもよい。つまり、バルブシート48及びディスクシール49は、同一部品を上下逆向きに取り付けたものとすることができる。これにより部品を共通化して製品コストを低減することができる。
【0033】
ダイヤフラム41は、バルブボディ2の第1の流路21から伸びる第1の開口33を閉鎖して第1の流路21と第2の流路22とを遮断すると共に、第1の開口33を開放して第1の流路21と第2の流路22とを連通させる。ダイヤフラム41は、バルブシート48の上方に配設されており、弁室23の気密を保持すると共に、その中央部が上下動してバルブシート48に当離座することにより、第1の流路21及び第2の流路22の遮断又は連通する。本実施形態では、ダイヤフラム41は、特殊ステンレス鋼等の金属製薄板及びニッケル・コバルト合金薄板の中央部を上方へ膨出させることにより、上に凸の円弧状が自然状態の球殻状とされている。ダイヤフラム41は、例えば、ステンレス、NiCo系合金などの金属やフッ素系樹脂で球殻状に弾性変形可能に形成されている。
【0034】
ダイヤフラム41は、その周縁部がインナーディスク3の外側環状部31上に載置され、弁室23内へ挿入したボンネット5の下端部をバルブボディ2のネジ穴25へねじ込むことにより、例えばステンレス合金製の押えアダプタ43を介してインナーディスク3の外側環状部31側へ押圧され、気密状態で挾持固定されている。つまり、ダイヤフラム41は、その周縁部を押えアダプタ43と外側環状部31との間に挟まれることにより固定されている。なお、ダイヤフラム41としては、他の構成のものも使用可能である。ここで、ダイヤフラム41は、自然状態において曲面を形成する曲線が変曲点を有しないドーム型とすることができる。「曲面を形成する曲線が変曲点を有しない」とは、例えば、回転することによりダイヤフラム41の曲面を形成する曲線がある場合、その曲線は変曲点を有しない意味である。変曲点を有しないことは、曲率の符号の変化のないことと同じ意味である。このようにドーム型のダイヤフラム41とすることにより、開位置においてバルブシート48からの距離を大きくし、流路を大きくすることができるため、流量を大きくすることができる。
【0035】
図6は、外側環状部31について説明するための拡大断面図である。ここでダイヤフラム41は、上述したドーム型であるとして説明する。
図6に示されるように、ダイヤフラム41がドーム型である場合には、ダイヤフラム41は、その縁部においても、上下方向A1,A2に垂直な面に対して角度θを有している。このため、ダイヤフラム41は、外側環状部31の角部において接触し、外側環状部31には、この接触部分においてダイヤフラム41から斜め内側方向に力Fが加わることとなる。ここで、外側環状部31がダイヤフラム41と接触する面をダイヤフラム接触面T1とする。本実施形態においては、ダイヤフラム接触面T1における最外側の位置Pdは、外側環状部31がバルブボディ2の段差部24と接触するボディ接触面T2の最内側の位置Pbiよりも外側となっている。ここで、外側及び内側の用語は、外側環状部31及び内側環状部32の中心線CLを基準としている。また、ボディ接触面T2は、中心線CLが延びる方向である軸方向に垂直な面であり、支持面である。
【0036】
図7は、ダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdが、ボディ接触面T2の最内側の位置Pbiよりも内側にある場合のダイヤフラム41からの力Fのかかり方について説明するための模式図である。
図8は、ダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdが、ボディ接触面T2の最内側の位置Pbiよりも外側にある場合のダイヤフラム41からの力のかかり方について説明するための模式図である。
図7に示されるように、ダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdが、ボディ接触面T2の最内側の位置Pbiよりも内側にある場合においては、ダイヤフラム接触面T1から斜め内側方向に力Fが加わったときに、力Fは、インナーディスク3の中央部分が沈むように曲げる力として働くこととなる。このような力は、バルブ装置1内のインナーディスク3による気密性の確保に影響を与えるほか、インナーディスク3自体の耐久性にも影響を与える恐れがある。
【0037】
一方、
図6に示されるように、ダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdが、ボディ接触面T2の最内側の位置Pbiよりも外側にある場合には、
図8に示されるように、斜め内側方向に力Fが加わった場合においても、外側環状部31がバルブボディ2との間で、力を受け止めるため、インナーディスク3を変形させようとする力を抑えることができる。ここで、ダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdは、ボディ接触面T2の最外側の位置Pboよりも外側とすることとしてもよい。この場合には、より斜め内側方向に力Fを受け止めることができるため、インナーディスク3の変形をより抑えることができる。したがって、このような構成とすることにより、バルブ装置1は、より安定的に大きな流量を制御することができる。
【0038】
また、
図6に戻り、外側環状部31の断面形状に着目すると、外側環状部31の断面形状は、互いに対向する面であるダイヤフラム側の面S1、及びバルブボディ側の面S2を有している。ダイヤフラム側の面S1及びバルブボディ側の面S2のうち、ダイヤフラム側の面S1の外側の縁で形成される円の半径Rdは、バルブボディ側の面S2の内側の縁で形成される円の半径Rbiよりも大きく形成されている。このような構成において、斜め内側方向に力Fが加わった場合においても、外側環状部31がバルブボディ2との間で、力を受け止めるため、インナーディスク3の変形を抑えることができる。
【0039】
ここで、更にダイヤフラム側の面S1、及びバルブボディ側の面S2のうち、ダイヤフラム側の面S1の外側の縁で形成される円の半径Rdは、バルブボディ側の面S2の外側の縁で形成される円の半径Rboよりも大きくしてもよい。この場合には、より斜め内側方向に力Fを受け止めることができるため、インナーディスク3の変形をより抑えることができる。したがって、このような構成とすることにより、バルブ装置1は、より安定的に大きな流量を制御することができる。
【0040】
図9は、別のバルブ装置100について示す部分断面図である。バルブ装置100は、高温に対応した圧縮空気により弁体を制御する自動バルブ装置である。
図9の説明においては、
図1及び2のバルブ装置1と対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図9においてダイヤフラム101は、
図1及び2の場合と異なり、開位置において曲面を形成する曲線が変曲点を有するハット型である。ハット側のダイヤフラム101において、外側環状部31と押えアダプタ43との間で挟持されるダイヤフラム101の周縁部は、上下方向A1,A2に対して略垂直な面となっている。
【0041】
図10は、ハット型のダイヤフラム101の外側環状部31について説明するための拡大断面図である。上述したように、外側環状部31と押えアダプタ43との間で挟持されるダイヤフラム101の周縁部は上下方向A1,A2に対して略垂直方向に延びている。この場合においても、
図7及び8で説明したように、ダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdが、ボディ接触面T2の最内側の位置Pbiよりも内側にあるときには、ダイヤフラム接触面T1からの力Fは、インナーディスク3は中央部分が沈むように曲げる力として働くこととなる。したがって、
図6で説明した場合と同様に、ダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdが、ボディ接触面T2の最内側の位置Pbiよりも外側にある場合には、インナーディスク3の変形を抑えることができる。また、外側環状部31がダイヤフラム101に接触するダイヤフラム接触面T1の最外側の位置Pdは、外側環状部31がバルブボディ2と接触するボディ接触面T2の最外側の位置Pboよりも外側とすることとしてもよい。この場合には、より内側において力Fを受け止めることができるため、インナーディスク3の変形をより抑えることができる。したがって、このような構成とすることにより、バルブ装置100は、より安定的に大きな流量を制御することができる。
【0042】
また、
図6の場合と同様に、ダイヤフラム側の面S1及びバルブボディ側の面S2のうち、ダイヤフラム側の面S1の外側の縁で形成される円の半径Rdは、バルブボディ側の面S2の内側の縁で形成される円の半径Rbiよりも大きく形成されていることとしてもよい。この場合においても、外側環状部31がバルブボディ2との間で、力を受け止めるため、インナーディスク3の変形を抑えることができる。また、更にダイヤフラム側の面S1、及びバルブボディ側の面S2のうち、ダイヤフラム側の面S1の外側の縁で形成される円の半径Rdは、バルブボディ側の面S2の外側の縁で形成される円の半径Rboよりも大きくしてもよい。この場合には、より内側において力Fを受け止めることができるため、インナーディスク3の変形をより抑えることができる。したがって、このような構成とすることにより、バルブ装置100は、より安定的に大きな流量を制御することができる。
【0043】
次に、
図11を参照して、上記したバルブ装置1の適用例について説明する。
図11に示す半導体製造装置980は、ALD法による半導体製造プロセスを実行するための装置であり、981はプロセスガス供給源、982はガスボックス、983はタンク、984は制御部、985は処理チャンバ、986は排気ポンプを示している。
ALD法による半導体製造プロセスでは、処理ガスの流量を精密に調整する必要があるとともに、基板の大口径化により、処理ガスの流量をある程度確保する必要もある。
ガスボックス982は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ985に供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体制御機器を集積化してボックスに収容した集積化ガスシステム(流体制御装置)である。
タンク983は、ガスボックス982から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
制御部984は、バルブ装置1への操作ガスの供給制御による流量調整制御を実行する。
処理チャンバ985は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ986は、処理チャンバ985内を真空引きする。
【0044】
上記のようなシステム構成によれば、制御部984からバルブ装置1に流量調整のための指令を送れば、処理ガスの初期調整が可能になる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上記適用例では、バルブ装置1をALD法による半導体製造プロセスに用いる場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は、例えば原子層エッチング法(ALE:Atomic Layer Etching 法)等、精密な流量調整が必要なあらゆる対象に適用可能である。
【0046】
上記実施形態では、アクチュエータとして、ガス圧で作動するシリンダに内蔵されたピストンを用いたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、制御対象に応じて最適なアクチュエータを種々選択可能である。
【0047】
上記実施形態では、バルブ装置1を流体制御装置としてのガスボックス982の外部に配置する構成としたが、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化してボックスに収容した流体制御装置に上記実施形態のバルブ装置1を含ませることも可能である。
【0048】
上記実施形態では、流体制御装置として複数の流路ブロック992にバルブ装置を搭載したものを例示したが、分割タイプの流路ブロック992以外にも、一体型の流路ブロックやベースプレートに対しても本発明のバルブ装置は適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 :バルブ装置
2 :バルブボディ
2a :上面
2b :側面
2c :側面
3 :インナーディスク
5 :ボンネット
5a :上面
6 :ケーシング
6a :上面
7 :操作部材
8 :アクチュエータ
21 :第1の流路
22 :第2の流路
23 :弁室
24 :段差部
25 :ネジ穴
31 :外側環状部
32 :内側環状部
33 :第1の開口
34 :第2の開口
35 :バルブシート凹部
36 :ディスクシール凹部
37 :接続部
41 :ダイヤフラム
42 :ダイヤフラム押え
43 :押えアダプタ
44 :ステム
45 :コイルばね
48 :バルブシート
49 :ディスクシール
54 :円孔
61 :操作ガス供給口
62 :通気路
64 :円孔
65 :接続部材
71 :操作部材流通路
81 :ピストン
82 :バルクヘッド
83 :シリンダ
91 :Oリング
100 :バルブ装置
101 :ダイヤフラム
980 :半導体製造装置
981 :プロセスガス供給源
982 :ガスボックス
983 :タンク
984 :制御部
985 :処理チャンバ
986 :排気ポンプ
991A :開閉弁
991B :レギュレータ
991C :プレッシャーゲージ
991D :開閉弁
991E :マスフローコントローラ
992 :流路ブロック
993 :導入管
A1 :上方向
A2 :下方向
BS :ベースプレート
CL :中心線
F :力
G1 :長手方向(上流側)
G2 :長手方向(下流側)
M :溝
Rbi,Rbo,Rd:半径
S1 :ダイヤフラム側の面
S2 :バルブボディ側の面
T1 :ダイヤフラム接触面
T2 :ボディ接触面
W1,W2:幅方向
θ :角度