(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-05
(45)【発行日】2023-04-13
(54)【発明の名称】アッカーマンシア・ムシニフィラ菌株を含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20230406BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230406BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20230406BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230406BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230406BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230406BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230406BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230406BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230406BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230406BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20230406BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230406BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230406BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230406BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20230406BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230406BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20230406BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20230406BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230406BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K35/741 ZNA
C12N1/00 P
C12N1/20 A
A23L33/135
A61P37/08
A61P17/04
A61P17/00
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/06
A61K8/00
A61Q19/00
A61K31/704
A61K45/00
A61K38/13
A61K31/706
A61K31/436
A61K31/573
A61K31/5377
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021552155
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2021002432
(87)【国際公開番号】W WO2022045501
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0107617
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC13761BP
(73)【特許権者】
【識別番号】521022956
【氏名又は名称】エンテロバイオーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENTEROBIOME INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジョ グ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジュ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドキュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンミ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ソ ユル
(72)【発明者】
【氏名】ビョン,ヘ リム
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-502005(JP,A)
【文献】特表2022-502006(JP,A)
【文献】特開2019-043867(JP,A)
【文献】特表2019-500004(JP,A)
【文献】特開2019-137660(JP,A)
【文献】特表2018-534277(JP,A)
【文献】特表2016-503418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(Akkermansia muciniphila)(KCTC13761BP)を有効成分として含む、アトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、配列番号1で表される16s rRNA配列を有することを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記薬学的組成物は、前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の生菌剤を含むか、または低温殺菌された菌株を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物は、ビタミ
ンをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記薬学的組成物は、グルココルチコイド(Glucocorticoid)、シクロスポリン(Cyclosporine)、タクロリムス(Tacrolimus)、ピメクロリムス(Pimecrolimus)、ラパマイシン(Rapamycin)、ミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate Mofetil)、デキサメタゾンから構成された群から選ばれる
免疫抑制剤をさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記アトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、組成物の総重量に対し、有効成分としてアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を108~1012CFUの含量で含むか、または同じ数の生菌または低温殺菌体を有する培養物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記アトピー性疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシーまたは食物アレルギーであることを特徴とする、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(Akkermansia muciniphila EB-AMDK19)(KCTC13761BP)を有効成分として含む、アトピー性疾患の予防または改善用健康機能性食品。
【請求項9】
アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(Akkermansia muciniphila EB-AMDK19)(KCTC13761BP)を有効成分として含むアトピー性皮膚炎の緩和または改善用化粧料組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の前記アトピー性皮膚炎は、皮膚アレルギー、皮膚じんましん、アトピー性皮膚炎、乾癬または湿疹であることを特徴とする、化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物に関し、より詳細には、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を有効成分として含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
厳密な意味で「アトピー」という用語は、外部から身体内に入ってくる異物に対して非正常的にIgEを生成する性向を意味する。したがって、「アレルギー」という用語と同一ではないが、実際には、同じ意味で混用している。このような過敏反応が臨床的に症状として発現する場合を「アトピー性疾患」または「アレルギー疾患」と呼び、伝統的に喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アナフィラキシー(anaphylaxis)、食物アレルギー(food allergy)などがアトピー性疾患に分類されている。
【0003】
現在までに知られているアトピー性疾患の発症原因は、正確に明らかになっていないが、一般的に遺伝的、免疫学的要因が関与していると推定され、その他に環境的、精神的要因などが悪化要因として作用するというのが専門家の普遍的な見解である。アトピー性疾患は、単一疾患として発生するよりはアトピー性皮膚炎、喘息及びアレルギー性鼻炎などが行進(atopic march)をなして発生するか、または同時に現れる多重疾患として知られている。
【0004】
アトピー性疾患のうち、アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis)は、よく知られているように、新生児や小児に発症し、成人になるまで持続することもある慢性再発性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎の主な症状は、病変の初期である急性期には、主にかゆみがひどい紅斑性丘疹と水疱が発生し、掻くとみずうみが出る滲出性病変に変わるが、このときに二次感染がよく発生する。病変が進行して亜急性期には、擦傷、丘疹が発生し、慢性期に入ると、皮膚が厚くなる苔癬化(lichenification)現象が起こる。アトピー患者は、頻繁に再発と症状の悪化により、応急室及び入院治療を繰り返すことになり、正常な学校生活、社会生活、または職場生活が困難になって精神的苦痛まで経験し、正常な生活を困難にする可能性がある。
【0005】
アトピー性疾患は、根本的に治療しにくく、症状が悪化する傾向があるため、アトピー性疾患は、治療を目標とせず、適切な治療により症状がコントロールされている。現在、アトピー性皮膚炎は、主にステロイド、抗ヒスタミン剤や抗生剤のような薬物療法によって治療されている。現在、最も広く使用されている治療剤は、ステロイド剤として知られているデキサメタゾン(dexamethasone)である。ステロイド系薬物は、抗炎症及び免疫抑制効果に優れているが、長期間使用すると、皮膚弱化、全身ホルモン症状及び中毒性効果のような副作用が発生するという問題点がある。抗ヒスタミン剤は、肥満細胞からヒスタミンが放出されることを防いでかゆみの症状を減少させるが、一時的な措置として使用され、長期間にわたり不眠症、不安及び食欲不振などの副作用を引き起こすことができる。
【0006】
このように合成医薬品は、長期間使用時に副作用が激しく、アトピー性疾患に対して効果的であり、副作用のない新しいアトピー治療法が求められている。副作用のないアトピー治療法として、微生物新薬が新しい治療法として関心を集めている。そこで、プロバイオティクスの効能と機能も大きな注目を集めているが、微生物が体内にどのように作動するかなどは、相当部分が難題として残っており、効能においても腸内環境を健康に保つのに多少役立つだけで、確実な薬学的効能まで期待し難いのが現状である。したがって、難治性疾患であるアトピー性疾患に対して検証された薬学的効能を持つ次世代ファーマバイオティクス(pharmabiotics)治療剤の開発が切実に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
(特許文献1)韓国特許公開第2016-0069733号
(特許文献2)韓国特許公開第2013-0034764 号
(特許文献3)韓国特許第1925135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した技術的課題を解決するためのもので、本発明の一つの目的は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(KCTC13761BP)を有効成分として含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようする具体的技術的課題は、免疫過剰反応媒体であるIgEの過剰分泌を抑制し、Th1タイプサイトカインとTh2タイプサイトカインの均衡的免疫調節に 卓越したアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(KCTC13761BP)を有効成分として含むアトピー性疾患の予防または改善用健康機能性食品を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(KCTC13761BP)を有効成分として含むアトピー性疾患の緩和または改善用化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するための本発明の一つの態様は、寄託番号KCTC13761BPのアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株、前記菌株の培養物または乾燥物を含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0013】
上述した目的を達成するための本発明の別の態様は、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(KCTC13761BP)、前記菌株の培養物または乾燥物を含むアトピー性疾患の予防または改善用食品に関する。
【0014】
上述した目的を達成するための本発明のさらに別の態様は、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(KCTC13761BP)、前記菌株の培養物または乾燥物を含むアトピー性疾患の緩和または改善用化粧料組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を有効成分として含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、アトピー性疾患の治療効果に優れており、ステロイド系薬物と同等の水準でアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療効果を示す。
【0016】
また、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を有効成分として含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、Th1細胞とTh2細胞のバランス的な免疫調節に優れており、特にアトピー性疾患の重症度に応じて互いに異なる免疫調節機序を通じてTh1タイプサイトカインとTh2タイプサイトカインの均衡的免疫調節を行うことが特徴である。
【0017】
また、本発明の薬学的組成物は、アトピー性疾患の発症の主な因子である血清免疫グロブリンIgEの量を直接的に減少させ、真皮細胞内に肥満細胞、好酸球及び好中球の浸潤を減少させるので、アトピー性疾患の予防及び治療に使用される薬学的組成物、健康機能性食品、化粧料組成物などに応用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(KCTC13761BP)と標準株(type strain)であるアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株の顕微鏡観察結果である。
【
図2】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株のPCR分析結果である。
【
図3】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株のゲノムDNAのRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)分析結果である。
【
図4】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株と異なるアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の系統発生的関係を比較図示したものである。
【
図5】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株の溶血活性実験結果である。
【
図6】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株が大腸上皮細胞の生存率に及ぼす影響を確認した結果である。
【
図7】本発明の実施例において各実験群のマウスの皮膚組織の病理学的特徴を肉眼で観察した結果を示す写真である。
【
図8】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株による皮膚炎指数(dermatitis score)の変化を示したグラフである。
【
図9】本発明の実施例において各実験群のマウスの耳浮腫の程度を比較して示した写真である。
【
図10】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与群、陽性対照群(DEX)及びアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株投与群の耳の厚さ(ear thickness)の変化を分析した結果である。
【
図11】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与群、陽性対照群(DEX)及びアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株投与群の実験動物の掻く頻度(scratch frequency)を示すグラフである。
【
図12】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与群、陽性対照群(DEX)及びアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株投与群の脾臓の写真である。
【
図13】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与群、陽性対照群(DEX)及びアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株投与群の脾臓の重さを比較して示したグラフである。
【
図14】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株群、陽性対照群(DEX)及びアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株投与群のアレルギー疾患を媒介する最も重要な免疫指標であるIgEの変化を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施例の各実験群のマウスの皮膚組織を採取し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色した結果である。
【
図16】アトピー誘導された後、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株がアトピーによる体重変化に及ぼす影響を確認した結果である。
【
図17】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与がIL-4、IL-6に及ぼす影響を確認した結果である。
【
図18】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与が血中のTh1サイトカイン、IFN-γ及びIL-12に及ぼす影響を確認した結果である。
【
図20】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与が血中のTh1サイトカインとTh2サイトカイン生成能に及ぼす影響を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明についてより詳細に説明する。
【0020】
特に定義しない限り、本願で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属す
当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0021】
本願で使用される「約」という用語は、引用された特定の数値に関連して使用されるとき、その数値が引用された数値から1%以下に変わることがあることを意味する。例えば、本願で使用されるように、「約100」という表現は、99及び101とその間のすべての数値(例:99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0022】
本願明細書においてどの部分がどのような構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「アトピー性疾患(atopic allergy)」という用語は、アレルギー反応を起こす疾患で、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(腱鞘熱)、蕁麻疹、アナフィラキシー、血管浮腫、食物アレルギーなどを含む意味である。
【0024】
本明細書で使用される用語の「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与によりアトピー性疾患を抑制されるか、または発病を遅らせるすべての行為を意味する。
【0025】
本明細書で使用される用語の「治療する」、「治療」という用語は、一時的または永久的に症状を緩和するか、または症状の原因を取り除くか、または前記疾病や病態の症状の発現を防止するか、または遅らせることを意味する。
【0026】
本明細書で使用される用語の「改善」は、非正常な状態に関連するパラメータ、例えば、症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0027】
本明細書で使用される用語の「薬学的に許容可能な」とは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題点または合併症なしに利得/リスク比が合理的であるため、対象体(例:ヒト)の組織と接触して使用するのに適しており、健全な医学的判断の範疇以内である組成物を意味する。
【0028】
ファーマバイオティクス(pharmabiotics)は、健康や疾病に対して検証された薬学的役割(pharmacological role)を有するヒト由来の細菌またはその産物と定義される(「Probiotics and pharmabiotics」、Bioeng Bugs 2010 Mar-Apr;1(2):79-84.).本発明の一つの態様は、寄託番号KCTC13761BPのアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(Akkermansia muciniphila EB-AMDK19)(KCTC13761BP)を有効成分として含むアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0029】
本発明の寄託番号KCTC13761BPのアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)EB-AMDK19菌株は、配列番号1の16s rRNA遺伝子を持つ。
【0030】
本発明で使用されるアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、健康な韓国人の糞便から単離され、0.5~1μmサイズの楕円細胞である単核球菌または双球菌であり、嫌気性細菌であり、運動性がなく、グラム-陰性であり、内生胞子を形成しない、粘液-分解性細菌(mucin-degrading bacteria)である。アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、いくつかの粘液分解酵素を生成して粘液を炭素及び窒素供給源として使用することができ、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン及びラクトースを含む、様々な炭素源を代謝することができ、プロピオン酸と酢酸のような短鎖脂肪酸を主な代謝物質として生成する。
【0031】
IgEは、喘息、アトピー性皮膚炎、鼻炎、アナフィラキシー、食物アレルギーのようなアレルギー反応を媒介する免疫グロブリンファミリーのメンバーである。IgEは、B-細胞またはB-リンパ球によって分泌され、その表面上で発現される。IgEは、FcεRIIと公知された低親和度IgE受容体に対するそのFc領域を通じてB-細胞に結合し、単核球、好酸球及び血小板にも結合する。哺乳動物がアレルゲンにさらされると、このような抗原に対して特異的な表面に結合されたIgE抗体を保有するB-細胞が活性化され、IgE-分泌形質細胞に発達される。アレルギー状態において、B-細胞によるIgEの生産は、ヒスタミン及びその他の伝染症分子(pro-inflammatorymolecules)の分泌を誘導し、疾患の重症度を加重させる。
【0032】
血清で上昇した免疫グロブリンE(IgE)水準の存在は、喘息のようなアレルギー疾患で観察される炎症性カスケードの必須的な部分と見なされる。アレルギー誘発性IgEの誘導は、人間喘息だけでなく、アレルギー性肺炎症の動物モデルで感知されることがあり、これはアレルギーの発生を誘導する関連細胞(T及びB細胞軸)及び体液メカニズムの開始を示す。したがって、治療的介入によるアレルギー抗原特異的IgE反応の調節は、根本的にアレルギーの発生を裏付けるメカニズムの調節を指す。
【0033】
本発明のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、Th2が優勢な状況でTh1/Th2バランスを合わせる作用をする。したがって、Th2反応の過剰によるTh1/Th2不均衡と誘発されるアトピー性皮膚炎、喘息、及び鼻炎などの予防または治療に効果的である。一般的にアトピー性皮膚炎において、サイトカイン濃度の変化は、分化しないT-ヘルパー細胞-1(Th1)がT-ヘルパー細胞-2(Th2)に分化が非常に促進されるTh2の活性化に基づく免疫体系によって誘発されることが知られている。このようなTh2細胞の活性化過程において、Th2細胞は、IL-4、IL-5、IL-6、IL-13、IL-9及びIL-10を生成する。
【0034】
本発明のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の生菌剤を含むか、または低温殺菌された菌株を含んでもよい。本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は培養され、遠心分離のような分離過程で回収され、乾燥、例えば、凍結乾燥によりプロバイオティクスの形態で製造して用いられてもよい。アッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の低温殺菌は、50℃以上100℃未満の温度で10分以上加熱することを意味する。例えば、70℃で30分間低温殺菌しうる。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、組成物の総重量に対し、有効成分としてアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を108~1012CFUの含量で含むか、または同じ数の生菌を有する培養物を含んでもよい。
【0036】
本発明の一具現例において、前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を含む薬学的組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態で製剤化して使用されてもよいが、必ずこれらに制限されるものではない。
【0037】
本発明の薬学的組成物は、腸内または経口投与用製品として剤形化されてもよい。また、本発明の薬学的組成物は、公知の方法を用いて胃腸を通過した後、小腸に到達して活性成分である微生物が迅速に腸内に放出されるように、腸溶被覆されて製品化されてもよい。
【0038】
本発明の一具現例において、経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてもよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0039】
他の実施例において、本発明のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、少なくとも一つのビタミンをさらに含んでもよい。このようなビタミンは、脂溶性または水溶性ビタミンであってもよい。適切なビタミンは、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンK、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ピリドキシン、チアミン、パントテン酸及びビオチンを含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。前記任意の適切な形態は、ビタミンの塩、ビタミンの誘導体、同一または類似の活性のビタミンを持つ化合物及びビタミンの代謝産物である。
【0040】
本発明のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、アレルギー疾患ないしアトピー性皮膚炎を予防及び治療する効果を持つ公知の追加治療剤をさらに含んでもよい。本発明で使用可能な追加の治療剤は、免疫抑制剤、鎮痛剤、ステロイド、非-ステロイド性抗炎症剤(NSAID)またはサイトカイン拮抗剤及びこれらの組合せである。前記免疫抑制剤としては、グルココルチコイド(Glucocorticoid)、シクロスポリン(Cyclosporine)、タクロリムス(Tacrolimus)、ピメクロリムス(Pimecrolimus)、ISA(TX)247を含むカルシニュリン(calcineurin)阻害剤、ラパマイシン(Rapamycin)、タイプIV PDE阻害剤(タイプIV PDE inhibitors)、ミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate Mofetil)、デキサメタゾンなどが挙げられるが、必ずしもこれらに制限されず、公知のすべての免疫抑制剤をともに用いてもよい。また、1種の免疫抑制剤を単独で用いるか、または2種以上の免疫抑制剤を組み合わせて用いてもよく、好ましくは、前記免疫抑制剤としてシクロスポリン、タクロリムス、デキサメタゾン、ピメクロリムスから構成された群から選ばれた1種以上を用いてもよい。本発明による薬学的組成物を他の治療剤と併用する場合には、順次的または同時に投与されてもよく、単一または多重投与されてもよい。
【0041】
本発明の薬学的組成物は、前記有効成分以外に製薬学的に許容可能な担体及び/または賦形剤をさらに含んでもよく、この他にもバインダー、分解剤、コーティング剤、潤滑剤などのような製薬学的に通常使用される様々な添加剤とともに剤形化されて調製されてもよい。
【0042】
本発明で使用可能な賦形剤としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、グルコースなどの砂糖及びトウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、米澱粉、部分的に全ゼランチン化された澱粉などの澱粉を含む。バインダーは、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、グァーガム、アカシア、アガなどのポリサッカライド、トラガカント、ゼラチン、グルテンなどの天然-発生巨大分子物質、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体及びポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及び酢酸ビニル樹脂などの高分子を含む。
【0043】
本発明で使用可能な分解剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体及びナトリウムカルボキシ澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、トウモロコシデンプン、ジャガイモ澱粉、米澱粉及び部分的に全ゼラチン化された澱粉などの澱粉を使用してもよい。
【0044】
本発明で使用可能な潤滑剤の例としては、タルク、ステアリン酸、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、コロイド性シリカ、ヒドロスシリコンダイオキサイド、様々な種類のワックス及び水素添加油脂などを含む。
【0045】
コーティング剤としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、エチルアクリレート-メタクリル酸共重合体、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート共重合体、エチルセルロースなどの水不溶性ポリマー、メタクリル酸-エチルアクリレート共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどの張性ポリマー及びメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマーを含むが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0046】
本発明のアトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物において有効成分である前記菌株の投与量は、様々な疾病類型、患者の年齢、体重、性別、患者の医学的状態、状態の重症度、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野においてよく知られている要素によって決められてもよい。したがって、容量療法は、広範囲に変わることができるが、前記要素をすべて考慮して、副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって標準方法を用いて容易に決定されてもよい。
【0047】
一般的に、成人患者の場合、1Х108以上の生菌または低温殺菌された細菌、好ましくは、1Х108~1Х1012の生菌または低温殺菌された細菌が、必要に応じて一回または数回に分けて投与されてもよい。本発明の一具現例において、前記アトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を含む場合、その含量を特に制限するものではなく、例えば、前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を1×108細胞/ml~1×1010細胞/mlの濃度で含んでもよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。例えば、前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の濃度は、1×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、2×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、3×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、5×108細胞/ml~1×1010細胞/ml、1×108細胞/ml~5×109細胞/ml、2×108細胞/ml~5×109細胞/ml、3×108細胞/ml~5×109細胞/ml、5×108細胞/ml~5×109細胞/mlであってもよいが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0048】
本発明のさらに他の態様は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株、これらの培養物または乾燥物を含む食品または健康機能性食品に関する。
【0049】
本発明の菌株含有食品は、牛乳や乳製品のような様々な食品や栄養製品として、または食品補助剤若しくは健康機能性食品として摂取されてもよい。本発明の一具現例によって前記製品は、乳製品、飲料、ジュース、スープまたは子供用食品などの食品が挙げられるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。
【0050】
本発明のさらに他の態様は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株、これらの培養物または乾燥物を含むアトピー性皮膚炎を緩和するか、または改善する化粧料組成物に関する。
【0051】
本発明の化粧料組成物は、前記有効成分以外に化粧料組成物に通常用いられる成分を含んでもよく、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤、及び担体を含んでもよい。
【0052】
前記化粧料組成物は、皮膚アレルギー、皮膚じんましん、アトピー性皮膚炎、乾癬、真菌による感染及び湿疹から構成される群から選ばれる1つ以上の皮膚の状態を改善する機能性を有することを特徴とするが、その機能は、必ずしもこれらの状態に限定されるものではない。
【0053】
本発明の化粧料組成物は、当業界で通常製造されるいかなる剤型でも製造されてもよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤-含有クレンジング、オイル、パウダーファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パック、マスクパック、マッサージクリーム及びスプレーなどとして剤形化されてもよいが、これに限定されるものではない。より詳細には、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形として製造されてもよい。
【0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例により限定されるものではない。
【0055】
実施例
実施例1:アッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の分離及び同定
1.1.菌株の分離及び同定
健康な韓国人(女性、35歳、BMI 23.3)の糞便からアッカーマンシア・ムシニフィラを分離するため、Derrienの方法によってムチン培地(0.4g KH2PO4;0.53g Na2HPO4;0.3g NaCl;0.1g MgCl26(H2O);0.11g CaCl20.4g/L、1ml酸微量元素溶液、1mlアルカリ性微量元素溶液、1mlビタミン溶液、2.5g/Lブタ胃粘液(タイプIII))、及び0.25g/L硫化ナトリウム九水和物)を用いて菌株を選別培養後に分離した(Derrien et al., 2004)。
【0056】
分離された菌株がアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株が正しいかどうか確認するため、分離された菌株を顕微鏡で観察し、その結果を
図1に示し、下記表1のAM-特異性プライマーを用いたPCR分析を行って、その結果を
図2に示した。
【0057】
図1においてAは、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株であり、Bは、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株を1000倍の倍率で拡大した顕微鏡写真である。
図2において、レーンMは、DNAサイズマーカーであり、レーン1は、陽性対照群(ATCC BAA-835)であり、レーン2は、Akkermansia muciniphila EB-AMDK19菌株であり、レーン3は、陰性対照群(蒸留水)の結果である。その結果、
図2に示すように、本発明の菌株は、陽性対照群菌株であるアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株と類似したバンドで結果値が出たことが確認できた。
【0058】
【0059】
1.2.分離されたアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の糖利用性確認
前記で分離された本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の糖利用性を把握するためにAPI50CHキット(Biomerieux、France)を応用して培養した後、各糖を用いた生長の有無を標準株 (type strain)(ATCC BAA-835)と比較し、その結果を下記表2に示した。
【0060】
【0061】
前記表2から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、標準株であるアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株と比較すると、リボース、D-ガラクトース、D-フルクトース及びD-マンノースの利用能力において差異があることを確認した。
【0062】
1.3.全ゲノムシーケンシング(Whole genome sequencing)
前記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株間の変化を遺伝体水準で分析するため、PacBio技法を用いて遺伝体の全塩基配列を分析し、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準株と比較した(表3及び表4)。
【0063】
【0064】
【0065】
前記表3及び表4から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準株の全遺伝体統計の数値を比較してみると、差異があった。
【0066】
1.4.Random Amplified Polymorphic DNA(RAPD)分析
前記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株が既に報告された同種のアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準株と同一であるかどうかを検証するため、分子タイピングの一種であるRAPDを行った。このために菌体から抽出したゲノムDNAを対象とする表5の汎用プライマーを用いてDNAを増幅した後、1%アガロースゲルで1時間30分の間電気泳動し、UV穿孔機上でDNA分節パターンを比較し、その結果を
図3に示した。
【0067】
【0068】
図3から確認されるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準株と比較すると、異なるRAPDバンドパターンを示した。したがって、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835の標準株と種は同じであるが、異なる菌株であることを確認した。
【0069】
1.5.全長16S rRNA遺伝子塩基配列を用いた系統樹(phylogenetic tree)分析
前記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の全長(full-length)16S rRNA遺伝子の塩基配列解析のため、下記表6の27F及び1541Rプライマーを用いて16S rRNA遺伝子を増幅した後、3730xl DNA分析を用いて塩基配列を決定した。このように得られたEB-AMDK19及び既に公表された同種の他の菌株の16S rRNA遺伝子塩基配列を用いて系統樹(phylogenetic tree)を作成し、
図4に示した。
【0070】
【0071】
図4に示すように、16s rRNA遺伝子の塩基配列解析を通じて進化学的類縁関係を系統樹(phylogenetic tree)を介して分析した結果、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、遺伝学的にアッカーマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)種に属する菌株であることを確認した。ヒトの糞便から単離したアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株をアッカーマンシア・ムシニフィラ
T(ATCC BAA-835)を対照群とした生化学的方法(API)及び分子生物学的方法(16s rRNA配列分析、RAPD、及び全長スクリーニング)を介して同定し、後述する抗生剤耐性検査によってプロバイオティクス(Probiotics)の機能を持つ安全な菌株であることを確認した。これらの結果に基づいて単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株を「アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19」菌株と命名し、韓国生命工学研究院、微生物資源センター(KCTC)に寄託し、受託番号KCTC13761BPが付与された。
【0072】
実施例2:アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の安全性テスト
2.1.抗生剤耐性
前記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の抗菌剤感受性を把握するため、Clinical & Laboratory Standard Institute(CLSI)ガイドラインのbroth microdilution方法によって嫌気性細菌用抗菌剤ピペラシリン-タゾバクタム(PTZ)、セフチゾキシム(CTZ)、クロラムフェニコール(CHL)、クリンダマイシン(CLI)、メロペネム(MEM)、モキシフロキサシン(MXF)、メトロニダゾール(MTZ)、シプロフロキサシン(CIP))に対する最小阻止濃度(minimum inhibitory concentration、MIC)を決定し(CLSI、2017)、その結果を下記表7に示した。
【0073】
【0074】
表7から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、クリンダマイシンに中等度の耐性を示し、フルオロキノロン系の抗生剤であるモキシフロキサシンとシプロフロキサシンは、耐性を示し、これを除いたすべての抗菌剤に感受性を示した。アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準株と比較すると、抗菌剤耐性パターンに多少差があった。本発明によるアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、ほとんどの抗生剤に対する耐性のない安全な菌株であることを確認できる。
【0075】
2.2.溶血活性(hemolytic activity)及び細胞毒性(cytotoxicity)確認
前記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の安全性検証のために溶血活性及び細胞毒性の有無を評価した。溶血活性の有無を確認するため、トリプティックソイアガー(17.0g/Lカゼインの膵消化物、3.0g/L大豆の膵消化物、2.5g/Lデキストロース、5.0g/L塩化ナトリウム、2.5g/Lリン酸カリウム、15g/Lアガー)に5%w/v defibrinated sheep bloodを添加して製造した血液寒天培地を用いて菌株を培養し、その結果は、
図5に示した。
図5から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、コロニー周辺の完全に透明な部分が現れなかったため、病原性に関連したβ-hemolysisを起こさないことを確認した。
【0076】
また、細胞毒性の有無を確認するため、ヒト由来の大腸上皮細胞であるHT29とCaco-2細胞を用いて、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株処理による生存率を3-(4,5-dimethyl-thiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium Bromide(MTT)assay方法によって分析し、その結果は、
図20に示した。
図6から分かるように、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株は、大腸上皮細胞の生存率に影響を及ぼさないことから、細胞毒性はないことが確認された。
【0077】
実施例3アッカーマンシア・ムシニフィラ菌株のアトピー性疾患の治療効能確認
3.1.菌株試料
本実験に使用したアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19生菌は、1x108CFU/150μl PBS(25%グリセロール、0.05%システイン/PBS)の濃度で製造した。
【0078】
3.2.動物モデル及びサンプリング
アトピー性皮膚炎病変を観察するため、6週齢の体重21-25g程度の雄NC/Ngaマウス(SLC、Inc.,Japan)を大韓バイオリンク(忠清道、韓国)から供給された。動物実験は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)のAnimal use and Care Protocolを遵守して行った。一週間の適応期間後、9週間飼育が行われ、飼育環境は、一定の温度(22℃)と相対湿度(40~60%)を維持し、12時間の周期で明暗を調節しながら飼育した。
【0079】
3.3.アトピー性皮膚炎の誘発
6週齢のNC/Ngaマウスの背中部位をきれいに除毛した後、皮膚の微細傷が治癒するように24時間放置した。1%2,4-ジニトロクロロベンゼン(DNCB)溶液(Sigma-Aldrich Korea)をマウスの背中部位に1週間に2回ずつ、3週間塗布して免疫反応を誘発した後、0.5%DNCB溶液を1週間に2回塗布して接触性皮膚炎を維持した。本実施例に使用されたDNCBは、アセトンとオリーブオイルが3:1で混合された溶液に0.5%と1%で希釈して使用した。
【0080】
それぞれの該当する薬物を用いてアトピー性皮膚炎誘導後、6週間毎日経口投与を行った。陽性対照群としてデキサメタゾンを60μg/mlの蒸留水で希釈して毎日200μgずつ経口投与した(表8参照)。
【0081】
【0082】
3.4.アトピー性皮膚炎の評価
DNCBによってアトピー性皮膚炎を誘発させた後、デキサメタゾン(DEX)、ATCC BAA-835菌株及びEB-AMDK19菌株含有調剤を投与して6週間治療を行い、臨床症状を確認するため、皮膚の状態と、これを点数化させた皮膚炎指数(dermatitis score)を確認した。アトピー性皮膚炎において一般的に使用される臨床的肉眼評価法であるSCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)インデックスを修正し、臨床的肉眼評価法により官能評価を行った。皮膚の乾燥状態(dryness)、浮腫(edema)、紅斑と出血(erythema/hemorrhage)、びらんと傷(erosion/excoriation)を症状なし(0点)、症状の弱さ(1点)、普通(2点)、症状の激しさ(3点)で点数化して毎週測定し、評価結果は、
図7及び
図8に示す。
【0083】
6週間の治療期間の間、一週間おきに各グループの皮膚の状態を肉眼で観察して皮膚炎指数(Dermatitis score)で測定した結果、アトピー誘導群(DNCB)は、6週間経過する間、アトピー性皮膚炎の症状が維持される反面、ATCC BAA-835菌株、EB-AMDK19菌株とデキサメタゾン(DEX)を投与した実験群では、アトピー性皮膚炎の症状が著しく減少することを確認できた。特に、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株投与群と本発明のEB-AMDK19投与群は、デキサメタゾンを投与した陽性対照群よりもアトピー改善効果がより優れていることが分かった。特に、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群に比べて、本発明のEB-AMDK19菌株投与群の方がより優れたアトピー皮膚状態改善効果を示すことを確認した。6週目の皮膚炎指数基準による数値評価において、アトピー誘導群に比べて陽性対照群(DEX)(P=0.003)、ATCC BAA-835投与群(P=0.009)及びEB-AMDK19投与群(P<0.001)において、それぞれ6週間38.4、45.6、61.7%以上の減少現象が確認された。
【0084】
3.5.アトピー性皮膚炎による耳浮腫に及ぼす影響
重症度のアトピー性皮膚炎を誘発した後、実験終了されたマウスをCO
2で麻酔して犠牲になった後、両耳は、厚さ測定器(thicknessgauge、Digimatic thicknessgauge、547-301、Mitutoyo、Japan)を用いて速度変化法でマウスの耳の浮腫の程度を測定し、その結果を
図9及び
図10に示した。
【0085】
NC/Ngaマウスの耳浮腫は、6週目において正常群が0.55mm、アトピー誘導群が1.50mmとなり、ATCC BAA-835投与群は、1.09mm(P<0.001)、EB-AMDK19投与群は、0.87mm(P<0.001)、陽性対照群(DEX)は、1.00mm(P<0.001)となった。本発明のEB-AMDK19投与群において陽性対照群よりも有意に耳浮腫の減少効果が現れることを確認した。また、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19投与群は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群よりも有意に耳浮腫が減少すること(P=0.04)を確認した。このように本発明の薬学的組成物は、アトピー誘導されたマウスの耳浮腫動物モデルにおいて顕著な浮腫抑制効果があることを確認した。
【0086】
3.6.掻く回数(Scratching score)測定
実験終了の前日にそれぞれかゆみによる患部を掻く回数を測定した。掻く回数(scratching frequency)の測定は、マウスに10分間適応期間を与えてから、10分間掻く回数をカウンター機を用いて測定した。
【0087】
図11を参照すると、アトピー誘導群は、正常群と比較時、身体を掻く回数(scratching frequency)が有意に増加した(P<0.001)。アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群と本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19投与群の両方で掻く回数は、アトピー性皮膚炎誘導モデルよりそれぞれ66.7%減少(P=0.01)、72.9%減少(P=0.005)されることを確認した。陽性対照群は、アトピー誘導群より59.4%(P=0.03)程度掻く回数が減少されることを示した。したがって、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19投与群は、デキサメタゾンを投与した陽性対照群や、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群に比べて、より優れた抗掻痒効果を示すことを確認した。
【0088】
3.7.脾臓の重量及びサイズ測定
脾臓は、1次と2次リンパ器官の特性をすべて示し、赤血球を濾過する赤髄(red pulp)と体液性免疫と細胞性免疫活性を示す白髄(white pulp)から構成されており、免疫反応においてさらに他の重要な器官である(Mebius、R E and Kraal,G 2005 Structure and function of the spleen Nat Rev Immunol 5,pp606-616)。また、脾臓は、B細胞発生の最終段階が行われるところであり、同時に、血液に由来する抗原に反応する特化した器官として機能を有する(Boehem,T and Bleul、CC 2007 The evolutionary history of lymphoid organs NatImmunol 8,131-135)。アトピー性皮膚炎の反応は、免疫器官内の様々な反応を誘導し、このような反応は、一次的に免疫器官である脾臓の重量に影響を及ぼすことができる。
【0089】
したがって、アトピー性皮膚炎予防用組成物がDNCBによって誘導されたアトピー性皮膚炎が発生したNC/Ngaマウスの免疫臓器に及ぼす影響を観察するために脾臓(spleen)の重量を測定した。より具体的には、実験が終わった後、実験動物をCO
2で麻酔した後、頚椎脱臼法で犠牲にして開腹して脾臓組織を採取した。前記採取された脾臓組織を生理食塩水で洗浄した後、水気を除去した後、肉眼で観察し、微細はかりを用いて重量を測定し、その結果を
図12及び
図13に示した。
【0090】
アトピー誘導群(DNCB)の脾臓の重量は、正常群に比べて約2倍増加し(P<0.001)、ATCC BAA-835投与群、EB-AMDK19投与群、陽性対照群(DEX)では、アトピー誘導群(DNCB)に比べてそれぞれ6.9%、24.3%(P=0.03)、23.3%の抑制率を示した。特に、本発明のEB-AMDK19菌株を投与した群は、デキサメタゾンを投与した陽性対照群よりも良い効果を示し、また、ATCC BAA-835標準株よりもさらに大きい脾臓の重量の減少率を示した。したがって、本発明のEB-AMDK19が最も免疫を抑制する効果において優れていることを確認した。
【0091】
3.8.血清内のIgE濃度測定
実験終了時にCO
2で麻酔した後、心臓穿刺で血液を採取し、採取した血液は、10,000rpmで5分間遠心分離を行い、血清(serum)を分離してIgE濃度を測定し、その結果を
図14に示した。IgE濃度の測定は、ELISAキット(IgE mouse uncoated ELISA kitcat#88-50460,Invitrogen,CA,USA)を用いた。
【0092】
図14を参照すると、DNCBを処理した対照群では、血清内IgEの生成量は、正常群に比べて増加したが(1545.08ng/ml、約13倍増加、P<0.001)、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群と本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与群の両方でアトピー誘導群に比べて著しく減少した。ATCC BAA-835、EB-AMDK19、陽性対照群においてアトピー誘導群に比べて、それぞれ13043.6ng/ml(34.95%減少)、7571.64ng/ml(62.24%減少)、11891.34ng/ml(40.70%減少)で有意に著しく減少することを確認した(P<0.001)。特に、本発明のEB-AMDK19を投与した群の血清内のIgE濃度は、標準株であるアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群より41.95%(P=0.007)さらに減少し、陽性対照群よりは36.32%(P=0.05)さらに減少していることを測定された。したがって、本発明のEB-AMDK19菌株含有組成物がIgE生成抑制効能がはるかに優れており、アトピー症状を緩和させるのに最も効果的なことが確認された。
【0093】
3.9.組織病理学的観察
実験終了時にマウスを犠牲にした後、皮膚を摘出して10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、パラフィンブロックを作製して薄片を製造した後、ヘマトキシリン&エオジン(hematoxylin & eosin、H&E)染色を行って表皮層及び真皮層の厚さの変化を光学顕微鏡で200倍拡大して観察し、その結果を
図15に示した。角化過多症(hyperkeratosis)と上皮肥大増殖(hyperplasia)現象を正常群の厚さを0点、正常群の厚さの2倍を1点、3倍を2点、4倍を3点、4倍以上の4点に点数化し、組織学的に等級化して15(B)及び(C)に示した。
【0094】
NC/Ngaマウスの背中の皮膚組織をH&E染色して観察した結果、
図15に示すように、アトピー誘導群(DNCB)は、正常群と比較して表皮層が真皮層側に厚く下がって拡張された肥厚化と皮膚障壁の深刻な損傷及び炎症細胞の浸潤増加の組織病理学的所見を示した。アッカーマンシア・ムシニフィラ投与群と陽性対照群(DEX群)の両方において顕微鏡観察時、炎症細胞の浸潤が減少する様相を示し、アトピー性皮膚炎の誘発時に観察される表皮の厚さと真皮の厚さが全て拡張されることが抑制され、正常群と似た組織病理学的特徴を示した。
【0095】
図15(B)及び(C)のグラフに示すように、角化過多症と上皮肥大増殖現象は、正常群に比べてアトピー誘導群(DNCB)において有意に増加しており、アトピー誘導群(DNCB)に比べて陽性対照群を含むアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群と本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19投与群の両方で有意に著しく抑制されることを確認した。
【0096】
3.10.体重の変化観察
本実験に使用した菌株による体重変化が発生するかどうかを確認するため、アトピー誘導期間を含んで菌株投与期間の間、実験動物の体重を毎週測定した。
図16から確認されるように、菌株投与6週目に体重を測定した結果、アトピー誘導群(DNCB)では、薬物の副作用及びストレスなどにより体重減少が発生することを確認できた。それに対して、アトピー誘導群にアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株を投与した群では、アトピー誘導群に比べて体重の増加様相を示した。また、ステロイド系治療剤であるデキサメタゾンを投与した陽性対照群よりアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株を投与した群(ATCC BAA-835の標準株とEB-AMDK19)において体重減少抑制様相を確認できた。特に、本発明のEB-AMDK19菌株の投与時には、正常群(Normal)と同じパターンの体重増加を示して体重減少の副作用は現れずに、安全であることが確認された。
【0097】
3.11.血清内のサイトカイン濃度測定
アトピー性皮膚炎の誘導後、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株投与による免疫反応を確認するため、Th1とTh2に関連したサイトカインの濃度を測定した。すべての実験の統計は、GraphPad Prism 7.04.One-way ANOVAを使用した。
【0098】
実験終了時にマウスをCO
2で麻酔した後、心臓穿刺で血液を採取し、採取した血液は、10,000rpmで10分間遠心分離を行い、血清を分離して-て80℃で保管した。ELISAキット(Invitrogen、CA、USA)を用いてIL-4、IL-12、IFN-γ、IL-6サイトカインの濃度を測定し、その結果を
図17及び
図18に示した。
【0099】
優先的にTh2細胞活性によって誘導され、炎症反応の指標としても知られているサイトカインIL-4とIL-6の濃度を確認した。
図17(A)に示すように、IL-4濃度は、アトピー誘導群において正常群よりも有意に高くなり(P=0.03)、アトピー誘導群に比べて陽性対照群(DEX)、アッカーマンシア・ムシニフィラ投与群であるATCC BAA-835投与群とEB-AMDK19投与群の両方で有意に減少した。特にEB-AMDK19投与群(P=0.001)では、ATCC BAA-835投与群(P=0.03)より有意にさらに減少したことが分かった。また、IL-6の濃度もIL-4と類似の結果を確認できた(
図17(B)参照)。IL-6濃度を測定した結果、アトピー誘導群(DNCB)において43.4%増加(P=0.03)しており、DNCB誘導群に比べて陽性対照群(DEX)、アッカーマンシア・ムシニフィラ投与群の両方で抑制されること(それぞれDEX:P=0.03、ATCC BAA-835:P=0.04、EB-AMDK19:P=0.006)を確認できた。ATCC BAA-835投与群は、アトピー誘導群(DNCB)に比べてIL-6の濃度が30.5%減少し、EB-AMDK19投与群は、39.4%減少することを確認した。したがって、IL-4、IL-6などサイトカインによって体液性免疫を活性化させてB細胞が活性化され、IgEが多くなってアトピー性皮膚炎が誘発されるが、本発明のEB-AMDK19菌株がATCC BAA-835標準株より効果的に阻害すると考えられる。
【0100】
3.12.EB-AMDK19菌株が血中のTh1サイトカイン、IFN-γとIL-12に及ぼす影響
本実験においては、Th1サイトカインであるIFN-γとそのinducerであるIL-12を測定した結果、
図18から確認されるように、EB-AMDK19投与群において全て有意に増加していることが分かった。IFN-γの場合にEB-AMDK19投与群は、正常群(P=0.001)、アトピー誘導群(P<0.001)、陽性対照群(DEX)(P=0.007)及びアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準株(P<0.001)投与群よりそれぞれ有意に増加した。また、IL-12の濃度は、正常群に比べてアトピー誘導群は、有意に減少し(P=0.008)、EB-AMDK19投与群は、有意に増加した(P<0.001)。アトピー誘導群(DNCB)に比べて陽性対照群(DEX)(P=0.001)、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準株(P=0.006)、EB-AMDK19(P<0.001)で有意に増加した。特にEB-AMDK19投与群は、陽性対照群(DEX)に比べて有意に増加し(P=0.02)、ATCC BAA-835標準株に比べても有意に増加する結果を示した(P<0.001)。したがって、本発明のEB-AMDK19菌株投与が血清IL-12及びIFN-γ濃度の増加をもたらし、したがって、Th1分化を誘導することを確認した。
【0101】
3.13.アトピー動物モデルにおいてEB-AMDK19菌株投与がTh1とTh2サイトカイン生成能に及ぼす影響
免疫学的観点からアトピー性皮膚炎は、Th1とTh2特定の免疫反応が過剰に発生してバランスが崩れて生じる疾患である。したがって、先に測定したサイトカインの濃度に基づいて、Th2/Th1サイトカインの比率で表現して
図19及び
図20に示した
図19(A)を参照すると、IL-4/IL-12を分析した結果、アトピー誘導群(DNCB)では有意に数値が増加し(P=0.006)、アトピー性皮膚炎に代表的に現れるTh2サイトカインの増加を確認し、陽性対照群を含むアッカーマンシア・ムシニフィラ投与群、ATCC BAA-835の標準株とEB-AMDK19投与群の両方でアトピー誘導群(DNCB)に対して有意に数値が減少すること(それぞれDEX:P=0.006、ATCC BAA-835:P=0.003)、EB-AMDK19:P<0.001)を確認した。それだけでなく、IL-4/IFN-γでも同じ様相を確認できた(
図19(B)参照)。IL-4/IFN-γの比率がDNCBに対してATCC BAA-835投与群は、15.0%(P=0.03)減少し、EB-AMDK19投与群は、32.9%(P<0.001)減少することが確認できた。特にEB-AMDK19投与群は、ATCC BAA-835投与群よりも有意に減少していることが確認できた(
図19(B)参照)。
【0102】
また、IL-6/IL-12とIL-6/IFN-γの比率も前記結果と類似の様相を確認できた。IL-6/IL-12の比率は、アトピー誘導群において正常群と比較して1.50倍、P=0.01増加し、アトピー誘導群に対して陽性対照群、ATCC BAA-835投与群、EB-AMDK19群の両方で、それぞれ34.5%(P=0.02)、35.9%(P=0.005)、50.5%(P<0.001)減少することを確認した。IL-6/IFN-γの比率もアトピー誘導群において正常群と比較して14%(P=0.004)増加し、アトピー誘導群(DNCB)と対比して陽性対照群では、12.7%(P=0.01)、EB-AMDK19投与群は、27.0%(P<0.001)減少した。EB-AMDK19投与群は、陽性対照群やアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835投与群よりも有意に減少した数値を示した。
【0103】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(Akkermansia muciniphila EB-AMDK19)を有効成分として含む、アトピー性疾患の予防または治療用薬学的組成物は、Th2サイトカインであるIL-4、IL-6の生成を抑制し、その結果、IgEの過剰生産を抑制し、Th1サイトカインIFN-γ、IL-12の生成を促進してアトピー性疾患の治療効果に優れており、特に、従来のプロバイオティクス製剤が有している限界をはるかに改善し、ステロイド系薬物と同等の水準でアトピー性皮膚炎の予防、改善または治療効果を示すため、産業上の利用可能性が高い。
【0104】
本明細書に記載された具体的実施例は、単に本発明の好ましい具現例を説明するためのもので、本発明を制限するものと解釈してはならない。本発明は、その思想及び範囲から外れることなく様々に変形及び変化されて行われてもよく、このような事実は、当業者に自明であろう。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められるべきであり、前記様々な変形及び変化は、本発明の保護範囲に含まれることが意図される。
【受託番号】
【0105】
寄託機関:韓国基準菌株培養コレクション
受託番号:KCTC13761BP
受託日付:2018年12月05日
【配列表】